JP3157609B2 - 光学活性1,2−プロパンジオールの製法 - Google Patents

光学活性1,2−プロパンジオールの製法

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JP3157609B2 JP18813892A JP18813892A JP3157609B2 JP 3157609 B2 JP3157609 B2 JP 3157609B2 JP 18813892 A JP18813892 A JP 18813892A JP 18813892 A JP18813892 A JP 18813892A JP 3157609 B2 JP3157609 B2 JP 3157609B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学活性1,2 −プロパン
ジオールの製造法に関する。さらに詳しくは、1,2 −プ
ロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用し、どち
らか一方のエナンチオマーのみを残存させうる能力を有
する微生物あるいはその処理物を作用させ、残存する光
学活性1,2 −プロパンジオールを採取することを特徴と
する光学活性1,2 −プロパンジオールの製造法に関す
る。光学活性1,2 −プロパンジオールは液晶、種々の医
農薬品、例えば抗菌剤の重要合成原料として有用であ
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
光学活性1,2 −プロパンジオールを製造する方法として
は、(1) 糖類を原料とし、微生物の発酵によって (R)−
1,2 −プロパンジオールを製造する方法(例えばBIO/TE
CHNOLOGY, , 651−654, 1986)、(2) グリセロールデ
ヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの酵
素を用いてヒドロキシアセトンを不斉還元し、(R) −1,
2 −プロパンジオールを製造する方法、あるいは、1,2
−プロパンジオールのエナンチオマー混合物に該酵素を
作用させて (S)−1,2 −プロパンジオールを残存させる
方法 (J.Org.Chem., 51, 25−36, 1986、Bioorg.Che
m., 13, 121−130, 1985)、(3) 1,2 −プロパンジオー
ルのエナンチオマー混合物に酵母を作用させて(S)−1,2
−プロパンジオールを残存させる方法(J.Mol.Catal.,
60, L33−L35, 1990)、(4) 光学活性なルテニウム−B
INAP触媒を用いてヒドロキシアセトンを不斉還元す
る方法(特開昭63−316744号) 、(5) 光学活性乳酸エス
テルを還元する方法や、(6) 光学活性なラクチドを還元
する方法(特開平2−72129 号) 、(7) 光学活性な光学
分割剤を用いて光学分割する方法(特開昭61−44888
号、特開昭64−75435 号) 等が知られている。
【0003】(1) は得られる1,2 −プロパンジオールの
光学純度は高いが、原料の糖に対して収率が低く、ま
た、培養液中に蓄積する濃度も低い。さらに、副生物も
多く1,2 −プロパンジオールの精製も容易ではない。
(2) は精製した酵素を用いねばならず、また、高価なN
AD(P)などの補酵素およびその補酵素を再生するた
めグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼまたはギ酸
デヒドロゲナーゼ等の酵素も必要であり、安価な製造法
ではない。(3) は得られる (S)−1,2 −プロパンジオー
ルの光学純度が35%e.e.と低い欠点があり、(4) は高価
な光学活性触媒を用いねばならないこと、原料のヒドロ
キシアセトンがラセミ体の 1,2−プロパンジオールに比
べはるかに高価であるという欠点がある。(5),(6) はエ
ステル化、あるいはラクチド化した後、高価な還元触媒
を必要とし、操作も繁雑である。また、原料のL−乳酸
は安価であるが、D−乳酸は高価で、(R) −1,2 −プロ
パンジオールを (S)−1,2 −プロパンジオールと同様に
は得られない。(7) は光学分割剤の合成が困難かつ高価
であり、工業レベルでの実施は容易ではない。以上述べ
たように (1)〜(7) の方法は経済的かつ簡便な方法では
なく、安価に光学活性 1,2−プロパンジオールを製造す
る工業的な製法の確立が望まれていた。
【0004】また、特開平2−128699号において小倉ら
は、(S) −1,2 −ジオールの製法として、1,2 −ブタン
ジオール以上のアルキル鎖長の直鎖の1,2 −ジオールに
ついて、1,2 −ジオールのエナンチオマー混合物に微生
物を作用させ、光学純度の高い (S)−1,2 −ジオールを
採取する方法を開示しているが、1,2 −プロパンジオー
ルについては全く記載されていない。また、同著者等は
(Agri.Biol.Chem.,54(7), 1819−1827, 1990) におい
て、1,2 −プロパンジオールに微生物を作用させたが、
(S) −1,2 −プロパンジオールの収率、光学純度とも50
%を超えたものはなかったと述べている。このように、
1,2 −プロパンジオールのエナンチオマー混合物に微生
物を作用させ、光学純度の極めて高い1,2 −プロパンジ
オールを採取する方法は、今までまったく知られていな
かった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は経済的に優
れ、かつ簡便な方法で光学純度の高い光学活性1,2 −プ
ロパンジオールを得る方法として、微生物を作用させる
方法に着目し、この目的に適した微生物を広く自然界よ
り検索した結果、シュードモナス属に属する微生物群か
ら選ばれた微生物が、1,2 −プロパンジオールのエナン
チオマー混合物に作用し、(R) −1,2 −プロパンジオー
ルを残存させること、および、シュードモナス属に属す
る微生物群から選ばれた微生物が、1,2 −プロパンジオ
ールのエナンチオマー混合物に作用し、(S) −1,2 −プ
ロパンジオールを残存させることを見出し、本発明を完
成したものである。
【0006】すなわち本発明は、1,2 −プロパンジオー
ルのエナンチオマー混合物に作用して (R)−1,2 −プロ
パンジオールを残存させうる能力を有する微生物あるい
はその処理物を、1,2 −プロパンジオールのエナンチオ
マー混合物に作用させ、残存する (R)−1,2 −プロパン
ジオールを採取することを特徴とする (R)−1,2 −プロ
パンジオールの製法を提供するものである。また、本発
明は、シュードモナス属に属し、1,2 −プロパンジオー
ルのエナンチオマー混合物に作用して (S)−1,2 −プロ
パンジオールを残存させうる能力を有する微生物あるい
はその処理物を、1,2 −プロパンジオールのエナンチオ
マー混合物に作用させ、残存する (S)−1,2 −プロパン
ジオールを採取することを特徴とする (S)−1,2 −プロ
パンジオールの製法を提供するものである。
【0007】更に本発明は、シュードモナス属に属し、
かつ、立体特異的に一方のエナンチオマーの1,2 −プロ
パンジオールを代謝、分解する能力を有する微生物群か
ら選ばれた新規な微生物を提供するものである。
【0008】本発明において、 (R)−1,2 −プロパンジ
オールを製造する際に使用する微生物としては、1,2 −
プロパンジオールのエナンチオマー混合物に作用して
(R) −1,2 −プロパンジオールを残存させる能力を有す
る微生物である限り特に制限されないが、特にシュード
モナス(Pseudomonas) 属に属する微生物群から選ばれる
ものが好ましい。また、 (S)−1,2 −プロパンジオール
を製造する際に使用する微生物としては、シュードモナ
ス (Pseudomonas)属に属し、1,2 −プロパンジオールの
エナンチオマー混合物に作用し、(S) −1,2 −プロパン
ジオールを残存させる能力を有する微生物である限り特
に制限されない。シュードモナス (Pseudomonas)属に属
する微生物のうち、 (R)−体を残存させるものとして
は、シュードモナス プチダ (Pseudomonas putida) T
RB−2、TRP−4、シュードモナス スピーシズ
(Pseudomonas sp.)TRP−13などが挙げられ、 (S)−
体を残存させるものとしては、シュードモナス プチダ
(Pseudomonas putida) TRP−7などがあげられる。
これらの微生物は、野性株、変異株、または細胞融合も
しくは、遺伝子操作などの遺伝的手法により誘導される
組み換え株など、いずれの株でも好適に用いることがで
きる。また、これらの微生物は、少なくとも一種使用す
ればよい。
【0009】シュードモナス プチダ (Pseudomonas pu
tida) TRB−2、TRP−4、シュードモナス スピ
ーシズ (Pseudomonas sp.)TRP−13、シュードモナス
プチダ (Pseudomonas putida) TRP−7株は、本発
明者等が自然界より分離したもので、一方のエナンチオ
マーの1,2 −プロパンジオールのみを立体特異的に代
謝、分解する能力の高い菌株であり、それぞれ微工研条
寄第3879号(FERMBP−3879) 、微工研条寄第3880
号(FERM BP−3880)、微工研条寄第3882号(F
ERM BP−3882)、微工研条寄第3881号(FERM
BP−3881)として工業技術院微生物工業技術研究所
に寄託されている。以下にそれらの菌学的性質を示す。
尚、下記の記載中、N.T.は試験を行っていないことを示
す。
【0010】 (a) 形態 TRB−2株 TRP−4株 TRP−13株 (1)細胞の形および大きさ 桿 菌 桿 菌 桿 菌 0.5〜0.6 μm 0.6〜0.8 μm 0.5μm × × 1.5〜4.0 μm × 1.0〜3.5 μm 1.0 〜2.5μm (2)運動性 + + + (3)グラム染色性 − − − (4)胞子の有無 − − − (5)鞭毛 極鞭毛、>1 極鞭毛、>1 極鞭毛、1 (b) 生理学的性質 TRB−2株 TRP−4株 TRP−13株 (1)オキシダーゼ + + + (2)カタラーゼ + + + (3)アミノペプチダーゼ + + + (4)インドールの生成 − − − (5)VPテスト − − − (6)硝酸塩の還元 − − + (7)脱窒反応 − − + (8)ウレアーゼ ± N.T. N.T. (9)フェニルアラニンデアミナーゼ − − − (10)シュクロースからレバンの生成 − − − (11)レシチナーゼ − − − (12)チロシンの分解 + + N.T. (13)でんぷんの加水分解 − − − (14)ゼラチンの加水分解 − − − (15)カゼインの加水分解 − − − (16)DNAの加水分解 − − − (17)Tween80 の加水分解 − − − (18)エスクリンの加水分解 − − + (19)3%KOH による溶菌 + + + (20)酸素に対する態度 好気的 好気的 好気的 (21)4℃での生育 − − − (22)37℃での生育 + − + (23)41℃での生育 − − − (24)pH5.6 での生育 + + + (25)Mac-Conkey-Agar 培地での生育 + + + (26)SS-Agar 培地での生育 + + + (27)Cetrimid-Agar 培地での生育 + + + (28)色素の生成 蛍光性 + + − ピロシアニン − − − (29)OFテスト O O O (30)グルコースからガスの生成 − − − (31)酸の生成 グルコース + + + フルクトース + + + キシロース + + + (32)PNPG(β−ガラクトシダーゼ) − − − (33)アルギニンジヒドロラーゼ + + + (34)炭素源の利用 酢酸 + + + アジピン酸 − − + カプロン酸 + + + クエン酸 + + + グリコール酸 + − − レブリン酸 − + N.T. リンゴ酸 + + + マロン酸 + − − フェニル酢酸 − + + L−アラビノース + − − フルクトース + + N.T. グルコース + ± + マンノース + − − マルトース − − − キシロース + − − マンニトール + − − グルコン酸 + − ± 2−ケトグルコン酸 + − N.T. N−アセチルグルコサミン − − ± L−セリン + + − D−酒石酸 + − N.T. 馬尿酸 + − N.T. L−酒石酸 + − N.T. m−酒石酸 − + N.T. エタノール + − + 乳酸 + + + スベリン酸 − − − ベンジルアミン + − N.T. アドニトール + − − 酪酸 + N.T. + D−マンデル酸 − − N.T. トレハロース − − − D−グルカル酸 − N.T. − L−ラムノース − − N.T. シトラコン酸 + − N.T. ベンゾイルギ酸 − − − ブチルアミン − + N.T. m−イノシトール − − − L−マンデル酸 − − − トリプタミン − − N.T. イソ酪酸 − + N.T. セバシン酸 − − + ソルビトール − − − エリスリトール − − N.T. L−メチオニン N.T. − N.T. アセトアミド N.T. − − イタコン酸 N.T. − N.T. ピメリン酸 N.T. − N.T. シュクロース N.T. − − アゼライン酸 N.T. − + D−ガラクトース N.T. N.T. + ムコン酸 N.T. N.T. + ゲラニオール N.T. N.T. + プロピレングリコール N.T. N.T. + n−プロパノール N.T. N.T. +。
【0011】 TRP−7株 (a) 形態 (1)細胞の形および大きさ 桿 菌 0.5〜0.6 μm × 1.5〜18.0μm (2)運動性 + (3)グラム染色性 − (4)胞子の有無 − (5)鞭毛 極鞭毛、>1 (b) 生理学的性質 (1)オキシダーゼ + (2)カタラーゼ + (3)アミノペプチダーゼ + (4)インドールの生成 − (5)VPテスト − (6)硝酸塩の還元 − (7)脱窒反応 − (8)ウレアーゼ + (9)フェニルアラニンデアミナーゼ − (10)シュクロースからレバンの生成 − (11)レシチナーゼ − (12)でんぷんの加水分解 − (13)ゼラチンの加水分解 − (14)カゼインの加水分解 − (15)DNAの加水分解 − (16)Tween80 の加水分解 + (17)エスクリンの加水分解 − (18)3%KOH による溶菌 + (19)酸素に対する態度 好気的 (20)4℃での生育 + (21)37℃での生育 − (22)41℃での生育 − (23)pH5.6 での生育 + (24)Mac-Conkey-Agar 培地での生育 + (25)SS-Agar 培地での生育 + (26)Cetrimid-Agar 培地での生育 + (27)色素の生成 蛍光性 + ピロシアニン − (28)OFテスト O (29)グルコースからガスの生成 − (30)酸の生成 グルコース + フルクトース + キシロース + (31)PNPG(β−ガラクトシダーゼ) − (32)アルギニンジヒドロラーゼ + (33)炭素源の利用 アジピン酸 − カプロン酸 + クエン酸 + レブリン酸 + リンゴ酸 + フェニル酢酸 + L−アラビノース − フルクトース + グルコース + マンノース + マルトース − マンニトール + グルコン酸 + N−アセチルグルコサミン − L−バリン + アドニトール − トレハロース + D−グルカル酸 + ベンゾイルギ酸 + ブチルアミン + m−イノシトール − セバシン酸 − ソルビトール − アセトアミド − シュクロース − アゼライン酸 − D−ガラクトース + ムコン酸 + ゲラニオール − グリシン − n−ブタノール + D−アラニン + アントラニル酸 − L−トリプトファン − L−キヌレン酸 − α−アミルアミン − 以上の菌学的性質をバージーの細菌分類書〔Bergey's m
anual of SystematicBacteriology (1986) 〕に基づい
て分類すると、TRB−2、TRP−4、TRP−7は
シュードモナス プチダ (Pseudomonas putida) と同定
された。TRP−13株は明確に該当する種がなく、シュ
ードモナス (Pseudomonas)属に属する新菌種であること
が明らかとなった。
【0012】本発明に用いる微生物を培養するための培
地は、その微生物が増殖しうるものであれば特に制限は
ない。例えば、炭素源としては、上記微生物が利用可能
であればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、
フルクトース、シュクロース、デキストリンなどの糖
類、ソルビトール、グリセロール、1,2 −プロパンジオ
ール、1,3 −プロパンジオールなどのアルコール類、フ
マール酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸
類およびその塩類、パラフィンなどの炭化水素類などあ
るいはこれらの混合物を使用することができる。窒素源
としては例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウ
ム、リン酸アンモニウムなどの無機酸のアンモニウム
塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなど
の有機酸のアンモニウム塩、肉エキス、酵母エキス、コ
ーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、尿素、な
どの無機有機含窒素化合物、あるいはこれらの混合物を
使用することができる。他に無機塩、微量金属塩、ビタ
ミン類など、通常の培養に用いられる栄養源を適宜混合
して用いることができる。また、必要に応じて微生物の
増殖を促進する因子、本発明の目的化合物の生成能力を
高める因子、あるいは培地のpH保持に有効なCaCO3 など
の物質も添加できる。
【0013】培養方法としては培地pHは3.0 〜10.0、好
ましくは4〜8、培養温度は20〜45℃、好ましくは25〜
37℃で、嫌気的あるいは好気的に、その微生物の生育に
適した条件下5〜120 時間、好ましくは12〜72時間程度
培養する。
【0014】1,2 −プロパンジオールのエナンチオマー
混合物から光学活性な1,2 −プロパンジオールを生成さ
せる方法としては、培養液をそのまま用い、該培養液に
1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物を添加
する方法、遠心分離などにより、菌体を分離し、これを
そのまま、あるいは洗浄した後、緩衝液、水などに再懸
濁したものに、1,2 −プロパンジオールのエナンチオマ
ー混合物を添加し反応させる方法などがある。この反応
の際、グルコース、シュクロースなどの炭素源をエネル
ギー源として添加したほうがよい場合もある。また、菌
体は生菌体のままでもよいし、菌体破砕物、アセトン処
理、凍結乾燥などの処理を施したものでもよい。また、
これらの菌体あるいは菌体処理物を、例えばポリアクリ
ルアミドゲル法、含硫多糖ゲル法(カラギーナンゲル法
など)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法など公知の方法
で固定化して用いることもできる。さらに、菌体処理物
から、公知の方法を組み合わせて精製取得した酵素も使
用できる。
【0015】1,2 −プロパンジオールのエナンチオマー
混合物はそのまま、あるいは、水に溶解しまたは反応に
影響を与えないような有機溶媒に溶解したり、界面活性
剤などに分散させたりして、反応始めから一括にあるい
は分割して添加してもよい。反応はpH3〜10、好ましく
はpH5〜9の範囲で、温度は10〜60℃、好ましくは20〜
40℃の範囲で、1〜120 時間程度、攪拌下あるいは静置
下で行う。基質である1,2 −プロパンジオールのエナン
チオマー混合物の濃度は特に限定されないが、1〜40%
程度が好ましい。また、必要に応じてNaOH、CaCO3 、HC
l 、H2SO4 などで反応液のpHを保持すると、良好な結果
が得られる場合もある。
【0016】反応によって残存生成した光学活性1,2 −
プロパンジオールの採取は反応液から直接あるいは菌体
分離後、有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロマトグ
ラフィーなどの通常の精製方法を用いれば容易に行うこ
とができる。また、反応の副生物にアルデヒド、ケトン
が生じる場合には、亜硫酸水素ナトリウムで処理し、除
去することも効果的な方法である。
【0017】
【実施例】以下本発明を具体的に実施例にて説明する
が、本発明はこれらの実施例にのみに限定されるもので
はない。例中の%は特記しない限り重量基準である。
尚、実施例における反応液中の1,2 −プロパンジオール
の定量はガスクロマトグラフィー〔カラム:Thermon 30
00 5%/chromosorb W 80〜100 メッシュ(φ3mm×
2.1 m) 、温度140 ℃〕により容易に行うことができ、
光学純度は反応により得られた光学活性1,2 −プロパン
ジオールを常法により、フェニルイソシアネートと反応
させフェニルカルバモイル化した後、光学分割カラムを
用いた高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル
化学工業製キラルセルOD、溶媒:n−ヘキサン/2−
プロパノール=16:3、波長254nm 、流速1.0 ml/分、
温度45℃)により測定した(保持時間:(R) 体14.2分、
(S) 体23.5分)。
【0018】実施例1 下記組成の菌体調製用培地50mlを500ml 容坂口フラスコ
に入れ、滅菌後表1に示した微生物をそれぞれ植菌し、
30℃で50時間振とう培養を行った。続いて、遠心分離で
菌体を分離し、生菌体を得た。 <菌体調製用培地> ラセミ 1,2−プロパンジオール 1.0 % 肉エキス 0.1 % 酵母エキス 0.1 % ポリペプトン 0.2 % KH2PO4 0.07 % (NH4)2HPO4 0.13 % MgSO4・7H2O 0.05 % pH7.2 次に生菌体を脱イオン水に懸濁し25mlとした。これを1
2.5mlずつ500ml 容坂口フラスコに入れ12%ラセミ 1,2
−プロパンジオール/6%CaCO3 の混合液をフラスコA
には12.5ml、フラスコBには8.34ml入れた。フラスコB
にはさらに脱イオン水4.16mlを加えて、30℃で48時間振
とう反応させた(終濃度、フラスコA:6% 1,2−プロ
パンジオール、3%CaCO3 、フラスコB:4% 1,2−プ
ロパンジオール、2%CaCO3)。
【0019】反応終了後、遠心分離にて除菌し、得られ
た上澄液2mlを塩化ナトリウムで飽和させた後、酢酸エ
チル2mlを用いて残存する 1,2−プロパンジオールを抽
出した。抽出液を脱溶媒後、残渣にフェニルイソシアネ
ート50μl を加えて、フェニルカルバモイル化した。こ
れに高速液体クロマトグラフィー移動相2ml(n−ヘキ
サン/2−プロパノール〔16:3〕)を加えて溶解さ
せ、高速液体クロマトグラフィーにて光学純度を測定し
た。また、先の上澄液を蒸留水にて適宜希釈した後、ガ
スクロマトグラフィーにて1,2 −プロパンジオールを定
量した。得られた 1,2−プロパンジオールの絶対配置、
および光学純度、残存量を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 シュードモナス スピーシズTRP−13、シュードモナ
ス プチダTRP−7株について実施例1と同様の培
地、方法で培地50mlを500ml 容坂口フラスコで30℃、50
時間、培養した。遠心集菌後脱イオン水に懸濁してそれ
ぞれ25mlとした。実施例1と同様に菌体懸濁液を12.5ml
ずつ2本の500ml 容坂口フラスコに分注し、フラスコA
には20%ラセミ 1,2−プロパンジオール/10%CaCO3
合液10ml、脱イオン水2.5ml(終濃度:8% 1,2−プロパ
ンジオール、4%CaCO3)、フラスコBには20%ラセミ
1,2−プロパンジオール/10%CaCO3 混合液12.5ml(終
濃度:10% 1,2−プロパンジオール、5%CaCO3)を加
え、30℃、72時間振とう反応させた。反応終了後実施例
1と同様にして1,2 −プロパンジオールの残存量、光学
純度、絶対配置を調べ、その結果を表2にまとめた。
【0022】
【表2】
【0023】実施例3 B.ブラウン社製2リットル小型培養槽に実施例1と同
様の培地を1.2 リットル仕込み、121 ℃、15分間滅菌し
た。冷却後、シュードモナス スピーシズTRP−13株
を下記に示す培地にて30℃、25時間、振とう培養(10ml
/φ21mm試験管)して得た培養液12mlを無菌的に接種
し、30℃、700rpm、0.5vvmの条件で18.5時間培養した。 <培 地> グルコース 0.5 % 肉エキス 0.3 % 酵母エキス 0.3 % ポリペプトン 0.5 % KH2PO4 0.07 % (NH4)2HPO4 0.13 % MgSO4・7H2O 0.05 % pH7.2 培養終了後1リットル分の培養液を遠心分離し、生菌体
を得、次いでこれを脱イオン水に懸濁し、200ml とし
た。これに800ml の7.5 %ラセミ 1,2−プロパンジオー
ル/3.75%CaCO3 混合液を加え(終濃度:6% 1,2−プ
ロパンジオール、3%CaCO3)、上記の小型培養槽にて、
30℃、700rpm、0.5vvmにて79.5時間反応を行った。反応
終了時点の(R) −1,2 −プロパンジオールの光学純度は
99.8%ee、(R) −1,2 −プロパンジオールの収率は97.7
%であった。
【0024】反応終了液を遠心分離して上清を得、次い
でミリポア社製の限外ろ過膜(分子量1万カット)を通
して、高分子物質を除いた。これをロータリーエバポレ
ーターで106 gまで濃縮し、析出した白色結晶をろ過に
て除いた。ロ液を再び濃縮し、40.2gとした。この濃縮
液に対して、酢酸エチルにて抽出を行った。酢酸エチル
層を集め、脱溶媒した。この残渣に亜硫酸水素ナトリウ
ムの飽和水溶液5mlを加え、室温1時間攪拌した。これ
をジエチルエーテルにて抽出し、エーテル層を得た後、
無水硫酸ナトリウムにて乾燥後脱溶媒した。残渣を5mm
Hgにて蒸留し、精製(R) −1,2 −プロパンジオール8.6
gを得た。ガスクロマトグラフィー面積比98.4%、光学
純度99.3%e.e.、〔α〕25 D −23.8°(c=0.992 、H2
O)。
【0025】
【発明の効果】本発明の微生物を用いた光学活性1,2 −
プロパンジオールの製法は、簡便に光学純度の高い光学
活性1,2 −プロパンジオールを製造することを可能にさ
せるものであり、工業的に極めて有利である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:40) (C12P 41/00 C12R 1:40) (C12P 41/00 C12R 1:38) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 41/00 C12P 7/18 C12N 1/20 BIOSIS(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シュードモナス属に属し、1,2 −プロパ
    ンジオールのエナンチオマー混合物に作用して(R) −1,
    2 −プロパンジオールを残存させうる能力を有する微生
    物あるいはその処理物を、1,2 −プロパンジオールのエ
    ナンチオマー混合物に作用させ、残存する (R)−1,2 −
    プロパンジオールを採取することを特徴とする (R)−1,
    2 −プロパンジオールの製法。
  2. 【請求項2】 シュードモナス属に属し、1,2 −プロパ
    ンジオールのエナンチオマー混合物に作用して (S)−1,
    2 −プロパンジオールを残存させうる能力を有する微生
    物あるいはその処理物を、1,2 −プロパンジオールのエ
    ナンチオマー混合物に作用させ、残存する (S)−1,2 −
    プロパンジオールを採取することを特徴とする (S)−1,
    2 −プロパンジオールの製法。
  3. 【請求項3】 微生物が、シュードモナス プチダ (Ps
    eudomonas putida)TRB−2、TRP−4、シュード
    モナス スピーシズ (Pseudomonas sp.)TRP−13から
    なる微生物群から選ばれる微生物である、請求項1記載
    の (R)−1,2−プロパンジオールの製法。
  4. 【請求項4】 微生物が、シュードモナス プチダ (Ps
    eudomonas putida)TRP−7である、請求項2記載の
    (S)−1,2−プロパンジオールの製法。
  5. 【請求項5】 立体特異的に一方のエナンチオマーの1,
    2 −プロパンジオールを代謝、分解する能力を有する
    シュードモナス プチダ (Pseudomonas putida) 、シュ
    ードモナス スピーシズ (Pseudomonas sp.)TRP−13
    からなる微生物群から選ばれた新規な微生物。
  6. 【請求項6】 微生物が、シュードモナス プチダ (Ps
    eudomonas putida)TRB−2、TRP−4、シュード
    モナス スピーシズ (Pseudomonas sp.)TRP−13、シ
    ュードモナス プチダ (Pseudomonas putida) TRP−
    7からなる微生物群から選ばれる微生物である、請求項
    記載の微生物。
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