JP4330223B2 - 合成高分子フィルム用帯電防止剤、これを含有する水性組成物、及びこの水性組成物を用いる合成高分子フィルムの帯電防止方法 - Google Patents
合成高分子フィルム用帯電防止剤、これを含有する水性組成物、及びこの水性組成物を用いる合成高分子フィルムの帯電防止方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は合成高分子フィルム用帯電防止剤、これを含有する水性組成物及びこの水性組成物を用いる合成高分子フィルムの帯電防止方法に関する。各種の合成高分子フィルムが、単層フィルムとして、また単層フィルム相互間に接着性剤を介在させた複層フィルムとして、広く使用されている。しかし、かかる合成高分子フィルムには、その製造乃至加工工程で、またその使用時に、様々な静電気障害の生じることが知られている。合成高分子フィルムの製造乃至加工では、かかる静電気障害を充分に防止できる帯電防止剤を使用することが要求されるのであり、またこれに加えて、製造した単層フィルムから相互間に接着性剤を介在させた複層フィルムを加工する場合に備え、接着性剤との併用性に優れ且つ接着性剤の接着性に問題を生じない帯電防止剤を使用することが要求されるのである。更に近年では、環境汚染を回避し、同時に製造乃至加工コストを低減する観点から、合成高分子フィルムの製造乃至加工工程で生じる残渣や使用済み合成高分子フィルムを再利用することが要求されているが、そのためには、かかる再利用に問題を生じない帯電防止剤を使用することが要求されるのである。本発明は、以上の要求に応える、合成高分子フィルム用帯電防止剤、これを含有する水性組成物、及びこの水性組成物を用いる合成高分子フィルムの帯電防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成高分子フィルム用帯電防止剤として、各種の界面活性剤の他に、イオン性高分子化合物が提案されている(特開平1−146931、特開平5−271524、特開平10−24541)。しかし、界面活性剤を用いると、合成高分子フィルム同士が粘着し易くなり、その製造乃至加工工程において、また使用時に、様々な不都合を引き起こすので、近年ではイオン性高分子化合物が使用されるようになっている。ところが、合成高分子フィルム用帯電防止剤として従来提案されているイオン性高分子化合物には、1)合成高分子フィルムの製造時における耐熱性、特に製膜時の加熱延伸に対する耐熱性に劣るため、結果として合成高分子フィルムに充分な帯電防止性を付与できない、2)複層フィルムの加工に備え、単層フィルムの製造時にその表面に接着性剤をも塗布する場合、接着性剤との相溶性が悪いため、同時に併用するのが難しく、また接着性剤の接着性をも低下させる、3)イオン性高分子化合物を用いた合成高分子フィルムの製造乃至加工残渣や使用済み合成高分子フィルムを再溶融すると、着色するため、これらの再利用が制約される、以上の1)〜3)の問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、合成高分子フィルム用帯電防止剤として従来提案されているイオン性高分子化合物では、1)合成高分子フィルムに充分な帯電防止性を付与できない、2)接着性剤と併用するのが難しく、また接着性剤の接着性を低下させる、3)合成高分子フィルムの製造乃至加工残渣や使用済み合成高分子フィルムの再利用が制約される、という点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者は、上記の課題を解決するべく研究した結果、繰り返し単位の全部又は一部がアニオン対として特定のスルホン酸アニオン基を有し且つカチオン対として特定の第四級アンモニウム塩基を有する特定の繰り返し単位から成るビニル単独重合体及び/又はビニル共重合体であって、所定の数平均分子量を有するものが、合成高分子フィルム用帯電防止剤として好適であること、またかかる合成高分子フィルム用帯電防止剤を合成高分子フィルムに適用するに際しては、得られる単層フィルムから複層フィルムを加工する場合に備え、所定量の該合成高分子フィルム用帯電防止剤と、接着性剤として特定のポリエステル共重合体とを含有する水性組成物とするのが好適であること、更にかかる水性組成物を合成高分子フィルムに適用するに際しては、該水性組成物を延伸工程前の合成高分子フィルムに所定量塗布するのが好適であること、以上を見出した。
【0005】
すなわち本発明は、下記の式1で示される構成単位Aを繰り返し単位とするビニル単独重合体、及び該構成単位Aと他の構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体から選ばれる一つ又は二つ以上のビニル重合体であって、数平均分子量5000〜1000000のビニル重合体から成ることを特徴とする合成高分子フィルム用帯電防止剤に係る。
【0006】
【式1】
【0007】
式1において、
R1:水素又はメチル基
R2,R3,R4,R5:炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であって、少なくとも一つが炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基
B:炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、−CONH−R6−で示される有機基又は−COO−R7−で示される有機基(但し、R6,R7;炭素数1〜6のアルキレン基)
【0008】
また本発明は、上記の合成高分子フィルム用帯電防止剤と、下記のポリエステル共重合体と、水とを含有する水性組成物であって、固形分当たりに換算して該合成高分子フィルム用帯電防止剤を10〜90重量%の割合で含有することを特徴とする水性組成物に係る。
ポリエステル共重合体:分子中にスルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を0.1〜20モル%の割合で含有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール化合物とを反応させて得られるポリエステル共重合体
【0009】
更に本発明は、上記の水性組成物を、延伸工程に供される合成高分子フィルムに、延伸工程後に製品となる合成高分子フィルム1m2当たり固形分として0.01〜3gの割合となるよう塗布することを特徴とする合成高分子フィルムの帯電防止方法に係る。
【0010】
本発明の合成高分子フィルム用帯電防止剤(以下、単に本発明の帯電防止剤という)としてのビニル重合体には、1)式1で示される構成単位Aを繰り返し単位とするビニル単独重合体、2)式1で示される構成単位Aと他の構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体、3)上記のビニル単独重合体とビニル共重合体との混合物が包含される。
【0011】
式1で示される構成単位Aは、アニオン対としてスルホン酸アニオン基を有し、またカチオン対として第四級アンモニウム塩基を有する、塩構造の構成単位である。かかる構成単位Aを繰り返し単位とするビニル単独重合体は、式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体をラジカル重合することにより得られる。式1で示される構成単位Aには複数の構成単位が含まれ、したがってかかる構成単位を形成することとなるビニル単量体にも複数のビニル単量体が含まれる。本発明において、ビニル単独重合体は、式1で示される構成単位Aのみを繰り返し単位とするビニル重合体を意味する。また構成単位Aと他の構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体は、式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体と、他の構成単位Bを形成することとなるビニル単量体とを、ラジカル共重合することにより得られる。
【0012】
式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体としては、スチレンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、スチレンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、メタアクリル酸−3−スルホプロピルエステル・ベンジルトリ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、アリルスルホン酸・フェニルトリ3−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩、スチレンスルホン酸・テトラ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩等が挙げられるが、なかでもスチレンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、スチレンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸・ジメチルジ2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩が好ましい。
【0013】
また他の構成単位Bを形成することとなるビニル単量体としては、1)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸等の炭素数3〜18の不飽和一塩基酸、2)炭素数1〜20の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、3)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4又は5の不飽和二塩基酸及びその塩、4)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4又は5の不飽和二塩基酸と炭素数1〜20の脂肪族アルコールとのエステル、5)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4又は5の不飽和二塩基酸と炭素数2〜8のグリコールとのエステル、6)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4又は5の不飽和二塩基酸とオキシアルキレン基の繰り返し数2〜100のポリアルキレングリコールとのエステル、7)(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド、8)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、9)α−メチルスチレン、スチレンなどの芳香族ビニル単量体、10)酸性ビニルスルホン酸、酸性(メタ)アリルスルホン酸、酸性スルホアルキル(メタ)アクリレート、酸性スチレンスルホン酸等の酸性スルホン酸基を有するビニル単量体、11)ビニルスルホン酸アルカリ金属塩、(メタ)アリルスルホン酸アルカリ金属塩、スルホアルキル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸アルカリ金属塩等のスルホン酸アルカリ金属塩基を有するビニル単量体、12)グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するビニル単量体等が挙げられるが、なかでもスチレン、炭素数4〜10のアクリル酸アルキル、(メタ)アクリルアミド、炭素数5〜11のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0014】
本発明の帯電防止剤としてのビニル単独重合体は、前記したように、式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体をラジカル重合することにより得られるが、これ以外にも、スルホン酸基が酸性スルホン酸基である相当するビニル単量体をラジカル重合した後、そのラジカル重合物を相当する第四級アンモニウムのハイドロオキサイドで中和する方法、或はスルホン酸基がスルホン酸アルカリ金属塩基である相当するビニル単量体をラジカル重合した後、そのラジカル重合物と相当する第四級アンモニウムカチオンのハロゲン塩とを塩交換する方法によっても得ることができる。本発明の帯電防止剤としてのビニル共重合体についても同様である。いずれの場合も、ビニル単量体のラジカル重合それ自体は、公知の方法、通常は水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いた水性溶液中にて行なうことができる。例えば、式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体を水に溶解し、該ビニル単量体を合計量として10〜45%含む水溶液を調整した後、窒素ガス雰囲気下において、これにラジカル開始剤を加え、50〜70℃で4〜8時間ラジカル重合反応させる。用いるラジカル開始剤としては、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであれば、その種類は特に制限されないが、水溶性のラジカル開始剤を用いるのが好ましい。かかる水溶性のラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸の如き還元性物質更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として用いることもできる。
【0015】
上記のようにして得られるビニル重合体が構成単位Aと構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体である場合には、全繰り返し単位中、構成単位Aを50モル%以上、構成単位Bを50モル%未満の割合で有するものとするのが好ましく、構成単位Aを80モル%以上、構成単位Bを20モル%未満の割合で有するものとするのがより好ましい。また上記のようにして得られるビニル重合体が、構成単位Aを繰り返し単位とするビニル単独重合体であっても、或は構成単位Aと構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体であっても、その数平均分子量が5000〜1000000のものとするが、10000〜200000のものとするのが好ましい。分子量が5000未満であると、合成高分子フィルムに付与する帯電防止性が不充分になり、逆に分子量が1000000を超えると、そのようなビニル重合体を合成高分子フィルムに均一塗布するのが難しくなる。
【0016】
本発明の帯電防止剤としての以上説明したビニル重合体は通常、水を主溶媒とし、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類等を含有する溶媒を用いた水性液として合成高分子フィルムに適用される。
【0017】
本発明の水性組成物は、以上説明した本発明の帯電防止剤としてのビニル重合体と、ポリエステル共重合体と、水とを含有して成るものである。この場合のポリエステル共重合体は、分子中にスルホネートアルカリ金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を0.1〜20モル%の割合で含有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール化合物を反応させて得られるポリエステル共重合体である。
【0018】
製造した単層フィルムから相互間に接着性剤を介在させて積層した複層フィルムを加工する場合に備えて、予め単層フィルムの表面には、帯電防止剤の他に、接着性剤をも塗布しておくことが望まれるが、この場合、双方を同時に一つの工程で塗布するのが有利であることはいうまでもなく、そのためには、帯電防止剤と接着性剤とを含有する安定な水性液を作製することが必要である。前記のポリエステル共重合体は接着性剤(易接着性樹脂)として機能するものであり、前記した本発明の水性組成物は、詳しくは実施例で後述するように、本発明の帯電防止剤と、これに適合する接着性剤とを含有する安定な水性液である。
【0019】
本発明の水性組成物において、ポリエステル共重合体の原料として用いるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、1)テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、2)アジピン酸、セバシン酸、無水コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、イタコン酸、フェニルキノキサリンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、3)5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、4−カリウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、4−リチウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸等のスルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、4)テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、無水フタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4,4´−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、フェニルインダンジカルボン酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、5)アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、ダイマー酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、フェニルキノキサリンジカルボン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、6)5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、2−ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル、4−ナトリウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、2−カリウムスルホテレフタル酸ジメチル、4−カリウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチル、2−リチウムスルホテレフタル酸ジメチル、4−リチウムスルホ−2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の、スルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0020】
本発明では、ポリエステル共重合体の原料として、以上説明したようなジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いるが、スルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜15モル%の割合で含有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる。この場合、スルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体が特に好ましい。
【0021】
本発明の水性組成物において、ポリエステル共重合体の他の原料として用いるジオール化合物には、グリコール化合物とポリエーテルジオール化合物とがある。かかるグリコール化合物としては、1)エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、2)シクロヘキサンジメタノール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の脂環族グリコール、3)2,2’−{ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)}プロパン、2,2’−{ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)}メタン等の、芳香族基を有するグリコール、4)ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の脂肪族エーテルグリコールが挙げられる。またポリエーテルジオール化合物としては、1)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ポリアルキレングリコール、2)前記した脂肪族グリコール、脂環族グリコール、又は芳香族グリコールに炭素数2又は3のアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルジオール、3)脂肪族第一級アミンに炭素数2又は3のアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルジオール等のポリエーテルジオール化合物が挙げられる。かかるポリエーテルジオール化合物の数平均分子量は400〜6000とするのが好ましく、1000〜4000とするのがより好ましい。
【0022】
本発明の水性組成物において、ポリエステル共重合体は、以上説明したジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール化合物との縮重合反応によって得られる。かかる縮重合反応には、公知の方法、例えば特公昭47−40873号公報や特公昭63−46191号公報に記載されている方法が適用できる。かくして得られるポリエステル共重合体は、その数平均分子量を3000〜30000のものとするのが好ましく、5000〜20000のものとするのがより好ましい。以上説明したポリエステル共重合体は通常、水を主溶媒とし、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類等を含有する溶媒を用いた水性液として、本発明の水性組成物に適用される。
【0023】
本発明の水性組成物の調製には、公知の方法が適用できる。これには例えば、予め本発明の帯電防止剤としてのビニル重合体の水性液と、ポリエステル共重合体の水性液とを別々に作製しておき、これらの水性液を混合する方法、本発明の帯電防止剤としてのビニル重合体とポリエステル共重合体とを混合しつつ、これに水を滴下する方法が挙げられる。かくして調製される本発明の水性組成物は、固形分当たりに換算して、本発明の帯電防止剤としてのビニル重合体を10〜90重量%、好ましくは25〜75重量%の割合で含有するものとする。
【0024】
本発明は、以上説明した本発明の帯電防止剤や本発明の水性組成物を合成高分子フィルムに適用する方法を特に制限するものではないが、本発明の水性組成物を、その後に更に延伸されて製品化される未延伸フイルムや一軸延伸フイルム等に塗布するのが好ましい。この場合、本発明の水性組成物の塗布量は、延伸工程後に製品となる合成高分子フィルム1m2当たり固形分として0.01〜3g、好ましくは0.02〜0.1gの割合となるようにする。塗布には公知の方法が適用できる。これには例えば、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアナイフコート法、バーコート法等が挙げられる。塗布に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、架橋剤等を併用することもできる。
【0025】
本発明の帯電防止剤や水性組成物を適用する合成高分子フィルムとしては、1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル或はこれらの共重合ポリエステルから製膜されるポリエステル系フィルム、2)ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10等の脂肪族ポリアミドから製膜されるポリアミド系フィルム、3)1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと脂肪族ジカルボン酸とのポリアミド、脂肪族ジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのポリアミド等の脂環族ポリアミドから製膜されるポリアミド系フィルム、4)ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等から製膜されるポリアミド系フィルムが挙げられる。なかでも、本発明の水性組成物は、ポリエステル系フィルムに適用する場合に効果の発現が高い。上記の合成高分子フィルムには、合目的的に酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリコーン等の無機フィラー、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機フィラー、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、易滑剤、難燃剤等を含有していても、支障はない。
【0026】
本発明の帯電防止剤は、合成高分子フィルムに、低湿度下においても充分な帯電防止性を付与できる。また複層フィルムを加工する場合に用いる接着性剤との相溶性もよく、したがって接着性剤と併用することができ、接着性剤の接着性を低下させることもない。しかも本発明の帯電防止剤を用いた合成高分子フィルムの製造乃至加工残渣や使用済み合成高分子フィルムを再溶融しても着色が殆どないので、これらの再利用が制約されない。本発明の水性組成物は、上記のような本発明の帯電防止剤と、これに適合する接着性剤としてのポリエステル共重合体とを含有するもので、複層フィルムを加工する場合において、とりわけ便利であり、有効である。以上説明した本発明は、合成高分子フィルムに対して適用するが、同様の合成高分子から製造乃至加工される他の成形品、例えば繊維や容器等に対しても適用できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係る帯電防止剤の実施形態としては、次の1)〜12)が挙げられる。
1)式1のR1が水素、R2が2−ヒドロキシエチル基、R3,R4,R5がメチル基、Bがフェニレン基である場合の構成単位(A−1)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量30000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−1)。
【0028】
2)式1のR1が水素、R2が2−ヒドロキシエチル基、R3,R4,R5がメチル基、Bが−CONH−C(CH3)2CH2−で示される有機基である場合の構成単位(A−2)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量72000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−2)。
【0029】
3)式1のR1がメチル基、R2が2−ヒドロキシエチル基、R3,R4,R5がメチル基、Bが−CO2−CH2CH2CH2−で示される有機基である場合の構成単位(A−3)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量65000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−3)。
【0030】
4)式1のR1が水素、R2,R3が2−ヒドロキシエチル基、R4,R5がメチル基、Bが−CONH−C(CH3)2CH2−で示される有機基である場合の構成単位(A−4)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量82000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−4)。
【0031】
5)式1のR1が水素、R2,R3が2−ヒドロキシエチル基、R4,R5がメチル基、Bがフェニレン基である場合の構成単位(A−5)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量120000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−5)。
【0032】
6)式1のR1がメチル基、R2,R3が2−ヒドロキシエチル基、R4,R5がメチル基、Bが−CONH−C(CH3)2CH2−で示される有機基である場合の構成単位(A−6)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量50000のビニル単独重合体から成る帯電防止剤(V−6)。
【0033】
7)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−1)を85モル%、及びN,N−ジメチルアクリルアミドから形成された構成単位を15モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量90000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−10)。
【0034】
8)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−2)を90モル%、及びアクリルアミドから形成された構成単位を10モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量75000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−11)。
【0035】
9)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−3)を96モル%、スチレンから形成された構成単位を2モル%、及びブチルアクリレートから形成された構成単位を2モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量110000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−12)。
【0036】
10)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−4)を89モル%、スチレンから形成された構成単位を7モル%、及びN,N−ジメチルアクリルアミドから形成された構成単位を4モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量150000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−13)。
【0037】
11)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−5)を90モル%、ブチルアクリレートから形成された構成単位を5モル%、及びN,N−ジメチルアクリルアミドから形成された構成単位を5モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量21000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−14)。
【0038】
12)全繰り返し単位中、前記の構成単位(A−6)を85モル%、及びスチレンから形成された構成単位を15モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量18000のビニル共重合体から成る帯電防止剤(V−15)。
【0039】
本発明に係る水性組成物の実施形態としては、次の13),14)が挙げられる。
13)前記1)の帯電防止剤(V−1)5重量%、下記のポリエステル共重合体(P−1)5重量%、及び水90重量%から成る水性組成物。
ポリエステル共重合体(P−1):1,4−ジメチルテレフタレート50モル%、1,4−ジメチルイソフタレート45モル%及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル5モル%から成るジカルボン酸のエステル形成性誘導体と、エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%から成るジオール化合物とを反応させた数平均分子量12000のポリエステル共重合体
【0040】
14)前記7)の帯電防止剤(V−10)4重量%、下記のポリエステル共重合体(P−4)6重量%、メチルセロソルブ11重量%、及び水79重量%から成る水性組成物。
ポリエステル共重合体(P−4):1,4−ジメチルテレフタレート50モル%、1,4−ジメチルイソフタレート49モル%及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル1モル%から成るジカルボン酸のエステル形成性誘導体と、エチレングリコール50モル%及び1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドを付加した化合物50モル%から成るジオール化合物とを反応させた数平均分子量20000のポリエステル共重合体
【0041】
本発明に係る合成高分子フィルムの帯電防止方法の実施形態としては、次の15),16)が挙げられる。
15)ポリエチレンテレフタレート製の未延伸フィルムを、縦方向に延伸した後、更に横方向にも延伸して、製品フィルムを製造するに際し、前記13)の水性組成物を水希釈した固形分5重量%の水溶液を、縦方向に延伸したフィルムに、製品フィルム1m2当たり固形分として0.05gの割合となるよう、キスコート法で塗布する方法。
【0042】
16)ポリエチレンテレフタレート製の未延伸フィルムを、縦方向に延伸した後、更に横方向にも延伸して、製品フィルムを製造するに際し、前記14)の水性組成物を水希釈した固形分5重量%の水溶液を、縦方向に延伸したフィルムに、製品フィルム1m2当たり固形分として0.05gの割合となるよう、キスコート法で塗布する方法。
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的にするが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は重量部を、また別に記載しない限り%は重量%を意味する。
【0044】
【実施例】
試験区分1(ビニル重合体の合成)
・ビニル単独重合体(V−1)の合成
反応容器に水400部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換して80℃とした後、スチレンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩300部と水240部とからなるビニル単量体水溶液と、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部とを、同時に2時間かけて滴下し、ラジカル重合反応を行なった。次いで5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を1時間かけて追加した後、反応温度を80℃に保持して2時間ラジカル重合反応を続け、反応物を得た。反応物の一部を精製して分析した結果、式1中のR1が水素、R2が2−ヒドロキシエチル基、R3,R4,R5がメチル基、Bがフェニレン基である場合の構成単位(A−1)を繰り返し単位とするビニル単独重合体であって、数平均分子量30000のビニル単独重合体(V−1)であった。これを本発明の帯電防止剤(V−1)とした。
【0045】
・ビニル重合体(V−2)〜(V−9)及び(RV−1)〜(RV−6)の合成
ビニル単独重合体(V−1)と同様にして、ビニル単独重合体(V−2)〜(V−4)及び(RV−1)〜(RV−6)を合成した。これらをそれぞれ、本発明の帯電防止剤(V−2)〜(V−9)及び比較の帯電防止剤(RV−1)〜(RV−6)とした。ビニル単独重合体(V−1)も含め、これらの内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1及び表2において、
B−1:フェニレン基
B−2:−CONH−C(CH3)2CH2−で示される有機基
B−3:−CO2−CH2CH2CH2−で示される有機基
B−4:−CH2−で示される有機基
RV−2:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
RV−3:ポリ(3−アクリロイルオキシー2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)
RV−4:ポリアクリル酸ジ(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム
【0049】
・ビニル共重合体(V−10)の合成
反応容器に水400部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換して80℃とした後、スチレンスルホン酸・トリメチル2−ヒドロキシエチルアンモニウム塩282.8部(0.985モル)とN,N−ジメチルアクリルアミド17.2部(0.174モル)と水240部とからなるビニル単量体水溶液と、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部とを、同時に2時間かけて滴下し、ラジカル重合反応を行なった。次いで5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を1時間かけて追加した後、反応温度を80℃に保持して2時間ラジカル重合反応を続け、反応物を得た。反応物の一部を精製して分析した結果、全繰り返し単位中、式1中のR1が水素、R2が2−ヒドロキシエチル基、R3,R4,R5がメチル基、Bがフェニレン基である場合の構成単位(A−1)を85モル%、またN,N−ジメチルアクリルアミドから形成された構成単位を15モル%の割合で有するビニル共重合体であって、数平均分子量90000のビニル共重合体(V−10)であった。これを本発明の帯電防止剤(V−10)とした。
【0050】
・ビニル共重合体(V−11)〜(V−17)の合成
ビニル共重合体(V−10)と同様にして、ビニル共重合体(V−11)〜(V−17)を合成した。これらをそれぞれ、本発明の帯電防止剤(V−11)〜(V−17)とした。ビニル共重合体(V−10)も含め、これらの内容を表3にまとめて示した。
【0051】
【表3】
【0052】
表3において、
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
AA:アクリルアミド
ST:スチレン
BA:ブチルアクリレート
MA:メタクリル酸
MLA:マレイン酸
MLDM:マレイン酸ジメチル
STSNA:スチレンスルホン酸ナトリウム
MLDPEG:マレイン酸ジポリエチレングリコール(分子量200)
VA:酢酸ビニル
【0053】
試験区分2(ポリエステル共重合体の合成)
・ポリエステル共重合体(P−1)の合成
反応容器にジメチルテレフタレート97部(0.5モル)、ジメチルイソフタレート87部(0.45モル)、エチレングリコール31部(0.5モル)、ネオペンチルグリコール52部(0.5モル)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル14.8部(0.05モル)、酢酸亜鉛0.15部及び三酸化アンチモン0.15部を仕込み、140〜220℃で3時間エステル交換反応を行なった。次いで、240〜270℃で1〜0.2mmHgの圧力下に2時間重縮合反応を行ない反応物を得た。反応物の一部を精製して分析した結果、5−ナトリウムスルホイソフタル酸残基を5モル%含有する分子量12000のポリエステル共重合体(P−1)であった。
【0054】
・ポリエステル共重合体(P−2)〜(P−6)の合成
ポリエステル共重合体(P−1)と同様にして、ポリエステル共重合体(P−2)〜(P−6)を合成した。ポリエステル共重合体(P−1)も含め、これらの内容を表4にまとめて示した。
【0055】
【表4】
【0056】
表4において、
DMT:1,4−ジメチルテレフタレート
DMI:1,4−ジメチルイソフタレート
DMN:2,6−ジメチルナフタレート
AA:アジピン酸
NS:5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル
KS:5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
PEG600:ポリエチレングリコール(分子量約600)
BA2:ビスフェノールA1モルにエチレンオキサイドを2モルを付加した化合物
BN20:N,N−(2−ヒドロキシエチル)−N−ブチルアミン1モルにエチレンオキサイド20モルを付加した化合物
【0057】
試験区分3(帯電防止剤の水性液の調製)
試験区分1で得た帯電防止剤(V−1)50部を水950部に均一溶解し、帯電防止剤(V−1)の5%水性液を調製した。同様にして、帯電防止剤(V−2)〜(V−17)及び(RV−1)〜(RV−6)の各5%水性液を調製した。
【0058】
試験区分4(水性組成物の調製)
・水性組成物(T−1)の調製
試験区分2で得たポリエステル共重合体(P−1)100部をテトラヒドロフラン200部に溶解し、更に高速撹拌下に水1000部を加えて均一とした後、70℃で20mmHgの条件下にテトラヒドロフランと水の一部を留去して、ポリエステル共重合体の10%水性分散液(E−1)を得た。次いで水666.7部に、撹拌しつつ、ポリエステル共重合体の10%水性分散液(E−1)250部を徐々に加えて希釈し、更に試験区分3と同様にして調製したビニル重合体(V−1)の30%水性液83.3部を加えて、固形分濃度5%の水性組成物(T−1)を調製した。
【0059】
・水性組成物(T−2)〜(T−6)、(T−8)〜(T−14)及び(T−16)〜(T−23)の調製
水性組成物(T−1)と同様にして、表5に記載したポリエステル共重合体の10%水性分散液、帯電防止剤の30%水性液及び水を用い、固形分濃度5%の水性組成物(T−2)〜(T−6)、(T−8)〜(T−14)及び(T−16)〜(T−23)を調製した。
【0060】
・水性組成物(T−7)の調製
水689.2部に、撹拌しつつ、表5に記載したポリエステル共重合体の10%水性分散液(E−2)225部を徐々に加えて希釈し、更にビニル重合体(V−7)の30%水性液83.3部及びポリオキシエチレングリコール(n=6)モノラウリルエーテル2.5部を加えて、固形分濃度5%の水性組成物(T−7)を調製した。
【0061】
・水性組成物(T−15)の調製
水性組成物(T−7)と同様にして、水性組成物(T−15)を調製した。以上で調製した各水性組成物の内容を表6にまとめて示した。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
表6において、
D−1:ポリオキシエチレングリコール(n=6)モノラウリルエーテル
【0065】
試験区分5(合成高分子フィルムへの帯電防止剤の水性液又は水性組成物の塗布、並びにその評価)
・合成高分子フィルムへの帯電防止剤の水性液又は水性組成物の塗布
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを280〜300℃で溶融押し出しし、15℃の冷却ロールで冷却して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを周速の異なる85℃の一対のロール間で縦方向に3.5倍に一軸延伸した。次に、試験区分3で調製した帯電防止剤の5%水性液又は試験区分4で調製した固形分濃度5%の水性組成物を、一軸延伸フィルムに、更に延伸されて製品となる二軸延伸フィルム1m2当たり表7又は表8に記載の塗布量となるようキスコート法で 塗布し、70℃の熱風で乾燥して、一軸延伸コーティングポリエステルフィルムとした。最後に、一軸延伸コーティングポリエステルフィルムをテンターにより98℃で横方向に3.5倍延伸し、200〜210℃で熱固定して、厚さ100μmの二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸コーティングポリエステルフィルムについて以下の評価を行った。結果を表7及び表8にまとめて示した。
【0066】
・帯電防止性の評価
条件1
上記で得た一軸延伸コーティングポリエステルフィルムを、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:1×1010未満
○:1×1010以上1×1011未満
△:1×1011以上1×1012未満
×:1×1012以上
【0067】
条件2
上記で得た二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:1×1010未満
○:1×1010以上1×1011未満
△:1×1011以上1×1012未満
×:1×1012以上
【0068】
条件3
上記で得た二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:1×1011未満
○:1×1011以上1×1012未満
△:1×1012以上1×1013未満
×:1×1013以上
【0069】
・塗布性の評価
上記で得た二軸延伸コーティングポリエステルフィルムの表面を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:塗布抜けがなく、均一な塗布膜である
○:極めて僅かに塗布抜けがあるが、ほぼ均一な塗布膜である
△:塗布抜けが幾分あるが、ほぼ均一な塗布膜である
×:塗布抜けが多く、不均一な塗布膜である
【0070】
・再利用性
上記で得た二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを粉砕し、押し出し機にて約300℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生フィルムを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを用いて再生フィルムを作製した。再生フィルムの着色から再利用性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ブランクと同等であって、ほとんど着色していない
○:ブランクと比較してわずかに着色しているが、再利用に問題がない
△:ブランクと比較して着色しており、再利用に制約がある
×:ブランクと比較して著しく着色しており、再利用できない
【0071】
水性組成物について安定性の評価
試験区分4で調製した水性組成物20mlを目盛り0.5mlの共栓付きメスシリンダーに入れ、室温で72時間静置した後、沈降物の量を計測して、以下の基準で評価した。ここで評価した安定性が良いほど、本発明の帯電防止剤が、接着性剤(易接着性樹脂)として用いたポリエステル共重合体との併用性に優れていることを意味する。
評価基準
◎:沈降物なし
○:沈降物が0.5ml未満
△:沈降物が0.5ml以上1ml未満
×:沈降物が1ml以上
【0072】
・接着性の評価
上記で得た二軸延伸コーティングポリエステルフィルムのコーティング面に100個/cm2のクロスカットを入れ、クロスカット面に接着テープ(ニチバン社製の商品名セロハンテープ)を貼付け、線圧50kg/cm2のニップロールで圧着した後、接着テープを180度方向に急速に剥離して、コーティング層が接着テープに移行した割合を算出し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:剥離面積が2%未満
○:剥離面積が2%以上5%未満
△:剥離面積が5%以上10%未満
×:剥離面積が10%以上
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、合成高分子フィルムに低湿度下においても優れた帯電防止性を付与でき、また接着性剤との併用性に優れ、しかも接着性剤の接着性を低下させず、更に合成高分子フィルムの再利用性を制約しない、という効果がある。
Claims (9)
- 下記の式1で示される構成単位Aを繰り返し単位とするビニル単独重合体、及び該構成単位Aと他の構成単位Bとを繰り返し単位とするビニル共重合体から選ばれる一つ又は二つ以上のビニル重合体であって、数平均分子量5000〜1000000のビニル重合体から成ることを特徴とする合成高分子フィルム用帯電防止剤。
【式1】
{式1において、
R1:水素又はメチル基
R2,R3,R4,R5:炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であって、少なくとも一つが炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基
B:炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、−CONH−R6−で示される有機基又は−COO−R7−で示される有機基(但し、R6,R7;炭素数1〜6のアルキレン基)} - ビニル共重合体が、全繰り返し単位中、構成単位Aを50モル%以上、また構成単位Bを50モル%未満の割合で有するものである請求項1記載の合成高分子フィルム用帯電防止剤。
- ビニル重合体が、数平均分子量10000〜200000のものである請求項1又は2記載の合成高分子フィルム用帯電防止剤
- 延伸工程に供されるポリエステル系フィルム又はポリアミド系フィルム用のものである請求項1、2又は3記載の合成高分子フィルム用帯電防止剤。
- 請求項1、2又は3記載の合成高分子フィルム用帯電防止剤と、下記のポリエステル共重合体と、水とを含有する水性組成物であって、固形分当たりに換算して該合成高分子フィルム用帯電防止剤を10〜90重量%の割合で含有することを特徴とする水性組成物。
ポリエステル共重合体:分子中にスルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を0.1〜20モル%の割合で含有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール化合物とを反応させて得られるポリエステル共重合体 - ポリエステル共重合体が、分子中にスルホネートアルカリ金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体として5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩又はそのエステル形成性誘導体を用いたものである請求項5記載の水性組成物。
- 固形分当たりに換算して合成高分子フィルム用帯電防止剤を25〜75重量%の割合で含有する請求項5又は6記載の水性組成物。
- 請求項5、6又は7記載の水性組成物を、延伸工程に供される合成高分子フィルムに、延伸工程後に製品となる合成高分子フィルム1m2当たり固形分として0.01〜3gの割合となるよう塗布することを特徴とする合成高分子フィルムの帯電防止方法。
- 延伸工程に供されるポリエステル系フィルムに塗布する請求項8記載の合成高分子フィルムの帯電防止方法。
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