JP2004293651A - 伝動機構の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】動力源から出力されたトルクが入力される伝動機構の制御装置であって、前記伝動機構に対する入力トルクを変化させる入力トルク変化手段(ステップS5)と、入力トルクが変化されたことに伴う前記伝動機構の滑り状態を検出する滑り状態検出手段(ステップS6,S7)とを備えている。入力トルクの制御応答性がよいので、伝動機構を過剰な滑り状態に到らせることなく、その滑り状態を検出できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、無段変速機や摩擦係合装置などの負荷される圧力に応じて伝達トルク容量の変化する伝動機構を対象とする制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機は、ベルトとプーリとの間の摩擦力や、ディスクとローラとの間のトラクションオイルのせん断力を利用してトルクを伝達し、またクラッチやブレーキなどの摩擦係合装置は摩擦材の表面で生じる摩擦力を利用してトルクを伝達している。したがってこれらの伝動機構は、そのトルクの伝達が生じる箇所に作用する圧力に応じて伝達トルク容量が設定される。
【0003】
無段変速機における上記の圧力は挟圧力と称され、また摩擦係合装置では係合圧と称されることがあり、これらの挟圧力あるいは係合圧を高くすれば、伝達トルク容量を増大させて滑りを回避できるが、その反面、高い圧力を生じさせるために動力を必要以上に消費したり、あるいは動力の伝達効率が低下するなどの不都合がある。そのため、一般的には、意図しない滑りが生じない範囲で、挟圧力あるいは係合圧を可及的に低く設定している。
【0004】
例えば、無段変速機を搭載した車両では、エンジンの回転数を無段変速機によって制御して燃費の向上を図ることができるので、その利点を損なわないために、無段変速機での動力伝達効率を可及的に向上させるべく、挟圧力を、滑りが生じない範囲で可及的に低く設定するように制御されている。そのためには、滑りの生じ始める圧力(すなわち滑り限界圧力)を検出する必要があり、従来では、種々の方法で滑りを検出し、また滑り限界圧力を検出している。
【0005】
その一例を挙げると、摩擦接触して動力を伝達する無段変速機あるいはその伝動システムを対象とした滑り検出方法であって、圧着力(すなわち挟圧力あるいは係合圧)を低下させることに伴う摩擦効率の上昇(具体的には油温の上昇)を検出してスリップを判定する方法が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された方法では、伝達する力や速度あるいは伝達比がほぼ一定の状態で圧着力を徐々に低下させ、油温の上昇によってスリップが検出された際に圧着力をステップ的に増大させ、その後、スリップ時より高いレベルの圧力に圧着力を設定するように構成されている。
【0006】
また、非特許文献1には、ベルト挟圧力を周期的に変化させてベルトの滑りを検出する方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−12593号公報(段落(0012)、(0018)〜(0020)、(0026))
【非特許文献1】
7th Luk Symposium(第7回ルーク シンポジューム)11./12. April2002 配布資料
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
車両用の変速機を制御する油圧装置には、油圧の応答に不可避的な遅れがあることが広く知られている。したがって上記の特許文献1に記載されているように、無段変速機に微少滑りを生じさせるべく挟圧力を単純に低下させた場合、無段変速機に実際に滑りが生じたことに基づいて挟圧力を復帰(増大)させるとしても、応答遅れによって滑り発生時の圧力以上に挟圧力が低下した時点から昇圧させる場合が生じる。このような場合、挟圧力の復帰に時間がかかり、それに伴って無段変速機での滑りが一時的であっても進行して無段変速機に損傷が生じ、もしくはその耐久性が低下する可能性がある。このような事情は、上記の非特許文献1に記載された発明においても生じる可能性があり、挟圧力を所期どおりに変化させることができず、あるいは応答遅れによって過剰な滑りが生じてしまう可能性がある。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、伝動機構での微少滑りの発生もしくはその直前の状態を正確に検出することを可能にする制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、伝動機構に入力されるトルクを変化させ、それに伴う伝動機構の状態変化に基づいて滑り状態を検出するように構成したことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、動力源から出力されたトルクが入力される伝動機構の制御装置において、前記伝動機構に対する入力トルクを変化させる入力トルク変化手段と、入力トルクが変化されたことに伴う前記伝動機構の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、入力トルクを変化させ、その状態で伝動機構の滑りの状態すなわち滑りが生じるか、もしくは滑りが生じやすいか、あるいは反対に滑りが生じにくい状態かなどが検出される。その場合、入力トルクを変化させる手段として制御応答性の高い手段を採用できるので、増大させた入力トルクを低下させる場合に時間がかからず、その結果、過剰な滑りを生じさせることなく滑りの状態が検出される。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明における前記入力トルク変化手段が、前記動力源の出力トルクを周期的に変化させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0013】
したがって請求項2の発明では、動力源の出力トルクの周期的な変化に伴って伝動機構の入力トルクが周期的に変化し、その変化の過程において入力トルクが増大した時点に伝動機構に滑りもしくはその直前の状態が生じる。これは、入力トルクの周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後に入力トルクが低下するので、伝動機構が過剰な滑り状態に到ってしまうことが回避される。また、伝動機構の出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、出力側のトルクの変化が小さくなる。
【0014】
さらに、請求項3の発明は、請求項2の発明における前記入力トルク変化手段が、周期的に変化させられる前記動力源の出力トルクの平均値を所定値に維持する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって、請求項3の発明では、動力源の出力トルクを周期的に変化させる場合に、その出力トルクの平均値が所定値に維持される。そのため、出力トルクの周期的な変化による影響が抑制される。
【0016】
またさらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明における前記伝動機構が、トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する機構であることを特徴とする制御装置である。
【0017】
したがって請求項4の発明では、ベルトやローラを挟み付けてトルクを伝達する無段変速機などの伝動機構における滑りやその直前の状態が、過剰な滑りを生じさせることなく検出され、またその検出のために入力トルクを変化させることによる影響が抑制される。
【0018】
そして、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記滑り状態検出手段による検出結果に基づいて前記伝動機構を制御するトルク伝達制御手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0019】
したがって請求項5の発明では、入力トルクを変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により挟圧力などが制御される。そのため、伝動機構のトルク容量が適正化され、あるいは過剰な滑りが生じることが未然に回避される。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする動力源および伝動機構を含む駆動系統の一例を説明すると、図4は、ベルト式無段変速機1を伝動機構として含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0021】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0022】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0023】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図4に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0024】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0025】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径もしくは巻掛け径)に設定するようになっている。
【0026】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、ロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0027】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0028】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0029】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0030】
なお、変速機用電子制御装置25からエンジン用電子制御装置26に対して、エンジントルクの変動要求が入力されている。このエンジントルク変動要求には、エンジントルクの変動幅すなわち振幅や変動周波数すなわち周期などが含まれる。そして、このエンジントルク変動要求は、エンジントルクを変動させることに伴って無段変速機1に滑りの状態(例えば滑り率)の変化を生じさせ、その状態での挟圧力に基づいて挟圧力を補正し、もしくは挟圧力のマップ値を求めるなどのために出力される。詳細については後述する。
【0031】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。
例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0032】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。その制御は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係、例えば入力トルクに対する挟圧力の過剰もしくは不足の状態を検出し、その検出の結果に基づいて挟圧力を補正することにより実行される。
【0033】
この発明に係る制御装置は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係を検出もしくは判定するために、無段変速機1に対する入力トルクを変化させ、その際の入力トルクとベルト挟圧力との関係から、適正な挟圧力を求め、あるいは挟圧力マップ値を補正するように構成されている。図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、所定時間毎に繰り返し実行される。また、図2は図1に示す制御を実行した場合のエンジントルクや入力軸回転速度などの変化を示すタイムチャートである。
【0034】
図1において、先ず、制御開始の前提条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、平坦路を定常状態もしくは準定常状態で走行しているか否かが判断される(ステップS1)。この判断は、例えば従動プーリ14側の軸トルクが所定範囲内であり、かつ出力軸回転加速度が所定範囲内であることなどによっておこなうことができる。このステップS1で否定的に判断された場合には、制御開始条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0035】
これに対してステップS1で肯定的に判断された場合には、悪路を走行中でないか否かが判断される(ステップS2)。この判断は、例えば出力軸回転速度の変動幅が予め定めた基準値を超えているか否かを判断することによっておこなうことができる。このステップS2で否定的に判断され場合、すなわち悪路走行中であることが判断された場合には、制御の開始前提条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0036】
ステップS2で肯定的に判断された場合には、制御開始前提条件が成立していることになり、したがってこの場合は、所定トリップを経過したか否かが判断される(ステップS3)。図1に示す制御例は、ベルト挟圧力が予め所定値に設定されており、これを補正する制御例であり、したがってその補正は常時おこなう必要がないので、所定トリップ毎に実行することとしたのである。すなわち、ここでトリップとは、例えば、エンジン5が始動制御されて車両が走行し、もしくは走行する状態になったことを意味し、そのトリップ数はエンジン5が始動制御される毎にインクリメントされる。したがって、ステップS3で否定的に判断された場合には、入力トルクを変化させるなどの制御を実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0037】
これに対してステップS3で肯定的に判断された場合には、対応トルク域の挟圧力が既に更新(学習補正)されているか否かが判断される(ステップS4)。
ベルト挟圧力はベルト滑りを生じさせることなく入力トルクを伝達できるように設定するから、入力トルクと挟圧力とは対応しており、したがって入力トルクを複数の領域に区分し、各領域毎に挟圧力を定めることになる。そこで、ステップS4では現在時点で制御の対象としている入力トルク域についての挟圧力が既に更新されているか否かを判断することとしてある。
【0038】
ステップS4で肯定的に判断された場合には、ベルト挟圧力を更新(学習補正)するための制御をその時点で実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。これとは反対に対応入力トルク域についてのベルト挟圧力が未だ更新されていないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、エンジントルクの変動指令が出力される(ステップS5)。
【0039】
このエンジントルクの変動制御は、エンジントルクを周期的に変化させることにより実行されるが、その周波数や振幅は、車両のドライバビリティや振動・騒音を悪化させないように設定される。また、無段変速機1側からの要求により振幅が変わらないように指令値が補正される。このようなエンジントルクの周期的な変動は、例えば、エンジン5の点火時期を周期的に遅角させることにより実行することができる。図2にその状態を遅角量の変化として示してある。
【0040】
なお、点火時期の遅角制御ではエンジントルクを低下させることができるものの、増大させることができないので、遅角制御のみでは、エンジントルクの平均値すなわち実質的なエンジン出力トルクが、制御開始前に比較して低下してしまう。したがってエンジントルクを周期的に変化させた場合の平均値の低下を抑制するために、例えばエンジン5のスロットル開度を所定量増大させることが好ましい。その制御は、例えば電気的に制御できる電子スロットルバルブ(電スロ)をエンジン5に取り付けておき、その電子スロットルバルブを制御することによりおこなうことができる。
【0041】
また、スロットル開度の変更によるエンジントルクの変化には遅れがあるから、遅角制御に先行してスロットル開度を変化させる。これを図2を参照して説明すると、先ずA時点にスロットル開度の増大制御を開始し、その後のB時点に点火時期を遅角させ始め、スロットル開度が所期開度まで増大したC時点の後に、点火時期の遅角を周期的に繰り返す制御を開始する。
【0042】
エンジン5の出力トルクを上記のように周期的に変化させると、無段変速機1の入力トルクもそれに合わせて周期的に変化する。無段変速機1における入力トルク(エンジントルク)と滑り率との関係は、図3に示すとおりであり、ミクロスリップの状態であっても入力トルクの変化によって滑り率が変化する。これは、回転速度(例えば入力軸回転速度)の変化として現れる。
【0043】
したがってエンジントルクの周期的な変動に起因する回転速度変化を検出するために、回転速度の検出信号をフィルタ処理(バンドパスフィルタ処理)し、そのフィルタ処理値の絶対値が時間窓積算処理される(ステップS6)。ついで、入力トルクの領域に変化がなくかつ所定時間が経過したか否か、あるいは入力トルクの領域に変化がなくかつ積算値Sが飽和したか否かが判断される(ステップS7)。
【0044】
このステップS7で否定的に判断された場合には、時間の経過を待ち、あるいは積算値Sが飽和するのを待つために、一旦、図1のルーチンを終了する。そして、所定時間が経過し、あるいは積算値Sが飽和することによりステップS7で肯定的に判断された場合には、エンジントルクの変動の中止指令が出力される(ステップS8)。その場合、点火時期の遅角によるエンジントルクの低下分がなくなるので、増大させたスロットル開度を戻すことになるが、その場合にもスロットル開度の変化に対するエンジントルクの応答遅れがあるから、その遅れを点火時期の遅角によって補償することが好ましい。すなわち、図2に示すように、スロットル開度をE時点から次第に低下させ始め、その後に遅角量を次第に戻す。
【0045】
図3に示すように、入力トルク(エンジントルク)に対して挟圧力が相対的に高く、マクロスリップ直前の状態からミクロスリップ側に大きく離れた動作状態であれば、滑り率が小さく、したがってエンジントルクを所定の振幅で変化させても前記積算値Sは、相対的に小さい値となる。これに対して挟圧力が相対的に低いことによりマクロスリップ直前に近い動作状態であれば、エンジントルクを変動させるとスリップ率およびその変化幅が大きくなるので、前記積算値Sが大きくなる。
【0046】
このように上記の積算値Sは、その時点に設定されているベルト挟圧力が、入力トルクに対して相対的に高いか、あるいは低いかを表すので、その積算値Sを利用して挟圧力が補正される(ステップS9)。その補正方法は必要に応じて各種の方法を採用でき、例えば
P=P0 +K・(SーS1 )
によって挟圧力を補正することができる。なお、Pは補正後の挟圧力、P0 は補正前の挟圧力、Kは定数、S1 は予め定めた基準値であり、変速比と平均入力トルクとをパラメータとしたマップ値として定めておくことができる。
【0047】
したがってこの式を使用すれば、補正前の挟圧力P0 が入力トルクに対して相対的に低いことにより積算値Sが大きい値となれば、補正後の挟圧力Pが高くなり、反対に補正前P0 の挟圧力が入力トルクに対して相対的に高いことにより積算値Sが小さくなった場合には、補正後の挟圧力Pが低くなる。こうして補正された挟圧力によってマップ値が更新(補正)される。その結果、入力トルクに対する挟圧力が適正化される。
【0048】
この発明に係る制御装置は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係を検出するために、挟圧力に替えて入力トルクを変化させるので、その変化の応答性が良好であり、そのため変化させた状態からの復帰の遅れやそれに起因する過剰な滑りなどを未然に防止することができる。また、周期的に変化させる場合には、制御応答性が高いので、周波数を高くすることができ、その結果、過剰な滑り状態に到ることを未然に回避できるだけでなく、車両のドライバビリティや乗り心地を悪化させることなく、挟圧力と入力トルクとの相互関係を検出することができる。
さらに、エンジントルクを周期的に変化させる場合、エンジントルクの平均値を所定値に維持するので、エンジントルクを変化させる前後での駆動トルクの変化が少なく、この点でもドライバビリティや乗り心地が悪化することがない。
【0049】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS5の機能的手段が、この発明の入力トルク変化手段に相当し、またステップS6およびステップS7の機能的手段が、この発明の滑り状態検出手段に相当する。なお、この「滑り状態」とは、上述した具体例から知られるように、挟圧力と入力トルクとの相互関係であり、さらに言い換えれば、滑りに到るまでに増大させ得る入力トルクのいわゆる余裕幅もしくはその有無、あるいは挟圧力についての同様の余裕幅もしくはその有無である。したがって上記の「滑り検出手段」は、挟圧力(もしくはトルク容量)と入力トルクとの相互関係検出手段、もしくは挟圧力(あるいは入力トルク)の余裕状態検出手段とも言い得る。
【0050】
さらにステップS5でのエンジントルク変動指令とともに、電子スロットルバルブを開くなどのエンジントルクの平均値の補償をおこなう手段が、請求項3における「動力源の出力トルクの平均値を所定値に維持する手段」に相当する。そして、図1に示すステップS9の機能的手段が、この発明のトルク伝達制御手段に相当する。
【0051】
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、この発明における伝動機構は、ベルト式無段変速機以外に、トロイダル型(トラクション式)無段変速機であってもよく、あるいは摩擦クラッチや摩擦ブレーキなどの摩擦係合装置であってもよい。また、この発明において伝動機構に対する入力トルクを変化させる手段は、上述した点火時期の遅角による手段に限らないのであって、例えば燃料噴射量を変化させる手段であってもよい。その場合、平均駆動トルクに変動が生じないように、燃料噴射量を増加させる。
【0052】
また、入力トルクを変動させる手段は、内燃機関とモータ・ジェネレータとを動力源とするハイブリッド車にあっては、そのモータ・ジェネレータの出力トルクを変化させる手段であってもよい。このような構成であれば、点火時期の周期的な変化とは異なり、動力源の出力トルクを増大するようにも変化させることができ、したがって前述したエンジントルクの平均値を維持するためのスロットル開度の増大制御などは特には必要なくなる。さらに上記の具体例では、回転速度の変化に基づいて滑りの状態を検出することとしたが、この発明では、これ以外に、変速比や変速比変化速度、ステックスリップに伴う油圧の変化などに基づいて滑りの状態を検出することとしてもよい。そしてまた、この発明では、入力トルクを周期的に変化させると同時に、その周期的に変化する入力トルクの平均値を変化させるように構成してもよく、このような構成であっても上述した具体例と同様の作用を生じる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、伝動機構での滑りの状態を検出する際に入力トルクを変化させ、その入力トルクを変化させる手段として制御応答性の高い手段を採用できるので、増大させた入力トルクを低下させる場合に時間がかからず、その結果、過剰な滑りを生じさせることなく、かつ安定的に滑りの状態を検出することができる。
【0054】
また、請求項2の発明によれば、動力源の出力トルクの周期的な変化に伴って伝動機構の入力トルクが周期的に変化し、その変化の過程において入力トルクが増大した時点に伝動機構に滑りもしくはその直前の状態が生じることがあるが、これは、入力トルクの周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後に入力トルクが低下するので、伝動機構が過剰な滑り状態に到ってしまうことを回避することができ、また、伝動機構の出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、出力側のトルクの変化を抑制もしくは防止することができる。
【0055】
さらに、請求項3の発明によれば、動力源の出力トルクを周期的に変化させる場合に、その出力トルクの平均値が所定値に維持されるため、出力トルクの周期的な変化による影響を抑制もしくは防止することができる。
【0056】
またさらに、請求項4の発明によれば、ベルトやローラを挟み付けてトルクを伝達する無段変速機などの伝動機構における滑りの状態を、過剰な滑りを生じさせることなく検出でき、またその検出のために入力トルクを変化させることによる影響を抑制もしくは防止することができる。
【0057】
そして、請求項5の発明によれば、入力トルクを変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により挟圧力などが制御されるため、伝動機構のトルク容量を適正化でき、あるいは過剰な滑りが生じることを未然に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】図1の制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図3】エンジントルク(入力トルク)と無段変速機での滑り率との関係を示す図である。
【図4】この発明で対象とする伝動機構を含む駆動系統の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)、 26…エンジン用電子制御装置(E/G−ECU)。
Claims (5)
- 動力源から出力されたトルクが入力される伝動機構の制御装置において、
前記伝動機構に対する入力トルクを変化させる入力トルク変化手段と、
入力トルクが変化されたことに伴う前記伝動機構の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする伝動機構の制御装置。 - 前記入力トルク変化手段は、前記動力源の出力トルクを周期的に変化させる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の伝動機構の制御装置。
- 前記入力トルク変化手段は、周期的に変化させられる前記動力源の出力トルクの平均値を所定値に維持する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の伝動機構の制御装置。
- 前記伝動機構が、トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する機構であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の伝動機構の制御装置。
- 前記滑り状態検出手段による検出結果に基づいて前記伝動機構を制御するトルク伝達制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の伝動機構の制御装置。
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