JPH0681714B2 - 被覆プラスチックフィルム - Google Patents

被覆プラスチックフィルム

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JPH0681714B2
JPH0681714B2 JP63202367A JP20236788A JPH0681714B2 JP H0681714 B2 JPH0681714 B2 JP H0681714B2 JP 63202367 A JP63202367 A JP 63202367A JP 20236788 A JP20236788 A JP 20236788A JP H0681714 B2 JPH0681714 B2 JP H0681714B2
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polyester
water
film
dicarboxylic acid
layer
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浩三 前田
浩二 山田
勝朗 久世
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,包装材料,磁気テープ,写真フィルムなど各
種用途に有用なプラスチックフィルム,特に該フィルム
上に形成される印刷層,蒸着層,磁性粉末含有層などと
の接着性が,水の存在下においても極めて優れる被覆プ
ラスチックフィルムに関する。
(従来の技術) 各種熱可塑性プラスチックフィルム,特に二軸配向させ
たポリエステル,ポリアミド,ポリオレフィンなどのフ
ィルムは,包装用フィルム,装飾用フィルム,写真用ベ
ースフィルム,磁気テープ用ベースフィルム,製図用フ
ィルムなどの用途,あるいはその他の工業用途に広く利
用されている。これらのフィルムは単体で使用される場
合は少なく,基材となるプラスチックフィルムの表面に
印刷や金属の蒸着がなされたり,磁性材料を含む樹脂層
が形成されたり,あるいは他のフィルムが積層されて使
用されることが多い。しかし,上記基材フィルムとその
表面に積層される層[例えば,印刷層,金属蒸着層,磁
性材料含有樹脂層,ゼラチン層(写真用フィルムの場
合),マット化材層(製図用フィルムの場合)など]と
の接着性(密着性)は必ずしも充分であるとはいえな
い。例えば,金属蒸着されたポリエステル系基材フィル
ム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)のフィ
ルム表面にポリオレフィン系樹脂でなるヒートシール層
が積層されたヒートシールフィルムは,ガスバリアー
性,水分不透過性,可視光・紫外光遮蔽性に優れるた
め,食品,工業部品などの包装材料として,あるいは保
護被膜として使用されている。しかし,これらの積層フ
ィルムは,一般に基材フィルムと金属蒸着層との界面に
おける接着力,特に水が存在する場合の接着力に劣る。
そのため,例えば,このようなフィルムで食品を包装し
た場合に,殺菌を目的として煮沸処理を行うと,蒸着層
が容易に剥離するという欠点がある。
ポリエステル基材フィルムと金属蒸着層との接着力を改
善する方法としては,例えば,特公昭55-232号公報およ
び特開昭56-16549号公報に,ポリエステルの他に他の共
重合体組成物を混合して基材フィルムを調製する方法が
開示されている。さらに,特開昭57-87357号公報には,
基材フィルムの表面状態を物理的に変化させる方法が,
そして,特公昭59-51424号公報には,基材フィルム表面
に特定の樹脂組成物溶液を塗布して該樹脂組成物の層を
形成する方法が開示されている。しかし,これらの方法
を採用しても基材フィルムもしくは積層フィルムと金属
蒸着層との接着性は,いまだ充分にあるとはいえず,特
に水(特に熱水)の存在下においてはその接着性が不充
分である。さらに,上記方法のうちで,特公昭59−5142
4号公報に記載の樹脂組成物溶液を塗布する方法におい
ては,有機溶剤が使用されるため引火性や毒性が憂慮さ
れ,作業上の危険を伴う。公害発生,省エネルギーなど
の点からも好ましくない。
ポリエステル基材フィルムと,印刷インキ,写真用乳
剤,マット化剤,磁性塗料またはその他の各種塗料との
接着性を改善することを目的とした各種方法も提案され
ている。例えば,基材フィルムと印刷層との接着性を改
善する方法として,特公昭55-45835号公報および特公昭
55-12870号公報には,基材フィルムに特定の組成のポリ
エステルをブレンドする方法が開示されている。この方
法により接着性が向上し,水が存在する場合にもある程
度の接着性が得られる。しかし,この方法を用いたとき
に,基材フィルムに積層される層が印刷層である場合に
は比較的優れた効果が得られるが,他の層,例えば金属
蒸着層である場合には,水の存在下,特に熱水の存在下
における充分な接着性が得られない。
ポリエステル基材とそれに積層される層との接着性を向
上させる下塗り剤として,例えば特開昭48-37480号公報
には,特定のポリエステルポリエーテル系共重合樹脂組
成物が開示されている。これらの樹脂組成物は基材とな
るポリエステルに対する接着性は良好であるが,積層さ
れるべき層の組成によっては該層に対する接着性が不充
分な場合がある。例えば,比較的極性の高い成分を含む
塗料により形成される層や金属蒸着層に対する接着性が
不充分であることが多い。さらに,上記樹脂組成物を基
材に塗布する場合には有機溶剤が使用されるため,上記
特公昭59-51424号公報の場合と同様,引火性や毒性のた
め作業上の危険を伴う。
有機溶剤を使用しないで基材フィルム上に下塗り層を形
成する方法としては,特公昭54-16557号公報に,含有成
分を水溶性に変化させた組成物を含む水性溶液を塗布す
る方法が開示されている。しかし,使用される組成物が
本質的に水溶性であるため,例えば得られた印刷フィル
ムや蒸着フィルムは耐水性に乏しいという欠点がある。
製造工程においても水系溶媒は疎水性の基材フィルムに
対して濡れが悪く,均一な塗膜が得られにくいという欠
点もある。
このように,印刷層,ヒートシール層,金属蒸着層,磁
性塗料層などプラスチック基材フィルム上に形成される
いずれの層とも接着性,特に水の存在下における接着性
が良好であり,例えば得られた製品をボイル処理するこ
とが可能であるようなプラスチックフィルムは得られて
いないのが現状である。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は上記従来の課題を解決するものであり,その目
的とするところは,印刷層,ヒートシール層,金属蒸着
層,磁性塗料層などとの層間接着性,特に水の存在下に
おける接着性に優れたプラスチックフィルムを提供する
ことにある。
(課題を解決するための手段および作用) 本発明の被覆プラスチックフィルムは,熱可塑性樹脂で
なる基材フィルムの少なくとも片面に,実質的に水不溶
性でかつ水分散性のポリエステル(a)およびポリウレ
タン(b)を主成分とする組成物を塗布して得られる被
覆プラスチックフィルムであって,該実質的に水不溶性
でかつ水分散性のポリエステル(a)が,スルホン酸金
属塩基を有するジカルボン酸類を0.5〜5モル%の割合
で,そして芳香族ジカルボン酸を50モル%以上の割合で
含有するジカルボン酸類,および多価アルコール類から
なり;該ポリエステルのガラス転移温度が100℃以下で
あり;該実質的に水不溶性でかつ水分散性のポリウレタ
ン(b)が,脂肪族ジカルボン酸類を50モル%以上の割
合で含有するジカルボン酸と,グリコール類とからなる
ポリエステル成分;およびジイソシアネート成分から得
られ;そして,該ポリエステル(a)およびポリウレタ
ン(b)が該組成物中に95:5〜30:70の重量比で含有さ
れ,そのことにより上記目的が達成される。
本発明の被覆プラスチックフィルムに用いられる基材フ
ィルムとしては,ポリエステル,ポリアミド,ポリオレ
フィンなどの熱可塑性樹脂でなるフィルムがいずれも使
用可能である。なかでもポリエステル系のフィルム,例
えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレ
フタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエス
テル系フィルムが好適である。特にその成分の80%以上
がポリエチレンテレフタレートに相当する(つまりテレ
フタル酸成分およびエチレングリコール成分が全成分の
80%以上である)共重合ポリエステルフィルム,または
ポリエチレンテレフタレートを80%以上の割合で含有す
るポリエステルブレンドフィルムが好適に用いられる。
このような共重合ポリエステルフィルムまたはポリエス
テルブレンドフィルムの,上記ポリエチレンテレフタレ
ート成分以外のポリエステル成分は,任意のポリエステ
ル成分であり得る。そのようなポリエステルを構成する
ジカルボン酸成分としては,芳香族,脂肪族および脂環
族のジカルボン酸がいずれも使用され得る。芳香族ジカ
ルボン酸としては,イソフタル酸,オルソフタル酸,2,6
−ナフタレンジカルボン酸などが,脂肪族ジカルボン酸
としては,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,シュウ
酸なとが,そして,脂環族ジカルボン酸としては,1,3−
シクロペンタンジカルボン酸,1,4−シクロヘキサンジカ
ルボン酸などがある。芳香族ジカルボン酸としては,p−
ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸の一部なども好適に
利用される。上記ポリエステルを構成するグリコール成
分としては,炭素数2〜8個の脂肪族グリコールまたは
炭素数6〜12個の脂環族グリコールが好適である。この
ようなグリコールとしては,エチレングリコール,1,2−
プロパンジオール,1,3−プロパンジオール,1,4−ブタン
ジオール,ネオペンチルグリコール,1,6−ヘキサンジオ
ール,1,2−シクロヘキサンジメタノール,1,3−シクロヘ
キサンジメタノール,1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル,p−キシレングリコール,ジエチレングリコール,ト
リエチレングリコールなどがある。この他,脂肪族グリ
コールとしてポリエーテルグリコールを使用することも
可能であり,それにはポリエチレングリコール,ポリプ
ロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコールな
どがある。
これらの酸成分とジカルボン酸成分とは,通常の方法に
より重合(あるいは共重合)されてポリエステルが調製
される。このポリエステルは,必要に応じて,適宜混合
され,通常,溶融・押出により,あるいは溶剤に溶解さ
せてキャスティングすることによりフィルム(基材フィ
ルム)が得られる。使用される基材フィルムは,必要に
応じて,一軸もしくは二軸延伸される。
上記基材フィルム表面に形成される被覆層に用いられる
組成物中に含有される樹脂のうち,ポリエステル(a)
は実質的に水不溶性でかつ水分散性であり,該ポリエス
テルを構成するジカルボン酸成分は,そのうちの0.5〜
5モル%が,上記のように,スルホン酸金属塩(金属ス
ルホネートを有する)基を持つジカルボン酸であり,そ
して残りのジカルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸であ
る。ここで「実質的に水不溶性である」とは,試験すべ
き重合体を80℃の熱水に浸漬し攪拌しても,この熱水中
に該重合体が消散しないことをいう。さらに具体的に
は,試験すべき重合体をチップ状とし,これを大過剰の
熱水(80℃)に入れ,24時間攪拌を行なったときに,該
重合体の重量の減少が5重量%以下であることをいう。
このようなポリエステルに含有されるスルホン酸金属塩
基含有ジカルボン酸としては,スルホテレフタル酸,5−
スルホイソフタル酸,4−スルホフタル酸,4−スルホナフ
タレン−2,7−ジカルボン酸,5〔4−スルホフェノキ
シ〕イソフタル酸などの金属塩が挙げられる。特に5−
ナトリウムスルホイソフタル酸,ナトリウムスルホテレ
フタル酸が好適である。このようなジカルボン酸の量が
0.5モル%を下まわると,得られるポリエステルを含む
組成物の水に対する分散性が損なわれ,その結果,均一
の被覆膜が形成されにくくなり,得られる被覆フィルム
と印刷層や金属蒸着層との接着性が低下する。逆に5モ
ル%を上まわると,水の存在下における接着性能,特に
積層する層が金属蒸着層である場合の接着性能が低下す
る。一般に,スルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸は,
得られるポリエステルを含む組成物の水に対する分散性
(成分,分散法などによっても異なる)を損なわない範
囲において,少量であることが好ましい。
上記スルホン酸金属塩基を有するジカルボン酸以外のジ
カルボン酸としては,芳香族ジカルボン酸が用いられ
る。芳香族ジカルボン酸としては,テレフタル酸,イソ
フタル酸,オルソフタル酸,2,6−ナフタレンジカルボン
酸などがある。芳香族脂肪酸が過少であると,得られる
ポリエステルを含む組成物により形成される被膜の機械
的強度,水存在下(特に熱水存在下)における接着性に
劣る。
ジカルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を用いるこ
とは、得られるポリエステルを含む組成物の水分散性や
該ポリエステルを塗布して得られる被覆フィルムの接着
性を向上させるのに有効である場合もあるが,過剰であ
ると得られるポリエステルを含む組成物により形成され
る被膜の機械的強度や熱水存在下での接着性を低下させ
る、脂環族ジカルボン酸は,得られる被覆フィルムの水
存在下における接着性能を高める場合もあるが,過剰で
あると得られるポリエステルの水分散性を低下させる。
被覆層に用いられるポリエステルに含有されるグリコー
ル成分としては、エチレングリコールおよびネオペンチ
ルグリコールを用いる必要がある。
上記ジカルボン酸成分と多価アルコール成分とを用い,
通常,溶融重縮合法により,ポリエステルが調製され
る。例えば,上記各成分を直接反応させて水を留去しエ
ステル化するとともに,重縮合を行なう直接エステル化
法;あるいは上記ジカルボン酸成分のジアルキルエステ
ルとグリコール成分とを反応させてアルコールを留去し
エステル交換を行わせるとともに重縮合を行なうエステ
ル交換法などにより調製される。溶融重合法の他,溶液
重縮合法,界面重縮合法なども採用され得る。
このようにして得られる水不溶性かつ水分散性のポリエ
ステルは,そのガラス転移温度(Tg)が100℃以下であ
ることが必要である。ガラス転移温度は,好ましくは80
℃以下,さらに好ましくは20〜80℃である。ガラス転移
温度が100℃を越えると,該ポリエステルを含む組成物
を基材フィルムに塗布するときの造膜性が悪いため,得
られる被覆層と基材フィルムとの密着性が不充分とな
り,その結果,得られる被覆フィルムとこれに積層され
る層,例えば金属蒸着層との密着性にも劣る。上記ガラ
ス転移温度の下限値は特に制限されないが,得られる被
覆フィルムのブロッキング性や耐熱水性を考慮すると20
℃以上であることが好ましい。
被覆層に用いられる組成物に含有される樹脂のうちポリ
ウレタン(b)もまた,実質的に水不溶性でありかつ水
分散性である。ここでいう実質的に水不溶性であると
は,上記ポリエステル(a)の場合と同様の意義を有す
る。このようなポリウレタン(b)としては,ポリエス
テルポリオールとジイソシアネート類とから得られるポ
リウレタン;または該ポリウレタンをプレポリマーと
し,これにジオールまたはジアミンのような2個以上の
活性水素を有する低分子化合物を作用させて得られるポ
リウレタンが用いられる。
上記ポリエステルポリオールは,ジカルボン酸とグリコ
ールとの反応によって得られる。これらのジカルボン酸
およびグリコールとしては,上記ポリエステル(a)を
構成し得るジカルボン酸およびグリコールと同様の化合
物が用いられ得,ジカルボン酸成分のうち50モル%,好
ましくは70モル%以上が脂肪族のジカルボン酸であるこ
とが必要である。脂肪族ジカルボン酸が過少であると,
得られるポリウレタンを含む組成物を基材フィルムに塗
布したときの膜形成性および基材への密着性に劣る。特
に,未延伸の基材フィルム上に塗布した後に延伸を行う
場合には,被覆層が基材に追随して充分に延伸せず,ク
ラックを生じる。グリコール成分としては,炭素数4以
上のアルキレングリコール類(例えば,ブタンジオー
ル,ヘキサンジオール)と,脂環族グリコール類(例え
ば,シクロヘキサンジメタノール)またはビスフェノー
ル系化合物とを併用することが好ましい。ポリエステル
ポリオールは,上記ジカルボン酸およびグリコールを,
(a)のポリエステルと同様の方法により重縮合させて
調製され得る。
このようにして得られるポリエステルポリオールに反応
させるジイソシアネート類としては,芳香族,脂肪族,
および脂環族ジイソシアネートがいずれも使用され得
る。例えば,トルエンジイソシアネートのような芳香族
ジイソシアネートが,好適である。このような芳香族ジ
イソシアネートを用いて得られるポリウレタンを含む組
成物が形成する被覆膜は強度が高く,得られる被覆フィ
ルムの蒸着層などとの水存在下における接着性にも優れ
る。
ポリウレタン(b)は,上記ポリエステルポリオールに
上記ジイソシアネートを通常の方法により反応させて得
られる。さらに,ジオール,ジアミンなどの2個以上の
活性水素を有する低分子化合物を反応させて鎖延長させ
ることも可能である。上記ジオールとしては1,4−ブタ
ンジオール,1,6−ヘキサンジオールなどが,ジアミンと
してはエチレンジアミン,1,6−ヘキサメチレンジアミン
などが用いられ得る。
上記ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)は,
被覆層を形成する組成物中に95:5〜30:7,好ましくは90:
10〜50:50の重量比で含有される。ポリエステル(a)
が過剰であると得られた被覆フィルムの水存在下におけ
る接着性に劣り,ポリウレタン(b)が過剰であると被
覆層の基材への密着性および被膜形成性に劣る。
被覆層を形成する組成物には,上記水不溶性ポリエステ
ル(a)およびポリウレタン(b)に加えて架橋性を有
する樹脂成分が加えられていてもよい。それには例え
ば,メラミン系,エポキシ系,アジリジン系,ウレタン
系などの樹脂がある。これらを含有させることにより得
られる被覆層のブロッキングを防止したり耐溶剤性を向
上する効果が得られる。しかし,これらを含む組成物の
水系分散液の安定性を低下させたり,得られる被覆フィ
ルムを溶融して再利用するのが難しいという欠点があ
る。さらに,被覆フィルムに金属蒸着を施した場合に
は,これを熱水処理したときに金属光沢が低下したり透
明化しやすいという欠点がある。従って,上記架橋成分
の添加は,目的に応じて適宜行われる。
組成物には,さらに他の添加剤が含有されていてもよ
い。それには例えば,その他の各種水分散系樹脂やシリ
カ,炭酸カルシウム,カオリナイト,アルミナ,タル
ク,硫酸バリウムなどの無機不活性粒子;ベンゾグアナ
ミン系樹脂,ポリスチレン系樹脂などの有機不活性粒子
(いずれも粒径0.01〜10μm程度)があり,これらを添
加することにより,滑り性や耐ブロッキング性が改良さ
れ得る。さらに必要に応じて顔料;有機系,無機系の制
電剤;防腐剤;消泡剤;紫外線吸収剤などが用いられ得
る。添加剤の種類および量は,得られるフィルムの水の
存在下における層間接着力を大きく阻害しない限り特に
制限されない。
基材フィルム上に被覆されるべき上記組成物は,種々の
方法により水性分散液とされる。例えば,上記水不溶性
ポリエステル(a)については,該ポリエステル微粒子
を熱水中に加えて強攪拌下で分散させる方法;上記水不
溶性ポリエステルを水溶性有機化合物とともに水に分散
させる方法などが採用され得る。これらのうち,水溶性
有機化合物(通常,有機溶剤)を用いる方法が特に好適
である。使用される有機化合物は,その沸点が通常,60
〜200℃であり,20℃で1の水に対する溶解量が20g以
上の化合物が用いられる。それには,脂肪族および脂環
族のアルコール,エーテル,エステル,ケトンなどがあ
る。アルコール類としては,メタノール,エタノール,
イソプロパノール,n−ブタノールなどの1価アルコール
類;エチレングリコール,プロピレングリコールなどの
グリコール類;およびメチルセロソルブ,エチルセロソ
ルブ,n−ブチルセロソルブなどのグリコール誘導体があ
る。エーテル類としては,ジオキサン,テトラヒドロフ
ランなどが;エステル類としては,酢酸エチルなどが;
ケトン類としては,メチルエチルケトンなどがある。こ
れらの水溶性有機化合物は,2種以上を併用することもで
きる。上記化合物のうち,水への分散性,およびフィル
ムへの塗布性能からブチルセロソルブおよびエチルセロ
ソルブが好適に用いられ得る。
このような水溶性有機化合物を用いてポリエステル
(a)の水性分散液を調製するには,上記ポリエステル
チップと上記水溶性有機化合物とを50〜200℃で混合
し,これに水を加えて攪拌し,分散させる方法;上記50
〜200℃で混合して得られる混合物を水に加えて攪拌
し,分散させる方法;あるいは,上記ポリエステル,水
溶性有機化合物および水の3者を40〜120℃で攪拌し分
散させる方法が採用される。分散のために乳化剤を使用
することも可能であるが,この場合には得られる被覆膜
の耐水性がやや低下する。
上記ポリウレタン(b)については,該ポリウレタン微
粒子と乳化剤とを水中に加え,強攪拌下で分散させる方
法;該ポリウレタンを合成するときに,末端にイソシア
ネート基を有するポリウレタン(プレポリマー),水,
鎖延長剤および乳化剤を水に加え,強攪拌下で反応さ
せ,機械的剪断力による分散化と高分子量化を同時に行
う方法;ポリウレタンの側鎖または末端にアミノ基,カ
ルボキシル基などのイオン性基を導入することにより自
己乳化性を付与して分散させる方法などが用いられる。
得られる被覆の耐水性を考慮すると,乳化剤を使用しな
い方法が望ましい。
上記ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)の分
散液を混合し,さらに必要に応じて各種添加物が,加え
られ,あるいは上記分散工程においてこれらの添加剤が
適宜添加されて均一な水系分散液が調製される。
上記水系分散液は,上記基材フィルム上に既知の方法に
より塗工される。例えば,溶融・押出により得られた未
延伸の基材フィルム,該未延伸フィルムを一軸もしくは
二軸延伸した基材フィルム上に上記分散液の塗工が行わ
れ,必要に応じてさらに延伸および後加熱処理が行われ
る。未延伸または,一軸方向に延伸した基材フィルム上
に分散液を塗工し,さらに一軸または二軸延伸し,熱処
理して得られる二軸配向フィルムが,被覆層の密着性,
透明性および経済性などの点から好適である。特に作業
性の面からは,一軸延伸した基材フィルム上に分散液を
塗工し,次に直交する方向に延伸して二軸延伸フィルム
を得る方法が好適である。上記水性分散液の塗工には,
ロールコーティング法(グラビア法,リバース法な
ど),ナイフコーティング法,ロッドコーティング法,
ノズルコーティング法,エアーナイフコーティング法な
ど既知の方法がいずれも採用され得る。塗工量は,目的
に応じて決められるが,通常,二軸延伸などを行い最終
的に得られる被覆フィルムの単位面積(m2)上に存在す
る組成物量は,0.005〜5g,好ましくは0.01〜1gである。
塗工量が0.005g/m2を下まわると所期の効果が得られず,
5g/m2を越えると得られる被覆フィルムのブロッキング
が生じやすい。組成物水分散液を塗工する際には,必要
に応じて,基材フィルム表面にコロナ処理,または物理
的,化学的表面処理が行われてもよい。
このようにして得られる本発明のプラスチック被覆フィ
ルムは,各種用途に使用される。このフィルムの被覆層
表面には,通常の方法により印刷がなされ,あるいは,
ヒートシール層やヒートシール層を貼合わせるための接
着剤層が積層される。あるいは,ガスバリアー層とし
て,アルミニウムなどの金属による蒸着層やアルミ箔層
などが積層される。特に,被覆層上に金属や金属酸化物
を蒸着して得られる蒸着層上に,各種樹脂素材でなるシ
ートもしくはフィルムを積層して食品包装材料などに好
適に利用することが可能であり,このような積層体は熱
水中に浸漬しても剥離が起こらない。上記積層すべきシ
ートやフィルムを構成する樹脂材料としては,ポリエチ
レン,ポリプロピレン,各種アイオノマー,エチレン−
酢酸ビニル共重合体,ポリ塩化ビニリデン共重合体,ポ
リエステル,ポリアミドなどが用いられる。本発明の被
覆フィルムは,このように,基材フィルム上に特定の組
成を有する樹脂組成物が被覆されているため,該被覆フ
ィルム上に形成される上記種々の層を形成する物質との
層間接着性,特に水の存在下における接着性に極めて優
れる。そのため,本発明の被覆フィルムは,熱水殺菌処
理などが行われる食品包装用フィルムとして特に好適に
用いられる。
(実施例) 以下に本発明を実施例について述べる。
実施例1 (A)ポリマーおよび水系分散液の調製:まず,ポリエ
ステル(a)を次の方法により調製した。ジカルボン酸
成分としてジメチルテレフタレート49モル%(ジカルボ
ン酸成分全体の),ジメチルイソフタレート49モル%お
よび5−スルホイソフタル酸ナトリウム2モル%;そし
てグリコール成分としてエチレングリコール50モル%
(グリコール成分全体の)およびネオペンチルグリコー
ル50モル%)を用い,常法によりエステル交換反応およ
び重縮合反応を行なった。これによりガラス転移点69℃
のポリエステルが得られた。得られたポリエステル300
重量部とn−ブチルセロソルブ150重量部とを加熱攪拌
して粘稠な液体とした。これに攪拌しながら水550重量
部を徐々に加えて,固形分30%の均一な淡白色水系分散
液を得た。
次に,ポリウレタン(b)を次の方法により調製した。
ジカルボン酸成分としてアジピン酸を;そしてポリオー
ル成分として1,4−ブタンジオール,およびビスフェノ
ールAのプロピレンオキサイド(1モル)付加物を用い
てポリエステル(ポリエステルポリオール)を得た。こ
のポリエステルにトルエンジイソシアネートを作用させ
てウレタンポリマーを得た。これをプレポリマーとし,
1,6−ヘキサンジオールを作用させて鎖延長すると共に
アミノカルボン酸塩を末端に反応させ,水不溶性でかつ
水分散性のポリウレタン(b)を得た。これを攪拌しな
がら熱水中に分散させ,25%水系分散液を得た。
上記ポリエステル(a)の水系分散液およびポリウレタ
ン(b)の水系分散液を,イオン交換水およびイソプロ
ピルアルコールの等量混合液中に加え,それぞれの固形
分が4%および1%となるようにし,樹脂固形分が合計
で5%の均一な分散液を得た。
(B)被覆フィルムの調製:ポリエチレンテレフタレー
トを280〜300℃で溶融押出し,15℃の冷却ロールで冷却
して,厚さ約150μmの未延伸フィルムを得た。この未
延伸フィルムを,周速の異なる85℃の一対のロール間で
縦方向に3.5倍延伸した。次いで,上記塗工用分散液を
ロールコーター方式で塗布し,70℃の熱風で乾燥し,次
いでテンターで98℃で横方向に3.5倍延伸し,さらに200
〜210℃で熱固定し,厚さ12μmの二軸延伸コーティン
グポリエステルフィルムを得た。最終的なコート剤(被
覆用組成物)塗布量は約0.04g/m2であった。得られた被
覆フィルムの被覆層を形成する樹脂の性質,配合割合な
どを表1に示す。
(C)被覆フィルムの性能評価:(B)項で得られた被
覆フィルムの被覆層表面に,アルミニウムを600Åの厚
みに蒸着した。この蒸着層表面に厚さ60μmの未延伸ポ
リプロピレン(PP)シートを通常のドライラミネート法
により積層した後,エージング処理を行った。得られた
積層体を15mm幅の短冊状にカットし,95℃以上の沸騰水
に30分間浸漬した(ボイル処理)。別のサンプルを用い
て120℃の高圧水中で30分間浸漬処理する実験(レトル
ト処理)も行なった。
上記未処理,ボイル処理およびレトルト処理後の積層体
の端部のPPフィルムと基材フィルムとを一部剥離し,剥
離した端部をそれぞれ東洋ボールドウィン社製テンシロ
ンのチャックに固定し,200mm/分の速度で長さ方向に引
っ張り,T型剥離を行なった。同様の条件下において剥離
界面に水滴をつけつつ行なう剥離実験を別に行なった。
それぞれの層間接着力(g/15mm)を表2に示す。
実施例2 トルエンジイソシアネートの代わりにイソホロンジイソ
シアネートを用いたこと以外は実施例1と同様である。
実施例3 ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)の配合割
合を60:40(重量比)としたこと以外は実施例1と同様
である。
比較例1 ポリエステル(a)を構成するジカルボン酸成分とし
て,ジメチルテレフタレート23モル%,ジメチルイソフ
タレート22モル%,アジピン酸53モル%,そして5−ス
ルホイソフタル酸ナトリウム2モル%を使用し,ガラス
転移温度が5℃のポリエステルを得たこと以外は実施例
1と同様である。
比較例2 ポリエステル(a)を構成するジカルボン酸成分とし
て,ジメチルテレフタレート45モル%,ジメチルイソフ
タレート45モル%,そして5−スルホイソフタル酸ナト
リウム10モル%を使用したこと以外は実施例1と同様で
ある。
比較例3 ポリエステル(a)を構成するジカルボン酸成分とし
て,ジメチルテレフタレート50モル%,ジメチルイソフ
タレート40モル%および5−スルホイソフタル酸ナトリ
ウム10モル%を;そして,グリコール成分として,エチ
レングリコール50モル%およびポリエチレングリコール
(分子量4000)50モル%を使用したこと以外は実施例1
と同様である。
比較例4 ポリエステル(a)を構成するジカルボン酸成分とし
て,ジメチルテレフタレート70モル%,ジメチルイソフ
タレート25モル%および5−スルホイソフタル酸ナトリ
ウム5モル%を;そして,グリコール成分として,エチ
レングリコール30モル%およびビスフェノールAエチレ
ンオキサイド付加物70モル%を使用し,ガラス転移温度
103℃のポリエステルを得たこと以外は実施例1と同様
である。
比較例5 ポリウレタン(b)の調製に使用するアジピン酸の代わ
りに,テレフタル酸50モル%およびイソフタル酸50モル
%を使用したこと以外は実施例1と同様である。
比較例6 ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)の配合割
合を96:4(重量比)としたこと以外は実施例1と同様で
ある。
比較例7 ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)を含む水
系分散液を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様で
ある。
比較例8 ポリエステル(a)を構成するグリコール成分として、
エチレングリコール90モル%、ジエチレングリコール10
モル%を使用した以外は実施例1と同様である。得られ
た被覆フィルムの層間接着力(g/15mm)の測定結果は、
処理なし(水なし):480、処理なし(水付加):400、ボ
イル処理(水なし):130、ボイル処理(水付加):70、
レトルト処理(水なし):110、レトルト処理(水付
加):40であり、被覆層均一性は○である。
表1および2から,本発明の被覆プラスチックフィルム
は,その表面に形成された蒸着層と熱水存在下において
も優れた接着性を示すことがわかる。これに対して,ポ
リエステル(a)およびポリウレタン(b)を含む組成
物でなる被覆層が形成されていない比較例7のフィルム
はこのような効果が得られない。被覆層を形成する組成
物中のポリエステル(a)またはポリウレタン(b)の
組成が特許請求の範囲から外れる場合には,基材と蒸着
層との充分な接着効果,特に熱水存在下における充分な
接着効果が得られない(比較例1〜3および5)。比較
例4のようにポリエステル(a)のTgが高い場合,およ
び比較例6のようにポリエステル(a)とポリウレタン
(b)との配合比が特許請求の範囲を外れる場合にも充
分な接着効果が得られない。
また、ジエチレングリコールがジオール成分に10モル%
共存するだけでも、ボイル処理、レトルト処理後の接着
力が大幅に低下し、本発明の効果が得られない事が比較
例8からわかる。
(発明の効果) 本発明によれば,このように,その表面に積層される印
刷層,金属蒸着層,ヒートシール層,磁性塗料層などの
各種ポリマーや無機物でなる層との接着性に優れた被覆
プラスチックフィルムが得られる。その接着力は水,特
に熱水の存在下においても充分である。このようなプラ
スチックフィルムは食品包装用フィルム,絶縁テープ,
磁気テープ用ベースフィルム,写真フィルム,トレーシ
ングフィルムなどの用途に利用され,特に熱水による加
熱処理が行われる食品包装用フィルムに好適に用いられ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−78761(JP,A) 特開 昭62−173253(JP,A) 特開 昭62−227745(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂でなる基材フィルムの少なく
    とも片面に、実質的に水不溶性でかつ水分散性のポリエ
    ステル(a)およびポリウレタン(b)を主成分とする
    組成物を塗布して得られる被覆プラスチックフィルムで
    あって、 該実質的に水不溶性でかつ水分散性のポリエステル
    (a)が、スルホン酸金属塩基を有するジカルボン酸類
    0.5〜5モル%と、芳香族ジカルボン酸とからなるジカ
    ルボン酸類;およびエチレングリコールとネオペンチル
    グリコールとからなり、 該ポリエステルのガラス転移温度が100℃以下であり、 該実質的に水不溶性でかつ水分散性のポリウレタン
    (b)が、脂肪族ジカルボン酸類を50モル%以上の割合
    で含有するジカルボン酸と、グリコール類とからなるポ
    リエステル成分;およびジイソシアネート成分から得ら
    れ、そして、 該ポリエステル(a)およびポリウレタン(b)が該組
    成物中に95:5〜30:70の重量比で含有される、 被覆プラスチックフィルム。
  2. 【請求項2】少なくとも一軸方向に配向された特許請求
    の範囲第1項に記載のフィルム。
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