JP7500068B2 - 開閉チャック装置 - Google Patents
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Description
特許文献4、5には、一方のシリンダの受圧面積を大きくすることでクランプ力を高めている開閉チャックが開示されている。これらの一対のフィンガーは同期しておらず、個別に調整されている。
一方で、受圧面積が異なるシリンダをピニオン機構に頼らずに作動させる場合も、各シリンダを個別に調整することになり、その調整が煩雑である。
<第1実施形態>
第1実施形態では、後述の第1シリンダのストローク方向と、第2シリンダのストローク方向とが一致する開閉チャック装置について説明する。第1実施形態1では、コイルバネ(9)を利用した付与機構(6)を備える開閉チャック装置1について説明し、第1実施形態2では、ラチェットを利用した付与機構(16)を開閉チャック装置11について説明する。なお、第1実施形態2の開閉チャック装置の符号「11」は、図示されていないが、第1実施形態1の開閉チャック装置1と区別するために、便宜上、「11」とする。
1.概略説明
図1、図2及び図3を用いて、第1実施形態1に係る開閉チャック装置の主な構成を説明する。
以降の記載において、前後・左右・上下の方向は、図中に記載された前後・左右・上下で示された矢印の方向を示すものとする。
図1に示すように、開閉チャック装置1はベース部材2を備えている。図2の(a)に示すように、開閉チャック装置1は、ワークWを把持するための一対のフィンガーF、Fをベース部材2上で把持/解除方向に作動させる。
開閉チャック装置1について、図3の(a)及び図3の(b)を用いて詳述する。
図3の(a)に示すように、開閉チャック装置1は、ベース部材2に配設され且つ流体により駆動する一対の第1シリンダ(以後、小径シリンダという。)3、3と、小径シリンダ3、3のそれぞれのストロークにより互いに反対向きに直線運動し且つフィンガーF、Fを支持する一対のラック4、4と、ラック4、4に噛合し且つベース部材2に枢支されるピニオン5とを備えている。
図3の(b)に示すように、開閉チャック装置1は、ピニオン5に対してフィンガーFの把持方向に回転(符号L参照)させる力を付与する付与機構6と、フィンガーFがワークWにほぼ接触した後に付与機構6を駆動させる駆動機構7(図3の(a)参照)とを備えている。
なお、第1実施形態1では、小径シリンダ3などを駆動させる流体として、圧縮した空気(以後、圧縮空気という)を用いている。
(1)ベース部材2
図1に戻って、ベース部材2は、例えば、本体部2aと、その前後にそれぞれ取り付けられる前部2b及び後部2cとからなる。また本体部2aは、主要な部分として3つに分割されている。なお、それら個々の分割体についての説明は省略する。本体部2a、前部2b及び後部2cは、ねじなどの締結具で一体に連結される。
本体部2aの上面には、フィンガーF、F(図2の(a)参照)の台座であるスライド部材8、8をスライドさせるスライド溝8aが形成されている。
ベース部材2は、本体部2aに設けた貫通孔等を利用して、小径シリンダ3の小径シリンダケース3aや大径シリンダ6の大径シリンダケース6aを構成する。
第1実施形態1では右方(図の下方)の小径シリンダ3が駆動機構7を兼ねている(後述する)。このため、まず2本の小径シリンダ3、3について、互いに共通する部分について説明する。
図3の(a)に示すように、小径シリンダ3は、第1シリンダケース(以後、小径シリンダケースという。)3aと、小径シリンダケース3a内に摺動自在に収納される第1ピストン(以後、単に、小径ピストンという。)3bとを備えている。図3の(a)における小径シリンダ3は、ストローク量がゼロの状態である。このためフィンガーFは開いている(図2の(a)の状態参照)。小径シリンダ3は複動ピストンであり、圧縮空気の圧力により小径ピストン3bは前後にストロークする。
小径ピストン3bを把持方向に駆動させる場合は、流路11aが利用され、導入口11cから圧縮空気が供給される(図3の(a)中の矢印「G」である)。図3の(a)における流路11aは、駆動機構7が設けられている小径シリンダ3側にのみ現れているが、当該導入口11cから他方の小径シリンダ3にも圧縮空気が供給される流路が存在する。
小径ピストン3bを解除方向に駆動(移動)させる場合は、流路11bが利用され、導入口11dから圧縮空気が供給される(図中の矢印「H」である)。
図4を用いて、スライド部材8及びラック4を説明する。
小径ピストン3bは、上下方向に延びる連結部材8bによりスライド部材8と連結されている。一方で、スライド部材8は、上下方向に延びる連結部材4aによりラック4と連結されている。このため、小径ピストン3bのストロークは、スライド部材8を介して、ラック4に伝達される。ラック4は、小径ピストン3bと同じ方向に、同じストローク量で直線運動する。
本体部2aの中央付近にはピニオン5等が配設されている。ピニオン5のピニオン軸5aは本体部2aに回転可能に支持されている。具体的には、ピニオン軸5aは、下端部が本体部2aの底領域を構成する底部2fの丸穴2jに回転可能に挿入されている。
以後の説明を容易にするため、付与機構6の前に、先に駆動機構7を説明する。
図3の(a)に示すように、第1実施形態1では、例えば、駆動機構7が、小径シリンダ3のうちの一方(図の下方)の小径シリンダを利用して設けられている。
ベース部材2、特に前部2bにおける、一方の小径シリンダ3(以後、駆動機構7ともいう。)に相当する部位は、前側に有底筒状に突出する筒状部2dとなっており、この筒状部2dを利用して構成されている。なお、筒状部2dは、底部の内面からは後方に延びる筒状の筒状部位2eを有する。
駆動機構7は、例えば、先発ピストン3bに対し前方に設けられる後発ピストン7aと、後発ピストン7aを後方に付勢する付勢部材7bとを備えている。なお以後の説明において、駆動機構7が設けられた小径シリンダ3側の小径ピストン3bを説明する際には、先発ピストン3bとも呼ぶ。
後発ピストン7aは、前部2bの内部と一方の小径シリンダケース3aにおける前部側とを利用して移動可能に挿入されている。後発ピストン7aは、図3及び図6に示すように、後部側が小径シリンダケース3aに挿入され、前部側がベース部材2の前部2b内の後発シリンダケース7d内に挿入されている。後発ピストン7aの後部(先発ピストン3b側)の断面積は、前部の断面積よりも小さく構成されている。ここでの後発ピストン7aの前部は、他方の小径シリンダケース3a側に張り出すような形状をしている。これにより、ベース部材2を大きくすることなく、後発ピストン7aの前部の断面積を大きくできる。また、断面積を大きくすることで、後述の後発ピストン7aの始動のタイミングを規制している。
後発ピストン7aは、筒状をし、その中心軸に沿った貫通孔に筒状部位2eが挿通されている。これにより、後発ピストン、そのストロークがガイドされる。
また、後発ピストン7aの内部と筒状部位2eの内部とは連通しており、小径シリンダ3に供給される圧縮空気の流路11aにされている。
後発ピストン7aは、小径シリンダケース3a内の圧力が所定以上になると移動する。このため、先発ピストン3bの位置に関係なく(ワークWの大きさに関係なく)、後発ピストン7aを移動させることができる。
また、駆動機構7の小径シリンダケース3aには、導入口7cが形成されている(図5の工程S3の拡大図参照)。その導入口7cを通じて、小径シリンダ3に利用した圧縮空気が付与機構6へ供給される。その供給された圧縮空気により付与機構6は駆動する。
駆動機構7が駆動する様子を図5を用いて説明する。
なお、図5の工程S1及び工程S2の図は、図2の(b)のC-C断面に相当し、工程S3の図は、導入口7cが現れるように図2の(b)のC-C断面よりも左側に移動した部位での断面である。
この状態では、先発ピストン3bは後発ピストン7aの後面に接触又は近接し、フィンガーF(図2の(a)参照)は開いている。なお、先発ピストン3bと後発ピストン7aとが接触又は近接することで、装置の全長(ストローク方向)を短くできる。
一方、後発ピストン7aもストローク量がゼロの状態である。この状態では、後発ピストン7aは導入口7cの上面に位置し、導入口7cを塞いでいる(大径シリンダケース6aと連通していない)。
次いで図7及び図3の(b)を用いて、付与機構6を説明する。
図7に主に示すように、付与機構6の構成として、第1実施形態1では、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ)を用いている。
第2シリンダ(以後、大径シリンダという。)6は、小径シリンダ3よりもピストンをストロークさせる受圧面積が大きい。大径シリンダ6は、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースという。)6aと、その大径シリンダケース6a内に摺動自在に収納される第2ピストン(以後、大径ピストンという。)6bとを備えている。
図に示している状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態で、第2付勢部材6cは自由長の状態又は大径ピストン6bを解除方向に若干付勢した状態である。つまり、駆動機構7が機能していない状態では、大径ピストン6bがストロークがゼロの状態で維持される。
また第1実施形態1において、付与機構6は、ピニオン軸5aの周囲に配置されるコイルバネ9と、そのコイルバネ9の周囲を覆うコイル収容部10とをさらに備えている。
大径ピストン6bは、図8に示すように、2本の小径シリンダ3が並設する方向(左右方向)に長い形状(例えば、長円形状)をし、小径シリンダ3のストローク方向と平行(前後方向)な方向に延びている。大径ピストン6bは2本の小径シリンダ3の下方側に配されている。これにより、大径ピストン6bを左右方向に長い形状にすることが可能となり、装置の大型化を招くことなく、大径ピストン6bの受圧面積を大きくできる。
図3の(b)に示すように、大径ピストン6bの前後方向の中央付近には開口部6dが形成されている。その開口部6dの内部にピニオン5、第2付勢部材6c、コイル収容部10が配置されている。また、大径ピストン6bの開口部6dの内面には切欠部6eが形成されている。
なお、大径シリンダケース6aへの圧力空気は、大径シリンダケース6aと前部2bと大径ピストン6bの前端面6fとで形成される密閉空間に導入される。これにより、大径ピストン6bに上記開口部6d等を設けることができる。
ここから図3の(b)と共に、図8~図10を加えて説明する。
コイル収容部10は、図9に示すように、本体部2aの底部2fの上面であってピニオン軸5aの中心軸周りに回転可能に配置されている。コイル収容部10は、内部をピニオン軸5aが貫通する収容本体部10aと、ピニオン軸5aが挿通し且つ収容本体部10aの下側に配された収容下部10bとを有している。
収容下部10bの貫通孔は、コイルバネ9よりも小さく構成されている。これにより、コイルバネ9を確実に収容できる。収容本体部10aと収容下部10bは、コイルバネ9を収容する状態でねじ10cで固定されている。
コイル収容部10は、収容本体部10aに固定された収容連結部10dを介して大径ピストン6bと連結されている。これにより、コイル収容部10は、大径ピストン6bの移動に連動して、ピニオン軸5a(の中心軸)周りに回転する。なお、収容連結部10dも収容本体部10aと収容下部10bとを固定するねじ10cにより収容本体部10aに固定されている。
図9の(b)に示すように、コイルバネ9は、ピニオン軸5aとの間で隙間が存在するように、つまり、ピニオン軸5aの回転(小径ピストン3bのストローク)を邪魔しないように、コイル収容部10に収容されている。
コイルバネ9の上端部9bは、図10の(b)に示すように、コイル収容部10(収容本体部10a)のねじ孔に螺合する一対のねじ10iにより挟持されることで、固定されている。
これにより、下端部9cが固定され、上端部9bはピニオン軸5a周りに回転可能なコイル収容部10に固定されることとなり、大径ピストン6bの動作によりコイルバネ9が縮径可能となる。なお、コイルバネ9の端部の固定は、上下で反対(下端部が回転可能である)でおこなわれてもよい。
ここから付与機構6が作動する様子を説明する。
(工程R1):図3の(b)に戻って、この図の状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態である。駆動機構7の導入口7c(図5の工程S3参照)が開くと、圧縮空気が大径シリンダケース6a内に注入される。その空気圧により、第2付勢部材6cの付勢力に逆らって、大径ピストン6bが後方(図の右方)にストロークする。
(工程R2):大径ピストン6bのストロークは、スペーサー10f、収容連結部10dを介してコイル収容部10に伝達される。これにより、コイル収容部10はコイルバネ9周りに符号L方向に回動する。L方向はフィンガーFの把持方向である。
この縮径により、コイルバネ9は最終的にピニオン軸5aに密着し(締め付けて)、ピニオン5も同じ方向(把持方向)に回転する。これにより、ワークW(図2の(a)参照)に把持力を付与することができる。また、コイルバネ9の縮径によりピニオン軸5aの回転がロックされる。このためラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ6の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
第1実施形態1に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。なお、第1実施形態2又は第2実施形態と共通する特徴も含む。
(1)第1の特徴
本発明の開閉チャック装置1において、第1シリンダ3と第2シリンダ6の構成等に着目した第1の特徴について説明する。
第1の特徴として、小径シリンダ3内に先発ピストン3b及び後発ピストン7aを備えているので、装置全体がコンパクトである。また、小径シリンダ3よりも受圧面積の大きな大径シリンダ6を備えているので、導入される流体をそのまま大径シリンダ6で利用して、大きな力を得ることができる。例えば、流体にさらなる圧力を加えずに、その流体をそのまま大径シリンダ6に導入することで、大きな把持力をえることができる。
また、小径シリンダ3と大径シリンダ6との駆動に同じ流体を利用しているので、流路の構造が簡単となる。また、流路が一系列となるので全体としてコンパクトとなり、装置全体を小さくすることができる。
コイルバネ9の狭持によりピニオン軸5aが回転できなくなるので、ラック4の動きをロックすることができる。さらに、ロック状態で大径シリンダのピストンが移動することで、大きな力でピニオン5を回転することができる。
コイルバネ9は、例えば、一端が固定され、他端が大径ピストン6b側の部材に固定されることで、大径ピストン6bの移動で縮径する。
なお、コイルバネ9の一端は、大径ピストン6bの移動によりコイルバネ9が縮径する際に固定(一端の移動が規制)されていればよく、大径ピストン6bが移動していない状態では、一端は固定されていなくて(移動可能であって)もよい。
開閉チャック装置の構成全体の連動関係に着目した第2の特徴について説明する。この第2の特徴を有する開閉チャック装置においても、装置の大型化を避け、その上で、把持力を大きくすることができる開閉チャック装置を提供するという課題を解決できる。
なお、以下に示す開閉チャック装置は、上記した実施形態の開閉チャック装置1と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
例えば、特許文献1、2、3のようなピニオンを用いて、一対のシリンダのストロークの同期を図るタイプの装置では、通常、大きな把持力を得るには、一対のシリンダごと受圧面積を大きくしなければならない傾向にある。
これに対し、第2の特徴を有する開閉チャック装置は、フィンガーFの移動と、フィンガーFへの把持力の付与とを分けているので、把持力の要らない移動用の小径シリンダ3の受圧面積を小さくできる。
例えば、フィンガーFがワークWに接触すると、駆動機構7は付与機構6を駆動させる。そして付与機構6は、フィンガーFにワークWを把持するための把持力を与える。このため、フィンガーFがワークWに接触するまでは、把持力をほとんど有しない小さなシリンダ(移動だけで良いので小型化できる)でフィンガーFを柔らかくワークWに接触させることができる。次いで、フィンガーFに把持力を付与する。このため、移動中のフィンガーFが大きな力でワークWをあらぬ方向に移動させたり、ワークWを破損させたりするのを防止することができる。また、柔らかくワークWに接触するので、ワークWを把持する位置が安定する。
ラック4に噛合するピニオン軸5aに、第2シリンダ側の駆動は伝達させず、第1シリンダ側の駆動のみを伝達する駆動伝達機構に着目した第3の特徴について説明する。この第3の特徴を有する機構では、装置の大型化を避け、簡単な構造で、駆動を選択してフィンガーを作動できる駆動伝達装置を提供するという課題を解決できる。なお、本駆動伝達機構は、第2シリンダ側を基準にすると、第1シリンダ側の駆動に加えて、第2シリンダ側の駆動を伝達するともいえる。
この構成により、第1シリンダ3の駆動によりラック4が作動する際には、コイルバネ9はピニオン軸5aを挟持しておらず、第2シリンダ6がラック4の作動を妨げることがない。一方、コイルバネ9により挟持されたピニオン軸5aが第2ピストン6bにより回転してラック4が把持方向に作動する際には、回転によるラック4の作動方向と第1ピストン3bにより駆動されている方向とが一致するため、ラック4を支持する第1ピストン3bがピニオン軸5aの把持方向への回転を妨げることがない。
なお、第3の特徴を有する駆動伝達装置の第1シリンダは、後発ピストン7aが設けられている第1シリンダと同じ構造であってもよいし、後発ピストン7aが設けられていない第1シリンダと同じ構造であってもよいし、これらと異なる構造であってもよい。
流体により駆動する複数のシリンダの動作のタイミングを調整する調整機構に着した第4の特徴について説明する。この第4の特徴を有する装置では、簡単な構造で、シリンダの駆動のタイミングを調整できる駆動タイミング調整装置を提供するという課題を解決できる。
第4の特徴を有する駆動タイミング装置は、流体により駆動する第1シリンダ3と、流体により駆動する第2シリンダ6と、第2シリンダ6を第1シリンダ3に対して遅れて駆動させる駆動機構7とを備える駆動タイミング調整装置において、第1シリンダ3は、先に移動する先発ピストン3bと、先発ピストン3bの移動後に移動する後発ピストン7aと、先発ピストン3bと後発ピストン7aとを収容すると共に後発ピストン7aの移動により開かれる導入口7cを有する第1シリンダケース3aとを備え、第2シリンダ6の第2ピストン6bは、導入口7cから導入される流体により駆動する。
この構成により、第1シリンダ3内の圧力が一定になると後発ピストン7aが移動するため、駆動のタイミングを一定にできる。
第1実施形態2に係る開閉チャック装置11は、第1実施形態1に係る開閉チャック装置1と付与機構6が異なり、特に、大径ピストン6bの移動によりピニオン軸を回転させる機構が異なる。
以下、第1実施形態2の特徴部分である付与機構16について説明する。第1実施形態1と同じ構成の部材等については、第1実施形態1と同じ名称、符号を用いてその説明を省略する。なお、第1実施形態2では、付与機構16の符号「16」のように、第1実施形態1の構成に対応する部材(例えば「付与機構6」である)の符号(例えば、「6」である)に対して「10」を加算した符号を用いている。
図11の(a)に主に示すように、付与機構16の構成として、第1実施形態1と同様に、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ6)と第2付勢部材(図示省略)6cを用いている。第2シリンダ(以後、大径シリンダともいう。)6は、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースともいい、図示を省略する。)6aと、第2ピストン(以後、大径ピストンともいう。)6bとを備えている。
なお、図11の(a)に示している状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態ある。
これにより、大径ピストン6bの移動によりレバー18が回動し、レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合し、大径ピストン6bのさらなる移動によるレバー18の回動により、ピニオン15を回動させようとする負荷が作用する。
なお、大径ピストン6bの移動によりピニオン15を回動させる負荷が作用する際には、フィンガーFはワークWにすでに当接又は近接しており、ワークWを把持する把持力が一層高まる。
以下、図12を主に利用して詳細に説明する。
レバー18は、支持ピン17a用の貫通孔18iを有する本体部18bと、本体部18bから大径ピストン6bの切欠部6e側に延伸する第1延伸部18cと、本体部18bから第1延伸部18cと異なる方向に延伸する第2延伸部18dとを有している。
支持ピン17aはベース部材2の底部2fから立設する。レバー18は、支持ピン17aの立設方向から見ると、「L」字状、「へ」字状等の屈曲形状をし、さらには、屈曲部分に本体部18bが位置するような形状をしている。
支持ピン17aの立設方向から付与機構16を見ると、支持ピン17aがピニオン15の凹凸部15bに隣接し、屈曲形状のレバー18がピニオン15の下部側(凹凸部15b)に沿うように配される。
第1延伸部18cは、大径ピストン6bの切欠部6eに左右方向に移動可能に配された可動片17c(図11の(b)参照)を収容するための収容部分18jと、可動片17cを挿通する連結ピン17b用の貫通孔18kとを有する。なお、凸凹部18aが第1延伸部18cに設けられるとしてもよい。連結ピン17bは支持ピン17aと平行に設けられている。
ここでは、連結ピン17b用の貫通孔18kは、支持ピン17aの両側から大径ピストン6bの切欠部6e側に延伸する一対の延伸片部分18eに設けられ、一対の延伸片部分18e間の溝状の空間が収容部分18jとなる。
第2延伸部18dは、その延伸先端側に第3付勢部材21を支持する凹入部分18fを有している。
ボディ22は、立方体状に近い形状の本体部22aを有し、ピニオン15の下部側が挿入される貫通孔22bを有している。なお、ピニオン15は、下部の軸部15cがベース部材2の底部2fの下固定部2gにより回動可能に固定(支持)される。
ボディ22は、レバー18を回動可能に支持する支持ピン17a用の貫通孔22cと、回動可能に支持されるレバー18の本体部18bと第2延伸部18dとを収容するレバー収容部22dとを有する。ここでのボディ22は、レバー収容部22dに隣接して第3付勢部材21を収容する付勢部材収容部22eを有している。
付勢部材収容部22eは、レバー収容部22dに対して支持ピン17aと反対側に形成されている。
まず、ピニオン15は、ベース部材2の底部2fの下固定部2gを利用して回動可能に支持される。ボディ22は、その貫通孔22bにピニオン15の下部側が挿入されるため、ボディ22の下面が底部2fに支持されながら、ピニオン軸周りに回動可能となる。レバー18は、本体部18bの凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bと対向する状態でボディ22のレバー収容部22dに収容されると共に、ボディ22の貫通孔22cを挿通する支持ピン17aにより回動可能に支持される。
図13に示すように、ピニオン15の凹凸部15bは、円形状の周面に円弧状に凹入する凹領域15dと、周方向に隣接する凹領域15d間に形成された凸領域15eとを有している。なお、後述の凸領域18g及び凹領域18hと区別するために、ピニオン凸領域15e及びピニオン凹領域15dとする。
レバー18の凸凹部18aは、ピニオン凹領域15dの円弧状の半径と略一致する半径で円弧状に突出(膨出)する凸領域18gと、凸領域18gに形成された凹領域18hとを有している。ピニオン凸領域15e及びピニオン凹領域15dと区別するために、レバー凸領域18g及びレバー凹領域18hとする。
レバー凹領域18hは、レバー凸領域18gの周方向の略中央に設けられている。これにより、レバー18の凸凹部18aは、ピニオン15の凹凸部15bに対してピニオン凹領域15dの周方向の1/2のピッチで、ピニオン15の凹凸部15bと嵌合し、大径ピストン6bの少量の移動に対してもレバー18とピニオン15とが嵌合できる。
レバー凹領域18hは、その凹入底に対してピニオン15の把持方向への回転(図中の矢印である)する側と反対の面(回転力を伝える側の面)が、図13の(a)に示すように、ピニオン凸領域15eに対して把持方向側の凹入面と一致するように構成されている。これにより、レバー凹領域18hとピニオン凸領域15eとが当接する状態で嵌合する。
付与機構16が作動する様子を説明する。なお、大径ピストン6bが後方へストロークするまでの様子は、第1実施形態1の「(6-3)付与機構6が作動する様子」の(工程R1)と同じであるため、ここでは、大径ピストンがストロークを開始した時点から説明する。
(工程1R2):大径ピストン6bのストロークは、可動片17cを介して、支持ピン17aの周りにレバー18を回転させる。また、レバー18は、第3付勢部材21から同じ回転の向きに付勢される。これにより、レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合する。
(工程1R3):さらに、大径ピストン6bが移動することで、大径ピストン6bの推力がピニオン15の把持する向きへの回転へと変換される。レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合した状態で、大径ピストン6bが移動する又は移動する方向に駆動力が作用しているため、ピニオン15の回転がロックされ、ラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ6の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
(工程1R4):大径シリンダケース6aから圧縮空気が抜けると、第2付勢部材6cの付勢力によって、大径ピストン6bは、元の位置に移動する。これにより、レバー18が解除方向に回転すると、第3付勢部材21によりボディ22が解除方向に回転し、やがてストッパー23に当接してボディ22の回転が停止する。さらに、大径ピストン6bが元の位置に戻ろうとすることで、第3付勢部材21が縮み、レバー18がピニオン15から離れる。なお、この際、第3付勢部材21の圧縮力は、大径ピストン6bが把持方向に移動した際のレバー18を把持方向に回転させる付勢力となる。
第1実施形態2に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。
第3の特徴では、ピニオン軸5aに駆動を伝達するために、ピニオン軸5aをコイルバネ9で狭持して固定しているが、第1実施形態2で説明したように、ラチェット機構によりピニオン15を固定するようにしてもよい。
(1)第5の特徴
つまり、ラック4に噛合するピニオン15に、第2シリンダ側の駆動は伝達させず、第1シリンダ側の駆動のみを伝達する駆動伝達機構に着目した第5の特徴について説明する。この第5の特徴を有する機構では、装置の大型化を避け、簡単な構造で、駆動を選択してフィンガーFを作動できる駆動伝達装置を提供するという課題を解決できる。なお、本駆動伝達機構は、第2シリンダ側を基準にすると、第1シリンダ側の駆動に加えて、第2シリンダ側の駆動を伝達するともいえる。
この構成により、第1シリンダ3の駆動によりラック4が作動する際には、レバー18はピニオン15に係合しておらず、第2シリンダ6がラック4の作動を妨げることがない。一方、レバー18により係合されたピニオン15が第2ピストン6bの移動により回転してラック4が把持方向に作動する際には、回転によってレバー18がピニオン15を把持方向(押圧する方向)と第1ピストン3bにより駆動されている方向とが一致するため、ラック4を支持する第1ピストン3bがピニオン15の把持方向への回転を妨げることがない。
なお、第5の特徴を有する駆動伝達装置の第1シリンダは、後発ピストン7aが設けられている第1シリンダと同じ構造であってもよいし、後発ピストン7aが設けられていない第1シリンダと同じ構造であってもよいし、これらと異なる構造であってもよい。
第3の特徴及び第5の特徴の駆動伝達装置は、第1シリンダ3の駆動及び第2シリンダ6の駆動を選択して、ワークWを把持/解除方向にフィンガーFを作動させるための駆動伝達装置において、ワークWを把持する方向に第2ピストン6bが移動した際に、前記ピニオンを拘束して、前記第2ピストンの駆動を前記ピニオンの回転駆動に変換する。
1.概略
第2実施形態では、第1シリンダ3のストローク方向と、第2シリンダ6のストローク方向とが交差する(直交する)開閉チャック装置201について説明する。
第2実施形態においても、前後・左右・上下の方向は、第1実施形態と同様とし、第1実施形態と同じ機能を有する部材(構成)の符号も第1実施形態と同様とし、これらの構成の説明や図示がない場合も、第1実形態と同様の機能を有するものとする。
図14に示すように、開閉チャック装置201は、フィンガーF、Fが取り付けられるスライド部材8をスライド可能に支持し且つ第1(小径)シリンダケース3aや第2(大径)シリンダケース216aを構成するベース部材202と、ベース部材202内に配され且つスライド部材8に連結された一対の第1シリンダ(以後、小径シリンダという。)3、3と、各スライド部材8に取り付けられた一対のラック4、4と、ラック4、4と噛み合うピニオン部205aを有するピニオン205とを備える他、ピニオン205に対してフィンガーFの把持方向に回転させる力を付与する付与機構206と、フィンガーFがワークW(図2の(a)参照)にほぼ接触した後に付与機構206を駆動させる駆動機構7と、フィンガーFの移動をスムーズに行ための給排気機構208を備えている。
(1)ベース部材202
図14に戻って、ベース部材202は、例えば、本体部202a、前部202b、後部202c、下部202dからなり、これらは、ねじなどの締結具で一体に連結される。ベース部材202は、本体部202aに形成された前後方向に延伸する貫通孔や下部202dに形成された上下方向に延伸する凹み202e等を利用して、小径シリンダ3,3用の小径シリンダケース3aや大径シリンダ216用の大径シリンダケース216aを構成する。
小径シリンダ3,3は、第1シリンダケース(以後、小径シリンダケースともいう。)3aと、小径シリンダケース3a内に摺動自在に収納される第1ピストン(以後、単に、小径ピストンという。)3bとを備え、小径シリンダケース3a内に導入される圧縮空気により前後方向にストロークする。なお、一対の小径シリンダ3の内、一方の小径シリンダ3は駆動機構7を兼ねている。
ラック4は、スライド部材8に連結され、図15に示すように、ピニオン205のピニオン部205aに噛合する。このため、第1ピストン3bの移動によりラック4が前後方向に移動し、上下方向を回動軸(ピニオン軸である)としてピニオン205が回動する。
ピニオン205は、ピニオン軸を軸心に有し、ピニオン軸周りに回動可能な状態で、軸受部材215を介してベース部材202に支持されている。
ピニオン205は、図16の(a)に示すように、上部がピニオン部(歯車)205a、中部が軸部205b、下部がスクリュー部205cとなっている。スクリュー部205cは、他のスクリュー部と区別するために、ピニオン軸スクリュー部205cと便宜上する。
軸受部材215は、図14及び図15に示すように、下方が開放し且つ大ピストンが上下に挿抜可能に挿入する有蓋筒状部215aと、有蓋筒状部215aの下端から径方向の外方へ張り出す張出板部215bと、張出板部215bの下側に設けられたパッキン用の溝部215cとを有する。軸受部材215は、張出板部215bがベース部材202の本体部202aの凹入部分202f(図14参照)に圧入されることで、ベース部材202に固定される。なお、ピニオン205の中間の軸部205bとピニオン軸スクリュー部205cとが、図15の(b)に示すように、軸受部材215の有蓋筒状部215aの貫通孔215dから内部に挿入し、ピニオン部205aの下面が有蓋筒状部215aの蓋部分で支持される。また、軸受部材215の固定はねじ等を利用してもよい。
駆動機構7は、第1実施形態と同様に、一方の小径シリンダ3の小径ピストン3bを先発ピストンとして利用し、先発ピストン3bに対し前方に設けられる後発ピストン7aと、後発ピストン7aを後方に付勢する付勢部材7bと、付与機構206側に圧縮空気を供給するための導入口207cとを備えている。なお、導入口207cの符号「207c」は図示されていないが、第1実施形態の導入口7cと区別するために、便宜上、「207c」とする。
後発ピストン7aは、前部202bの内部と一方の小径シリンダケース3aにおける前部側に形成されている後発シリンダケース7d内に移動可能に挿入され、後発ピストン7aが先発ピストン3bと反対側に移動することで導入口207cが露出するように構成されている。なお、導入口207cを一端に有する導入路は、後発シリンダケース7dから下方へ延伸して大径シリンダケース216aにつながる。このため、導入路を容易に設けることができる。
付勢部材7bは、例えば、コイルバネが利用され、フィンガーFがワークWに当接する前(先発ピストン3bが停止する前)に、後発ピストン7aが移動し始めるのを規制する。
これにより、後発ピストン7aは、先発ピストン3bが停止して小径シリンダケース3a内の圧力が所定以上になると移動し、当該移動により導入口207cが露出して、付与機構206への圧縮空気の供給が開始される。
次いで図15及び図16を用いて、付与機構206を説明する。
付与機構206の構成として、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ)を用いている。第2シリンダ(以後、大径シリンダという。)216は、小径シリンダ3よりもピストンをストロークさせる受圧面積が大きく、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースという。)216aと、その大径シリンダケース216a内に摺動自在に収納される第2ピストン(以後、大径ピストンという。)216bとを備えている。
大径ピストン216bは、大径シリンダケース216a内に駆動機構7の導入口207cから圧縮空気が供給されると上方に向かって動き出す。
スクリュー変換機構は、ピニオン205の外周に形成されたピニオン軸スクリュー部205cと、内周面に形成されスクリュー部217aと外周面に形成されたスクリュー部217bとを有するピストンスクリュー217と、内周面に形成されたスクリュー部218aを有するカラー218とを有する。
ここで、スクリュー部の区別を容易とするために、ピストンスクリュー217の内周面のスクリュー部をピストン内スクリュー部217aとし、ピストンスクリュー217の外周面のスクリュー部をピストン外スクリュー部217bとし、カラー218のスクリュー部218aをカラースクリュー部218aとする。
ピニオン軸スクリュー部205cはピストン内スクリュー部217aと噛み合い、ピストン外スクリュー部217bはカラースクリュー部218aと噛み合う。
なお、各スクリュー部205c,217a,217bのスクリューの向きは、把持する際に大径ピストン216bの移動に伴ってピニオン205が把持方向に回転するように構成されている。
同様に、ピストン外スクリュー部217bとカラースクリュー部218aとは、互いに噛み合えばよく、スクリュー状に形成された凸条部と溝条部とのいずれかを有している。ここでは、ピストン外スクリュー部217bは複数本(例えば、3本)の溝条部により構成され、カラースクリュー部218aは、溝条部と同じ本数(例えば、3本である)の凸条部により構成されている。
ここでの付与機構206の構成として、付勢部材214を有し、大径ピストン216bが下方に移動した際に、ピニオン軸スクリュー部205cとピストン内スクリュー部217aとの噛み合わせをスムーズに解除できるように構成されている。なお、付勢部材214を他の付勢部材と区別するために、便宜上「第4付勢部材」とする。
大径ピストン216bは、図16に示すように、大径シリンダケース216a内で摺動する摺動部216cと、摺動部216cから上方に突出する筒状部216dとを有する。大径ピストン216bは、筒状部216dに少なくとも、ピストンスクリュー217を収容する。ここでの筒状部216dは、カラー218、第4付勢部材214、ピストンスクリュー217を収容し、上方からピニオン205(ピニオン軸スクリュー部205c)が進退可能に挿入する。
摺動部216cは、例えば長円状をし、外周面の溝216eにパッキンが嵌合する。
筒状部216dは、少なくとも、横断面において内周縁が円形状をしている。筒状部216dは、図16の(b)に示すように、下部側に形成された張出部分216fと、筒軸方向の中間に形成された段差部分216gと、上部側に形成された溝部分216hとを有する。
張出部分216fは筒軸に向かって張り出す。張出部分216fは、カラー218の周方向に間隔をおいて設けられた突出部218c間に嵌合する。これにより、カラー218の大径ピストン216bに対する回動が規制される。
段差部分216gは、段差の上側部分が径方向の外方に位置するように(上広がり状態で)形成されている。段差部分216gは第4付勢部材214を下側から支持する。
溝部分216hは例えばスナップリング213用である。スナップリング213が溝部分216hに嵌ることで、ピストンスクリュー217等が筒状部216dから抜けるのを防止できる。なお、筒状部216dには、下側から、カラー218、第4付勢部材214、ピストンスクリュー217の順で収容される。
ピストンスクリュー217は、円筒部217cと、円筒部217cの上端から径方向に張り出す外鍔部217dとを有する。
円筒部217cは筒軸の中央部分に段差部分217eを有している。段差部分217eは、段差の上側部分が径方向の外方に位置するように(上広がり状態で)形成されている。円筒部217cの内周面であって上部側にはピストン内スクリュー部217aである複数本の溝条部が形成され、円筒部217cの外周面にはピストン外スクリュー部217bである複数本の溝条部が下端から形成されている。
外鍔部217dは、図15の(b)に示すように、その外周縁が大径ピストン216bの筒状部216dの内周面に当接又は近接するように構成されている。外鍔部217dは、円筒部217cの外周側に配される第4付勢部材214が上方に抜けるのを防止する。
カラー218は円筒状をしている。カラー218は、円筒部218bと、円筒部218bから下方に突出する突出部218cとを有している。カラー218は大径ピストン216bの筒状部216d内に挿入(嵌合)され、内周側にピストンスクリュー217が挿入される。
円筒部218bの内周面に形成されたカラースクリュー部218aは、カラー218に挿入されるピストンスクリュー217のピストン外スクリュー部217bと噛み合う。
突出部218cは、周方向に間隔を置いて複数個(例えば4個)設けられ、大径ピストン216bの筒状部216d内で周方向に隣接する張出部分216f間に嵌る。なお、カラー218は、大径ピストン216bと一体で上下動する。このため、カラー218と大径ピストン216bとを一体品とすることも可能であるが、加工の観点からは別体とした方がよい。
ここから付与機構206が作動する様子を図17~図20を用いて説明する。
(工程2R1):図17に示す状態は、大径ピストン216bのストローク量がゼロの状態である。この状態では、ピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cの下端部205eは、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aの上方に離間している。つまり、ピニオン軸スクリュー部205cはピストン内スクリュー部217aと噛み合っていない。このため、ピニオン205は、そのピニオン軸周りに回動可能である。
なお、図17は、ピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cとピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aとが離間している状態が分かるように示したものであり、フィンガーFはワークWに当接していない。
この状態から、やがて、駆動機構7の導入口207cが開き、圧縮空気が大径シリンダケース216a内に注入され、大径ピストン216bが上方へと移動し始める。
この状態では、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aとピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cとが噛み合わず、大径ピストン216bの上方への運動はピニオン205の回転運動に変換されない。
この状態においても、大径ピストン216bは上方へと移動する。
なお、図18は、大径ピストン216bは上方へ移動し、ピストン内スクリュー部217aとピニオン軸スクリュー部205cとが当接しているが、ワークWのサイズ等によって、ピストン内スクリュー部217aとピニオン軸スクリュー部205cとが当接せずに、すんなりと噛み合う場合もある。この場合、工程2R2はなく、次の工程2R3となる。
この状態においても、大径ピストン216bは上方へ移動する。
なお、図19は、図18に対して、ピニオン205に対する大径ピストン216bの上下方向の位置、ピニオン205に対するピストンスクリュー217の回転方向の位置、大径ピストン216bに対するピストンスクリュー217の上下方向の位置が異なる。
これにより、ワークW(図2の(a)参照)に把持力を付与することができる。また、大径ピストン216bは上方へと移動するため、ピニオン205の逆方向の回転がロックされる。このためラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ216の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
図21及び図22を用いて説明する。
(6-1)空気の流れ
小径ピストン3bを把持方向に駆動させる場合は、第1口211cから流路211aを利用して給気され(図21の(a)中の矢印「G1」である)、第2口211dから流路211bを利用して排気される(図21の(a)及び図22の(a)中の矢印「H1」である)。
小径ピストン3bを解除方向に駆動させる場合は、第2口211dから流路211bを利用して吸気され(図21の(a)及び図22の(a)中の矢印「G2」である)、第1口211cから流路211aを利用して排気される(図21の(a)中の矢印「H2」である)。
図21の(a)における流路211aは、スライド部材8B(図22参照)側の小径シリンダ3側と後発ピストン7a用であり、スライド部材8A(図22参照)側の小径ピストン3bには、図21及び図22では表れていない別の流路が利用される。
図21の(a)及び図22の(a)における流路211bは、スライド部材8A側の小径ピストン3bと後発ピストン7a用であり、スライド部材8B側の小径ピストン3bには、図21及び図22では表れていない別の流路が利用される。
流路211bは、少なくとも、第1流路部211e、第2流路部211f、第3流路部211gを有し、第1流路部211eから、第2流路部211fと第3流路部211gとの分岐部位に給排気機構208が設けられている。
第1流路部211eは第2口211dと給排気機構208とを接続する流路である。第2流路部211fは、給排気機構208と小径シリンダ3とを接続する流路である。第3流路部211gは、給排気機構208と後発シリンダケース7dとを接続する流路である。
給排気機構208は、小径シリンダ3の給気を後発シリンダケース7dの給気よりも優先させて行う。これにより、フィンガーFの移動に際して抵抗が増加しても、フィンガーFの移動が停止するまで後発ピストン7aを停止させることができる。
給排気機構208は、小径シリンダ3の排気を後発シリンダケース7dの排気よりも優先させて行う。これにより、フィンガーFの解除方向への移動をスムーズに行うことができる。
このように、給気に際して、第1流路部211eを流れる圧縮空気は、断面積の大きな第2流路部211fと、連通口の小さな第3連通部208cと断面積の小さな第4連通部208dを通って第3流路部211gへと流れる。したがって、第2流路部211fへの給気が第3流路部211gへの給気よりも流量において優先される。
この際、第3連通部208cの連通口(貫通孔208g)の大きさや第4連通部208dの大きさを調整することで、第2流路部211f及び第3流路部211gへ流れる圧縮空気の流量(流量比)を所望の流量にできる。
このように、排気の際には、第2流路部211fから第1流路部211eに空気が流れ、第3流路部211gから第4連通部208dを経由して第1流路部211eに空気が流れる。この際、第4連通部208dの横断面積が第2連通部208bの横断面積よりも小さく、小径シリンダ3の排気が後発シリンダケース7dの排気よりも優先される。
第1連通部208a、第2連通部208b及び第3連通部208cは、ノズル体222に設けられ、当該ノズル体222がベース部材202の収容部202gに配される。第4連通部208dは、収容部202gとノズル体222との間の隙間により構成される。閉塞体220は球体により、第5付勢部材221はコイルバネによりそれぞれ構成される。第3連通部208cにおける第2連通部208b及び第1連通部208aの一方との連通口は、小径の貫通孔208gにより構成され、この貫通孔208gが閉塞体220により開閉可能となる。
第2実施形態に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。
(1)第6の特徴
大径(第2)ピストン216bの直線運動において、大径ピストン216bが第1方向に移動した際に、大径ピストン216b側のピストンスクリュー217とピニオン205とが干渉した場合に、大径ピストン216b側のピストンスクリュー217の位置を補正する位置補正機構に着目した第6の特徴について説明する。この第6の特徴を有する機構では、大径(第2)ピストン216bの上方向の移動がピニオン205と干渉しても停止することなく、スムーズにピニオン205を回転可能とする課題を解決できる。
なお、この課題は、直線移動体(ピストン)が所定位置まで移動した際に、回転移動体(ピニオン)のスクリュー部と嵌合して、回転移動体を回転させる機構を有する装置においても生じる。
(1-2)このような構成を有する位置補正機構は、連動部材と回転移動体とが干渉しても、連動部材は、直線移動体のさらなる移動により回転するため、連動部材の位置を補正できる。
第1流路部211eと、第1流路部211eに連通する第2流路部211fと、第1流路部211e又は第2流路部211fに連通する第3流路部211gとを有し、第1流路部211eからの給気に際して、第2流路部211fへの給気を第3流路部211gへの給気よりも優先し、第1流路部211eからの排気に際して、第2流路部211fの排気を第3流路部211gの排気よりも優先させる給排気機構208に着目した第7の特徴について説明する。
この第7の特徴を有する機構では、例えば、先発ピストンの移動が終了する前に、後発ピストンの移動が開始するような課題を解決できる。なお、この課題は、多くの流路や電磁弁等を利用することで解決できるが、簡単な構成で安価に実施できない。
(2-2)このような構成を有する給排気機構208は、給気に際し、第3連通部208c内の閉塞体220により第3流路部211g側への給気量を、第2流路部211fへの給気量よりも少なくできる。排気に際し、第3連通部208c内の閉塞体220により第3流路部211g側からの排気量を、第2流路部211fからの排気量よりも少なくできる。しかも、第2流路部211fへの給気量に対する第3流路部211gの給気量の比率と、第2流路部211fからの排気量に対する第3流路部211gからの排気量の比率を変えることができ、また付勢部材221の付勢力(ばね係数)や連通口(貫通孔)の大きさを調整することで、容易に給排気の流量調整が可能となる。
なお、第2実施形態の給排気機構は、第3流路部側への給気量を第2流路部への給気量よりも少なくして、第3流路部側からの排気量を第2流路部からの排気量よりも少なくしているが、例えば、付勢部材の付勢力(ばね係数)や連通口(貫通孔)の大きさを調整することで、例えば、給気において、第3流路部の給気量を第2流路部の給気量より多く又は同じにし、第3流路部の排気量を第2流路部の排気量よりも少なくすることもできる。
以上、第1及び第2実施形態に係る開閉チャック装置について説明したが、これらの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、第1及び第2実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても上記各発明に含まれる。
(2)第1シリンダを駆動する流体を利用して第2シリンダを駆動する場合や第3の特徴を有する駆動伝達装置を除いて、駆動機構7として、小径シリンダ3を用いるのではなく、別個のシリンダ機構を用いてもよい。
また駆動機構7において、後発ピストン7aは先発ピストン3bのストローク上に位置している。しかしながら、後発ピストンは、先発ピストン3bを収容する小径シリンダケース3aと連通し且つ先発ピストン3bを駆動させる流体により移動可能であればよく、例えば、後発ピストンのストロークと先発ピストンのストロークとは、交差してもよいし、同一線上にない平行であってもよい。
駆動機構7は、付勢部材7bを用いて、後発ピストン7aの移動のタイミングを調整しているが、他の方法でタイミングを調整してもよい。他の方法としては、後発ピストンの受圧面積を先発シリンダの受圧面積を大きくしたり、後発ピストンの表面と小径シリンダケースの内面との摩擦係数を大きくしたり等で実施できる。
導入口7cは、1個であってもよいし、複数個であってもよい。複数個ある場合、ストローク方向に沿って設けられてもよい(段階的に開放さされる)し、ストロークと直交する方向に設けられてもよい(同時期に開放される)。複数個ある場合、その大きさは同じであってもよいし、異なる大きさであってもよいし、その形状は同じであってもよいし、異なる形状であってもよい。
駆動機構7(後発ピストン7a及び導入口7c)は、一対の第1シリンダ3の一方に設けられていたが、両方の第1シリンダに設けてもよい。
(6)駆動機構7が付与機構6を作動させるのは、フィンガーFがワークWに接触した時でもよい。又は接触する直前でもよい。但し、付与機構6の構成を考慮すると、フィンガーFの大移動は不向きであり、ワークWにフィンガーFが接触した後の方が、フィンガーFの移動が少なく、好ましい。
(8)最初から大径シリンダ6に圧縮空気を導入し、且つ、大径ピストン6bをストッパーで止めてストロークさせないようにし、駆動機構7から圧縮空気が導入されると、その圧縮空気によりストッパーが解除されるようにしてもよい。
(9)第2の特徴を有する開閉チャック装置や第3の特徴を有する駆動伝達装置では、大径シリンダ6の代わりに、圧縮空気で駆動するアクチュエータを用い、そのアクチュエータでコイル収容部10を回転させてもよい。
このため、小径シリンダ3を移動に足りる程度に受圧面積を小さくしてもよい。これにより、装置全体を小さくできる。
3 第1シリンダ(小径シリンダ)
3a 第1シリンダケース(小径シリンダケース)
3b 先発ピストン(第1ピストン、小径ピストン)
4 ラック
5 ピニオン
5a ピニオン軸
6 第2シリンダ(付与機構、大径シリンダ)
6b 第2ピストン(大径ピストン)
7a 後発ピストン
7c 導入孔
9 コイルバネ
F フィンガー
W ワーク
Claims (4)
- ワークを把持するためのフィンガーを把持/解除方向に作動させる開閉チャック装置において、
流体により駆動して前記フィンガーを作動させる第1シリンダと、
流体により駆動して前記フィンガーを作動させ且つ前記第1シリンダよりも受圧面積が大きい第2シリンダとを備え、
前記第1シリンダは、
前記フィンガーを把持方向に作動させる先発ピストンと、
前記先発ピストンの移動後に移動する後発ピストンと、
前記先発ピストンと前記後発ピストンとを収容すると共に前記後発ピストンの移動により開かれる導入口を有する第1シリンダケースと
を備え、
前記第2シリンダの第2ピストンは、前記導入口から導入される流体により前記フィンガーを前記把持方向に作動させる
開閉チャック装置。 - 前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと、
前記ピニオンのピニオン軸を覆い且つ前記ピニオン軸の周りを旋回するコイルバネと
をさらに備え、
前記コイルバネは、前記第2ピストンの移動により縮径して前記ピニオン軸を狭持する
請求項1に記載の開閉チャック装置。 - 前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと、
前記ピニオンのピニオン軸と平行に配された支持ピンにより回動可能に支持されたレバーと
をさらに備え、
前記レバーは、前記第2ピストンの移動により前記レバーが回動するように、前記支持ピンを挟んだ一方側が前記第2ピストンに連結され、
前記レバーと前記ピニオンとの対向部分に、前記第2ピストンの移動により互いに嵌合する凹凸部を有する
請求項1に記載の開閉チャック装置。 - 前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと
をさらに備え、
前記第2ピストンは、前記ピニオンのピニオン軸と平行に直線的に移動し、前記第2ピストンの直線運動を前記ピニオン軸の回転運動に変換するスクリュー機構を備える
請求項1に記載の開閉チャック装置。
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