JP4388313B2 - エアバッグ装置、エアバッグ装置付オートバイ - Google Patents

エアバッグ装置、エアバッグ装置付オートバイ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に装着されるエアバッグ装置の構築技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オートバイ等の車両にエアバッグ装置を装着することによって乗員の保護を図る種々の技術が知られている。例えば、自動二輪車において、前方衝突を起こした際に、車体フレームに取り付けられたケース内に収容されたエアバッグが膨張ガスによって展開膨張し、これにより乗員を拘束するという技術が公知である(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、オートバイにおいて、エアバッグの前後方向に離れた壁部相互をエアバッグ内部においてテザーによって連結することによってエアバッグの保護エリアを広く確保する可能性が提示されているが、さらに事故の際のエアバッグによる乗員拘束形態の合理性を追求することによって乗員の保護の徹底を図る要請が高い。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−137777号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両の事故の際に乗員の保護徹底に資するエアバッグ構成技術、およびその関連技術を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、典型的には、各種のオートバイに搭載されるエアバッグ装置の構成に適用することができる。なお、本明細書において、車両の典型例である「オートバイ」は、鞍乗車両、すなわち乗員がシートに跨って着座する形態の車両を広く含むものとし、例えば乗員シートの前方に燃料タンクが併設されたタイプの自動二輪車、乗員シートとハンドル支持用ヘッドパイプとの間に空間部が形成されたスクータータイプの自動二輪車のいずれも包含する。さらに自動二輪車以外に、三つ以上の走行輪を有しつつ乗員が鞍乗して着座する車両(例えばピザ宅配等に用いられる三輪式バイク、悪路走破用の三輪ないし四輪バギー式バイク)、さらにはスノーモービル等のように橇ないし無限軌道帯によって走行しつつ乗員が鞍乗して着座する車両についても上記「オートバイ」に広く包含されるものとする。
【0006】
本発明では、エアバッグ装置を構成するエアバッグは、オートバイに搭載され、車両の前方衝突の際、インフレータ等のガス供給手段によってその内部に膨張ガスが供給され、乗員の前方側に形成される乗員保護領域に向かって突出しつつ展開膨張する。
本発明のエアバッグは、特に、エアバッグの互いに対向する内壁面同士を連結する連結部材を備え、エアバッグの車両後方側壁部が乗員に向けて膨張するのがこの連結部材を介して規制されるようになっている。この連結部材としては、帯状、紐状等の形状のものを適宜用いることができる。典型的には、連結部材として帯状のテザー(tether)をエアバッグ内に配置するとともに、当該テザーの一端をエアバッグの車両後方側壁部のうち乗員に向けて膨張する部位の内壁面に縫製によって縫着させる(縫い付ける)構成を用いることができる。これにより、乗員に向けて膨張する部位が連結部材による張力によってエアバッグの内方へ引っ張られる。従って、エアバッグが乗員に向けて膨張するのが連結部材によってエアバッグの内側から規制されることとなる。
エアバッグの内壁面のうち、連結部材によってエアバッグの内側から膨張が規制された箇所は、エアバッグ膨張時にその周辺箇所に対して凹んだ凹部を形成する。本発明では、エアバッグ膨張時に連結部材によってエアバッグの車両後方側壁部に凹部が形成されることとなる。この凹部は、乗員の頭部、胸部、肩部等に係合し、乗員を確実に拘束するのに有効である。
【0007】
また、本発明では、連結部材の配置によって、エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向かって膨張するのが許容されるようになっている。ここで、エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向かって膨張するのが阻止されると、エアバッグの前方側壁部に凹部が形成され、エアバッグと車体構成部材との間に隙間が形成される場合がある。このような隙間が形成されると、膨張したエアバッグがパネル等の車体構成部材に係合しにくくなり、乗員の拘束性能が低下するおそれがある。そこで、本発明のエアバッグは、当該エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向かって膨張するのが連結部材によって許容される構成とした。このような構成は、例えば、車両前方側壁部のうち車両前方へ向かう部分から外れた部位の内壁面に、連結部材の一端を連結することによって実現することができる。これにより、膨張したエアバッグを車体構成部材に確実に係合させることでエアバッグによる乗員の拘束性能を高めることができ、乗員の保護徹底を図るのに有効である。
【0008】
なお、本明細書でいう「車体構成部材」とは、車体に直接的ないし間接的に取り付けられた各種の部材を広く含む主旨である。車体構成部材の典型的な例としては、計器類配設用のパネル、車体に取り付けられたハンドル等がある。また、エアバッグ装置がオートバイの車体に装着されてはじめて車体構成部材となるもの、例えば、本来エアバッグ装置の一部を構成する構成部分であって、このエアバッグ装置がオートバイの車体に取り付けられることで車体の一部を構成するものも本発明でいう「車体構成部材」の範疇に含まれる。
また、本明細書における「許容」ないし「規制」については、連結部材がエアバッグの膨張を許容ないし規制する構成であれば足りる主旨であり、許容ないし規制の強弱は問わないものとする。
【0009】
本発明の連結部材は、少なくとも第1の壁部の内壁面と、第2の壁部の内壁面とを連結する構成であるのが好ましい。
第1の壁部は、エアバッグの車両後方側壁部のうち乗員に向かう部位を形成する。第2の壁部は、エアバッグの車両前方側壁部のうち車両前方へ向かう部分から外れた部位を形成する。この第2の壁部は、車両前方側壁部を構成する部位であってもよいし、あるいは、車両前方側壁部とは異なる壁部、例えば膨張したエアバッグの左右の壁部を構成する部位や、膨張したエアバッグの上下の壁部を構成する部位等であってもよい。本発明では、連結部材が、第1の壁部の内壁面と第2の壁部の内壁面との間を直線的に延在する構成が典型的な例である。その他、連結部材は、第1の壁部の内壁面と第2の壁部の内壁面との間を直線的には延在しない態様であっても、結果的に第1の壁部の内壁面と第2の壁部の内壁面とが連結されればよく、その間において当該連結部材が延在する経路は問わない。
【0010】
本発明のこのような構成によれば、乗員に向かう第1の壁部の内壁面と、車両前方へ向かう部分から外れた第2の壁部の内壁面との間に連結部材の張力が作用することとなる。第1の壁部の内壁面と第2の壁部の内壁面とが連結部材によって連結されることにより、車両後方側壁部が乗員に向けて膨張するのが規制されるとともに、エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向けて膨張するのが許容される。従って、乗員の保護徹底を図るのに有効な連結部材の配置態様を実現することができる。
【0011】
また本発明では、連結部材が第1の連結部および第2の連結部を有する構成になっている。
第1の連結部は、第2の壁部としての、膨張したエアバッグの車両右側に形成される車両右側壁部の内壁面と、車両左側に形成される車両左側壁部の内壁面とを互いに連結する部位である。第2の連結部は、第1の連結部と第1の壁部の内壁面とを連結する部位である。すなわち、第1の壁部の内壁面は、第2の連結部および第1の連結部を介して車両右側壁部の内壁面や、車両左側壁部の内壁面と連結されることとなる。これにより、第1の壁部、車両右側壁部および車両左側壁部の三者間に連結部材の張力が作用する。従って、第2の連結部によって第1の連結部と連結された第1の壁部が乗員に向けて膨張するのが規制されるとともに、第1の連結部によって連結された車両右側壁部および車両左側壁部よりも前方側の壁部が車両前方へ向けて膨張するのが許容されることとなる。
【0012】
また、本発明のこのような構成によれば、膨張したエアバッグの左右方向の長さを第1の連結部によって一定にすることが可能となり、乗員の拘束時においてエアバッグが左右方向へ拡がるのがこの第1の連結部によって阻止される。例えば、膨張したエアバッグの左右方向の長さが一定しない構成では、エアバッグとハンドル等の車体構成部材との係合状態が安定せず、エアバッグによる乗員拘束性能に限界がある。これに対し、本発明のように、膨張したエアバッグの左右方向の長さを第1の連結部によって一定することにより、エアバッグの安定した乗員拘束性能を得ることが可能となる。特に、本発明では、このような構成を連結部材の合理的な配置によって実現することができる。
【0013】
また本発明の好ましい形態では、第1の連結部を介して連結された車両右側壁部および車両左側壁部によって係合部が形成されるようになっている。この係合部は、エアバッグ膨張時に車体構成部材と係合する構成を有し、典型的にはハンドル等の車体構成部材が嵌まり込むことが可能な凹凸形状を形成する。このような構成は、車両右側壁部および車両左側壁部のうち、車体構成部材の配置に対応した位置に係合部が形成されるように、第1の連結部を接続する態様によって実現することができる。これにより、エアバッグは、膨張時に係合部を介して車体構成部材と係合した状態で、乗員を拘束することとなる。従って、本発明のこのような構成によれば、エアバッグによる乗員拘束性能をより向上させることが可能となる。
【0014】
また本発明の好ましい形態では、連結部材がエアバッグの内壁面に対する当該連結部材の取付け部を頂部とする多角形、例えば三角形を形成するようになっている。すなわち、本発明の連結部材によって閉じた形状が形成される。本発明では、この連結部材によって形成される多角形が取付け部の全部または一部を頂部とする態様が考えられる。本明細書でいう「頂部」とは、連結部材の取付け部がエアバッグの内壁面と点接触する態様における頂点や、連結部材の取付け部がエアバッグの内壁面と面接触する態様における頂面等を広く含む主旨である。
本発明のように、連結部材が閉じた形状を有する構成とすれば、エアバッグ膨張時に連結部材に作用する張力がバランスよく分散されこととなり、連結部材の合理的な構成を実現することが可能となる。
【0015】
また本発明の好ましい形態では、連結部材が複数の分割部材に分割可能な構成になっている。そして、これら複数の分割部材の各々が、当該分割部材の取付け部においてエアバッグの内壁面に取り付けられるようになっている。また、複数の分割部材は、取付け部とは異なる箇所において分割部材同士が互いに接続されるようになっている。すなわち、本発明では、分割部材をエアバッグの内壁面へ取付ける取付け部と、分割部材同士が接続される接続部とがずれた構成になっている。
【0016】
例えば、エアバッグの内壁面に取り付けられる取付け部において、分割部材同士が互いに接続される構成では、分割部材をエアバッグの内壁に取り付ける作業と、連結部材の各構成部分の長さを調節する等の作業を一度に行う必要がある。そこで、本発明の構成によれば、エアバッグの内壁面への取付け部と分割部材同士が接続される接続部とがずれているため、連結部材をエアバッグに取り付ける際に連結部材の各構成部分の長さを容易に調節することができ、作業を円滑化するのに有効である。
【0017】
また本発明は、上記各構成のエアバッグ装置が装着されたオートバイとして特定される。これにより、膨張したエアバッグを車体構成部材に確実に係合させることでエアバッグによる乗員の拘束性能を高めることができ、事故の際の乗員の保護徹底を図ることが可能なオートバイが提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1〜図6を用いて自動二輪車100およびエアバッグ装置120の構成を説明する。ここで、図1は、本発明の一実施の形態に係るスクータータイプの自動二輪車100を側面から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。図2は膨張したエアバッグ121とハンドル104との関係を模式的に示す図である。図3は図2中の第1のテザー構成片131の平面図、図4は図2中の第2のテザー構成片132の平面図、図5は図2中の第3のテザー構成片133の平面図である。図6は図2中のエアバッグ121のA−A線における断面構造を示す図であって膨張時の状態を示す。なお、本実施の形態の自動二輪車100は、本発明における「車両」ないし「オートバイ」の一例に相当する。
【0019】
図1に示すように、自動二輪車100は、エンジンやメインフレーム等により構成される車体構成部101、乗員Rが跨って着座可能なシート103、ハンドル104、前輪111および後輪112等を主体とするスクータとして構成される。
【0020】
自動二輪車100の車体構成部101上方であって、乗員Rの前方側領域は、自動二輪車100が前方衝突を起こした際の乗員保護領域140として規定される。本実施の形態において「前方衝突」には、自動二輪車100が前方側の衝突対象物(便宜上得に図示しない)に衝突する形態を広く包含する。また、本実施の形態における「乗員保護領域140」は、本発明における「乗員保護領域」に対応する領域であり、前方衝突時の運動エネルギーによって乗員Rが自動二輪車100前方に向かって移動しようとする場合に、乗員Rの前方移動方向上に延在し、自動二輪車100の前方に投げ飛ばされようとする乗員Rを拘束し保護するための空間として定義される。
【0021】
車体構成部101のうち車体の前方側のフロント部102には、エアバッグ装置120、および各種のメーター類、スイッチ類等が設けられている。特に、エアバッグ装置120は、上記の乗員保護領域140に臨むように配置されている。すなわち、本実施の形態では、エアバッグ装置120は、後述するエアバッグ121の突出(展開膨張)方向が、乗員Rの前方上方側へ向かうように配置されている。
【0022】
エアバッグ装置120は、図2に示すように、エアバッグ収容体としてのリテーナー120aと、当該リテーナー120a内に折り畳まれた状態で収容されるエアバッグ121と、リテーナー120aに収容されてエアバッグ121がリテーナー120aから展開して膨張するよう膨張ガスをエアバッグ121の内部に供給するインフレータ(便宜上、特に図示しない。)を主体として構成される。
なお、エアバッグ121には、特に図示しないものの、当該エアバッグ121と車体構成部材とを連結する長尺状のウエビング(例えば、樹脂繊維糸を用いてベルト状に加工されたもの)が取付けられている。展開膨張したエアバッグ121に対しこのウエビングの張力が作用することで、エアバッグ121の前方移動方向への移動が規制され、乗員Rを拘束するのに十分な抗力が発生する。
【0023】
エアバッグ121は、メインパネル122と、当該メインパネル122の両側部に組み合わされる左右一対のサイドパネル125とを有する。また、メインパネル122は、展開膨張完了時に乗員Rに向かう位置に配置される乗員側パネル構成布122aと、展開膨張完了時に車体前方側に配置される前面側パネル構成布122bとによって構成される。このエアバッグ121は、例えばメインパネル122の両側部に各サイドパネル125を縫着することで形成される。
なお、本実施の形態の乗員側パネル構成布122aが本発明における「車両後方側壁部」を構成し、前面側パネル構成布122bが本発明における「車両前方側壁部」を構成する。また、右側のサイドパネル125が本発明における「車両右側壁部」を構成し、左側のサイドパネル125が本発明における「車両左側壁部」を構成する。
【0024】
図2および図6に示すように、エアバッグ121の内部には、テザー(tether)130が設けられている。このテザー130が、本発明における「連結部材」に対応している。
このテザー130(帯状の結束布であり、テザーストラップとも称呼される。)は、複数のテザー構成部材、本実施の形態では図3〜図5に示す第1のテザー構成片131(リア側テザー)、第2のテザー構成片132(サイド側テザー)、第3のテザー構成片133(サイド側テザー)の3つを組み合わせて構成されている。これら3つのテザー構成部材のうち、第2のテザー構成片132および第3のテザー構成片133は同様の形状を有する。第1〜第3のテザー構成片131,132,133は、例えば基布を用いて構成される。これら第1〜第3のテザー構成片131,132,133が、本発明における「分割部材」に相当する。
【0025】
本実施の形態では、第1のテザー構成片131が取付け部131aにおいて乗員側パネル構成布122aの被取付け部123の内壁面に縫着される。この被取付け部123は、乗員側パネル構成布122aのうち乗員に向かう壁部を構成しており、本発明における「第1の壁部」に対応している。また、第2のテザー構成片132が取付け部132aにおいて図2中右側のサイドパネル125の被取付け部126の内壁面に縫着され、第3のテザー構成片133が取付け部133aにおいて図2中左側のサイドパネル125の被取付け部128の内壁面に縫着される。これら被取付け部126,128は、エアバッグ121の車両前方へ向かう部分から外れた壁部を構成しており、本発明における「第2の壁部」に対応している。このような縫着によって、テザー130を構成する第1〜第3のテザー構成片131,132,133が、エアバッグ121の内壁面に取り付けられることとなる。
【0026】
また、テザー130を構成するに際し、第1のテザー構成片131の端部131bと第2のテザー構成片132の端部132cとが互いに縫着され、第1のテザー構成片131の端部131cと第3のテザー構成片133の端部133bとが互いに縫着され、第2のテザー構成片132の端部132bと第3のテザー構成片133の端部133cとが互いに縫着される。すなわち、第1〜第3のテザー構成片131の取付け部131a,132a,133aと、これら第1〜第3のテザー構成片131同士が接続される接続部とがずれた構成になっている。この態様が、本発明における「取付け部とは異なる箇所において分割部材同士が互いに接続される。」との態様に相当する。このような縫着によって、第1〜第3のテザー構成片131,132,133が互いに接続されたテザー130が構成されることとなる。
【0027】
このテザー130は、エアバッグ121の膨張時に、図6に示すように取付け部131a,132a,133aを頂部とし、平面視で三つの辺L1,L2,L3を有する略三角形を形成可能である。すなわち、テザー130は、取付け部131aと取付け部132aとの間において直線状に延在する辺L2と、取付け部132aと取付け部133aとの間において直線状に延在する辺L1と、取付け部131aと取付け部133aとの間において直線状に延在する辺L3とを有する。辺L1は、エアバッグ121の前後方向と直交する方向(図6では上下方向)に延在し、辺L2および辺L3は、エアバッグ121の前後方向と交差する方向(図6では斜めの方向)に延在する。
なお、テザー130の取付け部131a,132a,133aは、各テザー構成片131,132,133の両端部間に設けられており、本発明における「取付け部」ないし「頂部」に相当する。
【0028】
図6に示すエアバッグ121の膨張状態において、テザー130の辺L1は、被取付け部126の内壁面と被取付け部128の内壁面とを連結する部位であり、本発明における「第1の連結部」に対応している。また、テザー130の辺L2は、被取付け部126の内壁面ないし辺L1と、被取付け部123の内壁面とを連結する部位であり、またテザー130の辺L3は、被取付け部128の内壁面ないし辺L1と、被取付け部123の内壁面とを連結する部位である。従って、これら辺L2,L3が本発明における「第1の連結部と第1の壁部の内壁面とを連結する第2の連結部」に対応している。
【0029】
ここで、上記構成のエアバッグ装置120の作動形態を、図2、図6〜図11等を参照しながら説明する。ここで、図7はエアバッグ121の展開膨張が開始された状態を示す図である。図8はエアバッグ121の膨張が完了した状態を示す図である。図9は膨張したエアバッグ121によって乗員Rが拘束される状態を示す図である。図10は図2中のエアバッグ121のA−A線における断面構造を示す図であって乗員拘束時の状態を示す。図11はピッチング回動時の乗員保護の状態を示す図である。
【0030】
図7に示すように、自動二輪車100が、その進行方向側にて衝突事故を起こした場合、乗員Rは自動二輪車100の前方(例えば図7中の矢印10方向)へ向けて移動し(投げ飛ばされ)ようとする。本実施の形態では、この前方衝突の検知により、特に図示しないインフレータを介してリテーナー120aから乗員保護領域140に向かってエアバッグ121の突出(展開)が開始される。図7によく示されるように、展開中のエアバッグ121が乗員保護領域140に最短で向き合うようにロール巻き部121aが形成されており、事故の際には当該ロール巻き部121aがリテーナー120aから乗員保護領域140に向かって迅速に転動しつつエアバッグ121の展開が行われる。そして、エアバッグ121内に膨張ガスが送り込まれ続けることにより、エアバッグ121にリテーナー120a側から順次膨張部が形成されていくことになる。
【0031】
かくして、図2、図6なしい図8に示すように、エアバッグ121が完全に展開され膨張した状態が形成されることとなる。
エアバッグ121がこのような膨張状態になると、既に述べたように、テザー130は、エアバッグ121の内部において図6に示すような略三角形を形成する。そして、エアバッグ121において、テザー130の辺L1よりも車両前方側に第1の領域M1が形成され、またテザー130の辺L1よりも車両後方側に第2の領域M2が形成される。
この状態では、テザー130に図6中の矢印(白抜き矢印)で示すような張力が作用する。テザー130にこのような張力が作用した状態では、エアバッグ121のメインパネル122およびサイドパネル125は、テザー130によって引っ張られ、特定の方向への膨張が規制される。すなわち、本実施の形態では、メインパネル122の乗員側パネル構成布122aが乗員Rに向かって膨張するのが、被取付け部123においてテザー130によって規制される。また、左右のサイドパネル125が車両の左右方向(図6では上下方向)に沿って膨張するのが、被取付け部126,128においてテザー130の辺L1(第2のテザー構成片132および第3のテザー構成片133)によって規制される。一方、被取付け部123,126,128以外の箇所におけるエアバッグ121の膨張は許容される。とりわけ、本実施の形態では、エアバッグ121の第1の領域M1は、車両前方へ向かう膨張がテザー130によって規制されず許容されるため、前面側パネル構成布122bがエアバッグ121の内側へ向けて陥没した凹部等が形成されることがない。この態様が、本発明における「連結部材を介してエアバッグの車両後方側壁部が乗員に向けて膨張するのが規制されるとともに、エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向けて膨張するのが許容される。」との態様に相当する。
【0032】
また、このとき、エアバッグ121の乗員側パネル構成布122aは、被取付け部123においてエアバッグ121の内側へ向けて陥没し凹部124を形成する。この凹部124は、例えば乗員Rの頭部(実質的には乗員Rが装着したヘルメット)が嵌まり込み可能な形状を形成する。この凹部124は、乗員Rを確実に拘束するのに有効である。
また、サイドパネル125は、被取付け部126,128においてエアバッグ121の内側へ向けて陥没し凹部127,129を形成する。これら凹部127,129、およびその間の前面側パネル構成布122bによって、本実施の形態のハンドル104が係合可能な形状が形成される。すなわち、本実施の形態のハンドル104は、図2に示すように、車両の左右方向に延在しハンドルフレーム104aの両端にハンドル操作部104bを有する構成であり、このハンドル操作部104bはハンドルフレーム104aの凹み部105に対して突出した凸部となっている。本実施の形態では、このハンドル104が膨張状態のエアバッグ121に当接するようになっており、この当接状態では、凸部であるハンドル操作部104bの箇所がサイドパネル125の凹部127,129に嵌まり込むようになっている。この凹部127,129が本発明における「係合部」を構成する。これにより、エアバッグ121は、その膨張時にハンドル104に確実に係合することとなる。とりわけ、本実施の形態では、エアバッグ121の膨張時にテザー130の辺L1が、凹部127と凹部129との間に直線状に延在するため、辺L1の長さを一定に維持することが可能となり、ハンドル104にエアバッグ121を係合させ易い。
【0033】
上記の結果、図9および図10に示すように、自動二輪車100が前方衝突し、その衝撃で乗員Rが衝突時の運動エネルギーによって前方移動方向10へ移動しようとする場合、乗員保護領域140において膨張したエアバッグ121が乗員Rを確実に拘束することが可能となる。
すなわち、本実施の形態では、乗員側パネル構成布122aに形成された凹部124によって乗員Rが確実に拘束されることとなり、乗員保護の万全を図ることが可能となる。しかも本実施の形態では、エアバッグ121の第1の領域M1の車両前方へ向かう膨張がテザー130によって規制されないため、乗員Rの拘束性能の向上を図るのに有効である。ここで、例えば、テザー130によってエアバッグ121の膨張が規制されて第1の領域M1に凹部が形成されるような場合は、エアバッグ121と車体構成部材との間に隙間が形成され、エアバッグ121の抗力の損失が懸念されるが、本実施の形態によればこのような場合に比してエアバッグ121の抗力をアップさせることができる。また、このとき、エアバッグ121は、サイドパネル125の凹部127,129によってハンドル104に確実に係合し、乗員Rからエアバッグ121に作用する荷重が、ハンドル104によって確実に受けられることとなる。
【0034】
さらに、図11に示すように、前方衝突した自動二輪車100が衝突時のエネルギーによりピッチング回動を生じる場合があり得る。このような場合、上記本実施の形態に係るエアバッグ装置120では、エアバッグ121に対しテザー130を用いて膨張方向のコントロールを行うことで、凹部124,127,129の形状を維持することができる。これにより、ピッチング回動時に前方移動方向10に投げ出されようとする乗員Rを、図9および図10に示す場合と同様にエアバッグ121が確実に拘束することが可能となり、乗員保護の万全を図ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、エアバッグ121においてメインパネル122の乗員Rへ向かう膨張、およびサイドパネル125のハンドル104に対応した部位の膨張を、テザー130を用いて規制する構成を採用したが、テザー130によるエアバッグ121の膨張規制方向については、これ以外に様々な形態を採用することができる。例えば、特に図示しないものの、エアバッグ121へのテザー130の取り付け位置を、更に乗員Rの胸部、腹部あるいは肩部などに対応する箇所に設けることで、エアバッグ121の膨張形状を調整し、前方衝突の際に乗員のどの部位をエアバッグ121で最初に拘束するかをコントロールする等といった構成が広く採用可能である。
【0036】
上記構成のエアバッグ装置120を製造する場合、例えば取付け工程においてエアバッグ121の内部にテザー130を設置する。
この取付け工程では、まず、第1のステップ(本発明における「第1のステップ」)において、既に述べた縫製によってエアバッグ121の内壁面に、第1〜第3のテザー構成片131,132,133を取付ける。すなわち、第1〜第3のテザー構成片131,132,133の各々を、取付け部131a,132a,133aにおいて、エアバッグ121の被取付け部123,126,128に縫着させる。
【0037】
次に、第2のステップ(本発明における「第2のステップ」)において、既に述べた縫製によって第1〜第3のテザー構成片131,132,133同士を互いに接続する。すなわち、図6に示すようにこれら第1〜第3のテザー構成片131,132,133の対向する端部同士を縫着する。これにより、エアバッグ121の内部に、エアバッグ膨張時に略三角形となるテザー130が形成されることとなる。このとき、各テザー構成片131,132,133を、片L1,L2,L3の間隔が所望の間隔となるように調節しつつ接続する。例えば、エアバッグ121の車両後方側壁部の形状がハンドル104の凹み部105の形状に対応するようにテザー130の辺L1の長さを調節したうえで、第2のテザー構成片132の端部132bと第3のテザー構成片133の端部133cとを縫着させる。テザー130のこのような取付け方法によれば、作業者は、第1ステップと第2ステップを順次行うことによって、片L1,L2,L3の間隔が所望の間隔となるように調節しながら各テザー構成片131,132,133同士を接続することができる。従って、エアバッグ121の内部にテザー130を設置する作業の円滑化が図られる。例えば、各テザー構成片131,132,133をエアバッグ121の内壁面に取付ける取付け部131a,132a,133aと、各テザー構成片131,132,133同士を接続する箇所が一致するような構成に比して、テザーの縫製作業を容易に行うことができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、エアバッグ121の車両後方側壁部が乗員に向けて膨張するのを規制するとともに、エアバッグ121の車両前方側壁部が車両前方へ向けて膨張するのを許容する構成のテザー130を用いることによって、乗員の保護徹底に資するエアバッグ装置120を提供することが可能となる。すなわち、本実施の形態では、テザー130の作用により、膨張したエアバッグ121をハンドル104やパネル等の車体構成部材に確実に係合させてエアバッグ121による乗員の拘束性能を高めることができる。特に、本実施の形態では、テザー130がエアバッグ121の第1の領域M1の膨張を規制しない(許容する)ように、当該テザー130をエアバッグ121の内壁面に好適に取付けることによって乗員の保護徹底を図ることが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、膨張したエアバッグ121の左右方向の長さをテザー130の辺L1によって一定にすることができるため、例えば膨張したエアバッグ121の左右方向の長さが一定しないような場合に比してエアバッグ121の安定した乗員拘束性能を得ることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、エアバッグ121の膨張時にテザー130が三角形を形成するように構成したため、テザー130に作用する張力をバランスよく分散させることができる。従って、テザー130の合理的な構成を実現することができる。例えば、テザー130の各部位における幅や太さを各部位に作用する張力等に基づいて変える必要が少ない構成を実現することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、第1〜第3のテザー構成片131の取付け部131a,132a,133aと、これら第1〜第3のテザー構成片131同士が接続される接続部とがずれた構成であるため、テザー130の辺L1,L2,L3の長さを容易に調節することができる。例えば、第1〜第3のテザー構成片131の取付け部131a,132a,133aと、第1〜第3のテザー構成片131同士が接続される接続部とが一致するような場合は、第1〜第3のテザー構成片131の取付けとテザー130の辺L1,L2,L3の長さ調節を合わせて行うこととなり作業が面倒であるが、本実施の形態を用いればこのような問題を解消することができテザー130の取付け作業が円滑化される。
【0042】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0043】
本実施の形態では、エアバッグ121の内部にテザー130が取り付けられたエアバッグ装置120について記載したが、エアバッグの乗員およびハンドルに向かう膨張がテザーによって規制される構成であれば、テザーの構成は必要に応じて種々変更可能である。ここで、別の実施の形態のエアバッグの構成を模式的に示す図12および図13を参照しながら、エアバッグの変更例を説明する。なお、これらの図において、図6に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付すものとし、当該構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0044】
まず、テザーの一部が閉じ形状を形成するエアバッグとして、例えば図12に示すような構成のエアバッグ321を用いることができる。このエアバッグ321の内壁面に取り付けられるテザー330は、第1〜第4のテザー構成片331,332,333,334(本発明における「分割部材」)によって構成される。この実施の形態では、第2〜第4のテザー構成片332,333,334によってエアバッグ321の被取付け部126の内壁面と被取付け部128の内壁面とが連結され、さらに第1のテザー構成片331によって第4のテザー構成片334とエアバッグ321の被取付け部123の内壁面とが連結される。すなわち、被取付け部123,126,128の三箇所が、第1〜第4のテザー構成片331,332,333,334によって連結されるようになっている。第4のテザー構成片334は、膨張状態のエアバッグ321内のほぼ中央位置に配置され三角形の閉じ形状を形成する。
【0045】
また、テザーが三角形以外の多角形を形成するエアバッグとして、例えば図13に示すような構成のエアバッグ421を用いることができる。このエアバッグ421の内壁面に取り付けられるテザー430は、第1〜第5のテザー構成片431,432,433,434,534(本発明における「分割部材」)によって構成され、五角形の閉じ形状を形成する。この実施の形態では、被取付け部123,123a,123b,126,128の五箇所が、第1〜第5のテザー構成片431,432,433,434,435によって連結されるようになっている。なお、この実施の形態では、被取付け部123a,123bにおける張力の作用によってエアバッグ421に凹部124a,124bが形成される。この凹部124a,124bを、例えば乗員の肩部や胸部の形状に対応した位置に設けることによって、乗員の拘束性能を向上させるのに有効である。
【0046】
このような構成のエアバッグ321,421によっても、エアバッグの乗員およびハンドルに向かう膨張をテザーによって規制する一方、車両前方へ向かう膨張を許容するという点において、エアバッグ121と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
また、上記実施の形態ではスクータータイプの自動二輪車100について記載したが、他の種類のオートバイ、更にはオートバイ以外の車両に本発明を適用することもできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の事故の際に乗員の保護徹底に資するエアバッグ構成技術、およびその関連技術が実現されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るスクータータイプの自動二輪車100を乗員側から視た図であって、自動二輪車100にエアバッグ装置120を搭載した様子を示す。
【図2】 展開膨張したエアバッグ121とハンドル104との関係を模式的に示す図である。
【図3】 図2中の第1のテザー構成片131の平面図である。
【図4】 図2中の第2のテザー構成片132の平面図である。
【図5】 図2中の第3のテザー構成片133の平面図である。
【図6】 図2中のエアバッグ121のA−A線における断面構造を示す図であって膨張時の状態を示す。
【図7】 エアバッグ121の展開膨張が開始された状態を示す図である。
【図8】 エアバッグ121の膨張が完了した状態を示す図である。
【図9】 膨張したエアバッグ121によって乗員Rが拘束される状態を示す図である。
【図10】 図2中のエアバッグ121のA−A線における断面構造を示す図であって乗員拘束時の状態を示す。
【図11】 ピッチング回動時の乗員保護の状態を示す図である。
【図12】 別の実施の形態のエアバッグ321の構成を模式的に示す図である。
【図13】 別の実施の形態のエアバッグ421の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
100…自動二輪車
104…ハンドル
120…エアバッグ装置
120a…リテーナー
121…エアバッグ
122…メインパネル
122a…乗員側パネル構成布
122b…前面側パネル構成布
123,126,128…被取付け部
124,127,129…凹部
125…サイドパネル
130…テザー
131…第1のテザー構成片
131a,132a,133a…取付け部
132…第2のテザー構成片
133…第3のテザー構成片
140…乗員保護領域
L1,L2,L3…辺
M1…第1の領域
M2…第2の領域
R…乗員

Claims (4)

  1. オートバイに搭載され、車両の前方衝突の際、乗員の前方側に形成される乗員保護領域において膨張するエアバッグを有するエアバッグ装置であって、
    前記エアバッグは、当該エアバッグの車両後方側壁部のうち乗員に向かう第1の壁部の内壁面と、当該エアバッグの車両前方側壁部のうち車両前方へ向かう部分から外れた第2の壁部の内壁面とを連結する連結部材を備え、
    前記連結部材は、前記第2の壁部としての車両右側壁部および車両左側壁部の内壁面同士を互いに連結する第1の連結部と、前記第1の壁部の内壁面と前記第1の連結部とを連結する第2の連結部とを含み、当該連結部材を介してエアバッグの車両後方側壁部が乗員に向けて膨張するのが規制されるとともに、エアバッグの車両前方側壁部が車両前方へ向けて膨張するのが許容され、
    前記エアバッグは、エアバッグ膨張時に、前記車両右側壁部及び前記車両左側壁部における前記第1の連結部の被取付け部が、前記第1の連結部に作用する張力でエアバッグ内側へ向けて陥没して前記オートバイの車体構成部材と係合可能な凹部を形成する一方、前記第1の壁部における前記第2の連結部の被取付け部が、前記第2の連結部に作用する張力でエアバッグ内側へ向けて陥没して乗員が嵌まり込み可能な凹部を形成する構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項に記載のエアバッグ装置であって、
    前記連結部材は、前記エアバッグの内壁面に対する当該連結部材の取付け部を頂部とする多角形を形成するように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1または2に記載のエアバッグ装置であって、
    前記連結部材は、複数の分割部材に分割可能な構成であり、これら複数の分割部材は、各々が当該分割部材の取付け部において前記エアバッグの内壁面に取り付けられ、前記取付け部とは異なる箇所において分割部材同士が互いに接続された構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  4. 車両の前方衝突の際、乗員の前方側に形成される乗員保護領域においてエアバッグが膨張するエアバッグ装置が装着されたエアバッグ装置付オートバイであって、
    前記エアバッグ装置として請求項1〜のいずれかに記載のエアバッグ装置が用いられていることを特徴とするエアバッグ装置付オートバイ。
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