JP3958038B2 - 光半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野等で用いられ、半導体レーザ(LD)等の光半導体素子を収容した光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光半導体装置の断面図を図2(a),(b)に示す。図2において、1はセラミックス等からなる容器、1aは容器1の外面に接合された入力端子、2は容器1内の底面に載置されたペルチェ素子等の電子冷却素子、3は電子冷却素子2の上面に設置された載置用基板、4は光半導体素子、5は光半導体素子4が搭載されたサブマウント、6は光半導体素子4の出射光を集光させるレンズ、7はレンズ6を保持するためのレンズ保持部材、8は電子冷却素子2の温度を検出する温度検出器(温度センサ)、9は入力端子1aと光半導体素子4とを電気的に接続する配線基板である。
【0003】
さらに、配線基板9の上面図と下面図を図3(a),(b)にそれぞれ示す。図3において、19aはセラミックス等からなる絶縁基板、19bは、絶縁基板19aの一方主面に形成され、インピーダンス整合用の線路導体から成る配線導体、19cは絶縁基板19aの他方主面の全面に形成された接地導体層である。この配線基板9は、マイクロストリップライン構造になっており、高周波信号を良好に伝搬させる構造とされている。
【0004】
そして、光半導体装置に用いられるLD等の光半導体素子4は、光半導体素子4の温度が変化することによって、光半導体素子4から発光される光信号の波長が変化するという特性がある。このため、光半導体素子4から発光される光信号の波長を出来る限り一定に安定させるために、光半導体素子4の温度を一定に保つように光半導体装置は構成されている。
【0005】
即ち、光半導体素子4は、その駆動時の自己発熱と、光半導体装置の外部環境の温度と、光半導体素子4に駆動用の高周波信号を伝送させる配線基板9の発熱とにより、温度が変化する。光半導体素子4の温度変化が起らないように、光半導体装置内部に電子冷却素子2と温度検出器8とを設けている。温度検出器8が設定温度と異なる温度を検出した場合、その検出信号が光半導体装置の外部に接続された電子冷却素子2の駆動装置にフィードバックされ、その駆動装置が温度検出器8の検出温度が設定温度になるまで電子冷却素子2を駆動する。これにより、載置用基板3およびサブマウント5を介して搭載された光半導体素子4とが一定の温度に保たれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の配線基板9を用いた光半導体装置においては、以下のような問題点があった。即ち、配線基板9は、その一方の端が容器1の内面に、他の端が電子冷却素子2によって温度が一定に保たれている載置用基板3に接合されているため、電子冷却素子2より容器1側に移動した熱が、配線基板9を通って載置用基板3へ逆流する。この逆流する熱の影響で、光半導体素子4の温度を安定に制御できず、結果として光半導体素子4より発光される光信号の波長が安定しないという問題が発生していた。
【0007】
この問題を解決する一つの構成として、配線基板9を長くしてその熱抵抗を増大させ、容器1から載置用基板3への熱の逆流を抑制するものが提案されている(特開平9−223847号公報参照)。しかし、この構成では、配線基板9が長くなるため光半導体装置を小型化できないという問題点があった。
【0008】
従って、本発明は上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、光半導体素子より発光される光信号の波長を一定に保つことができる光半導体装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光半導体装置は、容器内の底面に電子冷却素子を介して載置された光半導体素子と、前記容器の内面の棚部に一端が載置されるとともに前記電子冷却素子の上面の前記光半導体素子の近傍に他端が載置され、前記光半導体素子に入力される駆動信号を伝送する配線導体が形成された配線基板とを具備した光半導体装置において、前記配線基板は、絶縁基板の一方主面に前記配線導体が形成され、他方主面の略全面に接地導体層が形成されており、該接地導体層の中央部に複数の島状の導体非形成部が一様に分布するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、配線基板が、絶縁基板の一方主面に配線導体が形成され、他方主面の略全面に接地導体層が形成されていることから、配線導体をマイクロストリップライン構造とすることができるため、駆動信号として高周波信号を用いた場合駆動信号を良好に伝送させることができる。また、熱が伝導し易い接地導体層の中央部に複数の導体非形成部が一様に分布するように配置されているため、接地導体層の面積が小さくなるとともに接地導体層における伝熱経路が長くなり、また伝熱経路が導体非形成部を迂回するように複雑化されるため、配線基板の熱抵抗を上げることができ、配線基板を介して容器から電子冷却素子へ伝わる熱量を小さくできる。その結果、光半導体素子の温度制御を安定して行なうことができ、光半導体素子より発光される光信号の波長を一定に保ち、精度のよい光通信が可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光半導体装置について以下に詳細に説明する。本発明の光半導体装置の基本的な構造は、従来の光半導体装置と同様であり、図2(a),(b)に示す通りである。即ち、1はアルミナ(Al2O3)セラミックス等のセラミックス、樹脂、金属等からなる略直方体の容器、1aは容器1の外面に形成されたメタライズ層等にロウ付け接合された入力端子である。
【0012】
本発明の光半導体装置は、容器1内の底面に電子冷却素子2を介して載置された光半導体素子4と、容器1の内面の棚部1bに一端が載置されるとともに電子冷却素子2の上面の光半導体素子4の近傍に他端が載置され、光半導体素子4に入力される駆動信号を伝送する配線導体9b(図1)が形成された配線基板9とを具備し、配線基板9は、絶縁基板9aの一方主面に配線導体9bが形成され、他方主面の略全面に接地導体層9cが形成されており、接地導体層9cの中央部に複数の島状の導体非形成部9dが一様に分布するように配置されている構成である。
【0013】
本発明では、配線基板9の他端は光半導体素子4の近傍に載置されるが、配線基板9の他端と光半導体素子4との距離は10mm程度以下であり、この場合に電子冷却素子2より容器1側に移動した熱が、配線基板9を通って載置用基板3から光半導体素子4へ逆流する現象が発生し易くなる。
【0014】
本発明の容器1の外形形状は、直方体、立方体、円筒形等の筒状等の種々の形状とし得るが、電子冷却素子2を載置できる平坦な底面を内部に有するものが好ましい。また、容器1は、上面が開口されており、内部に各部品を収容した後、開口を蓋体によって塞ぐような構成であることが、各部品を容易に収容できる点で好ましい。
【0015】
容器1の外面のメタライズ層は、容器1をセラミック積層法で作製することによって、容器1の内外面を貫通するように形成され、容器1の内面側のメタライズ層が配線基板9の配線導体にボンディングワイヤ等により電気的に接続される。
【0016】
また、2は容器1内の底面に載置されたペルチェ素子等の電子冷却素子、3は電子冷却素子2の上面に設置された載置用基板である。この載置用基板2は銅タングステン合金(Cu−W)等から成る。さらに、4はLD等の光半導体素子、5は光半導体素子4が搭載されたアルミナ(Al2O3)セラミックス等のセラミックス、樹脂等から成るサブマウント、6は光半導体素子4の出射光を集光させるレンズ、7はレンズ6を保持するためのレンズ保持部材、8は電子冷却素子2の温度を検出する温度検出器(温度センサ)、9は入力端子1aと光半導体素子4とを電気的に接続する配線基板である。上記温度検出器8は、金属酸化物やシリコン等によって形成されるサーミスタ等である。
【0017】
本発明の光半導体装置における配線基板9の上面図と下面図を図1(a),(b)に示す。図1において、9aはアルミナ(Al2O3)セラミックス等のセラミックス等からなる絶縁基板、9bは絶縁基板9aの一方主面に形成された配線導体、9cは絶縁基板9aの他方主面の略全面に形成された接地導体層である。接地導体層9cは、その少なくとも中央部に複数の四角形の導体非形成部9dが一様に分布するように配置されている。この導体非形成部9dは他方主面の略全面に分布するように形成されていてもよい。
【0018】
この導体非形成部9dは、略一定の間隔で接地導体層9cの略全面に形成されるのが好ましい。導体非形成部9dの配置パターンは図1(b)の構成に限らず、その他の種々の構成とすることができる。また、島状の導体非形成部9dの形状は、三角形、正方形や長方形である四角形、平行四辺形、菱形、台形、四角形以上の多角形、円形、楕円形、長円形等がよく、これらのうちその中心や中心線に対称的な形状である正方形、菱形、六角形等の偶数の多角形、円形がより好ましく、この場合絶縁基板9aの他方主面の熱分布を略均一にして熱抵抗を高くするのが容易になる。
【0019】
この導体非形成部9dの大きさは、正方形の場合、一辺が0.05〜1mmであることがよく、0.05mm未満では配線基板9の熱抵抗を上げるのに十分でなく、1mmを超えると、導体非形成部9dが大きくなり、高周波信号が導体非形成部9dから漏洩して接地導体層9cが接地導体層としての機能をなさず、配線導体9bで高周波信号が良好に伝送されにくくなる。また、円形の場合、半径が0.025〜0.5mmであることがよい。0.025mm未満では配線基板9の熱抵抗を上げるのに十分でなく、0.5mmを超えると、導体非形成部9dが大きくなり、接地導体層9cが接地導体層としての機能をなさず、配線導体9bで高周波信号が良好に伝送されにくくなる。さらに、その他の形状の場合も、それと同面積の正方形や円形に換算して上記の範囲とすることもできる。
【0020】
導体非形成部9dは接地導体層9cの少なくとも中央部に一様に分布しているが、これは、導体非形成部9d同士が略同方向を向いている(円形の場合は向きは無関係)とともにそれらの間隔が略一定であるということである。導体非形成部9d同士の間隔は、導体非形成部9dの大きさと同程度以下であればよく、導体非形成部9dが正方形の場合その一辺と同程度以下であり、導体非形成部9dが円形の場合その半径と同程度以下である。
【0021】
絶縁基板9aの他方主面の中央部に設けられる導体非形成部9dの総面積は、他方主面の面積の30〜70%程度であることが好ましい。30%未満では、熱伝導性の高い接地導体層9cの面積を小さくするとともに接地導体層における伝熱経路を長くしかつ伝熱経路を導体非形成部9dを迂回するように複雑化するという効果が小さくなり、配線基板9の熱抵抗を上げることが困難になる。70%を超えると、接地導体層9cの接地電位が不安定になり易く、接地導体層としての機能が得られず、配線導体9bで高周波信号が良好に伝送されにくくなる。より好ましくは40〜60%がよい。
【0022】
配線基板9を成す絶縁基板9aは、セラミックス(焼結体)や樹脂材料等の絶縁材料から成り、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体、窒化アルミニウム(AlN)質焼結体、炭化珪素(SiC)質焼結体、窒化珪素(Si3N4)質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等から成る。
【0023】
配線導体9bおよび接地導体層9cは、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、めっき法等の薄膜形成法により形成され、またフォトリソグラフィ法、エッチング法、リフトオフ法等によって所定パターンに加工される。
【0024】
配線導体9bおよび接地導体層9cは、例えば密着金属層、拡散防止層、主導体層が順次積層された3層構造の導体層から成る。密着金属層は、セラミックス等から成る絶縁基板9aとの密着性の点で、Ti,Cr,Ta,Nb,Ni−Cr合金,Ta2N等のうち少なくとも1種より成るのが良い。密着金属層の厚さは0.01〜0.2μm程度が良い。0.01μm未満では、強固に密着することが困難となり、0.2μmを超えると、成膜時の内部応力によって剥離が生じ易くなる。
【0025】
拡散防止層は、密着金属層と主導体層との相互拡散を防ぐうえで、Pt,Pd,Rh,Ni,Ni−Cr合金,Ti−W合金等のうち少なくとも1種より成るのが良い。拡散防止層の厚さは0.05〜1μm程度が良く、0.05μm未満では、ピンホール等の欠陥が発生して拡散防止層としての機能を果たしにくくなる。1μmを超えると、成膜時の内部応力により剥離が生じ易くなる。拡散防止層にNi−Cr合金を用いる場合は、密着性も確保できるため、密着金属層を省くことも可能である。
【0026】
さらに、主導体層は電気抵抗の小さいAu,Cu,Ni,Ag等から成るのがよく、その厚さは0.1〜5μm程度が良い。0.1μm未満では、電気抵抗が大きくなる傾向にあり、5μmを超えると、成膜時の内部応力により剥離を生じ易くなる。また、Auは貴金属で高価であることから、低コスト化の点でなるべく薄く形成することが好ましい。Cuは酸化し易いので、その上にNi層およびAu層からなる保護層を被覆するのが良い。
【0027】
また、配線導体9bと接地導体層9cとを同じ膜構成によって形成してもよいし、異なる膜構成によって形成してもよい。
【0028】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、容器内の底面に電子冷却素子を介して載置された光半導体素子と、容器の内面の棚部に一端が載置されるとともに電子冷却素子の上面の光半導体素子の近傍に他端が載置され、光半導体素子に入力される駆動信号を伝送する配線導体が形成された配線基板とを具備し、配線基板は、絶縁基板の一方主面に配線導体が形成され、他方主面の略全面に接地導体層が形成されており、接地導体層の中央部に複数の島状の導体非形成部が一様に分布するように配置されているため、配線導体をマイクロストリップライン構造とすることができ、駆動信号として高周波信号を用いた場合駆動信号を良好に伝送させることができる。また、熱が伝導し易い接地導体層の中央部に複数の導体非形成部が一様に分布するように配置されているため、接地導体層の面積が小さくなるとともに接地導体層における伝熱経路が長くなり、また伝熱経路が導体非形成部を迂回するように複雑化されるため、配線基板の熱抵抗を上げることができ、配線基板を介して容器から電子冷却素子へ伝わる熱量を小さくできる。その結果、光半導体素子の温度制御を安定して行なうことができ、光半導体素子より発光される光信号の波長を一定に保ち、精度のよい光通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置における配線基板について実施の形態の例を示し、(a)は配線基板の上面図、(b)は配線基板の下面図である。
【図2】本発明の光半導体装置について実施の形態の例を示し、(a)は光半導体装置の側断面図、(b)は光半導体装置の正面断面図である。
【図3】従来の光半導体装置における配線基板の一例を示し、(a)は配線基板の上面図、(b)は配線基板の下面図である。
【符号の説明】
1:容器
2:電子冷却素子
4:光半導体素子
9:配線基板
9a:絶縁基板
9b:配線導体
9c:接地導体層
9d:導体非形成部
Claims (1)
- 容器内の底面に電子冷却素子を介して載置された光半導体素子と、前記容器の内面の棚部に一端が載置されるとともに前記電子冷却素子の上面の前記光半導体素子の近傍に他端が載置され、前記光半導体素子に入力される駆動信号を伝送する配線導体が形成された配線基板とを具備した光半導体装置において、前記配線基板は、絶縁基板の一方主面に前記配線導体が形成され、他方主面の略全面に接地導体層が形成されており、該接地導体層の中央部に複数の島状の導体非形成部が一様に分布するように配置されていることを特徴とする光半導体装置。
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