本発明の一実施形態において、前記第1情報は、前記車両で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数である。このため、前記油圧上昇制御が実行されると前記車両で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数が増えて、前記算出部で算出される前記ベルトの寿命に関連する値が低下する。
また、本発明の一実施形態において、(a)前記油圧上昇制御は、前記車両とは別の他の車両から受信した、前記無段変速機のベルトの滑りが発生し易い地域に関するベルト滑り情報を用いて、前記ベルトの滑りが発生し易い地域では前記ベルトの滑りが発生し難い地域と比べて前記車両で前記ベルト挟圧力を上昇させる制御であり、(b)前記記憶部は、前記他の車両が前記無段変速機のベルトの滑りが発生し易い地域で実行した前記油圧上昇制御に関連する第2情報を記憶し、(c)前記算出部では、前記記憶部に記憶された前記第1情報および前記第2情報に基づいて、前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値を推定しており、(d)前記算出部で推定された、前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値が所定値未満の場合には、前記ベルト滑り防止制御部による前記油圧上昇制御の実行を禁止する。このため、前記記憶部に記憶された前記第1情報および前記第2情報に基づいて前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値が前記算出部によって推定され、その推定された、前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値が所定値未満の場合には、前記ベルト滑り防止制御部による前記油圧上昇制御の実施が禁止されるので、前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値が所定値未満になることが防止されて、前記無段変速機のベルトの耐久性が好適に維持させられる。
また、本発明の一実施形態において、前記第1情報は、前記車両で過去に前記油圧上昇制御を実行した時間の合計である。このため、前記油圧上昇制御が実行されると前記車両で過去に前記油圧上昇制御を実行した時間の合計が増えて、前記算出部で推定される前記ベルトの寿命に関連する値が低下する。
また、本発明の一実施形態において、前記第2情報は、前記他の車両で過去に前記無段変速機のベルトの滑りが発生し易い地域で実行した前記油圧上昇制御の時間である。このため、前記他の車両で過去に前記無段変速機のベルトの滑りが発生し易い地域で実行した前記油圧上昇制御の時間を用いて、前記車両で前記油圧上昇制御を実行した後の前記ベルトの寿命に関連する値を好適に推定することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源として機能するエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。動力伝達装置16は、非回転部材としてのケース18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20と、トルクコンバータ20に連結されたタービン軸22と、タービン軸22に連結された前後進切替装置24と、前後進切替装置24に連結された入力軸26と、入力軸26に連結されたベルト式の無段変速機28と、無段変速機28に連結された出力軸30と、減速歯車装置32と、差動歯車装置34等とを備えている。このように構成された動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ20、前後進切替装置24、無段変速機28、減速歯車装置32、差動歯車装置34等を順次介して、左右の駆動輪14へ伝達される。
トルクコンバータ20は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、及びタービン軸22に連結されたタービン翼車20tを備えている。動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pに連結された機械式のオイルポンプ38を備えている。オイルポンプ38は、エンジン12により回転駆動されることにより、無段変速機28を変速制御したり、無段変速機28におけるベルト挟圧力を発生させたりする為の作動油圧の元圧を、車両10に備えられた油圧制御回路40へ供給する。
無段変速機28は、入力軸26に連結された入力側部材である有効径が可変のプライマリプーリ50と、出力軸30に連結された出力側部材である有効径が可変のセカンダリプーリ52と、それらプライマリプーリ50とセカンダリプーリ52との間に巻き掛けられた伝達要素としての伝動ベルト(ベルト)54とを備えており、プライマリプーリ50およびセカンダリプーリ52と伝動ベルト54との間の摩擦力(ベルト挟圧力ともいう)を介して動力伝達が行われ、エンジン12の動力を駆動輪14側へ伝達する。
プライマリプーリ50は、入力軸26に連結された固定シーブ50aと、固定シーブ50aに対して入力軸26の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ50bと、それら固定シーブ50aと可動シーブ50bとの間のV溝幅を変更する為のプライマリプーリ50におけるプライマリ推力Win(=プライマリ圧Pin×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータ50cとを備えている。また、セカンダリプーリ52は、出力軸30に連結された固定シーブ52aと、固定シーブ52aに対して出力軸30の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ52bと、それら固定シーブ52aと可動シーブ52bとの間のV溝幅を変更する為のセカンダリプーリ52におけるセカンダリ推力Wout(=セカンダリ圧Pout×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータ52cとを備えている。プライマリ圧Pinは、油圧制御回路40によって油圧アクチュエータ50cへ供給される油圧であり、セカンダリ圧Poutは、油圧制御回路40によって油圧アクチュエータ52cへ供給される油圧である。プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧outは、それぞれ、可動シーブ50b、52bを固定シーブ50a、52a側へ押圧する推力Win、Woutを付与するプーリ油圧である。
無段変速機28では、後述する電子制御装置(制御装置)60により駆動される油圧制御回路40によってプライマリ圧Pin及びセカンダリ圧Poutが各々調圧制御されることにより、プライマリ推力Win及びセカンダリ推力Woutが各々制御される。これにより、それぞれのプライマリプーリ50とセカンダリプーリ52とのV溝幅が変化して伝動ベルト54の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が変化させられると共に、伝動ベルト54が滑りを生じないようにプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ52と伝動ベルト54との間の摩擦力(つまりベルト挟圧力)が制御される。つまり、プライマリ圧Pin(プライマリ推力Winも同意)及びセカンダリ圧Pout(セカンダリ推力Woutも同意)が各々制御されることで、伝動ベルト54の滑りが防止されつつ実変速比γが目標変速比γtgtとされる。ベルト挟圧力は、無段変速機28における伝動ベルト54のトルク容量であるベルトトルク容量Tcvtである。
図1に示すように、車両10は、無段変速機28などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置60を備えている。電子制御装置60は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置60は、無段変速機28のベルト挟圧力制御を含む変速制御等を実行するようになっている。
電子制御装置60には、車両10に設けられた各センサにより検出された各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、車速センサ62により検出される車速V(km/h)を表す信号と、アクセル操作量センサ64により検出されるアクセル操作量θacc(%)を表す信号と、GPSアンテナなどを含む位置センサ66からのGPS信号等により示される地表又は地図上における車両10の位置情報Svpを表す信号等と、が電子制御装置60に入力される。
また、電子制御装置60から、車両10に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。例えば、無段変速機28の変速やベルト挟圧力等に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号Scvt等が電子制御装置60から各部へ供給される。
図1の変速制御部70は、無段変速機28の伝達ベルト54の滑り(ベルト滑り)が発生しないようにしつつ無段変速機28の目標変速比γtgtを達成するように、無段変速機28の変速比γ及びベルトトルク容量Tcvt(つまりベルト挟圧力)を制御する変速制御を実行する。具体的には、変速制御部70は、予め定められた関係(例えば変速マップ、ベルト挟圧力マップ(ベルトトルク容量マップ))にアクセル操作量θacc及び車速Vを適用することで、無段変速機28のベルト滑りが発生しないようにしつつエンジン12の動作点が所定の最適ライン(例えばエンジン最適燃費線)上となる無段変速機28の目標変速比γtgtを達成する為のプライマリ圧Pin及びセカンダリ圧Poutの各油圧指令(油圧制御指令信号Scvt)を決定し、それら各油圧指令を油圧制御回路40へ出力する。
油圧上昇実行条件成立判定部72は、前述した変速制御部70で実行される変速制御の実行中において、後述する油圧上昇制御部(ベルト滑り防止制御部)74で実行される油圧上昇制御を実行する条件が成立したか否かを判定する。例えば、油圧上昇実行条件成立判定部72では、ナビゲーションシステムに予め記憶された、例えば、○○高速道路、○○自動車道、○○有料道路、国道○○号、県道○○号、市街地などの走行路情報を含んだ地図情報において、無段変速機28の伝達ベルト54に滑りが生じ易い悪路でない、例えば○○高速道路、○○自動車道、○○有料道路、国道○○号、県道○○号、市街地などの凹凸のない舗装道路に車両10が位置する場合には、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立してないと判定する。また、油圧上昇実行条件成立判定部72では、前記悪路例えば凹凸のある未舗装の走行路に車両10が位置する場合には、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定する。なお、油圧上昇実行条件成立判定部72では、予め設定された一定距離例えば100mから500m先の車両10の走行路が前記悪路に位置する場合でも、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定するようになっている。
記憶部76は、車両10が過去に油圧上昇制御部74によって油圧上昇制御を実行したことに関連する第1情報I1を記憶している。なお、第1情報I1は、例えば、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kや、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した時間の合計時間T(sec)等である。
油圧上昇制御部74は、油圧上昇実行条件成立判定部72で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定すると、後述する油圧上昇制御禁止判定部78で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定しない場合に、無段変速機28の伝動ベルト54の滑りを抑制するために、一時的に無段変速機28のベルト挟圧力すなわちベルトトルク容量Tcvtを前記変速制御が実行されている時におけるベルトトルク容量Tcvtよりも予め設定された所定値分だけ上昇させる油圧上昇制御を実行する。なお、油圧上昇制御部74では、油圧上昇実行条件成立判定部72で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定しても、油圧上昇制御禁止判定部78で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定する場合には、前記油圧上昇制御の実行を禁止する。
ベルト寿命算出部(算出部)80は、油圧上昇実行条件成立判定部72で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定すると、記憶部76に記憶された第1情報I1に基づいて伝動ベルト54の寿命に関連する値すなわち伝動ベルト54の寿命余裕率Lを算出する。なお、上記寿命余裕率Lとは、例えば、伝動ベルト54の強度を十分に満たした状態で実際に伝動ベルト54を使用することのできる使用可能期間T1を、例えば製造業者等が予め設定した伝動ベルト54を使用することのできる使用可能期間T2で割った値(T1/T2)であり、上記寿命余裕率が1より小さくなると、伝動ベルト54を製造業者が設定した使用期間T2よりも早く交換する必要性がある。例えば、ベルト寿命算出部80では、記憶部76に記憶された第1情報I1すなわち車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kから、予め設定された第1寿命余裕率変換マップ(図2参照)を用いて寿命余裕率Lを算出する。
油圧上昇制御禁止判定部78は、油圧上昇実行条件成立判定部72で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定し、且つ、ベルト寿命算出部80で寿命余裕率Lが算出されると、ベルト寿命算出部80で算出された寿命余裕率Lに基づいて油圧上昇制御部74で実行される前記油圧上昇制御の実行を禁止するか否かを判定する。例えば、油圧上昇制御禁止判定部78では、ベルト寿命算出部80で算出された寿命余裕率Lが所定値V1(本実施例では所定値V1は1)未満の場合には前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定する。また、油圧上昇制御禁止判定部78では、ベルト寿命算出部80で算出された寿命余裕率Lが所定値V1以上の場合には前記油圧上昇制御の実行を禁止しないと判定する。また、油圧上昇制御禁止判定部78では、ベルト寿命算出部80で寿命余裕率Lが算出されない場合、すなわち油圧上昇制御部74で実行する前記油圧上昇制御が初めてであり記憶部76に過去に前記油圧上昇制御を実行したことに関連する第1情報I1が記憶されていない場合には、前記油圧上昇制御の実行を禁止しないと判定する。
記憶部76は、油圧上昇制御部74で前記油圧上昇制御が実行されてその後前記油圧上昇制御が終了すると、記憶部76に記憶されていた第1情報I1を更新する。例えば、記憶部76では、油圧上昇制御部74で前記油圧上昇制御が実行されてその後前記油圧上昇制御が終了すると、記憶部76に記憶されていた過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kを一回分だけ増やし、記憶部76に記憶されていた過去に前記油圧上昇制御を実行した合計時間Tを、今回油圧上昇制御部74で前記油圧上昇制御を実行した時間TA分だけ増やす。
図3は、電子制御装置60において、油圧上昇実行条件成立判定部72で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立した時における前記油圧上昇制御部74での機能の一例を説明するフローチャートである。
先ず、油圧上昇制御禁止判定部78の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、記憶部76において過去に前記油圧上昇制御を実行したことに関連する第1情報I1、すなわち過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kが記憶されているか否かが判定される。S1の判定が肯定される場合には、ベルト寿命算出部80の機能に対応するS2が実行されるが、S1の判定が否定される場合には、油圧上昇制御部74の機能に対応するS3が実行される。S2では、過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kから図2に示す前記第1寿命余裕率変換マップを用いて伝動ベルト54の寿命余裕率Lが算出される。S3では、前記油圧上昇制御が実行される。
次に、油圧上昇制御禁止判定部78の機能に対応するS4において、上記S2で算出された寿命余裕率Lが所定値V1以上すなわち1以上であるか否かが判定される。S4の判定が肯定される場合すなわち寿命余裕率Lが1以上である場合には、上記S3が実行されるが、S4の判定が否定される場合すなわち寿命余裕率Lが1未満である場合には、油圧上昇制御部74の機能に対応するS5が実行される。S5では、前記油圧上昇制御の実行が禁止される。
上述のように、本実施例の車両10の電子制御装置60によれば、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行したことに関連する第1情報I1を記憶する記憶部76と、記憶部76に記憶された第1情報I1に基づいて伝動ベルト54の寿命に関連する値すなわち伝動ベルト54の寿命余裕率Lを算出するベルト寿命算出部80とを備え、ベルト寿命算出部80で算出された伝動ベルト54の寿命余裕率Lが所定値V1すなわち1未満の場合には、油圧上昇制御部74による前記油圧上昇制御の実行を禁止する。このため、記憶部76に記憶された第1情報I1に基づいて伝動ベルト54の寿命余裕率Lがベルト寿命算出部80によって算出され、その算出された伝動ベルト54の寿命余裕率Lが所定値V1未満の場合には、油圧上昇制御部74による前記油圧上昇制御の実施が禁止されるので、伝動ベルト54の寿命余裕率Lが所定値V1未満になることが防止されて、無段変速機28の伝動ベルト54の耐久性が好適に維持させられる。
また、本実施例の車両10の電子制御装置60によれば、第1情報I1は、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kである。このため、前記油圧上昇制御が実行されると車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数Kが増えて、ベルト寿命算出部80で算出される伝動ベルト54の寿命余裕率Lが低下する。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、前述の実施例1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図4から図6は、本発明の他の実施例の車両10の電子制御装置(制御装置)90を説明する図である。本実施例の車両10の電子制御装置90は、実施例1の車両10の電子制御装置60に比較して、車両10に送受信機92が備えられている点と、送受信機90から受信される車両10とは別の他の車両94からの情報に基づいて前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したか否かを判定する点等と、で相違しており、その他は実施例1と略同じである。
図4に示すように、送受信機92は、車両10とは別に存在する、車両10とは別の車外装置としてのセンター96と通信する機器である。電子制御装置90は、センター96との間で、送受信機92を介して各種情報を送受信する。センター96は、サーバとしての機能を有しており、各種情報を、受け付けたり、処理したり、蓄積したり、提供したりする。センター96は、車両10との間でと同様に、車両10とは別の他の車両94a、94b、・・・(以下、他の車両94という)との間で、各種情報を送受信する。他の車両94は、基本的には車両10と同様の機能を有している。
図4の情報処理部98は、例えばイグニッションオンのような車両10の電源オン後に、必要に応じて、センター96が有するベルト滑りのハザードマップMAPbeltを送受信機92を介してセンター96から受信する。なお、上記ハザードマップMAPbeltは、過去に他の車両94において無段変速機28のベルト滑りが発生したか或いはベルト滑り防止のために油圧上昇制御を実行した複数のハザードエリアA1、A2、・・・(以下、ハザードエリアAという)が示された地図情報であり、無段変速機28のベルト滑りが発生し易い地域に関するベルト滑り情報である。
油圧上昇実行条件成立判定部100は、前述した変速制御部70で実行される変速制御の実行中において、後述する油圧上昇制御部(ベルト滑り防止制御部)102で実行される油圧上昇制御を実行する条件が成立したか否かを判定する。例えば、油圧上昇実行条件成立判定部100では、送受信機92を介してセンター96から受信したハザードマップMAPbeltにおいて、車両10がハザードマップMAPbeltのハザードエリアAに位置していない場合には、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立してないと判定する。また、油圧上昇実行条件成立判定部100では、ハザードマップMAPbeltにおいて車両10がハザードマップMAPbeltのハザードエリアAに位置している場合には、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立していると判定する。なお、油圧上昇実行条件成立判定部100では、予め設定された一定距離例えば100mから500m先の車両10の走行路にハザードエリアAがある場合でも、前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定するようになっている。
情報処理部98は、例えば車両10がハザードエリアA1に位置し油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定すると、他の車両94が過去にハザードマップMAPbeltのハザードエリアA1を通過した際の走行データ、例えば過去に他の車両94がハザードエリアA1を通過した際に前記油圧上昇制御を実行したか否かを示す情報や他の車両94がハザードエリアA1で実行した前記油圧上昇制御の時間TB(sec)を示す第2情報I2等をセンター96から受信して、その走行データの中から現在から所定期間内の走行データを選択しその選択した走行データの最新データを記憶部76に記憶する。
油圧上昇制御部102は、油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定すると、後述する油圧上昇制御禁止判定部104で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定しない場合に、無段変速機28の伝動ベルト54の滑りを抑制するために、一時的に無段変速機28のベルト挟圧力すなわちベルトトルク容量Tcvtを前記変速制御が実行されている時におけるベルトトルク容量Tcvtよりも予め設定された所定値分だけ上昇させる油圧上昇制御を実行する。すなわち、上記油圧上昇制御は、ハザードマップMAPbeltを用いて、無段変速機28のベルト滑りが発生し易い地域すなわちハザードエリアAでは無段変速機28のベルト滑りが発生し難い地域すなわちハザードエリアA以外のエリアと比べて、ベルト挟圧力すなわちベルトトルク容量Tcvtを上昇させる制御である。なお、油圧上昇制御部102では、油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定しても、油圧上昇制御禁止判定部104で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定する場合には、前記油圧上昇制御の実行を禁止する。
ベルト寿命算出部(算出部)106は、油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定すると、記憶部76に記憶された第1情報I1および第2情報I2に基づいて、車両10で例えばハザードエリアA1を通過するときに前記油圧上昇制御を実行した後の伝動ベルト54の寿命に関連する値すなわち伝動ベルト54の寿命余裕率Lを推定する。例えば、ベルト寿命算出部106では、記憶部76に記憶された第1情報I1すなわち車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した時間の合計時間T(sec)と、記憶部76に記憶された第2情報I2すなわち他の車両94で過去にハザードエリアA1で実行した前記油圧上昇制御の時間TBとを足した推定合計時間Tg(T+TB)(sec)から、予め設定された第2寿命余裕率変換マップ(図5参照)を用いて寿命余裕率Lを推定する。なお、ベルト寿命算出部106では、例えば情報処理部98で受信した前記走行データの中に現在から所定期間内に他の車両94がハザードエリアA1を走行した走行データがなく、記憶部76に前記走行データが記憶されていない場合には、記憶部76に記憶された第1情報I1すなわち車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した時間の合計時間T(sec)から、前記第2寿命余裕率変換マップを用いて寿命余裕率Lを算出する。
油圧上昇制御禁止判定部104は、油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立したと判定し、且つ、ベルト寿命算出部106で寿命余裕率Lが算出されると、ベルト寿命算出部106で推定された寿命余裕率Lに基づいて車両10で実行される前記油圧上昇制御の実行を禁止するか否かを判定する。例えば、油圧上昇制御禁止判定部100では、ベルト寿命算出部106で推定された寿命余裕率Lが所定値V1(本実施例では所定値V1は1)未満の場合には車両10で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定する。また、油圧上昇制御禁止判定部100では、ベルト寿命算出部106で推定された寿命余裕率Lが所定値V1以上の場合には車両10で前記油圧上昇制御の実行を禁止しないと判定する。また、油圧上昇制御禁止判定部100では、情報処理部98によって記憶部76に記憶された最新の走行データが、過去に他の車両94がハザードエリアA1を通過した際に前記油圧上昇制御を実行していない走行データである場合には、車両10で前記油圧上昇制御の実行を禁止すると判定する。
図6は、電子制御装置90において、油圧上昇実行条件成立判定部100で前記油圧上昇制御を実行する条件が成立した時における油圧上昇制御部102での機能の一例を説明するフローチャートである。
先ず、油圧上昇制御禁止判定部104の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S11において、情報処理部98によって記憶部76に記憶された最新の走行データが、過去に他の車両94がハザードエリアA1を通過した際に前記油圧上昇制御を実行した走行データであるか否かが判定される。S11の判定が肯定される場合、すなわち前記最新の走行データがハザードエリアA1を通過した際に前記油圧上昇制御を実行した走行データである場合には、ベルト寿命算出部106の機能に対応するS12が実行されるが、S11の判定が否定される場合、すなわち前記最新の走行データがハザードエリアA1を通過した際に前記油圧上昇制御を実行しなかった走行データである場合には、油圧上昇制御部102の機能に対応するS13が実行される。S12では、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した合計時間T(sec)と、他の車両94が過去にハザードエリアA1で実行した前記油圧上昇制御の時間TBとを足した推定合計時間Tg(T+TB)(sec)から、図5に示す前記第2寿命余裕率変換マップを用いて伝動ベルト54の寿命余裕率Lが推定される。S13では、前記油圧上昇制御の実行が禁止される。
次に、油圧上昇制御禁止判定部104の機能に対応するS14において、上記S12で推定された寿命余裕率Lが所定値V1以上すなわち1以上であるか否かが判定される。S14の判定が否定される場合すなわち寿命余裕率Lが1未満である場合には、上記S13が実行されるが、S14の判定が肯定される場合すなわち寿命余裕率Lが1以上である場合には、油圧上昇制御部102の機能に対応するS15が実行される。S15では、前記油圧上昇制御が実行される。
上述のように、本実施例の車両10の電子制御装置90によれば、前記油圧上昇制御は、ハザードマップMAPbeltを用いて、ハザードエリアAではハザードエリアA以外のエリアと比べて車両10でベルトトルク容量Tcvtを上昇させる制御であり、記憶部76は、他の車両94がハザードエリアAで実行した前記油圧上昇制御に関連する第2情報I2を記憶し、ベルト寿命算出部106では、記憶部76に記憶された第1情報I1および第2情報I2に基づいて、車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lを推定しており、ベルト寿命算出部106で推定された、車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lが所定値V1未満の場合には、油圧上昇制御部102による前記油圧上昇制御の実行を禁止する。このため、記憶部76に記憶された第1情報I1および第2情報I2に基づいて車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lがベルト寿命算出部106によって推定され、その推定された、車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lが所定値V1未満の場合には、油圧上昇制御部102による前記油圧上昇制御の実施が禁止されるので、車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lが所定値V1未満になることが防止されて、無段変速機28の伝動ベルト54の耐久性が好適に維持させられる。
また、本実施例の車両10の電子制御装置90によれば、第1情報I1は、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した合計時間Tである。このため、前記油圧上昇制御が実行されると車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した合計時間Tが増えて、ベルト寿命算出部106で推定される寿命余裕率Lが低下する。
また、本実施例の車両10の電子制御装置90によれば、第2情報I2は、他の車両94で過去にハザードエリアAで実行した前記油圧上昇制御の時間TBである。このため、他の車両94で過去にハザードエリアAで実行した前記油圧上昇制御の時間TBを用いて、車両10で前記油圧上昇制御を実行した後の寿命余裕率Lを好適に推定することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、ベルト寿命算出部80、106では、例えば、車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した回数K、または車両10で過去に前記油圧上昇制御を実行した合計時間Tを用いて、寿命余裕率Lを算出していたが、前記油圧上昇制御を実行した回数K、前記油圧上昇制御を実行した合計時間T以外から寿命余裕率Lを算出しても良い。例えば、前記油圧上昇制御を実行している時のベルト挟圧力すなわちベルトトルク容量Tcvtの積分値を用いて寿命余裕率Lを算出しても良い。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。