JP4178905B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、無段変速機の挟圧力を制御する制御装置に関し、特にニュートラル制御のおこなわれる駆動系統に介在された無段変速機の挟圧力を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無段変速機としてベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機が知られている。ベルト式無段変速機は、トルクの伝達を媒介するいわゆる伝動部材であるベルトのプーリーに対する巻き掛け半径を変更して、変速比を連続的(無段階)に変化させるように構成され、ベルトとプーリーとの間で生じる摩擦力によってトルクを伝達するように構成されている。したがってこの種の無段変速機での伝達トルクは、ベルトとプーリーとの接触圧力すなわちプーリーがベルトを挟み付ける挟圧力に応じたものとなる。
【0003】
また、トラクション式無段変速機は、互いに対向させた入力ディスクと出力ディスクとの間に、伝動部材としてのパワーローラを挟み込み、そのパワーローラが傾転することによるトルク伝達部位の半径を変化させて変速比を連続的(無段階)に変化させるように構成され、各ディスクとパワーローラとの間に介在させたトラクション油がガラス転移することによる大きいせん断力を利用してトルクを伝達するようになっている。したがってトラクション式無段変速機における伝達トルクは、各ディスクがパワーローラを挟み付けるいわゆる挟圧力に応じたものとなる。
【0004】
上述した各無段変速機におけるトルク伝達面の摩耗を避けるために、ベルトやパワーローラの滑りを可及的に回避する必要があり、そのためには、無段変速機で伝達するべきトルクより伝達トルクが大きくなるように前記挟圧力を設定すればよい。しかしながら、挟圧力がある程度以上に大きいと、動力の伝達効率が低下し、無段変速機を搭載している車両の燃費が悪化し、無段変速機を使用することによる利点が損なわれてしまう。そのため、従来一般には、無段変速機の挟圧力を、滑りが生じない範囲で可及的に低下させるように制御している。
【0005】
一方従来、無段変速機をニュートラル制御する装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。そのニュートラル制御とは、車両を停止させるための所定の条件が成立した場合に、駆動輪に連結されている出力軸を固定するブレーキ機構を動作させるとともに、トルクを伝達するクラッチを解放して変速機をニュートラル状態に設定する制御である。トルクコンバータを備えた変速機において上記のニュートラル制御を実行すれば、車両の停止状態をトルクコンバータでのクリープトルクによらずに、上記のブレーキ機構によって維持できるので、エンジンの出力を低減して燃費を向上させることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−166618号公報(段落『0001』ないし段落『0008』、図1ないし図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したニュートラル制御は車両が停止している状態で実行される。したがってニュートラル制御が実行される状態では、エンジンなどの動力源側から無段変速機に対してトルクが入力されることがあるとしても、出力側からトルクが入力されることはない。そのため、無段変速機に作用するトルクが急激に変化したり、トルク変化に起因する滑りが生じる可能性が殆どない。しかしながら、上記の文献に記載された装置では、無段変速機の挟圧力をニュートラル制御と関連させて制御していないので、無段変速機の挟圧力が相対的に高い状態に維持され、その挟圧力を発生させるために消費する動力が損失となり、車両の燃費が悪化する可能性があった。
【0008】
また、上記の文献に記載された発明は、ニュートラル制御と無段変速機の挟圧力の制御との関連性について考慮されていないので、挟圧力を更に適正化するために、ニュートラル制御と挟圧力とを関連させる制御を新たに開発する余地がある。
【0009】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の挟圧力をニュートラル制御に応じて(もしくは基づいて)適正化することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両を停止状態に維持しつつエンジンから伝達されるトルクを低下させるニュートラル制御が実行される駆動系統に介在され、かつプーリーがベルトを挟み付ける挟圧力あるいはディスクがパワーローラを挟み付ける挟圧力に基づいて伝達トルクが変化する無段変速機の制御装置において、前記ニュートラル制御の開始条件の成立した後の所定期間の間、前記挟圧力を前記ニュートラル制御の開始条件の成立した時点もしくはそれ以前の時点における圧力に維持し、その後に挟圧力を低下させる挟圧力制御手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、無段変速機を含む駆動系統での伝達トルク容量を低下させるニュートラル制御が実行されると、無段変速機の挟圧力が制御される。例えばニュートラル制御によって伝達トルク容量が低下することに合わせて、もしくは追従して無段変速機の挟圧力が低下させられる。その結果、挟圧力を発生させるために消費する動力が低減されて上記の駆動系統を備えた車両の燃費が改善され、また無段変速機での滑りが未然に防止もしくは抑制される。これに加えて、挟圧力を低下させる過渡状態で、ニュートラル制御に基づく伝達トルク容量の低下より遅れて挟圧力が低下させられるので、挟圧力が小さくなりすぎたり、それに伴って無段変速機に滑りが生じたりすることが未然に防止もしくは抑制される。
【0014】
さらに、請求項2の発明は、車両を停止状態に維持しつつエンジンから伝達されるトルクを低下させるニュートラル制御が実行される駆動系統に介在され、かつプーリーがベルトを挟み付ける挟圧力あるいはディスクがパワーローラを挟み付ける挟圧力に基づいて伝達トルクが変化する無段変速機の制御装置において、前記ニュートラル制御中に前記挟圧力を前記ニュートラル制御の開始前の圧力より低下させ、かつ前記挟圧力を前記ニュートラル制御の終了時に、前記ニュートラル制御の終了後に要求される圧力より高い圧力に一時的に増大させる挟圧力制御手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって請求項2の発明では、ニュートラル制御が実行されている状態では無段変速機の挟圧力が低下させられるので、上記の駆動系統を搭載した車両の燃費が改善され、これに加えて、ニュートラル制御の終了時の回転変化によって慣性トルクが無段変速機に作用する事態が発生しても、挟圧力の昇圧制御が実行されることにより、慣性トルクをも加えたトルクを伝達できるように無段変速機の挟圧力が設定され、その結果、無段変速機に過剰な滑りが生じることが未然に回避もしくは抑制される。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動系統の一例を説明すると、図3は、ベルト式無段変速機1を変速機として含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0017】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成され、要は、走行のための動力を発生する動力装置である。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0018】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0019】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図3に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0020】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリー13と従動プーリー14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリー13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリー13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリー13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリー13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0021】
なお、従動プーリー14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリー14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリー13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。
【0022】
無段変速機1の伝達トルク容量はこのベルト挟圧力に応じた容量となる。この挟圧力を設定する油圧、すなわち油圧アクチュエータ16における油圧を検出する油圧センサー24が設けられている。これに対して駆動プーリー13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0023】
上記の従動プーリー14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、ロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0024】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリー13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリー14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23などが設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0025】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいは二ュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0026】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサーから入力されている、また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0027】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0028】
一方、上記の変速機は、ニュートラル制御(N制御)を実行するように構成されている。このニュートラル制御は、車両が停止している場合に、車両を停止状態に維持するためのブレーキングをおこなうとともに、エンジン5を駆動系統から切り離す制御であり、所定の条件が成立することにより自動的に実行される。なお、そのブレーキングは、無段変速機1の出力軸などの適宜の回転軸に取り付けたギヤ(図示せず)にロックポール(図示せず)を係合させることにおこなわれる。またエンジン5を駆動系統から切り離す制御は、例えば前記前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12を解放させることにより、あるいはその伝達トルク容量を低下させることによりおこなわれる。
【0029】
上記の駆動系統を構成している無段変速機1を対象とするこの発明の制御装置は、ニュートラル制御と挟圧力制御とを以下に説明するように実行する。図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、先ず、走行レンジが設定され、かつ走行レンジを設定することに伴う処理が終了しているか否かが判断される(ステップS1)。
【0030】
ここで走行レンジとは、変速比の設定の形態であって、ニュートラルやパーキングなどの停車状態を設定するための非走行レンジ、後進走行するためのリバースレンジ、前進走行するためのドライブレンジ、エンジンブレーキを効かせることのできるブレーキレンジなどがあり、図示しないシフト装置を手動操作することによって選択するように構成されている。走行レンジとは、ドライブレンジやブレーキレンジあるいはリバースレンジであり、したがって走行レンジが選択された場合には、前述した前進用クラッチ11もしくは後進用ブレーキ12のいずれかが係合させられる。
【0031】
また、停止状態を設定するレンジから走行レンジに切り換えたことに伴う処理とは、一例として無段変速機1の挟圧力を走行時に必要とする挟圧力に昇圧する処理である。すなわち、停車状態では、無段変速機1がトルクを伝達する必要がないので、その挟圧力(伝達トルク容量)は小さい値に設定されており、これに対して走行時には無段変速機1がトルクを伝達するので、滑りを生じないように挟圧力が増大させられる。ステップS1では、その昇圧制御が完了しているか否かが判断される。
【0032】
ステップS1で肯定的に判断された場合には、車速Vがほぼゼロか否かが判断される(ステップS2)。これは、要は、車両が停止状態にあるか否かの判断であり、出力回転数No に基づいて判断することができる。したがってこのステップS2の判断は、出力回転数No が所定値以下か否かの判断であってもよく、車速Vが所定値以下か否かの判断であっもよい。
【0033】
車速VがほぼゼロであることによりステップS2で肯定的に判断された場合には、アイドル接点がオンか否かが判断される(ステップS3)。この判断は、要は、駆動要求量がゼロか否かの判断であり、したがってアクセル開度もしくはスロットル開度がほぼゼロか否かの判断に替えることができる。
【0034】
このステップS3で肯定的に判断された場合には、ブレーキ接点がオンか否かが判断される(ステップS4)。このブレーキ接点とは、ブレーキペダルを踏み込むなどの制動操作をおこなった場合に閉じる電気接点であって、一例としてブレーキランプを点灯させる接点である。
【0035】
したがってこのステップS4で肯定的に判断されれば、車両が停止した状態で駆動要求がなく、かつ停車状態を維持するための制動操作がおこなわれていることになる。この場合、フラグFについて判断される(ステップS5)。このフラグFは、ニュートラル制御が実行されている場合に“1”にセットされるフラグであり、したがって当初は、“F=0”の判断が成立し、ニュートラル制御が開始される(ステップS6)。したがって上記のステップS2およびステップS3ならびにステップS4は、ニュートラル制御の開始条件の成立を判断する判断ステップである。
【0036】
ニュートラル制御は、前述したように、車両を停止状態に維持しつつ、エンジン5を駆動系統から切り離す制御であって、無段変速機1の出力軸が固定されるとともに、前記前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12が解放させられる。そして、フラグFが“1”にセットされる(ステップS7)。この場合、前進走行レンジが選択されていた場合には、前進用クラッチ11の係合圧を所定圧までステップ的に低下させ、その後にその係合圧を徐々に低下(スィープダウン)させる。その後、ステップS8に進む。なお、既にニュートラル制御が実行されている場合には、ステップS5で“F=1”の判断が成立し、その場合は、直ちにステップS8に進む。
【0037】
ステップS8では、トルクコンバータ4での回転速度差が所定値以下か否かが判断される。すなわち、タービン回転数センサー21で検出されたタービン回転数とポンプインペラの回転数に等しいエンジン回転数との差が所定値以下か否かが判断される。前進レンジが設定されている状態では、前進用クラッチ11が係合しているから、トルクコンバータ4のタービンには、車両を停止状態に維持するための制動力が作用してその回転が止まっているが、エンジン5が回転しているので、トルクコンバータ4での回転数差が所定値以上になっている。
【0038】
これに対してニュートラル制御が実行されて前進用クラッチ11が解放されると、無段変速機1の入力軸もしくは駆動プーリー13とタービンランナーとの連結が解放され、タービンランナーに制動力が作用しなくなるので、タービンランナーが自由に回転できる状態になる。したがってニュートラル制御が開始されて正常な状態で実行されていれば、トルクコンバータ4におけるポンプインペラとタービンランナーとの回転数差がほぼゼロ程度に小さくなるので、ステップS8は、ニュートラル制御が開始された後、正常に実行されている状態になっていることを判断している。言い換えれば、ニュートラル制御が実行されることにより、無段変速機1に対してエンジン5側からトルクが入力されていないことを、ステップS8で判断している。
【0039】
したがってステップS8で否定的に判断された場合に、一旦このルーチンを抜けて、前記回転数差が所定値以下になるのを待つ。なお、このステップS8は、前進用クラッチ11を解放してトルクを伝達しなくなる状態を検出するためのものであるから、回転数差を判断する以外に、前進用クラッチ11の解放に要する時間の経過を判断することとしてもよい。あるいはタービン回転数の変化率が所定値以下になったことを判断することとしてもよい。
【0040】
これに対してステップS8で肯定的に判断された場合には、無段変速機1での挟圧力をスィープダウン(徐々に低下)させる(ステップS9)。その場合、設定するべき挟圧力は、下記の▲1▼式もしくは▲2▼式で求められる値(クラッチトルク)をベルト負荷(入力)トルクとして計算されるが、過渡的にタービンランナーの回転数が急変してそのイナーシャ項が大きい値になり、その結果、計算上では挟圧力が高くなるので、これを無視してもよい。
【0041】
(Te −Ie ・△ωe )×t−It ・ωt …▲1▼式
C・Ne 2×t−It ・ωt …▲2▼式
ここで、Te はエンジントルク、Ie はエンジン5の慣性モーメント、△ωe はエンジン5の回転加速度、tはトルクコンバータ4でのトルク比、It はタービンランナーの慣性モーメント、ωt はタービンランナーの回転加速度である。
【0042】
さらに、前進用クラッチ11の伝達トルク(係合圧)を、前記回転速度差が前記ステップS8でのしきい値である所定値より小さい第2の所定値となるように、回転速度に基づいてフィードバック(FB)制御する(ステップS10)。
【0043】
一方、走行レンジが選択されていないことにより、あるいは停止レンジから走行レンジヘの切り換えに伴う処理が完了していないことにより、ステップS1で否定的に判断された場合、無段変速機1の挟圧力および前進用クラッチ11の伝達トルク(係合圧)はその時点の車両の状況に応じて制御され、またニュートラル制御が実行されていた場合には、そのニュートラル制御が終了される(ステップS11)。その後、フラグFがゼロリセット(ステップS12)されてこのルーチンを終了する。
【0044】
また、車速VがほぼゼロでないことによりステップS2で否定的に判断された場合、アイドル接点がオンでないことによりステップS3で否定的に判断された場合、およびブレーキ接点がオンでないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、直ちに、無段変速機1の挟圧力を増大させる(ステップS13)。また、ニュートラル制御を中止する(ステップS14)。
【0045】
具体的には、前進用クラッチ11の伝達トルク(係合圧)のフィードバック制御を中止し、かつスィープアップさせる。また、無段変速機1の挟圧力は、前進用クラッチ11が係合することによる負荷トルクを上回るように設定する。すなわち、前進用クラッチ11における伝達トルクのスィープアップの態様は電子制御装置25で判定できるので、その伝達トルクの増大に伴うベルト負荷トルクを上回るように、挟圧力をスィープアップさせ、あるいはステップアップ後にスィープアップさせる。
【0046】
なお、無段変速機1に対する入力トルクは、前述したいずれかの式で計算されるクラッチトルクと入力側の慣性トルクとに基づいて計算される。挟圧力は、基本的には、その入力トルクに基づいて求めた基本挟圧力(油圧)に所定の安全率を乗じて求めるが、慣性トルクの検知遅れがあった場合には、挟圧力が相対的に小さくなって無段変速機1での滑りが生じる可能性があるので、演算に使用する入力トルク値を大きめに設定したり、あるいは安全率を大きめに設定することにより、挟圧力を過渡的に増大させる。
【0047】
ついで、フラグFをゼロリセット(ステップS15)し、さらに前進用クラッチ11での滑りが終了した後、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS16)。このステップS16で否定的に判断された場合には、その所定時間が経過するのを待つために、一旦、このルーチンを抜け、ステップS16で肯定的に判断された後に、前進用クラッチ11の伝達トルク(係合圧)を入力トルクに応じた値に増大させ、かつ挟圧力を入力トルクに応じた通常のレベルに復帰させる(ステップS17)。
【0048】
上記の制御をおこなった場合のタイムチャートを図2に示してある。アクセルペダルを戻して車速Vがほぼゼロになっている状態でブレーキ接点がオンなると、ニュートラル制御の開始条件が成立し(A時点)、前進用クラッチ11の係合圧が低下させられる。それに伴ってエンジン5の出力軸に掛かるトルクが低下するので、その後のB時点にエンジン回転数が僅か上昇する。すなわちトルクコンバータ4のタービンランナーが回転し始めるが、その回転速度が遅いために、B時点より僅か遅れたC時点にタービン回転数が検出される。
【0049】
そして、トルクコンバータ4の入出力回転数差であるエンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との差が、所定値以下になると(D時点)、無段変速機1の挟圧力がスィープダウンさせられる。すなわち、クラッチトルクを先に低下させて、無段変速機1に対する入力トルクが低下したことを検出した後に、挟圧力が低下させられるので、挟圧力が入力トルクに対して相対的に低くなる事態が回避され、その結果、無段変速機1での滑りが防止される。
【0050】
その後、例えばブレーキペダルが解放されてブレーキ接点がオフとなることにより、ニュートラル制御の終了条件が成立(E時点)すると、前進用クラッチ11の伝達トルク(係合圧)がスィープアップさせられるとともに、挟圧力が通常レベルより大きいレベルにまで増大させられる。前進用クラッチ11の係合圧が次第に増大することにより、タービン回転数Nt が次第に低下し、ついには停止したことが検出される(F時点)。このタービン回転数を例えばパルス信号に基づいて検出している場合、回転数がある程度以下に低下した場合には、検出値がゼロになるが、その時点では未だゆっくり回転していることがある。そこで、滑りがゼロになったことが検出された時点から所定時間が経過したG時点に、前進用クラッチのトルクが増大させられる。また、これと併せて、挟圧力が通常レベルにまで復帰させられる。
【0051】
したがって、ニュートラル制御を終了する場合、無段変速機1の挟圧力を増大させた状態で、クラッチのトルク(係合圧)を増大させるので、クラッチが係合することに伴って入力トルクが増大しても、挟圧力が既に大きくなっているので、無段変速機1に滑りが生じることはない。また、挟圧力の増大量(アップレベル)を通常レベルより大きくし、回転変化に伴う慣性トルクを考慮した挟圧力としてあるので、この点でも無段変速機1の滑りが未然に防止される。
【0052】
そして、上述した制御をおこなうこの発明の制御装置によれば、ニュートラル制御によって無段変速機1に入力されるトルクが低下させられる場合には、挟圧力を低下させるので、挟圧力を発生させるために消費する動力を削減でき、それに伴って車両の燃費を向上させることができる。
【0053】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS9,S13,S17の制御をおこなう機能的手段が、この発明の挟圧力制御手段に相当する。
【0054】
なお、この発明は上記の具体例に限定されない。例えば、この発明で対象とする無段変速機は、ベルト式無段変速機以外にトラクション式無段変速機であってもよい。また、ニュートラル制御によって駆動系統の伝達トルク容量を低下させる手段は、上述した前進用クラッチや後進用ブレーキに限らないのであって、要は、動力源と無段変速機との間で伝達されるトルクを低下させる手段であればよく、例えばいわゆる発進クラッチであってもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、無段変速機を含む駆動系統での伝達トルク容量を低下させるニュートラル制御が実行されると、無段変速機の挟圧力が制御され、例えばニュートラル制御によって伝達トルク容量が低下することに合わせて、もしくは追従して無段変速機の挟圧力が低下させられるので、挟圧力を発生させるために消費する動力が低減されて上記の駆動系統を備えた車両の燃費が改善され、また無段変速機での滑りを未然に防止もしくは抑制することができる。これに加えて、挟圧力を低下させる過渡状態で、ニュートラル制御に基づく伝達トルク容量の低下より遅れて挟圧力が低下させられるので、挟圧力が小さくなりすぎたり、それに伴って無段変速機に滑りが生じたりすることを未然に防止もしくは抑制することができる。
【0057】
さらに、請求項2の発明によれば、ニュートラル制御が実行されている状態では無段変速機の挟圧力が低下させられるので、上記の駆動系統を搭載した車両の燃費を改善でき、これに加えて、ニュートラル制御の終了時の回転変化によって慣性トルクが無段変速機に作用する事態が発生しても、挟圧力の昇圧制御が実行されることにより、慣性トルクをも加えたトルクを伝達できるように無段変速機の挟圧力が設定され、その結果、無段変速機に過剰な滑りが生じることを未然に回避もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 その制御を実行した場合の各回転速度や挟圧力、クラッチトルクなどの変化の一例を示すタイムチャートである。
【図3】 この発明で対象とする駆動系統の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン、 11…前進用クラッチ、 17…ベルト、 25…変速機用電子制御装置。
Claims (2)
- 車両を停止状態に維持しつつエンジンから伝達されるトルクを低下させるニュートラル制御が実行される駆動系統に介在され、かつプーリーがベルトを挟み付ける挟圧力あるいはディスクがパワーローラを挟み付ける挟圧力に基づいて伝達トルクが変化する無段変速機の制御装置において、
前記ニュートラル制御の開始条件の成立した後の所定期間の間、前記挟圧力を前記ニュートラル制御の開始条件の成立した時点もしくはそれ以前の時点における圧力に維持し、その後に挟圧力を低下させる挟圧力制御手段を備えていることを特徴とする無段変速機の制御装置。 - 車両を停止状態に維持しつつエンジンから伝達されるトルクを低下させるニュートラル制御が実行される駆動系統に介在され、かつプーリーがベルトを挟み付ける挟圧力あるいはディスクがパワーローラを挟み付ける挟圧力に基づいて伝達トルクが変化する無段変速機の制御装置において、
前記ニュートラル制御中に前記挟圧力を前記ニュートラル制御の開始前の圧力より低下させ、かつ前記挟圧力を前記ニュートラル制御の終了時に、前記ニュートラル制御の終了後に要求される圧力より高い圧力に一時的に増大させる挟圧力制御手段を備えていることを特徴とする無段変速機の制御装置。
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