JP4308586B2 - エアバッグ装置、エアバッグ装置付オートバイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オートバイに搭載されるエアバッグ装置の構築技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オートバイにエアバッグ装置を装着することによって乗員の保護を図る種々の技術が知られている。例えば、自動二輪車において、前方衝突を起こした際に、車体フレームに取り付けられたケース内に収容されたエアバッグが膨張ガスによって展開膨張し、これにより乗員を拘束するという技術が公知である(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、エアバッグの保護エリアを広く確保する可能性が提示されているが、オートバイのように四方が開放された構成の車体にエアバッグ装置を搭載する場合には、乗員をエアバッグによって確実に拘束するのに有効な更なる技術を構築する要請が高い。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−137777号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、オートバイにおいて、事故の際に乗員の保護徹底に資するエアバッグ構成技術、およびその関連技術を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、各種のオートバイに搭載されるエアバッグ装置の構成に適用し得る。なお、本明細書において、「オートバイ」は、鞍乗車両、すなわち乗員がシートに跨って着座する形態の車両を広く含むものとし、例えば乗員シートの前方に燃料タンクが併設されたタイプの自動二輪車、乗員シートとハンドル支持用ヘッドパイプとの間に空間部が形成されたスクータータイプの自動二輪車のいずれも包含する。さらに自動二輪車以外に、三つ以上の走行輪を有しつつ乗員が鞍乗して着座する車両(例えばピザ宅配等に用いられる三輪式バイク、悪路走破用の三輪ないし四輪バギー式バイク)、さらにはスノーモービル等のように橇ないし無限軌道帯によって走行しつつ乗員が鞍乗して着座する車両についても上記「オートバイ」に広く包含されるものとする。
【0006】
(請求項1に記載の発明)
請求項1に記載の発明では、オートバイに装着されるエアバッグ装置は、エアバッグおよび収容体を備えている。
本発明のエアバッグは、オートバイの前方衝突の際、その内部に膨張ガスが供給されるようになっている。収容体は、エアバッグを収容可能な構成を有する。典型的には、上記エアバッグおよび該エアバッグを膨張させるための手段、例えばインフレータ等を収容体としてのリテーナーに収容し、インフレータが作動することでエアバッグの内部に膨張ガスが供給される構成を用いる。これにより、エアバッグは乗員の前方側に形成される乗員保護領域に向かって突出しつつ展開膨張することとなる。
【0007】
本発明のエアバッグは、収容体の内部に収容される第1構成部と、収容体の外部において車体のハンドル部を前後方向に跨ぐように配置される第2構成部とを有し、第2構成部が車体側部材に取り付け可能に構成されている。
【0008】
本発明のこのような構成によれば、エアバッグの一部を収容体の外部に配置することでエアバッグの突出に関する指向性を高めることが可能となり、エアバッグの突出方向の制御に効果的である。すなわち、エアバッグ全体が収容体に収容された従来の構成では、エアバッグを適正な突出方向へ突出させるべくエアバッグの折り畳み形態等を工夫する必要があるが、エアバッグのうち収容体の外部に配置した配置部分を乗員保護領域に対向した位置に配置することで、乗員保護領域へ向けてエアバッグを安定かつ確実に突出させることが可能となる。
【0009】
また、本発明のようにエアバッグの一部を収容体の外部に配置することにより、エアバッグ全体の展開膨張が完了するまでの時間を短縮することができ、乗員の拘束性を向上させることが可能となる。また、このような構成は、収容体の小型化を可能とする。すなわち、特に乗員の四方が開放されたオートバイの車体では、より大きなエアバッグを用いて乗員を確実に拘束したいという要請から収容体が大型化するのが一般的であるが、本発明のようにエアバッグの一部を収容体の外部に配置することで、エアバッグによる乗員の拘束性を確保したうえで収容体を小型化することができる。これにより、エアバッグ装置を装着したオートバイの外観上の見栄えを向上させることが可能となる。
【0010】
特に、本発明では、エアバッグにおいて収容体の外部に配置される配置部分が、車体のハンドル部を前後方向に跨ぐように構成されている。典型的には、車体の左右方向に延在するハンドルの上部を車体の後方側から前方側へ向けて跨ぐようにエアバッグを配置する態様や、当該ハンドルの上部を車体の前方側から後方側へ向けて跨ぐようにエアバッグを配置する態様がある。なお、本発明における「ハンドル部」とは、ハンドル自体はもちろん、ハンドルに取り付けられたブラケット等の各種の部材、またこれら各種の部材とハンドルとをあわせた構成のものをいう。
【0011】
このような構成によれば、ハンドル部が、エアバッグを挟んで乗員保護領域の反対側に配置されることとなるため、展開膨張時のエアバッグがハンドル部に引っ掛かりにくくなるようにすることができる。また、エアバッグがハンドル部を跨ぐ配置態様は、展開膨張するエアバッグをハンドル部に確実に係合させるのに有効であり、これにより乗員からエアバッグに作用する荷重がハンドル部によって確実に受けられることとなる。従って、事故の際に乗員の保護徹底を図ることが可能となる。
【0012】
なお、エアバッグのうち収容体の外部に配置された配置部分は、車体側部材であってこの配置部分の乗員保護領域への突出を許容する位置に取り付けられるのが好ましい。この取り付け態様の典型的な例としては、エアバッグのうち収容体の外部に配置された配置部分を乗員保護領域に対向する(臨む)車体側部材に取り付ける態様がある。このような取り付け態様によれば、エアバッグが車体側部材の突起部分等に引っ掛かることなくスムーズ(円滑)に展開膨張することが可能となる。従って、事故の際の乗員の保護徹底を図ることが可能となる。
【0013】
本発明でいう「車体側部材」とは、車体に直接的ないし間接的に取り付けられた各種の部材を広く含む主旨である。車体側部材の典型的な例としては、車体に取り付けられたハンドル、パネル等がある。例えば、エアバッグの一部または全部をハンドルに直に取り付ける態様や、ブラケット等を介在させて間接的にハンドルに取り付ける態様等がある。また、エアバッグ装置がオートバイの車体に装着されてはじめて車体側部材となるもの、例えば、本来エアバッグ装置の一部を構成する構成部分であって、このエアバッグ装置がオートバイの車体に取り付けられることで車体の一部を構成するものも本発明でいう「車体側部材」の範疇に含まれる。
【0014】
また、本発明でいう「取り付け可能」とは、結果的に車体側部材に取り付けられた態様が形成されればよく、エアバッグのうち収容体の外部に配置された配置部分が、エアバッグ装置の装着前、装着時、あるいは装着後に車体側部材に取り付けられる態様を広く含むものであり、車体側部材に取り付けられるタイミングは問わない。
【0015】
オートバイでは、乗員の前方側に形成される乗員保護領域にハンドル部が対向する(臨む)構成が一般的であり、このような構成において、エアバッグのうち収容体の外部に配置された配置部分を、乗員保護領域に対向したハンドル部に配置することで、乗員保護領域へ向けてエアバッグをより安定かつ確実に突出させることが可能となる。また、本発明のこのような構成は、収容体の外部に配置された配置部分の取り付け位置を定め易く組み付け性に優れている。
【0016】
とりわけ、この配置部分を、リベット類、ボルト類、クリップ類の取付け手段によってハンドル部に取り付けることで、展開膨張が完了したエアバッグが乗員を拘束する際にそのエアバッグの位置がずれるのを取付け手段によって防止することが可能となる。また、剛性を有するハンドル部を展開膨張が完了したエアバッグの受圧部として作用させることで、乗員からエアバッグに作用する荷重をハンドル部によって確実に受けることが可能となる。一般にオートバイのハンドル部は、展開膨張時のエアバッグが引っ掛かり易い位置に配置される場合があるが、収容体の外部に配置された配置部分をこのハンドル部自体に取り付ける構成は、展開膨張時のエアバッグがハンドル部に引っ掛かりにくくなるようにすることが可能となる。また、ハンドル部は一般に長尺状に構成されるが、この長尺状のハンドル部の長手方向に沿った広い範囲にわたって収容体の外部に配置された配置部分を取り付ける構成とすることで、エアバッグの突出に関する指向性をより高めることが可能となり、エアバッグの突出方向の制御に効果的である。
【0017】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のエアバッグ装置の構成において、収容体の外部に配置されるエアバッグの第2構成部が、ハンドル部を構成するハンドル中央部を跨ぐように配置されている。なお、ハンドル中央部は、車体に近接する部位であり、このハンドル中央部が車体に被着される。乗員操作用のハンドル操作部は、このハンドル中央部の左右上方へ突出する。このような構成によれば、ハンドル中央部とハンドル操作部とによって凹み空間が形成され、この凹み空間がエアバッグの展開膨張領域に使用されることとなるため合理的である。
【0018】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のエアバッグ装置の構成において、更に、収容体の外部に配置される第2構成部が被覆部材によって被覆された構成になっている。この被覆部材としては、例えばエアバッグの周囲を覆う布製や樹脂製のものを好適に用いる。このような被覆部材は、折り畳まれたエアバッグの折り畳み状態を維持する効果や、エアバッグを外部から保護する効果等を有する。エアバッグが展開膨張する際には、この被覆部材が破断ないし押し退けられることによってエアバッグの展開膨張を許容する。このような構成によれば、被覆部材によってエアバッグの展開膨張が妨げられることがない。
【0019】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ装置が装着されたオートバイとして特定される。このオートバイでは、エアバッグの第2構成部が、収容体の外部において車体のハンドル部を前後方向に跨ぐように配置され、この第2構成部が車体側部材に取り付けられた構成になっている。これにより、エアバッグが車体側部材の突起部分等に引っ掛かることなくスムーズ(円滑)に展開膨張することが可能であり、事故の際の乗員の保護徹底を図ることが可能なオートバイが提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。ここで、図1は、本発明の一実施の形態に係るスクータータイプの自動二輪車100を乗員側から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。図2は、図1中のエアバッグ装置120の構成を示す図である。図3は、図2の部分拡大図である。なお、本実施の形態の自動二輪車100は、本発明における「オートバイ」の一例に相当する。
【0021】
図1に示すように、自動二輪車100は、エンジンやメインフレーム等により構成される車体構成部101、乗員が跨って着座可能なシート103、ハンドル104、前輪および後輪(図示省略)等を主体とするスクータとして構成される。
【0022】
自動二輪車100の車体構成部101上方であって、乗員の前方側領域は、自動二輪車100が前方衝突を起こした際の乗員保護領域130として規定される。本実施の形態において「前方衝突」には、自動二輪車100が前方側の衝突対象物(便宜上得に図示しない)に衝突する形態を広く包含する。また、本実施の形態における「乗員保護領域130」は、前方衝突時の運動エネルギーによって乗員が自動二輪車100前方に向かって移動しようとする場合に、乗員の前方移動方向10上に延在し、自動二輪車100の前方に投げ飛ばされようとする乗員を拘束し保護するための空間として定義される。
【0023】
車体構成部101のうち車体の前方側のフロント部102に、ハンドル104、エアバッグ装置120、および各種のメーター類、スイッチ類などを有するパネル105等が配置されている。特に、エアバッグ装置120は、ハンドル104に取り付けられており、上記の乗員保護領域130に臨むように配置されている。すなわち、本実施の形態では、エアバッグ装置120は、後述するエアバッグ122の突出(展開膨張)方向が、乗員の前方側へ向かうように配置されている。
【0024】
図2に示すように、エアバッグ装置120は、エアバッグ122、このエアバッグ122を収容するリテーナー128、エアバッグ122がリテーナー128から展開して膨張するよう膨張ガスを供給するインフレータ129、取付け具125、カバー体126等を主体として構成される。このリテーナー128が本発明における「収容体」に対応している。
【0025】
なお、本実施の形態のエアバッグ122は、リテーナー128の内部に収容される第1構成部123と、リテーナー128の外部に配置される第2構成部124とを有する。第1構成部123は、例えばロール状に折り畳まれてリテーナー128の内部に収容されている。
ここで、リテーナー128の外部における第2構成部124の配置や取り付けについては種々の態様がある。本実施の形態では、第2構成部124の配置態様や取り付け態様の異なる第1〜第3実施の形態について説明する。
【0026】
(第1実施の形態)
第1実施の形態では、エアバッグ122の第2構成部124は、リテーナー128の外部において取付け具125等によって長尺状のハンドル104の長手方向に沿って取り付けられている。本実施の形態では、エアバッグ122の一部である第2構成部124がリテーナー128の外部に配置され、この第2構成部124が車体側部材であるハンドル104に取り付けられるようになっている。すなわち、ハンドル104に取り付けられるこの第2構成部124が、本発明でいう「収容体の外部に配置される配置部分」に対応しており、ハンドル104が本発明における「車体側部材」および「ハンドル部」に対応している。なお、この第2構成部124は、エアバッグ122全体がリテーナー128に収容された状態で組み付けられた状態において、エアバッグ122の一部をリテーナー128から展開して(引き出して)配置されてもよいし、あるいは予めリテーナー128の外部に配置されて組み付けられてもよい。
【0027】
また、第2構成部124は、取付け具125によってハンドル104の上面部分に取り付けられる。この取付け具125としては、リベット類、ボルト類、クリップ類等を必要に応じて適宜用いることができる。カバー体126は、第2構成部124が取り付けられたハンドル104の形状に対応した構成を有し、第2構成部124をハンドル104ごと覆う構成になっている。このカバー体126にはテアライン126aが形成されており、第2構成部124の展開膨張時にこのテアライン126aに沿ってカバー体126が開裂することで第2構成部124の展開膨張が許容される構成になっている。すなわち、このカバー体126は、第2構成部124を外部から保護する一方、この第2構成部124の展開膨張を許容する。
【0028】
ここで、ハンドル104に沿って取り付けられる第2構成部124は、図3に示すように、予め所定の形態、例えば蛇腹状に折り畳まれたのち、その周囲が保護布127によって被覆される構成であるのが好ましい。この保護布127としては、折り畳まれた第2構成部124の状態を維持可能であり、しかも第2構成部124の展開膨張時にはその展開膨張を許容する構成のものを用いる。例えば、第2構成部124の展開膨張を妨げない破断し易い素材、例えば薄手の布を用いて保護布127を構成することができる。このような構成によれば、第2構成部124の折り畳みが崩れるのを防止し、且つ第2構成部124の円滑な展開膨張を可能とする。この保護布127および前記のカバー体126が、本発明における「被覆部材」に相当する。
【0029】
次に、上記のように構成され製造される本実施形態の自動二輪車100およびエアバッグ装置120の作用について、図1〜図3に加え図4〜図8等を参照しながら説明する。ここで図4は、エアバッグ装置120の展開初期の状態を模式的に示す図である。図5は、図4の部分断面図である。図6は、エアバッグ装置120の展開過程の状態を模式的に示す図である。図7は、図6の部分断面図である。図8は、エアバッグ装置120の展開完了時の状態を模式的に示す図である。
【0030】
乗員が乗車する自動二輪車100が、その進行方向側にて衝突事故を起こした場合、図1に示すように乗員は自動二輪車100の前方(図中の矢印10方向)に向かって移動し(投げ飛ばされ)ようとする。本実施の形態では、前方衝突の検知によりエアバッグ装置120が作動し、乗員保護領域130に向かってエアバッグ装置120からエアバッグ122の突出(展開)が開始される。膨張ガス供給手段としてのインフレータ129からエアバッグ122内へ膨張ガスの供給が開始されることでエアバッグ122の展開膨張が開始される。ここで、エアバッグ装置120の展開初期の状態が、例えば図4および図5に示される。
【0031】
図4に示すように、エアバッグ装置120の展開初期では、エアバッグ122のうち第1構成部123は、リテーナー128から飛び出しつつ展開し膨張する。このようにエアバッグ122が展開しつつ膨張する態様が、本発明における「展開膨張」に相当する。この状態では、ハンドル104に沿って配置された第2構成部124は、例えば図5に示すように、保護布127によって被覆されカバー体126内に収容されたままの状態が維持される。
【0032】
更に、エアバッグ122への膨張ガスの供給が継続され、エアバッグ122の展開膨張が進行した状態が、例えば図6および図7に示される。
図6に示すように、エアバッグ装置120の展開過程では、エアバッグ122のうち第1構成部123の展開膨張が更に進行し膨張領域が拡張される一方、第2構成部124の展開膨張が開始される。この状態では、ハンドル104に取り付けられた第2構成部124は、例えば図7に示すように膨張する。このとき、保護布127は第2構成部124の膨張力によって破断され、またカバー体126は第2構成部124の膨張力によって開裂して、第2構成部124が乗員保護領域130へ向けて突出していく。
【0033】
而して、エアバッグ装置120の展開が完了すると、例えば図8に示すように、第1構成部123および第2構成部124によるエアバッグ122全体が乗員保護領域130において展開膨張する。エアバッグ122が完全に展開膨張したこの状態では、膨張したエアバッグ122が乗員保護領域130に充溢し、衝突時の運動エネルギーによって車体前方(図1中の矢印10方向)へ移動しようとする乗員を当該乗員保護領域130において確実に保持拘束し、自動二輪車100前方へ投げ飛ばされるのを未然に防止する。
【0034】
以上のように、本実施の形態のエアバッグ装置120によれば、第2構成部124をハンドル104に取り付けることで、ハンドル104等の突起部分に引っ掛かることなくスムーズ(円滑)に展開膨張することが可能なエアバッグ122を提供することができる。一般にオートバイのハンドルは、展開膨張時のエアバッグが引っ掛かり易い位置に配置される場合があるが、ハンドル104自体に第2構成部124を取り付ける本実施の形態は、展開膨張時のエアバッグ122がハンドル104に引っ掛かりにくくなるようにするのに特に有効である。従って、事故の際に乗員の保護徹底を図ることが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態のエアバッグ装置120のこのような構成は、特にエアバッグ122の第2構成部124の突出に関する指向性を高めることを可能とし、エアバッグ122の突出方向の制御に効果的である。すなわち、エアバッグ全体が収容体(リテーナー)に収容された従来の構成では、エアバッグを適正な突出方向へ突出させるべくエアバッグの折り畳み形態等を工夫する必要があるが、本実施の形態によれば、乗員保護領域130へ向けてエアバッグ122を安定かつ確実に突出させることが可能となる。特に、長尺状のハンドル104の長手方向に沿った広い範囲にわたって第2構成部124を取り付ける構成としたため、この効果が更に高まることとなる。
【0036】
また、本実施の形態では、エアバッグ122の第2構成部124をリテーナー128の外部に配置することで、エアバッグ122全体の展開膨張が完了するまでの時間を短縮することができ、乗員の拘束性を向上させることが可能となる。また、このような構成は、リテーナー128の小型化を可能とする。特に自動二輪車100のように乗員の四方が開放された車体では、より大きなエアバッグを用いて乗員を確実に拘束したいという要請から収容体が大型化するのが一般的であるが、本実施の形態によればエアバッグ122による乗員の拘束性を確保したうえで、収容体としてのリテーナー128を小型化することができる。これにより、エアバッグ装置120を装着した自動二輪車100の外観上の見栄えを向上させるのに有効である。すなわち、特に自動二輪車100のように乗員の四方が開放された車体では、大きなエアバッグを使用する必要があり収容体が大型化するのが一般的であるが、本実施の形態によればこのような問題を解消することが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態では、第2構成部124を取付け具125によってハンドル104に取り付ける構成としたため、展開膨張が完了したエアバッグ122が乗員を拘束する際にその位置がずれにくく、しかも剛性を有するハンドル104がこのエアバッグ122の受圧部として作用するため、乗員からエアバッグ122に作用する荷重をハンドル104によって確実に受けることができる。
【0038】
(第2実施の形態)
上記第1実施の形態では、エアバッグ122の第2構成部124が、リテーナー128の外部においてハンドル104の長手方向に沿って取り付けられる場合について記載したが、ハンドル104に対する配置態様は種々変更可能である。例えば、図9に示す実施の形態(第2実施の形態)のエアバッグ装置220を用いることもできる。
図9に示すエアバッグ装置220では、エアバッグ122の第2構成部124がハンドル104の車体前方側の部分に配置され取付けられるようになっている。第2構成部124のこのような配置態様によれば、展開膨張時のエアバッグ122が引っ掛かる障害物が少なく、エアバッグ122の展開膨張がより円滑に行われることとなる。なお、図9において図2に示す構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付すものとし、当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0039】
(第3実施の形態)
また、上記第1実施の形態および第2実施の形態では、エアバッグ122の第2構成部124をハンドル104に配置し取り付ける場合について記載したが、車体側部材であってハンドル104以外の部材に第2構成部124を取り付けるように構成してもよい。例えば、車体側部材のひとつであるパネル105、ないしその周辺部に第2構成部124を取り付けてもよい。
【0040】
ここで、エアバッグ122の第2構成部124をハンドル104以外の車体側部材に取り付ける態様を図10〜図12を参照しつつ説明する。ここで、図10および図11はエアバッグ装置320の構成を示すものであり、図12はエアバッグ装置420の構成を示すものである。なお、これらの図において図1および図2に示す構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付すものとし、当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0041】
図10および図11に示すエバッグ装置320では、ハンドル104に対し車体後方側にリテーナー128が配置されている。そして、エアバッグ122の第2構成部124は、左右方向に延在するハンドル104のハンドル中央部104aを前後方向に跨ぐように配置されている。ハンドル中央部104aは、車体に近接する部位であり、ハンドル104はこのハンドル中央部104aにおいて車体に被着されている。このハンドル中央部104aの左右上方へ、乗員操作用のハンドル操作部104bが突出しており、ハンドル中央部104aとハンドル操作部104bとによって凹み形状の空間104cが形成される。ハンドル中央部104aを跨ぐエアバッグ122の第2構成部124は、予め所定の形態に折り畳まれた状態でこの空間104cに配置されることとなる。なお、ハンドル中央部104aが本発明の「ハンドル中央部」に対応しており、ハンドル操作部104bが本発明の「ハンドル操作部」に対応している。
本実施の形態では、リテーナー128から引き出されたエアバッグ122の第2構成部124は、ハンドル中央部104aの上方を車体後方側から車体前方側に向けて跨ぎ、ボルト、リベット、クリップ等の取付具125によって、車体側部材のひとつであるパネル105の前部に取り付けられている。その他、車体のカウルにエアバッグ122の第2構成部124が取り付けられるような構成を用いることもできる。
【0042】
また、図12に示すエアバッグ装置420では、ハンドル104に対し車体前方側にリテーナー128が配置されている。そして、エアバッグ122の第2構成部124は、左右方向に延在するハンドル104のハンドル中央部104aを前後方向に跨ぐように配置されている。ハンドル中央部104aを跨ぐエアバッグ122の第2構成部124は、予め所定の形態に折り畳まれた状態で、ハンドル中央部104aとハンドル操作部104bとによって形成される空間104cに配置されることとなる。
本実施の形態では、リテーナー128から引き出されたエアバッグ122の第2構成部124は、ハンドル中央部104aの上方を車体前方側から車体後方側に向けて跨ぎ、取付具125によってパネル105の後部に取り付けられている。
【0043】
これらエアバッグ装置320,420を用いた場合も、エアバッグ装置120を用いた場合と同様の作用効果を奏し、特には、展開膨張時のエアバッグ122がハンドル104に引っ掛かりにくくなるようにすることができる。これは、ハンドル104が、エアバッグ122の第2構成部124を挟んで乗員保護領域130の反対側に配置されるからである。また、エアバッグ122の第2構成部124がハンドル中央部104aを跨ぐ配置態様は、展開膨張が完了したエアバッグ122をハンドル104に確実に係合させるのに有効であり、これにより乗員からエアバッグ122に作用する荷重がハンドル104によって確実に受けられることとなる。従って、自動二輪車100にエアバッグ装置320やエアバッグ装置420を装着することによって、事故の際に乗員の保護徹底を図ることが可能となる。
また、エアバッグ装置320,420の構成によれば、ハンドル104のハンドル中央部104aとハンドル操作部104bとによって形成される空間104cが、エアバッグ122が展開膨張する領域として使用されることとなるため合理的である。
【0044】
なお、エアバッグ装置320,420において、エアバッグ122の第2構成部124を、必要に応じてエアバッグ装置120のカバー体126や保護布127と同様の部材によって被覆する構成とすることもできる。このような構成によれば、カバー体126と同様の部材を用いることにより、第2構成部124を外部から保護することが可能となる。また、保護布127と同様の部材を用いることにより、第2構成部124の折り畳みが崩れるのを防止し、且つ第2構成部124の円滑な展開膨張を可能とする。
【0045】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0046】
上記実施の形態では、第2構成部124の周囲を保護布127によって被覆し、更に、この第2構成部124をハンドル104ごとカバー体126によって覆う場合について記載したが、保護布127やカバー体126は省略することもできる。また、第2構成部124の一部が、保護布127やカバー体126によって覆われる構成であってもよい。また、カバー体126および保護布127を一つの部材によって構成することもできる。
【0047】
また、上記実施の形態では、エアバッグ122の一部を構成する第2構成部124が予めリテーナー128の外部に配置される場合について記載したが、この第2構成部124および第1構成部123を含めたエアバッグ122全体を、予めリテーナー128の外部に配置する構成としてもよい。この場合、リテーナー128をインフレータ129に対応した大きさに抑えることができ、リテーナー128の更なる小型化が可能となる。
【0048】
また、上記のエアバッグ装置120,220,320,420の構成のうちの複数を適宜組み合わせた構成を用いることもできる。例えば、上記のエアバッグ装置320および420では、リテーナー128の外部に配置されるエアバッグ122の第2構成部124がハンドル104を前後方向に跨いでパネル105に取付けられる場合について記載したが、ハンドル104を跨いだエアバッグ122の第2構成部124が、ハンドル104ないしハンドル104に接続されたブラケット等の部材に取付けられるような構成を用いることもできる。
【0049】
また、上記実施の形態ではスクータータイプの自動二輪車100について記載したが、他の種類のオートバイに本発明を適用することもできる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、オートバイにおいて、事故の際に乗員の保護徹底に資するエアバッグ構成技術、およびその関連技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るスクータータイプの自動二輪車100を乗員側から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。
【図2】 図1中のエアバッグ装置120の構成を示す図である。
【図3】 図2の部分拡大図である。
【図4】 エアバッグ装置120の展開初期の状態を模式的に示す図である。
【図5】 図4の部分断面図である。
【図6】 エアバッグ装置120の展開過程の状態を模式的に示す図である。
【図7】 図6の部分断面図である。
【図8】 エアバッグ装置120の展開完了時の状態を模式的に示す図である。
【図9】 別の実施の形態のエアバッグ装置220の構成を示す側面図である。
【図10】 別の実施の形態のエアバッグ装置320の構成を示す側面図である。
【図11】 別の実施の形態のエアバッグ装置320の構成を示す斜視図である。
【図12】 別の実施の形態のエアバッグ装置420の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
100…自動二輪車
101…車体構成部
102…フロント部
103…シート
104…ハンドル
104a…ハンドル中央部
104b…ハンドル操作部
104c…空間
105…パネル
120,220,320,420…エアバッグ装置
122…エアバッグ
123…第1構成部
124…第2構成部
125…取付け具
126…カバー体
127…保護布
128…リテーナー
129…インフレータ
130…乗員保護領域
Claims (4)
- オートバイに装着されるエアバッグ装置であって、
前方衝突の際、乗員の前方側に形成される乗員保護領域に展開膨張するエアバッグと、このエアバッグを収容可能な収容体とを有し、
前記エアバッグは、前記収容体の内部に収容される第1構成部と、前記収容体の外部において車体のハンドル部を前後方向に跨ぐように配置される第2構成部とを有し、前記第2構成部が車体側部材に取り付け可能に構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。 - 請求項1に記載のエアバッグ装置であって、
前記ハンドル部は、車体に近接するハンドル中央部と、当該ハンドル中央部から左右外側上方へ突出するハンドル操作部とを備え、
前記収容体の外部に配置される前記エアバッグの前記第2構成部が、前記ハンドル中央部を跨ぐ構成であることを特徴とするエアバッグ装置。 - 請求項1または2に記載のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記収容体の外部に配置される前記第2構成部が当該エアバッグの展開膨張を許容する被覆部材によって被覆された構成であることを特徴とするエアバッグ装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ装置が装着されたエアバッグ装置付オートバイであって、
前記エアバッグの前記第2構成部が、前記収容体の外部において車体のハンドル部を前後方向に跨ぐように配置され、この第2構成部が車体側部材に取り付けられた構成のエアバッグ装置付オートバイ。
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