JP4114548B2 - 動力源と無段変速機との協調制御装置および制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関などの動力源と、その出力側に無段変速機とを協調して制御する制御装置に関し、特にその無段変速機の挙動に関連して動力源を協調して制御する装置および制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの車両においては、駆動トルクをエンジンなどの動力源で発生させるとともに、クラッチや変速機などの伝動機構を介して車輪に伝達している。その伝動機構の伝達トルク容量を大きくすれば、動力源から入力されるトルクを駆動輪などの出力側に伝達できるが、必要以上に伝達トルク容量を大きくするとそのために消費する動力も増大するので、車両の全体としての燃費が悪化する。そのために、従来一般には、伝動機構の伝達トルク容量を設定する油圧を動力源の出力に対応させて予め定めておき、もしくは動力源の出力を油圧の調圧レベルに反映させるように制御装置を構成している。
【0003】
特に車両用の無段変速機においては、ベルトやパワーローラなどを挟み付ける挟圧力を高くすると、伝達トルク容量が増大する反面、無段変速機での動力の伝達効率が低下する。また反対に、挟圧力をある程度低く設定した場合、車両の走行状態あるいは駆動状態は必ずしも常時一定とはならないので、無段変速機などの伝動機構に一時的に大きいトルクが作用したり、その結果、滑りが生じたりすることがある。また、滑りの生じる限界挟圧力を求めるために、意図的に微少滑りを生じさせる場合もある。そのため、過剰な滑りを生じさせない範囲で挟圧力を低くするには、高い精度の制御が要求される。
【0004】
従来、伝動機構の一例としてのベルト式無段変速機に滑りが発生した場合、理論変速変化率と実変速変化率とを比較し、その比較結果に基づいて滑りを検出し、その滑りを抑制するために、ライン圧を増加することにより挟圧力を増大させたり、スロットル開度を閉じ、あるいは点火時期を遅角し、もしくは燃料供給量を低減することによりエンジンの出力を低下させる装置が、特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−11022号公報(請求項1,5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許文献1に記載されているように、無段変速機でのベルト滑りが検出された場合に、その滑りを抑制もしくは収束させるために挟圧力を増大させると、ベルトが滑ることにより制限されていた無段変速機に作用するトルクが増大し出力軸トルクが変化する。また、無段変速機の入力側のエンジンや電気モータの出力を低下させれば、無段変速機に作用するトルクが低下するから、その滑りを抑制もしくは収束させることができる。しかしながら、そのようなエンジンもしくは電気モータの出力を走行中に低下させ、ベルト滑りの収束後にもその低下状態が継続していると、駆動輪での駆動トルクも低下する。このように、出力軸トルクや駆動トルクが変化すると、それに伴うショックが生じ、あるいは違和感を与える可能性がある。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、無段変速機の滑りなどに対応した動力源の出力変化に起因するショックや違和感を防止することのできる装置および制御方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源の出力側に無段変速機が連結され、その無段変速機での滑りの有無を判定し、該滑りが発生していると判定された場合に、無段変速機のトルク容量を設定する挟圧力を増大するとともに、前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との協調制御装置において、前記滑りの収束判定の成立時もしくはそれ以降に、前記挟圧力の実圧力を、前記滑りを生じさせずに前記入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力もしくは該滑り限界挟圧力に前記滑りに対する余裕代を付加した挟圧力まで増大させ、その後に、前記低減させた入力トルクの実トルクが復帰を完了するように入力トルクを制御する挟圧力・入力トルク順序制御手段を備えていることを特徴とする動力源と無段変速機との協調制御装置である。
一方、請求項4の発明は、動力源の出力側に無段変速機が連結され、該無段変速機での滑りの有無を検出し、該滑りの発生を判定した場合に前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との制御方法において、前記滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させ、その後、前記滑りの収束を判定した場合に、前記無段変速機の挟圧力の実圧力を、前記滑りを生じさせずに前記入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力もしくは該滑り限界挟圧力に前記滑りに対する余裕代を付加した挟圧力まで増大させ、その後、前記低減させた入力トルクの実トルクの復帰を完了させることを特徴とする動力源と無段変速機との制御方法である。
そして、請求項5の発明は、動力源の出力側に無段変速機が連結され、該無段変速機の挟圧力の低下により生じた該無段変速機での滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との制御方法において、前記滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させ、その後、前記滑りの収束を判定した場合に、前記挟圧力の実圧力を前記滑りが発生する以前の挟圧力まで増大させ、その後、前記低減させた入力トルクの実トルクを前記滑りが発生する以前の入力トルクまで増大させることを特徴とする動力源と無段変速機との制御方法である。
【0009】
したがって請求項1,4,5の発明では、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り開始時点の実際の入力トルクと釣り合う挟圧力、すなわち滑りを生じさせずに入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、挟圧力の増大指令時期とその増大指令量と低減させた入力トルクの増大指令時期とが調整される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動が大きくなることによる違和感の発生などが防止もしくは抑制される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記入力トルクの実トルクの低減量を、前記無段変速機の回転数から求められる実変速比と前記滑りの発生判定時もしくは前記滑りの発生判定前における実変速比のストア値に基づいて推定される推定変速比との比較値と、前記動力源の回転数とに基づいて設定する入力トルク低減量設定手段を更に備えていることを特徴とする協調制御装置である。
【0011】
したがって請求項2の発明では、実際の入力トルクの低減量が、例えば、無段変速機の実変速比と推定変速比との偏差などの比較値と、その時点の動力源の回転数などの動作状態とに基づいて適正に調整される。すなわち、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、入力トルクの低減指令量が設定される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動による違和感の発生などが防止もしくは抑制される。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記入力トルクの実トルクの低減を延長する制御における前記入力トルクの低減延長時間を、前記無段変速機の回転数から求められる実変速比と前記滑りの発生判定時もしくは前記滑りの発生判定前における実変速比のストア値に基づいて推定される推定変速比との比較値に基づいて設定する入力トルク低減延長時間設定手段を更に備えていることを特徴とする協調制御装置である。
【0013】
したがって請求項3の発明では、実際の入力トルクの低減延長時間が、例えば、無段変速機の実変速比と推定変速比との偏差の最大値などの比較値に基づいて調整される。すなわち、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、入力トルクの低減指令継続時間が設定される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動による違和感の発生などが防止もしくは抑制される。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする動力源および無段変速機を含む駆動系統の一例を説明すると、図5は、ベルト式無段変速機1を含む駆動系統の一例を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0015】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0016】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0017】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図5に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0018】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0019】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0020】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、ロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0021】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0022】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0023】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0024】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0025】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。例えば、加減速が比較的頻繁におこなわれたり、路面の凹凸もしくは起伏がある場合などのいわゆる非定常的な走行状態では、無段変速機1を制御する油圧系統における全体の元圧となるライン圧もしくはその補正圧によってベルト挟圧力が設定される。これに対して平坦路をある程度以上の車速で定速走行しているなどの定常状態もしくはこれに準ずる準定常状態では、滑りを生じずに入力トルクを伝達できる最低の圧力すなわち滑り限界挟圧力に所定の安全率もしくは滑りに対する余裕伝達トルクを設定する圧力を加えたベルト挟圧力に設定される。
【0026】
定常走行状態もしくは準定常走行状態であることによりベルト挟圧力を上記のように低下させている場合には、滑り限界挟圧力に付加してある圧力すなわち滑りに対する余裕が少ないので、エンジン5側からの入力トルクが増大すると、滑りが生じやすい。入力トルクの増大による無段変速機1の滑りは、入力トルクを低下させることにより収束させることができるが、無段変速機1に対する入力トルクの低下に伴う車両全体としての駆動トルクの低下を抑制もしくは防止するために、この発明に係る協調制御装置は、以下に述べる制御を実行するように構成されている。図1ないし図3はその制御例を説明するためのフローチャートであり、図4は図1ないし図3に示す制御を実行した場合の挟圧力や変速比などの変化を示すタイムチャートである。
【0027】
図1において、先ず、制御前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップS101)。その制御前提条件は、例えば車両の走行状態が定常状態もしくは準定常状態であること、ベルト挟圧力の補正が完了していないこと、制御機器にフェイルが生じていないことなどである。
【0028】
制御前提条件が成立していないことによりステップS101で否定的に判断された場合には、ステップS102へ進み、タイマー値Tがゼロリセットされる(ステップS102)。そして、挟圧力の低下制御をおこなわず、もしくは中止して(ステップS103)、このルーチンを一旦終了する。すなわちステップS103で、挟圧力を通常挟圧力に復帰させる。
【0029】
一方、制御前提条件が成立していることによりステップS101で肯定的に判断された場合には、フラグF1が“1”であるか否かが判断される(ステップS104)。このフラグF1は、無段変速機1におけるベルト17の滑りが検出された場合に“1”にセットされるフラグであり、当初は“0”にセットされている。したがってフラグF1が“0”であることによってこのステップS104で否定的に判断された場合は、ステップS105へ進み、タイマー値Tが挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp より小さいか否かが判断される。
【0030】
タイマー値Tが挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp より小さい、すなわち挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp に達していないことによりステップS105で肯定的に判断された場合は、ステップS106へ進み、挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が挟圧力油圧ステップダウン量Pdstepdw に設定され出力され、このルーチンを一旦終了する。
【0031】
この制御は、図4のタイムチャートにおいて「Phase1」で示される制御であって、挟圧力がステップダウンされる際、挟圧力の油圧が安定するのを待つための時間として予め定められた、挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp の間油圧を保持し、その油圧が安定した後に、後述のベルト滑りを検出するための挟圧力低下をおこなうための制御である。
【0032】
一方、タイマー値Tが挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp 以上となり、すなわち挟圧力油圧ステップダウン保持時間Trmp が経過したことによりステップS105で否定的に判断された場合は、ステップS107へ進み、挟圧力を徐々に低下する制御が開始される。すなわち、現在の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が、前回の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i-1) から微少油圧低下量ΔPdswpdwを差し引いた値に設定され出力される。
【0033】
ステップS107で挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が出力されるとステップS108へ進み、エンジン回転数Ne(i)、プライマリ回転数Nin(i) 、セカンダリ回転数Nout(i)、挟圧力実油圧Pact(i)などをが計測され、ステップS109で、そのプライマリ回転数Nin(i) とセカンダリ回転数Nout(i)とから実変速比γ(i) が算出される。そして、ステップS110でこれらの、実変速比γ(i) 、挟圧力実油圧Pact(i)、挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) などをストア値として保存する。
【0034】
続いて、無段変速機1におけるベルト17の滑りの有無が判定される(ステップS111)。ベルト滑りの有無の判定は、例えば、実変速比γの時間変化量である変速速度Δγが、所定時間内に所定値以上となった場合にベルト滑りと判定することができる。
【0035】
このステップS107ないしS111の制御は、図4のタイムチャートにおいて「Phase2」で示される制御の一部で、無段変速機1におけるベルト17の滑りを検出するため、そのベルト滑りが検出されるまで挟圧力を徐々に低下させる制御である。
【0036】
ベルト滑りの発生が判定されないことによりステップS111で否定的に判断された場合には、このルーチンを一旦終了する。これに対して、無段変速機1でベルト滑りが生じたことによりステップS111で肯定的に判断された場合には、ステップS112へ進みフラグF1を“1”にセットし、図2のフローチャートに示すマクロスリップ防止制御を主とするルーチンへ進む。なお、前述のステップS104でフラグF1が“1”であることによってこのステップS104で肯定的に判断された場合においても、同様にマクロスリップ防止制御のルーチンへ進む。
【0037】
図2において、先ず、フラグF2が“1”であるか否かが判断される(ステップS201)。このフラグF2は、後述するステップS202ないしS205の各ステップにおいて、各マクロスリップ防止パラメータが設定された場合に“1”にセットされるマクロスリップ防止パラメータ設定フラグであり、当初は“0”にセットされている。したがってフラグF2が“0”であることによってこのステップS201で否定的に判断された場合は、ステップS202へ進み、挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay がエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定される。
【0038】
また、ステップS203で挟圧力微少油圧アップ量ΔPdswpupがエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定される。この挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay と挟圧力微少油圧アップ量ΔPdswpupとが、図4のタイムチャートにおける「勾配A」に相当するパラメータである。そして、このステップS202,S203の制御が、図4のタイムチャートにおいて「Phase3」で示される制御であって、ベルト滑りが検出された後、出力軸トルクに大きな変動を生じさせないよう緩やかな所定の勾配、すなわち「勾配A」で挟圧力をスイープアップさせる制御である。
【0039】
挟圧力油圧の低下を停止する際、通常は、油圧の低下指令を停止させただけでは不可避的な制御の応答遅れによって、実油圧にアンダーシュートが生じて安全率SFが低下し、過剰なベルト滑りすなわちマクロスリップが生じる場合がある。そのため、このように挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay と挟圧力微少油圧アップ量ΔPdswpupとを求め、この「勾配A」を設定することによって、適正な安全率SFを確保し、マクロスリップの発生を防止もしくは抑制することができる。さらにこの「勾配A」は、挟圧力実油圧の急激な変動による出力軸トルクの過大な変動を防ぎ、その変動のショックによる不快感を防止もしくは抑制することをも目的として設定される。
【0040】
続いて、ステップS204でエンジントルクダウンの低減量変更時間Ttrqgchg がエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定され、ステップS205でエンジントルクダウン遅角減衰量Δtrqdwswup が同様にエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定される。そしてその後、マクロスリップ防止パラメータ設定フラグF2が“1”にセットされる(ステップS206)。
【0041】
この発明における協調制御では、図4のタイムチャートに示すように、滑りが収束するA点と、挟圧力実油圧が滑りが開始された時点の挟圧力実油圧まで復帰する挟圧力復帰到達点であるB点と、低減させた実エンジントルクが復帰するC点とが、制御開始から、A点、B点、C点の順序で制御されることが必要となる。この時、エンジントルクダウン制御の応答がエンジン回転数Ne に依存して変化する。そのため、上記のステップS202ないしS205で、挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay 、挟圧力微少油圧アップ量ΔPdswpup、エンジントルクダウンの低減量変更時間Ttrqgchg 、エンジントルクダウン遅角減衰量Δtrqdwswup の各マクロスリップ防止パラメータをエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定することによって、そのエンジン回転数Ne の変化による応答変化に対応して、適正に順序制御をおこなうことができる。なお、このようなエンジン回転数Ne(i)に基づいて設定される各パラメータは、例えばエンジン回転数Ne(i)の関数、あるいはマップ値から求めることができる。
【0042】
続いて、ステップS207で推定変速比γ'(i)が算出される。この推定変速比γ'(i)は、例えば、ベルト滑り検出時あるいはベルト滑り検出時の所定時間前(未ベルト滑り状態時)における実変速比γのストア値から、実変速比γの変化量を算出し、その変化量に基づいて算出することができる。
【0043】
そして、ステップS208で実変速比γ(i) と上記のステップS207で求めた推定変速比γ'(i)との偏差γdiv(i)が算出され、この偏差γdiv(i)に応じてエンジントルクダウンがおこなわれるように、エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)が算出される(ステップS209)。この制御が、図4のタイムチャートにおいて「Phase5」で示される制御である。
【0044】
次に、ステップS210で実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差の最大値Dltrtomaxが、0か否かが判断される。実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差の最大値Dltrtomaxが0であることによってこのステップS210で肯定的に判断されると、ステップS211へ進み、この偏差の最大値Dltrtomaxが現在の実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差γdiv(i)に設定される。さらに、ステップS212へ進み、この偏差の最大値Dltrtomaxに基づいて、前述のステップS205で求めたエンジントルクダウン遅角減衰量Δtrqdwswup が補正され、エンジントルクダウン遅角初期値調整量Δtrqdwswtm が設定される。
【0045】
また、実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差の最大値Dltrtomaxが0でないことによってこのステップS210で否定的に判断されると、ステップS213へ進み、実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差γdiv(i)がこの偏差の最大値Dltrtomaxより大きいか否かが判断される。実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差γdiv(i)がこの偏差の最大値Dltrtomaxより大きいことによってこのステップS213で肯定的に判断されると、ステップS211へ戻る。一方、実変速比γ(i) と推定変速比γ'(i)との偏差γdiv(i)がこの偏差の最大値Dltrtomax以下であることによってこのステップS213で否定的に判断されると、ステップS211を飛ばしてステップS212へ進み、同様に以降の制御が実行される。
【0046】
実変速比γ と推定変速比γ'との偏差γdiv の最大値Dltrtomaxが大きい場合、すなわちベルト滑り量が大きい場合は、挟圧力実油圧の低下量も大きくなり、その挟圧力実油圧が復帰を完了するまでの時間が長くなって、前述の挟圧力復帰到達点B点が遅れることが想定される。そのため、実エンジントルク復帰点C点もそれに合わせて遅延させる必要がある。
【0047】
このステップS210ないしS213の制御は、図4のタイムチャートにおいて「Phase6」で示される部分に相当する制御であり、エンジントルクダウン遅角減衰量Δtrqdwswup とエンジントルクダウン遅角初期値調整量Δtrqdwswtm とを、実変速比γと推定変速比γ'との偏差γdivの最大値Dltrtomaxに応じて補正もしくは設定して、挟圧力復帰到達点B点に対する実エンジントルク復帰点C点の時期を適正に設定するための制御である。
【0048】
ステップS212でエンジントルクダウン遅角減衰量Δtrqdwswup が補正され、エンジントルクダウン遅角初期値調整量Δtrqdwswtm が設定されると、図3のフローチャートに示すルーチンへ進む。
【0049】
図3において、先ず、フラグF3が“1”であるか否か、かつ、フラグF6が“1”であるか否かが判断される(ステップS301)。このフラグF3は、後述するステップS311において、エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)がエンジントルクダウン終了閾値βよりも小さい場合、すなわちエンジントルクダウンが終了された場合に“1”にセットされるエンジントルクダウン終了フラグである。また、フラグF6は、後述するステップS320において、低下させた挟圧力を通常の挟圧力への復帰が完了された場合に“1”にセットされる挟圧力油圧復帰終了フラグであり、このフラグF3,F6とも当初は“0”にセットされている。言い換えれば、このステップS301では、エンジントルクダウンが終了している、かつ、低下させた挟圧力が通常挟圧力への復帰を完了している、か否かが判断される。したがって図3のルーチンを開始した当初はエンジントルクダウン終了フラグF3が“1”でない、かつ、挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”でないことによってこのステップS301で否定的に判断された場合は、ステップS302へ進み、エンジントルクダウン終了フラグF3が“1”であるか否かが判断される。
【0050】
エンジントルクダウンフラグF3が“1”でないこと、すなわちエンジントルクダウンが終了していない、もしくはエンジントルクダウンが開始されていないことによってこのステップS302で否定的に判断された場合は、ステップS303へ進み、無段変速機1におけるベルト17の滑りが収束したか否かが判定される。ベルト滑りが収束していないことによりステップS303で否定的に判断されると、ステップS304へ進み、エンジントルクダウン低減量変更時間Ttrqgchg 以上の時間が経過したか否かが判断される。そして、エンジントルクダウン低減量変更時間Ttrqgchg 以上の時間が経過したことによりステップS304で肯定的に判断されると、ステップS306へ進み、前述のステップS209で算出されたエンジントルクダウン量Ctrqdw を所定比率α(0<α<1)で低減し、エンジントルクダウンをおこなう。
【0051】
実エンジントルクは指令値に対して不可避的な制御遅れを伴って変動するため、ベルト滑りの収束間際にエンジントルクダウン指令が出力されると、過剰な実エンジントルクダウンが生じ、過大な出力軸トルクが発生する場合がある。上記のように、エンジントルクダウン低減量変更時間Ttrqgchg の経過をみて、所定比率αで低減したエンジントルクダウン量Ctrqdw でエンジントルクダウンをおこなうことによって、出力軸トルクの過大な変動を防ぎ、その変動のショックによる違和感を防止もしくは抑制することができる。
【0052】
なお、前述のステップS301で、エンジントルクダウン終了フラグF3が“1”かつ、挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”であることによって肯定的に判断された場合は、ステップS324へ進み、ベルト滑り開始時の挟圧力実油圧から滑り限界挟圧力を求め、路面入力対応分などのベルト滑りに対する余裕代を付加して、挟圧力のマップ値が補正される。次いで、フラグがゼロリセットされる(ステップS325)。そして、実変速比γと推定変速比γ'との偏差γdivの最大値Dltrtomaxがゼロリセットされストア値がクリアされて(ステップS326)、その後、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。
【0053】
また、前述のステップS303で、ベルト滑りが収束したことにより肯定的に判断されると、ステップS307へ進み、フラグF4が“1”であるか否かが判断される。このフラグF4は、後述するステップS311において、エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)がエンジントルクダウン終了閾値βよりも小さい場合に“0”にセットされ、ステップS308でエンジントルクダウン量Ctrqdw が、エンジントルクダウン初期値Ccst にエンジントルクダウン遅角初期値調整量Δtrqdwswtm を加えた値に設定された場合に“1”にセットされるエンジントルクダウン延長フラグである。そしてこのフラグF4は当初は“0”にセットされている。
【0054】
したがってフラグF4が“1”でないことによってこのステップS307で否定的に判断された場合は、ステップS308へ進み、エンジントルクダウン量Ctrqdw が、エンジントルクダウン初期値Ccst にエンジントルクダウン遅角初期値調整量Δtrqdwswtm を加えた値に設定される。そして、前述したようにステップS309でエンジントルクダウン延長フラグF4が“1”にセットされ、次のステップS305で、このステップS308で求めたエンジントルクダウン量Ctrqdw によるエンジントルクダウン指令が出力される。そしてその後、ステップS314へ進む。
【0055】
一方、エンジントルクダウン延長フラグF4が“1”であることによってステップS307で肯定的に判断された場合は、ステップS310へ進み、現在のエンジントルクダウン量Ctrqdw(i)が、前回のエンジントルクダウン量Ctrqdw(i-1)からエンジントルクダウン減衰量Δtrqdwswup を差し引いた値に設定される。そして、次のステップS311で、エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)がエンジントルクダウン終了閾値βよりも小さいか否か、すなわちエンジントルクダウンが終了されたか否かが判断される。
【0056】
エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)がエンジントルクダウン終了閾値βより小さいことにより、ステップS311で肯定的に判断された場合は、ステップS312,S313へ進み、前述したようにエンジントルクダウン終了フラグF3が“1”にセットされ、エンジントルクダウン延長フラグF4が“0”にセットされる。そしてその後、ステップS314へ進む。一方、エンジントルクダウン量Ctrqdw(i)がエンジントルクダウン終了閾値β以上となったことにより、ステップS311で否定的に判断された場合は、前述のステップS305へ進み、同様に以降の制御が実行される。
【0057】
このステップS310ないしS313の制御は、図4のタイムチャートにおいて「Phase7」で示される部分に相当する制御であり、挟圧力実油圧がベルト滑りが開始された時点の挟圧力実油圧まですなわち挟圧力復帰到達点B点まで復帰をする間、実エンジントルクをトルクダウンすることによって、再滑りを防止することを目的とした制御である。また、挟圧力復帰到達点B点と実エンジントルク復帰点C点とが確実にB点、C点の順序で制御が実行され、出力軸トルクに大きな変動を生じさせないようにスイープアップしてエンジントルクダウンを延長する制御である。すなわちこのスイープアップ勾配が、図4のタイムチャートにおける「勾配B」である。
【0058】
なお、このエンジントルクダウンの延長時間およびスイープアップ勾配はエンジン回転数Ne に基づいて設定される。そのため、エンジン回転数Ne の変化によりエンジントルクダウン制御の応答が変化した場合においても、そのエンジン回転数Ne の変化に対応して挟圧力復帰到達点B点と実エンジントルク復帰点C点とが設定され、適正に順序制御をおこなうことができる。
【0059】
前述のステップS302で、エンジントルクダウン終了フラグF3が“1”であることによって肯定的に判断された場合は、次のステップS303ないしS306の制御をおこなわずステップS314へ進み、挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”であるか否かが判断される。また、ステップS306で、所定比率αで低減したエンジントルクダウン量Ctrqdw でエンジントルクダウン指令が出力された場合、およびステップS305でエンジントルクダウン量Ctrqdw によるエンジントルクダウン指令が出力された場合、およびステップS311で肯定的に判断されS313でエンジントルクダウン延長フラグF4が“0”にセットされた場合も、ステップS314へ進み、同様に以降の制御が実行される。
【0060】
挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”であることによって、ステップS314で肯定的に判断されると、以降の制御はおこなわず、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。一方、挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”でないことによって、ステップS314で否定的に判断されると、ステップS315へ進み、フラグF5が“1”であるか否かが判断される。
【0061】
このフラグF5は、前述の挟圧力油圧復帰終了フラグF6と同様にステップS320において、低減された挟圧力の復帰が完了された場合に“0”にセットされ、後述のステップS322で現在の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) の継続指令が出力された場合に“1”にセットされる挟圧力油圧復帰開始フラグであり、当初は“0”にセットされている。したがってこの挟圧力油圧復帰開始フラグF5が“1”でないことによってこのステップS315で否定的に判断された場合は、前述のステップS322へ進み、現在の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が継続され、挟圧力油圧復帰開始フラグF5が“1”にセットされる(ステップS323)。その後、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。
【0062】
次に、挟圧力油圧復帰開始フラグF5が“1”であることによってステップS315で肯定的に判断された場合は、ステップS316へ進み、挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay 以上の時間が経過したか否かが判断される。挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay 以上の時間が経過していないことによりステップS316で否定的に判断された場合は、ステップS317へ進み、現在の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が前回の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i-1) に挟圧力油圧スイープアップ量ΔPdswpupを加えた値に設定され、その後、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。
【0063】
一方、挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay 以上の時間が経過したことによりステップS316で肯定的に判断された場合は、ステップS318へ進み、現在の挟圧力油圧指令値Pdtgt(i) が挟圧力油圧ステップアップ量Pdstepup に設定され、ステップS319で挟圧力油圧ステップアップ時間Tdstepup 以上の時間が経過したか否かが判断される。
【0064】
挟圧力油圧ステップアップ時間Tdstepup 以上の時間が経過していないことによりステップS319で否定的に判断された場合は、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。また、挟圧力油圧ステップアップ時間Tdstepup 以上の時間が経過したことによりステップS319で肯定的に判断された場合は、ステップS320へ進み、低下させた挟圧力を通常の挟圧力へ復帰するための指令が出力され、挟圧力油圧復帰開始フラグF5が“0”に、挟圧力油圧復帰終了フラグF6が“1”にセットされる(ステップS321)。その後、図1に示す制御フローに戻り、このルーチンを一旦終了する。
【0065】
ここで、このステップS314ないしS321の制御は、図4のタイムチャートにおいて「Phase4」で示される部分に相当する挟圧力油圧アップの制御であり、低下させた挟圧力実油圧を「Phase1」の時点における挟圧力実油圧、すなわち通常の挟圧力実油圧まで復帰させ所定期間保持する制御である。またこの時、挟圧力油圧は、前述のステップS202およびステップS203で求めた挟圧力油圧アップ指令遅延時間Tdelay と挟圧力微少油圧アップ量ΔPdswpupとによって設定される勾配でスイープアップされる。
【0066】
このように、図1ないし図4に示す制御を実行するように構成されたこの発明の協調制御装置によれば、無段変速機1の滑りが収束する時期(滑り収束点A点)に対して、挟圧力実油圧が滑りが開始された時点の挟圧力実油圧まで復帰する時期(挟圧力復帰到達点B点)と、エンジントルクダウンの開始時期と、そのトルクダウンさせた実エンジントルクが復帰する時期C点(実エンジントルクが復帰点C点)とが調整されて設定される。そのため、滑り収束直後に再度滑りが生じたり、出力軸トルクの変動による違和感の発生などを防止もしくは抑制することができる。
【0067】
また、滑りを収束させるためのエンジントルクダウンをおこなう場合に、そのエンジントルクダウンの指令時期やトルクダウン量の指令値などが、指令値に対する実エンジントルクの応答時間に影響を与えるエンジン回転数などの駆動系統の動作状態に応じて調整されて設定される。その結果、無段変速機1での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動による違和感の発生などを防止もしくは抑制することができる。
【0068】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS303ないしS323の各機能的手段が、この発明の挟圧力・入力トルク順序制御手段に相当し、その内、ステップS308,S310の各機能的手段が、この発明の入力トルク低減量設定手段に相当する。また、ステップS212の機能的手段が、この発明の入力トルク低減延長時間設定手段に相当する。
【0069】
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであり、図1に示すステップS111で判定する滑りは、走行中において無段変速機1に作用するトルクの変化に起因する滑りであってよいが、これ以外に、挟圧力を低下させて生じさせた滑りであってもよい。また、この発明で対象とする無段変速機は上述したベルト式無段変速機以外に、トラクション式(トロイダル型)無段変速機であってもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1,4,5の発明によれば、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り開始時点の実際の入力トルクと釣り合う挟圧力、すなわち滑りを生じさせずに入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、挟圧力の増大指令時期とその増大指令量と低減させた入力トルクの増大指令時期とが調整される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動が大きくなることによる違和感の発生などを防止もしくは抑制することができる。
【0071】
また、請求項2の発明によれば、実際の入力トルクの低減量が、例えば、無段変速機の実変速比と推定変速比との偏差などの比較値と、その時点の動力源の回転数などの動作状態とに基づいて調整される。すなわち、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、入力トルクの低減指令量が設定される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動による違和感の発生などを防止もしくは抑制することができる。
【0072】
さらに、請求項3の発明によれば、実際の入力トルクの低減延長時間が、例えば、無段変速機の実変速比と推定変速比との偏差の最大値などの比較値に基づいて調整される。すなわち、無段変速機での滑りが収束した時点以降に、実際の挟圧力が滑り限界挟圧力まで増大し、その後に低減させた実際の入力トルクが復帰を完了するように、入力トルクの低減指令継続時間が設定される。その結果、無段変速機での再滑りの発生や、出力軸トルクの変動による違和感の発生などを防止もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートの図1に続く部分を示す図である。
【図3】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートの図2に続く部分を示す図である。
【図4】 図1ないし図3の制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図5】 この発明で対象とする伝動機構を含む伝動系統の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 3…ロックアップクラッチ、 5…エンジン(動力源)、13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 15,16…アクチュエータ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。
Claims (5)
- 動力源の出力側に無段変速機が連結され、その無段変速機での滑りの有無を判定し、該滑りが発生していると判定された場合に、無段変速機のトルク容量を設定する挟圧力を増大するとともに、前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との協調制御装置において、
前記滑りの収束判定の成立時もしくはそれ以降に、前記挟圧力の実圧力を、前記滑りを生じさせずに前記入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力もしくは該滑り限界挟圧力に前記滑りに対する余裕代を付加した挟圧力まで増大させ、その後に、前記低減させた入力トルクの実トルクが復帰を完了するように入力トルクを制御する挟圧力・入力トルク順序制御手段を備えていることを特徴とする動力源と無段変速機との協調制御装置。 - 前記入力トルクの実トルクの低減量を、前記無段変速機の回転数から求められる実変速比と前記滑りの発生判定時もしくは前記滑りの発生判定前における実変速比のストア値に基づいて推定される推定変速比との比較値と、前記動力源の回転数とに基づいて設定する入力トルク低減量設定手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の動力源と無段変速機との協調制御装置。
- 前記入力トルクの実トルクの低減を延長する制御における前記入力トルクの低減延長時間を、前記無段変速機の回転数から求められる実変速比と前記滑りの発生判定時もしくは前記滑りの発生判定前における実変速比のストア値に基づいて推定される推定変速比との比較値に基づいて設定する入力トルク低減延長時間設定手段を更に備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の動力源と無段変速機との協調制御装置。
- 動力源の出力側に無段変速機が連結され、該無段変速機での滑りの有無を検出し、該滑りの発生を判定した場合に前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との制御方法において、
前記滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させ、
その後、前記滑りの収束を判定した場合に、前記無段変速機の挟圧力の実圧力を、前記滑りを生じさせずに前記入力トルクを伝達できる最低の挟圧力である滑り限界挟圧力もしくは該滑り限界挟圧力に前記滑りに対する余裕代を付加した挟圧力まで増大させ、
その後、前記低減させた入力トルクの実トルクの復帰を完了させる
ことを特徴とする動力源と無段変速機との制御方法。 - 動力源の出力側に無段変速機が連結され、該無段変速機の挟圧力の低下により生じた該無段変速機での滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させる動力源と無段変速機との制御方法において、
前記滑りの発生を判定した場合に、前記無段変速機への入力トルクを低減させ、
その後、前記滑りの収束を判定した場合に、前記挟圧力の実圧力を前記滑りが発生する以前の挟圧力まで増大させ、
その後、前記低減させた入力トルクの実トルクを前記滑りが発生する以前の入力トルクまで増大させる
ことを特徴とする動力源と無段変速機との制御方法。
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