JP4355955B2 - 印刷用塗被紙 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷用紙として満足できる白紙光沢と、オフセット枚葉印刷向きの印刷適性を備え、しかも、良好なインキ光沢を与える印刷用塗被紙に関する。
一般に印刷用塗被紙は、原紙の両面又は片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けて製造され、塗被層の組成やその仕上げ方によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等に分類される。これらの塗被紙は、これに多色印刷又は単色印刷を施して、リーフレット、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物として広く使用されている。近年、印刷物のビジュアル化、カラー化が進むに伴って、印刷用塗被紙には、それに適応する特性が要請され、特に、印刷後の印刷光沢(インキ光沢)の良し悪しが、重要視されている。
ところで、小ロットの商業用印刷物を調製する場合、印刷用塗被紙シートを1枚ずつ印刷するオフセット枚葉印刷が利用されることが多い。しかし、オフセット印刷では、これに供する印刷用塗被紙に改良を加えることで、高い印刷光沢を発現させ、同時に印刷効率の向上を図ることが、一般に難しいとされている。何故なら、印刷用塗被紙のインキセット性(インキ吸収度)を増大させれば、その塗被紙上に転移したインキが乾燥する速度が速まるので、印刷効率を向上させることができるが、印刷用塗被紙のインキセット性の増大は、次に説明する理由で、印刷光沢を損なう結果を通常招くからである。
一般に、オフセット枚葉印刷で使用されるインキは、顔料、樹脂、溶剤(通常、石油系溶剤)および植物油(乾性油、半乾性油など)を主要な成分としている。このインキが塗被紙上に転移すると、インキ中の溶剤が塗被層中の空隙に吸収されるのに連れて、インキの粘度は上昇し、やがて、紙面上のインキは指などで触れてもベトつかない状態(インキがセットした状態)となる。紙面上にセットされたインキは、時間の経過と共に、インキ成分である植物油が空気中の酸素と反応して高分子化し、強固な乾燥皮膜を形成する(インキが乾燥した状態)。この状態では、多少の外力が加わってもインキ皮膜が剥がれたり傷ついたりすることがない。
念のため付言すれば、インキセットの遅速は、主として塗被紙のインキセット性(=溶剤吸収能力)に依存し、インキ乾燥の遅速は、主として印刷インキ自体の組成に依存する。
従って、塗被紙のインキセット性を増大させれば、塗被紙上に転移したインキをより早く乾燥させることができる。しかしながら、オフセット印刷では、塗被紙上へのインキの転移は、ブランケット胴を介して行われ、詳しくは、ブランケット胴表面上に転移しているインキ層は、ブランケット胴から引き剥がされて塗被紙上に転写されるため、塗被紙上に転移したばかりのインキ層は、スプリットパターン(split pattern)を呈している。転写されたインキの流動性が十分であれば、このスプリットパターンは、時間の経過と共に解消されて平滑なパターンとなるので、高い印刷光沢を発現する。しかし、インキセット性の高い塗被紙は、これに転移したインキの流動性を早く失わせので、スプリットパターンを解消できないままインキ層が乾燥してしまうことが多く、このために、高い印刷光沢を持つ印刷物を得ることが難しい。
満足できる印刷効率での印刷が可能で、しかも高い印刷光沢の発現を狙った印刷用塗被紙として、従来技術は、塗被層の顔料成分に紡錘状苛性化軽質炭酸カルシウムを、全顔料の60〜90重量%使用し、接着剤成分に平均粒子経が50〜80nmであり、ゲル含有率が30〜50%である共重合体ラテックスを使用することを提案している(特許文献1参照)。また、塗被紙の塗被層上にさらに表面層を設ける提案もあり、その表面層に、ガラス転移温度が80℃以上である熱可塑性重合体と、表面サイズ剤を含有させることが提案されている(特許文献2参照)。
原紙の少なくとも片面に2層以上の塗被層を設けたオフセット印刷用塗被紙としては、最下層の塗被層に平均粒子経が100〜250nmであり、ゲル含有率が60%で以下あるラテックスバインダーを使用することが提案されている(特許文献3参照)。
また、本発明に近い従来の印刷用塗被紙の一つに、原紙の少なくとも片面に2層以上の塗被層を設け、最外塗被層の累積空隙容積と平均空隙径をそれぞれ特定範囲に規定し、しかも、ブリストー試験機で測定した標準粘度オイルの吸収係数Kaを0.35〜1.5ml/(m・ms1/2)の範囲に規定した塗被紙がある(特許文献4参照)。この印刷用塗被紙は、高い印刷光沢を発現させるために、最外塗被層の空隙率を相対的に大きくして当該塗被層のインキセット性を遅くし、最外塗被層の空隙径を相対的に大きくしたことに伴うインキセット性の過剰な遅れを、内側塗被層の空隙径を相対的に小さくすることによって抑制している。
しかし、塗被層の空隙径は、その塗被層に含まれる顔料成分の粒子径に通常依存し、空隙径を大きくするためには、粒子径の大きい顔料を使用しなければならない。従って、最外塗被層の空隙径を大きくするには、当該塗被層の顔料成分には、粒子径の小さい微細な顔料を使用できず、これに原因して特許文献4で提案されている印刷用塗被紙は、たとえこれにカレンダー処理を施しても、白紙光沢が損なわれることは否めない。
最近、オフセット印刷の分野で、印刷光沢に影響を及ぼす塗被紙のインキセット性を、インキタック値(粘着力)で評価する方法が登場している(非特許文献1参照)。この方法は、インキタック試験機(Tack Tester)を使用し、プリントディスクにて所定の印刷パターンを一定の印刷条件で、圧胴に貼り付けた塗被紙サンプルに転写した後、塗被紙サンプル上に転写した印刷パターンに、ブランケットを模したタックディスクを一定圧にて一定時間押し、しかる後、タックディスクと印刷パターンとの間のタック(粘着力)を測定する。インキタック試験機で測定されるインクタック値は、時間の経過と共に増大して最大値に到達し、その後は暫くその値を保持した後、減少するのが通例である。当初の漸増は、塗被紙上に転写されたインキ中の溶剤が塗被層内に吸収される結果、インキの粘度が徐々に上昇することに対応し、その後の漸減は、転写されたインキが、溶剤の揮散及び酸化重合して硬化することに対応する。そして、経時的に変化するインキタックの変化量は、インキ組成に当然左右されるが、塗被紙のインキセット性の良否、具体的には塗被層の空隙構造に依存すると考えられる。
高い印刷光沢を発現させる印刷用艶消し塗被紙を得る目的で、経時変化するインキタック値で塗被紙のインキセット性を調節した塗被紙も、従来提案されている(特許文献5参照)。この艶消し塗被紙は、印刷によって塗被紙上に転移したインキの急激なタック値上昇を抑えることにより、換言すれば、塗被紙のインキセット性を抑制して、高い印刷光沢の発現を狙っている。しかし、インキセット性が低い塗被紙は、印刷効率を損なう結果を招くことは先に説明したとおりであって、この不都合の解消手段を特許文献5は全く教示していない。
参考文献一覧
:特開2000−256990号公報 :特開2002−363884号公報 :特開2002−146697号公報 :特開2001−254295号公報 :特開2002−294589号公報 :1994 International Printing a nd Graphic Arts Confercnce p.209−228
本発明の目的の一つは、印刷用紙として満足できる白紙光沢と、オフセット枚葉印刷向きの印刷適性を備え、しかも、印刷効率を犠牲にすることなく良好な印刷光沢を発現できる印刷用塗被紙を提供することにある。
本発明に係る印刷用塗被紙の一つは、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設けた印刷用塗被紙において、ブリストー試験機と、JIS Z8809−1992に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液に用いて測定した前記塗被層の吸収係数Kaが、0.02〜0.35ml/(m・ms1/2)の範囲にあり、紙評価用枚葉インキ80質量%とインキ用溶剤20質量%とを混錬して調製したインキを、印圧100N、転写インキ量2.3±0.1g/mの条件下で前記塗被層に印刷してインキタック試験機にて測定されるインクタック値の最大値が、印刷を施した直後から24,5秒後と、同790.2秒後との間にあり、印刷を施した直後から24,5秒後に計測されるインキタック値が3N以下であり、印刷を施した直後から790.2秒後に計測されるインキタック値が4N以下であることを特徴とする。
上記のインキタック値測定において、印刷を施した直後から24,5秒後のインキタック値が2.5N以下であって、印刷を施した直後から669.6秒後のインキタック値が3N以下であることは、本発明の印刷用塗被紙にとってさらに好ましい。
本発明に係る印刷用塗被紙の他の一つは、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設けた印刷用塗被紙において、ブリストー試験機と、JIS Z8809−1992に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液に用いて測定した前記塗被層の吸収係数Kaが、0.02〜0.35ml/(m・ms1/2)の範囲にあり、さらにRI印刷適性試験機と紙評価用枚葉インキを用いて、印圧980N、転写インキ量4.2±0.1g/mの条件下で前記塗被紙に印刷を施して測定される裏移り汚れ輝度を256階調で評価した場合において、印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が30以下であり、印刷を施した直後から6分後の裏移り汚れ輝度が230以上であることを特徴とする。
上記の裏移り汚れ輝度評価において、印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が28以下であって、印刷を施した直後から3分後の裏移り汚れ輝度が200以上であり、印刷を施した直後から6分後の裏移り汚れ輝度が245以上であることは、本発明の印刷用塗被紙にとってさらに好ましい。
上記のように特徴付けられる本発明の印刷用塗被紙は、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設けた印刷用塗被紙において、最外塗被層の顔料成分を平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある炭酸カルシウムで5〜70質量%と、平均粒子径が0.1〜0.4μmの範囲にあるカオリン30〜95質量%とで構成させると共に、最外塗被層の接着剤成分を(a)水溶性接着剤、(b)モノマー比でアクリロニトリルを10〜35質量%含有し、平均粒子径が50〜120nmであるスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、(c)上記(b)以外の共重合体ラテックスの3成分
で構成させ、当該塗被層に含まれる上記(a),(b)及び(c)の各配合量を、当該塗被層の顔料成分100質量部当たり、それぞれ(S)質量部、(L1)質量部及び(L2)質量部として、下記の式でAの値を規定した場合において、
A(質量部)=2×(S)+1.5×(L1)+1×(L2)
但し、0≦(S)<6、 (L1)≧0、(L2)≧0
(S)+(L1)+(L2)≦16
最外塗被層に含まれる平均粒子径0.4μm以下の顔料成分の量が、
(i)顔料成分全量の60質量%以下のときは、Aの値を16〜21の範囲とし、
(ii)顔料成分全量の60質量%を超えるときは、Aの値を19〜24の範囲とし、
さらに、上記最外塗被層に接する内側塗被層の顔料成分の80〜100質量%を、平均粒子径0.1〜1.2μmの炭酸カルシウムで構成させ、当該塗被層の接着剤成分の配合量を顔料成分100質量部当たり6〜13質量部とし、かつ接着剤成分に含まれる水溶性接着剤の量を顔料成分100質量部当たり6質量部未満とすることによって取得できる。
本発明の印刷用塗被紙は、印刷用紙として満足できる白紙光沢を有し、オフセット印刷に供しても、高い印刷光沢の発現と印刷効率の向上とを両立させ得るインキセット性(インキ溶剤の吸収能力)を塗被層が備えている。このような印刷用塗被紙は、原紙の少なくとも片面に2層以上の塗被層を設け、最外塗被層及びこれに接する内側塗被層にそれぞれ使用する顔料成分及び/又は接着剤の種類と量を選択することで、最外塗被層には、印刷用紙として満足できる白紙光沢を得るために微細な顔料成分を含有させつつ、高い印刷光沢を発現させるために、最外塗被層のインキセット性を相対的に抑制し、内側塗被層のインキセット性を相対的に増大させて、最外塗被層の抑制されたインキセット性を補償することによって取得することができる。
従って、本発明では、最外塗被層と最外塗被層と接する内側塗被層の各インキセット性の遅速が極めて重要であり、本発明では前記インキセット性の程度をブリストー試験法によって測定される吸収係数Kaと、インキタック試験機で測定されるインキのタック値(粘着力)又はRI印刷適性試験機による裏移り汚れ輝度(256階調輝度)で規定する。
以下にそれら特定の試験方法を説明すると同時に、それらを特定することの意義、効果などについて詳述する。
ブリストー試験法によって測定される吸収係数Ka
最外塗被層のインキセット性のコントロールを、最外塗被層に含有させる顔料粒子によって生じる空隙径によってではなく、最外塗被層に含有させる接着剤によって塗被層の空隙状態を変化させることによって行うのが、本発明の特徴である。
このため最外塗被層の空隙径は、従来技術と異なって微細であっても良く、微細な顔料を含有させることが可能である。この最外塗被層の表層領域の空隙構造状態は、JIS Z8809−1992に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液として用いて、ブリストー試験法で測定される吸収係数Kaで特定可能である(特許文献4参照)。
本発明の印刷用塗被紙は、上記の吸収係数Kaが、0.02〜0.35ml/(m・ms1/2)にある。この範囲は、前記特許文献4に教示された塗被紙の吸収係数Kaの数値範囲(0.35〜1.5ml/(m・ms1/2)よりも小さい。この事実は、本発明の塗被紙の最外塗被層は、特許文献4の塗被紙の最外塗被層と比較して、表層部分の空隙径が小さいことを物語っている。
なお、本発明の塗被紙に印刷用紙として満足できる白紙光沢を与えるために、最外塗被層により微細な顔料を配合させるのが好ましいことから、上記した吸収係数Kaの値は、0.05〜0.15ml/(m・ms1/2)の範囲にあることがより好ましい。
インキタック試験機で測定されるインキタック値(粘着力)
本発明で言うインキタック値は、前記の非特許文献1に記載されているインキタック試験機と同じ機構をもつインキタック試験機を用い、23℃、50RH%の環境下で測定される。
供試インキには、紙評価用枚葉インキ(商品名;ベストワン紙評価用枚葉墨インキ T&K、TOKA社製)80質量%に対して、インキ溶剤(商品名;HIZレジューサー、大日本インキ化学工業社製)を20質量%加えて混錬調製したインキを使用する。インキタック試験機を用い、印圧100N、転写インキ量2.3±0.1g/mの条件の下、供試塗被紙に供試インキで印刷し、15分間のインキタック試験を行う。
そして、印刷を施した直後からから24.5秒後、669.6秒後、790.2秒後のそれぞれのインキタック値を測定すると共に、インクタック値が最大に達するのは、印刷を施した直後からから何秒後であるかを測定する。
塗被紙の最外塗被層は、インキを直接受理する層であるので、この層のインキセット性(インキ溶剤吸収能力)は、転写されたインキが乾燥する乾燥初期段階でのインキ乾燥性を支配する。これに対して、最外塗被層の下に設けられる内側塗被層のインキ溶剤吸収能力は、最外塗被層のインキ溶剤吸収能力が発現した後に発現することになるので、内側塗被層のインキ溶剤吸収能力は、インキ乾燥の中期段階から終期段階にわたるインキ乾燥性を支配する。従って、インキタック試験機によって測定されるインクタック値の経時的変化を追跡(trace)することにより、紙面に転写されたインキに残留する溶剤の多寡を、経時的に評価することができる。ちなみに、乾燥初期段階でのインキタック値は、紙面に転写されたインキに残る溶剤量、つまり、塗被層に未だ吸収されていない溶剤量と逆比例の関係にあり、未吸収溶剤量が多ければインキタック値は低く、少なければ、インキタック値は高い。また、インキ乾燥の中期段階から終期段階にわたるインクタック値は、インクに残る溶剤が減り、併せてインクの硬化によりインキタック値は低くなっていく。即ち、インク中の溶剤量が多い状態だと、硬化が進まずインキタック値は低くならない。
本発明では、上記したインキタック試験において、印刷を施した直後から24.5秒後に測定されるインキタック値にて、インキ乾燥性の初期段階を支配する塗被紙のインキ溶剤吸収能力を評価し、印刷を施した直後から669.6秒後又は790.2秒後に測定されるインクタック値にて、インキ乾燥性の中期段階から終期段階を支配する塗被紙のインキ溶剤吸収能力を評価する。
本発明の印刷用塗被紙は、これを上記のインクタック試験法に供した場合、印刷を施した直後から24.5秒後に測定されるインキタック値が、3N以下、好ましくは2.5N以下の範囲にある。この値が3Nを超える場合は、最外塗被層のインキ溶剤吸収能力が高すぎるため、高い印刷光沢を発現させることができない。
一方、印刷を施した直後から790.2秒後に測定されるインキタック値は、4N以下、好ましくは3N以下の範囲にある。この値が4Nを超えることは、インキ乾燥の終期段階に到っても、転写されたインキが未乾燥で粘着性を呈していることを意味する。従って、本発明の印刷用塗被紙は、上記のインキタック試験において、印刷を施した直後から669.6秒後に測定されるインキタック値が3N以下の範囲にあることが、さらに好ましい。
RI印刷適性試験機による裏移り汚れ評価
RI印刷適性試験機による転写汚れは、実際のオフセット枚葉印刷において、印刷機から排出される印刷物を順次積み重ね(stack)た場合の裏移り汚れに近似する。従って、本発明では、RI印刷適性試験機による転写汚れを、便宜的に裏移り汚れと呼ぶ。
裏移り汚れの評価は、23℃、50RH%の環境下、次の方法で行われる。
評価用インキとして紙評価用枚葉墨インキ(商品名;ベストワン紙評価用枚葉墨インキT&K、TOKA社製/前出)をそのまま使用する。完全自動型のRI印刷適性試験機(エスエムテー社製、PM−9005RI型)を用い、印圧980N、印刷速度1.52rpm(最小速度)、転写インキ量4.2±0.1g/mの条件で、供試塗被紙にまず全面印刷を施す。次に、供試塗被紙上の印刷面に、印刷を施した直後からの経過時間を変えて、転写ロールに巻き付けられている合成紙を、圧力0.392MPa(4.0Kgf/cm)の条件で接触させる。この場合、前記転写ロールの回転速度は、1.52rpm(最小速度)とする。
次に、上記合成紙へのインキ付着の多寡を、デジタルスキャナにて画像データとして取り込み、画像解析プログラム(商品名;DA6000、王子計測機器社製)によって、合成紙へのインキ付着の多寡を256階調の輝度で数値化する。その数値を本発明では裏移り汚れ輝度として表示する。
上記した裏移り汚れ輝度の変化を、印刷を施した直後から経時的に追跡(trace)することにより、インキタック試験法の場合と同様、塗被紙に転写されたインキの乾燥性を経時的に評価することができる。裏移り汚れ輝度の値は、塗被紙に転写されたインキに残る溶剤量、つまり、塗被層に未だ吸収されていない溶剤量と逆比例の関係にあり、未吸収溶剤量が多ければ輝度の値は小さく低く、少なければ、輝度の値は大きい。
本発明では、上記した裏移り汚れ評価において、印刷を施した直後から1分後に測定される輝度の値にて、インキ乾燥性の初期段階を支配する塗被紙のインキ溶剤吸収能力を評価し、印刷を施した直後から3分後に測定される輝度の値にて、インキ乾燥性の中期段階を支配する塗被紙のインキ溶剤吸収能力を評価し、同じく6分後に測定される輝度の値にて、インキ乾燥性の終期段階を支配する塗被紙のインキ溶剤吸収能力を評価する。
本発明の印刷用塗被紙は、これを上記したRI印刷適性試験機による裏移り汚れ評価に供した場合、印刷を施した直後から1分後に測定される裏移り汚れの輝度が、30以下、好ましくは28以下の値にある。この値が30を超える場合は、最外塗被層のインキ溶剤吸収能力が高すぎるため、高い印刷光沢を発現させることができない。
一方、印刷を施した直後から6分後に測定される裏移り汚れの輝度は、230以上、好ましくは245以上の値にある。この値が230に満たないことは、インキ乾燥の終期段階に到っても、転写されたインキが未乾燥で粘着性を呈していることを意味する。本発明の印刷用塗被紙は、上記の裏移り汚れ評価試験において、印刷を施した直後から3分後に測定される裏移り汚れの輝度が200以上であることがさらに好ましい。
本発明に係る印刷用塗被紙は、転写されたインキの溶剤を、インキ乾燥の初期段階では最外塗被層に担わせ、インキ乾燥の中期段階以降でのインキ溶剤の吸収を、最外塗被層に下に設けた内側塗被層に担わせているので、紙面に転写されたインキの乾燥速度は、乾燥初期では遅く、乾燥終期では速することができ、その結果、オフセット枚葉印刷に適用しても、所望の印刷効率で高い印刷光沢を発現させることができる。
このような印刷用塗被紙は、原紙の少なくとも片面に顔料成分と接着剤成分を含有する塗被層を少なくとも2層設けることで製造することができるが、最外塗被層とこれに接する内側塗被層の構成を、それぞれ次のように処方することが好ましい。
最外塗被層
最外塗被層の顔料成分を、平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある炭酸カルシウム5〜70質量%と、平均粒子径が0.1〜0.4μmの範囲にあるカオリン30〜95質量%で構成させる。炭酸カルシウムの配合割合の増大は、塗被紙の白紙光沢を損なうので、その配合割合は70質量%以下とすることが好ましい。
本発明の塗被紙では、最外塗被層のインキセット性(インク溶剤吸収能力)のコントロールを、当該塗被層の空隙径の加減によって行う公知の手法とは相違して、最外塗被層に使用する接着剤成分の種類と量で実現させる。
すなわち、最外塗被層の接着剤成分は、(a)水溶性接着剤、(b)モノマー比でアクリロニトリルを10〜35質量%含有し、平均粒子径が50〜120nmであるスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス及び(c)上記(b)以外の共重合体ラテックスの3成分で構成させ、当該塗被層に含まれる上記(a),(b)及び(c)の各配合量を、最外塗被層の顔料成分100質量部当たり、それぞれ(S)質量部、(L1)質量部及び(L2)質量部とし、且つ下記の式でAの値を規定した場合において、
A(質量部)=2×(S)+1.5×(L1)+1×(L2)
但し、0≦(S)<6、 0≦(L1)、 0≦(L2)
(S)+(L1)+(L2)≦16
最外塗被層に含まれる平均粒子径0.4μm以下の顔料成分の量が、
(i)顔料成分全量の60質量%以下のときは、Aの値を16〜21の範囲、
(ii)顔料成分全量の60質量%を超えるときは、Aの値を19〜24の範囲、とする。
(a)の水溶性接着剤には、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが含まれる。また、(c)の共重合体ラテックスには、平均粒子径が50nm未満又は120nmを超えるスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックスなどが含まれる。
最外塗被層の接着剤成分として使用される3成分をそれぞれ同量で比較すると、(a)の水溶性接着剤は、(b)や(c)の共重合体ラテックスよりも、最外塗被層のインキセット性を低下させる効果が大きく、(b)と(c)との対比では、(b)の方が効果が大きい。従って、最外塗被層の顔料成分100質量部当たり16質量部を超えない範囲で、当該塗被層の接着剤成分の全てを(b)又は(c)とすることができる。しかし、(a)を使用する場合は、その使用量を6質量部未満としなければならない。6質量部以上の使用は、塗被紙の白紙光沢を損なう虞がある。また、上記3成分の合計使用量が、最外塗被
層の顔料成分100質量部当たり16質量部を超えた場合は、最外塗被層に所望通りのインキセット性を付与することができない。
そして、最外塗被層に含まれる顔料成分のうち、平均粒子径0.4μm以下の顔料成分の割合が60質量%以下であって、上記Aの値が16〜21の範囲を逸脱した場合には、最外塗被層に所望のインキセット性を付与することができず、前記顔料成分の割合が60質量%を超え、しかも上記Aの値が19〜24の範囲を逸脱した場合も、最外塗被層に所望のインキセット性を付与することができない。
内側塗被層
内側塗被層の顔料成分は、その80〜100質量%を平均粒子径が0.1〜1.2μmの範囲にある炭酸カルシウムで構成させる。また、内側塗被層では、そこに含まれる接着剤成分の量を、前記顔料成分100質量部当たり6〜13質量部の範囲とする。この接着剤成分には、塗被層に通常使用される接着剤の1種又はそれ以上が使用可能であるが、水溶性接着剤を使用する場合は、その使用量を顔料成分100質量部当たり6質量部未満とする。
内側塗被層の顔料成分には、タルク、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、プラスチックピグメントなどの1種又は2種以上を、顔料成分の20質量%未満の量で使用することができるが、いずれの顔料成分を使用する場合でも、その平均粒子径は、炭酸カルシウムと同様、0.1〜1.2μmの範囲にあることが好ましい。この範囲を逸脱する平均粒子径の顔料の使用は、塗被紙に所望通りのインキセット性を付与することができないからである。
内側塗被層の接着剤成分としては、前記した(b)又は(c)の使用が好ましい。
前記した最外塗被層及び内側塗被層には、それぞれ必要に応じて、青系統又は紫系統の染料、同じく有色顔料、蛍光染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電処理剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜含有させることができる。
本発明の印刷用塗被紙の原紙に、特別な限定はないが、原紙の米坪は30〜300g/m程度であるのが通例である。この原紙には、本発明の内側塗被層及び最外塗被層を設けるに先立って、澱粉などの天然接着剤やポリビニルアルコールなどの合成接着剤によるサイズ処理を行って差し支えなく、顔料と接着剤を主成分とした塗被液の塗布する予備塗工を行っても差し支えない。
原紙の少なくとも片面に内側塗被層及び最外塗被層を設けるに際しては、塗被紙の製造で通常採用されている方法と装置が使用できる。先に説明した構成の内側塗被層及び最外塗被層を形成できる塗被液をそれぞれ調製し、内側塗被層を形成する場合は、片面当りの乾燥塗被量が5〜20g/mの範囲になるように、最外塗被層を形成する場合は、片面当りの乾燥塗被量が2〜15g/m、好ましくは5〜10g/mの範囲になるように、常法通りそれぞれの塗被液を塗工して乾燥する。最外塗被層の乾燥塗被量は、内側塗被層の乾燥塗被量を上回らないことが好ましい。
最外塗被層の仕上げ工程では、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等を使用して平滑化処理を施し、当該塗被層の王研式平滑度を300〜13000秒の範囲となるように調整するのが好ましい。平滑度を高め過ぎると、最外塗被層に所望通りのインキタック性を付与できない虞がある。
本発明の印刷用塗被紙は、オフセット印刷だけでなく、粘度の低いインキを使用するフレキソ印刷やグラビア印刷においても、速いインキ乾燥性と良好な印刷仕上がりを付与でき好適に使用できるものである。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部および質量%を示す。
各例で使用した顔料やラテックスの粒子径は以下の方法で測定した。
顔料の平均粒子径
ピロリン酸ソーダの0.1%液中に顔料を超音波で5分間分散処理し、セディグラフ5100(マイクロメリティクス社製)を用いて沈降法により測定した。平均粒子径は粗粒子分からの累積質量が50%に相当する点での粒子径で示した。
重合体ラテックス(分散液系接着剤)の平均粒子径
重合体ラテックスをオスミウム酸で処理し、これを透過型電子顕微鏡で倍率5万倍で写真撮影し、得られた顕微鏡写真の重合体ラテックス粒子の約200個の粒子径を測定し数平均で求めた。
原紙の製造
LBKP90部(フリーネス440ml/csf)、NBKP10部(フリーネス510ml/csf)からなるパルプスラリー中に、パルプ固形分に対して填料として軽質炭酸カルシウムを紙灰分で10%となるように添加し、さらに内添サイズ剤としてAKDサイズ剤(商品名:サイズパインK−902、荒川化学工業社製)0.05%および硫酸アルミニウム0.5%をそれぞれ添加して紙料を調成した。このように調成された紙料を用いて、ハイブリッドタイプのツインワイヤ抄紙機で抄紙、乾燥を行って成紙(基紙)を得た。次いで、このようにして得られた基紙の両面に2本ロールサイズプレス装置を介して、6%濃度の酸化澱粉糊液(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面固形分換算で1.4g/mとなるように塗布、乾燥して米坪が75g/mの原紙を得た。
最外塗被層用塗被液の調製
平均粒子径0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)40質量%および平均粒子径0.3μmの微細カオリン(商品名:ミラグロス、エンゲルハード社製:米国)60質量%からなる顔料をコーレス分散機で水中に分散して顔料スラリーを得た。上記の顔料スラリーに、顔料100質量部に対して、モノマー比としてアクリロニトリルを21質量%含有し、平均粒子径が95nmのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、日本エイアンドエル社製)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、王子コーンスターチ社製)0.5部、(いずれも固形分換算)および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的に固形分濃度が64%の塗被液を調製した。
最外塗被層に隣接する内側塗被層用塗被液の調製
顔料として平均粒子径が0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)100質量%からなる顔料スラリーに、顔料100質量部に対して、モノマー比としてアクリロニトリルを17質量%含有し、平均粒子径が125nmのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T−2629M、ジェイエスアール社製)を8部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)を1部、(いずれも固形分換算)および消泡剤、染料などの助剤を添加し、最終的に固形分濃度が64%の塗被液を調製した。
印刷用塗被紙の製造
前記の原紙の両面に、上記内側塗被層用塗被液を、片面当りの乾燥重量が10g/mとなるようにブレードコーターを使用して片面ずつの塗工、乾燥を行って下塗り塗被層(内側塗被層)を設けた。次いで、上記最外塗被層用塗被液を片面当りの乾燥重量が10g/mとなるようにブレードコーターで片面ずつの塗工、乾燥を行って水分が5.0%の片面2度塗りの両面塗被紙を得た。このようにして得られた塗被紙をスーパーカレンダーに通紙して印刷用塗被紙を得た。
実施例1の内側塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T−2629M、前出)6部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)4部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)6部、L2(商品名:T2629M、前出)8部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)12部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部を使用し、かつ内側塗被層用塗被液の調製において、顔料として平均粒子径が0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)の代わりに、平均粒子径が0.37μmと微細な重質炭酸カルシウム(商品名:セタカーブHG、備北粉化工業社製)100質量%を使用し、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)を使用しない以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例4の印刷用塗被紙の製造において、内側塗被層用塗被液を片面当りの乾燥重量が14g/mおよび最外塗被層用塗被液を片面当りの乾燥重量が6g/mとなるように塗工したこと以外は、実施例4と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T2629M、前出)10部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)4部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)10質量%および平均粒子径0.3μmの微細カオリン(商品名:ミラグロス、前出)90質量%に変更し、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)14部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)60質量%および平均粒子径0.3μmの微細カオリン(商品名:ミラグロス、前出)40質量%に変更し、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
内側塗被層用塗被液の調製において、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)を4部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
最外塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径が95nmのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)を5部に、平均粒子径が105nmのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2327、日本エイアンドエル社製)6部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
内側塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径が0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)を70質量%に、平均粒子径が1.2μmの重質炭酸カルシウム30質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例1
実施例1の内側塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T−2629M、前出)4部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)7部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例2
実施例1の最外顔料塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T2629M、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例3
比較例2の内側塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T−2629M、前出)4部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)7部に変更したこと以外は、比較例2と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例4
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T2629M、前出)10部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)2部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例5
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T2629M、前出)10部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)6部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例6
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L2(商品名:T2629M、前出)18部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例7
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)80質量%および平均粒子径0.3μmの微細カオリン(商品名:ミラグロス、前出)20質量%に変更し、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
比較例8
実施例1の最外塗被層用塗被液の調製において、平均粒子径0.8μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)10質量%および平均粒子径0.3μmの微細カオリン(商品名:ミラグロス、前出)90質量%に変更し、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)11部、酸化澱粉糊液(商品名:エースB、前出)0.5部の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:L1(商品名:PA2323、前出)12部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして印刷用塗被紙を得た。
上記の実施例及び比較例で得た各印刷用塗被紙の性状を、下記の方法でまず評価した。その結果を表1に示す。
なお、印刷用塗被紙の評価は、特に記載ない限り、23℃、50RH%の環境下で行った。
ブリストー試験法による印刷用塗被紙の吸収係数Ka
ブリストー試験機(ブリストー式液体動的吸収性試験機、熊谷理機社製)を使用して、J.TAPPI 紙パルプ試験方法No.51に準拠して測定した。ただし、ここでは、インキ中の溶剤を代用するために、JIS Z−8809に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液として使用した。接触時間198〜1998ミリ秒の間で得られた評価液の転移量V(ml/m)と接触時間(ミリ秒)の平方根の関係図を描き、得られる直線の傾きから吸収係数Kaを求めた。
印刷用塗被紙のインキタック評価
印刷用塗被紙のインキタック評価には、インキタック試験機(商品名:ISIT Mark IV Segan社製)を使用し、供試インキには、紙評価用枚葉墨インキ(商品名:ベストワン紙評価用枚葉墨インキ T&K、TOKA社製)80質量%と、インキ溶剤(商品名:HIZレジューサー、大日本インキ化学工業社製)20質量%とを混錬して調製したインキを使用した。
まず、前記供試インキを、上記試験機のインキ練りユニットにて、10m/minの条件下に3分間練り、次いでこのインキを印刷用ディスクに1分間付着させた後、供試インキが付着した印刷用ディスクを用いて、上記試験機の金属ドラムに固定した塗被紙サンプルを、印刷速度0.5m/s、印圧100N、インキ付着量2.3±0.1g/mの条件で全面印刷する。なお、前記インキ付着量は、全面印刷前後の印刷用ディスクの重量差から算出した。
全面印刷直後から所定の時間経過後、ゴム製ブランケットを、1〜8の8段階で調節可能な押圧力を、強(strong)に相当するレベル8で印刷面に接触させて3秒間保持し、次に、1〜8の8段階で調節可能な引き離し速度を、高速(high)に相当するレベル2で、ゴム製ブランケットを塗被紙サンプルの印刷面から引き離し、ゴム製ブランケットが印刷面より離れる際のタック値を測定した。
タック値は、全面印刷直後で1回測定し、以後20秒経過する毎に3回、70秒経過する毎の3回、90秒経過する毎の3回、120秒経過する毎の3回の計13回行い(測定時間:15分)、タック値の経時変化を求めた。
経時変化するタック値の測定を、同一塗被紙サンプルで3回行い、全面印刷直後から24.5秒経過後(2番目の測定)のインキタック値、同じく669.6秒経過後(11番目の測定)のインキタック値、同じく790.2秒経過後(12番目の測定)のインキタック値の平均値を求めた。
RI印刷試験機による裏移り汚れ評価
裏移り汚れ評価には、完全自動型のRI印刷適性試験機(商品名:PM−9005RI型、エスエムテー社製)を使用し、供試インキには、紙評価用枚葉墨インキ(商品名:ベストワン紙評価用枚葉墨インキ T&K、TOKA社製)をそのまま使用した。
まず、幅1cm以上、長さ20cmの寸法に調整した塗被紙サンプルを、台紙(商品名:OK特アートポスト256g/m、王子製紙(株)製)に貼付け、その台紙を前記RI印刷機の圧胴に固定した。また、前記印刷機の転写ロールには、合成紙(商品名:ユポFPG−80 74g/m、ユポ・コーポレーション社製)を巻き付けた。次に、印刷機のインキ練りロールに前記供試インキ(1.0cc)を展開し、0.392MPaのインキ練り圧力で90秒間練った後、直ちに印圧980N(100Kgf)、印刷速度(圧胴回転速度)1.52rpmの条件の下、塗被紙サンプルへのインキ付着量が4.2±0.1g/mとなるように塗被紙サンプルを全面印刷し、次いで、合成紙を巻いた前記の転写ロールを0.392MPa(4.0Kgf/cm)の圧力、転写速度(圧胴回転速度)1.52rpmの条件の下、印刷面に接触させ、インキを合成紙に転写させた。この場合、塗被紙サンプルに印刷を施してから、その印刷面に合成紙を接触させるまでのインターバルを、印刷直後(装置の機構上、直後でも正確には10秒が経過している)から1分、3分、6分と変化させることで、塗被紙サンプル上のインキが合成紙に転写されるまで、塗被紙サンプル上で放置された時間の長さが異なる合計3枚のインキ汚れ合成紙を得た。
各インキ汚れ合成紙を室温で24時間静置乾燥した後、デジタルスキャナ(商品名:EPSON GT5500WINS、セイコーエプソン(株)社製)にて、合成紙上のインキ汚れをデジタルデータとして取り込んだ。スキャンニング条件は次の通りである。
モード:白黒写真、 解像度:2400dpi、 露出:0、
ガンマ:100、 ハイライト:245、 シャドウ:3、
輪郭強調:0、 濃度補正:リニア、 グレーバランス:0、
彩度:0、 カラーフィルター(R、G、B):0、
測定領域:7mm×7mm、
次に、取り込まれたインキ汚れデータを、画像解析装置(商品名:DA6000、王子計測機器社製)を用いて処理し、インキ汚れの多寡を256階調の輝度で数値化した。
この操作を同一塗被紙サンプルで3回繰り返し、各回の輝度を平均して、放置インターバル1分、3分及び6分の汚れ輝度を求め、その値を裏移り汚れ輝度として表1に示す。
また、実施例1〜10並びに比較例1〜8で得た各印刷用塗被紙の上記以外の性状を表2に示す。表2に示す性状の評価方法を以下に示す。
塗被紙の白紙光沢
TAPPI試験法:T 480 om−92(TAPPI Test Method T 480 om−92)に準じて、光沢度計(型式:GM−26D、村上色彩技術研究所製)を使用して両面を測定し、その平均を求めた。
塗被紙の王研式平滑度
J.TAPPI紙パルプ試験方法No5Bに準じて王研式平滑度計で両面を測定し、その平均を求めた。
オフセット枚葉片面印刷機による反転印刷可能時間(時間)
三菱ダイヤ4E−4印刷機により、プロセスインキで8000枚/時間の速度で片面4色印刷し、印刷後30分、1時間、1.5時間、2時間および3時間と反対面の印刷に取りかかるまでの放置時間を変化させて反対面を印刷した際の、先印刷面に傷がつかずに反対面の印刷ができるまでの放置時間を判断した。
印刷光沢
オフセット枚葉印刷機による反転印刷可能時間測定用に印刷した先印刷面の4色全面印刷部の60°光沢をJIS Z8741に準拠して測定し、その平均を求めた。
印刷濃度
オフセット枚葉印刷機による反転印刷可能時間測定用に印刷した先印刷面の4色全面印刷部の印刷濃度を、カラー反射濃度計(商品名:X−Rite404G、(米国)X−Rite社製)を用いてVisualモードにより10点測定し、その平均を求めた。
印刷光沢(官能評価)
オフセット枚葉印刷機による反転印刷可能時間測定用に印刷した先印刷面の4色全面印刷部の印刷光沢発現について、以下の基準で目視により官能評価した。
4点:印刷光沢、印刷濃度は、ともに高く非常に優れる。
3点:印刷光沢、印刷濃度は、ともに優れる。
2点:印刷光沢、印刷濃度は、ともにやや劣る。
1点:印刷光沢、印刷濃度は、ともに劣る。
オフセット両面枚葉印刷機での印刷適性評価
ハイデル社8色両面枚葉印刷機で、ノンスキンタイプインキ(T&K TOKA社)を使用して、10000枚/時間の速度で5000枚を印刷した後の最終8色目の圧胴へのインキの堆積程度と図柄の欠陥程度を、以下の基準で評価した。
○:圧胴に僅かなインキの堆積があるが、印刷物に欠陥はない。
△:圧胴にかなりのインキの堆積があるが、印刷物に欠陥はない。
×:圧胴にかなりのインキの堆積があり、印刷物に網点状の抜けが認められる。
Figure 0004355955
Figure 0004355955

Claims (8)

  1. 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設けた印刷用塗被紙において、前記塗被層の最外塗被層の顔料成分を平均粒子径が0.3〜1.2μmの範囲にある炭酸カルシウム5〜70質量%と、平均粒子径が0.1〜0.4μmの範囲にあるカオリン30〜95質量%で構成させる共に、最外塗被層の接着剤成分を、(a)水溶性接着剤、(b)モノマー比でアクリロニトリルを10〜35質量%含有し、平均粒子径が50〜120nmであるスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、(c)上記(b)以外の共重合体ラテックスの3成分で構成させ、当該塗被層に含まれる上記(a),(b)及び(c)の各配合量を、当該塗被層の顔料成分100質量部当たり、それぞれ(S)質量部、(L1)質量部及び(L2)質量部として、且つ、Aの値を下記の式で算出するとした場合において、
    A(質量部)=2×(S)+1.5×(L1)+1×(L2)
    但し、0≦(S)<6、 0≦(L1)、 0≦(L2)
    (S)+(L1)+(L2)≦16
    最外塗被層に含まれる平均粒子径0.4μm以下の顔料成分の量が、
    (i)顔料成分全量の60質量%以下のときは、
    Aの値を16〜21の範囲とし、
    (ii)顔料成分全量の60質量%を超えるときは、
    Aの値を19〜24の範囲とし、
    さらに、上記最外塗被層に接する内側塗被層の顔料成分の80〜100質量%を、平均粒子径0.1〜1.2μmの炭酸カルシウムで構成させ、当該塗被層の接着剤成分の配合量を顔料成分100質量部当たり6〜13質量部とし、かつ接着剤成分に含まれる水溶性接着剤の量を顔料成分100質量部当たり6質量部未満としたことを特徴とする印刷用塗被紙。
  2. ブリストー試験機と、JISZ8809−1992に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液に用いて測定した前記塗被層の吸収係数Kaが、0.02〜0.35ml/(m ・ms 1/2 )の範囲にあり、紙評価用枚葉インキ80質量%とインキ用溶剤20質量%とを混錬して調製したインキを用い、インクタック試験機にて印圧100N、転写インキ量2.3±0.1g/m の条件下で前記塗被層を印刷して測定されるインキタック値の最大値が、印刷を施した直後から24.5秒後と、同790.2秒後との間にあり、印刷を施した直後から24.5秒後に計測されるインキタック値が3N以下であり、印刷を施した直後から790.2秒後に計測されるインキタック値が4N以下であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用塗被紙。
  3. 印刷を施した直後から24.5秒後に計測されるインキタック値が2.5N以下であり、印刷を施した直後から790.2秒後に計測されるインキタック値が4N以下である請求項2に記載の印刷用塗被紙。
  4. 印刷を施した直後から24.5秒後に計測されるインキタック値が2.5N以下であり、印刷を施した直後から669.6秒後に計測されるインキタック値が3N以下であり、印刷を施した直後から790.2秒後に計測されるインキタック値が3N以下である請求項2に記載の印刷用塗被紙。
  5. 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を2層以上設けた印刷用塗被紙において、ブリストー試験機と、JISZ8809−1992に規定される標準粘度オイル(JS2.5)を評価液に用いて測定した前記塗被層の吸収係数Kaが、0.02〜0.35ml/(m・ms1/2)の範囲にあり、RI印刷適性試験機と紙評価用枚葉インキを用い、印圧980N、転写インキ量4.2±0.1g/mの条件下で印刷を施して裏移り汚れの輝度を256階調で測定した場合において、印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が30以下であり、印刷を施した直後から6分後の裏移り汚れ輝度が230以上であることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の印刷用塗被紙。
  6. 印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が30以下であり、同6分後の裏移り汚れ輝度が245以上である請求項5に記載の印刷用塗被紙。
  7. 印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が30以下であり、同3分後の裏移り汚れ輝度が200以上であり、同6分後の裏移り汚れ輝度が245以上である請求項5に記載の印刷用塗被紙。
  8. 印刷を施した直後から1分後の裏移り汚れ輝度が28以下であり、同3分後の裏移り汚れ輝度が200以上であり、同6分後の裏移り汚れ輝度が245以上である請求項5に記載の印刷用塗被紙。
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