JP4290703B2 - 車両用シート - Google Patents

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Description

本発明は、車両が衝突されたときの着座者の拘束を良好にする車両用シートを提供しようとするものである。
従来、背凭シートと座席シートを有する車両用シートを、車体が衝撃を受けたとき、後方移動するようにした構成は、公知である(特許文献1参照)。
また、従来、シリンダ内のピストンの位置を花火により所定位置に保持するようにした構成は、公知である(特許文献2参照)。
特開2001−130354号公報 実開昭55−6000号公報
前記公知例のうち前者のものは、車両用シート全体が後方移動するので、後席着座者が後方移動する車両用シートに当たる等の二次被害を受けることがあるという課題がある。
また、前記公知例のうち後者のものは、球体をテーパー状の空間に楔のように食込ませることによりロックするため、球体を移動させてロックさせるまでにタイムラグが生じる課題がある。
本願は、車両用シートの構成を工夫することにより、衝突時の着座者の拘束を有効にできるようにしたものである。
本発明は、背凭シート2と座席シート3を有してシートベルト40により衝突時の着座者を拘束しうる車両用シートにおいて、前記座席シート3は車体側に取付けた座席フレーム10と、該座席フレーム10に対して前後移動自在のクッション座部15とを有して構成し、該クッション座部15は、前記背凭シート2を元の位置に残したまま、車体が受けた衝撃により作動するプリテンショナ装置30により後方移動するように構成し、前記シートベルト40のアンカープレート41およびインナーラップアンカー44は、ワイヤー57の一端に夫々取付け、該夫々のワイヤー57の他端は前記座席フレーム10に別途設けたベルトプリテンショナ装置60に接続し、該各ベルトプリテンショナ装置60は、衝突時のアンカープレート41およびインナーラップアンカー44を、前記クッション座部15の移動量Tより大きく牽引するように構成した車両用シートとしたものである。
本発明は、各ワイヤー57の他端は前記ベルトプリテンショナ装置60のピストン61またはピストンロッド62に接続し、ピストン61またはピストンロッド62には、シートベルト40に荷重が掛かるとシリンダ63の内周面に係合することにより、ピストン31が戻るのを防止するロック体67を設けた車両用シートとしたものである。
本発明は、前記ロック体67は、板バネ材で放射方向に係合凸部68を複数形成し、係合凸部68はワイヤー57側にお椀形状に彎曲させ、通常は、ピストン61をシリンダ63内を自由に移動し、衝突時には、ピストン61の移動によりロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合するように構成した車両用シートとしたものである。
請求項1の発明では、シートベルト40のラップベルト40Aとクッション座部15を同時に後退させつつ、着座者に対するシートベルト40を牽引して張力を作用させるので、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させることができ、さらに、別途設けたベルトプリテンショナ装置60によりシートベルト40を緊張させるので、一層、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させることができる。
請求項2の発明では、着座者の前方移動によるシートベルト40の引き出しを瞬時にロックできて、着座者の拘束状態を保持でき、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させることができる。
請求項3の発明では、衝突とシートベルト40の拘束とのタイムラグを最小限にすることができるばかりでなく、反力によるアンカープレート41およびインナーラップアンカー44の戻りを確実にロックして、着座者の拘束状態を保持できる。
本発明の実施例を図面により説明すると、1は車両用シート、2は車両用シート1の背凭シート、3は座席シート、4は背凭シート2の上部に設けたヘッドレストである。前記座席シート3は、座席フレーム10を公知の前後位置調節装置のスライドレール5に取付けることにより、前記車両用シート1が車体6に対して前後位置調節自在となるように取付ける。
座席フレーム10は左右一対の縦板部材11を連結部12により連結して構成する。座席フレーム10には座席シート3のクッション座部15を前後移動自在に取付ける。前記座席フレーム10の縦板部材11の後側には後側リンク杆16の上部を取付軸17により回動自在に取付ける。後側リンク杆16の下部には前記クッション座部15の後部を取付軸18により回動自在に取付ける。
また、前記縦板部材11の前側には前側リンク杆20の下部を取付軸21により回動自在に取付け、前側リンク杆20の上部には前記クッション座部15の前部を取付軸22により回動自在に取付ける。
クッション座部15は、図3のように、内部にクッションフレーム23を設け、クッションフレーム23にクッション材24等を取付け、クッション材24の外周を表皮25で包囲して形成するが、構成は任意である。
クッション座部15の下面には、プリテンショナ装置30を設ける。プリテンショナ装置30は一例を示すと、ピストン31とシリンダ32と該シリンダ32内に多量のガスを供給するガスジェネレータ33により構成する(図2)。シリンダ32の基部またはピストンロッド34の何れか一方をクッション座部15の下面に取付け、シリンダ32の基部またはピストンロッド34の何れか他方を座席フレーム10の前記連結部12に取付ける。
プリテンショナ装置30は、車体所望位置に設けた衝撃検出装置(図示省略)により衝撃を検知すると、ガスジェネレータ33のガス発生剤に着火して多量のガスを発生させ、この多量のガスをシリンダ32に供給して瞬時にピストン31を移動させ、ピストン31の移動によりクッション座部15を後方移動させる。
しかして、前記左右の後側リンク杆16の左右何れか一方には、シートベルト40の一端を係止するアンカープレート41を軸(取付軸18)42により取付け、後側リンク杆16の左右何れか他方には、インナーバックル43を有するインナーラップアンカー44を軸(取付軸18)42により取付ける。
シートベルト40の中間部にはタングプレート45を移動自在に設け、タングプレート45はインナーバックル43に着脱自在に係合させてロックする。
46はシートベルト40の中間部を所定高さに位置させるショルダベルトアンカー、47はベルトリトラクターであり、ベルトリトラクター47は通常時のシートベルト40の引き出しを許容するが、衝撃が掛かったときにはシートベルト40の引き出し(緊張させる)を停止させる機構を内蔵している。
48はガイド軸であり、左右の縦板部材11のガイド溝49に係合させ、後側リンク杆16の回動を案内する。
この場合、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44を取付けた軸42の、軸17中心に回動して移動する移動量Sが、クッション座部15の実質後方移動量となるガイド軸48の移動量Tより大きくなるように、ガイド軸48とガイド溝49を相対的に設定する。
即ち、後側リンク杆16を所定位置に位置させることにより、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44の軸42を斜めに回動させ、略水平のクッション座部15の移動量より大きくし、軸42の移動量S>ガイド軸48の移動量Tにする(なお、後側リンク杆16が所定位置に位置すればよく、その手段は任意であり、実施例に限定されない)。
換言すると、正方形の一辺がガイド軸48の移動量Tに相当し、正方形の対角線が軸42の移動量Sに相当して、軸42の移動量S>ガイド軸48の移動量Tとなる。
しかして、背凭シート2は、前記クッション座部15が後方移動できるように、前記座席フレーム10の縦板部材11に回動自在に取付ける。
50は背凭シート2の傾斜角度を調節する公知のリクラインニング装置である。
また、図8〜図11は、他の実施例を示し、クッション座部15の後部には取付軸55を設け、取付軸55は座席フレーム10の左右の縦板部材11に設けた後側取付孔56に前後移動自在に取付ける。
また、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44はワイヤー57の一端に係止し、ワイヤー57の中間部は前記取付軸55に設けたローラー(プーリ)58に掛け回し、ワイヤー57の他端は縦板部材11に係止する。
また、図12〜図15は、他の実施例を示し、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44はワイヤー57の一端に係止し、ワイヤー57の中間部は前記取付軸55に設けたローラー58に掛け回し、ワイヤー57の他端はベルトプリテンショナ装置60のピストン61のピストンロッド62に接続する。ピストン61はシリンダ63内に通常は摺動自在に嵌合させる。ピストン61よりワイヤー57側のシリンダ63内はガス室64に形成し、ガス室64に多量のガスを供給するガスジェネレータ65を取付ける。ベルトプリテンショナ装置60は、車体所望位置に設けた衝撃検出装置(図示省略)により衝撃を検知すると、ガスジェネレータ65のガス発生剤に着火して多量のガスを発生させ、この多量のガスをシリンダ63に供給して瞬時にピストン61を移動させ、ピストン61の移動によりワイヤー57を介してシートベルト40を牽引し、着座者を拘束する。
この場合、前記ピストン61には、シートベルト40に掛かる荷重によりピストン61が戻るのを防止するロック体67を設ける。ロック体67は、板バネ材で放射方向に係合凸部68を複数形成し、係合凸部68はワイヤー57側にお椀形状に彎曲させ、通常は、ピストン61がシリンダ63内を自由に移動させるようにする。そして、衝突時にピストン61が移動してワイヤー57を牽引したときは、ロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合して戻りを阻止する。
ロック体67の取付構成は任意であるが、ピストン61に突起部70を設け、突起部70にロック体67の挿入孔71を挿入し、突起部70の先端を潰して固定している。72はシールリングである。
(実施例の作用)
着座者は座席シート3に腰を下ろし、車両用シート1全体をスライドレール5により車体6に対して前後させて前後位置調節を行い、背中を背凭シート2に当てて、リクラインニング装置50により背凭シート2の傾斜角度を調節し、シートベルト40のタングプレート45をインナーバックル43に係合させて、シートベルト40を装着する。
この場合、座席シート3、座席フレーム10とクッション座部15は一体で前後移動し、当然、背凭シート2も前後移動して、スライドレール5により車体6に対して車両用シート1全体を前後させて前後位置調節する。
この状態で、走行し、走行中に前方から衝突されると、車体は衝突により前進を阻止されて減速荷重が直ちに発生し、車体の減速荷重の反力が着座者に作用し、着座者は車両用シート1から前方に移動しようとするが、シートベルト40があるため、着座者は車両用シート1に拘束される。
このとき、シートベルト40は、着座者に掛かる減速荷重でベルトリトラクター47からの引き出しが停止するから、着座者に掛かる減速荷重(反力の慣性力)は、車体の減速荷重より遅れて作用する。
すると、衝突とシートベルト40による拘束との間に所謂タイムラグが生じ、着座者の移動量が大きくなる現象が生じる。
本願では、衝突時に、ガスジェネレータ33により、車両用シート1の背凭シート2はそのままで、座席シート3のクッション座部15を座席フレーム10(車体)に対して後方移動させ、クッション座部15にシートベルト40のアンカープレート41およびインナーラップアンカー44を取付けているから、シートベルト40(ラップベルト40A)とクッション座部15が同時に後退し、着座者に対するラップベルト40Aの張力とクッション座部15への圧力を同時に作用させ、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させる。
この場合、車両用シート1の背凭シート2を元の位置に残したままで、しかも、クッション座部15は、座席フレーム10も元の位置に残したままで、後退するので、後席乗員の二次被害の発生も抑制する。
しかして、クッション座部15の後部は後側リンク杆16により、クッション座部15の前部は前側リンク杆20により夫々座席フレーム10に回動自在に取付け、後側リンク杆16はその上部を座席フレーム10の後側に、前側リンク杆20はその下部を座席フレーム10の前側に、夫々取付けているから、座席シート3のクッション座部15の後部は略水平に移動するように案内され、一方、クッション座部15の前部は前側リンク杆20により後方移動しながら上動する。
したがって、クッション座部15の座面前側が着座者の前方移動をストップさせるように作用し、シートベルト40と相俟って、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させる。
この場合、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44は軸42により夫々後側リンク杆16に取付けられているから、軸42は取付軸17を支点に円弧状に移動するため、クッション座部15の実質後方移動量Tに対して軸42の移動量Sは大きくなり、その結果、シートベルト40を牽引して、一層、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させる。
また、図8の実施例では、衝撃を受けると、クッション座部15の後部は、取付軸55が後側取付孔56に案内されて後方移動し、一方、クッション座部15の前部は前側リンク杆20により後方移動しながら上動すると共に、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44がワイヤー57の一端に係止され、ワイヤー57の他端は縦板部材11に係止され、ワイヤー57の中間部が取付軸55に設けたローラー58に掛け回されているから、クッション座部15の実質後方移動量Tに対してワイヤー57の移動量Sは多くなり、その結果、シートベルト40を牽引して、一層、着座者の車両用シート1への拘束効果を向上させる。
なお、車両用シート1の前後位置調節のときには、座席フレーム10とクッション座部15は一体で前後移動するので、アンカープレート41およびインナーラップアンカー44と、ワイヤー57と、該ワイヤー57の他端の係止位置との位置関係は変化しないので、シートベルト40の緊張や緩みは生じない。
しかして、図12〜図15の実施例では、車体所望位置に設けた衝撃検出装置(図示省略)により衝撃を検知すると、プリテンショナ装置30によりクッション座部15を後方移動させると共に、別途設けたベルトプリテンショナ装置60のガスジェネレータ65のガス発生剤に着火して多量のガスを発生させ、この多量のガスをシリンダ63に供給して瞬時にピストン61を移動させ、ピストン61の移動によりワイヤー57を介してシートベルト40を牽引し、着座者を拘束する。
この場合、ピストン61にはロック体67を設け、ロック体67は、板バネ材で放射方向に係合凸部68を複数形成し、係合凸部68はワイヤー57側にお椀形状に彎曲させているから、通常は、ピストン61がシリンダ63内を自由に移動し、衝突時のピストン61の移動が開始すると、瞬時にロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合してロックする。
したがって、着座者の拘束中に、シートベルト40に掛かる荷重によりピストン61が戻るのを防止する。
このロック体67とシリンダ63の内面との係合は、接触抵抗の変化により行うので、衝突時の加速を受けると、ロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合してロックする。
しかし、通常時は、加速を受けないので、ロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合せず、シリンダ63内を自由に移動する。
なお、図6、図7、図10および図11では、理解を容易にするために本来手前側に存在している縦板部材11を省略し、クッション座部15に細点を図示しているが、これにより本願の構成が限定されるものではない。
車両シートおよびシートベルトの斜視図。 車両シートの座席シートの座席フレームとクッション座部の組立て状態斜視図。 座席シートの断面図。 衝突前の側面図。 クッション座部の移動量Tと軸の移動量Sの関係を示す説明図。 衝突前のクッション座部の側面図。 衝突時のクッション座部の移動状態側面図。 シートベルトを牽引する他の実施例の側面図。 同断面図。 同衝突前のクッション座部の側面図。 同衝突時のクッション座部の移動状態側面図。 シートベルトを牽引する他の実施例の斜視図。 同側面図。 同断面図。 同ロック体の斜視図。
符号の説明
1…車両用シート、2…背凭シート、3…座席シート、4…ヘッドレスト、5…スライドレール、10…座席フレーム、11…縦板部材、12…連結部、15…クッション座部、16…後側リンク杆、17…取付軸、18…取付軸、20…前側リンク杆、21…取付軸、22…取付軸、23…クッションフレーム、24…クッション材、25…表皮、30…ベルトプリテンショナ装置、31…ピストン、34…ピストンロッド、33…ガスジェネレータ、40…シートベルト、41…ベルトアンカー、42…軸、43…インナーバックル、44…インナーラップアンカー、45…タングプレート、46…ショルダベルトアンカー、47…ベルトリトラクター、50…リクラインニング装置、55…取付軸、56…後側取付孔、57…ワイヤー、58…ローラー、60…ベルトプリテンショナ装置、61…ピストン、62…ピストンロッド、63…シリンダ、64…ガス室、65…ガスジェネレータ、67…ロック体、68…係合凸部、70…突起部、71…挿入孔、72…シールリング。

Claims (3)

  1. 背凭シート2と座席シート3を有してシートベルト40により衝突時の着座者を拘束しうる車両用シートにおいて、前記座席シート3は車体側に取付けた座席フレーム10と、該座席フレーム10に対して前後移動自在のクッション座部15とを有して構成し、該クッション座部15は、前記背凭シート2を元の位置に残したまま、車体が受けた衝撃により作動するプリテンショナ装置30により後方移動するように構成し、前記シートベルト40のアンカープレート41およびインナーラップアンカー44は、ワイヤー57の一端に夫々取付け、該夫々のワイヤー57の他端は前記座席フレーム10に別途設けたベルトプリテンショナ装置60に接続し、該各ベルトプリテンショナ装置60は、衝突時のアンカープレート41およびインナーラップアンカー44を、前記クッション座部15の移動量Tより大きく牽引するように構成した車両用シート。
  2. 請求項1において、各ワイヤー57の他端は前記ベルトプリテンショナ装置60のピストン61またはピストンロッド62に接続し、ピストン61またはピストンロッド62には、シートベルト40に荷重が掛かるとシリンダ63の内周面に係合することにより、ピストン31が戻るのを防止するロック体67を設けた車両用シート。
  3. 請求項2において、前記ロック体67は、板バネ材で放射方向に係合凸部68を複数形成し、係合凸部68はワイヤー57側にお椀形状に彎曲させ、通常は、ピストン61をシリンダ63内を自由に移動し、衝突時には、ピストン61の移動によりロック体67の係合凸部68がシリンダ63の内面に係合するように構成した車両用シート。
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