JP4306738B2 - 給紙装置およびそれに用いられる給紙カセット,画像形成装置 - Google Patents

給紙装置およびそれに用いられる給紙カセット,画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は,コピー機,プリンタ等の画像形成装置および,画像形成装置にシートを供給する給紙装置およびその給紙装置に着脱される給紙カセットに関する。さらに詳細には,給紙カセットに収納されたシートを,画像形成部に1枚ずつ給紙するための給紙装置およびそれに用いられる給紙カセット,画像形成装置に関するものである。
コピー機,プリンタ等の画像形成装置では,画像形成用のシートを画像形成部に供給するための給紙装置を有している。給紙装置では一般に,着脱可能な給紙カセットにシートを収納して装着し,給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出して給紙する。さらに,給紙カセット内に,収納されているシートを押し上げる押上板を有し,それによって最上部のシートをピックローラ等の送り出し部材に接触させているものが知られている。
このような給紙装置においては,シートの種類や多寡に関わらず,1枚ずつ安定して給紙されることが望まれる。そのため,ピックローラと対面する位置に摩擦部材を設け,下層のシートに摩擦による抵抗を与えているものが多い。このような摩擦部材としては,従来より,様々な形状や摩擦係数を有するものが考案されている。さらに,ピックローラの回転方向に対して複数箇所に摩擦部材を設け,それらが互いに異なる摩擦係数を有する装置も開示されている(例えば,特許文献1,特許文献2参照)。いずれも,これらの摩擦部材によりシートに加わる摩擦力やシートの当接角度を調整し,シートの重送を防止するとされている。
特開2004−210434号公報 実開平6−18344号公報
しかしながら,シートの種類によっては,端部に裁断時の微小のかえりが形成されているものがある。さらに,そのかえりの部分が束の上下のシートで噛み合って,分離されにくいものがある。そのため,特に残り枚数が少なくなった場合に,前記した種々の従来の給紙装置によっても,重送が防止できない場合があった。重送防止のためだけなら,単に動摩擦係数の大きい摩擦部材を使用することも考えられる。しかしそれでは,最後の数枚〜1枚となったシートを給紙できなかったり,しわが発生するという問題点があった。
本発明は,前記した従来の給紙装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,シートの種類にかかわらず,重送を防止するとともに,最後の1枚でも給紙できる給紙装置およびそれに用いられる給紙カセット,画像形成装置を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた本発明の給紙装置は,シート束中の最上のシートに接触してこれを引き出すピックローラと,ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する給紙装置であって,押上板における,シート束を挟んでピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,押上板における,第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,押上板における第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さいものである。
本発明の給紙装置によれば,シート束は押上板によってピックローラへ向けて押し上げられる。このとき,シート束中の最下のシートは第1摩擦部材と第2摩擦部材とに接触する。そして,第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しているので,シートがある程度の枚数の束であれば,自重によって最下のシートは確実に第2摩擦部材に接触される。このとき,第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さいので,第2摩擦部材に接触されたシートは束状で送り出されることはない。従って,シートの種類にかかわらず,重送を防止することができる。一方,シート束がごく薄い場合では,自重が小さく,ピックローラと対向していない第2摩擦部材からはあまり摩擦力を受けない。従って,最後の1枚でも給紙できる。
さらに本発明では,押上板には,第1摩擦部材の取り付け位置よりもシート搬送方向上流側に,シート束側へ向けて凸をなす凸状部が形成されており,第2摩擦部材は,凸状部に取り付けられていることが望ましい。このようになっていれば,第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しているようにすることは容易である。
また,第2摩擦部材のシート搬送方向下流側端部が,ピックローラと第1摩擦部材との最近接位置から,シート搬送方向上流側に,10.0mmを超えない距離の位置,または,ピックローラの半径を超えない距離の位置にあることが望ましい。このようなものであれば,第2摩擦部材の位置が,ピックローラから大きくは離れない。従って,ある程度の厚さのあるシート束であれば,ピックローラが最上のシートに接触する際に,最下のシートが第2摩擦部材に確実に接触する。
また,第2摩擦部材のシート搬送方向下流側端部が,第1摩擦部材のシート束側の面に対して1.5mmを超えない段差をなしていることが望ましい。このようなものであれば,第2摩擦部材は,シート束に確実に接触されるとともに,シート束に傷を付けるようなことはない。
さらに本発明では,第2摩擦部材におけるシート搬送方向上流側の端部と押上板とにわたって,厚さが0.15mmを超えないフィルム部材が貼り付けられていることが望ましい。このようになっていれば,シート束を押上板の上に載置する際に引っ掛かることはない。
さらに本発明では,押上板におけるシート束側の面の,第1摩擦部材にも第2摩擦部材にも覆われていない部分のシートに対する動摩擦係数が,0.16を超えないものであってもよい。薄鋼板等の板材では,入手先等によりシートに対する動摩擦係数にはバラツキがある。本発明によれば,押上板としてこのような動摩擦係数の小さいものを用いても,シートを確実に送り出すことができる。
また,本発明は,ピックローラを有する画像形成装置に取り付けて使用されるとともに,ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する給紙カセットであって,押上板における,シート束を挟んでピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,押上板における,第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,押上板における第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さい給紙カセットにも及ぶ。
また,本発明は,画像形成部と,シート束中の最上のシートに接触してこれを画像形成部へ向けて引き出すピックローラと,ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する画像形成装置であって,押上板における,シート束を挟んでピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,押上板における,第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,押上板における第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さい画像形成装置にも及ぶ。
本発明の給紙装置およびそれに用いられる給紙カセット,画像形成装置によれば,シートの種類にかかわらず,重送を防止するとともに,最後の1枚でも給紙できる。
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,カラープリンタの画像形成部に1枚ずつシートを供給するための給紙装置に本発明を適用したものである。
本形態のカラープリンタ1は,図1に示すように,いわゆるタンデム方式の画像形成装置である。各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが中間転写ベルト11に沿って並べられている。そして,給紙装置12は,カラープリンタ1の底部に配置されている。カラープリンタ1にはそのほかに,2次転写装置13,定着装置14,排紙ローラ15等が設けられている。
このカラープリンタ1で画像形成する際には,画像データに基づいて,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおいて各色の画像形成処理が行われる。そして,各色のトナー像が,中間転写ベルト11上に形成され,重ね合わされる。その重ね合わされたトナー像は,2次転写装置13によって,給紙装置12から給紙されたシートに転写される。さらに,転写されたトナー像は,定着装置14で定着される。トナー像が定着されたシートは,排紙ローラ15によって機外に排出される。
ここで,給紙装置12は,図2と図3とに示すように,給紙カセット21,ピックローラ22,給紙ローラ対23を有している。ピックローラ22と給紙ローラ対23とは給紙カセット21の一部ではなく,カラープリンタ1の本体側に設けられているものである。給紙カセット21には,シートを下方から押し上げる押上板24が取り付けられている。押上板24は,略H字型の薄板であり,給紙カセット21の内壁21aに回転軸25を中心に回転可能に取り付けられている。図2では見えないが,図中手前側の側壁にも回転軸25と同軸位置に回転可能に取りつけられている。
さらに,給紙カセット21の底面21bには,付勢部材26(図3参照)が設けられている。これによって,押上板24の中央付近が図中上方へ付勢されている。そのため,押上板24は図3中左端部の回転軸25を中心に回転し,図中右端部が図中上向きに,すなわち図中反時計回りに付勢されている。そして,シートが収納されていない状態では,図3のように図中右端部が上方に持ち上がり,押上板24の上面がピックローラ22に当接する。
ピックローラ22および給紙ローラ対23は,カラープリンタ1の本体に取り付けられている。そして,カラープリンタ1によって回転駆動を受けるようになっている。ここではローラのみを図示しているが,これらの回転軸はカラープリンタ1の本体の所定の位置に固定されている。そして,給紙カセット21をカラープリンタ1に装着することにより,図2と図3とに示す配置となる。本形態では,ピックローラ22および給紙ローラ対23は,図3中奥行き方向長さが給紙カセット21の幅に比してかなり短く,図中奥行き方向の中央部のみに配置されている。
この給紙カセット21にシートを収納する際には,付勢部材26の付勢力に抗して押上板24を押し下げ,その上にシートを載置する。押上板24は,付勢部材26の付勢力によってシートを図中上方へ向かって押し上げる。そして,最上部のシートがピックローラ22に接触する。この状態で,ピックローラ22が図3中反時計回りに回転駆動されると,最上部のシートはピックローラ22によって引き出され,供給ローラ対23の方へ押し出される。
このようになっていることから,以下では図3中左右方向をシート搬送方向と言い,図中右側を前側,左側を後ろ側と言う。前側がシート搬送方向下流側であり,後ろ側がシート搬送方向上流側である。また,同図中奥行き方向をシート幅方向と言う。また,押上板24に対して垂直方向に,ピックローラ22側を上側(高さ方向),給紙カセット21の底面21b側を下側と言う。押上板24にシートが載置された状態では,上側がシート束側に相当する。
なお,押上板24のピックローラ22との接触位置より後ろ側には,図3に示すように,シート幅方向全体にわたる屈曲線24aが形成されている。すなわち,押上板24は,屈曲線24aに沿って上に凸の峰状をなしている。これは,シートをその搬送方向にわずかに曲げられた状態で載置することにより,シート幅方向の反りを防止するためである。図ではこの屈曲を大げさに示している。
ここで,本形態では,図2と図3とに示すように,押上板24の上面のうちピックローラ22と当接する位置を含む範囲に,第1摩擦部材31が貼り付けられている。そして,その第1摩擦部材31より,シート搬送方向の後ろ側に第2摩擦部材32が貼り付けられている。第2摩擦部材32の貼付位置は,ピックローラ22と当接しない位置である。さらに,第1摩擦部材31と第2摩擦部材32との近傍のA部分のみを拡大して,図4に示す。図4中,24aは屈曲の峰線である。また,このうち,ピックローラ22と給紙ローラ対23等を除いた部分を図5に,図5のB−B断面を図6にそれぞれ示す。なお,図6では,比較のために,ピックローラ22を押上板24からやや離して示している。
図5に示すように,押上板24にはスリット33が形成されている。そして,押上板24のうち,スリット33の前側(第1摩擦部材31のあるところ)は,その左右の部分に比較して低く形成されている。すなわち,第1摩擦部材31を貼り付ける範囲の押上板24をやや凹形状とすることで,第1摩擦部材31を貼り付けた箇所が,押上板24のシート幅方向の他の部分に比較して特に突出した状態とはならないようにしている。また,第1摩擦部材31のシート幅方向の大きさは,ピックローラ22の軸方向長さよりやや大きい。すなわち,ピックローラ22が当接する範囲,またはシートを介してピックローラ22による押圧力が働く範囲はすべて第1摩擦部材31によって覆われている。
一方,押上板24のうちスリット33より後ろ側は,前側に比較して凸状態となっている。図6に示すように,スリット33の後端部34より後ろ側には,後端部34に向かってやや上方へ反った斜面部35が形成されている。斜面部35の後ろ側の裾部分は,上に凹状の屈曲部24bとなっている。そして,押上板24の上面のうち,スリット33の後端部34からその後ろ側には,第2摩擦部材32が貼り付けられている。第2摩擦部材32は,少なくとも,屈曲部24bより後ろ側にわたって設けられている。
ここで,図7に示すように,第1摩擦部材31の上面36は,スリット33の後端部34とほぼ同じかそれよりやや低い高さとなっている。図7は,押上板24をシート搬送方向前から後ろ向きに見た様子を示している。そして,第2摩擦部材32は,スリット33の後端部34上にも貼り付けられているので,その部分の上面37は第1摩擦部材31の上面36より高い。すなわち,第2摩擦部材32の上面37のうち最も高い箇所の高さは,第1摩擦部材31の上面36より高くなるようにされている。このようにすることにより,押上板24の上に載置されたシートの最下部の1枚は,必ず,第2摩擦部材32に接触することになる。
ここでは,後端部34上に第2摩擦部材32の前側端部が位置し,この部分の上面37が,図7に示すように,第1摩擦部材31の上面36より約0.5mm高くされている。上面37と上面36との高さの差は1.5mmを超えない範囲とすることが望ましい。なお,上面37の最も高い位置は,スリット33の後端部34の位置以外の位置であっても良い。
さらに,図6に示すように,第2摩擦部材32の前側端部は,ピックローラ22と第1摩擦部材31との最近接位置から後ろ側に,約8mm下がった位置に設けられている。すなわち,第2摩擦部材32の前側端部は,ピックローラ22と第1摩擦部材31との最近接位置から後ろ側に,10mmを超えない距離の位置に配置されている。なお,ここではピックローラ22の直径が約20mmであり,10mmはその半径に相当する。ピックローラ22として,より直径の大きなものを使用する場合は,第2摩擦部材32をピックローラ22からもう少し離しても良い。
このようになっていれば,シートが収納されていない状態で,ピックローラ22と第1摩擦部材31の上面36とを付勢部材26の付勢力で接触させたとき,ピックローラ22と第2摩擦部材32とは接触しない。とはいえ,ある程度の厚さのシートがあれば,シートの最下部の1枚には付勢部材26の付勢力によって,第2摩擦部材32に押圧されることになる。
第2摩擦部材32のシート幅方向の大きさは,第1摩擦部材31のシート幅方向の大きさと同程度とすればよい。すなわち,ピックローラ22の軸方向長さよりやや大きい程度とする。さらにここでは,図7に示すように,スリット33の両横の屈曲箇所に掛からない程度とすることが好ましい。その方が剥がれにくいからである。また,第2摩擦部材32の前側端部は,必ずしもスリット33の後端部34とぴったりに揃えなくてもよく,その前後に多少ずれても問題はない。従って,組立の作業性は良い。
なお,第2摩擦部材32として,厚さの大きいものを使用した場合や,シート搬送方向に比較的長いものを使用した場合では,シートの載置時に第2摩擦部材32の後端側にシート端部が当たり,挿入の妨げになるおそれがある。このような場合では,図8と図9に示すように,第2摩擦部材32の後端部を厚さが0.15mmを超えない薄いフィルム41で覆うと良い。フィルム41としては,例えば,厚さ0.1mmのPETフィルム等が使用できる。
次に,第1摩擦部材31と第2摩擦部材32として好適な材質について説明する。これらは,第1摩擦部材31のシートに対する動摩擦係数μ1と第2摩擦部材32のシートに対する動摩擦係数μ2とが,次の式1と式2の範囲となるように各部材の材質を選択するとよい。なお,μ0は一般的なシートとシートの動摩擦係数であり,μ3はピックローラ22の表面のシートに対する動摩擦係数である。なお,ここでの動摩擦係数は,一般的な市販の動摩擦係数測定器で測定することができる値である。
μ0 ≒ μ1 … (式1)
μ1 < μ2 < μ3 … (式2)
シート間の動摩擦係数μ0は,シートの種類や環境によって多少異なるが,一般的には0.6前後であることが多い。ピックローラ22の表面は,この動摩擦係数μ0程度のシートを確実に引き出すため,シートに対する動摩擦係数の十分大きい部材が使用されている。ここでは,動摩擦係数1.2以上のものを使用している。たとえ,シートの端部に裁断時のかえりがあり,上下のシートで噛み合っている場合でも,それらのシート間の動摩擦係数に換算した場合は1.0程度となる。そこで,ピックローラ22のシートに対する動摩擦係数は,このようなシート同士の動摩擦係数よりも大きくなるように設定している。また,供給ローラ対23のシートに対する動摩擦係数も,ピックローラ22と同程度のものとしている。
上記の式1,式2の関係を満たすような第1摩擦部材31のシートに対する動摩擦係数μ1としては,およそ0.55〜0.65の範囲内のものが適切である。そして,第2摩擦部材32のシートに対する動摩擦係数μ2としては,0.65〜1.2の範囲内のものが適切である。そこで,第1摩擦部材31としては例えば,厚さ1.2mm程度のコルク板を用いればよい。また,第2摩擦部材32としては例えば,厚さ0.1〜1.5mm程度のウレタンシートを用いればよい。そして,それぞれ両面テープで貼り付けたものとすればよい。コルク板としては,シートに対する動摩擦係数が約0.6程度のものが容易に入手できる。また,ウレタンシートとしては,シートに対する動摩擦係数が0.7〜0.8程度のものが容易に入手できる。これらは式1の関係を満たしている。
なお,このようにすることにより,押上板24としては,その表面のシートに対する動摩擦係数がμ0より小さいものを使用することができる。例えば,通常市販されている薄鋼板では,その入手先によって,シートに対する動摩擦係数のバラツキは大きい。本形態では,第1摩擦部材31と第2摩擦部材32とを有しているので,シートに対する動摩擦係数を気にすることなく,どのような薄鋼板でも押上板24として使用することができる。さらには,シートに対する動摩擦係数が0.16を超えない特に滑りやすいものでも,押上板24として使用することができる。
次に,本形態の給紙装置12による給紙方法について説明する。給紙カセット21にシートが収納され,給紙カセット21がカラープリンタ1の本体に装着されると,シート全体が押上板24によって押し上げられる。そして,最上部のシートがピックローラ22に当接する。このとき,最下部のシートは,第1摩擦部材31および第2摩擦部材32にともに接触している。そして,図10に矢印で示すように,ピックローラ22と給紙ローラ対23とが回転駆動されることにより,最上部のシートのみが送り出される。
シートが多数載置されているときには,第1摩擦部材31とピックローラ22との間にはさまれるシート束の厚さが大きく,付勢部材26の圧縮量が大きいため,押上板24による押圧力が大きい。また,最下部のシートに加わるシート全体の自重も大きい。そのため,最下部のシートと第1摩擦部材31との間に働く摩擦力が大きい。また,用紙間の摩擦力も大きい。従って,シートはその場にとどまる。そして,ピックローラ22のシートに対する動摩擦係数が,上記のようにシート間の動摩擦係数より大きく設定されていることから,ピックローラ22の回転によって最上部のシート1枚のみがその下のシートから離れて引き出される。
シートが残り数枚〜20枚程度となった場合,ピックローラ22と第1摩擦部材31との間に挟まれるシート束の厚みが小さくなり,付勢部材26の圧縮量はやや小さくなる。しかし,この程度の厚みがあれば,最下部のシートは,ピックローラ22の押圧力とシート束の自重により,第2摩擦部材32の上面37に確実に接触する。ここで,第2摩擦部材32のシートに対する動摩擦係数が上記のように設定されているので,最下部のシートと第2摩擦部材32との間の摩擦力はシート間の摩擦力より大きい。従って,ピックローラ22の回転によって,シート束ごと引き出されることはない。そして,最上部のシートのみあるいは数枚程度がその下のシートから離れて引き出される。本形態では,ピックローラ22で数枚程度がまとめて引き出されたとしても,給紙ローラ対23によって捌くことができる。
さらに,シートが残り1〜数枚程度となった場合,シート全体の自重はごく小さくなる。また,ピックローラ22による押圧力は,第2摩擦部材32にシートを直接押し付けないので,最下部のシートは第2摩擦部材32に軽く接触するのみである。そのため,最下部のシートと第2摩擦部材32との間の摩擦力はごく小さく,移動の抵抗となるほどの摩擦力を受けることはほとんど無い。従って,ピックローラ22による繰り出し力が上回り,残り数枚のシートでも確実に送り出される。本形態では,ピックローラ22で数枚程度がまとめて引き出されたとしても,給紙ローラ対23によって捌くことができる。また,1枚だけ載置された場合でも,確実に送り出すことができる。
以下に,本発明者による給紙評価実験の結果を示す。ここでは,第1摩擦部材31と第2摩擦部材32とをともに備えたものを実施例1,実施例1から第2摩擦部材32のみを取り外したものを比較例1とした。また,実施例1を使用して,100万枚相当の画像形成を行った後のものを実施例2とした。試験機としては,コニカミノルタビジネステクノロジーズ製bizhubC352の給紙カセットとピックローラを用い,その押上板に第2摩擦部材32を追加したものを用いた。そして,給紙ローラ対へ最大何枚の束で送り出されるかを確認した。さらに,ジャムが発生した回数を調べた。なお,本実験において使用した各部材のシートに対する動摩擦係数は以下の通りである。
第1摩擦部材 : 0.6
第2摩擦部材 : 0.8
ピックローラ : 1.2
給紙シートとしては,比較的動摩擦係数の小さいシートA,中程度のシートB,比較的動摩擦係数の大きいシートCの3種類を使用した。特にシートCは,端部に裁断時のかえりが発生していることが多く,その場合には特にシート間の摩擦が大きい。いずれのシートについても,次の4種類の向きに載置してそれぞれ試験を行った。ただし,シートを捌く等の処理はせず,梱包を解いた束のまま50枚程度を載置した。
表−1:梱包を解いてそのままの向きに載置した
表−2:表−1の前後を入れ替えた
裏−1:表−1の左右裏返し
裏−2:表−2の左右裏返し
また,本試験は,シートが硬くなり,重送しやすい環境である低温低湿環境(温度10℃,湿度15%)において実施した。なお,本試験機においては,10枚程度までの束で送り出されたものは,給紙ローラ対でほぼ確実に捌けることが分かっている。本試験は,押上板24として,シートに対する動摩擦係数が0.15,0.25の2種類のものについて行ったが,その結果はほぼ同じであった。ここでは,動摩擦係数が0.15の押上板24を使用して行った試験の結果を,次の表1に示す。
Figure 0004306738
上記の表から分かるように,実施例1,実施例2のいずれにおいても,送り出し枚数は最大5枚までであった。また,ジャムは,いずれの向きでも一度も発生しなかった。これに対し,比較例1では15〜30枚程度が送り出された。シートB,シートCではジャムも発生した。すなわち,本形態による効果は明らかであった。なお,本発明者の観察では,比較例1においては載置したシートが給紙カセット21の前方の内壁に押し付けられていたのに対し,実施例1,実施例2では,載置した位置に確実に保持されていた。
さらに,本発明者は,同じ試験機を用いて,シートが柔らかくなる高温高湿環境(気温30℃,湿度85%)での試験も行った。この場合は,シートは自重によって捌かれるので,従来より束突入のおそれはほとんど無かった。しかし,特に最後の1枚となったときに,シート裏面へのダメージや,シートにしわがよることによるジャムの発生等が無いかどうかを確認した。試験の結果は良好であった。すなわち,ジャムの発生はなく,シート裏面へのダメージも観察されなかった。
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンタ1では,給紙カセット21に設けられる押上板24の上面のうち,ピックローラ22による押圧力を受ける位置に第1摩擦部材31が,そのシート搬送方向後ろ側に第2摩擦部材32をがそれぞれ貼り付けられている。これらのシートに対する動摩擦係数は,第1摩擦部材31の動摩擦係数μ1は,シート間の動摩擦係数とほぼ同等である。第2摩擦部材32の動摩擦係数μ2は,第1摩擦部材31の動摩擦係数μ1より大きく,ピックローラ22の動摩擦係数μ3より小さい。従って,シート載置枚数が多い場合では,自重による最下部のシートと第2摩擦部材32との間の摩擦力が,シート間の摩擦力より大きい。これにより,シートの種類にかかわらず,重送が防止される。一方,載置されているシートの枚数がごく少なくなると,自重による最下部のシートと第2摩擦部材32との間の摩擦力が小さくなる。これにより,最後の数枚でも確実に給紙できる。また,押上板24自体のシートに対する動摩擦係数が小さく,滑りやすいものであっても,確実に給紙できる。
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,本形態では第1摩擦部材31を貼り付けるために形成されたスリット33の後ろ側の斜面部を利用して第2摩擦部材32を貼り付けている。スリット33やその後ろ側の高い部分がない場合では,第2摩擦部材32自身の厚さや何らかの厚み部材等を利用して,第2摩擦部材32の上面が第1摩擦部材31の上面より高くなるようにすると良い。また,第1摩擦部材31および第2摩擦部材32の材質や大きさは一例であり,シートに対する適切な動摩擦係数と強度を有するものであれば適宜変更可能である。
また,給紙カセット21や押上板24の形状等は一例であり,これに限るものではない。さらに本発明は,カラープリンタに限らず,モノクロプリンタ,コピー機,FAX機等の給紙装置を有するあらゆる画像形成装置に適用可能である。
本形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。 給紙装置を示す斜視図である。 給紙装置を示す断面図である。 ピックローラ近傍を示す斜視図である。 第1,第2摩擦部材近傍を示す平面図である。 第1,第2摩擦部材近傍を示す縦断面図である。 第1,第2摩擦部材近傍を示す横断面図である。 第1,第2摩擦部材近傍を示す縦断面図である。 押上板を示す斜視図である。 給紙装置による給紙方法を示す断面図である。
符号の説明
1 カラープリンタ
21 給紙カセット
22 ピックローラ
24 押上板
31 第1摩擦部材
32 第2摩擦部材
35 斜面部

Claims (6)

  1. シート束中の最上のシートに接触してこれを引き出すピックローラと,前記ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する給紙装置において,
    前記押上板における,シート束を挟んで前記ピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,
    前記押上板における,前記第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,前記ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,
    前記押上板における前記第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,
    前記第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,前記第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,
    前記第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,
    前記第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,
    前記ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さいことを特徴とする給紙装置。
  2. 請求項1に記載の給紙装置において,
    前記押上板には,前記第1摩擦部材の取り付け位置よりもシート搬送方向上流側に,シート束側へ向けて凸をなす凸状部が形成されており,
    前記第2摩擦部材は,前記凸状部に取り付けられており,
    前記第2摩擦部材のシート搬送方向下流側端部が,
    前記ピックローラと前記第1摩擦部材との最近接位置から,シート搬送方向上流側に,前記ピックローラの半径を超えない距離の位置にあり,
    前記第1摩擦部材のシート束側の面に対して1.5mmを超えない段差をなしていることを特徴とする給紙装置。
  3. 請求項1に記載の給紙装置において,
    前記第2摩擦部材におけるシート搬送方向上流側の端部と前記押上板とにわたって,厚さが0.15mmを超えないフィルム部材が貼り付けられていることを特徴とする給紙装置。
  4. 請求項1に記載の給紙装置において,
    前記押上板におけるシート束側の面の,前記第1摩擦部材にも前記第2摩擦部材にも覆われていない部分のシートに対する動摩擦係数が,0.16を超えないことを特徴とする給紙装置。
  5. ピックローラを有する画像形成装置に取り付けて使用されるとともに,ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する給紙カセットにおいて,
    前記押上板における,シート束を挟んでピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,
    前記押上板における,前記第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,
    前記押上板における前記第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,
    前記第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,前記第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,
    前記第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,
    前記第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,
    ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さいことを特徴とする給紙カセット。
  6. 画像形成部と,シート束中の最上のシートに接触してこれを前記画像形成部へ向けて引き出すピックローラと,前記ピックローラへ向けてシート束を押し上げる押上板とを有する画像形成装置において,
    前記押上板における,シート束を挟んで前記ピックローラと対向する位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第1摩擦部材と,
    前記押上板における,前記第1摩擦部材よりシート搬送方向上流側の,前記ピックローラと対向しない位置に設けられ,シート束中の最下のシートに接触する第2摩擦部材とを有し,
    前記押上板における前記第2摩擦部材よりシート搬送方向上流側の位置に,シート束側に凸の峰状の屈曲線が,シート幅方向に形成されており,
    前記第2摩擦部材におけるシート束側への最突出箇所が,前記第1摩擦部材のシート束側の面よりもシート束側へ向けて突出しており,
    前記第2摩擦部材のシートに対する動摩擦係数が,
    前記第1摩擦部材のシートに対する動摩擦係数より大きく,
    前記ピックローラのシートに対する動摩擦係数より小さいことを特徴とする画像形成装置。
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