以下、本発明に係る「車両の制御装置」の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る「車両の制御装置」が搭載される車両の一例を示す概略構成図である。この車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両であって、走行用動力源であるエンジン(内燃機関)1、流体伝動装置としてのトルクコンバータ2、前後進切替装置3、ベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)4、減速歯車装置5、差動歯車装置51、及び、ECU8等が搭載されている。
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11は、トルクコンバータ2に連結されており、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2から前後進切替装置3、ベルト式無段変速機4及び減速歯車装置5を介して差動歯車装置51に伝達され、左右の駆動輪7へ分配される。これらエンジン1、トルクコンバータ2、前後進切替装置3、ベルト式無段変速機4、及び、ECU8の各部について以下に説明する。
−エンジン−
エンジン1は、例えば多気筒ガソリンエンジンである。エンジン1に吸入される吸入空気量は電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。スロットルバルブ12は運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ102によって検出される。また、エンジン1の冷却水温は水温センサ103によって検出される。
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU8によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ101によって検出されるエンジン回転数Ne、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル操作量)Acc等のエンジン1の運転状態に応じた適正な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より詳細には、スロットル開度センサ102を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、検出された実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、入力側のポンプインペラ21、出力側のタービンランナ22、及び、トルク増幅機能を発現するステータ23等を備えており、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間で流体(作動油)を介して動力伝達を行う。ポンプインペラ21は、エンジン1のクランクシャフト11に連結されている。タービンランナ22は、タービンシャフト27を介して前後進切替装置3に連結されている。
トルクコンバータ2には、当該トルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。ロックアップクラッチ24は、継合側油室25内の油圧と解放側油室26内の油圧との差圧(ロックアップ差圧)を制御することにより完全継合、半継合(スリップ状態での継合)又は解放される。
ロックアップクラッチ24を完全継合させることによって、ポンプインペラ21とタービンランナ22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ24を所定のスリップ状態(半継合状態)で継合させることにより、駆動時には所定のスリップ量でタービンランナ22がポンプインペラ21に追随して回転する。一方、ロックアップ差圧を負に設定することによってロックアップクラッチ24は解放状態となる。このロックアップクラッチ24の継合及び解放は、ECU8及び油圧制御回路20によって制御される。
そして、トルクコンバータ2にはポンプインペラ21に連結して駆動される機械式のオイルポンプ(油圧発生源)10が設けられている。このオイルポンプ10は、エンジン1によって駆動される。
−前後進切替装置−
前後進切替装置3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構30、フォワードクラッチ(前進用クラッチ)C1及びリバースブレーキ(後進用ブレーキ)B1を備えている。
遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トルクコンバータ2のタービンシャフト27に一体的に連結されており、キャリア33は、ベルト式無段変速機4の入力軸40に一体的に連結されている。キャリア33とサンギヤ31とは、フォワードクラッチC1を介して選択的に連結されている。また、リングギヤ32は、リバースブレーキB1を介してハウジング300に選択的に固定されるようになっている。
フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1は、油圧制御回路20によって継合、解放される油圧式の摩擦継合装置であって、フォワードクラッチC1が継合され、リバースブレーキB1が解放されることによって、前後進切替装置3が一体回転状態となって前進用動力伝達経路が成立し、この状態で、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。
一方、リバースブレーキB1が継合され、フォワードクラッチC1が解放されると、前後進切替装置3によって後進用動力伝達経路が成立する。この状態で、ベルト式無段変速機4の入力軸40がタービンシャフト27に対して逆方向へ回転し、この後進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。また、フォワードクラッチC1及びリバースブレーキB1が、共に解放されると、前後進切替装置3は、動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)となる。
−ベルト式無段変速機−
ベルト式無段変速機4は、図1に示すように、入力側のプライマリプーリ41、出力側のセカンダリプーリ42、及び、これらプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられた金属製のベルト43等を備えている。
プライマリプーリ41は、有効径が可変な可変プーリであって、入力軸40に固定された固定シーブ411と、入力軸40に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ412とによって構成されている。セカンダリプーリ42も、同様に有効径が可変な可変プーリであって、出力軸44に固定された固定シーブ421と、出力軸44に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ422とによって構成されている。
プライマリプーリ41の可動シーブ412側には、固定シーブ411と可動シーブ412との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ413が配置されている。また、セカンダリプーリ42の可動シーブ422側にも同様に、固定シーブ421と可動シーブ422との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ423が配置されている。
以上の構造のベルト式無段変速機4において、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413の油圧を制御することによって、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42の各V溝幅が変化してベルト43の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(γ=プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Nin/セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Nout)が連続的に変化する。また、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧は、ベルト滑りが生じない所定の挟圧力Fでベルト43が挟圧されるように制御される。これらの制御はECU8及び油圧制御回路20によって実行される。
−油圧制御回路−
油圧制御回路20は、図1に示すように、変速速度制御部20a、ベルト挟圧力制御部20b、ライン圧制御部20c、ロックアップクラッチ24の継合(完全継合及び半継合)及び解放を制御するロックアップ制御部20d、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1、リバースブレーキB1の継合及び解放を制御するクラッチ圧力制御部20e、及び、マニュアルバルブ20f等を備えている。なお、クラッチ圧力制御部20eには、リニアソレノイドバルブSLTにて制御されたライン圧が供給される。
また、油圧制御回路20を構成する変速速度制御用の変速制御ソレノイドバルブDS1及び変速制御ソレノイドバルブDS2、ベルト挟圧力制御用のリニアソレノイドバルブSLS、ライン圧制御用のリニアソレノイドバルブSLT、並びに、ロックアップ継合圧制御用のデューティソレノイドバルブDSUには、ECU8からの制御信号が出力され、ECU8からの制御信号に基づいて制御される。
次に、油圧制御回路20のうち、ベルト式無段変速機4のプライマリプーリ41における油圧アクチュエータ413の油圧制御回路(変速速度制御部20aの具体的な油圧回路構成)、及び、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧制御回路(ベルト挟圧力制御部20bの具体的な油圧回路構成)について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、図1に示す油圧制御回路20のうち、ベルト式無段変速機4のプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ423を制御する油圧制御回路20の一例を示す回路構成図であり、図3は、図1に示す油圧制御回路20のうち、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fを制御する油圧制御回路20の一例を示す回路構成図である。
まず、図3に示すように、オイルポンプ10が発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ203によって調圧されてライン圧PLが生成される。プライマリレギュレータバルブ203には、リニアソレノイドバルブ(SLT)201から出力される制御油圧がクラッチアプライコントロールバルブ204を介して供給され、その制御油圧をパイロット圧として、プライマリレギュレータバルブ203は作動する。
なお、クラッチアプライコントロールバルブ204の切り替えにより、リニアソレノイドバルブ(SLS)202からの制御油圧が、プライマリレギュレータバルブ203に供給され、その制御油圧をパイロット圧としてライン圧PLが調圧される場合もある。これらリニアソレノイドバルブ(SLT)201及びリニアソレノイドバルブ(SLS)202には、ライン圧PLを元圧としてモジュレータバルブ205にて調圧された油圧が供給される。
リニアソレノイドバルブ(SLT)201は、ECU8が出力するデューティ(Duty)信号によって決まる電流値に応じて制御油圧を出力する。リニアソレノイドバルブ(SLT)201はノーマルオープンタイプのソレノイドバルブである。
また、リニアソレノイドバルブ(SLS)202は、ECU8が出力するデューティ(Duty)信号によって決まる電流値に応じて制御油圧を出力する。このリニアソレノイドバルブ(SLS)202も、上記リニアソレノイドバルブ(SLT)201と同様に、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブである。
なお、図2及び図3に示す油圧制御回路において、モジュレータバルブ206は、モジュレータバルブ205が出力する油圧を一定の圧力に調圧して、後述する変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304、変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305、及び、ベルト挟圧力制御バルブ303等に供給する。
[変速制御]
次に、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413の油圧制御回路について説明する。図2に示すように、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413にはアップシフト用変速制御バルブ301が接続されている。
アップシフト用変速制御バルブ301には、バルブボディ内において軸方向に移動可能なスプール弁子311が設けられている。スプール弁子311の一端側(図2の上端側)にはスプリング(圧縮コイルばね)312が配置されており、このスプール弁子311を挟んでスプリング312とは反対側の端部に、第1油圧ポート315が形成されている。また、スプリング312が配置されている上記の一端側(図2の上端側)に第2油圧ポート316が形成されている。
第1油圧ポート315には、ECU8が出力するデューティ(Duty)信号(DS1変速デューティ(アップシフトデューティ))によって決まる電流値に応じて制御油圧を出力する変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が接続されており、その変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が出力する制御油圧が、第1油圧ポート315に印加される。第2油圧ポート316には、ECU8が出力するデューティ(Duty)信号(DS2変速デューティ(ダウンシフトデューティ))によって決まる電流値に応じて制御油圧を出力する変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が接続されており、その変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が出力する制御油圧が、第2油圧ポート316に印加される。
更に、アップシフト用変速制御バルブ301には、ライン圧PLが供給される入力ポート313、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に接続(連通)される入出力ポート314、及び、出力ポート317が形成されており、スプール弁子311がアップシフト位置(図2の右側位置)にあるときには、出力ポート317が閉鎖され、ライン圧PLが入力ポート313から入出力ポート314を経てプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に供給される。一方、スプール弁子311が閉じ位置(図2の左側位置)にあるときには、入力ポート313が閉鎖され、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413が、入出力ポート314を介して出力ポート317に連通する。
ダウンシフト用変速制御バルブ302には、バルブボディ内において軸方向に移動可能なスプール弁子321が設けられている。スプール弁子321の一端側(図2の下端側)には、スプリング(圧縮コイルばね)322が配置されていると共に、その一端側に第1油圧ポート326が形成されている。また、スプール弁子321を挟んで、スプリング322とは反対側の端部に、第2油圧ポート327が形成されている。第1油圧ポート326には、上記変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が接続されており、その変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が出力する制御油圧が、第1油圧ポート326に印加される。第2油圧ポート327には、上記変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が接続されており、その変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が出力する制御油圧が、第2油圧ポート327に印加される。
更に、ダウンシフト用変速制御バルブ302には、入力ポート323、入出力ポート324、及び、排出ポート325が形成されている。入力ポート323には、バイパスコントロールバルブ306が接続されており、そのバイパスコントロールバルブ306にてライン圧PLを調圧した油圧が供給される。そして、このようなダウンシフト用変速制御バルブ302において、スプール弁子321がダウンシフト位置(図2の左側位置)にあるときには、入出力ポート324が排出ポート325に連通する。一方、スプール弁子321が閉じ位置(図2の右側位置)にあるときには、入出力ポート324が閉鎖される。なお、ダウンシフト用変速制御バルブ302の入出力ポート324は、アップシフト用変速制御バルブ301の出力ポート317に接続されている。
以上の図2の油圧制御回路において、ECU8が出力するDS1変速デューティ(アップシフト変速指令)に応じて変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が作動し、その変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が出力する制御油圧が、アップシフト用変速制御バルブ301の第1油圧ポート315に供給されると、その制御油圧に応じた推力によって、スプール弁子311がアップシフト位置側(図2の上側)に移動する。このスプール弁子311の移動(アップシフト側への移動)によって、作動油(ライン圧PL)が制御油圧に対応する流量で、入力ポート313から入出力ポート314を経てプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に供給されると共に、出力ポート317が閉鎖されて、ダウンシフト変速制御バルブ302への作動油の流通が阻止される。これによって変速制御圧が高められ、プライマリプーリ41のV溝幅が狭くなって変速比γが小さくなる(アップシフト)。
なお、変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304が出力する制御油圧がダウンシフト用変速制御バルブ302の第1油圧ポート326に供給されると、スプール弁子321が図2の上側に移動し、入出力ポート324が閉鎖される。
一方、ECU8が出力するDS2変速デューティ(ダウンシフト変速指令)に応じて変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が作動し、その変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が出力する制御油圧が、アップシフト用変速制御バルブ301の第2油圧ポート316に供給されると、その制御油圧に応じた推力によって、スプール弁子311がダウンシフト位置側(図2の下側)に移動する。このスプール弁子311の移動(ダウンシフト側への移動)によって、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413内の作動油が制御油圧に対応する流量で、アップシフト用変速制御バルブ301の入出力ポート314に流入する。このアップシフト用変速制御バルブ301に流入した作動油は、出力ポート317、及び、ダウンシフト用変速制御バルブ302の入出力ポート324を経て排出ポート325から排出される。これによって変速制御圧が低められ、入力側可変プーリ42のV溝幅が広くなって、変速比γが大きくなる(ダウンシフト)。
なお、変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305が出力する制御油圧がダウンシフト用変速制御バルブ302の第2油圧ポート327に供給されると、スプール弁子321が図2の下側に移動し、入出力ポート324と排出ポート325とが連通する。
以上のように、変速制御ソレノイドバルブ(DS1)304から制御油圧が出力されると、アップシフト用変速制御バルブ301から作動油がプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に供給されて、変速制御圧が連続的にアップシフトされる。また、変速制御ソレノイドバルブ(DS2)305から制御油圧が出力されると、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413内の作動油がダウンシフト用変速制御バルブ302の排出ポート325から排出されて、変速制御圧が連続的にダウンシフトされる。
そして、ここでは、例えば図4に示すように、ベルト式無段変速機4の変速制御が行われる。図4は、図1に示すベルト式無段変速機4の変速制御に用いるマップの一例を示すグラフである。図4に示すように、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量Acc、及び、車速Vをパラメータとして、予め設定された変速線マップから入力側の目標入力回転数Nintを算出し、実際の入力回転数Ninが目標入力回転数Nintと一致するように、それらの偏差(Nint−Nin)に応じてベルト式無段変速機4の変速制御(公知のフィードバック制御)、すなわち、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に対する作動油の供給、排出によって変速制御圧(プライマリシーブ圧Pin)が制御され、変速比γが連続的に変化する。
なお、図4に示す変速線マップは、例えば、ECU8のROM82(図7参照)内に記憶されている。この図4のマップにおいて、車速Vが小さくてアクセル操作量Accが大きい程、大きな変速比γになる目標入力回転数Nintが設定されるようになっている。また、車速Vは、セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Noutに対応するため、プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Ninの目標値である目標入力回転数Nintは目標変速比に対応し、ベルト式無段変速機4の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で設定されている。
[ベルト挟圧力制御]
次に、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧制御回路について図3を参照して説明する。図3に示すように、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423にはベルト挟圧力制御バルブ303が接続されている。
ベルト挟圧力制御バルブ303には、バルブボディ内において軸方向に移動可能なスプール弁子331が設けられている。スプール弁子331の一端側(図3の下端側)には、スプリング(圧縮コイルばね)332が配置されていると共に、その一端側(図3の下端側)に第1油圧ポート335が形成されている。また、スプール弁子331を挟んでスプリング332とは反対側の端部(図3の上端側)に、第2油圧ポート336が形成されている。
第1油圧ポート335には、リニアソレノイドバルブ(SLS)202が接続されており、そのリニアソレノイドバルブ(SLS)202が出力する制御油圧が第1油圧ポート335に印加される。第2油圧ポート336には、モジュレータバルブ206からの油圧が印加される。
更に、ベルト挟圧力制御バルブ303には、ライン圧PLが供給される入力ポート333、及び、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423に接続(連通)される出力ポート334が形成されている。
この図3の油圧制御回路において、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423に所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイドバルブ(SLS)202が出力する制御油圧が増大すると、ベルト挟圧力制御バルブ303のスプール弁子331が、図3の上側に移動する。この場合、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423に供給される油圧が増大し、ベルト挟圧力Fが増大する。一方、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423に所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイドバルブ(SLS)202から出力される制御油圧が低下すると、ベルト挟圧力制御バルブ303のスプール弁子331が図3の下側に移動する。この場合、セカンダリプーリ42の油圧シリンダに供給される油圧が低下し、ベルト挟圧力Fが低下する。
このようにして、リニアソレノイドバルブ(SLS)202から出力される制御油圧をパイロット圧として、ライン圧PLを調圧制御して、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423に供給することによってベルト挟圧力Fが増減する。
そして、ここでは、例えば、図5に示すように、ベルト式無段変速機4のベルト挟圧力Fが制御される。図5は、図1に示すベルト式無段変速機4のベルト挟圧力制御に用いるマップの一例を示すグラフである。図5に示すように、伝達トルクに対応するアクセル開度Acc及び変速比γ(γ=Nin/Nout)をパラメータとして、ベルト滑りが生じないように予め設定された必要油圧(ベルト挟圧力Fに対応)のマップに従って、リニアソレノイドバルブ(SLS)202が出力する制御油圧を制御することによって、ベルト式無段変速機4のベルト挟圧力F、つまり、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧を調圧制御することによって、ベルト挟圧力Fが制御される。図5のマップは、例えば、ECU8のROM82(図7参照)内に記憶されている。
−制動装置−
次に、図6を参照して、車両の制動装置について説明する。図6は、本発明に係る車両の制御装置が適用される制動装置の一例を示す構成図である。車両の4つの車輪7には、それぞれ、車輪速センサ72、ブレーキディスク73、及び、ブレーキキャリパ74が配設されている。車輪速センサ72は、車輪速VTを検出するセンサであって、検出された車輪速VTは、ECU8へ伝送される。
ブレーキディスク73は、車輪7と一体に回動する円板状部材である。ブレーキキャリパ74は、ブレーキパッド及びホイールシリンダを内蔵しており、ブレーキディスク73を押圧することによって車輪7を制動するものである。ブレーキキャリパ74に内蔵されたホイールシリンダは、ブレーキ配管63を介して油圧回路6に接続されている。また、各ホイールシリンダは、ブレーキ配管63及び油圧回路6を介して、マスタシリンダ62にも接続されている。
通常のブレーキ時には、運転者によってブレーキペダル61が踏み込まれると、マスタシリンダ62内の圧力が上昇し、この圧力上昇がブレーキ配管63、油圧回路6を介して、ブレーキキャリパ74に内蔵されたホイールシリンダに伝えられて、ホイールシリンダ内の圧力が上昇する。ホイールシリンダ内の油圧が上昇されると、ブレーキキャリパ74に内蔵されたブレーキパッドがブレーキディスク73に押圧され、摩擦力によってブレーキディスク73と連結されている車輪7が制動される。ここで、ブレーキスイッチ611は、ブレーキペダル61が踏み込まれているか否かを検出するスイッチである。
油圧回路6は、油圧ポンプ及び電磁バルブ等を有している。車両制動時に制動力を制御して車輪7のロックを抑制するABS(Antilock Brake System)制御時には、油圧回路6の油圧ポンプによって高圧化したブレーキ油圧を、電磁バルブを制御することによってブレーキキャリパ74に内蔵されたホイールシリンダに、伝達又は遮断して車輪7毎の制動力を増加又は維持する。また、電磁バルブを制御して車輪7毎のブレーキキャリパ74に内蔵されたホイールシリンダ内の圧力を減圧することもできる。これらの制御によって車輪7毎の制動力を調節し、ABS制御時には、車輪7のロックを抑制する。
本実施形態では、車両の制動装置が、いわゆる「ディスクブレーキ」である場合について説明するが、車両の制動装置が、いわゆる「ドラムブレーキ」等である形態でもよい。
−ECU−
次に、図7を参照して、本発明に係る「車両の制御装置」の構成について説明する。図7は、本発明に係る「車両の制御装置」の構成の一例を示すブロック図である。ECU(Electronic Control Unit)8は、図7に示すように、CPU81、ROM82、RAM83及びバックアップRAM84等を備えている。
ROM(Read Only Memory)82には、各種制御プログラム、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ、ルックアップテーブル(LUT)等が記憶されている。CPU(Central Processing Unit)81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM83(Random Access Memory)は、CPU81での演算結果、各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM84は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU81、ROM82、RAM83、及び、バックアップRAM84は、バス87を介して互いに接続されると共に、入力インターフェース85及び出力インターフェース86に接続されている。
入力インターフェース85には、エンジン回転数センサ101、スロットル開度センサ102、水温センサ103、タービン回転数センサ104、プライマリプーリ回転数センサ105、セカンダリプーリ回転数センサ106、アクセル開度センサ107、CVT油温センサ108、加速度センサ109、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)を検出するレバーポジションセンサ110、車輪速センサ72、ナビゲーション装置80、及び、油圧回路6(図6参照)等が接続されている。
そして、その各センサ等の出力信号、つまり、エンジン1の回転数(エンジン回転数)Ne、スロットルバルブ12のスロットル開度θth、エンジン1の冷却水温Tw、タービンシャフト27の回転数(タービン回転数)Nt、プライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Nin、セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Nout、アクセルペダルの操作量(アクセル関度)Acc、油圧制御回路20の油温(CVT油温Thc)、車両に作用する前後方向の加速度、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)等を示す信号、車輪の回転速度である車輪速、地図上の現在位置を示す情報、及び、ABSが作動しているか否かを示す信号等がECU8に出力される。また、出力インターフェース86には、油圧制御回路20などが接続されている。
ここで、ECU8に供給される信号のうち、タービン回転数Ntは、前後進切替装置3のフォワードクラッチC1が継合する前進走行時にはプライマリプーリ回転数(入力軸回転数)Ninと一致し、セカンダリプーリ回転数(出力軸回転数)Noutは車速Vに対応する。
また、シフトレバー9は、駐車のためのパーキング位置「P」、後進走行のためのリバース位置「R」、動力伝達を遮断するニュートラル位置「N」、前進走行のためのドライブ位置「D」、前進走行時にベルト式無段変速機4の変速比γを手動操作で増減できるマニュアル位置「M」等の各位置に、選択的に操作可能に構成されている。
マニュアル位置「M」には、変速比γを増減するためのダウンシフト位置、アップシフト位置、あるいは、変速範囲の上限(変速比γが小さい側)が異なる複数の変速レンジを選択できる複数のレンジ位置等が備えられている。
レバーポジションセンサ110は、例えば、パーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」、ドライブ位置「D」、マニュアル位置「M」、アップシフト位置、ダウンシフト位置、あるいは、レンジ位置等へシフトレバー9が操作されたことを検出する複数のON/OFFスイッチ等を備えている。なお、変速比γを手動操作で変更するために、シフトレバー9とは別にステアリングホイール等にダウンシフトスイッチやアップシフトスイッチ、あるいはレバー等を設けることも可能である。
そして、ECU8は、上記各種センサの出力信号等に基づいて、ベルト式無段変速機4の変速制御及びベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ24の継合、解放制御等を実行する。
−車両の制御装置(ECU)の機能構成−
次に、図8を参照してECU8の機能構成について説明する。図8は、図7に示す「車両の制御装置」の主要部の構成の一例を示すブロック図である。ECU8は、本発明に係る「車両の制御装置」全体の動作を制御するECUであって、CPU81がROM82等に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、機能的に、第1判定部811、第2判定部812、第3判定部813、第4判定部814、特定状態記録部815、位置判定部817、圧力制御部818、及び、基準値補正部819等の機能部として機能する。また、ECU8は、CPU81がROM82等に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、バックアップRAM84等の不揮発性メモリを、特定状態記憶部816として機能させる。ここで、第1判定部811、第2判定部812、第3判定部813、第4判定部814、特定状態記録部815、特定状態記憶部816、位置判定部817、圧力制御部818、及び、基準値補正部819は、本発明に係る「車両の制御装置」を構成する。
第1判定部811は、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」であって、駆動輪7と路面との間がスリップ状態からグリップ状態に急激に変化した車両状態である第1車両状態ST1が発生したか否かを判定する機能部である。具体的には、第1判定部811は、車輪速センサ72によって検出された駆動輪7の車輪速VTに基づき第1車両状態ST1であるか否かを判定する。更に具体的には、第1判定部811は、車輪速VTから求められる加速度αが、予め設定された負の閾値加速度α1以下である場合に、第1車両状態ST1が発生していると判定する。
ここで、図9を参照して、第1判定部811による判定方法について説明する。図9は、図8に示す第1判定部811及び第3判定部813の判定方法の一例を示すグラフである。横軸は、時間tであって、縦軸は、車輪速VTから求められる加速度αである。時点t1において、加速度αが、閾値加速度α1以下となり、時点t2まで閾値加速度α1以下の状態が継続する。駆動輪7と路面との間がスリップ状態からグリップ状態に急激に変化する場合には、駆動輪7が急激に減速されるため、絶対値の大きな負の加速度αが検出される(加速度αが閾値加速度α1以下となる)のである。
このようにして、「特定車両状態」が、駆動輪7と路面との間がスリップ状態からグリップ状態に急激に変化した車両状態である第1車両状態ST1を含むため、第1車両状態ST1が発生する地点P1でベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
また、駆動輪7の車輪速に基づき第1車両状態ST1であるか否かが判定されるため、第1車両状態ST1であるか否かを簡素な構成で適正に判定することができる。
本実施形態では、第1判定部811が、駆動輪7の車輪速に基づき第1車両状態ST1であるか否かを判定する場合について説明するが、第1判定部811が、その他の方法で、第1車両状態ST1であるか否かを判定する形態でもよい。例えば、スリップ状態からグリップ状態に急激に変化する際に駆動輪7に作用する衝撃を検出する加速度センサを備え、第1判定部811が、当該加速度センサの検出結果に基づき、第1車両状態ST1であるか否かを判定する形態でもよい。
再び、図8に戻って、ECU8の機能構成について説明する。
第2判定部812は、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」であって、ABSが作動している車両状態である第2車両状態ST2であるか否かを判定する機能部である。具体的には、第2判定部812は、油圧回路6からのABSが作動しているか否かを示す信号に基づき、第2車両状態ST2であるか否かを判定する。
このようにして、「特定車両状」が、ABSが作動している車両状態である第2車両状態ST2を含むため、第2車両状態ST2が発生する地点P2でベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
第3判定部813は、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」であって、路面の凹凸が大きい悪路を走行している車両状態である第3車両状態ST3であるか否かを判定する機能部である。具体的には、第3判定部813は、車輪速センサ72によって検出された駆動輪7の車輪速VTに基づき第3車両状態ST3であるか否かを判定する。更に具体的には、第3判定部813は、車輪速VTから求められる加速度αの絶対値が、予め設定された正の閾値加速度α3以上である状態が、予め設定された所定回数(例えば、2回)以上、断続的に発生する場合に、第3車両状態ST3が発生していると判定する。
ここで、図9を参照して、第3判定部813による判定方法について説明する。図9は、図8に示す第1判定部811及び第3判定部813の判定方法の一例を示すグラフである。横軸は、時間tであって、縦軸は、車輪速VTから求められる加速度αである。時点t3において、加速度αの絶対値が、閾値加速度α3以上となり、時点t3から時点t4までの期間POにおいて、加速度αの絶対値が閾値加速度α3以上の状態が断続的に2回以上(ここでは、7回)発生している。路面の凹凸が大きい悪路を走行している場合には、駆動輪7が急激に加速及び減速されるため、絶対値の大きな加速度αが複数回にわたって断続的に検出される(加速度αの絶対値が断続的に閾値加速度α3以上となる)のである。
また、「特定車両状態」が、路面の凹凸が大きい悪路を走行している車両状態である第3車両状態ST3を含むため、第3車両状態ST3が発生する地点P3でベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
また、駆動輪7の車輪速VTに基づき第3車両状態ST3であるか否かが判定されるため、第3車両状態ST3であるか否かを簡素な構成で適正に判定することができる。
本実施形態では、第3判定部813が、駆動輪7の車輪速VTに基づき第3車両状態ST3であるか否かを判定する場合について説明するが、第3判定部813が、その他の方法で、第3車両状態ST3であるか否かを判定する形態でもよい。例えば、路面の凹凸を検出する凹凸センサを備え、第3判定部813が、当該凹凸センサの検出結果に基づいて第3車両状態ST3であるか否かを判定する形態でもよい。この場合には、第3車両状態ST3であるか否かを更に正確に判定することができる。
再び、図8に戻って、ECU8の機能構成について説明する。
第4判定部814は、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」であって、車両の加速度βが予め設定された加速度閾値β0以上である第4車両状態ST4であるか否かを判定する機能部である。具体的には、第4判定部814は、車両に作用する前後方向の加速度βを検出する加速度センサ109の検出結果に基づき、第4車両状態ST4であるか否かを判定する。
このようにして、「特定車両状態」が、車両の加速度βが予め設定された加速度閾値β0以上である第4車両状態ST4を含むため、第4車両状態が発生する地点P4でベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
特定状態記録部815は、第1判定部811、第2判定部812、及び、第3判定部813、第4判定部814によって、それぞれ、第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4が発生していると判定された場合に、発生している「特定車両状態」(ここでは、第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4)を示す情報と、地図上の位置とを対応付けて特定状態記憶部816に記録する機能部である。ここで、「特定車両状態」とは、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fを高くするべき車両状態である。
具体的には、特定状態記録部815は、第1判定部811によって第1車両状態ST1が発生していると判定された場合に、第1車両状態ST1を示す情報、及び、加速度αの絶対値の最大値αMを、地図上の位置P1とを対応付けて特定状態記憶部816に記録する。また、特定状態記録部815は、第1判定部811によって第1車両状態ST1が発生していると判定された場合に、第1車両状態ST1が発生した回数(累積発生回数)N1を1回分インクリメントして特定状態記憶部816に記録する。
また、特定状態記録部815は、第2判定部812によって第2車両状態ST2が発生していると判定された場合に、第2車両状態ST2を示す情報と、地図上の位置P2とを対応付けて特定状態記憶部816に記録する。また、特定状態記録部815は、第2判定部812によって第2車両状態ST2が発生していると判定された場合に、第2車両状態ST2が発生した回数(累積発生回数)N2を1回分インクリメントして特定状態記憶部816に記録する。
更に、特定状態記録部815は、第3判定部813によって第3車両状態ST3が発生していると判定された場合に、第3車両状態ST3を示す情報と、地図上の第3車両状態ST3の開始位置P31及び終了位置P32とを対応付けて特定状態記憶部816に記録する。また、特定状態記録部815は、第3判定部813によって第3車両状態ST3が発生していると判定された場合に、地図上の第3車両状態ST3の開始位置P31と終了位置P32との間の距離LNを求め、第3車両状態ST3が発生した累積距離L3に今回の発生距離LNを加算した和を新たな累積距離L3(L3←L3+LN)として特定状態記憶部816に記録する。
また、特定状態記録部815は、第4判定部814によって第4車両状態ST4が発生していると判定された場合に、第4車両状態ST4を示す情報と、地図上の位置P4とを対応付けて特定状態記憶部816に記録する。また、特定状態記録部815は、第4判定部814によって第4車両状態ST4が発生していると判定された場合に、第4車両状態ST4が発生した回数(累積発生回数)N4を1回分インクリメントして特定状態記憶部816に記録する。
特定状態記憶部816は、「特定車両状態」(第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4)を示す情報と、地図上の位置とを対応付けて記憶する機能部である。また、特定状態記憶部816は、第1車両状態ST1、第2車両状態ST2、及び、第4車両状態ST4のそれぞれの累積発生回数N1、N2、N4を記憶する。更に、特定状態記憶部816は、第3車両状態ST3が発生した累積距離L3を記憶する。なお、特定状態記憶部816に記憶される情報は、特定状態記録部815によって書き込まれ、位置判定部817等によって読み出される。
位置判定部817は、車両走行中に、ナビゲーション装置80から入力された現在位置に基づき、特定状態記憶部816に記憶されている「特定車両状態」(第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4)が過去に発生した位置Pに車両が接近している(例えば、位置Pの手前30mの位置に到達した)か否かを判定する機能部である。また、位置判定部817は、ナビゲーション装置80から入力された現在位置に基づき、特定状態記憶部816に記憶されている「特定車両状態」(第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4)が過去に発生した位置Pを車両が通過した(例えば、位置Pから車両の進行方向に10mの位置に到達した)か否か判定する。なお、上記「位置P」とは、過去の走行において、第1車両状態ST1が発生した位置P1、第2車両状態ST2が発生した位置P2、第3車両状態ST2が発生した始点位置P31(又は、終点位置P32)、及び、第4車両状態ST4が発生した位置P4のいずれかを指すものである。
圧力制御部818は、位置判定部817によって「特定車両状態」が過去に発生した位置Pに車両が接近していると判定された場合に、油圧制御回路20を介して、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fを増大する(例えば、予め設定された割合(例えば、10%)だけ増大する、又は、出力可能な最大値FMまで増大する)機能部である。また、圧力制御部818は、位置判定部817によって「特定車両状態」が過去に発生した位置Pを車両が通過したと判定された場合に、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fを「通常の大きさ」に戻す。
ここで、圧力制御部818によって制御されるベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fについての「通常の大きさ」とは、図5を参酌して上述のように、伝達トルクに対応するアクセル開度Acc及び変速比γ(γ=Nin/Nout)をパラメータとして、予め設定されたベルト挟圧力の基準値F0を、基準値補正部819によって補正して求められたベルト挟圧力Fの基準値F1である。また、圧力制御部818は、図5を参酌して上述のように制御されるベルト挟圧力Fを、「特定車両状態」が過去に発生した位置Pにおいて補正する(増大補正する)ものである。
このようにして、車両が走行中に、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」が発生している場合に、「特定車両状態」を示す情報(ここでは、第1車両状態ST1を示す情報、第2車両状態ST2を示す情報等である)と、「特定車両状態」が発生している地図上の位置情報とが対応付けて特定状態記憶部816に記憶される。そして、特定状態記憶部816に記憶された「特定車両状態」が発生している地図上の位置情報及び「特定車両状態」を示す情報に基づいて、ベルト挟圧力Fが制御されるため、ベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
すなわち、当該車両が走行中に、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態である「特定車両状態」が発生している場合に、「特定車両状態」を示す情報と、「特定車両状態」が発生している地図上の位置情報とが対応付けて特定状態記憶部816に記憶されるため、実際に走行した際の走行状態に基づいて、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態(すなわち、「特定車両状態」)であるか否かが判定される。よって、ベルト挟圧力Fを高くするべき車両状態であるか否かを適正に判定することができる。また、適正に判定されて記憶された「特定車両状態」が発生している地図上の位置情報及び「特定車両状態」を示す情報に基づいて、ベルト挟圧力Fが制御されるため、ベルト挟圧力Fを適正に制御することができるのである。
また、過去の走行において「特定車両状態」が発生していると記憶された地図上の位置Pに、当該車両が接近した(例えば、位置Pの手前30mの位置に到達した)ときに、ベルト挟圧力Fが高くされるため、適正なタイミングでベルト挟圧力Fが高められる。
更に、過去の走行において「特定車両状態」が発生していると記憶された地図上の位置Pを、当該車両が通過した(例えば、位置Pから車両の進行方向に10mの位置に到達した)ときに、ベルト挟圧力Fが元に戻されるため、適正なタイミングでベルト挟圧力Fを元に戻すことができる。
基準値補正部819は、特定状態記憶部816に記憶されている「特定車両状態」の発生回数等に基づき、図5を参酌して上述のように制御されるベルト挟圧力Fの基準値F0を補正する機能部である。ただし、累積走行距離LTが、予め設定された所定距離LT0(例えば、5000km)以下の場合には、基準値補正部819は、ベルト挟圧力Fの基準値F0を補正する処理を実行しない。
具体的には、基準値補正部819は、次の(1)によって、過去の走行においてベルト式無段変速機4のベルト43に作用した累積負荷Hを求め、求められた累積負荷Hを用いて(2)式によって、単位走行距離(例えば、1000km)当りのベルト式無段変速機4のベルト43に作用した平均負荷を示す負荷率Iを求める。
H=K1×N1+K2×N2+K3×L3+K4×N4 (1)
I=(H/LT)×1000 (2)
ここで、(1)式のK1〜K4は、予め設定された定数であり、(2)式のLTは、車両の累積走行距離(km)である。
次に、基準値補正部819は、(2)式によって求められた負荷率Iから、ベルト挟圧力Fの基準値(図5参照)の補正値ΔFを求める。ここで、図10を参照して、補正値ΔFの算出方法について説明する。図10は、図8に示す基準値補正部819の補正方法の一例を示すグラフである。図10の横軸は、負荷率Iであり、縦軸は補正値ΔFである。グラフG1は、負荷率Iと補正値ΔFとの関係を示すグラフである。グラフG1に示すように、負荷率Iが予め設定された基準負荷率IOより大である場合には、補正値ΔFとして正の値が求められ、負荷率Iが基準負荷率IO未満である場合には、補正値ΔFとして負の値が求められる。基準値補正部819は、グラフG1によって求められた補正値ΔFを用いて、次の(3)式によって基準となるベルト挟圧力F1を求める。
F1=F0×(100+ΔF)/100 (3)
ここで、F0は、図5を参酌して上述のように、伝達トルクに対応するアクセル開度Acc及び変速比γ(γ=Nin/Nout)をパラメータとして、予め設定されたベルト挟圧力の基準値である。
なお、グラフG1を示す情報は、例えば、ROM82等の不揮発性メモリにマップ、又は、ルックアップテーブル(LUT)等として予め格納されており、基準値補正部819によって読み出される。
このようにして、過去の走行において「特定車両状態」が発生した回数又は「特定車両状態」での走行距離に基づいて、ベルト挟圧力Fの基準値F0が基準値F1に補正されるため、ベルト挟圧力Fの基準値F0を適正な基準値F1に補正することができる。
すなわち、「特定車両状態」が発生した回数が多い程、又は、「特定車両状態」での走行距離が長い程、ベルト挟圧力Fの基準値F0が増大補正されるため、車両の走行実績(走行履歴)に応じて、ベルト挟圧力Fの基準値F0を適正に補正することができるのである。
なお、本実施形態において、基準値補正部819は、累積走行距離LTが所定距離L0(例えば、5000km)以下の場合には、ベルト挟圧力Fの基準値F0を補正する処理を実行しない。これは、新車購入後の、いわゆる「慣らし運転」中は、「慣らし運転」後の走行とは異なる走行状態となることが推定されるためである。すなわち、「慣らし運転」が、累積走行距離LTが所定距離L0以下の範囲において行われるとして、その間は、ベルト挟圧力Fの基準値F0を補正する処理を実行しないのである。したがって、「慣らし運転」中に、ベルト挟圧力Fの基準値F0が不適正に補正されることを防止することができる。
また、本実施形態では、累積負荷Hを上記(1)式によって求める場合について説明するが、累積負荷Hを、第1車両状態ST1が発生した回数(累積発生回数)N1、第2車両状態ST2が発生した回数(累積発生回数)N2、第3車両状態ST3が発生した累積走行距離L3、及び、第4車両状態ST1が発生した回数(累積発生回数)N4の少なくとも1つに基づき算出する形態であればよい。
−車両の制御装置(ECU)の学習動作−
次に、図11、図12を参照して、図8に示す「車両の制御装置」(ECU8)の動作について説明する。図11は、図8に示す「車両の制御装置」(ECU8)の学習動作の一例を示すフローチャート(前半部)であって、図12は、図8に示す「車両の制御装置」(ECU8)の学習動作の一例を示すフローチャート(後半部)である。ここで、「学習動作」とは、車両走行中に、第1車両状態ST1〜第1車両状態ST4の発生位置P1〜P4等を特定状態記憶部816に記録する(書き込む)処理である。
まず、第1判定部811によって、車輪速VTから加速度αが求められる(ステップS101)。そして、第1判定部811によって、ステップS101で求められた加速度αが負の閾値加速度α1以下であるか否かの判定が行われる(ステップS103)。ステップS103でNOの場合には、処理がステップS111へ進められる。ステップS103でYESの場合には、処理がステップS105へ進められる。
そして、第1判定部811によって、第1車両状態ST1が発生していると判定される(ステップS105)。次いで、特定状態記録部815によって、第1車両状態ST1を示す情報及びステップS101で求められた加速度α(又は、加速度αの最大値αM)が、加速度α(又は、加速度αの最大値αM)に対応する車輪速VTが検出された車両の走行位置P1と対応付けられて特定状態記憶部816に記録される(ステップS107)。次に、特定状態記録部815によって、第1車両状態ST1が発生した回数(累積発生回数)N1が1回分インクリメントされて特定状態記憶部816に記録され(ステップS109)、処理がステップS111へ進められる。
ステップS103でNOの場合、又は、ステップS109の処理が終了した場合には、第2判定部812によって、ABSが作動しているか否かの判定が行われる(ステップS111)。ステップS111でNOの場合には、処理が図12のステップS119へ進められる。ステップS111でYESの場合には、処理がステップS113へ進められる。
そして、第2判定部812によって、第2車両状態ST2が発生していると判定される(ステップS113)。次いで、特定状態記録部815によって、第2車両状態ST2を示す情報と、地図上の位置P2とが対応付けられて特定状態記憶部816に記録される(ステップS115)。次に、特定状態記録部815によって、第2車両状態ST2が発生した回数(累積発生回数)N2が1回分インクリメントされて特定状態記憶部816に記録され(ステップS117)、処理が図12のステップS119へ進められる。
そして、図12に示すように、第3判定部813によって、図11のステップS101で求められた加速度αの絶対値が閾値加速度α3以上であるか否かの判定が行われる(ステップS119)。ステップS119でNOの場合には、処理がステップS129へ進められる。ステップS119でYESの場合には、処理がステップS121へ進められる。次に、第3判定部813によって、予め設定された期間(例えば、5秒間)内に加速度αの絶対値が閾値加速度α3以上である状態が複数回発生したか否かの判定が行われる(ステップS121)。ステップS121でNOの場合には、処理がステップS129へ進められる。ステップS121でYESの場合には、処理がステップS123へ進められる。
そして、第3判定部813によって、第3車両状態ST3が発生していると判定される(ステップS123)。次いで、特定状態記録部815によって、第3車両状態ST3を示す情報が、第3車両状態ST3の始点位置P31及び終点位置P32とを示す情報と対応付けられて特定状態記憶部816に記録される(ステップS125)。次に、特定状態記録部815によって、第3車両状態ST3が発生した累積距離L3が今回分加算されて特定状態記憶部816に記録され(ステップS127)、処理がステップS129へ進められる。
ステップS119でNOの場合、ステップS121でNOの場合、又は、ステップS127の処理が終了した場合には、第4判定部814によって、加速度センサ109によって検出された加速度βが加速度閾値β0以上であるか否かの判定が行われる(ステップS129)。ステップS129でNOの場合には、処理が図11のステップS101へリターンされる。ステップS129でYESの場合には、処理がステップS131へ進められる。
そして、第4判定部814によって、第4車両状態ST4が発生していると判定される(ステップS131)。次いで、特定状態記録部815によって、第4車両状態ST4を示す情報と、地図上の位置P4とが対応付けられて特定状態記憶部816に記録される(ステップS133)。次に、特定状態記録部815によって、第4車両状態ST4が発生した回数(累積発生回数)N4が1回分インクリメントされて特定状態記憶部816に記録され(ステップS135)、処理が図11のステップS101へリターンされる。
このようにして、「特定車両状態」(第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4)を示す情報と、「特定車両状態」が発生している地図上の位置情報とが対応付けて特定状態記憶部816に記憶される。
−車両の制御装置(ECU)の基準補正動作−
次に、図13を参照して、ベルト挟圧力Fの基準値F0を補正する処理について説明する。図13は、図8に示す「車両の制御装置」の基準補正動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、全て基準値補正部819によって実行される。まず、特定状態記憶部816から累積発生回数N1、N2、N4、累積距離L3、累積走行距離LTが読み出される(ステップS201)。そして、ステップS201で読み出された累積走行距離LTが、距離閾値LT0(ここでは、5000km)以上であるか否かの判定が行われる(ステップS203)。ステップS203でNOの場合には、処理がリターンされる。ステップS203でYESの場合には、処理がステップS205へ進められる。
そして、上記(1)式及び上記(2)式によって、負荷率Iが求められる(ステップS205)。次に、図10に示すグラフG1(より具体的には、ROM82等に格納されたグラフG1を示すマップ、又は、LUT)を用いて補正値ΔFが求められる(ステップS207)。そして、上記(3)によって、ベルト挟圧力Fの基準値F0が補正されて、ベルト挟圧力Fの基準値F1が求められ(ステップS209)、処理がリターンされる。
このようにして、特定状態記憶部816に格納されている累積発生回数N1、N2、N4、累積距離L3、累積走行距離LTに基づいて、ベルト挟圧力Fの基準値F0が補正され、ベルト挟圧力Fの補正後の基準値F1が求められる。
−車両の制御装置(ECU)の制御動作−
次に、図14を参照して、ベルト挟圧力Fを制御する処理について説明する。図14は、図8に示す「車両の制御装置」の制御動作の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、便宜上、「特定車両状態」が第3車両状態ST3である場合について説明する。まず、圧力制御部818によって挟圧力Fが図13のステップS209で求められた基準値F1に設定される(ステップS301)。次に、位置判定部817によって、特定状態記憶部816に記憶されている「特定車両状態」(第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4、ここでは、第3車両状態ST3)が記録された区間に車両が接近しているか否かの判定が行われる(ステップS303)。ステップS303でNOの場合には、処理がステップS313へ進められる。ステップS303でYESの場合には、処理がステップS305へ進められる。
ここで、上記「区間」について説明する。ナビゲーション装置80等で使用される地図に含まれる道路は、予め設定された位置(例えば、信号、交差点等)にノードNnが設定されている。また、2つのノードN(n−1)、Nn間の道路は、リンク(区間)Lnとして設定されている。すなわち、「区間」とは、地図上の道路に予め設定された2つのノードN(n−1)、Nn間の道路を意味している。
そして、位置判定部817によって、第3車両状態ST3が発生した開始位置P31に接近したか否かの判定が行われる(ステップS305)。ステップS305でNOの場合には、処理が待機状態とされる。ステップS305でYESの場合には、処理がステップS307へ進められる。次いで、圧力制御部818によって、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fが増大される(ステップS307)。次いで、位置判定部817によって、第3車両状態ST3が発生した終点位置P32を通過しか否かの判定が行われる(ステップS309)。ステップS309でNOの場合には、処理がステップS307に戻される。ステップS309でYESの場合には、処理がステップS311へ進められる。そして、圧力制御部818によって、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fが基準値F1に戻される(ステップS311)。
ステップS303でNOの場合、又は、ステップS311の処理が終了した場合には、車両が次に進入する区間が走行履歴の無い区間であるか否かの判定が行われる(ステップS313)。ステップS313でNOの場合には、処理がステップS301へリターンされる。ステップS313でYESの場合には、処理がステップS315へ進められる。そして、基準値補正部819によって、図13のステップS207で求められた基準補正値ΔFが負であるか否かの判定が行われる(ステップS315)。ステップS315でNOの場合には、処理がステップS301へリターンされる。ステップS315でYESの場合には、処理がステップS317へ進められる。そして、基準値補正部819によって、ベルト挟圧力Fの基準値F0に戻され(ステップS317)、処理がステップS301へリターンされる。
このようにして、過去の走行において「特定車両状態」が発生した位置において、ベルト式無段変速機4のベルト43の挟圧力Fが増大されるため、ベルト挟圧力Fを適正に制御することができる。
また、走行履歴の道路を走行する場合には、ベルト挟圧力Fが基準値F0以下に設定されることがないため、ベルト式無段変速機4のベルト43のスリップの発生を抑制することができる。
−他の実施形態−
本実施形態では、「車両の制御装置」を構成する第1判定部811、第2判定部812、第3判定部813、第4判定部814、特定状態記録部815、特定状態記憶部816、位置判定部817、圧力制御部818、及び、基準値補正部819が機能部として構成されている場合について説明するが、第1判定部811、第2判定部812、第3判定部813、第4判定部814、特定状態記録部815、特定状態記憶部816、位置判定部817、圧力制御部818、及び、基準値補正部819の少なくとも1つが電子回路等のハードウェアから構成されている形態でもよい。
本実施形態では、「特定車両状態」に第1車両状態ST1〜第4車両状態ST4が含まれる場合について説明したが、「特定車両状態」に、第4車両状態ST4が含まれる形態であればよい。