JP4348890B2 - ガンマブチロラクトンの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−メチルピロリドンの原料や電解液溶媒として有用なガンマブチロラクトンの精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガンマブチロラクトンは、無水マレイン酸若しくは無水コハク酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオールの脱水素反応等の方法により製造されている。
ガンマブチロラクトンの製造には、反応中に生成する4−ヒドロキシブタナール、4−オキソブタナール等のアルデヒド類及び2−ヒドロキシテトラヒドロフラン等のヘミアセタール類とガンマブチロラクトンとの分離が困難であるという問題がある。
【0003】
特開平11−286482号公報に記載されているように、粗ガンマブチロラクトンから、二塔方式の蒸留塔を用い、第一塔においてガンマブチロラクトンよりも低沸点物を留去し、次いで第二塔において減圧蒸留により精製ガンマブチロラクトンを留出させて取得する方法、又は一塔方式の蒸留塔を用い、低沸点物及び高沸点物をそれぞれ塔頂及び塔底から排出し精製ガンマブチロラクトンを側流として取得して高沸点物を分離する方法等が行われている。このような方法で99%以上、更には99.5%以上の純度のガンマブチロラクトンを得ることができる。しかしながら、これらの方法では、粗ガンマブチロラクトンに含まれているアルデヒド類やヘミアセタール類、特にガンマブチロラクトンと沸点が近いテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナールを除去することが困難である。
【0004】
特開平11−286482号公報には、粗ガンマブチロラクトンに酸性物質を添加してテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナールを高沸点化合物に転換させた後、蒸留するという精製方法が記載されている。しかしながら、この方法は、酸性物質の使用に伴うコスト及び装置の腐食という点から、工業的に実施するには問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガンマブチロラクトンを高度に精製するための工業的に有利な方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、塔頂温度が100℃以下の減圧蒸留塔を使用することにより、蒸留塔内でのテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナール等の生成を低下させつつ、アルデヒド類やヘミアセタール類を効率よく除去することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、粗ガンマブチロラクトンを塔頂温度が100℃以下の蒸留塔に導入し、減圧下にガンマブチロラクトンよりも低沸点の成分を塔頂から留去させ、精製ガンマブチロラクトンを蒸留塔の側流抜き出し口又は塔底から抜き出すことを特徴とするガンマブチロラクトンの精製方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る精製方法では、無水マレイン酸若しくは無水コハク酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオールの脱水素反応などの方法で製造されたいずれのガンマブチロラクトンをも対象とすることができる。好ましいのは、1,4−ブタンジオールの脱水素反応で製造されたガンマブチロラクトンである。
【0009】
この反応は公知であり、触媒としては、各種の助触媒で改良されたニッケル触媒、コバルト触媒、パラジウム触媒、銅触媒、銅−クロム触媒などの固体触媒や、ルテニウム錯体触媒等の均一系錯体触媒が知られている。本発明の対象として特に好ましいのは、均一系錯体触媒存在下に1,4−ブタンジオールを脱水素して得られたガンマブチロラクトンである。
【0010】
均一系錯体触媒の存在下で1,4−ブタンジオールを脱水素させてガンマブチロラクトンを製造するには、通常は、触媒、1,4−ブタンジオール及び反応により生成したガンマブチロラクトン、4−ヒドロキシブタナール等のアルデヒド類、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン等のヘミアセタール類などを含む反応生成液を蒸留塔で蒸留し、触媒や未反応の1,4−ブタンジオール等とガンマブチロラクトンとを分離する。蒸留塔内でも脱水素反応は進行し、ガンマブチロラクトンと共に上記のアルデヒド類やヘミアセタール類などが生成する。これらのアルデヒド類やヘミアセタール類等は、触媒存在下では速やかに脱水素されてガンマブチロラクトンとなるが、触媒が存在しない条件ではこの脱水素反応は進行せず、ガンマブチロラクトンに沸点が近いテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナール等に変化する。また、生成したテトラヒドロフラノ−2−オキシブタノールが、再びアルデヒド類やヘミアセタール類に分解する反応も起こる。本発明者らの検討によれば、これらの反応は100℃を超える条件で起こりやすい。
【0011】
したがって、アルデヒド類やヘミアセタール類を含むガンマブチロラクトンを常法により蒸留したのでは、蒸留塔内でこれらの反応が起きてしまい、高純度のガンマブチロラクトンを得ることは困難である。
本発明の精製方法では、粗ガンマブチロラクトンを塔頂温度が100℃以下の蒸留塔に導入する。この操作により、アルデヒド類やヘミアセタール類を、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタナール等が生成する前に気化させ、塔頂から留出させることができる。
【0012】
粗ガンマブチロラクトン中には、4−ヒドロキシブタナールや2−ヒドロキシテトラヒドロフラン等以外にも、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、水、ブタノール、酢酸、酪酸、コハク酸ジメチル等のガンマブチロラクトンよりも低沸点の成分が含まれている。本発明方法では、予備蒸留により、これらの低沸点成分の濃度をあらかじめ低減させて、4−ヒドロキシブタナール及び2−ヒドロキシテトラヒドロフランの合計濃度を2重量%以下とした粗ガンマブチロラクトンを用いるのが好ましい。これらの濃度が、1重量%以下、特に0.4重量%以下であれば、更に好ましい。
【0013】
粗ガンマブチロラクトンは、蒸留塔の塔頂から塔底のいずれの部位からでも導入することができるが、粗ガンマブチロラクトン中のアルデヒド類やヘミアセタール類がテトラヒドロフラノ−2−オキシブタナール等に転化する前に、これらをすみやかに留去させるため、蒸留塔の塔頂又は蒸留帯域の上部1割未満の位置にある導入口から導入するのが好ましい。なお、蒸留帯域の上部1割未満の位置とは、蒸留塔のうちリボイラー部やコンデンサー部などを除いた蒸留作用、すなわち気液接触の行われる部分、例えば充填塔であれば充填物の存在する帯域を意味する。
【0014】
また、テトラヒドロフラノ−2−オキソブタナール等への転化反応は前述のように100℃を超える温度で起こりやすいので、粗ガンマブチロラクトンは100℃以下、特に80℃以下の温度で導入するのが好ましく、かつ導入口は蒸留塔内の液温が100℃以下である部位に設けるのが好ましい。
粗ガンマブチロラクトン中には、4−ヒドロキシブタナールや2−ヒドロキシテトラヒドロフラン等以外にも、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、水、ブタノール、酢酸、酪酸、コハク酸ジメチル等のガンマブチロラクトンよりも低沸点の成分が含まれている。本発明方法では、予備蒸留により、これらの低沸点成分の濃度をあらかじめ低減させて、4−ヒドロキシブタナール及び2−ヒドロキシテトラヒドロフランの合計濃度を2重量%以下とした粗ガンマブチロラクトンを用いるのが好ましい。これらの濃度が、1重量%以下、特に0.4重量%以下であれば、更に好ましい。
【0015】
精製ガンマブチロラクトンは、蒸留塔の側流抜き出し口又は塔底から抜き出す。塔底部では高沸点の不純物が混入するおそれがあるので、側流抜き出し口から精製ガンマブチロラクトンを抜き出すのが好ましい。高沸点物の混入を避け、かつ4−ヒドロキシブタナール、及び2−ヒドロキシテトラヒドロフランの混入を避けるためには、側流抜き出し口は蒸留帯域の下から1〜5割、特に2〜4割の範囲内の位置に設けるのが好ましい。
【0016】
塔頂温度は、100℃以下であれば任意の温度に設定することができるが、塔頂冷却コスト、凍結防止のため、5℃以上とするのが好ましい。
蒸留時の圧力は、塔頂温度に応じて設定すればよい。
還流比は、蒸留塔内でのアルデヒド類とヘミアセタール類との反応を抑えるため、低い方がよい。還流比100〜1、特に30〜1が好ましい。
【0017】
蒸留塔は、単位時間当たりの導入量を100重量部とした場合に、塔頂留出量を1〜30、好ましくは10〜30とし、精製ガンマブチロラクトンの抜き出し流量を90〜60とするのが好ましい。
蒸留塔としては、充填塔、棚段塔など常用のいずれのものも使用できるが、蒸留の理論段数を5段以上、特に10〜50段とするのが好ましい。50段を超える蒸留塔は、蒸留塔建設のための経済性、運転、及び安全管理のためには好ましくない。
【0018】
以上の精製方法により、アルデヒド類やヘミアセタール類を効率よく除去して、ガンマブチロラクトンを高純度に精製することができる。なお、本発明に係る精製方法によれば、ガスクロマトグラフィーにより99.9重量%以上の純度を示し、かつガンマブチロラクトン固有の吸光度を示さない280nmにおける紫外線吸光度が、0.001以下、更には0.0005以下の精製されたガンマブチロラクトンを取得することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、紫外線吸光度は、ガンマブチロラクトンを満たした光路長10mmの石英製セルを用い、検出波長において蒸留水を対照として測定した。
【0020】
実施例1
40段のガラス製オルダーショウ蒸留塔に、塔頂から4−ヒドロキシブタナール及び、2−ヒドロキシテトラヒドロフランを合計で0.38重量%含有する75℃の粗ガンマブチロラクトンを100重量部/時で導入し、塔頂圧力を8mmHg、還流比を15とし、塔頂温度75℃、塔底温度は120.5℃で連続運転を行った。
【0021】
塔頂から20重量部/時の低沸点成分を抜き出し、塔頂より30段目から70重量部/時のガンマブチロラクトンを抜き出し、塔底から10重量部/時で高沸点成分を抜き出した。ガンマブチロラクトンの抜き出し温度は112.1℃であった。
得られたガンマブチロラクトンの純度は、99.98重量%であり、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタノールを35重量ppm含んでいた。また、280nmにおける紫外線吸光度は0.0005未満であった。
【0022】
比較例1
実施例1において、塔頂圧力を40mmHg、還流比を60とし、塔頂温度110.2℃、塔底温度131.4℃とした以外は実施例1と同様にして、連続蒸留を行った。抜き出し温度は125.0℃であった。
得られたガンマブチロラクトンの純度は、99.6重量%であり、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタノールを630重量ppm含んでいた。また280nmにおける紫外線吸光度は0.117であった。
【0023】
実施例2
実施例1において、4−ヒドロキシブタナール及び、2−ヒドロキシテトラヒドロフランを合計で1.67重量%含有するガンマブチロラクトンを100重量部/時で導入した以外は、実施例1と同様にして連続運転を行った。
得られたガンマブチロラクトンの純度は、99.80重量%であり、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタノールを105重量ppm含んでいた。また、280nmにおける紫外線吸光度は0.065であった。
【0024】
比較例2
実施例1において、4−ヒドロキシブタナール及び、2−ヒドロキシテトラヒドロフランを合計で1.67重量%含有するガンマブチロラクトンを100重量部/時で導入し、塔頂圧力を40mmHg、還流比を60とした以外は実施例1と同様にして、連続運転を行った。
得られたガンマブチロラクトンの純度は、99.4重量%であり、テトラヒドロフラノ−2−オキシブタノールを3200重量ppm含んでいた。また、280nmにおける紫外線吸光度は0.302であった。
Claims (7)
- 1,4−ブタンジオールの脱水素反応により製造された粗ガンマブチロラクトンを塔頂温度が100℃以下で、還流比が30〜1の蒸留塔に導入し、減圧下にガンマブチロラクトンよりも低沸点の成分を塔頂から留去させ、精製ガンマブチロラクトンを蒸留塔の側流抜き出し口又は塔底から抜き出すことを特徴とするガンマブチロラクトンの精製方法。
- 1,4−ブタンジオールの脱水素反応が、均一系錯体触媒の存在下に行われたものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 粗ガンマブチロラクトンが、4−ヒドロキシブタナール及び2−ヒドロキシテトラヒドロフランを含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 4−ヒドロキシブタナール及び2−ヒドロキシテトラヒドロフランの合計濃度が、2重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 導入口が、蒸留塔の塔頂又は蒸留部の上部1割未満の位置にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
- 粗ガンマブチロラクトンを、蒸留塔の液温が100℃以下の部位から蒸留塔内に導入することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
- 精製ガンマブチロラクトンを、蒸留塔の側流抜き出し口から抜き出すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
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