JP2010532992A - 3,4−エポキシ酪酸エチルの微生物速度論的分割 - Google Patents

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Abstract

エポキシド加水分解酵素活性を有する2つの新規微生物、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303及びクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302が記載される。これらの微生物からのエポキシド加水分解酵素は、速度論的分割方法によりラセミ混合物中の3,4−エポキシ酪酸エチルの一方の鏡像異性体を選択的に加水分解(エポキシド開環を経由)して、結果的に他方の鏡像異性体を蓄積するのに使用することができる。ラセミ体3,4−エポキシ酪酸エチルの速度論的分割方法において、前記微生物を調製する方法及びその使用も開示される。

Description

発明の背景
エナンチオピュアなキラル化合物は、化学及び製薬工業で重要な役割を果たしている。規制要件、すなわち医薬化合物のより低い毒性及びより高い効能への期待により、エナンチオピュアな化合物に対する需要が増加してきている。この趨勢に対応して、この増大する需要の要求を満たすべく商品化学工業においては、キラルな中間体又は「構成単位(building blocks)」を製造する新規な化学的及び生物学的製造方法の開発への関心が高まっている。例えば、化学工業において幅広い応用(例えば、多くのファインケミカルだけでなく医薬、農薬の合成のための)を有するキラルなエポキシドは、それらの製造に対する市場要求が高い。有機化学合成の主要課題は、高い立体及び位置選択性を有するこのような化合物を高収率で作り出すことである。
エナンチオピュアなキラルなエポキシドは、工業目的ためのより複雑な光学的に純粋な生物活性化合物の製造における重要中間体として使用することができる。特に、キラルなエポキシドである3,4−エポキシ酪酸エチル(EEB)は、エチルエステル基とともに末端エポキシドを含み、そのエナンチオピュアな形態(すなわち、(R)−EEB又は(S)−EEB)においては、キラルな医薬及びファインケミカルの合成における不可欠の重要中間体である。EEBは、立体特異的開環反応を受けて二官能性化合物を形成するので、用途の広い合成中間体である。
(R)−EEBは直接に、抗癲癇及び抗高血圧活性を有する神経媒介物質(neuromediator)である(R)−δ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸((R)−GABOB)に変換され(Tetrahedron,46,4277(1990)を参照のこと)、並びにうっ血性心不全又は不整脈を治療する食欲促進薬であり、脂肪代謝において必須の役割を有し、栄養補助食品及び抗肥満薬として幅広く適用可能な、(R)−カルニチン(ビタミンBt)に変換される(J.Org.Chem.,53,104(1988)、米国特許第4,865,771号、第5,248,601号、及び第6,342,034号明細書を参照のこと)。(R)−EEBは、(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル((R)−CHBE)(Tetrahedron Lett,33,1211(1992)、J.Org.Chem.,49,3707(1984)を参照のこと);及び(R)−4−ヒドロキシ−2−ピロリドン(Synthesis,614(1978)を参照のこと)の合成のためのC4キラルシントンとして利用される。(R)−EEBはまた、サリチレートエナミド抗癌剤、すなわちロバタミドC(J.Am.Chem.Soc.,125,7889(2003)を参照のこと)及び修飾したカルニチン類似体である新規なナイトロジェンマスタード(Bioorg.Med.Chem.,11,325(2003))の合成のための有用な中間体でもある。
更に、(S)−EEBは、効率的に(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ酪酸エチルエステルに変換することができ、この化合物は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であり、コレステロールを低下する超大型新薬であるアトルバスタチン(LIPITOR(商標))を製造するために使用することができる(Tetrahedron Lett,33,2279(1992)を参照のこと)。(S)−EEBはまた、脳機能増強剤としての使用のための又はアルツハイマー病のような認知症のための、心臓血管薬である(S)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド(Oxiracetam(商標))の合成のための有用なキラル中間体でもある(WO93/06826を参照のこと)。(S)−EEBは、AIDS薬Agenerase(商標)のための中間体である(S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフランの合成に適用することができる(J.Am.Chem.Soc.,117,1181(1995)を参照のこと)。更に、例えば、(S)−3−ヒドロキシ−δ−ブチロラクトン(米国特許第6,221,639号明細書)及び(S)−3−ヒドロキシ−4−ブロモ酪酸(米国特許第6,713,290号明細書)のような価値のあるC4キラルシントンもまた、(S)−EEBから合成することができる。
上記のことに鑑みて、EEBが価値のある合成中間体であること、及びエナンチオピュアなEEBを工業規模で製造する費用対効果の高い方法が非常に望ましいことは、明らかである。
化学的又は生物学的経路のいずれかにより、エナンチオピュアなEEBを製造するためのアプローチがいくつか報告されてきた。或る場合においては、(R)−又は(S)−EEBは、3,4−ジヒドロキシブチロニトリルをスルホニルクロリドと反応させ、そのあと酸の存在下にアルコールと反応させ、そして塩基触媒による環化を伴うことにより合成された(米国特許第5,079,382号明細書を参照のこと)。しかしながら、このアプローチは、市販されていなくて製造するのに費用のかかるエナンチオピュアな出発物質の使用を必要とするので、商業的に実現可能なものではない。
別のアプローチにおいては、(R)−3,4−エポキシ酪酸及びその塩は、(S)−3−活性化(activated)−ヒドロキシブチロラクトンを開環反応にかけて、4−ヒドロキシ−3−活性化ヒドロキシ酪酸を得、これを環化して、エポキシドを形成させ、それから結果的にキラル中心の反転をもたらすことによって製造される(米国特許第6,232,478号、第6,342,034号明細書を参照のこと)。しかしながら、市販の(S)−3−ヒドロキシブチロラクトンの純度が低いために(純粋な(S)−3−ヒドロキシブチロラクトンの合成は知られていない)、このアプローチでは、所望の(R)−3,4−エポキシ酪酸生成物に多くの不純物を伴うものが製造されるので、多くの市販用には適していない。
別のアプローチにおいては、ラセミ体EEBは、キラルな(salen)CoIII錯体により触媒される加水分解性速度論的分割によって、(R)−EEBに分割された(J.Am.Chem.Soc.,124,1307(2002)、米国特許第6,693,206号明細書を参照のこと)。この方法では、回収未反応エポキシド及び高度にエナンチオ高含有形態にある1,2−ジオール生成物の両方が生じた(すなわち、>99%ee、(R)−EEBについての収率45.6%)。しかしながら、このアプローチに記載された反応方法では、反応方法の初期に発熱であり、反応混合物を低温(すなわち、0℃)に保持しなければならないので、付加的な処理手段が必要となる。更に、このアプローチは、(S)−EEBの製造に適用可能ではない。
生体触媒的アプローチにおいては、ラセミ体の3,4−エポキシ酪酸アルキルエステルの速度論的分割に、精製したエステラーゼが適用された。例えば、(R)−3,4−エポキシ酪酸iso−及びn−ブチルは、市販の酵素、ステアプシン(ブタ膵臓から単離)を用いて、95%eeで、収率約33〜38%で製造された(J.Org.Chem.,53,104(1988)、米国特許第4,865,771号、第5,248,601号明細書、EP237983A2を参照のこと)。別の例においては、ラセミ体の3,4−エポキシ酪酸メチルのエナンチオ選択的加水分解に対してブタ肝臓エステラーゼを用いて、中程度のエナンチオマー比の値(E=11)で(R)−エポキシドを得た(Tetrahedron Lett.,30,2513(1989)を参照のこと)。しかしながら、これらの酵素を用いる速度論的分割方法は、高価な市販用のステアプシン(J.Org.Chem.,53,104(1988)、米国特許第4865771号及び第5248601号明細書、EP237983A2)又はエステラーゼ(Tetrahedron Lett.,30,2513(1989))(両方とも哺乳類源に由来する)を大量に使用することが必要であるので、工業的方法には適用できない。更に、ブタ肝臓エステラーゼの場合においては、中程度のエナンチオ選択性及び低い反応率が観察されている。
ラセミ体エポキシドの速度論的分割によりキラルなエポキシド及びビシナルジオールを製造する目的で、微生物のエポキシド加水分解酵素(EH)を生体触媒として使用する方法が、近年認められるようになってきた。図1に示すように、ラセミ体エポキシドの選択的加水分解により、高い鏡像体過剰率(ee)の値で、対応するジオール及び未反応エポキシドの両方を生成することができる。微生物EHを用いて、小規模合成において良好なエナンチオ選択性でエポキシド及びジオールを製造するいくつかの成功例が見出されている(Current Opinion in Biotechnology,12,552(2001);Current Opinion in Chemical Biology,5,112(2001)を参照のこと)。しかしながら、ラセミ体エポキシドのEH触媒を用いる分割のための幅広い工業的基盤を実現し得る前に、このアプローチに対するいくつかの限界に注意を向ける必要がある。
第一に、この変換のために利用可能なEH酵素の数がまだ少なく、しかも合成応用に見込みのあるEH酵素の数は、なおさらまれである(米国特許第5,849,568号及び第6,387,668号明細書を参照のこと)。特に、利用可能な株をスクリーニングすることによる新規なEHの発見は、現在のところ、培養物コレクション(culture collections)が限られていること及び強力なスクリーニングアッセイが欠けていることにより妨げられている。第二に、多くの周知のEH酵素では、基質の範囲が限られている。実際に、利用可能な酵素のうちで、多くのものは、一方の鏡像異性体だけに選択性を有し、その結果、特定の化合物について、両方の鏡像異性体へのアクセスが可能ではない。最後に、多くのEH触媒分割方法においては、酵素に対する触媒効率が低いために、酵素濃度(全細胞又は粗抽出物のいずれか)が高いこと及び基質濃度がかなり低いことが、必要とされる。
上記のことに鑑みて、当該技術分野においては、エナンチオ高含有のエポキシド(及びビシナルジオール)への、特にエナンチオ高含有のエポキシドEEBに対する合成的アクセスが可能となるように、ラセミ体エポキシドの速度論的分割のために利用し得る生体触媒に対する必要性が依然として残っている。生体触媒を利用する速度論的分割方法は、費用対効果が大きくしかも工業的規模の方法に対して適用可能でもあることが望ましい。本発明は、この必要性及びその他の必要性を満たすものである。
発明の要約
或る観点においては、本発明は、ATCC番号:PTA−8303の識別特性を特徴とする微生物アシネトバクターバウマニ(Acinetobacter baumannii)、並びにその誘導体及び変異体の生物学的純粋培養物を提供する。
別の観点においては、本発明は、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303を培養することを含む、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を分割する方法であって、好気的条件下に水性栄養培地(aqueous nutrient medium)中で、ラセミ混合物存在下に、(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記方法を提供する。
更に別の観点においては、本発明は、(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造する方法であって、前記方法が:(i)3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素及びその混合物からなる群から選択される形態のエポキシド加水分解酵素とともにインキュベートすることであって、そこで、酵素及び酵素を含む細胞が、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303からのものであり、混合物中の(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記インキュベートすること;並びに(ii)反応培地から(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを単離すること、を含む前記方法を提供する。
別の観点においては、本発明は、ATCC番号:PTA−8302の識別特性を特徴とする微生物クリプトコッカスアルビダス(Cryptococcus albidus)、並びにその誘導体及び変異体の生物学的純粋培養物を提供する。
別の観点においては、本発明は、微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302を培養することを含む、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を分割する方法であって、好気的条件下に水性栄養培地中で、ラセミ混合物存在下に、(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(R)−エチル−3,4−ジヒドロキシブタン酸を形成させる能力を特徴とする、前記方法を提供する。
別の観点においては、本発明は、(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造する方法を提供するものであって、前記方法は、
(i)3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素及びその混合物からなる群から選択される形態のエポキシド加水分解酵素とともにインキュベートする工程であって、そこで、酵素及び酵素を含む細胞が、微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302からのものであり、混合物中の(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(R)−エチル−3,4−ジヒドロキシブタン酸を形成させる能力を特徴とする、前記インキュベートする工程;並びに
(ii)反応培地から(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを単離する工程を含む。
別の観点においては、本発明は、(i)同化可能な炭素源、窒素源、及び無機ミネラル源を含有する栄養培地中で、エポキシド加水分解酵素の形成に適した条件下に、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303を好気的に培養する工程;(ii)エポキシド加水分解酵素を産生するのに十分な時間の間、培養液をインキュベートする工程;並びに(iii)栄養培地からエポキシド加水分解酵素を回収する工程を含む、微生物エポキシド加水分解酵素を産生する方法を提供する。
別の観点においては、本発明は、(i)同化可能な炭素源、窒素源、及び無機ミネラル源を含有する栄養培地中で、エポキシド加水分解酵素の形成に適した条件下に、微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302を培養する工程;(ii)エポキシド加水分解酵素を産生するのに十分な時間の間、培養液をインキュベートする工程;並びに(iii)栄養培地からエポキシド加水分解酵素を回収する工程を含む、微生物エポキシド加水分解酵素を産生する方法を提供する。
別の観点においては、本発明は、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物から(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造するための、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態にあるエポキシド加水分解酵素の使用を提供するものであって、前記酵素が微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303由来のものである、前記使用を提供する。
別の観点においては、本発明は、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物から(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造するための、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態にあるエポキシド加水分解酵素の使用を提供するものであって、前記酵素が微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302由来のものである、前記使用を提供する。
本発明のその他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な記載及び図面から、当業者には明らかであろう。
図1は、エポキシド加水分解酵素を用いるラセミ体エポキシドのエナンチオ選択的加水分解を説明する合成反応工程式を示す。
図2は、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303の顕微鏡画像を示す。
図3は、rac−EEBの合成を説明する。
図4は、本発明の微生物の発見に利用された研究戦略を説明する。
図5は、反応混合物中に存在する(R)−及び(S)−EEB濃度を、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303からのEHにより触媒されるrac−EEBの速度論的分割方法の間の時間の関数として説明するグラフを示す。
図6A及び図6Bは、3,4−エポキシ酪酸アルキルの合成反応工程式を示す。
発明の詳細な説明
定義及び略語
本明細書で使用する用語「エナンチオ選択性」は、「E」値により測定されるが、ラセミ体基質から、生成物ラセミ混合物中の一方の鏡像異性体の方を、他方の鏡像異性体と比較して生じさせるための酵素の選択能力を含む;換言すれば、E値は、鏡像異性体間を区別する酵素の能力の指標である。非選択的反応では、E値が1となるのに対して、一般に、20を超えるE値を有する分割は、合成において有用であると考えられる。エナンチオ選択性は、鏡像異性体間の変換速度の違いに存在する。鏡像異性体のうちの一方の含有量が高い反応生成物が得られる;逆に、残った基質は、他方の鏡像異性体の含有量が高い。実用目的のためには、一般に、鏡像異性体のうちの一方が大過剰で得られることが望ましい。
Eの計算は、3つの変数、すなわち(1)出発物質の鏡像異性体純度(ee);(2)生成物の鏡像異性体純度(ee);及び(3)変換の程度(c)、のうちの2つの測定値に基づいている。次いで、以下の3つの式のうちの1つを用いることができる(Hydolases in Organic Synthesis,Bomscheuer,U.T.and Kazlauskas,R.J.(1999)Wiley−VCH,New York),section 3.1.1;及びChen et al.J.Am.Chem.Soc.104:7294−7299(1982)を参照のこと)。
Figure 2010532992
Figure 2010532992
Figure 2010532992
本明細書で使用する用語「鏡像体過剰率」又は記号「ee」は、そのような鏡像異性体のラセミ混合物中の、他方の鏡像異性体に対する、一方の鏡像異性体((R)−型又は(S)−型に関わらず)の量又は超過量を含む。鏡像体過剰率パーセントは、定量的に式(2)により表される:
Figure 2010532992
(式中、Rは、(R)−型鏡像異性体のモル濃度であり、Sは、(S)−型鏡像異性体のモル濃度である)
キラル化合物のラセミ混合物の酵素的分割に関するee及びエナンチオ選択性の計算は、更に米国特許第5,541,080号明細書、及び米国出願公開第2005/0026260号明細書に記載されている。前記文献は全目的に対して参照することにより本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用する「ATCC」には、10801 University Blvd.Manassas,Va.20110−2209 USAにある米国タイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)国際寄託機関が含まれる。「ATCC番号」は、ATCCに寄託した培養物の寄託番号である。
本明細書で使用する用語「その誘導体及び変異体」には、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302の記載を参照して使用するが、前述のATCC番号を有する微生物に本質的に対応する微生物が含まれる。用語「本質的に対応する」は、自然に存在する変異及びエナンチオ選択性のEH活性を示す微生物の人工的変異、を意味する。具体的には、変異は、微生物から単離し得るEH及びその機能的断片における変異及びEHと、その機能的断片をコード化する生物体のゲノムにおける変異とに関するものである。
本明細書で使用する用語「反応培地」は、酵素触媒(例えば、EH)及び少なくとも1の基質(例えば、rac−EEB)がその中に混ぜ合わされている(例えば、溶解、混合、懸濁により)溶液を含む。培地は、好ましくは緩衝化した、水性のものであることができ、水に加えて又は水の代わりに溶媒を含有することができる。反応培地中の溶媒の量は、反応培地の約0〜約100%であることができる。
3,4−エポキシ酪酸エチルは、EEBと略記する。
(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルは、(R)−EEBと略記する。
(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルは、(S)−EEBと略記する。
(R)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルは、(R)−ジオールと略記する。
(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルは、(S)−ジオールと略記する。
エポキシド加水分解酵素は、EHと略記する。
I.組成物
本発明は、それぞれエポキシド加水分解酵素(EH)活性を有する、2つの新規微生物の発見を基にしている。これらの微生物からのEHは、エポキシド開環により、3,4−エポキシ酪酸アルキル、好ましくは3,4−エポキシブタン酸エチル(EEB)のうちの一方の鏡像異性体を、他方の鏡像異性体に優先して加水分解することができる。
1.アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303
本出願の発明者は、EEBのラセミ混合物(すなわち、rac−EEB)中の(R)−鏡像異性体に優先して、EEBの(S)−鏡像異性体と選択的に反応して(そして加水分解して)、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチル(すなわち、(S)−ジオール)を形成することができるEHを産生する細菌性微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303を発見した(反応工程式1Aを参照のこと)。
Figure 2010532992
従って、或る観点においては、本発明は、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303並びにその誘導体及び変異体の生物学的純粋培養物を提供する。アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303の顕微鏡画像を、図2に示す。アシネトバクターバウマニの生物学的純粋培養物は、水性栄養培地、好ましくは同化可能な炭素源、窒素源及び無機物質源を含有する水性栄養培地中での好気的培養時に、EHを産生する。微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303の生物学的純粋培養物が産生するEHは、EEBのラセミ混合物中の(S)−EEBを優先的に加水分解して、(S)−ジオールを形成する。
アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303の微生物特性を、下記表1Aに要約する。
Figure 2010532992
2.クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302
また、本出願の発明者は、EEBのラセミ混合物中の(S)−鏡像異性体に優先して、EEBの(R)−鏡像異性体と選択的に反応することができるEHを産生する、酵母微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302をも発見した(反応工程式1Bを参照のこと)。
Figure 2010532992
したがって、別の観点においては、本発明は、クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302並びにその誘導体及び変異体の生物学的純粋培養物を提供する。クリプトコッカスアルビダスの生物学的純粋培養物は、水性栄養培地、好ましくは同化可能な炭素源、窒素源及び無機物質源を含有する水性栄養培地中での好気的培養時に、EHを産生する。クリプトコッカスアルビダスの生物学的純粋培養物が産生するEHは、EEBのラセミ混合物中の(R)−EEBを優先的に加水分解して、(R)−ジオールを形成する。
クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302の微生物特性を、下記表1Bに要約する。
Figure 2010532992
3.微生物培養:
EH活性を含む微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302は、適切な基本培地中で培養して増殖することができる。微生物の増殖が可能であれば、この目的に使用する培地については特に制限はない。通常、この培地は、必要な時に、普通の同化可能な炭素源、窒素源及び無機物質源を含有する水性栄養培地である。
例えば、微生物が任意の炭素源を利用できるならば、それを使用することができる。使用することができる炭素源の具体的な例としては、糖(例えば、グルコース、フルクトース、マルトース及びアミロース)、アルコール(例えば、ソルビトール、エタノール及びグリセリン)、有機酸(例えば、フマル酸、クエン酸、酢酸及びプロピオン酸)及びその塩、炭化水(例えば、パラフィン)、並びに、それらの混合物が挙げられる。
使用することができる窒素源の例としては、無機塩のアンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム及び塩化アンモニウム)、有機酸のアンモニウム塩(例えば、フマル酸アンモニウム及びクエン酸アンモニウム)、硝酸塩(例えば、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム)、有機窒素化合物(例えば、ペプトン、酵母エキス、肉抽出物及びトウモロコシ浸出液)、並びに、それらの混合物が挙げられる。
加えて、培地に使用される普通の栄養源(例えば、無機塩、微量金属塩及びビタミン)も、適切に混合して使用することができる。
培養条件について特に制限はない。培養は、例えば、好気的条件下に、pH及び温度を、それぞれpHを5〜8の範囲で、温度を15〜40℃の範囲で、適切に制御しながら、約12〜約48時間実施することができる。望ましいpHは、任意の緩衝剤(例えば、KHPO緩衝剤、及びモルホリノエタンスルホン酸(MES)など)の使用によって、又は生得的に緩衝特性を所有し得る栄養材料の添加によって、制御することができる。
微生物の増殖が完結した後、細胞を、従来の方法、例えば、遠心分離及び濾過によって回収し、次いで洗浄して、適当な緩衝液に再懸濁する。
4.エポキシド加水分解酵素の精製
エポキシド加水分解酵素(EH)は、本明細書に説明する方法によって、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302から単離して、精製することができる。第一に、微生物細胞抽出液は、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302の細胞から、物理的方法(例えば、超音波粉砕)又は細胞壁溶解酵素を用いる酵素的方法を用いて細胞をバラバラにして、遠心分離などにより不溶性画分を除去することによって調製される。
次いで、EHは、上記の方法で得られる細胞抽出液から、普通のタンパク質精製法(例えば、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィー)を組み合わせて、精製することができる。
アニオン交換クロマトグラフィーで使用する担体の例は、Q−セファロースHP(Amersham社製)である。EHを含有する細胞抽出液を、前記担体を充填したカラムの中を通過させるとき、pH8.5の条件下に、EHは、非吸着画分中に回収される。
カチオン交換クロマトグラフィーで使用する担体の例は、MonoS HR(Amersham社製)である。EHを含有する細胞抽出液を、前記担体を充填したカラムの中を通過させることにより、担体(カラム中の)上にEHを吸着させ、次いでカラムを洗浄した後、高い塩濃度を有する緩衝液を用いて、EHを溶離する。その時に、塩濃度を、逐次的に増加させるか又は勾配的に増加させることができる。例えば、MonoS HRを使用する場合においては、担体上に吸着されたEHは、約0.2〜約0.5MのNaCl濃度で溶離される。
次いで、上記の方法で精製したEHを、ゲル濾過クロマトグラフィーなどによって更に均質に精製することができる。ゲル濾過クロマトグラフィーで使用する担体の例は、セファデックス200pg(Amersham社製)である。
EHを含有する画分(前述の精製手順において)は、後記の速度論的分割方法に従い、各画分の酵素活性をアッセイすることによって確認することができる。
II.方法
微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303及びクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302はそれぞれ、相補的な活性を有するEHを産生する。そして、EEBの一方の鏡像異性体(例えば、(R)−鏡像異性体)の選択的分解により、すなわちエポキシド開環(加水分解)を経由して、結果的に他方の鏡像異性体(例えば、(S)−鏡像異性体)を蓄積することにより、工業規模でのラセミ体EEBの速度論的分割に対して、用途の広い生体触媒として用いることができる。
従って、別の観点においては、本発明は、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302を培養することを含む、EEBのラセミ混合物を分割する方法であって、好気的条件下に水性栄養培地中で、ラセミ混合物存在下に、(S)−EEB又は(R)−EEBをそれぞれ優先的に加水分解して、(S)−ジオール又は(R)−ジオールをそれぞれ形成させる、その能力を特徴とする、前記方法を提供するものである。
微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302が産生するEHは、上記の速度論的分割方法を触媒する原因となり、これらの微生物からのEHは、ラセミ体EEBから、エナンチオ高含有の形態にあるEEBの(R)−又は(S)−鏡像異性体を製造する方法において使用することができる。これらの微生物からのEHは、部分的精製酵素、精製酵素、又はその混合物として、全細胞、細胞抽出物形態を含む、任意の形態で使用することができる。
従って、更に別の観点においては、本発明は、(R)−EEB又は(S)−EEBを製造する方法であって、前記方法が:
(i)EEBのラセミ混合物を、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態のEHとともにインキュベートすることであって、そこで、酵素及び酵素を含む細胞が、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302それぞれからのものであり、混合物中の(S)−EEB又は(R)−EEBをそれぞれ優先的に加水分解して、(S)−ジオール又は(R)−ジオールをそれぞれ形成させて、結果的に反応培地中に(R)−EEB又は(S)−EEBをそれぞれ蓄積する、その能力を特徴とする、前記インキュベートすること;並びに
(ii)反応培地から(R)−EEB又は(S)−EEBをそれぞれ単離すること、を含む前記方法を提供するものである。
或る実施態様においては、方法は、水性栄養培地中で、好ましくは好気的条件下に、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302の増殖培養において実施される。別の実施態様においては、方法は、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302微生物の全細胞(例えば、静止細胞)を用いて、好ましくは水性緩衝液中で、実施される。微生物の全細胞は、湿細胞ペレットとして又は凍結乾燥粉末として製造することができる。更に別の実施態様においては、方法は、微生物から単離される精製又は部分的精製EHを含有する、微生物を含まない反応培地中で実施される。
関連する観点においては、本発明はまた、(i)同化可能な炭素源、窒素源及び無機ミネラル源を含有する栄養培地中で、エポキシド加水分解酵素の形成に適した条件下に、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302を好気的に培養する工程;(ii)エポキシド加水分解酵素を産生するのに十分な時間の間、培養液をインキュベートする工程;並びに(iii)栄養培養培地からエポキシド加水分解酵素を回収する工程を含む、微生物エポキシド加水分解酵素(EH)を産生する方法をも提供するものである。
別の関連する観点においては、本発明は、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物から(R)−3,4−エポキシ酪酸エチル又は(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルをそれぞれ製造するための、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態のエポキシド加水分解酵素の使用を提供するものであって、前記酵素が微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302由来のものである、前記使用を提供する。
本発見では、アシネトバクターバウマニ又はクリプトコッカスアルビダスそれぞれによって触媒される微生物速度論的分割方法を経由して、EEBの(R)−又は(S)−鏡像異性体のいずれかの合成的アクセスが可能となる。エナンチオ高含有のEEBを製造する本微生物速度論的分割方法は、現在周知の方法の利点の多くを有している。例えば、本発明の方法では、ビニル酢酸、アルコール及びm−CPBAのような安価なバルク試薬から廉価に合成することができるラセミ体EEBを出発物質として使用する。(図3を参照のこと)。更に、本発明に記載する速度論的分割方法は、温和な反応条件(例えば、周囲温度)下に実施することができ、それによりエナンチオ高含有の生成物が分解して収率を低下させる機会を低減することができる。
本明細書に開示される速度論的分割方法により産生されるエナンチオ高含有の生成物は、医薬、農薬、及びファインケミカル工業において高い価値のある化合物のための合成中間体として有用である。
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられるものであり、決して発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。発明の完全な範囲は、本明細書に示される特許請求の範囲により定義される。
《実施例1》
以下の実施例では、微生物からEH活性の発見のための一般的研究戦略を記載する。
アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303又はクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302は、次のことを含む研究戦略において発見した:1)EH活性を含有する可能性がある自然環境(例えば、土壌試料)から微生物の単離;2)EH活性を有する微生物を同定する高速大量処理(high throughput)(HTS)スクリーニング及びEH活性を有する微生物のエナンチオ選択的スクリーニング;3)EH活性を有する新たに単離した純粋な微生物の同定及びキャラクタリゼーション;並びに4)速度論的分割目的のための、新たに単離した純粋な微生物のEH活性の最適化(図4を参照のこと)。
1.環境源から微生物の単離
土壌試料を、さまざまな自然環境から集め、そのあと基礎栄養物を含有する培養液中に接種する。予備培養の後、細胞を固体培地上で再び培養して、単一コロニーとして単離する。
2.EH活性を有する微生物のためのHTSスクリーニング及びエナンチオ選択的スクリーニング
アルケン(例えば、ヘキセン、ヘプテン、オクテン又はヘキサデセン)を、モノオキシゲナーゼによりエポキシドへ変換し、次いでエポキシド加水分解酵素に触媒される加水分解を経由して、又はエポキシド異性化酵素により触媒されるエポキシドの転位によって、ビシナルジオール、アルデヒド若しくはケトンまで分解する(Tetrahedron:Asymmetry,8,65(1997)を参照のこと)。このようにして、単独炭素源としての脂肪族アルケン上に単離される株は、エポキシド加水分解酵素活性を有し得、ラセミ体エポキシドのエナンチオ選択的加水分解のために有用であり得る。土壌試料からの様々な微生物を、単独炭素源としてのアルケンの利用について試験した。得られた陽性の微生物を再び培養してから、基質としてEEBを用いて、キラルGC又はHPLCにより、そのエナンチオ選択性について試験する。
3.微生物の同定
EH活性を有する新たに単離した微生物を、その形態学、グラム染色試験、生理学的及び生物学的試験(例えば、炭素源及び窒素源の同化作用、カタラーゼ活性の検出及び発酵実験)に基づいて同定した。
4.新たに単離した微生物によるEEBの速度論的分割
選択された微生物は、ラセミ体EEBの速度論的分割を触媒するために使用することができる。選択された微生物は、全細胞及び/又は細胞抽出物の形態にある生体触媒として用いることができる。代わりに、選択された微生物から単離したEH(例えば、部分的精製酵素又は精製酵素の形態にある)は、触媒としても用いることができる。選択された微生物からの全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、又は精製酵素の任意の混合物は、生体触媒としても使用することもできる。産業上の利用に対しては、生体触媒が効果的で安定であることが望ましい。陽性の微生物からのEH含量及びEH活性を増加するために、培養液及び増殖条件の両方の最適化が行なわれる。その場合、各栄養成分及びその最適濃度が決定されるべきであり、そのあと細胞増殖を制御し、高いEH特異的活性を有する生体触媒の最高量を達成する。
《実施例2》
EH活性を含む特定の微生物、アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303及びクリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302は、下記に議論される特定の研究戦略を利用して発見された。エナンチオ高含有のEEBの製造におけるその使用もまた、次の実施例に記載する。
1.環境源から微生物の単離
土壌試料に由来する微生物は、バクトペプトン10g/l、酵母エキス5g/l、及びNaCl 10g/lからなる栄養培養液(pH7.0)中、30℃で増殖させた。単独の炭素源として2%(v/v)の脂肪族アルケン、例えばヘキセン、ヘプテン、オクテン又はヘキサデセンを含有する培地中で数回継代培養した後、同じ培地を含有する寒天プレート上に繰り返しストリーキングを実施した。培地組成を、表2に示した。
Figure 2010532992
2.EH活性を有する微生物に対するHTSスクリーニング及びエナンチオ選択的スクリーニング
栄養培養液中で増殖したアルケン利用株を、ゴム隔膜で密封した5mlネジ蓋瓶中、10mM EEB(Juelich Fine Chemical,Germany)を追加した、2mlの100mM KHPO緩衝液(pH7.0)に懸濁して、電磁撹拌子を用いて30℃で6時間撹拌した。反応混合物を、等容量の酢酸エチルで抽出し、10,000g、4℃で10分間遠心分離をしてから、有機層を、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。キラルGCは、水素炎イオン化検出器を備えたHewlett−Packard 6890シリーズシステムにより行なった。キャリヤーガスとしてHeを用いて、試料を注入(1μl)した。注射器及び検出器の温度は、それぞれ200℃及び250℃であった。EEBの鏡像異性体純度は、溶融シリカシクロデキストリンキャピラリーβ−DEX 225カラム(長さ30m,内径0.25mm,及び膜厚0.25μm,Supelco Inc.)を用いて、温度勾配条件(カラム,3℃/minの速度で80〜150℃)下に測定した。標準として市販の(R)−又は(S)−EEBを用いた(Juelich Fine Chemical,Germany)。アルケン利用株のエポキシド加水分解酵素及びそのエナンチオ選択性は、基質としてEEBを用いてスクリーニングした。未確認株L8G1B及びLL11A5の場合に、EEBのエナンチオ選択的分解が観察された。LL11A5が(R)−EEBを優先的に加水分解したのに対して、L8G1Bは、(S)−特異的分解活性を示した。
3.微生物の同定
EH活性を含有する新たに単離した微生物、L8G1B及びLL11A5は、それらの形態学、グラム染色試験、生理学的及び生物学的試験(例えば、炭素源及び窒素源の同化作用、カタラーゼ活性の検出及び発酵実験)に基づいて同定した。L8G1Bは、API 20NEキット及びapiweb(bioMerieux,France)を用いて、表1A(上記)に示す特徴的特性により、アシネトバクターバウマニと同定された。LL11A5は、その形状、サイズ、グラム試験、及び同化パターンに基づいて酵母株と分類された。これは、細首の出芽及びムコイドコロニーを有し、グラム陽性の結果を示した。これは、API 20C AUX及びapiweb(bioMerieux,France)を用いて、表1Bに示す様々な炭素源に対する同化作用結果を有し、クリプトコッカスアルビダスと同定された。
4a.(R)−EEBを製造するための速度論的分割
アシネトバクターバウマニを、8.5gグルコース/l、2g酵母エキス/l、0.85g NaHPO・HO/l、1.55g KHPO/l、及び10ml微量元素溶液/lを含有する培地上で、30℃で24時間培養した。微量元素溶液は、EDTA 1.0g/l、CaCl・2HO 0.1g/l、FeSO×7HO 0.5g/l、ZnSO×7HO 0.2g/l、CuSO・5HO 0.02g/l、CoCl×6HO 0.04g/l、MnCl×4HO 0.1g/l、NaMoO×2HO 0.02g/l、MgCl×6HO 10g/l、及び(NHSO 200g/lからなる。細胞を、遠心分離により回収して、蒸留水で2回洗浄した。湿細胞ペレット(乾燥細胞重量350mg)を、50mlのネジ蓋瓶中、10mlの100mM KHPO緩衝液(pH7.0)に懸濁した。基質としてラセミ体EEBを最終濃度20mMで添加することにより、速度論的分割を開始した。反応は、振盪培養器中、30℃、250rpmで実施した。速度論的分割方法は、定期的に試料を取ることによりモニターして、残存エポキシドのee値が100%に達したときに停止させた。反応混合物から試料(0.2ml)を取り出し、そのあと酢酸エチル(0.2ml)で抽出して、有機層中に残ったエポキシドの絶対配置を、この実施例の第2項に記載したキラルGCにより決定した。収率は、最多量鏡像異性体の濃度をそのラセミ体の初期濃度で割って計算した百分率で表す。細菌アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303の新たに単離した全細胞は、EEBをエナンチオ選択的に加水分解することができ、(2時間後に)エナンチオピュアな(R)−EEB(100%ee,収率46%)を産生した。速度論的分割方法の間、反応混合物中に存在する(R)−及び(S)−EEBの濃度を時間の関数として示すグラフが、図5に見出される。この反応に対する鏡像異性体率の値(E)は、71である。生じたジオールは、1−tert−ブチルジフェニルシリルクロリドで誘導体化して、キラルHPLCにより分析した(Chiralcel OD,99.2:0.8(ヘキサン:EtOH),1ml/min,230nm)。
4b.(S)−EEBを製造するための速度論的分割
クリプトコッカスアルビダスを、この実施例の第4a項に記載したものと同じ培地上で、30℃で培養した。細胞を、遠心分離により回収して、蒸留水で2回洗浄した。湿細胞ペレット(乾燥細胞重量710mg)を、50mlのネジ蓋瓶中、10mlの100mM KHPO緩衝液(pH7.0)に懸濁した。基質としてラセミ体EEBを最終濃度20mMで添加することにより、速度論的分割方法を開始した。反応は、振盪培養器中、30℃、250rpmで実施した。速度論的分割方法は、定期的に試料を取ることによりモニターして、残存エポキシドのee値が100%に達したときに停止させた。反応混合物から定期的に試料(0.2ml)を取り出し、そのあと酢酸エチル(0.2ml)で抽出して、有機層中に残ったエポキシドの絶対配置を、この実施例の第2項に記載したキラルGCにより決定した。収率は、最多量鏡像異性体の濃度をそのラセミ体の初期濃度で割って計算した百分率で表す。EEBのエナンチオ選択的加水分解により、4時間後に、エナンチオピュアな(S)−EEB(100%ee,収率26%)を生じた。生じたジオールは、1−tert−ブチルジフェニルシリルクロリドで誘導体化して、キラルHPLCにより分析した(Chiralcel OD,99.2:0.8(ヘキサン:EtOH),1ml/min,230nm)。
《実施例3》
次の実施例は、エナンチオ選択的エポキシド開環を経由する、アシネトバクターバウマニ及びクリプトコッカスアルビダスによる、様々なラセミ体3,4−エポキシ酪酸アルキルの速度論的分割を説明する。
ラセミ体3,4−エポキシ酪酸アルキルの合成:
速度論的分割のための基質、すなわち3,4−エポキシ酪酸アルキルは、3−ブテン酸を酸触媒を用いてエステル化し、そのあと3−クロロ過安息香酸(m−CPBA)でエポキシ化することにより合成した(図6Aを参照のこと)。(R)−3,4−エポキシ酪酸アルキルもまた、相当するアルコールで(R)4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸をエステル化し、そのあと塩基触媒を用いて環形成することにより合成して、キラルGC分析のための標準として使用した(図6Bを参照のこと)。
3,4−エポキシ酪酸アルキルの速度論的分割:
アシネトバクターバウマニ及びクリプトコッカスアルビダスを、実施例2の第4a項で用いたものと同じ培地上で、30℃で培養した。細胞は、遠心分離により回収して、蒸留水で2回洗浄した。湿細胞ペレット(それぞれの株に対する乾燥細胞重量15mg)を、1.5mlのネジ蓋管中、0.2mlの100mM KHPO緩衝液(pH7.0)に懸濁した。基質としてラセミ体3,4−エポキシ酪酸アルキルを最終濃度20mMで添加することにより、速度論的分割方法を開始した。反応は、振盪培養器中、30℃、250rpmで実施した。反応は、培養3時間後に、0.2mlの酢酸エチルを添加することにより停止させた。残ったエポキシドを、キラルGCで分析した。結果を表3に示す(下記)。
GCは、FID検出器を備えたHewlett−Packard 6890シリーズGCシステムにより行なった。キャリヤーガスとしてHeを用いて、有機層を注入(1μl)した。注射器及び検出器の温度は、それぞれ200℃及び250℃であった。3,4−エポキシ酪酸アルキルの鏡像異性体純度は、溶融シリカシクロデキストリンキャピラリーβ−DEX225カラム(長さ30m,内径0.25mm,及び膜厚0.25μm,Supelco Inc)を用いて、温度勾配条件(MEB及びEEBについては3℃/minの速度で80℃〜150℃,BEBについては1℃/minの速度で60℃〜120℃,TEBについては1℃/minの速度で60℃〜100℃,OEB及びZEBについては1℃/minの速度で60℃〜180℃)下に測定した。
Figure 2010532992
《実施例4》
次の実施例は、微生物の凍結乾燥細胞粉末を用い、ラセミ体EEBのエナンチオ選択的分解による(エポキシド開環による)、ラセミ体EEBの速度論的分割を説明する。
−70℃の冷凍庫で3ヶ月間保存したアシネトバクターバウマニ及びクリプトコッカスアルビダスを、実施例2の第4a項で用いたものと同じ培地上で、30℃で培養した。細胞は、遠心分離により回収して、蒸留水で2回洗浄した。湿細胞ペレットを、−20℃で2時間凍結させ、次いで一晩凍結乾燥した。細胞の乾燥した粉末(15mg)を、1.5mlのネジ蓋瓶中、0.2mlの100mM KHPO緩衝液(pH7.0)に懸濁した。基質としてラセミ体EEBを最終濃度20mMで添加することにより、速度論的分割を開始した。反応は、振盪培養器中で、30℃、250rpmで実施した。速度論的分割は、定期的に試料を取ることによりモニターして、残りのエポキシドのee値が100%に達したときに停止させた。凍結乾燥した細胞もまた、高収率を伴うエナンチオ選択的分解パターンを示した。アシネトバクターバウマニ及びクリプトコッカスアルビダスは、ラセミ体EEBを分割して、それぞれ収率40%(1時間)及び18%(3時間)で、(R)−及び(S)−EEBを生じた。
前述の発明は、理解を明確にする目的で、説明図及び実施例によっていくらか詳細に記載してきたけれども、当業者ならば、添付した特許請求の範囲の範囲内で、ある程度の変更及び修正を実施し得ることは理解されるであろう。更に、本明細書に与えた各引用文献は、あたかも各引用文献が個別に参照することにより組み込まれたかのように、それと同一程度に、その全体において参照することにより組み込まれる。

Claims (24)

  1. ATCC PTA−8303の識別特性を特徴とする微生物アシネトバクターバウマニ、並びにその誘導体及び変異体を特徴とする、生物学的純粋培養物。
  2. 微生物アシネトバクターバウマニの前記培養物が、水性栄養培地中での好気的培養時にエポキシド加水分解酵素を産生する、請求項1に記載の生物学的純粋培養物。
  3. 前記水性栄養培地が、同化可能な炭素源、窒素源、及び無機物質源を含有する、請求項2に記載の生物学的純粋培養物。
  4. 前記エポキシド加水分解酵素が、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物中の(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる、請求項2に記載の生物学的純粋培養物。
  5. 微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303を培養することを含む、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を分割する方法であって、好気的条件下に水性栄養培地中で、前記ラセミ混合物存在下に、(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記方法。
  6. (R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造する方法であって、
    (i)3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素及びその混合物からなる群から選択される形態のエポキシド加水分解酵素とともにインキュベートすることであって、そこで、前記酵素及び前記酵素を含む前記細胞が、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303からのものであり、前記混合物中の(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記インキュベートすること;並びに
    (ii)前記反応培地から(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを単離すること、
    を含む、前記方法。
  7. 方法が、水性栄養培地中で、微生物の増殖培養において実施される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記方法が好気的条件下に行なわれる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記方法が微生物の静止細胞を用いて水性緩衝液中で実施される、請求項6に記載の方法。
  10. 前記方法が、微生物から単離される精製又は部分的精製エポキシド加水分解酵素を含有する、微生物を含まない反応培地中で実施される、請求項6に記載の方法。
  11. ATCC PTA−8302の識別特性、並びにその誘導体及び変異体を特徴とする、微生物クリプトコッカスアルビダスの生物学的純粋培養物。
  12. 微生物クリプトコッカスアルビダスの前記培養物が、水性栄養培地中での好気的培養時にエポキシド加水分解酵素を産生する、請求項11に記載の生物学的純粋培養物。
  13. 前記水性栄養培地が同化可能な炭素源、窒素源、及び無機物質源を含有する、請求項12に記載の生物学的純粋培養物。
  14. 前記産生されるエポキシド加水分解酵素が、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物中の(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(R)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させることができる、請求項12に記載の生物学的純粋培養物。
  15. 微生物クリプトコッカスアルビダスATCC8302を培養することを含む、3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を分割する方法であって、好気的条件下に水性栄養培地中で、前記ラセミ混合物存在下に、(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(R)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記方法。
  16. (S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造する方法であって、
    (i)3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物を、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素及びその混合物からなる群から選択される形態のエポキシド加水分解酵素とともにインキュベートする工程であって、そこで、前記酵素及び前記酵素を含有する前記細胞が、微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302からのものであり、前記混合物中の(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを優先的に加水分解して、(R)−3,4−ジヒドロキシブタン酸エチルを形成させる能力を特徴とする、前記インキュベートする工程;並びに
    (ii)前記反応培地から(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを単離する工程、
    を含む前記方法。
  17. 方法が、水性栄養培地中で、微生物の増殖培養において実施される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記方法が、好気的条件下に行なわれる、請求項l7に記載の方法。
  19. 前記方法が、前記微生物の静止細胞を用いて、水性緩衝液中で実施される、請求項16に記載の方法。
  20. 前記方法が、微生物から単離される精製又は部分的精製エポキシド加水分解酵素を含有する、微生物を含まない反応培地中で実施される、請求項16に記載の方法。
  21. 微生物エポキシド加水分解酵素を産生する方法であって、
    (i)同化可能な炭素源、窒素源、及び無機ミネラル源を含有する栄養培地中で、エポキシド加水分解酵素の形成に適した条件下に、微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303を好気的に培養する工程;
    (ii)前記エポキシド加水分解酵素を産生するのに十分な時間の間、培養液をインキュベートする工程;並びに
    (iii)前記栄養培地から前記エポキシド加水分解酵素を回収する工程、
    を含む前記方法。
  22. 微生物エポキシド加水分解酵素を産生する方法であって、
    (i)同化可能な炭素源、窒素源、及び無機ミネラル源を含有する栄養培地中で、エポキシド加水分解酵素の形成に適した条件下に、微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302を好気的に培養する工程;
    (ii)前記エポキシド加水分解酵素を産生するのに十分な時間の間、培養液をインキュベートする工程;並びに
    (iii)前記栄養培地から前記エポキシド加水分解酵素を回収する工程、
    を含む前記方法。
  23. 3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物から(R)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造するための、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態にあるエポキシド加水分解酵素の使用であって、前記酵素が微生物アシネトバクターバウマニATCC PTA−8303由来のものである、前記使用。
  24. 3,4−エポキシ酪酸エチルのラセミ混合物から(S)−3,4−エポキシ酪酸エチルを製造するための、全細胞、細胞抽出物、部分的精製酵素、精製酵素、及びその混合物からなる群から選択される形態にあるエポキシド加水分解酵素の使用であって、前記酵素が微生物クリプトコッカスアルビダスATCC PTA−8302由来のものである、前記使用。
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