JP4435961B2 - 自動車のエアバッグ装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエアバッグ装置、特に助手席側のエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の助手席側のエアバッグ装置は、フロントウィンドウパネルの下方に位置するインストルメントパネルに、エアバッグを折りたたみ状態で収納した構造になっている。エアバッグは、衝突時にインフレータから噴出されたガスにより膨張し、インストルメントパネルの上部から車室内側へ向けて展開し、前倒れしてくる乗員を受け止めて保護するようになっている。
【0003】
この種のエアバッグ装置で用いられるエアバッグの内部には、例えば特開平11−5505号公報で知られているように、エアバッグのガス導入口から後端付近にかけて前後方向に延びるテザーベルトが設けられている。このテザーベルトには、エアバッグの初期膨張状態において、ガス導入口からのガスの流れをエアバッグの後端側へガイドする機能と、エアバッグの車室内側への直線的な展開を規制して上下方向へ広がるように展開させる機能がある。エアバッグの側面部には、排気孔が形成され、エアバッグが膨らみきった後に余分なガスを排出するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、エアバッグの展開が進んでエアバッグが膨らみきった後には、排気孔からガスが抜けて、エアバッグの内圧が下がるが、エアバッグの初期膨張においては、排気孔からガスが抜けず、エアバッグの内圧は、高い状態になっている。従って、乗員がインストルメントパネルに異常接近しているような場合には、初期膨張の段階でエアバッグが乗員に当たるため、内圧をある程度下げた状態で乗員を受け止めることができず、その改善が望まれている。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、初期膨張であっても、ある程度エアバッグの内圧を下げて乗員を受け止めることができる自動車のエアバッグ装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上側基布及び下側基布により袋状をなすエアバッグの前側部位には、インフレータからのガスを導入するガス導入口を設け、該ガス導入口とエアバッグの上側基布との間には、テザーベルトで連結してなり、該エアバッグを折りたたんでインストルメントパネルの内部に設置し、衝突時にエアバッグを膨張させてインストルメントパネルの上部から車室内側へ展開させる自動車のエアバッグ装置であって、前記テザーベルトが、前端をガス導入口に結合した一枚の前側ベルトと、中間部を所定面積のパッチ部としてエアバッグの上側基布に結合し且つ両端部を前記前側ベルトの後端と結合した後側ベルトとから成り、膨張したエアバッグの状態で、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの連結部と側面視にて一致する位置に、排気孔を形成していることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、前側ベルトと後側ベルトの連結部では、テザーベルトが、二股に分岐して広がり、インフレータからガス導入口を介して前側ベルトに沿って流れてきたガスは、連結部で抵抗を受けて拡散するため、この連結部に側面視で一致する位置に排気孔を形成してあることにより、初期膨張であっても、排気孔からガスを抜くことができる。従って、初期膨張段階において、ある程度エアバッグの内圧を下げて乗員を受け止めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前側ベルトと後側ベルトとの連結部付近に凸部を形成したものである。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前側ベルトと後側ベルトとの連結部付近に凸部を形成したため、ガスが更に拡散し、排気孔から抜けやすくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図8は、この発明の第1実施形態を示す図である。図5〜図8に示すように、自動車の助手席側におけるフロントウィンドウパネル1の下方には、インストルメントパネル2が位置している。このインストルメントパネル2の上部には、図示せぬリッドにて塞がれたケース3が設けられ、このケース3の中に、折りたたみ状態のエアバッグ4と、それを膨張させるガスを噴出するインフレータ5が収納されている。
【0012】
エアバッグ4は、ノンコートで目付200g/m2のナイロン66織布からなる2枚の上側基布6と下側基布7とから袋状に構成されている。上側基布6及び下側基布7は、図2及び図3に示すように、ともに左右対称の形状で、上側基布6は、膨張したエアバッグ4の上面部を形成するアッパ部8を有し、下側基布7は、膨張したエアバッグ4の下面部を形成するロア部9を有している。上側基布6のアッパ部8と、下側基布7のロア部9の左右両側には、膨張したエアバッグ4の側面部を形成する概略三角形のサイド部10、11が形成され、後側には、乗員を受け止める後面部を形成するリヤ部12、13が一体的に設けられている。下側基布7の前端には、長方形のガス導入口14が形成され、このガス導入口14の周囲には、ガス導入口14と同じ開口を有する前側ベルト15の前端16が縫合され、前側ベルト15自体は、ガス導入口14の後縁から後側へ向けて延びた状態となっている。ガス導入口14は、前側ベルト15の前端16を周囲に縫合することにより補強される。
【0013】
また、上側基布6のサイド部10には、左右にそれぞれ排気孔17が形成されている。更に、上側基布6のリヤ部12には、後側ベルト18の中央に形成された上下幅150mm、左右幅160mmの矩形或いは円形状を有するパッチ部19の周縁が縫合されている。後側ベルト18は、複数の部材から構成されていても良い。
【0014】
これらの下側基布7と上側基布6は、まず最初に、前側ベルト15及び後側ベルト18を表面側に位置させた裏面同士を向き合わせた状態で、互いに対応するサイド部10、11と、リヤ部12、13の縁部同士を縫合する。次に、下側基布7と上側基布6の対向する周縁部同士を縫合する。そして、互いに縫合した下側基布7と上側基布6を折り曲げて、前側ベルト15と後側ベルト18を接近させ、その状態で裏表に位置する前側ベルト15の後端と、後側ベルト18の両端とを連結部Sにより縫合し、テザーベルト20を形成する。最後に、下側基布7及び上側基布6を、ガス導入口14から反転させると、テザーベルト20が内部に位置して、周囲の縫い目が見えないエアバッグ4が完成する。完成したエアバッグ4は、内部で、下側基布7の前側部位のガス導入口14と、上側基布6のリヤ部12とが、テザーベルト20により連結された状態となる。
【0015】
このように形成されたエアバッグ4は、側面部に形成される排気孔17と、テザーベルト20の連結部Sとが側面して一致する。エアバッグ4は、折りたたまれた状態で、インストルメントパネル2の上部のケース3内に収納され、ガス導入口14がインフレータ5と接続される。
【0016】
次に、図5〜図8に基づいて、実際のエアバッグ4の展開挙動を説明する。図5は、乗員Mがインストルメントパネル2の最後面21に対して異常接近した状態を示している。この状態で、自動車が衝突すると、インフレータ5で発生したガスが、ガス導入口14からエアバッグ4内に噴出され、エアバッグ4が膨張する。テザーベルト20の前側ベルト15がガス導入口14の後縁から延びているため、ガス導入口14が前側ベルト15により塞がれず、ガス導入口14からガスの円滑な流入が行われ、エアバッグ4の展開スピードがより速くなる。
【0017】
膨張したエアバッグ4は、図6に示すように、ケース3から飛び出し、フロントウィンドウパネル1に当たった後、初期膨張として後向きに展開する。この時、ガスは、テザーベルト20の前側ベルト15にガイドされてエアバッグ4内に導入されるが、前述のように、膨張した状態のエアバッグ4で、排気孔17とテザーベルト20の連結部Sとは、位置が一致しているため、ガスは、二股に分岐して角度が広がる連結部Sにおいて抵抗を受けて拡散し、初期膨張であっても、排気孔17からのガスの排出が促進される。従って、初期膨張段階において、ある程度エアバッグ4の内圧を下げて乗員を受け止めることができ、異常接近した乗員Mの保護に好適である。
【0018】
エアバッグ4は、初期膨張後、図7に示すように、下向きに展開し、インストルメントパネル2と乗員Mとの間に入り込む。このように、エアバッグ4が下向きに展開するのは、テザーベルト20の後端がエアバッグ4の上側基布6に結合されていることから、エアバッグ4の後端においては、テザーベルト20の下方容量の方が上方容量よりも大きくなっており、テザーベルト20よりも下側部分が専ら膨張するからである。
【0019】
エアバッグ4は、下向きに展開した後に、図8に示すように、上側へも展開するため、乗員Mの頭部と胴部の両方を確実に保護することができる。更に、この実施形態のテザーベルト20は、一枚の前側ベルト15を介してガス導入口14に結合されているため、テザーベルト20からエアバッグ4の上側基布6に作用するテンションの伝達が基本的に一系統で、エアバッグ4の安定した展開挙動が得られる。つまり、テザーベルト20を仮に2本設けて、テンションを2系統でエアバッグ4に伝達すると、2本のテザーベルト20の状況によっては、エアバッグ4に伝達されるテンションがばらついて、エアバッグ4が上下に揺れたりして挙動が定まらないおそれもあるが、この実施形態ではそのようなことはない。
【0020】
エアバッグ4が膨らみきると、排気孔17から更に排気が行われる。排気孔17が、乗員Mを受け止める領域以外のサイド部10、11に形成されているため、排気孔17が乗員Mにより塞がれるおそれはない。テザーベルト20自体は、ある程度までしか後方へ延びないが、テザーベルト20よりも下側部位のエアバッグ4は、テザーベルト20よりも十分に後側へ展開するため、インストルメントパネル2に異常接近しない通常の乗員Mもエアバッグ4により確実に保護することができる。
【0021】
図9は、この発明の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態に係るテザーベルト22では、連結部Sに前側ベルト23側をつまんで縫合した凸部24を形成した。従って、ガスが更に拡散して、排気孔から抜けやすくなる。
【0022】
前記2つの実施形態とも、エアバッグ4は、上側基布6と下側基布7との二枚構成で説明したが、これに限定されるものではなく、三枚以上の基布により構成されるものでも良い。
【0023】
【発明の効果】
この発明によれば、前側ベルトと後側ベルトの連結部では、二股に分岐して角度が広がり、前側ベルトに沿って流れてきたガスは、連結部で抵抗を受けて拡散するため、この連結部に排気孔の位置を合わせることにより、初期膨張であっても、排気孔からガスを抜くことができる。従って、初期膨張段階において、ある程度エアバッグの内圧を下げて乗員を受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1実施形態に係るエアバッグを示す斜視図。
【図2】 図1のエアバッグの下側基布を示す平面図。
【図3】 図1のエアバッグの上側基布を示す平面図。
【図4】 図1の前側ベルトと後側ベルトから成るテザーベルトを示す斜視図。
【図5】 乗員がインストルメントパネルに対して異常接近した状態を示す断面図。
【図6】 図1のエアバッグの初期膨張状態を示す断面図。
【図7】 図5のエアバッグが下向きに展開した状態を示す断面図。
【図8】 図6のエアバッグの最終展開状態を示す断面図。
【図9】 第2実施形態に係るテザーベルトを示す図4相当斜視図。
【符号の説明】
1 フロントウィンドウパネル
2 インストルメントパネル
4 エアバッグ
5 インフレータ 6 上側基布
7 下側基布
8 アッパ部
9 ロア部
10、11 サイド部
12、13 リヤ部
14 ガス導入口
15、23 前側ベルト
17 排気孔
18 後側ベルト
19 パッチ部
20、22 テザーベルト
24 凸部
M 乗員
S 連結部
Claims (2)
- 上側基布及び下側基布により袋状をなすエアバッグの前側部位には、インフレータからのガスを導入するガス導入口を設け、該ガス導入口とエアバッグの上側基布との間には、テザーベルトで連結してなり、
該エアバッグを折りたたんでインストルメントパネルの内部に設置し、衝突時にエアバッグを膨張させてインストルメントパネルの上部から車室内側へ展開させる自動車のエアバッグ装置であって、
前記テザーベルトが、前端をガス導入口に結合した一枚の前側ベルトと、中間部を所定面積のパッチ部としてエアバッグの上側基布に結合し且つ両端部を前記前側ベルトの後端と結合した後側ベルトとから成り、
膨張したエアバッグの状態で、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの連結部と側面視にて一致する位置に、排気孔を形成していることを特徴とする自動車のエアバッグ装置。 - 請求項1記載の自動車のエアバッグ装置であって、
前側ベルトと後側ベルトとの連結部付近に、凸部を形成したことを特徴とする自動車のエアバッグ装置。
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