JPH06141887A - 光学活性1,3−ブタンジオールの製法 - Google Patents

光学活性1,3−ブタンジオールの製法

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JPH06141887A
JPH06141887A JP29578792A JP29578792A JPH06141887A JP H06141887 A JPH06141887 A JP H06141887A JP 29578792 A JP29578792 A JP 29578792A JP 29578792 A JP29578792 A JP 29578792A JP H06141887 A JPH06141887 A JP H06141887A
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直紀 河田
Akikazu Matsuyama
彰収 松山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡便な方法で、かつ光学純度の高い (R)−
1,3−ブタンジオールを得る方法を提供する。 【構成】 1,3−ブダンジオールのエナンチオマー混
合物に、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属する
微生物群から選ばれ、1,3−ブタンジオールのエナン
チオマー混合物に作用し、(R) −1,3−ブタンジオー
ルを残存させうる能力を有する微生物、或いはその処理
物を作用させ、残存する光学活性な (R)−1,3−ブタ
ンジオールを採取する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学活性1,3−ブタン
ジオールの製法に関する。更に詳しくは、1,3−ブタ
ンジオールのエナンチオマー混合物に、特定の微生物或
いはその処理物を作用させ、残存する光学活性1,3−
ブタンジオールを採取することを特徴とする光学活性
1,3−ブタンジオールの製法に関する。光学活性1,
3−ブタンジオールは種々の医薬品、例えば、抗生物質
等の重要合成原料である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
光学活性1,3−ブタンジオールを製造する方法として
は、(1) 化学的に合成されたラセミ体の1,3−ブタン
ジオールを光学分割剤を用いて光学分割する方法(特開
昭61−191631号公報)や、(2) 光学活性化合物で処理し
たラネーニッケル触媒を用いて4−ヒドロキシ−2−ブ
タノンから不斉合成する方法(特開昭58−204187号公報
及びBull.Chem.Soc.Jpn., 53, 1356-1360(1980))等が知
られている。
【0003】しかし、上記(1) 及び(2) の方法とも高価
な光学分割剤、触媒を用いねばならないこと、(2) の方
法は光学純度が低いこと等の欠点があるため、経済的に
優れ、且つ、簡便な手段で光学純度の高い光学活性1,
3−ブタンジオールを得る方法の確立が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは経済的に優
れ、且つ簡便な方法で、光学純度の高い光学活性1,3
−ブタンジオールを得る方法として微生物を作用させる
方法に着目し、この目的に適した微生物を検索した結
果、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属する微生
物群から選ばれた微生物が1,3−ブタンジオールのエ
ナンチオマー混合物に作用し、(R) −1,3−ブタンジ
オールを残存させることを見出し、本発明を完成したも
のである。
【0005】即ち、本発明は、1,3−ブダンジオール
のエナンチオマー混合物に、クリプトコッカス(Crypto
coccus)属に属する微生物群から選ばれ、1,3−ブタ
ンジオールのエナンチオマー混合物に作用し、(R) −
1,3−ブタンジオールを残存させうる能力を有する微
生物、或いはその処理物を作用させ、残存する光学活性
な (R)−1,3−ブタンジオールを採取することを特徴
とする光学活性1,3−ブタンジオールの製法を提供す
るものである。
【0006】本発明に使用する微生物としては、クリプ
トコッカス(Cryptococcus)属に属する微生物群から選
ばれた微生物で、1,3−ブタンジオールのエナンチオ
マー混合物に作用し、(R) −1,3−ブタンジオールを
残存させうる能力を有する微生物であればいずれも使用
可能である。具体的には1,3−ブタンジオールのエナ
ンチオマー混合物に作用し、(R) −1,3−ブタンジオ
ールを残存させうる能力を有する微生物としては、茨城
県の土壌より分離したクリプトコッカス・フミコラス(C
ryptococcus humicolus) DCG1857と命名された微生物を
挙げることができる。
【0007】本発明で使用する上記のクリプトコッカス
・フミコラス(Cryptococcus humicolus) DCG 1857 は以
下のような菌学的性質を有する。 培地における生育状態 麦芽エキス寒天培地(麦芽エキス2%、ペプトン 0.1
%、ブドウ糖2%、寒天2%、pH無調整)上でコロニー
表面は平滑〜皺状で、平滑部では粘稠、皺状部は膜質で
ある。色調は白〜黄色である。形態は周縁部が葉状で、
周辺に菌糸が存在する。芽出胞子は楕円であり、菌糸、
擬菌糸は多数存在する。
【0008】 生理生化学的性質 1) 炭素源の資化性 嫌気条件: グルコース − 好気条件: グルコース +、 ガラクトース +、 ソルボース +、 ラムノース +、 ズルシット +、 イノシトール +、 マンニトール +、 ソルビトール +、 グリセロール +、 エリスリトール +、 D−アラビノース +、 L−アラビノース +、 リボース +、 D−キシロース +、 L−キシロース +、 アドニトール +、 α−メチルグリコシド +、 サリシン +、 セロビオース +、 マルトース +、 ラクトース +、 メリビオース +、 シュークロース +、 トレハロース +、 イヌリン −、 メレジトース +、 ラフィノース −、 澱 粉 −、 キシリトール +、 グルコン酸塩 +、 2−ケトグルコン酸塩 +、 5−ケトグルコン酸塩 + 2) 硝酸塩の同化 − 3) 37℃での生育 − 4) ウレアーゼ活性 + このような菌学的性質を有するクリプトコッカス・フミ
コラス(Cryptococcushumicolus)DCG 1857は野生株、変
異株、又は細胞融合もしくは遺伝子操作法などの遺伝的
手法により誘導される組み替え株など、いずれの株でも
好適に用いることができる。尚、このクリプトコッカス
・フミコラス(Cryptococcus humicolus)DCG 1857は、工
業技術院微生物工業技術研究所に微工研条寄第4025号
(FERM BP-4025)として平成4年10月8日に寄託されて
いる。
【0009】本発明に用いる微生物を培養するための培
地はその微生物が増殖し得るものであれば特に制限はな
い。例えば、炭素源としては、上記微生物が利用可能で
あればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、フ
ルクトース、シュクロース、デキストリン等の糖類、ソ
ルビトール、エタノール、グリセロール等のアルコール
類、フマール酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの
有機酸類及びその塩類、パラフィン等の炭化水素類な
ど、或いはこれらの混合物を使用することができる。窒
素源としては例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニ
ウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム
塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモウニム等の
有機酸のアンモニウム塩、肉エキス、酵母エキス、コー
ンスティープリーカー、カゼイン加水分解物、尿素など
の無機・有機含窒素化合物、或いはこれらの混合物を使
用することができる。他に無機塩、微量金属塩、ビタミ
ン類など、通常の培養に用いられる栄養源を適宜、混合
して用いることができる。また必要に応じて微生物の増
殖を促進する因子、本発明の目的化合物の生成能力を高
める因子、或いは培地のpH保持に有効な物質も添加でき
る。培養方法としては培地pHは 3.0〜9.5 、好ましくは
4〜8、培養温度は20〜45℃、好ましくは25〜37℃で、
嫌気的或いは好気的に、その微生物の生育に適した条件
下5〜120 時間、好ましくは12〜72時間程度培養する。
【0010】1,3−ブタンジオールのエナンチオマー
混合物から光学活性な1,3−ブタンジオールを生成さ
せる方法としては、上記微生物の培養液をそのまま用
い、該培養液に1,3−ブタンジオールのエナンチオマ
ー混合物を添加する方法、遠心分離等により、菌体を分
離し、これをそのまま、或いは洗浄した後、緩衝液、水
等に再懸濁したものに、1,3−ブタンジオールのエナ
ンチオマー混合物を添加し反応させる方法などがある。
この反応の際、グルコース、シュクロース等の炭素源を
エネルギー源として添加した方が良い場合もある。
【0011】また、菌体は生菌体のままでも良いし、菌
体破砕物、アセトン処理、凍結乾燥などの処理を施した
ものでも良い。また、これらの菌体或いは菌体処理物
を、例えば、ポリアクリルアミドゲル法、含硫多糖ゲル
法(カラギーナンゲル法等)、アルギン酸ゲル法、寒天
ゲル法などの公知の方法で固定化して用いることもでき
る。更に、菌体処理物から、公知の方法を組み合わせて
精製取得した酵素も使用できる。
【0012】1,3−ブタンジオールのエナンチオマー
混合物はそのまま、或いは水に溶解し、又は反応に影響
を与えないような有機溶媒に溶解したり、界面活性剤な
どに分散させたりして、反応始めから一括に或いは分割
して添加しても良い。反応はpH2〜10、好ましくはpH3
〜9の範囲で、温度は10〜60℃、好ましくは20〜40℃の
範囲で、1〜120 時間程度、攪拌下或いは静置下で行
う。反応時間を長くすると(R)−1,3−ブタンジオー
ルの残存量は減少するが、光学純度の高い光学活性な
(R)−1,3−ブタンジオールを得ることが可能であ
る。基質の使用濃度は特に制限されないが、0.1 〜10重
量%程度が好ましい。
【0013】反応によって残存生成した光学活性な(R)
−1,3−ブタンジオールの採取は反応液から直接或い
は菌体分離後、有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロ
マトグラフィー等の通常の精製方法を用いれば容易に得
られる。
【0014】
【実施例】以下、本発明を具体的に実施例にて説明する
が、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでは
ない。尚、実施例における反応液中の1,3−ブタンジ
オールの光学純度は反応により得られた光学活性1,3
−ブタンジオールを常法により塩化アセチルでアセチル
化した後、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグ
ラフィー(カラム:ダイセル化学工業製キラルセルO
B、溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=19:1、
波長220nm 、流速 0.5ml/分)により測定した(保持時
間;(S) 体15分、(R) 体19.3分)。
【0015】実施例1 上記の菌体調製用培地10mlを直径21mmの試験管に入れ、
滅菌後、クリプトコッカス・フミコラス(Cryptococcus
humicolus)DCG 1857を植菌し、30℃で24時間振盪培養
を行った。続いて遠心分離で菌体を分離し、生理食塩水
で1回洗浄し、生菌体を得た。
【0016】次に直径21mm試験管に蒸溜水3mlを入れ、
これに上記生菌体を懸濁した後、1,3−ブタンジオー
ルのラセミ体を30mg添加し、30℃で24時間往復振盪反応
させた。反応終了後、遠心分離にて除菌し、得られた上
澄液を塩化ナトリウムで飽和させた後、酢酸エチル50ml
を用いて抽出を行い、酢酸エチルを無水芒硝で脱水後、
脱溶媒を行いシロップを得、これを常法により塩化アセ
チルでアセチル化した後、溶媒に溶解し、高速液体クロ
マトグラフィーにて分析した結果、光学純度37%eeの
(R)−1,3−ブタンジオールが得られた。
【0017】
【発明の効果】本発明の特定の微生物を用いた光学活性
1,3−ブタンジオールの製造方法は、簡便に光学純度
の高い光学活性な (R)−1,3−ブタンジオールを製造
することを可能にさせるものであり工業的に極めて有利
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,3−ブダンジオールのエナンチオマ
    ー混合物に、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属
    する微生物群から選ばれ、1,3−ブタンジオールのエ
    ナンチオマー混合物に作用し、(R) −1,3−ブタンジ
    オールを残存させうる能力を有する微生物、或いはその
    処理物を作用させ、残存する光学活性な (R)−1,3−
    ブタンジオールを採取することを特徴とする光学活性
    1,3−ブタンジオールの製法。
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