JP4322321B2 - 極低温用蓄冷材,それを用いた冷凍機および熱シールド材 - Google Patents

極低温用蓄冷材,それを用いた冷凍機および熱シールド材 Download PDF

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    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
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    • F25B2321/002Details of machines, plants or systems, using electric or magnetic effects by using magneto-caloric effects

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍機等に使用される極低温用蓄冷材,それを用いた冷凍機および極低温用熱シールド材に係り、特に冷媒の圧力損失が小さく十分な冷凍能力が発揮できる上に、圧力損失を低くする形状に加工することが容易な極低温用蓄冷材,それを用いた冷凍機および極低温用熱シールド材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超電導技術の発展は著しく、その応用分野が拡大するに伴って、小型で高性能の冷凍機の開発が不可欠になってきている。このような冷凍機には、軽量・小型で、熱効率の高いことが要求されている。
【0003】
例えば、超電導MRI装置やクライオポンプ等においては、ギフォード・マクマホン方式(GM方式)やスターリング方式等の冷凍サイクルによる冷凍機が用いられている。また、磁気浮上列車にも高性能の冷凍機は必須とされている。さらに最近では、超電導電力貯蔵装置(SMES)や、高品質のシリコンウェハーなどを製造する磁場中単結晶引上げ装置などにおいても高性能な冷凍機が主構成機器として装備されている。さらに超電導線,超電導素子,赤外線センサーなど、極低温域で動作する部品材料の温度安定化を図るためにサーマルアンカー,ヒートシンク,熱シールド用の極低温用蓄冷材が広く使用されている。
【0004】
図9は従来の2段式のGM冷凍機の要部構成を示す断面図である。このGM冷凍機10は、大径の第1シリンダ11と、この第1シリンダ11と同軸的に接続された小径の第2シリンダ12とが設置された真空容器13を有している。第1シリンダ11には第1蓄冷器14が往復動自在に配置されており、第2シリンダ12には第2蓄冷器15が往復動自在に配置されている。第1シリンダ11と第1蓄冷器14との間、および第2シリンダ12と第2蓄冷器15との間には、それぞれシールリング16,17が配置されている。
【0005】
第1蓄冷器14には、Cuメッシュ等の第1蓄冷材18が収容されている。第2蓄冷器15には、極低温用蓄冷材が第2蓄冷材19として収容されている。第1蓄冷器14および第2蓄冷器15は、第1蓄冷材18や極低温用蓄冷材19の間隙等に設けられたHeガス等の作動媒質(冷媒)の通路をそれぞれ有している。
【0006】
第1蓄冷器14と第2蓄冷器15との間には、第1膨張室20が設けられている。また、第2蓄冷器15と第2シリンダ12の先端壁との間には、第2膨張室21が設けられている。そして、第1膨張室20の底部には第1冷却ステージ22が、また第2膨張室21の底部には、第1冷却ステージ22より低温の第2冷却ステージ23が形成されている。
【0007】
上述したような2段式のGM冷凍機10には、コンプレッサ24から高圧の作動媒質(例えばHeガス)が供給される。供給された作動媒質は、第1蓄冷器14に収容された第1蓄冷材18間を通過して第1膨張室20に到達し、さらに第2蓄冷器15に収容された極低温用蓄冷材(第2蓄冷材)19間を通過して第2膨張室21に到達する。この際に、作動媒質は各蓄冷材18,19に熱エネルギーを供給して冷却される。各蓄冷材18,19間を通過した作動媒質は、各膨張室20,21で膨張して寒冷を発生させ、各冷却ステージ22,23が冷却される。膨張した作動媒質は、各蓄冷材18,19間を反対方向に流れる。作動媒質は各蓄冷材18,19から熱エネルギーを受け取った後に排出される。こうした過程で復熱効果が良好になるに従って、作動媒質サイクルの熱効率が向上し、より一層低い温度が実現される。
【0008】
すなわち、上記のようなGM冷凍機においては、蓄冷材が充填された蓄冷器内を、圧縮されたHeガス等の作動媒質が一方向に流れて、その熱エネルギーを蓄冷材に供給し、ここで膨張した作動媒質が反対方向に流れ、蓄冷材から熱エネルギーを受け取る。こうした過程で復熱効果が良好になるに伴って、作動媒質サイクルの熱効率が向上し、一層低い温度を実現することが可能となる。
【0009】
上述したような冷凍機に使用される蓄冷材としては、従来、CuやPb等が主に用いられてきた。しかし、このような蓄冷材は20°K以下の極低温域で体積比熱が著しく小さくなるため、上述した復熱効果が十分に機能せず、極低温を実現することが困難であった。
【0010】
そこで、最近では、より絶対零度に近い温度を実現するために、極低温域において大きな体積比熱を示すEr3 Ni,ErNi,ErNi2 ,ErRh,HoCu2 などの、希土類元素と遷移金属元素とから成る金属間化合物製の磁性蓄冷材を用いることが検討されている。
【0011】
上記のような磁性蓄冷材は、Heガスなどの作動媒質との熱交換を効率良く実施するために、通常、直径が0.1〜0.5mm程度の球状に加工され、磁性粒体の形状で使用される。上記球状の磁性粒体を充填した蓄冷器をGM冷凍機に適用することによって、到達温度が4°Kとなるような冷凍運転が実現している。
【0012】
図10は上記のようなGN冷凍機10を用いた低温保冷装置30の構成例を示す断面図であり、特に超電導MRI装置,磁気浮上列車,超電導電力貯蔵装置(SMES)および磁場中単結晶引上げ装置等の主要部を構成する超電導磁石の保冷装置を示している。
【0013】
図10に示す低温保冷装置30は、被冷却物としての超電導磁石31と、この超電導磁石31を極低温度に冷却するGM冷凍機10と、超電導磁石31を囲むように配設された複数の熱シールド材32とを真空容器33内に配置して構成されている。上記複数の熱シールド材32は、支持材34を介して真空容器33内に保持されている。また、一旦冷却した被冷却物から冷凍機10などの冷却手段を熱的に切り離す熱スイッチ35が設けられている。
【0014】
上記熱シールド32としては、厚さが1〜2mm程度の銅(Cu)板から成るものが広く使用されており、外部からの熱侵入を極力抑制して保冷システム全体の冷却効率を高めるために、これらの熱シールド材32が多層に配設されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように冷凍サイクルが数Hz程度と低い従来のGM冷凍機と異なり、冷凍サイクルが数10Hzとなるスターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機などのように高速サイクル運転を行う冷凍機においては、上記球状の磁性粒体を充填した蓄冷器での圧力損失が大きくなり、作動媒質と磁性粒体との間の熱交換が不十分となるため、十分な冷凍能力を発揮させることが困難となる問題点があった。
【0016】
一方、上記蓄冷器における圧力損失を低減する対策として磁性蓄冷材の形状を、多数の透孔を穿設したパンチングプレート状,リボン状の蓄冷材をロール状に巻回したもの,メッシュ状の蓄冷材を多層に積層した積層スクリーン状に加工して用いる方法も試行されていた。
【0017】
しかしながら、前記磁性蓄冷材は、金属間化合物に特有な脆性が顕著であるため、穿孔加工や曲げ加工が困難であり、蓄冷材の形状によって蓄冷器における圧力損失を低減することは実質的に不可能であった。
【0018】
一方、銅製の熱シールド材を用いた従来の低温保冷装置において、冷凍機が停止した場合やヘリウム(He)などの低温液化ガスが蒸発した場合には、低温度での銅の比熱が小さいために熱シールド材が短時間に温度上昇し、外部からの熱侵入を抑制する効果が喪失してしまう問題点がある。
【0019】
また、最近では、一旦冷却した被冷却物から冷却手段を切り離し、コンパクトな使用状態で超電導磁石などの被冷却物を運転するシステムも検討されている。しかしながら、上記銅などの従来の金属材のみから成る熱シールド材では比熱が小さいために保冷効果も小さく、被冷却物を長時間に亘って低温度に保持することが困難になるという問題点があった。
【0020】
上記対策として、特に極低温域において大きな比熱を示すEr3 Ni,ErNi,HoCu2 などの希土類元素および遷移金属元素を含む金属間化合物から成る磁性蓄冷材を熱シールド材の構成材料とすることを本願発明者らは考えていた。しかしながら、上記のような磁性蓄冷材は、一般に脆性材料であるため、熱シールド材に用いられるような大きさの板材形状に加工することが極めて困難であるという問題点があった。
【0021】
また、超電導コイルのような被冷却物に対しては、図10に示すような円筒形状の熱シールド材が好適ではあるが、脆性材料である磁性蓄冷材を円筒形状ないし曲面形状に加工することは、平板形状に比較してさらに困難であるという問題点があった。
【0022】
一方、Ndなどの希土類元素単体から成る磁性蓄冷材は、上記の金属間化合物から成る磁性蓄冷材と比較してやや比熱特性は劣る。またCuなどの通常の金属と比較して、極低温域で比較的に大きな比熱を有するとともに、板状に加工することが可能である。しかしながら、一般に熱シールド材は比較的に大面積形状で使用される場合が多く、しかも熱シールド材自体に大きな荷重が作用する条件で使用される。ところが、Ndなどの希土類元素の単体から成る熱シールド材では構造強度が不十分であり、そのまま熱シールド材に適用することは不可能であった。
【0023】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、特に冷媒(作動媒質)の圧力損失が小さく十分な冷凍能力が発揮できる上に、圧力損失を低くする形状に加工することが容易な極低温用蓄冷材およびそれを用いた冷凍機を提供することを第1の目的とする。
【0024】
また本発明は、熱の侵入を効果的に抑制することができ、任意の形状に加工することが容易で構造強度に優れた熱シールド材を提供することを第2の目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る極低温用蓄冷材は、シート状多孔質金属またはメッシュ状金属から成り、空孔率が90vol%以上である多孔質担体の空孔部に、希土類元素を含有し粒径が5mm以下の磁性粒体を、20乃至90%の割合で充填して成り、上記磁性粒体が希土類元素単体もしくはEr Ni,ErNi,ErNi ,ErRhおよびHoCu から選ばれる少なくとも1種の金属間化合物であることを特徴とする。またまた多孔質性担体は発泡金属で構成するとよい。さらに、多孔質性担体はシート状に形成するとともに、多孔質性担体の少なくとも一方の表面に複数の凸部を形成するとよい。
【0026】
また、本発明に係る極低温用蓄冷材は、希土類元素を含有する磁性粒体を結合剤,溶剤,分散剤および可塑剤とともに混合して均一なスラリーを調製し、得られたスラリーをシート状に成形することにより磁性粒体を相互に接合して形成され、上記磁性粒体が希土類元素単体もしくはEr Ni,ErNi,ErNi ,ErRhおよびHoCu から選ばれる少なくとも1種の金属間化合物であるように形成してもよい。さらに上記磁性粒体から成るシート状成形体に多数の通気孔を穿設するとよい。
【0027】
本発明に係る冷凍機は、上記希土類元素を含有する磁性粒体を多孔質性担体の空孔部に充填して成る極低温用蓄冷材を充填した蓄冷器を具備することを特徴とする。
【0028】
また上記シート状に成形した極低温用蓄冷材は、ロール状に巻回された状態で蓄冷器内に充填してもよい。さらに極低温用蓄冷材は多数の通気孔を有するプレート状の蓄冷材要素から成り、この複数の蓄冷材要素が蓄冷器の軸方向に多段に積層された状態で充填される構造でもよい。
【0029】
本発明に係る極低温用熱シールド材は、上記のように調製した極低温用蓄冷材を、この極低温用蓄冷材とは異なる材料から成る補強部材に一体に接合したことを特徴とする。
【0030】
上記補強部材はCu,Al,Fe,Niから選択される少なくとも1種の金属材料またはその金属材料を主成分とする合金から構成するとよい。また極低温用蓄冷材は、磁性粒体を結合剤とともに多孔質性担体の空孔部に充填して形成されたシート状の蓄冷材であることを特徴とする。さらに極低温用蓄冷材と補強部材とを上記結合剤によって接合するとよい。
【0031】
本発明で使用される磁性粒体としては、
例えば
【数1】
一般式:RM ……(1)
(式中、RはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示し、MはNi,Co,Cu,Ag,Al,Ru,InおよびRhから選ばれる少なくとも1種の金属元素を示し、zは原子比で0.001〜9.0の範囲の数を示す。以下同じ)
で表わされる希土類元素を含む金属間化合物や、Ndなどの希土類元素単体から成る磁性粒体が挙げられる。
【0032】
上記磁性粒体は、所定組成の母合金を機械的に粉砕して調製することができる。また、所定量の希土類元素を含有した金属溶湯または希土類元素溶湯を遠心噴霧法,回転円板法(RDP法),イナートガスアトマイズ法,単ロール法,双ロール法などの溶湯急冷法によって処理して調製することもできる。上記磁性粒体の形状は、不定形,球形など任意の形状で構わない。
【0033】
また磁性粒体の粒径が5mmを超えると、多孔質性担体への充填性が損われる。したがって、磁性粒体の粒径は5mm以下とされるが、より好ましい粒径は1mm以下の範囲であるが、さらに好ましい粒径範囲は0.2mm以下である。
【0034】
上記磁性粒体を充填する多孔質性担体としては加工性が良好で、かつ安価なNi,Cu,Pb,Fe,ステンレス鋼,Ni合金,Cu合金,Pb合金,Fe合金で形成したものが好ましい。さらに、これらの金属や合金で形成された本体表面にCrなどのめっき層を形成したものが使用できる。
【0035】
上記多孔質性担体の具体例としては、発泡金属などの多孔質金属や、金属線材を縦横に織り上げて形成したメッシュ状金属が挙げられる。
【0036】
上記多孔質性担体は、例えば下記の工程に従って製造できる。すなわち、連続気泡を形成したウレタンなどの発泡樹脂に導電処理を施した後に、発泡樹脂内外表面にNi,Ni−Cr,Ni−Alなどの各種金属成分を電気めっきし、しかる後に熱処理して樹脂成分を揮散させると同時に合金化処理を行うことによって、樹脂部が空孔化した多孔質金属状の担体素材が得られる。この担体素材をシート状またはブロック状に加工して本発明で使用する多孔質性担体が得られる。
【0037】
多孔質性担体の空孔率は、極低温域において体積比熱が大きな磁性粒体をより多量に充填する観点から、より大きい方が有利である。多孔質性担体の空孔率は20vol.%以上が好ましく、より好ましくは60vol.%以上、さらに好ましくは90vol.%以上が望ましい。上記多孔質性担体の空孔率は、前記製造工程における発泡樹脂の発泡度を制御することにより、10〜98vol.%の範囲で任意に調整することができる。
【0038】
上記のように調製した多孔質性担体は、空孔率の増加に比例して多量の磁性粒体を充填することができる。また高い比表面積を有し、空孔は全て連通しているため、通気抵抗が少なく圧力損失も微小となる。
【0039】
本発明に係る極低温用蓄冷材は、上記のように調製した多孔質性担体の空孔部に磁性粒体を充填して形成される。作動媒質と蓄冷材との熱交換を、主に、このシート状蓄冷材内部を通過する作動媒質が直接蓄冷材と熱交換するように設計された蓄冷器に使用する場合に、磁性粒体を多孔質性担体に充填する割合は、20〜90%とする。充填割合が20%未満の場合には、作動媒質の流路(通気)抵抗は小さいが磁性粒体による蓄冷効果が不十分となる。一方、充填割合90%を超えると作動媒質の流路抵抗が過大となるため蓄冷器の圧力損失が大きくなり蓄冷効果が減少する。
【0040】
なお、ここで充填割合は、後述するようなロール加工などで最終的に厚さ調整が終了したシート状の蓄冷材の全体積(多孔質性担体を含む)に占める磁性蓄冷材粒体の体積の割合で定義する。
【0041】
また、作動媒質と蓄冷材との熱交換を、シート状蓄冷材内部を通過する作動媒質によるのではなく、流路抵抗が低いシート状蓄冷材の表面を通過する作動流体が主に蓄冷材と熱交換するように設計された蓄冷器(ギャップ蓄冷器)に使用する場合には、磁性粒体の充填割合は60〜92%の範囲とする。なお、65〜88%の範囲が好ましく、さらには、70〜85%の範囲がより好ましい。充填割合が小さい場合には、磁性粒体による蓄冷効果が減少する一方、充填割合が大きすぎると、充填時に加わった応力などにより磁性粒体に歪みが加わり特性が劣化する。
【0042】
多孔質性担体の表面または磁性粒体の表面にポリビニルアルコール(PVA)などの熱可塑性樹脂またはエポキシ樹脂やポリイミドなどの熱硬化性樹脂などを結着剤として付着させることにより、磁性粒体と多孔質性担体との結合強度を高めることが可能となり、振動等によって磁性粒体が脱落することが少なくなり、構造強度が優れた極低温用蓄冷材が得られる。
【0043】
多孔質性担体に磁性粒体を充填して複合化する方法としては、例えば、前記溶湯急冷法または機械的粉砕法によって調製した磁性粒体に結着剤と溶媒とを配合して泥漿状のペーストを調製し、このペーストを前記のように調製した多孔質金属やメッシュ状金属などの多孔質性担体中に均一に充填した後に、減圧雰囲気中で温度100〜140℃で0.5〜2.0時間乾燥して溶媒成分を除去する方法が採用できる。
【0044】
このように磁性粒体(粉末)を充填した多孔質性担体を、さらにプレス加工したり、圧延加工したりすることにより、磁性粒体と多孔質性担体との結合強度が高められるとともに、シート状に形成した極低温用蓄冷材の厚さを調整することが可能となる。
【0045】
上記シート状の極低温用蓄冷材の厚さは、巻回したり、折り曲げて所定形状に加工する容易性を確保するために0.01〜2mmの範囲とする。なお、0.05〜1.0mmの厚さの範囲が好ましく、さらに0.1〜0.5mmの範囲がより好ましい。
【0046】
また、磁性粒体を充填した多孔質性担体を、表面に凹凸を有するエンボス加工用ロールを用いてシート状に圧延加工することによって、多孔質性担体表面に複数の凸部を形成することができる。この凸部を形成した多孔質性担体を巻回して円柱状の極低温用蓄冷材を形成すると、隣接するシート状多孔質性担体が密着せずに凸部によって相互に隔離される。そのため、前記ギャップ蓄冷器に適用した場合には、この隔離部の空間を通ってHeガスなどの作動媒質(冷媒)を円滑に流通させることができ、作動媒質の圧力損失が極めて小さくなる。
【0047】
さらに上記多孔質金属やメッシュ状金属などの多孔質性担体の構成材料となる遷移金属や各種合金として、特に前記一般式RMから成る磁性蓄冷材と比較して低温度域における熱伝導度が高いものを選択できる。このようにすることで熱浸透深さが小さくなるような高速サイクル運転を実施するスターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機に、上記多孔質性担体と磁性粒体とから成る本願の極低温用蓄冷材を使用した場合においても、多孔質性担体の深部に充填された磁性粒体に対して、多孔質金属やメッシュ状金属による伝熱作用が十分に発揮され、磁性粒体と担体と作動媒質との間の熱交換が迅速に行なわれる。
【0048】
一方、蓄冷器の設計によっては、蓄冷器の高温側から低温側への熱伝導を低くしたい場合がある。そのような場合には、多孔質性担体の構成材料となる遷移金属や各種合金として、上記とは逆に、例えばステンレス鋼のように、低温領域における熱伝導度が低い材料を用いるのが好ましい。このような選択は、冷凍機および蓄冷器の設計によってどちらも採り得るものである。
【0049】
上記磁性粒体を充填した多孔質性担体を蓄冷器内に装填する場合には、ロール状に巻回したり、シートを適当な形状に切り出したものを用いることができる。ロール状に加工する場合には、幅の狭いものを複数個積層し蓄冷器内に装填することも可能である。シート状のものを用いる場合には、その平面を作動媒質の流れ方向に対しほぼ平行に装填する場合と直交するように装填する場合とが考えられる。直交するように装填する場合には、作動媒質の流路を確保するため、穿孔を施したり、磁性粒体の充填密度が低いものを用いる必要がある。
【0050】
上記構成に係る極低温用蓄冷材によれば、通気抵抗が少なく、加工性が良好な多孔質性担体の空孔部に磁性粒体を充填して形成されており、脆性が高い磁性粒体は変形が容易な多孔質性担体に担持される構造を有する。したがって、磁性粒体を圧力損失が小さくなる形状に加工することが極めて容易である。そのため、スターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機などのように高速サイクル運転を行う冷凍機用の蓄冷材として使用した場合にも、圧力損失が小さく熱交換効率が高い運転が可能となり、冷凍能力が高い冷凍機が実現できる。
【0051】
また、上記磁性粒体の粉砕粉を種々の成形法によってシート状またはプレート状に成形してそれぞれシート状またはプレート状の極低温用蓄冷材を製造することも可能である。すなわち、前記のように調製した磁性粒体を平均粒径が数μm(粒径が50μm以下の粒子数が70%以上)となるように粉砕し、得られ粉末にバインダー(結合剤),溶剤,分散剤,可塑剤などを必要に応じて添加して均一に混合しスラリーを調製する。
【0052】
上記バインダーとしては、特に限定されるものではないが、ポリアクリレート,ポリメタクリレート,セルローズアセテート,ポリビニルブチラール,ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルブチラール(PVB),メチルセルロース,ポリエチレングリコール,カルボキシメチルセルロースなどが使用できる。溶剤としては、アセトン,トルエン,トリクレン,エチルアルコール,酢酸エチル,水などが使用できる。分散剤としては、グリセリントリオレート,アリルスルホン酸,リン酸塩類,各種界面活性剤等が使用できる。また、主としては、成形体の柔軟性および加工性を改善するために添加する可塑剤としては、オクチルフタレート,ブチルベンジルフタレート,グリセリン,ポリエチレングリコール,サクローズアセテートイソブチレート,ジブチルフタレート,ジイソデシルフタレートなどが使用できる。
【0053】
次に得られたスラリーを、例えば金属板;プラスチックフィルム表面上にコーティングしてシート状に成形したり、またスラリーをプレート状に成形する。成形法は特に限定されるものではないが、ドクターブレード法,ロール成形法,グラビアコーティング法などが使用できる。シート状またはプレート状に成形された蓄冷材は、必要に応じて加熱処理を加えて、バインダー,溶剤などを揮散せしめ乾燥させる。
【0054】
上記のように形成したシート状蓄冷材は、従来の高脆性を有する蓄冷材とは異なり、種々の形状に変形させることが可能である。例えば、シート状蓄冷材をロール状に巻回して、冷凍機の蓄冷器内に充填することにより、通気抵抗が少ない極低温用蓄冷材としての機能を発揮させることができる。ここで上記シート状蓄冷材の巻き方を変えることにより、その通気抵抗を自在に変えることが可能である。特に通気抵抗が小さくなるように形態を変えることが可能であるため、高速サイクル運転を行う冷凍機用の蓄冷材として有用である。
【0055】
また前記スラリーをコーティングせずに、直接乾燥させた後に、プレス成形しプレート状の蓄冷材として使用することも可能である。すなわち、上記プレート状の蓄冷材を厚さ方向に貫通する多数の通気孔を穿設し、このプレート状の蓄冷材を蓄冷器内に微少なスペーサーを介して多段に積層配置することにより、冷却媒体(Heガス)の流れが均一であり、通気抵抗が小さい蓄冷材が得られる。
【0056】
上記通気孔の断面形状は、特に限定されるものではないが、ドリル加工が容易な円形が好適である。この場合、通気孔の直径は、10μm〜1mmの範囲とされるが、20μm〜300μmの範囲が特に好ましい。また通気孔の断面形状が円形以外の場合においても、上記円形に相当する断面積を有することが好ましい。さらに上記通気孔の配設間隔は、20μm〜2mmに設定されるが、30〜400μmの範囲がさらに好ましい。またプレート状蓄冷材の厚さは0.5〜5mm程度が好ましい。
【0057】
前記シート状蓄冷材をロール状に巻回した蓄冷材を蓄冷器内に収容した場合には、ロールの中心付近の空隙部を冷却媒体としてのHeガスが集中して流れるため、冷却媒体全体としての流れが不均一になる傾向もある。しかしながら、上記のようにプレート状の多孔蓄冷材を多段に配置した場合には、冷却媒体の流れが均一になり、蓄冷効果をさらに高めることが可能となる。なお、通気抵抗は上記通気孔の直径や配設ピッチを変えることにより、任意に調整できる。また上記プレート状の多孔蓄冷材を多段に配置した場合には、従来の球状の磁性粒子を同一の充填割合で充填した場合と比較しても、より通気抵抗を小さくすることができ、冷凍機のより高速度のサイクル運転が可能になる。
【0058】
一方、本発明に係る熱シールド材は、前記のように調製した極低温用蓄冷材を、この極低温用蓄冷材とは異なる材料から成る補強部材に一体に接合して形成される。
【0059】
上記極低温用蓄冷材は、例えば下記のような手順で調製される。まず、前記組成を有する磁性粒体を粉砕して得た磁性蓄冷材粉末に結合剤(バインダー),溶媒等と混合してスラリーを調製する。次に、得られたスラリーを前記多孔質性担体の空孔部に充填した後に、溶媒成分を蒸発せしめ、シート状磁性蓄冷材を形成する。
【0060】
ここで、上記溶媒成分を蒸発させるためには、加熱操作または減圧操作を行うことが有効である。また多孔質性担体としては、発泡金属などの多孔質性金属の他に、繊維状金属から構成したメッシュ状金属等を使用することができる。さらに多孔質性担体の構成材としては、Ni,Cu,Pb,Fe,Al,Ni合金,Cu合金,Pb合金,Fe合金,Al合金,ステンレス鋼などの金属材料が好適である。
【0061】
また多孔質金属またはメッシュ状金属の空孔率は、比熱の大きな磁性蓄冷材をより多く充填できるようにするため、大きい方が有利である。具体的には空孔率は20vol.%以上に設定されるが、60vol.%以上が好ましく、さらに85vol.%以上がより好ましい。
【0062】
上記の多孔質金属またはメッシュ状金属を構成する遷移金属や合金は、一般の金属材と比較して低温度における熱伝導度が大きい。したがって、冷凍機からの伝導伝熱のみで被冷却物を冷却する場合においても、多孔質金属またはメッシュ状金属による伝熱効率が高く、シート状蓄冷材内部に充填した磁性蓄冷材まで効率良く冷却することが可能である。
【0063】
また上記磁性蓄冷材粉末と多孔質性担体とを結合する結合剤(バインター)は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA),カルボキシメチルセルロース(CMC)などの熱可塑性樹脂,エポキシ樹脂,ポリイミドなどの熱硬化性樹脂が好適に使用できる。
【0064】
さらに極低温用蓄冷材として、下記のように溶湯急冷法によって調製した蓄冷材や切断加工や圧延加工した蓄冷材を使用することも可能である。すなわち、所定組成で溶解した溶湯を、単ロール法,双ロール法,遠心噴霧法などの溶湯急冷法を用いて処理して、薄片(フレーク)状,針状,粉末状などに加工した磁性蓄冷材を用いることもできる。この場合、薄片の厚さや針状,粉末状の蓄冷材の直径が約0.4mm以下と薄くなるので、複数の薄片等を厚さ方向に接着剤(結合剤)を介して重ね合せて使用することもできる。また、Ndなどの希土類元素単体から成る磁性蓄冷材の場合には、そのインゴットを切断したり、または圧延処理して板状に加工したものを使用することが可能である。
【0065】
上記磁性蓄冷材のうち、特に金属間化合物から成る磁性蓄冷材は、一般に脆性材料であるため、工業的な規模で板状に加工することは困難である。しかしながら、比較的に小さな面積の板やチップ状に形成する場合には、インゴットを切断する方法,インゴットを粉砕し、その粉砕粉を焼結する方法により製造することが可能である。
【0066】
この場合、各磁性蓄冷材の面積は、1〜1000cm2 の範囲とすることが好ましい。この面積が1000cm2 を超えるような広大な板状の磁性蓄冷材では、特に加工が困難になるとともに機械的強度が小さいため、熱シールド材への組立工程および運転中に破損するおそれがある。一方、面積が1cm2 未満の板やチップ状の磁性蓄冷材で大きな面積を有する被冷却物を覆うと隣接する磁性蓄冷材の継ぎ目が多くなり、熱シールド効果が低下してしまう。したがって、各磁性蓄冷材の面積は1〜1000cm2 の範囲とされるが、2〜500cm2 がより好ましく、さらに3〜100cm2 の範囲がより好ましい。また各磁性蓄冷材の厚さは0.5〜50mmの範囲が好適である。
【0067】
上記磁性蓄冷材を一体に接合する補強部材は、それ自身による熱シールド効果の他に、大きな形状に加工できない磁性蓄冷材や十分な構造強度を持たない磁性蓄冷材を支持し補強する機能を有する。上記の補強部材の構成材料としては、Ni,Cu,Fe,Al,Ni合金,Cu合金,Fe合金,Al合金,ステンレス鋼などの金属材料の他に、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)などを使用することができる。上記構成材料のうち、特に低温域での熱伝導度が大きい観点から、Cu,Al,Cu合金,Al合金が好適である。またステンレス鋼などのFe系金属材は安価な点から好ましい。
【0068】
上記補強部材に各種磁性蓄冷材を一体に接合して本発明に係る極低温用熱シールド材が形成される。ここで、前記磁性粒体を多孔質性担体の空孔部に充填したシート状磁性蓄冷材を補強部材に接合する接着剤として、磁性粒体を多孔質性担体に接合するために用いた結合剤(バインダー)を使用することも可能である。
【0069】
すなわち、磁性粒体に結合剤と溶剤等とを混合して調製したスラリーを多孔質性担体の空孔部に充填し、溶媒成分を蒸発させる前の状態にあるシート状磁性蓄冷材を補強部材に接触させて固定した状態で乾燥することにより、磁性粒体と多孔質性担体とを接合している結合剤(バインダー)により、同時にシート状磁性蓄冷材と補強部材とを一体に接合することができる。
【0070】
また、磁性蓄冷材と補強部材との密着性を高め熱抵抗を下げると同時に両部材の接合強度を高めるために、磁性蓄冷材を補強部材にねじ止めしたり、ベルトやワイヤーを用いて磁性蓄冷材の外側から結束することも有効である。
【0071】
上記構成に係る熱シールド材によれば、任意の形状に加工することが容易であり、被冷却物を長時間に亘って低温度に維持することが可能な熱シールド材が得られ、特に超電導線,超電導素子,赤外線センサーなど、極低温域で動作する機器の温度安定性を大幅に向上させることができる。
【0072】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について以下に示す実施例を参照して、より具体的に説明する。
【0073】
実施例1
まず、高周波溶解によりErNi母合金を作成した。次に、このErNi母合金を機械的に粉砕して200メッシュ以下の合金粉末とした。次に得られたErNi合金粉末に、結合剤としてのポリビニルアルコールを4重量%濃度で溶解した水溶液を、合金粉末重量の25%の割合で添加し均一に混練して泥漿状のペーストを調製した。
【0074】
一方、厚さが1.6mm,幅が50mm,長さが400mm,空孔率が95vol.%のNi製多孔質性担体(商品名:セルメット,住友電気工業株式会社製)を多数用意した。
【0075】
次に、前記のように調製した泥漿状のペーストを、上記各Ni製多孔質性担体の空孔部に均一に充填した後に、減圧雰囲気(1〜100Torr)中で温度120℃で1時間乾燥することにより水分を蒸発せしめて、多孔質性担体に結合剤を介してErNi磁性粒体が付着したシート状蓄冷材を調製した。
【0076】
次に得られた各シート状蓄冷材について、表面に凹凸を有するエンボス加工用ロールを用いて圧延加工を施すことにより、厚さが0.8mmの実施例1に係るシート状の極低温用蓄冷材を調製した。
【0077】
この実施例1に係るシート状の極低温用蓄冷材1は、図2に模式的に示すようにNi製多孔質性担体2の空孔部3に多数の磁性粒体(ErNi合金粉末)4が充填された組織構造を有する。また各磁性粒体4は、結合剤としてのポリビニルアルコールを介して多孔質性担体2と強固に結合している。また、シート状の極低温用蓄冷材1の表面には、エンボス加工用ロールを用いた圧延加工によって、高さ0.05mmのバンプ(図示せず)が形成されている。
【0078】
次に得られた各シート状の極低温用蓄冷材1の端部をスポット溶接して複数のシート状蓄冷材を接合して、幅が50mmで長尺のリボン状の蓄冷材とした。次に、得られたリボン状の蓄冷材を巻回してロール状の極低温用蓄冷材を得た。このロール状の蓄冷材において、隣接するシート状蓄冷材は表面に形成されているバンプ(突起)によって隔離されている。
【0079】
そして、上記のようなロール状の極低温用蓄冷材1を、図1に示すように、内径が25mmで高さが50mmの蓄冷器5に充填した。この蓄冷器5内における磁性粒体4の充填割合は73vol.%であった。この蓄冷器5を3段式パルスチューブ冷凍機の第3段目蓄冷器として使用し、10Hzの運転周波数で運転したところ、10°Kでの冷凍能力として、0.14Wが得られた。
【0080】
比較例1
一方、実施例1において用意したErNi合金を融解し、得られた合金溶湯を遠心噴霧法により分散すると同時に急冷凝固せしめて球状の磁性粒体を調製した。得られた磁性粒体群を篩分して直径が0.15〜0.18mmの範囲の球状磁性粒体を選別した。次に選別した磁性粒体を、図1に示す実施例1で使用した蓄冷器(内径25mm×高さ50mm)5内に充填した。この蓄冷器5内における磁性粒体4の充填割合は62vol.%とした。
【0081】
そして、球状の磁性粒体を充填した蓄冷器5を、実施例1と同様にパルスチューブ冷凍機の第3段目蓄冷器として使用して同一条件で運転したところ、最低到達温度は10°Kまで至らず16°Kであり、十分な冷凍能力が得られなかった。
【0082】
実施例2
図3は実施例2に係る極低温用蓄冷材1aの形状および構造を示す斜視図である。この極低温用蓄冷材1aは、実施例1において調製したシート状蓄冷材の長手方向に間隔をおいてプレスによる折り曲げ加工を実施して複数の凸部6を形成して製造したものである。折り曲げ加工したシート状蓄冷材を、図3に示すように巻回すると、半径方向に隣接するシート状蓄冷材は凸部6によって隔離されるため、シート状蓄冷材の幅方向の通気抵抗は小さくなる。
【0083】
実施例2に係る極低温用蓄冷材1aを実施例1と同様に、図1に示すように蓄冷器5に充填し、パルスチューブ冷凍機の第3段目蓄冷器として使用し同一条件で運転したところ、10°Kでの冷凍能力として0.11Wが得られた。
【0084】
実施例3
実施例1において、厚さが2.0mm、直径25mm、空孔率97%のNi製多孔質性担体にErNi磁性粒体を充填しシート状蓄冷材を調整した。このシート状蓄冷材に対し、機械加工により直径0.2mmの穴を0.5mm間隔で多数空けた。この蓄冷材を実施例1と同様の蓄冷器に充填し、パルスチューブ冷凍機の第3段目蓄冷器として同一条件で運転したところ、10K°での冷凍能力として0.13Wが得られた。
【0085】
上記各実施例に係る極低温用蓄冷材1,1aにおいては、Heガスなどの作動媒質(冷媒)が隣接するシート状蓄冷材の間の抵抗の低い流路を通り、シート状蓄冷材表面で熱交換を行う。そのため、高速サイクル運転を行った場合でも、圧力損失が少なく、熱交換率が高いため、優れた冷凍能率を発揮し得ることが判明した。
【0086】
特に巻回してコイル状に形成するという強加工を施しても、多孔質性担体が自在に変形するため、磁性粒体が割れたり損傷することが少なく、圧力損失が少なくなる形状に加工することが可能になった。
【0087】
また実施例1と比較例とにおいて、実施例1の場合には、圧力損失を増加させることなく蓄冷器に対する磁性粒体の充填割合を高めることができたので、冷凍能力に大きな差異が生じたものと考えられる。
【0088】
なお上記実施例においては、多孔質性担体の空孔部に磁性粒体を充填して複合化し、シート状の極低温用蓄冷材を構成しているが、下記のような方法により担体と磁性粒体とを複合化してシート状の極低温用蓄冷材を形成することもできる。
【0089】
すなわち、Pbなどの軟質金属シート間に磁性粒体を挟み、プレス加工によって一体化してシート状の磁性蓄冷材を形成することも可能である。
【0090】
また、Ni,Cu,Pb,Alなどの金属材で形成した袋状部材の内部に磁性粒体を充填した後に真空引きして封止する、いわゆるキャニングを実施し、キャニングしたシート状の袋を、さらに圧延加工して金属材と磁性粒体とを一体化してシート状の磁性蓄冷材としてもよい。
【0091】
さらに、磁性蓄冷材を粒径が数μm程度となるように微粉砕し、得られた磁性粉末にバインダーと溶剤とを添加してスラリーとし、このスラリーを例えばドクターブレード法やロール成形法などにより成形してシート状の成形体とし、このシート状成形体を加熱してバインダー成分を揮散させてシート状の磁性蓄冷材としてもよい。なお、上記シート状成形体に穿孔を施して通気抵抗が少ないシート状蓄冷材を形成することも可能である。
【0092】
さらにPbなどの低融点金属であり、かつ磁性粒体と反応しない金属を、メカニカルアロイング法などを用いて磁性粒体表面に被覆した後に、被覆した磁性粒体をシート状に成形し、得られた成形体を熱処理して低融点金属を溶解させ、この低融点金属によって磁性粒体を相互に強固に結合させることにより、シート状の磁性蓄冷材を製造することも可能である。
【0093】
次に磁性粒子の粉砕粉を成形して形成したプレート状の極低温用蓄冷材について以下の実施例を参照して説明する。
【0094】
実施例4
高周波溶解によりHoCu2 なる組成の磁性材料の母合金を調製した。この母合金について、ジョークラッシャー,ハンマーミル,ボールミルを順次使用して粉砕し、平均粒径が10μmの磁性合金粉末を調製した。この磁性合金粉末に、合金粉末重量に対してバインダーとして7重量%のアクリル樹脂と、溶剤として70重量%のメタルイソブチルケトン(MIBK)と、可塑剤として2.8重量%のフタル酸ジブチルとを添加し、アルミナボールとともにポットローラーにて24時間混合して均一なスラリーを調製した。
【0095】
次に得られたスラリーを乾燥させた後に、#60の篩を通し、粒径を揃えた。この乾燥粉体を金型に充填し、180kg/cm2 の成形圧力で加圧成形することにより、直径28mm×厚さ1mmのプレート状の蓄冷材を成形した。さらに、図4に示すように、このプレート状蓄冷材に直径100μmの通気孔(スルーホール)6を200μmピッチで機械的に穿孔した。さらに得られた多孔の蓄冷材プレートを窒素ガス雰囲気中で温度700℃で2時間脱脂してプレート状の多孔蓄冷材1bとした。
【0096】
得られた50枚のプレート状の多孔蓄冷材1bを、各プレート間にテフロン製のメッシュ材をスペーサーとして挿入した状態で、図4に示すような、2段膨張式パルスチューブ冷凍機の2段目の蓄冷器5aの軸方向に多段に積層配置して冷凍機を組み立てた。そして、この冷凍機を周波数20Hzで運転した結果、最低到達温度が4.0Kであり、優れた冷凍性能が得られた。
【0097】
比較例2
実施例4において調製した母合金(HoCu2 )を溶融せしめ、得られた合金溶湯を遠心噴霧法(RDP)により、急冷凝固せしめて球状の磁性粒子を調製した。得られた磁性粒子を篩分して直径0.15〜0.18mmの球状磁性粒子を選別した。この磁性粒子を実施例4で用いたパルスチューブ冷凍機の2段目蓄冷器5a内に充填し、実施例4と同一条件で冷凍試験を実施した結果、最低到達温度は13.2Kであった。
【0098】
実施例5
高周波溶解によりEr3 Niなる組成の磁性材料の母合金を調製した。この母合金について、ジョークラッシャー,ハンマーミル,ボールミルを順次使用して粉砕し、平均粒径が8μmの磁性合金粉末を調製した。この磁性合金粉末に、合金粉末重量に対してバインダーとして6重量%のアクリル樹脂と、溶剤として70重量%のメタルイソブチルケトン(MIBK)と、可塑剤として2.5重量%のフタル酸ジブチルとを添加し、アルミナボールとともにポットローラーにて24時間混合して均一なスラリーを調製した。
【0099】
次に得られたスラリーを用い、ドクターブレード法によって成形し、幅60mm×厚さ300μmの長尺のシート状蓄冷材を調製した。
【0100】
次に、このシート状蓄冷材に直径200μmの通気孔(スルーホール)を300μmのピッチで機械的に穿孔した。得られた多孔のシート状蓄冷材を巻回して直径28mm×高さ60mmのロール状の蓄冷材とした状態で窒素雰囲気中において温度700℃で2時間脱脂することにより実施例5に係る極低温用蓄冷材を調製した。
【0101】
このようにロール状に形成した実施例5に係る極低温用蓄冷材を、2段膨張式パルスチューブ冷凍機の2段目蓄冷器に充填して冷凍機を組み立てた。そして、この冷凍機を周波数20Hzで運転した結果、最低到達温度が4.5Kとなり、優れた冷凍性能が得られた。
【0102】
比較例3
実施例5において調製した母合金(Er3 Ni)を溶融せしめ、得られた合金溶湯を遠心噴霧法(RDP)により、急冷凝固せしめて球状の磁性粒子を調製した。得られた磁性粒子を篩分して直径0.15〜0.18mmの球状磁性粒子を選別した。この磁性粒子を実施例5で用いたパルスチューブ冷凍機の2段目蓄冷器内に充填し、実施例5と同一条件で冷凍試験を実施した結果、最低到達温度は17.0Kであった。
【0103】
実施例6
Ndの溶湯をArガスアトマイズ法にて分散急冷は磁性粉体とした。得られた粉体を篩分して粒径100μm以下の粉体を選別した。次に得られたNd粉末に、結合剤としてのポリビニルアルコールを2重量%濃度で溶解した水溶液を、粉末重量に対して20%の割合で添加し均一に混練して泥漿状のペーストを調製した。
【0104】
一方、厚さが1.6mm,幅が50mm,長さが400mm,空孔率が95vol.%のNi製多孔質性担体(商品名:セルメット,住友電気工業株式会社製)を多数用意した。
【0105】
次に、前記のように調製した泥漿状のペーストを、上記各Ni製多孔質性担体の空孔部に均一に充填した後に、減圧雰囲気(1〜100Torr)中で温度120℃で1時間乾燥することにより水分を蒸発せしめて、多孔質性担体に結着剤を介してNd磁性粒体が付着したシート状蓄冷材を調製した。
【0106】
次に得られた各シート状蓄冷材について、表面に凹凸を有するエンボス加工用ロールを用いて圧延加工を施すことにより圧延し、厚さが0.8mmの実施例6に係るシート状の極低温用蓄冷材を調製した。
【0107】
この実施例6に係るシート状の極低温用蓄冷材の表面には、エンボス加工用ロールを用いた圧延加工によって、高さ0.05mmのバンプが形成されている。
【0108】
次に得られた各シート状の極低温用蓄冷材の端部をスポット溶接して複数のシート状蓄冷材を接合して、幅が50mmで長尺のリボン状の蓄冷材とした。次に、得られたリボン状の蓄冷材を巻回してロール状の極低温用蓄冷材を得た。このロール状の蓄冷材において、隣接するシート状蓄冷材は表面に形成されているバンプ(突起)によって隔離されている。
【0109】
そして、上記のようなロール状の極低温用蓄冷材を、内径が25mmで高さが50mmの蓄冷器に充填した。この蓄冷器を2段式パルスチューブ冷凍機の第2段目蓄冷器として使用し、20Hzの運転周波数で運転したところ、最低到達温度が6.3Kとなり、優れた冷凍機性能が得られた。
【0110】
比較例4
一方、実施例6において用意したNdを用いて直径50mm×長さ300mmの丸棒を作成し、得られたNd丸棒を電極とした回転電極法(REP)によりNd溶湯を分散すると同時に急冷凝固せしめて球状の磁性粒体を調製した。得られた磁性粒体群を篩分して直径が0.15〜0.18mmの範囲の球状磁性粒体を選別した。次に選別した磁性粒体を、実施例6で使用した蓄冷器(内径25mm×高さ50mm)内に充填した。
【0111】
そして、球状の磁性粒体を充填した蓄冷器を、実施例6と同様にパルスチューブ冷凍機の第2段目蓄冷器として使用して同一条件で運転したところ、最低到達温度は6.3Kまで至らず18.2Kであり、十分な冷凍能力が得られなかった。
【0112】
次に本発明に係る極低温用熱シールド材について、以下の実施例に基づいて説明する。
【0113】
実施例7
まず、高周波溶解によりHoCu2 母合金を作成した。次に、このHoCu2 母合金を機械的に粉砕して200メッシュ以下の合金粉末とした。次に得られたHoCu2 合金粉末に、結合剤としてのポリビニルアルコールを4重量%濃度で溶解した水溶液を、合金粉末重量の25%の割合で添加し均一に混練して泥漿状のペーストを調製した。
【0114】
一方、厚さが1.6mm,幅が50mm,長さが400mm,空孔率が95vol.%のNi製多孔質性担体(商品名:セルメット,住友電気工業株式会社製)を多数用意した。
【0115】
次に、前記のように調製した泥漿状のペーストを、上記各Ni製多孔質性担体の空孔部に均一に充填してシート状蓄冷材36aを調製した。
【0116】
一方、図5に示すように、厚さが1mmのCu材から成り、直径200mm×高さ300mmの有底円筒状の補強部材(第1層用)37aと、直径230mm×高さ350mmの補強部材(第2層用)37bとを用意した。そして前記シート状蓄冷材36aの結合剤が乾燥する前に、シート状蓄冷剤36aを、各補強部材37a,37bの外表面に接着した。すなわち、各シート状蓄冷材36aとCu製の補強部材37a,37bとの間には、上記ペーストがNi製多孔質性担体からしみ出す程度に過剰に塗布し、ペースト中の結合剤成分であるポリビニルアルコールの接着力によってシート状蓄冷材36aとCu製の補強部材37a,37bとを一体に接合した。さらにシート状蓄冷材36aと補強部材37a,37bとの間における熱伝達性を向上させるために、シート状蓄冷材36aを固定ねじ38によってねじ止めした。しかる後に、減圧雰囲気下で120℃で1時間乾燥することにより、図5に示すように、シート状蓄冷材36aと補強部材37a,37bとが一体に接合した熱シールド材39a,39bを調製した。
【0117】
一方、前記HoCu2 に代えてEr3 Niから成る磁性粒体をNi製多孔質担体の空孔部に充填して、図5に示すようなシート状蓄冷材36bを調製した。さら、図5に示すように、厚さが1mmのCu材から成り、直径260mm×高さ400mmの有底円筒状の補強部材(第3層用)37c、直径290mm×高さ450mmの有底円筒状の補強部材(第4層用)37d、および直径310mm×高さ500mmの有底円筒状の補強部材(第5層用)37eを用意した。
【0118】
そして各補強部材37c,37d,37eの外表面に、Er3 Ni磁性粒体を含むシート状蓄冷材36bを、同様にして一体に接合することにより、それぞれ図5に示すような熱シールド材39c,39d,39eを調製した。
【0119】
そして上記のように調製した第1層用〜第5層用の熱シールド材39a〜39eを、図10に示す低温保冷装置30の熱シールド材として真空容器33内に同心状に配置して超電導磁石31を冷却するための低温保冷装置を組み立てた。なお、第6層用から第10層用の熱シールド材としては、図11に示すような、厚さ1mmのCu材のみから成る従来の熱シールド材32を同心的に配置した。
【0120】
上記のように組み立てた低温保冷装置30において、2段冷却式GM(ギフォード・マクマフォン)冷凍機10によって、合計10層の熱シールド材39a〜39e,32〜32を冷却した後に、熱スイッチ35をOFFにしてGM冷凍機10と熱シールト材との熱接触を切り離した状態で最内層の熱シールド材39aの表面温度を測定した。その結果、GM冷凍機10の冷却作用によって4.0Kまで到達した温度が、GM冷凍機10を切り離した後に、100時間経過した後においても5.0Kであり、優れた熱シールド特性が確認できた。
【0121】
実施例8
高周波溶解によりHoCu合金インゴットを調製し、このインゴットを機械的に切断後、研削加工を施し、縦20mm×横20mm×厚さ3mmのチップ状の磁性蓄冷材を多数調製した。
【0122】
一方、実施例7で使用した第1層用および第2層用の補強部材37a,37bと同一寸法の有底円筒状の補強部材を用意した。そして上記チップ状磁性蓄冷材のうち、上記補強部材の側面に接合するためのチップ状磁性蓄冷材に対しては、補強部材の側面の曲率に合致するように曲面形状に仕上げ加工を施した。一方、補強部材の底面に接合するためのチップ状磁性蓄冷材は平面状のままとした。
【0123】
そして曲面形状に仕上げたチップ状磁性蓄冷材を上記補強部材(Cu製)の側面部に、エチル2−シアノアクリレート系瞬間接着剤(アロンアルファ:東亜合成化学工業製)を介して接着する一方、平面状のチップ状磁性蓄冷材を各補強部材の底面部に同様にして接着した。なお、正方形状のチップ状の磁性蓄冷材によって、各補強部材の円形状の底面を被覆することは不可能であるため、底面外周からはみ出したチップは、外周形状に合せた形状に仕上げ加工した。この結果、チップ状の磁性蓄冷材と補強部材とが一体に接合した熱シールド材(第1層用および第2層用)を調製した。
【0124】
一方、実施例7において用意したCu製の補強部材(第3層用〜第5層用)の側面および底面には、上記と同様にして加工したEr3 Ni製のチップ状磁性蓄冷材を接着することにより、第3層用〜第5層用の熱シールド材をそれぞれ調製した。
【0125】
そして上記のように調製した第1層用〜第5層用の熱シールド材を、図10に示す低温保冷装置30の熱シールド材として真空容器33内に同心状に配置して超電導磁石31を冷却するための低温保冷装置を組み立てた。なお、第6層用から第10層用の熱シールド材としては、図11に示すような、厚さ1mmのCu材のみから成る従来の熱シールド材32を同心的に配置した。
【0126】
上記のように組み立てた低温保冷装置30において、2段冷却式GM(ギフォード・マクマフォン)冷凍機10によって、合計10層の熱シールド材を冷却した後に、熱スイッチ35をOFFにしてGM冷凍機10と熱シールト材との熱接触を切り離した状態で最内層の熱シールド材の表面温度を測定した。その結果、GM冷凍機10の冷却作用によって4.0Kまで到達した温度が、GM冷凍機10を切り離した後に、100時間経過した後においても6.7Kであり、優れた熱シールド特性が確認できた。
【0127】
実施例9
Nd金属塊を不活性ガス雰囲気中において熱間圧延して、厚さ3mmの板状の磁性蓄冷材とした。一方、実施例7において調製した第1層用〜第5層用のCu製補強部材の外表面に、エポキシ接着剤(スミカダイン:住友化学工業株式会社製)を用いて、上記板状の磁性蓄冷材を接着した。さらに各Nd製磁性蓄冷材とCu製補強部材との間の熱伝達性を向上させるために、図5に示す方式と同様にして固定ねじ38によって両部材をねじ止めした。
【0128】
そして上記のように調製した第1層用〜第5層用の熱シールド材を、図10に示す低温保冷装置30の熱シールド材として真空容器33内に同心状に配置して超電導磁石31を冷却するための低温保冷装置を組み立てた。なお、第6層用から第10層用の熱シールド材としては、図11に示すような、厚さ1mmのCu材のみから成る従来の熱シールド材32を同心的に配置した。
【0129】
上記のように組み立てた低温保冷装置30において、2段冷却式GM(ギフォード・マクマフォン)冷凍機10によって、合計10層の熱シールド材を冷却した後に、熱スイッチ35をOFFにしてGM冷凍機10と熱シールト材との熱接触を切り離した状態で最内層の熱シールド材の表面温度を測定した。その結果、GM冷凍機10の冷却作用によって4.0Kまで到達した温度が、GM冷凍機10を切り離した後に、100時間経過した後においても8.2Kであり、優れた熱シールド特性が確認できた。
【0130】
比較例5
第1層〜第10層までの全ての熱シールド材を、図11に示すように厚さ1mmのCu材のみから成る従来の熱シールド材で構成した点以外は実施例7と同様にして構成することにより、比較例5の低温保冷装置を組み立てた。
【0131】
上記のように組み立てた低温保冷装置30において、2段冷却式GM(ギフォード・マクマフォン)冷凍機10によって、合計10層の熱シールド材を冷却した後に、熱スイッチ35をOFFにしてGM冷凍機10と熱シールド材との熱接触を切り離した状態で最内層の熱シールド材の表面温度を測定した。その結果、GM冷凍機10の冷却作用によって4.0Kまで到達した温度が、GM冷凍機10を切り離した後に、100時間経過した後において、22Kと急激に上昇し、熱シールド効果が少ないことが再確認できた。
【0132】
以上の実施例においてはCu製の補強部材の外表面に、シート状またはチップ状の磁性蓄冷材を一体に接合した熱シールド材を示しているが、磁性蓄冷材は補強部材の外側または内側のどちらの側に接合しても同等な熱シールド特性を発揮させることが可能である。
【0133】
また、図6に示すように、補強部材37の両面に磁性蓄冷材40,40を接合することにより、より蓄冷効果が大きく熱シールド性に優れた熱シールド材41が得られる。さらに、図7に示すように、補強部材42を二重構造とし、その間隙に蓄冷材粉末43を充填した熱シールド材44とすることも可能である。また図8に示すようにパイプ状の補強部材45の内部に蓄冷材粉末43を充填した熱シールド材46を形成してもよい。この場合、必要に応じて結合剤を蓄冷材粉末43と混合してもよい。
【0134】
上記実施例に係る熱シールド材によれば、任意の形状に加工することが容易であり、被冷却物を長時間に亘って低温度に維持することが可能であり、特に超電導線,超電導素子,赤外線センサーなど、極低温域で動作する機器の温度安定性を大幅に向上させることができる。
【0135】
【発明の効果】
以上説明の通り本発明に係る極低温用蓄冷材によれば、通気抵抗が少なく、加工性が良好な多孔質性担体の空孔部に磁性粒体を充填して形成されており、脆性が高い磁性粒体は変形が容易な多孔質性担体に担持される構造を有する。したがって、磁性粒体の割れや損傷を発生することなく圧力損失が小さくなる形状に加工することが極めて容易である。そのため、スターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機などのように高速サイクル運転を行う冷凍機用の蓄冷材として使用した場合にも、圧力損失が小さく熱交換効率が高い運転が可能となり、冷凍能力が高い冷凍機が実現できる。
【0136】
また、本発明に係る熱シールド材によれば、任意の形状に加工することが容易であり、被冷却物を長時間に亘って低温度に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る極低温用蓄冷材を充填した蓄冷器を破断して示す斜視図。
【図2】本発明に係る極低温用蓄冷材の粒子構造を示す図であり、図1におけるII部拡大図。
【図3】本発明に係る極低温用蓄冷材の他の実施例を示す斜視図。
【図4】本発明の他の実施例に係る極低温用蓄冷材を充填した蓄冷器を破断して示す斜視図。
【図5】本発明に係る熱シールド材の一実施例を示す断面図。
【図6】本発明に係る熱シールド材の他の実施例を示す斜視断面図。
【図7】本発明に係る熱シールド材の他の実施例を示す斜視断面図。
【図8】本発明に係る熱シールド材の他の実施例を示す斜視図。
【図9】GM冷凍機の要部構成を示す断面図。
【図10】GM冷凍機および熱シールド材を用いた低温保冷装置の構成例を示す断面図。
【図11】図10におけるXI部の拡大断面図。
【符号の説明】
1,1a,1b 極低温用蓄冷材
2 多孔質性担体
3 空孔部
4 磁性粒体(HoCu2 合金粉末)
5,5a 蓄冷器(第2蓄冷器)
6 通気孔
10 GM冷凍機
11 第1シリンダ
12 第2シリンダ
13 真空容器
14 第1蓄冷器
15 第2蓄冷器
16,17 シールリング
18 第1蓄冷材
19 第2蓄冷材(極低温用蓄冷材)
20 第1膨張室
21 第2膨張室
22 第1冷却ステージ
23 第2冷却ステージ
24 コンプレッサ
30 低温保冷装置
31 超電導磁石
32 熱シールド材
33 真空容器
34 支持材
35 熱スイッチ
36a,36b シート状蓄冷材
37,37a,37b,37c,37d,37e 補強部材
38 固定ねじ
39a,39b,39c,39d,39e 熱シールド材
40 磁性蓄冷材
41,44,46 熱シールド材
42,45 補強部材
43 蓄冷材粉末

Claims (10)

  1. シート状多孔質金属またはメッシュ状金属から成り、空孔率が90vol%以上である多孔質担体の空孔部に、希土類元素を含有し粒径が5mm以下の磁性粒体を、20乃至90%の割合で充填して成り、上記磁性粒体が希土類元素単体もしくはEr Ni,ErNi,ErNi ,ErRhおよびHoCu から選ばれる少なくとも1種の金属間化合物であることを特徴とする極低温用蓄冷材。
  2. 多孔質性担体が発泡金属であることを特徴とする請求項1記載の極低温用蓄冷材。
  3. 多孔質性担体をシート状に形成するとともに、多孔質性担体の少なくとも一方の表面に複数の凸部を形成したことを特徴とする請求項1記載の極低温用蓄冷材。
  4. 請求項1ないしのいずれかに記載の極低温用蓄冷材を充填した蓄冷器を具備することを特徴とする冷凍機。
  5. 極低温用蓄冷材がロール状に巻回された状態で蓄冷器内に充填されていることを特徴とする請求項記載の冷凍機。
  6. 極低温用蓄冷材が多数の通気孔を有するプレート状の蓄冷材要素から成り、複数の蓄冷材要素が蓄冷器の軸方向に多段に積層された状態で充填されていることを特徴とする請求項記載の冷凍機。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の極低温用蓄冷材を、この極低温用蓄冷材とは異なる材料から成る補強部材に一体に接合したことを特徴とする極低温用熱シールド材。
  8. 補強部材がCu,Al,Fe,Niから選択される少なくとも1種の金属材料またはその金属材料を主成分とする合金から成ることを特徴とする請求項記載の極低温用熱シールド材。
  9. 極低温用蓄冷材は、磁性粒体を結合剤とともに多孔質性担体の空孔部に充填して形成されたシート状の蓄冷材であることを特徴とする請求項記載の極低温用熱シールド材。
  10. 極低温用蓄冷材と補強部材とを記結合剤によって接合したことを特徴とする請求項記載の極低温用熱シールド材。
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