JP4306453B2 - 微生物利用によるs体1,2−プロパンジオールの製法 - Google Patents

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本発明は、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物からS体1,2−プロパンジオールのみを残存させうる能力を有する微生物を用い、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物よりS体1,2−プロパンジオールを分取する方法に関する。本発明により得られるS体1,2−プロパンジオールは、医薬品・農薬・生理活性物質などの光学活性化合物の製造において極めて重要、且つ有用な化合物である。
S体1,2−プロパンジオールの製法としては、化学的方法としてBINAP触媒やコバルトサレーン触媒などの化学触媒を用いる方法が知られている。しかし、これら製法では、得られる1,2−プロパンジオールは光学的、化学的に低純度であり、また、高価な光学活性触媒が必要であるため、工業的に安価で経済的な製法とはいい難い。
生物学的方法としては、C4化合物である1,2−ブタンジオール以上のアルキル鎖をもつ直鎖の1,2−ジオールのエナンチオマー混合物に微生物を作用させ、高光学純度のS体1,2−ジオールを採取する方法が知られているが、C3化合物である、1,2−プロパンジオールについては記載されてない(特許文献1。)また同発明者等は1,2−プロパンジオールに微生物を作用させたが、S体1,2−プロパンジオールの収率、光学純度とも50%を超えるものは無かったと述べている(非特許文献3)。また、二階堂らによるシュードモナス属微生物を用いたS体1,2−プロパンジオールの製法も知られている(特許文献2)がアセトバクター属によるものではない。
以上に述べたように、アセトバクター属に属する微生物を使用して、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物からS体1,2−プロパンジオールを得る製法は今まで知られていない。
特開平2-128699 特開平6-30790 Tetrahedron Lett., vol. 32, pp. 4163-4166, 1991
本発明は微生物を利用し、上記に示す従来の方法より、安価で、且つ技術的に簡便な方法により、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物から高光学純度のS体1,2−プロパンジオールを製造することを目的とするものである。
本発明者らは、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物よりS体1,2−プロパンジオールのみを残存させうる能力を有する微生物を求め、鋭意研究した結果、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物からR体1,2−プロパンジオールを優先的に分解する能力を有し、かつR体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として資化増殖し得る微生物の単離に成功し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、アセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物もしくはその培養菌体を、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地中で培養し、R体1,2−プロパンジオールを資化分解せしめ、その培養液から、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法に関する。
また本発明はアセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物もしくはその培養菌体を、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地を培養槽に添加しながら連続培養し、R体1,2−プロパンジオールを資化分解せしめ、培養槽から流出する培養物から、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法に関する。
更に本発明は、アセトバクター属に属し、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、S体1,2−プロパンジオールを残存させる能力を有する微生物、培養菌体、またはその処理物を1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法に関する。
本発明において作用させとは休止菌体あるいは酵素として基質と接触させることを意味する。
本発明の方法により、S体1,2−プロパンジオールを製造する際に利用する微生物としては、アセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物、あるいは1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、S体1,2−プロパンジオールを残存させ得る微生物である限り特に制限されないが、好ましくはアセトバクター パーオキシダンス (Acetobacter peroxydans) DS−NK−SP1(国内寄託番号: FERM P-19513)である。
本発明によればアセトバクター属に属する微生物、例えばアセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans)DS−NK−SP1を利用し、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物から、高光学純度のS体1,2−プロパンジオールを原料的に安価で、且つ工業的に簡便な方法によって製造することができる。
本発明を実施するには、まず本発明で使用する微生物(以下、本微生物とも言う)の培養液を作る。本微生物を培養するための培地としては、通常本微生物が生育する培地ならばいずれでも使用することができる。例えば炭素源としては、グルコース、フラクトースなどの炭水化物、エタノール、1,2−プロパンジオール等のアルコール類、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸等の有機酸もしくはその塩類が挙げられるが、好ましくは1,2−プロパンジオールである。また窒素源としては硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機窒素化合物および尿素、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、肉エキス、コーンスチープリカー等の有機窒素化合物とそれらの混合物を挙げることができる。その他、無機塩としてリン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩など、さらに必要に応じてビタミン類を加えてもよい。
具体的には1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とし、各種アンモニウム塩や硝酸塩等の無機態窒素を窒素源として、その他微量の金属塩やリン酸塩等の無機塩類を加えた完全合成培地、あるいはブイヨン培地やペプトン培地等の有機態炭素源ならびに窒素源、そして無機栄養源を含む通常一般によく用いられる栄養培地中に1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を添加した培地等が使用できる。
培養は常法によればよく例えばpHを3から6、好ましくは4から5 、培養温度は15℃から40℃、好ましくは20℃ から37℃の範囲で振盪培養あるいは通気撹拌培養等の方法を用いて好気的に20から96時間行うことが好ましい。
本発明を実施するための第1の実施形態
本発明を実施するための第1の実施形態は、アセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物もしくはその培養菌体を、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地中で培養し、R体1,2−プロパンジオールを資化分解せしめ、その培養液から、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法(以下資化分割法とも言う)である。
具体的には予め前記方法で培養しておいた本微生物の培養液を種菌として、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源として含有する培地に接種し、さらに好気的に培養し、培養液から残存するS体1,2−プロパンジオールを分取する方法である。
本発明の資化分割法による光学分割法では、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物の濃度は0.1〜15%(v/v)が好ましく、初期に一括して加えてもよいし、分割添加してもよい。また、連続的に添加を行うことも可能である。基質を連続的に添加する場合、2槽以上の培養槽を連結して使用しても良い。培養は通常、攪拌下あるいは振盪下で行う。また、必要に応じて通気等を行ってもよい。培養時間は基質濃度ならびにその他の条件により異なるが24〜120時間で終了するのがよい。好ましくは目的とする光学活性体の光学純度を測定して終点を決定するのがよい。すなわち1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物のR体1,2−プロパンジオールが全て資化された時点で培養を停止するのがよい。
本培養は至適pH 、至適温度の範囲内で行うのがよい。例えばpHを3から6、好ましくは4から5 、温度は15℃から40℃、好ましくは20℃ から37℃の範囲で行う。なお、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物の分解に伴い、培養液中のpH が徐々に低下または上昇する場合、適当なアルカリ源または酸源を添加することにより培養液中のpH を至適範囲内にコントロールする必要がある。
例えば、アルカリ源として、炭酸カルシウム懸濁液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸カリウム、炭酸アンモニウなどの炭酸アルカリ塩水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルウム水溶液などの水酸化アルカリ塩水溶液、あるいはアンモニア水溶液など通常、酸を中和させることができるものを用いてpHを至適範囲内に制御するのがよい。また酸源としては塩酸、硫酸、リン酸などを使用できる。
このようにして培養液中に残存するS体1,2−プロパンジオールは一般的な方法で回収および精製できる。例えば、培養液から菌体を遠心分離で除いた後、上清をエバポレーターにより濃縮し、酢酸エチル等の溶媒で抽出する。次いで抽出液を無水硫酸マグネシウムにより脱水した後、減圧下で溶媒を除去しS体1,2−プロパンジオールのシロップを得ることができる。さらに蒸留により精製してもよい。
本発明を実施するための第2の実施形態
本発明を実施するための第2の実施形態は、アセトバクター属に属し、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、S体1,2−プロパンジオールを残存させる能力を有する微生物、培養菌体、またはその処理物を1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法(以下休止菌体法とも言う)である。
具体的には、前記方法で作られた培養液をそのまま用い、該培養液に1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を添加する方法、または、遠心分離などにより菌体を分離し、これをそのまま、あるいは洗浄後、緩衝液や水などに懸濁したものに1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を添加し反応させる方法等が挙げられる。この方法で用いる菌体は、そのままでもよいし、菌体破砕物、アセトン処理、凍結乾燥などの処理を行ったものでもよい。また菌体または菌体処理物を、アルギン酸ゲル法、ポリアクリルアミドゲル法、寒天ゲル法などの公知の方法で固定化して用いることもできる。さらに、処理物としては公知の方法を組み合わせて菌体から精製取得した酵素も利用できる。
本発明の休止菌体法による光学分割法では、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物の濃度は0.1〜15%(v/v)が好ましく、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物は初期に一括して加えてもよいし、分割添加してもよい。また、連続的に添加を行うことも可能である。反応は通常、攪拌下あるいは振盪下で行う。また、必要に応じて通気等を行ってもよい。反応時間は基質濃度ならびにその他の条件により異なるが24〜120時間で終了するのがよい。好ましくは目的とする光学活性体の光学純度を測定して終点を決定するのがよい。すなわち1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物のR体1,2−プロパンジオールが全て分解された時点で反応を停止するのがよい。
本反応は至適pH 、至適温度の範囲内で行うのがよい。例えばpHを3から6、好ましくは4から5、温度は15℃から40℃、好ましくは20℃ から37℃の範囲で行なうのが良い。なお、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物の分解に伴い、反応液中のpHが徐々に低下または上昇する場合、適当なアルカリ源または酸源を添加することにより反応液中のpHを至適範囲内にコントロールする必要がある。
例えば、アルカリ源として炭酸カルシウム懸濁液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸カリウム、炭酸アンモニウなどの炭酸アルカリ塩水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルウム水溶液などの水酸化アルカリ塩水溶液、あるいはアンモニア水溶液など通常、酸を中和させることができるものを用いてpHを至適範囲内に制御するのがよい。また酸源としては塩酸、硫酸、リン酸等を使用できる。
このようにして反応液中に残存するS体1,2−プロパンジオールは一般的な方法で回収および精製できる。例えば、反応液から菌体を遠心分離で除いた後、上清をエバポレーターにより濃縮し、酢酸エチル等の溶媒で抽出する。次いで抽出液を無水硫酸マグネシウムにより脱水した後、減圧下で溶媒を除去しS体1,2−プロパンジオールのシロップを得ることができる。さらに蒸留により精製してもよい。
本発明の資化分割法による光学分割法では、使用する培地が1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする完全合成培地であるため、雑菌に汚染されることが少ない。なお、本願発明方法を実施するには、予め大量の菌体を調製することなく、本微生物を1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする完全合成培地に直接植菌、培養し、目的とするS体1,2−プロパンジオールを回収することができるため、高価な栄養培地を用いない経済的なに生産方法である。
また、本発明の休止菌体法による光学分割法では、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする完全合成培地で増殖可能な微生物を用いても良いく、この場合には菌体の調製に高価な栄養培地を用いる必要はなく、より安価な培地での菌体調製が可能である。
本発明で使用する微生物は、上記の如くR体1,2−プロパンジオールの立体選択的資化能を有しR体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として資化増殖することができるか、あるいは1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、R体1,2−プロパンジオールを立体選択的に分解することができるアセトバクター属に属する微生物であり、好ましくはアセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans)DS−NK−SP1を挙げることができる。また、本微生物は野生株、変異株、または細胞融合、もしくは遺伝子組換え株など、いずれの株でも用いることができる。
アセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans)DS−NK−SP1株はR体1,2−プロパンジオールの立体選択的資化能を有し、かつ1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、R体1,2−プロパンジオールを立体選択的に分解することができる菌である。
本菌株は形態学的・生理性状学的試験および16SrRNA塩基配列解析からアセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans)と同定され、独立行政法人産業技術総合研究所に以下の国内寄託番号で寄託されている。国内寄託番号:FERM P-19513 アセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans) DS−NK−SP1
以下に本菌株の形態学的、生理性状学的性質を示す。
Figure 0004306453
Figure 0004306453
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特に記載のない限り%(w/v)を表す。
ラセミ体1,2−プロパンジオール10g/L、酵母エキス10g/L、ペプトン10g/Lからなる組成の培地100ml(pH5.0)を入れた500ml容のバッフル付き三角フラスコを121℃で15分間、加圧蒸気滅菌した。次いで、あらかじめ同栄養培地プレートで生育させたAcetobacter peroxydans DS−NK−SP1株の菌体を1白金耳分植菌し、30℃で24時間培養を行い、種培養液を得た。
Figure 0004306453
表3に示す組成の溶液にラセミ体1,2−プロパンジオールを8%添加した培地2.5L(pH5.0)を入れた5L容培養器を121℃、15分間加圧蒸気滅菌し、ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地を作製した。次いで種培養液100ml(4%(v/v))を上記ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地に無菌的に接種し、30℃、500rpm、0.1vvmの条件で3日間通気撹拌培養を行った。
なお、pHの測定および制御は連動させたpHコントローラーを用いて行い、7.5N の水酸化ナトリウム水溶液あるいは2Nの塩酸によりpH4.0から5.5に制御した。培養終了後の培地中に生育した微生物の濁度は12.5OD(660nmでの濁度)で、その時の培養液中に残存する1,2−プロパンジオールをガスクロマトグラフィー( カラム担体:Silicone OV1701、Uniport HP 、10% 、mesh60/80)で分析した結果、1,2−プロパンジオールの濃度は2.6% であった。培養終了後、培養液を取り出し、遠心操作により菌体を除去し、上清液を得た。この上清液をエバポレーターで濃縮し、エーテルにより抽出した。続いて無水硫酸マグネシウムにより脱水後、減圧下でエーテルを除去し、1,2−プロパンジオールのシロップを得た。
本物質の光学純度の測定は、得られた1,2−プロパンジオールの光学異性体を無水トリフルオロ酢酸によりトリフルオロ酢酸化した後、アステック社製のキャピラリーカラムG − T A ( 0.25 mm(ID) x 30m (Length)) を用いたガスクロマトグラフィーにより光学異性体の分析を行なった。その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度99%e.e.以上のS体1,2−プロパンジオールであった。
光学異性体の分析条件:カラム温度,60℃;検出器温度,200℃;キャリアーガス,窒素;流速,0.5ml/min;検出器,FID;スプリット比,200/1;リテンションタイム:R体 11.4分、S体 17.6分
表3に示す組成の溶液にラセミ体1,2−プロパンジオールを5%添加した培地1.0L(pH5.0)を入れた2L容培養器を121℃、15分間加圧蒸気滅菌し、ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地を作製した。次いで実施例1と同様の方法で得た種培養液を40ml(4%(v/v))を上記ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地に無菌的に接種し、30℃、500rpm、0.1vvmの条件で40時間培養を行ったところ、40時間後の時点で菌体濁度は5.6OD(660nmでの濁度)で、その時の1,2−プロパンジオール濃度は3.2% であった。なお、pH の測定および制御は実施例1と同様に行った。
次に連続培養に移り、表3に示す組成の溶液1.0L(pH5.0)を入れた2L容培養器を121℃で15分間、加圧蒸気滅菌後、一槽目と接続した。一槽目、二槽目とも、30℃、500rpm、0.1vvmの条件で行った。表3に示す組成の溶液に単一炭素源としてラセミ体1,2−プロパンジオールを10%加え、連続培養時の供給培地とした。一槽目への培地供給流量を0.01L/時間、として連続培養を行った。
結果として、定常状態において一槽目の1,2−プロパンジオール濃度は3.3%、菌体濁度は11.0OD(660nmでの濁度)、比増殖速度μは0.01(h-1)、比基質消費速度νは0.063(g/OD・h・l)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は13OD(660nmでの濁度) 1,2−プロパンジオール濃度は1.5%であった。
二槽目から流出する培養液中の1,2−プロパンジオールを回収し実施例1と同様に光学純度を測定した。その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度98%e.e.以上のS体1,2−プロパンジオールであった。
表3に示す組成の溶液にラセミ体1,2−プロパンジオールを3%添加した培地1.0L(pH5.0)を入れた2L容培養器を121℃、15分間加圧蒸気滅菌し、ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地を作製した。次いで実施例1と同様の方法で得た種培養液40ml(4%(v/v))を上記ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地に無菌的に接種し、30℃、500rpm、0.1vvmの条件で24時間培養を行ったところ、菌体濁度は9.6OD(660nmでの濁度)で、その時の1,2−プロパンジオール濃度は0.9% であった。なお、pH の測定および制御は実施例1と同様に行った。
次いで、ラセミ体1,2−プロパンジオールを50g(5%)添加し、30℃、800rpm、0.2vvmの条件で30時間反応を行った。このときの1,2−プロパンジオール濃度は1.3% であった。反応終了後、反応液を取り出し、実施例1と同様にして1,2−プロパンジオールを回収し光学純度を測定した。その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度99%e.e.以上のS体1,2−プロパンジオールであった。
ラセミ体1,2−プロパンジオール10g/L、酵母エキス10g/L、ペプトン10g/Lからなる組成の培地1.0L(pH5.0)を入れた2L容培養器を121℃、15分間加圧蒸気滅菌し、次いで、実施例1と同様の方法で得た種培養液10ml(1%(v/v))を無菌的に接種し、30℃、500rpm、0.1vvmの条件で24時間培養を行った。遠心分離により培養液から菌体を分離し、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH5.0)で洗浄後、同緩衝液1.0Lに菌体を懸濁した。これにラセミ体1,2−プロパンジオールを50g(5%)添加し、2L容培養器にて30℃、800rpm、0.2vvmの条件で30時間反応を行った。結果として、反応終了後の1,2−プロパンジオール濃度は2.0%であった。反応終了後、反応液を取り出し、実施例1と同様にして光学純度の測定を行った。その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度99%e.e.以上のS体1,2−プロパンジオールであった。
培地を表3に示す組成の溶液にラセミ体1,2−プロパンジオールを3%添加した培地に変更した以外は実施例4と同様にして行った。結果として、反応終了後の1,2−プロパンジオール濃度は1.9%であった。反応終了後、反応液を取り出し、実施例1と同様にして光学純度の測定を行った。その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度99%e.e.以上のS体1,2−プロパンジオールであった。

Claims (6)

  1. アセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物もしくはその培養菌体を、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地中で培養し、R体1,2−プロパンジオールを資化分解せしめ、その培養物から、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法。
  2. アセトバクター属に属し、R体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物もしくはその培養菌体を、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地を培養槽に添加しながら連続培養し、R体1,2−プロパンジオールを資化分解せしめ、培養槽から流出する培養物より、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法。
  3. アセトバクター属に属し、1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、S体1,2−プロパンジオールを残存させる能力を有する微生物、その培養菌体、またはその処理物を1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用させ、残存するS体1,2−プロパンジオールを分取することを特徴とするS体1,2−プロパンジオールの製法。
  4. 微生物がR体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として生育しうる微生物であることを特徴とする、請求項3に記載のS体1,2−プロパンジオールの製法。
  5. 微生物がアセトバクター パーオキシダンス (Acetobacter peroxydans) DS−NK−SP1(国内寄託番号:FERM P-19513)である請求項1〜4のいずれかに記載のS体1,2−プロパンジオールの製法。
  6. アセトバクター パーオキシダンス(Acetobacter peroxydans) DS−NK−SP1(国内寄託番号:FERM P-19513)。
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CN105651914A (zh) * 2014-12-02 2016-06-08 深圳翰宇药业股份有限公司 一种直接测定sglt2抑制剂共晶体中手性共晶溶剂的方法

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