JP4363761B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子を支持するための配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体素子を搭載するための配線基板を図2に示す。同図において、11は窒化アルミニウムセラミックス等から成る絶縁基板、12はTi等から成る密着金属層、13はPt等から成る第1の拡散防止層、14はAuから成る主導体層であり、15はPtから成る第2の拡散防止層であり、16は半導体素子を接着させるためのAu−Sn合金から成るロウ材層である。
【0003】
絶縁基板11の上面に被着されたAuから成る主導体層14と半導体素子を接着固定するAu−Sn合金から成るロウ材層16との間に、Ptから成る第2の拡散防止層15を配した構造にすることで、半導体素子をロウ材層16を介して接着固定する際、主導体層14のAuがロウ材層16のAu−Sn合金中に拡散するのを第2の拡散防止層15によって有効に防止するものである。また、ロウ材層16はその融点が高くなることはなく、接着時の所定の温度で完全に溶解して半導体素子を配線基板上に確実、強固に接着できることができるものであり、この構成は本出願人が提案したものである(特開平11−307692号公報参照)。
【0004】
なお、図2において、絶縁基板11の下面にはその略全面に密着金属層12、第1の拡散防止層13、主導体層14が順次積層されて成る導体層が形成されており、この導体層は、絶縁基板11を外部電気回路基板上やパッケージ内に載置固定するための接続用として用いられる。また、この導体層は接地導体層としても使用される場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来例において、第2の拡散防止層15を構成するPtの厚みが厚い場合、半導体素子を接着するために配線基板を加熱した際、第2の拡散防止層15を構成するPt中に、その上部に被着されたロウ材層16を構成するAu−Sn合金中のSnが急速に拡散し、その結果、ロウ材層16を構成するAu−Sn合金の組成がAu過多(Auリッチ)となり、融点の上昇を招き易いことがわかった。従って、接着時の所定の温度でロウ材層16のAu−Sn合金を完全に溶融させることができず、半導体素子と配線基板とが強固に接着され難いという問題があった。
【0006】
また、このような問題を解消するために、ロウ付け温度を上げ、ロウ材を完全に溶融させることも考えられるが、ロウ付け温度を上げると半導体素子に不要な熱的負荷が加わり半導体素子に熱破壊が生じたり、特性が劣化し、半導体素子が誤作動するという問題を誘発していた。
【0007】
一方、レーザダイオード(LD:半導体レーザ)やフォトダイオード(PD)等の光半導体素子を搭載する配線基板の場合、ロウ材層16が光半導体素子の側壁面に這い上がると光の進路が塞がれてしまう。これを防ぐために、ロウ材層16の厚みをさらに薄くすることが検討されている。しかし、この場合も上述したように、半導体素子を接着するために配線基板を加熱した際に、第2の拡散防止層15を構成するPt中に、ロウ材層16を構成するAu−Sn合金中のSnが急速に拡散して、ロウ材層16を構成するAu−Sn合金の組成がAuリッチとなり、ロウ材層16の融点の上昇を招き、接着時の所定の温度でAu−Sn合金を完全に溶融させることができず、半導体素子と配線基板とが強固に接着され難いという問題があった。
【0008】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、半導体素子を配線基板に、Au−Sn合金から成るロウ材層を介して接着固定するにあたり、Au−Sn合金から成るロウ材層のSnが第2の拡散防止層に拡散し、Au−Sn合金の融点が上昇するのを有効に防止し、接着時の所定の温度でAu−Sn合金を完全に溶融させ、半導体素子を確実、強固に接着固定することができる配線基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、絶縁基板の上面に、密着金属層、第1の拡散防止層、Auより成る主導体層、PtとSnとのモル比が1:2〜6:1であるPt−Sn合金より成る第2の拡散防止層、Au−Sn合金より成るロウ材層が順次積層された配線導体層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、Auより成る主導体層とAu−Sn合金より成るロウ材層との間に、PtとSnとのモル比が1:2〜6:1であるPt−Sn合金より成る第2の拡散防止層を設けたことにより、Au−Sn合金より成るロウ材層中のSnが多量に第2の拡散防止層内に拡散することを防ぐことができる。その結果、Au−Sn合金より成るロウ材層がAuリッチになることによるロウ材層の融点上昇を防ぐことができる。つまり、ロウ材層中のAuとSnとの組成比が大きく変化することがないため、接着時の所定の温度によってAu−Sn合金より成るロウ材層を完全に溶融させることができ、半導体素子を確実、強固に接着固定することができる。
【0011】
また、Pt−Sn合金より成る第2の拡散防止層のPtとSnとのモル比を1:2〜6:1としたことにより、Pt3SnまたはPtSnと表される融点の高いPt−Sn合金層が形成されるため、Au−Sn合金より成るロウ材層中のSnが多量に第2の拡散防止層内に拡散することをより効果的に防ぐことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板について以下に説明する。図1は、本発明の配線基板の断面図である。同図において、1は絶縁基板、2は密着金属層、3は第1の拡散防止層、4はAuより成る主導体層、5はPt−Sn合金より成る第2の拡散防止層、6はAu−Sn合金より成るロウ材層である。絶縁基板1は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体、窒化アルミニウム(AlN)質焼結体、炭化珪素(SiC)質焼結体、ガラスセラミック焼結体、窒化珪素(Si3N4)質焼結体、石英、ダイヤモンド、サファイア、立方晶窒化硼素、または熱酸化膜を形成したシリコンのうち少なくとも1種より成るのがよく、これらは体積抵抗率ρが1010Ω・m以上で絶縁性が良好である。
【0013】
なお、絶縁基板1は、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、ダイヤモンド、シリコンで形成するのがより好ましく、これらの熱伝導率は40W/m・K以上と高いため、配線基板の上面に接着固定される半導体素子が駆動時に熱を発しても、その熱は配線基板を介して良好に外部に伝達されるため、半導体素子を長時間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0014】
また、絶縁基板1としてガラスセラミック焼結体や石英を用いることもより好ましく、これらの比誘電率は6以下(1MHzでの測定)と小さいために、絶縁基板1が浮遊容量を持たず、その結果半導体素子に電気信号を高速で伝達させることが可能となる。
【0015】
絶縁基板1の上面に被着される配線導体層の成膜は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の薄膜形成法によりなされ、パターン加工が必要な場合は、フォトリソグラフィ法、エッチング法、リフトオフ法等によってパターン加工される。
【0016】
密着金属層2は、例えばTi,Cr,Ta,Nb,Ni−Cr合金またはTa2N等のうち少なくとも1種類より成るのがよく、第1の拡散防止層3は、例えばPt,Pd,Rh,Ru,Ni,Ni−Cr合金またはTi−W合金等のうち少なくとも1種類より成るのがよい。
【0017】
密着金属層2の厚さは0.01〜0.2μm程度が良い。0.01μm未満では、強固に密着することが困難となる傾向にあり、0.2μmを超えると、成膜時の内部応力によって剥離が生じ易くなる。
【0018】
また、第1の拡散防止層3の厚さは0.05〜1μm程度が良く、0.05μm未満ではピンホール等の欠陥が発生して第1の拡散防止層3としての機能を果たしにくい傾向にあり、1μmを超えると成膜時の内部応力により剥離が生じ易くなる。
【0019】
さらに、Auより成る主導体層4の厚さは0.1〜5μm程度が良い。0.1μm未満では、電気抵抗が大きくなる傾向にあり、5μmを超えると成膜時の内部応力により剥離を生じ易くなる。また、Auは貴金属で高価であることから、低コスト化の点で薄く形成することが好ましい。
【0020】
Auより成る主導体層4とAu−Sn合金より成るロウ材層6との間に配置された、Pt−Sn合金より成る第2の拡散防止層5の厚みは0.01〜1μm程度が良い。0.01μm未満では、第2の拡散防止層5の上層のAu−Sn合金から成るロウ材層6中のSnが、第2の拡散防止層5の下層のAu層から成る主導体層4中に拡散することを防ぐのに十分でない。また1μmを超えると成膜時の内部応力により剥離を生じ易くなる。
【0021】
本発明において、第2の拡散防止層5を形成するPt−Sn合金のPtとSnのモル比は1:2〜6:1の範囲内である。このモル比が1:2、即ちPtが33.3%未満の含有率の場合、Snがリッチな状態となり、このSnが第2の拡散防止層5の下層の主導体層4のAu中へ拡散し、Au−Sn化合物が形成される。その際に生じる体積収縮によってカーケンダールボイドと呼ばれる脆い合金層が出来てしまい、その結果この脆い合金層から剥離が発生する危険性がある。
【0022】
また、モル比が6:1、即ちPtが85.7%を超える含有率の場合、Ptがリッチな状態となり、第2の拡散防止層5の上面のAu−Sn合金より成るロウ材層6中のSnが第2の拡散防止層5側へ拡散してしまい、ロウ材層6の融点の上昇を招く。その結果、接着時の所定の温度(280〜330℃程度)でAu−Sn合金を完全に溶融させることができず、半導体素子と配線基板とが強固に接続され難い傾向にある。好ましくは、PtとSnのモル比は1:1〜3:1がよい。
【0023】
第2の拡散防止層5を構成するPt−Sn合金のPtとSnとのモル比を制御する方法としては、スパッタリング法であれば、スパッタリングターゲットを所望のPtとSnとのモル比で作製し、そのターゲットを用いて成膜する方法がある。
【0024】
半導体素子を接着固定するAu−Sn合金より成るロウ材層6の厚みは、0.5〜5μm程度が良く、0.5μm未満では、半導体素子を強固に接着することが困難となり、5μmを超えると成膜時の内部応力により剥離を生じ易くなり、またAu−Sn合金を構成するAuは貴金属で高価であることから、薄く形成する方が低コスト化の点で好ましい。
【0025】
また、Au−Sn合金から成るロウ材層6の上面に0.1μm程度の厚さのAu層を被着して、ロウ材層6の表面酸化を防ぐ構造としてもよい。
【0026】
なお、図1において、絶縁基板1の下面にはその略全面に密着金属層2、第1の拡散防止層3、主導体層4が順次積層されて成る導体層が形成されており、この導体層は、絶縁基板1を外部電気回路基板上やパッケージ内に載置固定するための接続用として用いられる。また、その際接地導体層として使用してもよい。
【0027】
配線基板に形成する配線導体層は、配線基板の一方の主面だけでなく、その主面の反対側の主面や側面に形成してもよい。また、その層構成を主面と同様にしても、または異なるものとしても構わない。
【0028】
かくして、本発明は、Au−Sn合金より成るロウ材層6中のSnが多量に第2の拡散防止層5内に拡散することを防ぎ、ロウ材層6がAuリッチになることによるその融点上昇を防ぐことができる。また、Pt−Sn合金より成る第2の拡散防止層5のPtとSnとのモル比を1:2〜6:1としたことにより、Pt3SnまたはPtSnと表される融点の高いPt−Sn合金層が形成されるため、ロウ材層6中のSnが多量に第2の拡散防止層5内に拡散することをより効果的に防ぐことができる。
【0029】
【実施例】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0030】
(実施例)
図1の配線基板を以下の工程[1]〜[3]により作製した。
【0031】
[1]絶縁基板1として、寸法が縦3mm×横3mm×高さ0.4mmで窒化アルミニウム質焼結体から成るものを用意し、絶縁基板1を洗浄後、真空蒸着法により、厚さが0.1μmのTiより成る密着金属層2、厚さが0.2μmのPtより成る第1の拡散防止層3、厚さが0.5μmのAuより成る主導体層4を順次積層させた。
【0032】
[2]この主導体層4上に、PtとSnの2つのターゲットを用いて同時に成膜を行う2元同時スパッタリング法により、Pt−Sn合金より成る第2の拡散防止層5を形成した。このとき、2つのターゲットに印加される電力を変化させることによりPtとSnとのモル比を制御して、下記表1のように各種のモル比のPt−Sn合金から成る第2の拡散防止層5をそれぞれ被着し、各種サンプルを作製した。各サンプルの第2の拡散防止層5の厚みは0.2μmで一定となるようにした。
【0033】
[3]第2の拡散防止層5の上面に、Au−Sn合金より成るロウ材層6をスパッタリング法により厚さ2μm形成した。
【0034】
上記のようにして作製した各種配線基板(表1のサンプル番号1〜12)について、半導体素子との密着性およびロウ材層6の濡れ性に関して以下のような評価を行った。
【0035】
[半導体素子との密着性]300〜330℃程度の温度に保持したヒータブロック上に配線基板を置き、約10秒後に、配線基板に接着される側の面にTi(厚さ0.05μm)、Pt(厚さ0.1μm)、Au(厚さ0.1μm)が順次被着形成されたSiチップ(寸法は縦1mm×横1mm×高さ0.4mmであり、Siを半導体材料とした半導体素子)を、ロウ材層6上に載置し接着して搭載した。
【0036】
Siチップを搭載した配線基板を冷却後、Siチップの横方向から荷重を加えるシェアテストを12種類のサンプルについて、各10個づつ行った。半導体素子との密着性の判定は、シェアテストの破壊モードがSiチップ自身の破壊またはSiチップに被着形成された配線導体層の剥がれによる場合に密着性良好とした。破壊モードがロウ材層6の内部破断または配線導体層内の界面での剥がれによる場合に密着性不良とした。なお、10個全ての試料がすべて密着性良好のものを◎、1個密着性不良のものを○、2個密着性不良のものを△とし、3個以上の密着不良が発生したものを×とした。
【0037】
[ロウ材層の濡れ性]330℃の温度に保持したヒータブロック上に配線基板を置き、表面に酸化膜層ができないように不活性ガスを吹き付け、約30秒後のロウ材層6表面の光沢の変化によって、ロウ材層6の濡れ性の評価を行った。ロウ材層6の融点が保持されている温度より上昇した場合、高融点相が析出し、表面光沢が弱くなる現象を利用したものである。ロウ材層6の濡れ性の判定は、表面光沢があるものを○、やや光沢に劣るものを△、光沢が無くざらついた表面になったものを×とした。
【0038】
12種類のサンプルの構成と、上記2種類の評価結果をまとめたものを表1に示す。この結果から、第2の拡散防止層5を形成するPtとSnのモル比は1:2〜6:1の範囲において、半導体素子との密着性およびロウ材層の濡れ性が良好であることがわかった。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、絶縁基板の上面に、密着金属層、第1の拡散防止層、Auより成る主導体層、PtとSnとのモル比が1:2〜6:1であるPt−Sn合金より成る第2の拡散防止層、Au−Sn合金より成るロウ材層が順次積層された配線導体層が形成されていることにより、半導体素子を配線基板にAu−Sn合金から成るロウ材層を介して接着固定するにあたり、Au−Sn合金から成るロウ材層のSnが第2の拡散防止層に拡散してAu−Sn合金の融点が上昇するのを有効に防止し、接着時の所定の温度でAu−Sn合金を完全に溶融させ、半導体素子を確実、強固に接着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の断面図である。
【図2】従来の配線基板の断面図である。
【符号の説明】
1:絶縁基板
2:密着金属層
3:第1の拡散防止層
4:主導体層
5:第2の拡散防止層
6:ロウ材層
Claims (1)
- 絶縁基板の上面に、密着金属層、第1の拡散防止層、Auより成る主導体層、PtとSnとのモル比が1:2〜6:1であるPt−Sn合金より成る第2の拡散防止層、Au−Sn合金より成るロウ材層が順次積層された配線導体層が形成されていることを特徴とする配線基板。
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