JP4351168B2 - ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
原料とするポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂に特に制限はないが、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とを構成成分とするホモポリマーからなるのが好ましい。但し耐熱収縮性等の物性を損なわない範囲で、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分、又はテレフタル酸以外のカンボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。好ましいPBT樹脂の具体例としては、例えば東レ(株)から商品名「トレコン」として市販されているホモPBT樹脂を挙げることができる。
図1は、本発明のTダイ法によるPBTフィルムを製造する装置の一例を示す。溶融PBT樹脂をTダイ7から押し出すことにより得られた押出フィルム5は、加熱キャスティングロール1で引き取ることにより徐冷して結晶化未延伸フィルム6を形成する。得られた結晶化未延伸フィルム6は、加熱キャスティングロール1とこれに平行に設けた第2のロール2との間で延伸した後、ガイドロール9を経て巻き取りリール8により巻き取る。
(i) 溶融混練工程
まずPBT樹脂と、上記[1]で述べた添加剤等とを溶融混練し、溶融PBT樹脂を調製する。溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は二軸押出機中で均一に混練する方法をとる。混練温度はPBT樹脂の融点+10℃〜融点+40℃であるのが好ましい。混練温度をPBT樹脂の融点+40℃より高くすると、樹脂の熱劣化が進行する恐れがある。このため押出機中で混練を行う場合、発熱しないようなスクリュー構造を有するもの、又は適当な冷却装置を有するものを使用する。混練温度の下限をPBT樹脂の融点+10℃未満にすると、押出量が不安定となるため好ましくない。例えばPBT樹脂がホモポリマーの場合、その融点は約220〜230℃であるので、混練温度は230〜270℃とする。融点はASTM D4591により測定した(以下同じ)。
溶融PBT樹脂をTダイ7から押し出すことにより得られた押出フィルム5は、加熱キャスティングロール1で受け、ロール1で徐冷して結晶化未延伸フィルム6を形成する。結晶化未延伸フィルム6を形成することにより延伸加工性が向上するので、これを延伸により薄膜化すると、非晶質の未延伸フィルムを薄膜化した場合より膜厚ムラが減少する。
(i) 延伸工程
図1に示すように、得られた結晶化未延伸フィルム6は、加熱キャスティングロール1と第2のロール2との間に周速差を設け、長手方向(MD)に延伸する。結晶化未延伸フィルム6は、PBT樹脂の結晶化温度−50℃〜結晶化温度−10℃の温度で延伸するのが好ましく、これにより溶融張力を比較的高倍率の延伸に適した範囲にできるので、膜厚ムラの少ない均一な延伸が可能となる。延伸温度はPBT樹脂の結晶化温度−50℃〜結晶化温度−30℃の温度とするのがより好ましい。結晶化未延伸フィルム6が延伸される領域(延伸領域)61は、加熱キャスティングロール1と第2のロール2の間にあるので、延伸領域61が上記好ましい延伸温度範囲となるように、ロール間距離(両ロールの共通接線上における両接点間の距離)を10 cm以下とするのが好ましい。ロール間距離を10 cm以下とすることにより、延伸領域61を比較的狭くすることもでき、これによりネックイン現象を一層効果的に抑制できる。延伸領域61の温度を一定に保つために、加熱手段を用いて両ロール間において結晶化未延伸フィルム6を加熱してもよい。延伸したフィルムは、第2のロール2によりPBT樹脂の結晶化温度−140℃以下に冷却するのが好ましく、これにより延伸した状態を安定化できる。
上記(i)の工程により得られた延伸フィルムは長手方向に再延伸してもよく、これにより透明性が一層向上するとともに、一層薄膜化できる。図2は延伸工程後に再延伸工程を行う装置の一例を示す。この装置は、ロール2の上にニップロール10を設けるとともに、ロール2とロール9との間に一対のロール3,10を挿入した以外、図1の装置と同じである。以下、一対のロール3,10の作用を中心に説明する。
再延伸フィルムは、さらに長手方向に冷延伸してもよい。図3は再延伸工程後に冷延伸工程を行う装置の一例を示す。この装置は、ロール3とロール9との間に一対のロール4,10を挿入した以外、図2の装置と同じである。従って、一対のロール4,10の作用を中心に説明する。冷延伸は、図3に示す第3のロール3と第4のロール4との間に周速差を設けることにより行う。第3のロール3と第4のロール4との間にある延伸領域63の温度は室温〜PBT樹脂のガラス転移温度(Tg)の範囲とするのが好ましい。ここでガラス転移温度TgはJIS K7121により測定したものである。ホモPBT樹脂のTgは一般的に22〜45℃である。延伸領域63の温度を上記好ましい範囲にするために、再延伸フィルム12を、第3のロール3によりPBT樹脂の結晶化温度−110℃〜結晶化温度−80℃の温度で処理するとともに、第3のロール3と第4のロール4とのロール間距離を10 cm以下とするのが好ましい。第3のロール3による処理温度は、PBT樹脂の結晶化温度−140℃〜結晶化温度−90℃であるのがより好ましい。このような冷延伸を施すことにより、フィルムの透明性を一層向上できる。第4のロール4の直径は、第3のロール3と同じく35〜70 cmとすればよい。冷延伸の倍率は1.1倍以上とするのが好ましく、1.3〜3倍とするのがより好ましい。
図2に示す装置を用いて、上記(i)の延伸工程のみを行ってもよい。この場合、例えば第3のロール3を第2のロール2と同じ周速で回転させながら、延伸フィルム11をPBT樹脂の結晶化温度−140℃以下に冷却することにより、冷却処理をさらに長時間行うことができる。また第3のロール3により冷却処理を行う場合、延伸フィルム11を、第2のロール2によりPBT樹脂のガラス転移温度(Tg)超〜結晶化温度−10℃以下の温度で焼きなます工程を設けてもよく、これにより得られるPBTフィルムの耐熱収縮性が一層向上する。
上記(i)〜(iv)のいずれかの工程により製造されたPBTフィルムに対して、引き続き横方向(TD)に延伸してもよい。横延伸を行う方法としては、テンター法等の公知の方法が挙げられる。
上述の方法により製造されたPBTフィルムは、そのままでも従来の製造方法で得られるものよりも優れた耐熱収縮性を有するが、耐熱収縮性を一層向上させるために、さらに熱処理を施してもよい。熱処理は、熱固定処理及び/又は熱収縮処理により行えばよい。これらの熱処理は、PBTフィルムのガラス転移温度超〜結晶化温度−10℃以下の温度で行うのが好ましい。
以上のようにして製造されたPBTフィルムは、半透明から透明であり、従来の延伸PBTフィルムと比較して、膜厚の均一性及び耐熱収縮性に優れている。具体的には、平均膜厚8〜20μmのフィルムの膜厚差は1〜3μmであり、MD(長手方向)の熱収縮率は0.3%以下であり、TD(横方向)の熱収縮率は0.5%以下である。このためムラの少ない印刷層や金属蒸着層を形成できる。またヒートシール、印刷等の二次加工においてフィルム寸法の変化が少ない。平均膜厚は、PBTフィルムの横方向における中心部及び両端部の厚さをそれぞれ2点ずつ計6点の膜厚を測定した値の平均値である。膜厚差は、PBTフィルムの横方向における中心部及び両端部の厚さをそれぞれ2点ずつ計6点測定し、そのうちの最大値と最小値との差を算出したものである。この値が小さいほうが良好な結果となることを意味する。熱収縮率は、PBTフィルムを150℃で10分間暴露したときのMD及びTDの収縮率をそれぞれ測定したものである。
PBT樹脂(商品名「トレコン1200S」。東レ(株)製。融点:220℃。ガラス転移温度:22℃。結晶化温度:182℃)を二軸押出機(スクリュー径:300 mm、押出量:50 kg/hr)に投入し、235±5℃で溶融混練して、押出機中で溶融PBT樹脂を調製した。図3に示す装置を用いて、この溶融PBT樹脂を押出機の先端に設置されたTダイ7から押し出し、170℃に温調した回転する加熱キャスティングロール1(周速:10 m/分、ロール径:50 cm)上に受けた。押出フィルム5を加熱キャスティングロール1上で9℃/秒の速度で徐冷し、平均膜厚が50μmの結晶化未延伸フィルム6を形成した。
加熱キャスティングロール1の温度を150℃とし、周速を15 m/分とし、徐冷速度を18℃/秒とし、図2に示す装置を用いた以外は実施例1と同様にして、平均膜厚が40μmの結晶化未延伸フィルム6を形成した。得られた結晶化未延伸フィルム6を、加熱キャスティングロール1と、100℃に温調した第2のロール2(周速:30 m/分)との間(ロール間距離:5 cm)で2倍に延伸した。得られた延伸フィルム11を、35℃に温調した第3のロール3(周速:30 m/分)で冷却し、平均膜厚が20μmのPBTフィルム13を作製した。得られたPBTフィルムの膜厚差及び熱収縮率を測定したところ、膜厚差は2μmであり、長手方向の熱収縮率は0.1%であり、横方向の熱収縮率は0.15%であった。
加熱キャスティングロール1の温度を180℃とし、周速を15 m/分とし、徐冷速度を12℃/秒とした以外は実施例1と同様にして、平均膜厚が40μmの結晶化未延伸フィルム6を形成した。得られた結晶化未延伸フィルム6を、加熱キャスティングロール1と、130℃に温調した第2のロール2(周速:30 m/分)との間(ロール間距離:5 cm)で2倍に延伸した。得られた延伸フィルム11をさらに第2のロール2と60℃に温調した第3のロール3(周速:45 m/分)との間(ロール間距離:5 cm)で1.5倍に再延伸した。得られた再延伸フィルム12を、第3のロール3と、25℃に温調した第4のロール4(周速:67.5 m/分)との間(ロール間距離:5cm)で1.5倍に冷延伸し、平均膜厚が8μmのPBTフィルム13を作製した。得られたPBTフィルム13の膜厚差及び熱収縮率を測定したところ、膜厚差は2μmであり、長手方向の熱収縮率は0.2%であり、横方向の熱収縮率は0.2%であった。
キャスティングロール1の温度を60℃とした以外は実施例1と同様にして、平均膜厚が13μmのPBTフィルム13を作製した。得られたPBTフィルム13の膜厚差及び熱収縮率を測定したところ、膜厚差は4μmであり、長手方向の熱収縮率は15%であり、横方向の熱収縮率は20%であった。
2・・・第2のロール
3・・・第3のロール
4・・・第4のロール
5・・・溶融樹脂
6・・・結晶化シート
61,62,63・・・延伸領域
7・・・シート用ダイ
8・・・巻き取りリール
9・・・ガイドロール
10・・・ニップロール
11・・・延伸フィルム
12・・・再延伸フィルム
13・・・PBTフィルム
Claims (11)
- 溶融ポリブチレンテレフタレート樹脂をTダイからフィルム状に押し出し、得られたフィルムを加熱キャスティングロールで引き取りながら、実質的に未延伸の状態で、30℃/秒以下の速度で徐冷して前記ポリブチレンテレフタレート樹脂を結晶化させることにより、厚さ30〜200μmの結晶化未延伸フィルムを形成し、前記結晶化未延伸フィルムを延伸することを特徴とするポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
- 請求項1に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記結晶化未延伸フィルムの厚さを35〜100μmとすることを特徴とする方法。
- 請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記加熱キャスティングロールの周速を5〜20 m/分とすることを特徴とする方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、未延伸のポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムの徐冷を(前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の結晶化温度−40℃)〜(前記結晶化温度+20℃)の温度まで行うことを特徴とする方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記未延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムの徐冷速度を20℃/秒以下とすることを特徴とする方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記結晶化未延伸フィルムを少なくとも長手方向に1.5倍以上に延伸することを特徴とする方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記結晶化未延伸フィルムを(前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の結晶化温度−50℃)〜(前記結晶化温度−10℃)の温度で延伸することを特徴とする方法。
- 請求項7に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、延伸フィルムを(前記結晶化温度−110℃)〜(前記結晶化温度−50℃)の温度で1.1倍以上に再延伸することを特徴とする方法。
- 請求項8に記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、再延伸フィルムを、室温〜前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度の範囲内の温度で1.1倍以上に冷延伸することを特徴とする方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、樹脂全体を100質量%として、ポリオレフィン及び/又はエラストマーを5〜15質量%含有することを特徴とする方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の方法により製造されたポリブチレンテレフタレートフィルムであって、平均膜厚8〜20μmにおける膜厚差が±1〜±3μmであり、150℃で10分間暴露したときの長手方向の熱収縮率が0.3%以下であり、横方向の熱収縮率が0.5%以下であることを特徴とするポリブチレンテレフタレートフィルム。
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