JP2016186072A - 帯電防止性ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

帯電防止性ポリエステルフィルムおよびその製造方法 Download PDF

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康平 田中
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Abstract

【課題】より高品位の塗膜均一性を有する帯電防止性ポリエステルフィルムの提供。【解決手段】ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に帯電防止層が形成された帯電防止性ポリエステルフィルムであって、前記帯電防止層が4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)を主成分とし、前記フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点において、各地点のフィルム全幅で観察されるフィルム幅1mあたりのスジ状欠点の平均値が、2.0個/m以下である帯電防止性ポリエステルフィルム。23℃、50%RHにおける表面固有抵抗値が1×1012Ω/□未満であることが好ましい帯電防止性ポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、帯電防止性に優れたポリエステルフィルムに関する。
ポリエステルフィルムは機械的性質、耐熱性および透明性に優れ、包装食品用途や包装材料、情報記憶材料、建築材料、電子材料、印刷材料などのベースフィルムや工程フィルムとして広く使用されている。
一般的にプラスチックフィルムやその積層フィルムは、加工工程や製品の使用時に接触摩擦や剥離によって静電気が発生しやすく、発生した静電気の影響によりチリや小さなゴミが付着しやすいため、フィルムに帯電防止性能を付与しておくことが望ましい。
フィルムに帯電防止性能を付与する方法としては、例えば帯電防止性能を有する塗膜を積層する方法が知られている。
前記方法で形成した帯電防止性、塗膜均一性が良好なフィルムとして、帯電防止層にカルボキシル基を含む4級アンモニウム塩を含有する積層フィルムが開示されている(特許文献1、2)。
特開2006−160883号公報 特開2013−71445号公報
しかしながら、近年、情報記憶材料や電子材料などの光学用途では、より高品位のフィルムが要求されており、特許文献1、2に記載された帯電防止性フィルムは、前記用途では塗工方法に起因する外観が問題となることがわかった。
すなわち、本発明は、より高品位の塗膜均一性を有する帯電防止性ポリエステルフィルムの提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に帯電防止層が形成された帯電防止性ポリエステルフィルムであって、前記帯電防止層が4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)を主成分とし、前記フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点において、各地点のフィルム全幅で観察されるフィルム幅1mあたりのスジ状欠点の平均値が、2.0個/m以下であることを特徴とする帯電防止性ポリエステルフィルム。
(2)23℃、50%RHにおける表面固有抵抗値が1×1012Ω/□未満であることを特徴とする(1)記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
(3)帯電防止層を構成する成分として、さらに架橋剤(B)を含有する(1)または(2)に記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
(4)帯電防止層に含有する4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(B)の質量比(A/B)が、95/5〜70/30である(1)〜(3)いずれかに記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
(5)帯電防止層を形成するための塗工液として、含有する固形分の平均粒径が50〜300nmである塗工液を用いることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の帯電防止性ポリエステルフィルムの製造方法。
本発明によれば、スジ状欠点が低減され、より外観に優れた帯電防止性ポリエステルフィルムを提供することができる。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムは、帯電防止層が有する帯電防止性能を十分に発揮させることができるだけでなく、得られる積層フィルムを製品とする場合の歩留まりを向上し、品質を安定化することができる。このため、保護フィルムなどとして使用することができる。
本発明において、ポリエステルフィルム基材に用いられるポリエステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。ポリエステル樹脂には、必要に応じて、他の成分を共重合してもよい。
前記ポリエステル樹脂において、共重合可能な他の成分としては、カルボン酸成分、ヒドロキシカルボン酸成分、アルコール成分が挙げられる。カルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸が挙げられる。アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらの共重合成分は2種以上併用してもよい。
ポリエステルフィルム基材として用いられるポリエステル樹脂の融点は、耐熱性の観点から230℃以上であることが好ましい。
本発明に用いるポリエステルフィルム基材は、塗工液との密着性向上のため片面または両面に対しコロナ処理を施してもよい。
本発明に用いるポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂の重合方法としては、例えば、直接エステル化法、エステル交換法等の公知の製造方法が挙げられる。直接エステル化法としては、例えば、必要なモノマー原料を反応缶内に注入し、エステル化反応をおこなった後、重縮合反応をおこなう方法が挙げられる。エステル化反応では、窒素雰囲気下、160℃以上の温度で4時間以上、加熱溶融して反応させる。その際、触媒として、マグネシウム、マンガン、亜鉛、カルシウム、リチウム、チタン等の酸化物、酢酸塩を用いてもよい。重縮合反応では、130Pa以下の減圧下で、220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める。その際、触媒として、アンチモン、チタン、ゲルマニウム等の酸化物、酢酸塩を用いてもよい。重合後のポリエステル樹脂には、モノマーやオリゴマー、アセトアルデヒドやテトラヒドロフラン等の副生成物を低減させるため、減圧または不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合してもよい。
前記ポリエステル樹脂を重合する際、必要に応じて、アンチブロッキング剤、静電ピンニング剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。アンチブロッキング剤としては、シリカ等の無機滑剤や有機滑剤が挙げられる。静電ピンニング剤としては、マグネシウム、マンガン化合物等のアルカリ金属化合物が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。熱安定剤としては、例えば、リン系化合物が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
本発明に用いるポリエステルフィルム基材は、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。また延伸フィルムは、一軸延伸されたフィルムであっても、二軸延伸されたフィルムであってもよい。二軸延伸されたフィルムとしては、同時二軸延伸法で得られたフィルム、逐次二軸延伸法で得られたフィルムのいずれであってもよい。必要とするポリエステルフィルムの特性に応じて、また帯電防止層の形成に用いる塗工液の特性に応じて、適宜選択して用いることができる。
本発明で用いるポリエステルフィルム基材の製造方法について具体的に説明するがこの方法に限定されない。
未延伸フィルムは、十分に乾燥されたポリエステル樹脂原料を押出機に供給し、流動性を示す温度以上で溶融し、必要に応じてフィルターを通過させた後、Tダイから、ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)以下に温度調節した冷却ドラム上に押出すことにより得ることができる。
一軸延伸法では、未延伸フィルムをポリエステル樹脂のTg〜(Tg+50℃)の温度範囲で、幅方向(TD方向)または長手方向(MD方向)にそれぞれ2〜6倍程度の延伸倍率となるように延伸する。また、同時二軸延伸法では、未延伸フィルムをポリエステル樹脂のTg〜(Tg+50℃)の温度範囲で、幅方向(TD方向)および長手方向(MD方向)にそれぞれ2〜4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸する。この場合、同時二軸延伸機に導く前に、1〜1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。また、逐次二軸延伸法では、上記未延伸フィルムをロール、赤外線等で加熱し、長手方向(MD方向)に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロール周速差を利用し、ポリエステル樹脂のTg〜(Tg+40℃)の温度範囲で2.5〜4.0倍とすることが好ましい。縦延伸フィルムは、さらに横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸延伸フィルムとする。横延伸は、ポリエステル樹脂のTg〜(Tg+40℃)の温度範囲で開始し、最高温度は、ポリエステル樹脂の(Tm−100℃)〜(Tm−40℃)の温度範囲であることが好ましい(Tmは樹脂の融点)。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、3.5倍以上とすることが好ましく、3.8倍以上とするのがより好ましく、4.0倍以上とするのがさらに好ましい。長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に延伸後、さらに、長手方向(MD方向)および/または幅方向(TD方向)に再延伸することにより、フィルムの弾性率を高めたり寸法安定性を高めたりすることができる。延伸に続き、ポリエステル樹脂の(Tm−50℃)〜(Tm−10℃)の温度範囲で数秒間の熱固定処理と、熱固定処理と同時にフィルム幅方向(TD方向)に1〜10%の弛緩することが好ましい。なお、ポリエステルフィルム基材には、本発明の効果を妨げない範囲で、滑剤を添加してもよい。
本発明のポリエステルフィルム基材の厚みは特に限定されないが、12〜250μmであることが好ましく、16〜150μmであることがより好ましく、20〜75μmであることがさらに好ましい。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムは、前記ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)を主体とする帯電防止層を形成する必要があり、両面に帯電防止層を有していてもよい。
本発明で用いる4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)としては、静電分極緩和性を有する高分子(イオン伝導高分子)であればよく、重合体(A)中の4級アンモニウム基は、静電分極性とイオン導電性による速やかな静電分極緩和性を付与することができる。重合体(A)としては、4級アンモンニウム基を側鎖に有するとともに、カルボキシル基も側鎖に有するポリアクリル共重合体であることが好ましい。ポリアクリル共重合体は架橋剤との架橋反応により、接着性、耐久性、耐熱性などの特性が著しく向上するとともに、重合体の静電分極緩和性能により、ポリエステルフィルムに効果的な帯電防止性を付与することができる。ポリアクリル共重合体を構成する単量体の具体例として、4級アンモニウム塩をもつ単量体としては、対イオンがメチルサルフェートまたはエチルサルフェートのジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物などが挙げられ、カルボキシル基をもつ単量体としては(メタ)アクリル酸が挙げられ、さらに、その他の単量体として(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、その他のビニル誘導体が挙げられる。これらの単量体の組成比は広い範囲で変えることができるが、4級アンモニウム基をもつ単量体は、共重合体の全単量体に対して15〜50mol%であることが好ましく、カルボキシル基をもつ単量体は、2〜15mol%であることが好ましく、その他の単量体は、35〜83mol%であることが好ましい。4級アンモニウム基をもつ単量体やカルボキシル基をもつ単量体の共重合量がこの範囲を超えると、得られる重合体(A)を用いた塗工液は、粘度が上昇し、フィルムへの塗工性が低下することがある。
本発明において、対イオンとしてアルキルサルフェートイオンを使用すると、4級アンモニウム塩が熱によってホフマン分解しにくくなり、耐熱性を付与することができるため好ましい。また塩素イオンのように分解され、塩素ガスが発生して、積層フィルムに接触する金属を腐食するなどの悪影響を及ぼすことがない。具体的には、積層フィルムの表層フィルムとして使用された場合には、シールするために高温下で熱プレス加工が施されるが、この熱プレス処理でもコート層は劣化しにくく耐熱性を保っている。
例えば、対イオンに塩素イオンを持つトリメチルアミノエチルアクリレート・クロライドの共重合体は150℃に加熱すると1〜2分で分解して塩素ガスを発生し、また帯電防止性能は劣化する。これに対して、対イオンとしてメチルサルフェート塩を使用すると、200℃で1分間加熱しても表面固有抵抗値の上昇は少なく、また帯電防止性能も維持される。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムにおける帯電防止層には、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)に加えて、架橋剤(B)や界面活性剤(C)を添加することもできる。特に、架橋剤の添加は好ましく、帯電防止層の凝集性や密着性を向上させることができる。
架橋剤(B)としては、例えば、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、中でもエポキシ化合物、ポリエチレンイミンが好ましい。本発明においてはこれらから選ばれる2種類以上を併用することが更に好ましい。架橋剤が1種類であると塗膜の凝集性・密着性が不十分であり、熱プレスの際にコート層が移行してしまうことがある。なお、帯電防止層を形成するために用いる架橋剤(B)は、塗工液として有機溶剤を含有しない状態で取扱い可能な点で、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
エポキシ化合物としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの2官能誘導体、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの3官能誘導体などが好ましい。なおエポキシ化合物は、原料にエピクロヒドリンを使用する関係から塩素イオンの残留が避けられないので、可能な限り塩素イオンを除去したものが望ましい。
メラミン系樹脂としては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、トリスメトキシメチルメラミン、ヘキサキスメトキシメチルメラミンなどから選択することが好ましい。
イソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートなどのような芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ブタンジイソシアネートなどのような脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体が挙げられ、反応性を調整し塗工液の安定性を高める点でブロックイソシアネート化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、エポキシアルキルシラン、アミノアルキルシラン類が挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
ポリエチレンイミンとしては、一級、二級、三級アミンからなる枝分かれ構造を有する高極性・高密度ポリアミンが挙げられる。そのほかに水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂などが挙げられ、ポリビニルアルコール樹脂はケン化度が89%以上、分子量が100〜1000であるものが好ましい。
4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(B)の質量比(A/B)は、95/5〜70/30であることが好ましく、90/10〜80/20であることがより好ましい。架橋剤(B)が5%未満であると架橋剤添加による密着性の向上効果が少なくなることがあり、また30%を超えると帯電防止性能が低下することがある。なお、前記質量比(A/B)は、固形分換算で算出されるものである。
なお、架橋剤(B)の触媒として、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、ポリアミン、ポリエチレンイミン誘導体などのエポキシ開環反応触媒、パラトルエンスルホン酸のようなメラミン架橋用触媒、イミダゾール、有機錫化合物などのウレタン架橋用触媒等を用いてもよい。これらの触媒の量は特に規定されないが、重合体(A)と架橋剤(B)との合計質量に対して5〜30質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。
界面活性剤(C)は、静電分極緩和性を有する重合体(A)の帯電防止性能をより高度に引き出すために、特に湿度に依存せずに帯電防止性を安定させるためには、添加することが好ましく、低分子イオン伝導タイプの界面活性剤であることが好適である。具体的には、一般的なアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤から選択することができる。特に4級アンモンニウム塩を有する化合物、スルホン酸塩を有する化合物が、塗工液との相溶性、塗工適性、接着性、耐ブロッキング性から好ましい。界面活性剤(C)の添加量は、重合体(A)と架橋剤(B)合計100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
本発明においては、帯電防止層を形成するための、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、必要に応じて架橋剤(B)、界面活性剤(C)、水等
を混合したものを均一分散して塗工液とすることができる。必要に応じて、さらに消泡剤等の公知の添加剤を用いることもできる。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムの製造方法としては、ポリエステルフィルム基材に、重合体(A)を主成分とした塗工液を塗布し加熱乾燥することにより帯電防止層を形成させる方法を挙げることができる。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムは、延伸後のポリエステルフィルムを基材とし塗布することはもちろん可能であるが、ポリエステルフィルム基材の製造工程内において塗布することも可能であり、後者の方法では、延伸、熱固定処理と同時に乾燥、硬化反応を進めることができるので好ましい。延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれでも可能であり、同時二軸延伸では延伸前、逐次二軸延伸では縦延伸後に塗布することが好ましく、必要に応じて塗布後延伸前に予備乾燥の工程を設けることが好ましい。塗工液をポリエステルフィルムに塗工する方法は、一般的な塗工方法が可能であり、例えばメイヤーバーコート、エアーナイフコート、リバースロールコート、リバースグラビアロールコート、グラビアロールコート、リップコート、ダイコートなどの方法が挙げられる。塗工液塗布量は、1〜10g/mが好ましい。塗工後の乾燥条件として、乾燥温度は50〜90℃が好ましく、乾燥時間は10〜60秒であることが好ましい。塗布、乾燥後に、フィルムを延伸する場合、延伸温度は110〜130℃、延伸倍率は3〜10倍であることが好ましい。さらに延伸後に、熱処理する場合、熱処理温度は220〜240℃が好ましく、熱処理時間は5〜15秒間が好ましい。
重合体(A)は4級アンモニウム塩基とカルボキシル基の両方を側鎖に有するため、分子内にカチオン性基とアニオン性基が共存しており、粒子同士が会合しやすく二次凝集しやすい。また、他のイオン性物質を加えた場合でも重合体(A)と複合し凝集する可能性がある。この凝集した粒子の影響によって、例えばグラビアロールの版づまりが起こり、スジ状欠点が生じやすくなる。
このため、ポリエステルフィルムに上記帯電防止層をMD方向のスジ状欠点を生じさせずに形成するためには、帯電防止性能を有する塗工液固形分の平均粒径が50〜300nmを用いることが好ましく、75〜275nmがより好ましく、100〜250nmがさらに好ましく、125〜225nmとした塗工液を用いることが特に好ましい。塗工液固形分の平均粒径が50nm未満では、粒子同士が二次凝集し、スジ状欠点が生じたり、場合によっては凝集がひどくなり塗工できない等の問題が生じる場合がある。一方、塗工液固形分の平均粒径が300nmより大きくなると、塗膜の均一性が悪化してスジ状欠点が生じやすくなる。
塗工液に存在する固形分の平均粒径を50〜300nmにする方法としては特に限定はされないが、超音波処理や高速分散処理を用い、所定の平均粒径となるように均一分散することがスジ状欠点であるコートスジやコートムラ抑制の観点で重要である。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点において、各地点のフィルム全幅で観察されるフィルム幅1mあたりのスジ状欠点の平均値が、2.0個/m以下である必要があり、好ましくは1.0個/m以下であり、より好ましくは0.5個/m以下であり、さらに好ましくは0.2個/m以下である。端縁とはフィルムの縁辺のことである。スジ状欠点の単位である個/mは、フィルム幅1mあたりのスジ状欠点の個数のことである。
スジ状欠点は、帯電防止性ポリエステルフィルムの帯電防止層面より高輝度光源(300ルーメン以上)を接射することにより目視で確認することができる。
なお、本発明のスジ状欠点とは、フィルムの長手方向へ生じるコートスジやコートムラのことである。
本発明の帯電防止性ポリエステルフィルムの表面固有抵抗値は、23℃、相対湿度50%において、1×1012Ω/□未満であることが好ましい。表面固有抵抗値が1×1012Ω/□を超えると帯電防止性能が不十分である。
なお、帯電防止性能の観点から、本発明のポリエステルフィルムの帯電防止層の厚さは、0.05〜0.5μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さが0.05μm未満であると帯電防止性能が発現しないことがあり、0.5μmを超えると帯電防止性能が飽和する。
本発明のポリエステルフィルムは帯電防止性に優れ、スジ状欠点が低減されて外観が非常に優れているため、帯電防止性能の要求度が高い電気、電子部品分野、外観の要求度の高い光学用途や意匠性分野などの帯電防止性ポリエステルフィルムとして好適に使用することが出来る。他にもこのような特性を生かして、各種包装、工業用途での資材として好適に用いることができる。また、保護フィルムなどの表層フィルムとしても使用できる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
(1)塗工液固形分の平均粒径
純水5gに下記で記載した塗工液を0.05g添加して試料溶液を作製した。続いて、粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)を用いて25℃の温度にて塗工液の固形分の平均粒径を求めた。
(2)塗膜の外観評価
下記2種の方法で評価した。
いずれの手法においても評価する地点は、フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点とし、各地点のフィルムの幅方向(TD方向)に黒色油性ペンで直線を引き、直線上を交差するスジ状欠点をフィルム全幅に対して観察した。
(評価方法A)
帯電防止性ポリエステルフィルムの帯電防止層の表面に対して5°〜45°の角度から蛍光灯の白色光線(100ルーメン)を当てて、スジ状の干渉を示す部分の有無を目視で確認した。前記10地点の全幅において、どの地点においてもスジ状欠点が全く確認できないものを「無」、いずれか1点において確認できるものを「有」とした。
(評価方法B)
帯電防止性ポリエステルフィルムの帯電防止層のコート表面に対して約10〜45°の斜めの方向から、高輝度のLED懐中電灯(レッドレンザー社製M7R型、400ルーメン)を用いて観察するフィルムに接射して光を当てることにより、フィルム全幅におけるスジ状欠点を計数し、フィルム幅1mあたりのスジ状欠点数を算出し、10地点の平均値を求めた。
(3)表面固有抵抗
ポリエステルフィルムを23℃、50%RH下で3時間放置調湿後、同温度、湿度において高抵抗計測定器(ダイアインスツルメンツ社製HT−260型)を用いて、印加電圧500V−10秒後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
塗工液を調製する原料として、下記のものを使用した。
(1)重合体A
・重合体(A−1)の水性分散体:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルサルフェート4級化物を、45/5/5/45のmol比で共重合したもの(固形分濃度30質量%)
・重合体(A−2)の水性分散体:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルサルフェート4級化物を、40/5/10/45のmol比で共重合したもの(固形分濃度30質量%)
・重合体(A−3)の水性分散体:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルサルフェート4級化物を、40/5/10/45のmol比で共重合したもの(固形分濃度30質量%)
(2)架橋剤(B)
・架橋剤(B−1):ポリエチレンイミン水溶液(日本触媒社製P−1000、固形分濃度30質量%)
・架橋剤(B−2):ポリエチレンイミン(日本触媒社製SP−200、分子量約10000、固形分100質量%)
・架橋剤(B−3):エポキシ化合物(DIC社製CR−5L、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、固形分100質量%)
・架橋剤(B−4):エポキシ化合物(信越化学工業社製KBM−403、エポキシ系シランカップリング剤、固形分100質量%)
(3)界面活性剤(C)
・界面活性剤(C−1):アセチレングリコール系(日信化学工業社製オルフィンE1004、固形分100質量%)
・界面活性剤(C−2):アセチレングリコール系(エアープロダクツ社製サーフィノール440、固形分100質量%)
実施例1
(塗工液の調製)
重合体(A−1)の水性分散体
28.3kg(固形分8.5kg)を用い、これに、架橋剤(B−1)水溶液1.1kg(固形分0.3kg)を加えて、プロペラ攪拌機で完全に撹拌した。次に2種類目の架橋剤(B−3)0.9kg(固形分0.9kg)を添加し、さらに界面活性剤(C−1)0.8kg(固形分0.8kg)を添加し60分間撹拌した。次いで純水で希釈して、総固形分濃度を12.8質量%に調整し、更に30分撹拌後、停止し脱泡した。その後、超音波分散機(エスエムテー社製、UH−600SR−1型)を用いて20kHzで滞留時間が5分間になるように超音波分散処理することにより塗工液aを得た。塗工液における固形分の平均粒径は127nmであった。なお、塗工液を構成する上記各成分(固形分)の質量比(重合体(A−1):架橋剤(B−1):架橋剤(B−3):界面活性剤(C−1)は、87.6:3.1:9.3:8.2であった。
(フィルムの製造と帯電防止層の形成)
平均粒径2.3μmの無定形シリカ粒子を0.08質量%含有するポリエチレンテレフタレートを280℃で溶融押出し、Tダイ法でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ600μmの未延伸フィルムを成形した。続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.5倍に延伸した。この縦延伸したフィルムの片面に、リバースクラビアコーターを用いて、先に調製した塗工液を5g/m(WET換算)の塗布量になるように塗工し、横延伸テンターを用いて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた帯電防止ポリエステルフィルムの厚さは38μmであり、帯電防止層はおよそ0.15μmであった。このフィルムについて、塗膜の外観、表面固有抵抗の評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例2〜10、比較例1〜6
表1および表2に記載された組成、総固形分濃度、分散方法、処理時間とした以外は実施例1と同様にして帯電防止ポリエステルフィルムを得た。なお、分散方法として超音波分散に代えて高速撹拌をする場合は、フィルミックス56−50型(特殊機化工業社製)を用いて10000rpmの条件で塗工液を分散させた。
比較例7
高速撹拌処理条件を2000rpmにしたこと以外は、実施例2と同様にして帯電防止ポリエステルフィルムを得た。
実施例1〜10、比較例1〜7で調製した塗工液における固形分の平均粒径や、得られた帯電防止ポリエステルフィルムの各種性能評価結果を表1および表2に示す。
実施例1〜10は、所定の帯電防止層を形成したため、得られた帯電防止性ポリエステルフィルムは、高輝度のLED懐中電灯を接射して外観評価(評価方法B)しても各地点におけるスジ状欠点の平均値が幅1mにおいて2.0個/m以下であり、帯電防止性能、外観も良好であった。
比較例1〜7では、得られた帯電防止性ポリエステルフィルムにおいて、表面に対して5°〜45°の角度から100ルーメンの蛍光灯を照射した外観評価(評価方法A)ではスジ状欠点は確認できなかったものの、高輝度のLED懐中電灯を接射して外観評価(評価方法B)した場合には、各地点のスジ状欠点の平均値が幅1mにおいて2.0個/m以上であり、外観評価として劣っていた。また、帯電防止性能も良好であるが、実施例と比較すると少し劣るものであった。

Claims (5)

  1. ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に帯電防止層が形成された帯電防止性ポリエステルフィルムであって、前記帯電防止層が4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)を主成分とし、
    前記フィルムの長手方向の片端縁から1mの地点と、他端縁から1mの地点と、前記2地点の間を9等分した地点の合計10地点において、各地点のフィルム全幅で観察されるフィルム幅1mあたりのスジ状欠点の平均値が、2.0個/m以下であることを特徴とする帯電防止性ポリエステルフィルム。
  2. 23℃、50%RHにおける表面固有抵抗値が1×1012Ω/□未満であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
  3. 帯電防止層を構成する成分として、さらに架橋剤(B)を含有する請求項1または2に記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
  4. 帯電防止層に含有する4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)と架橋剤(B)の質量比(A/B)が、95/5〜70/30である請求項1〜3いずれかに記載の帯電防止性ポリエステルフィルム。
  5. 帯電防止層を形成するための塗工液として、含有する固形分の平均粒径が50〜300nmである塗工液を用いることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の帯電防止性ポリエステルフィルムの製造方法。



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