JP4290349B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は600℃程度以下の比較的低温にて結晶性が窮めて優れている多結晶性半導体膜を形成する技術に関する。取り分けこの技術を用いて多結晶硅素薄膜トランジスタに代表される薄膜半導体装置の性能を著しく向上せしめる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多結晶硅素薄膜トランジスタ(p−Si TFT)に代表される薄膜半導体装置を汎用ガラス基板を使用し得る600℃程度以下の低温にて製造する場合、従来以下の如き製造方法が取られて居た。まず基板上に半導体膜と成る非晶質硅素膜を50nm程度の厚みに低圧化学気相堆積法(LPCVD法)で堆積する。次に此の非晶質膜にXeClエキシマレーザー(波長308nm)を照射して多結晶硅素膜(p−Si膜)とする。XeClエキシマレーザー光の非晶質硅素と多結晶硅素中での吸収係数は其々0.139nm-1と0.149nm-1と大きい為、半導体膜に入射したレーザー光の9割は表面から15nm以内で吸収される。又、非晶質硅素での吸収係数の方が多結晶硅素での吸収係数よりも7%程小さくなって居る。その後、ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜を化学気相堆積法(CVD法)や物理気相堆積法(PVD法)にて形成する。次にタンタル等でゲート電極を作成して、金属(ゲート電極)−酸化膜(ゲート絶縁膜)−半導体(多結晶硅素膜)から成る電界効果トランジスタ(MOS−FET)を構成させる。最後に層間絶縁膜を此等の膜上に堆積し、コンタクトホールを開孔した後に金属薄膜にて配線を施して、薄膜半導体装置が完成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら此等従来の薄膜半導体装置の製造方法では、エキシマレーザー光のエネルギー密度制御が困難で、僅かなエネルギー密度の変動に依っても半導体膜質が同一基板内に於いてすら大きなばらつきを示して居た。又、膜厚や水素含有量に応じて定まる閾値よりも照射エネルギー密度が僅かに大きく成った丈でも半導体膜には激しい損傷が入り、半導体特性や製品歩留まりの著しい低下を招いて居た。斯うした事から基板内で均質な多結晶半導体膜を得るには、レーザー光のエネルギー密度を最適値よりも可成り低く設定する必要が有り、それ故に良好な多結晶薄膜を得るにはエネルギー密度の不足が否めなかった。又、最適なエネルギー密度でレーザー照射を施しても、多結晶膜を構成する結晶粒を大きくする事が困難で、膜中に多くの欠陥を残留させているのが実状であった。斯くした事実に則し、従来の製造方法にてp−Si TFT等の薄膜半導体装置を安定的に製造するには、完成した薄膜半導体装置の電気特性を犠牲にせざるを得ないとの課題を有して居た。
【0004】
そこで本発明は上述の諸事情を鑑み、その目的とする所は600℃程度以下との低温工程にて、窮めて優良なる薄膜半導体装置を安定的に製造する方法を提供する事に有る。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の概要を説明した後、本発明及びその基礎原理と作用を詳細に説明する。
【0006】
本発明は基板上に形成された硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に必要に応じて下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成し、此の下地保護膜上或いは基板上に硅素(Si)を主体とした非晶質半導体膜を堆積する半導体膜形成工程と、此の非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて固相成長半導体膜を得る固相結晶化工程と、斯様にして得られた固相成長半導体膜にパルスレーザー光を照射して結晶性半導体膜を得る光照射工程とを含み、此の際に使用されるパルスレーザー光の波長が370nm程度以上710nm程度以下で有る事を以て其の特徴と為す。斯様な光の多結晶硅素に於ける吸収係数は非晶質硅素に於ける吸収係数よりも大きい。更に本願発明はパルスレーザー光の波長が450nm程度以上650nm程度以下で有る事を以てしても其の特徴と為す。此に応じてパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiは10-2nm-1程度から10-3nm-1程度となる。半導体膜の膜厚d(nm)とパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpS i(nm-1)とは
0.105・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1との関係式を満たして居るのが好ましい。より理想的には、
0.405・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1との関係式を満たして居る事である。
【0007】
本発明を液晶表示装置等に適応するには、基板が可視光に対して透明で有る事が望まれる。又、応用の如何に関わらず、基板がパルスレーザー光に対して略透明である事が望まれる。略透明で有るとはパルスレーザー光の基板に於ける吸収係数が多結晶硅素に於ける吸収係数の十分の一程度以下で有る事を意味し、具体的には基板に於ける吸収係数μSubが10-4nm-1程度以下で有る。通常、先の非晶質半導体膜の形成は化学気相堆積法(CVD法)に依る堆積工程を含んで居る。化学気相堆積法の中でも取り分け低圧化学気相堆積法(LPCVD法)乃至はプラズマ化学気相堆積法が非晶質半導体薄膜の堆積に適しており、更には高真空型低圧化学気相堆積装置或いは高真空型プラズマ化学気相堆積装置にて非晶質半導体膜が堆積されるのが理想的と言える。高真空型低圧化学気相堆積装置とは典型的には半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10-7Torr以下と成って居り、非晶質半導体膜が1.5nm/min程度以下との遅い堆積速度で形成されても、非晶質半導体膜中の酸素原子濃度を2×1016cm-3程度以下となし得る成膜装置を指す。同様に高真空型プラズマ化学気相堆積装置とは典型的には半導体膜堆積直前の背景真空度が1×10-6Torr以下と成って居り、非晶質半導体膜の堆積速度が1nm/sec程度以下で有っても、堆積された非晶質半導体膜中の酸素原子濃度を2×1016cm-3程度以下となし得る成膜装置である。YAG2ωレーザー光を硅素を主体とした半導体膜に照射する場合、半導体膜の厚みは25nm程度以上165nm程度以下が好ましく、理想的には25nm程度以上95nm程度以下で有る。
【0008】
固相結晶化工程は非晶質半導体膜が形成された基板を熱処理炉に挿入して、略熱平衡状態にて行われるか、或いは急速熱処理装置にて行われる。熱処理炉にて行われる場合、熱処理温度は400℃程度以上700℃程度以下の処理温度にて固相結晶化が進められる。
【0009】
本願発明での光照射工程に於ける理想的なパルスレーザー光波長は約532nmである。パルスレーザー光はQスイッチ発振する固体レーザー(Qスイッチ固体レーザー)の高調波が好ましい。Qスイッチ固体レーザーのレーザー媒体としてはNdイオンをドープされた結晶やYbイオンをドープされた結晶、Ndイオンをドープされたガラス、Ybイオンをドープされたガラスなどが好ましい。従って具体的にはQスイッチ発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波(波長532nm)(YAG2ωと略称する)やQスイッチ発振するNd:YVO4レーザー光の第二高調波(波長532nm)、Qスイッチ発振するNd:YLFレーザー光の第二高調波(波長524nm)、Qスイッチ発振するYb:YAGレーザー光の第二高調波(波長515nm)等をパルスレーザー光として使用するのが最も優れて居る。
【0010】
光照射工程でパルスレーザー光を固相成長半導体膜に照射する際の、半導体膜上での照射領域は幅がW(μm)で長さがL(mm)の線状乃至は略長方形状で有る。照射領域内ではパルスレーザー光の照射エネルギー密度は長さ方向に略台形状に分布して居る。一方、幅方向の照射エネルギー密度は略台形状乃至は略ガウス関数的に分布して居るのが好ましい。照射領域の長さLに対する幅Wの比(L/W)は100以上で有る事が好ましく、理想的には1000以上と云える。パルスレーザー光の幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大勾配値は3mJ・cm-2・μm-1以上有るのが望ましい。此のパルスレーザー光の幅方向に於ける照射エネルギー密度勾配の最大値を取る位置と、パルスレーザー光の幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大値を取る位置とが略一致して居れば、優良なる薄膜半導体装置を製造する上で更に好ましい。
【0011】
この際に幅Wが1μm程度以上6μm程度以下で有る事が望まれる。パルスレーザー光は固相成長半導体膜上で照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行き、基板全面の照射を完了させる。パルスレーザー光照射時に於ける照射領域の幅方向は、薄膜半導体装置が完成して動作する際の能動層内に於ける電流方向と略並行となって居る。レーザー照射時には半導体膜上の任意の一点が10回程度以上80回程度以下のパルスレーザー光照射を被る様に光照射工程を行う。パルスレーザー光の固相成長半導体膜上に於ける照射エネルギー密度は固相成長半導体膜の少なくとも表面を溶融させる強度以上で有り、より好ましくは固相成長半導体膜の厚み方向の3分の2程度以上を溶融させる強度と言える。反対に照射エネルギー密度の上限は固相成長半導体膜の一部を消失させる強度以下で有り、理想的には固相成長半導体膜を厚み方向で完全に溶融させる強度以下で有る。具体的にパルスレーザー光として波長が約532nmの光を使用した場合、パルスレーザー光の固相成長半導体膜上に於ける照射エネルギー強度は100mJ・cm-2程度以上1500mJ・cm-2程度以下、好ましくは600mJ・cm-2程度以上1500mJ・cm-2程度以下、或いは100mJ・cm-2程度以上850mJ・cm-2程度以下、理想的には600mJ・cm-2程度以上850mJ・cm-2程度以下である。
本発明の半導体装置の製造方法は、基板上に珪素(Si)を主体とする非晶質半導体膜を形成する非晶質半導体膜形成工程と、前記非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて半導体膜を得る半導体膜形成工程と、前記半導体膜に固体発光素子を用いたレーザー光を照射して結晶性半導体膜を得る光照射工程と、を有し、前記レーザー光の波長が370nm以上710nm以下であることを特徴とする。
また、本発明の他の半導体装置の製造方法は、基板上に下地保護膜を形成する下地保護膜形成工程と、前記下地保護膜上に珪素(Si)を主体とする半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、前記半導体膜に固体発光素子を用いたレーザー光を照射して結晶性半導体膜を得る光照射工程と、を有し、前記レーザー光の波長が370nm以上710nm以下であることを特徴とする。
また、前記光照射工程が、前記半導体膜の前記下地保護膜との界面近傍部分を溶融しないものであることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記レーザー光を繰り返し照射するものであることが望ましい。
また、前記レーザー光の前記半導体膜の多結晶珪素成分における吸収係数よりも非晶質珪素成分における吸収係数の方が大きいものであることが望ましい。
また、前記固体発光素子が発振する前記レーザー光の前記半導体膜表面におけるレーザーエネルギー密度の変動が5%未満であることが望ましい。
また、前記固体発光素子が発振する前記レーザー光が前記半導体膜を完全に溶融しないエネルギー密度であり、かつ、前記半導体膜の厚み方向における成分の3分の2以上を溶融させるエネルギー密度であることが望ましい。
また、前記レーザー光の波長が450nm以上650nm以下であることが望ましい。
また、前記固体発光素子が発振する前記レーザー光が前記半導体膜を照射する領域の形状が幅をW、長さをLとする長方形であることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記レーザー光を前記幅方向に移動させながら繰り返し照射するものであることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記レーザー光を前記半導体膜の所定領域に照射した後、前記レーザー光を前記所定領域の一部に重なるよう前記幅方向に移動して照射するものであることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記半導体膜の一部を溶融させ、結晶粒を横成長させるものであることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記レーザー光を連続発振して照射するものであることが望ましい。
また、前記光照射工程が、前記レーザー光をパルス発振して照射するものであることが望ましい。
また、前記レーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10-3nm-1以上10-2nm-1以下であり、前記半導体膜の膜厚dと前記吸収係数μpSiとが、0.405・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1との関係式を満たしていることが望ましい。
また、前記レーザー光がQスイッチ発振する固体レーザーの高調波であることが望ましい。
あるいは、前記レーザー光がNdイオンドープされた結晶をレーザー媒体としたQスイッチ発振固体レーザーの高調波であることが望ましい。
あるいは、前記レーザー光がQスイッチ発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波であることが望ましい。
あるいは、前記レーザー光がQスイッチ発振するNd:YVO4レーザー光の第二高調波であることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明はガラスの歪点温度が550℃程度から650℃程度と云った低耐熱性ガラス基板、或いは石英基板と云った高耐熱性ガラス基板等の各種透明基板上に形成された結晶性の半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に関わり、基板上に必要に応じて下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成し、此の下地保護膜上乃至は基板上に硅素(Si)を主体とした非晶質半導体膜を堆積する半導体膜形成工程と、此の非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて固相成長半導体膜を得る固相結晶化工程と、斯様に形成された固相成長半導体膜にパルスレーザー光を照射して結晶性半導体膜を得る光照射工程とを含み、光照射工程にて使用されるパルスレーザー光はその波長が370nm程度以上710nm程度以下で有る事を以て其の特徴と為す。斯様な光は多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きい。パルスレーザー光として最も優れて居るのはQスイッチ発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波である。
【0013】
本願発明を液晶表示装置に適応する際には基板は可視光に対して透明で有る事が好ましく、其れ以外に適応される際にも基板は少なくともパルスレーザー光に対して略透明で有る事が望まれる。具体的にはパルスレーザー光に対する基板の吸収係数が、多結晶硅素に対する吸収係数の十分の一程度以下で有る事が望ましい条件とされる。此は本願発明がパルスレーザー光の半導体膜中での透過率を厳格に調整する技術を採用している為、基板に於けるレーザー光の吸収係数が半導体膜に於ける吸収係数に対して十分に小さくなければ、基板にレーザー光に依る損傷が入って仕舞うからである。後述する様に高品質な結晶性半導体膜を得るにはパルスレーザー光の強度や波長、半導体膜の厚み等を最適化せねばならず、それには基板がパルスレーザー光に対して略透明であらねばならない。実際、基板に於けるパルスレーザー光の吸収係数が半導体膜に於ける吸収係数の十分の一程度以下で有れば、基板内でレーザー光を吸収する層の厚みは半導体膜の厚みの十倍程度以上となる。斯うして基板で光が吸収される体積が増大するので其れに応じて熱容量も増し、基板の温度上昇を比較的抑制する事が可能になる訳である。換言すれば基板や薄膜半導体装置に損傷を与える事無く優良な薄膜半導体装置を作成するには、上述した光学特性条件を基板が満たしている事が不可欠と云える。
【0014】
半導体膜形成工程では、基板上乃至は基板上に形成された下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした非晶質半導体膜を堆積する。半導体膜としては硅素膜(Si)や硅素ゲルマニウム膜(SixGe1-x:0<x<1)に代表される半導体物質が使用され、硅素をその主構成元素(硅素原子構成比が80%程度以上)とする。基板は液晶表示装置に用いられる透明無アルカリガラス、或いは透明結晶化ガラス、更には石英ガラスやセラミック等の絶縁性基板が用いられるのが通常だが、基板の耐熱性(ガラス基板の場合は歪み点温度)が650℃程度以上有れば、其の種類に囚われない。高純度の石英ガラス以外を基板として用いる場合には、此等の基板の表面に半導体膜に対する下地保護膜として、酸化硅素膜が100nm程度から10μm程度堆積されるのが好ましい。
【0015】
下地保護膜としての酸化硅素膜は単に半導体膜と基板との電気的絶縁性を取ったり、或いは基板が含有する不純物の半導体膜への拡散混入を防ぐにのみならず、下地酸化膜と結晶性半導体膜との界面を良質な物ともする。本願発明では、薄膜半導体装置の半導体膜は10nm程度から200nm程度の厚みを有し、半導体膜の膜厚方向全域に渡ってエネルギーバンドが曲がって居る場合(SOIの完全空乏化モデルに相当する)が主たる対象とされる。斯様な状況下ではゲート絶縁膜と半導体膜との界面と共に、下地保護膜と半導体膜との界面も電気伝導に無視出来ぬ関与を及ぼす。酸化硅素膜は半導体膜と界面を成す際に界面捕獲準位を最も低減し得る物質で有るから、下地保護膜として適している訳で有る。半導体膜は此の下地保護膜上に形成される。
【0016】
従って下地保護膜としては半導体膜との界面に1012cm-2程度以下の界面準位を有する酸化硅素膜の使用が本願では望まれる。更に本発明では、従来技術に比べて半導体膜の下部も高温に加熱される傾向が強い為に、基板からの不純物拡散が生じ易い。此を防ぎ、高純度の半導体膜を用いて優良なる薄膜半導体装置を本願発明にて作成するには、密度の高い稠密な酸化硅素膜を下地保護膜として使用するのが不可欠である。この様な酸化硅素膜は、液温が25±5℃で濃度が1.6±0.2%の沸化水素(HF)酸水溶液に於けるエッチング速度が1.5nm/s以下となる物である。通常、下地保護膜はプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、スパッター法と云った気相堆積法で形成される。此等の内でも特に本願発明に適した下地保護膜を作成するには、PECVD法の中でも電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR−PECVD法)やヘリコンPECVD法、リモートPECVD法を利用する事が好ましい。
【0017】
又、工業用周波数(13.56MHz)や其の整数倍の周波数を用いた汎用のPECVD法にて本願発明に適した酸化硅素膜を得るには、原料物質としてTEOS(Si−(O−CH2CH34)と酸素(O2)とを使用し、酸素流量をTEOS流量の5倍以上に設定して酸化硅素膜を堆積すれば良い。或いは原料物質としてモノシラン(SiH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用い、希釈気体としてヘリウム(He)乃至はアルゴン(Ar)と云った希ガスを用いて、総気体流量中の希ガスの割合を90%程度以上(即ち総気体流量中の原料物質の割合を10%程度未満)として酸化硅素膜を堆積すれば良い。その際に基板温度は280℃以上で有る事が望まれる。基板が高純度の石英から成る時には下地保護膜と石英基板とが兼用される事も可能で有るが、表面状態を常に一定として半導体膜品質の変動を最小とするには、上述の方法にて下地保護膜を形成するのが好ましい。
【0018】
下地保護膜上に非晶質状態に有る半導体膜が堆積される。半導体膜堆積にはプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、常圧化学気相堆積法(APCVD法)、スパッター法と云った各種気相堆積法が可能で有るが、高純度の半導体膜が容易に堆積されるとの立場からは、其の内でも特に低圧化学気相堆積法(LPCVD法)とプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)が適して居る。
【0019】
低圧化学気相堆積法(LPCVD法)で非晶質硅素膜に代表される硅素を主体とする非晶質半導体膜を堆積する際には高次シラン(Sin2n+2:n=2,3,4)を原料気体の一種として用いるのが好ましい。価格や安全性を考慮すると高次シランとしてはジシラン(Si26)が最も適している。ジシランを低圧化学気相堆積法に適応すると、425℃程度以下の低温にて高純度の非晶質硅素膜を0.5nm/min程度以上との比較的速い堆積速度にて得る事が出来る。本願発明に適した良質な非晶質半導体膜を得るには、堆積温度と堆積速度の制御が重要となる。堆積温度は430℃程度以下で、且つ堆積速度が0.6nm/min程度以上と成る様にジシラン流量や成膜時の圧力を定める必要がある。低圧化学気相堆積法は高真空型低圧化学気相堆積装置にて行われる。此は半導体膜の純度を高めて不純物に起因する結晶核の発生を最少とし、本願発明で最終的に得られる結晶性半導体膜を高純度で且つ大きな結晶粒から構成される様にする為で有る。取り分け本願発明では、不純物に起因する結晶核密度を最少として固相結晶化工程で大粒径の多結晶固相成長半導体膜を得るにのみ成らず、光照射工程では半導体膜が厚み方向で完全に溶融する状況をも考えられる為、不純物に起因する結晶核の発生を最少とするならば、溶融結晶化に適したレーザー光を使用する事で、完全溶融した部位に横方向への結晶成長を促進出来る。従来技術では未制御の不純物量と不適切なレーザー光の為に、完全溶融した部位は微結晶粒より構成されていたが、斯様にして本願発明では完全溶融部にも大きな結晶粒から成る多結晶半導体薄膜が得られ訳である。
【0020】
高真空型低圧化学気相堆積装置とは典型的には半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10-7Torr以下と成って居り、非晶質半導体膜が1.5nm/min程度以下との遅い堆積速度で形成されても、非晶質半導体膜中の酸素原子濃度を2×1016cm-3程度以下となし得る成膜装置を指す。斯様な高真空型低圧化学気相堆積装置は成膜室の気密性が優れて居ると同時に、成膜室に於ける排気速度が120sccm/mTorr(不活性ガスを120sccm成膜室に流した時に得られる平衡圧力が1mTorrと成る排気速度)程度以上の高い排気能力を有して居る事が更に望まれる。斯うした高排気能力を有する装置では1時間程度との比較的短時間で、基板等からの脱ガス流量を充分に低減せしめ、生産性を高く保って尚、高純度半導体薄膜の堆積を可能とするからで有る。
【0021】
基板面積が2000cm2程度以上有る大型基板を用いる場合には、低圧化学気相堆積法の適応が困難と化す。斯様な状況下にて非晶質半導体膜を堆積する場合には高真空型プラズマ化学気相堆積装置を使用する。此は典型的には半導体膜堆積直前の背景真空度が1×10-6Torr以下と成って居り、非晶質半導体膜の堆積速度が1nm/sec程度以下と云った低速で堆積された非晶質半導体膜であっても、半導体中の酸素原子濃度を2×1016cm-3程度以下となし得る成膜装置を指す。高真空型プラズマ化学気相堆積装置としてはプラズマ処理を行う成膜室が其れよりも大きな別の真空の部屋内に設置されて居るプラズマボックス型のPECVD装置が適している。プラズマボックス型のPECVD装置とは成膜室が二重真空構造とされて居る事に依り成膜室の真空度が上がるとの効果を有し、同時に成膜室壁面全体が加熱されて成膜時に壁面温度と基板温度とが略同一となるホットウォール型のプラズマ化学気相堆積装置となっている。此により成膜室壁より脱する不純物ガス量を最少として、真空度を上げるとの効果も認められる。
【0022】
非晶質半導体膜堆積時に於ける背景真空度が斯うして向上し、壁面からの脱ガス量も減少するので堆積される半導体膜の純度が上がり、先に低圧化学気相堆積法で説明したのと同じ効果が薄膜半導体装置にもたらされる。高真空型プラズマ化学気相堆積装置の背景真空度は高真空型低圧化学気相堆積装置の背景真空度に劣るものの、半導体膜の堆積速度を0.1nm/sec程度以上と速める事が可能な為、半導体膜中の不純物濃度を著しく低減せしめる。半導体膜成膜の原料気体にはモノシラン(SiH4)乃至はジシラン(Si26)が使用され、成膜時の基板温度は100℃程度から450℃程度の間とされる。基板温度が高い程非晶質半導体膜中に含まれる水素量が減るので、後の固相結晶化工程を安定的に進められる。理想的には非晶質膜堆積時の基板温度は250℃程度から450℃程度の間である。250℃程度よりも温度が高ければ非晶質膜中に含有される水素量を8atm%程度以下と低減出来、固相結晶化工程を安定的に行うことが可能と成る。450℃程度よりも低ければ非晶質膜を構成する非晶質粒が大きく成り、此の非晶質膜を結晶化した際に得られる多結晶膜を構成する結晶粒も大きく出来る。より理想的には400℃程度以下の時に非晶質粒が増大する。固相結晶化工程時に水素離脱に基づく半導体膜の剥離を防ぐには半導体膜中に含有される水素量を好ましくは5atm%程度以下とする事が不可欠で、其れには成膜時の基板温度を280℃程度以上とし、且つ成膜速度を0.5nm/sec程度以下とする。半導体膜中への不純物混入を最少にする為に成膜速度は0.1nm/sec程度以上が求められるから、結局、本願発明に最適な非晶質膜の堆積条件は堆積時の基板温度を280℃程度以上400℃程度以下とし、且つ成膜速度を0.1nm/sec程度以上0.5nm/sec程度以下とする事に成る。
【0023】
この様にして非晶質半導体膜が得られた後に此の非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて、固相成長多結晶半導体膜を形成する(固相結晶化工程)。非晶質膜の結晶化は非晶質半導体膜が形成された基板を熱処理炉に挿入して略熱平衡状態にて行われるか、或いは急速熱処理装置にて行われる。熱処理炉にて行われる場合、熱処理温度は400℃程度以上700℃程度以下の処理温度にて固相結晶化が進められる。生産性を考慮すると処理温度は500℃程度以上が好ましく、結晶粒を大きくするとの視点からは650℃程度以下が好ましい。斯うした温度範囲に於ける固相結晶化では非晶質膜を構成する非晶質粒の大小と多結晶膜を構成する結晶粒の大小との相関が窮めて強い。換言すれば大きい非晶質粒から成る非晶質膜を上述の温度範囲の熱処理で固相にて結晶化すると、大きい結晶粒から成る固相成長多結晶膜が得られるので有る。結晶化を行う際の熱処理温度はそれが低い程結晶核の生成が押さえられるのでより大きな結晶粒から成る多結晶膜が得られるが、それに応じて結晶化が完了する時間も長く成る。熱処理温度は500℃程度から650℃程度の間で出来る限り低い温度、理想的には550℃程度から600℃程度の間の所定の温度に設定される。此等の固相結晶化は酸素を10ppm程度から10%程度迄含有した酸化性雰囲気下にて進められるのが好ましい。斯うする事に依り固相成長時に半導体膜表面に薄い酸化膜が形成される事に成る。酸化膜の形成は半導体原子団と酸化膜原子団との格子不整合をもたらし、結晶成長時に半導体膜に対して強い応力を及ぼす事と成る。此の強い応力は半導体原子の移動を促進し、其の結果、固相成長多結晶膜に固有な積層欠陥や双晶欠陥を減少させるからで有る。換言すれば最終的に得られる薄膜半導体装置の閾値電圧やサブスレシュホールド電圧を下げ、良好なスイッチング特性を有する薄膜半導体装置が得られる事に繋がる。
【0024】
此の様にして固相成長多結晶半導体膜が得られた後に、光照射工程として此の固相成長半導体膜にパルスレーザー光を照射し、少なくとも半導体膜の表面は溶融させて多結晶半導体膜の再結晶化を進める。固相結晶化工程にて得られた固相成長多結晶膜は、成膜条件の制御に依り結晶粒径が2μm程度から5μm程度と云った窮めて大きな結晶粒から構成されて居る。しかるに此等の固相成長膜は結晶粒内部に積層欠陥や双晶欠陥と云った内部欠陥を膨大な量(1×1018cm-3程度)で含んで居る(図1-a)。そこで本願発明では光照射工程として大きな結晶粒を維持した儘、此等の内部欠陥を減少させるので有る。光照射工程では固相成長多結晶膜にパルス発振するレーザー光を照射し、半導体膜の一部(主として半導体膜の厚み方向に於ける上層部)を溶融させる(図1-b)。この際に半導体膜の膜厚方向の全体を溶融させるのでは無く、下地保護膜との界面近傍の一部を元の固相成長多結晶膜として残留させる。すると冷却固化時に此の残留固相成長膜が結晶源と成り、元の固相成長多結晶膜の結晶粒径を維持した儘再結晶化が進む。斯様にして再結晶化後の結晶粒径も最初と同じ2μm程度から5μm程度と大きく成るのである。一方、本願発明の固相成長膜の内部欠陥は基板と平行に走る成分が支配的で、しかも溶融結晶化時に於ける残留固相成長多結晶膜の温度は硅素の溶融温度である1414℃近くに迄上昇するので、残留固相成長多結晶膜中の結晶欠陥は溶融結晶化工程中に大幅に低減する。加えて溶融結晶化は10回程度から80回程度繰り返される事に依り、残留固相成長膜中の欠陥は溶融結晶化を繰り返すに連れて著しく減少して行く。斯うして結晶欠陥が窮めて少ない残留固相成長多結晶膜が形成され、其れ等を結晶成長源として冷却固化過程が進むので、図1-bの部分溶融状態を経る事で結晶粒内の欠陥の大半を消失せしめる事が可能と成り、其の結果として大粒径で内部欠陥の窮めて少ない多結晶半導体膜が得られるので有る(図1-c)。
【0025】
照射レーザー光としては連続発振の物も使用可能で有るが、パルス発振のレーザー光の使用がより好ましい。連続発振のレーザー光照射では半導体膜は数ミリ秒以上の長時間に渡って溶融状態にある。此の為に気相から不純物が膜中への混入し易くなり、又表面荒れが生じ易くなる。此に対して一回の照射毎に適当な距離を移動し得るパルス発振では溶融時間は数百マイクロ秒以下となる為に、高純度で平滑な表面を有する多結晶性半導体薄膜が得られるからである。
【0026】
半導体膜にレーザー光を照射する際には波長λが370nm以上710nm以下のパルスレーザー光を使用する。此等の光の非晶質硅素中及び多結晶硅素中での吸収係数を図2に示す。図2の横軸は光の波長で、縦軸が吸収係数である。破線(Amorphous Silicon)が非晶質硅素を表し、実線(Polysilicon)は多結晶硅素を表して居る。図2から分かる様に、370nmから710nmの波長領域では光の吸収係数は多結晶硅素中よりも非晶質硅素中での方が大きくなる。換言すれば光の多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きく成る様なパルスレーザー光を固相成長多結晶半導体膜に照射する。例えば波長が約532nmで有るNdドープYAGレーザー光の第二高調波(YAG2ω光と略記する)の非晶質硅素での吸収係数μaSiと多結晶硅素での吸収係数μpSiは其々、
μaSi(YAG2ω)=0.01723nm-1
μpSi(YAG2ω)=0.00426nm-1と、非晶質硅素での吸収係数の方が多結晶硅素での吸収係数よりも4倍余りも大きく成って居る。固相成長多結晶膜は微視的には結晶成分と非晶質成分とから構成されて居る。結晶成分とは結晶粒内で積層欠陥等の欠陥が比較的に少ない部位で、良質な結晶状態に有る箇所と言える。一方、非晶質成分とは結晶粒界や結晶粒内の欠陥部等の構造秩序に著しい乱れが見られる部位で、所謂非晶質に近い状態に有る箇所と言える。レーザー光を照射して結晶化を進めるとの溶融結晶化では、非溶融部が冷却固化過程時に於ける結晶成長の核と成る。高い構造秩序を有する結晶成分が結晶成長核と成れば、其処から成長する結晶は矢張り高い構造秩序を有する良質な結晶化膜と成る。此に反して、構造秩序の乱れた部位が結晶成長核と成れば、積層欠陥等が冷却固化過程時に其処から成長するので、最終的に得られる結晶化膜は欠陥等を含んだ低品質な物と化す。
【0027】
従って優良な結晶化膜を得るには、固相成長多結晶膜中の結晶成分を溶融させずに此を結晶成長の核とし、非晶質成分を優先的に溶融させれば良い事に成る。本願発明では、照射レーザー光の非晶質硅素に於ける吸収係数が多結晶硅素に於ける吸収係数よりも大きいので、非晶質成分が結晶成分に比べて優先的に加熱される。その結果として結晶粒界や欠陥部と云った非晶質成分が容易に溶融し、その一方で略単結晶状態に有る様な良質な結晶成分は溶融せず残留して結晶成長源と成るので、結晶欠陥の窮めて少ない優良な結晶粒が冷却固化過程に形成される。斯うして欠陥部や不対結合対等は大幅に低減され、結晶粒界も構造秩序の高い対応粒界が支配的と成る。此の事は半導体膜の電気特性からすると、エネルギーバンド図に於ける禁制帯中央部付近の捕獲準位密度を大きく減少させるとの効果をもたらす。
【0028】
又、斯様な半導体膜を薄膜半導体装置の能動層(ソース領域やドレイン領域、チャンネル形成領域)に用いると、オフ電流値が小さく、急峻な閾値下特性を示し(サブスレーシュホールドスィング値が小さく)、閾値電圧の低いトランジスタを得る事に成る。従来技術で此の様な優れた薄膜半導体装置がなかなか製造出来なかったのは、固相成長多結晶膜の溶融結晶化に適した波長を有するレーザー光を使用しておらず、結晶成分も非晶質成分をも一緒に溶融させて居た事が原因の一つと云えよう。此処に述べた本願発明の原理が最も効果的に働くのは、多結晶硅素での吸収係数の非晶質硅素での吸収係数に対する比(μpSi/μaSi)が大きい時で有る。図2を見ると、光の波長が450nm程度から650nm程度の時に此の比が大きく成る事が分かる。従って本願発明の光照射工程にて照射するパルスレーザー光の最も好ましい波長は450nm程度以上650nm程度以下と云える。波長が450nmの光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiは1.127×10-2nm-1で、波長が650nmの光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiは8.9×10-4nm-1で有る。従って波長が450nm程度以上650nm程度以下のパルスレーザー光を照射するとの光照射工程は、パルスレーザー光として多結晶硅素中での吸収係数μpSiが大凡10-3nm-1以上10-2nm-1以下となる物を用いて居る事になる。
【0029】
最終的に良質な結晶性半導体膜を得るにはレーザー光の発振安定性が最も重要なので、パルスレーザー光はQスイッチ発振する固体発光素子にて形成されるのが望ましい。(本願では此を固体レーザーと略称する。)従来のエキシマガスレーザーでは、レーザー発振室内でのキセノン(Xe)や塩素(Cl)などのガスの不均一性や、ガス自体の劣化或いはハロゲンに依る発振室内の腐食等に起因して、発振強度のばらつきが5%程有り、更に発振角のばらつきも5%程度認められた。発振角のばらつきは照射領域面積のばらつきをもたらすので、結果として半導体膜表面でのエネルギー密度(単位面積あたりのエネルギー値)は総計で10%以上も変動して居り、此が優良なる薄膜半導体装置を製造する上での一つの阻害要因となっていた。
【0030】
又、レーザー発振の長期安定性にも欠け、薄膜半導体装置のロット間変動をもたらしていた。此に対して固体レーザーには斯様な問題が存在し得ぬが故、レーザー発振は窮めて安定で、半導体膜表面でのエネルギー密度の変動(平均値に対する標準偏差の比)を5%程度未満とし得るので有る。本願発明をより効果的に活用するには、この様に半導体膜表面でのレーザーエネルギー密度の変動が5%程度未満となる固体レーザーの使用が求められる。更に、固体レーザーの使用は薄膜半導体装置製造時に於けるロット間変動を最小化するとの効果や、従来頻繁に行われて居た煩雑なガス交換作業から薄膜半導体装置の製造を解放し、以て薄膜半導体装置を製造する際の生産性の向上や低価格化を導くとの効果を有する。先の波長や吸収係数の要請と固体レーザーの要請とを同時に満たし得るのがネオジウム(Nd)を酸化イットリウム(Y23)と酸化アルミニウム(Al23)との複酸化物に添加したネオジウム添加のイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザー光の第二高調波(YAG2ω光、波長532nm)である。従って、本願発明の光照射工程では半導体膜表面に於けるエネルギー密度の変動が5%程度未満のYAG2ω光を半導体膜に照射するのが最も適している。Qスイッチ固体レーザーのレーザー媒体としてはNdイオンをドープされた結晶やYbイオンをドープされた結晶、Ndイオンをドープされたガラス、Ybイオンをドープされたガラスなどが好ましい。従って具体的にはYAG2ωの他には、Qスイッチ発振するNd:YVO4レーザー光の第二高調波(波長532nm)、Qスイッチ発振するNd:YLFレーザー光の第二高調波(波長524nm)、Qスイッチ発振するYb:YAGレーザー光の第二高調波(波長515nm)等をパルスレーザー光として使用するのが最も優れて居る。
【0031】
さて、半導体膜中では光は吸収され、入射光は指数関数的に其の強度を減衰させる。今、入射光強度をI(0)とし、硅素を主体とした多結晶半導体膜中での表面からの距離をx(nm)、場所xでの強度をI(x)とすると、此等の間には吸収係数μpSiを用いて次の関係が成り立つ。
【0032】
(x)/I(0)=exp(−μpSi・x) (式1)
吸収係数μpSiが10-3nm-1の場合と10-2nm-1の場合、及び本願発明のパルスレーザー光として最も優れているNd:YAGレーザー光の第二高調波(YAG2ω光)の場合と、従来技術のXeClエキシマレーザー光の場合とで式1の関係を図3に示す。硅素膜が効率的に加熱される為には入射光の少なくとも10%程度は半導体膜により吸収される必要があるので、図3中には其の条件となる0.9の位置に横点線を引いてある。又、光の強度は其の儘硅素に加えられる熱量を意味し、故に図3はレーザー光照射時に於ける硅素膜中での温度分布をも表している事になる。出願人等の研究に依ると、従来のエキシマレーザー照射では半導体膜の表面が激しく損傷を被る一方で其の下部に於いては低品質な半導体層が残って居た。優良なる多結晶半導体膜が従来技術で得られぬ理由は、それ故半導体膜の表面と下部との間に存在する大きな温度差に由来する。表面での損傷が生ぜず、且つ半導体膜の厚み方向で略全体が比較的均一に加熱されて溶融するのは、半導体膜下部に於ける光の強度が入射光強度の半分程度以上の時である。此の条件を満たす時には表面と下部との温度差は小さくなる。そこで図3には光の強度が表面の半分となる0.5の位置にも横点線を引いてある。従って硅素を主体とした半導体膜が効果的に加熱され、且つ半導体膜に損傷が入らずに膜厚全体で良好な結晶化が進む条件は、図3で0.9の横点線と0.5の横点線とに挟まれた領域となる。従来技術のXeClエキシマレーザー光は入射光の殆どが半導体膜表面にて吸収されるので、レーザー照射による半導体膜質改善に適した半導体膜厚は1nmから4nmと限られて居る事が分かる。此に対して本願発明の条件では広い膜厚範囲に渡って固相成長多結晶膜の溶融再結晶化と其れに伴う膜質改善が進む事が分かる。
【0033】
本願発明ではパルスレーザー光照射された半導体膜の領域の内で、固相成長多結晶膜を半導体膜の下部に極薄く残留させ、その他の部位を溶融させて残留固相成長多結晶膜から結晶を成長させている(図1−b)。一方で半導体膜の溶融深さは概ね照射レーザー光のエネルギー密度にて定まる。所が如何なるレーザー装置であろうとも、必ず照射毎にエネルギー密度は変動する。固体レーザーを用いた場合の本願発明は従来技術に比して著しくレーザー発振が安定しているとは云え、矢張りその例外ではなく、極薄固相成長多結晶膜を残留させるべくレーザー照射を施そうとも、そのエネルギー密度の僅かな変動に依り半導体膜全体が溶融する完全溶融状態が一定確率の元で発生し得る。さて、何れのレーザー光を用いようとも結晶は温度勾配に沿って成長する。通常、薄膜半導体装置で利用される半導体膜の厚みは30nm程度から200nm程度である。先にも述べた様に、従来のXeClエキシマレーザー光に依る結晶化では半導体膜表面の4nm程度以内で殆どの光が吸収され、完全溶融状態であっても表面近傍のみが加熱される事に起因して、溶融半導体膜内では上下方向に急峻な温度勾配が生ずる(図4、a−1)。此の為に結晶核は主として下側界面で多量に発生し、結晶粒は半導体膜の下部から表面に向かって成長する。
【0034】
斯うして完全溶融状態を経たレーザー照射後に得られる多結晶膜は微細な結晶粒から構成されるに到った(図4、a−2)。(この様に従来技術では下から上に向かって微細な結晶粒が沢山成長して居たので、半導体膜中の不純物に起因する結晶核の存在は然程重要な問題ではなかった。)此に対して本願発明では、溶融結晶化に最も適した吸収係数を有するレーザー光を照射するので、半導体膜が膜厚方向で略均一に加熱される。其の結果、レーザー照射領域の端部に於いては、温度勾配が横方向に生じ(図4、b−1)、結晶は上下方向よりも寧ろ横方向に成長する。即ち、レーザーエネルギー密度が変動して完全溶融状態に陥って仕舞っても、横成長が機能して完全溶融部には微細結晶が出来ずに、代わって大きな結晶粒が成長する事になる(図4、b−2)。照射領域内の端部以外の場所でも上下方向の温度差が小さい為に、半導体膜下部での結晶核発生確率が従来の完全溶融状態よりも著しく低減して、平均的には多結晶半導体膜を構成する結晶粒は従来よりも大きくなる。斯うして完全溶融状態に陥って仕舞っても、本願発明では横成長に依り比較的大きい結晶粒を得る事が可能となる。横方向への結晶成長が促進されるのは半導体膜の表面と下部との光強度が其れ程変わらない時で、実験に依ると半導体膜下部に於ける光強度が入射光強度の三分の一程度以上となる場合である。そこで図3には横成長が生じ易くなる条件の0.667の位置にも横点線を描いてある。従って硅素を主体とした固相成長半導体膜が効果的に加熱され、且つ完全溶融時にも横成長が生じて大きな結晶粒から成る結晶性半導体膜が形成される条件は、図3で0.9の横点線と0.667の横点線とに挟まれた領域となる。無論、結晶粒を大きくするには此処に述べた温度勾配の他に不純物に基付く結晶核を抑制せねばならないので、下地保護膜や半導体膜形成工程で半導体膜堆積等にも前述の配慮が求められる。
【0035】
図3を見ると、吸収係数が10-3nm-1以上で10-2nm-1以下で有っても総ての半導体膜厚で優良なる結晶性半導体膜が得られるのではない事が分かる。例えばYAG2ω光(吸収係数μpSi=4.26×10-3nm-1)では硅素膜が効果的に加熱されるのは半導体膜の厚みが25nm程度以上の時であり、表面での損傷が無く膜厚全体が略均一に加熱されるのは半導体膜の厚みが165nm程度以下の時で有る。又、完全溶融時にも横成長が生じて結晶粒を大きく保つのは半導体膜厚が95nm程度以下の時で有る。従って、YAG2ωレーザー光を硅素を主体とした固相成長半導体膜に照射する時に好ましい半導体膜の厚みは25nm程度以上165nm程度以下で、理想的には25nm程度以上95nm程度以下となる。此の様に使用するレーザー光の多結晶硅素中での波長や吸収係数に応じて最適半導体膜厚は異なって来る。具体的には硅素膜が効果的に加熱され、且つ表面損傷無しに膜厚方向で略均一に加熱されるのは、式1でxを半導体膜の厚みdとして、I(d)/I(0)が0.5と0.9との間に有る条件に相当する。
【0036】
0.5<I(d)/I(0)<0.9 (式2)
此の式2を式1を用いてd(nm)に関して解くと、
0.105・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1 (式3)
との関係式が得られる。同様に、硅素膜が効果的に加熱され、且つ完全溶融時に横成長が生じて結晶粒が大きく保たれるのはI(d)/I(0)が0.667と0.9との間に有る時だから、
0.405・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1 (式4)
との関係式が得られる。半導体膜の厚みd(nm)と、此の半導体膜に照射するパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSi(nm-1)とが、上述の式3乃至式4を満たして居る時には必ず優良なる結晶性半導体薄膜が得られ、以て優れた薄膜半導体装置が製造される訳である。
【0037】
上述の式3及び式4の関係を、図2に示した光の波長と吸収係数との関係を考慮して、波長と硅素を主体とした半導体薄膜の厚みとの関係に描き直した物が図5で有る。図5の三角印より上の領域で半導体薄膜は加熱され、丸印より下の領域には表面損傷が生ぜず半導体膜の厚み方向で全体が比較的均一に加熱される照射エネルギー密度が存在し得る。又、四角印より下の領域では上下の温度差が小さく成るので、完全溶融時に結晶の横方向への成長が促進される。図5では更に丸印や四角印、三角印を其々直線で近似してある。此等の近似直線を用いると、照射レーザー光の波長λが440nm以上710nm以下の場合、波長λと膜厚dとが
9.8×10α L2( λ -440)<d<53×10α H2( λ -440) (式5)
但し、αL2=4.9×10 3 nm-1
αH2=5.4×10 3 nm-1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半導体膜の厚み方向で薄膜の略全体を均一に加熱させ得る事になる。例えばレーザー光としてYAG2ω光を用いる場合、波長が532nmなので、此の条件を満たす半導体膜厚は28nmから166nmとなる。更に、膜厚dと波長λとが
9.8×10α L2( λ -440)<d<32×10α M2( λ -440) (式6)
但し、αL2=4.9×10 3 nm-1
αM2=5.2×10 3 nm-1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ完全溶融時に結晶の横方向への成長も促進されるのでより好ましい。YAG2ω光をレーザー光として用いるのならば、半導体膜厚が28nmから96nmの時に此の条件は満たされる。
【0038】
同様に照射レーザー光の波長λが370nm以上440nm以下の場合には、波長λと膜厚dとが
2.4×10α L1( λ -370)<d<11.2×10α H1( λ -370) (式7)
但し、αL1=8.7×10 3 nm-1
αH1=9.6×10 3 nm-1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半導体膜の厚み方向で薄膜の略全体が均一に加熱される事になる。波長λと膜厚dとが
2.4×10α L1( λ -370)<d<6.0×10α M1( λ -370) (式8)
但し、αL1=8.7×10 3 nm-1
αM1=1.04×10 2 nm-1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ完全溶融時に結晶の横方向への成長も促進されるのでより好ましい。
【0039】
優良なる結晶性半導体薄膜を得るにはパルスレーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度の制御も重要となる。換言すると優れた薄膜半導体装置を製造するには照射エネルギー密度を適切な範囲内に制御せねばならない。まず溶融結晶化を進める為には、被照射半導体膜の少なくとも一部が溶融するのに十分な強度をパルスレーザー光は有しておらねばならない。此が半導体膜上に於けるパルスレーザー光照射エネルギー密度の適切な範囲の最下限値である。(通常は最表面が溶融する照射エネルギー密度が此の値に相当するので、本願明細書では此を表面溶融エネルギー密度(ESM)と略称する。)更に実験に依ると、パルスレーザー光のエネルギー密度が被照射半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2程度以上を溶融させる時に窮めて良質な結晶性半導体膜が得られ、其れ故に斯様な結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置は優れた電気特性を示す様になる。此は本願発明のパルスレーザー光が固相成長多結晶膜内に存在する非晶質成分等の構造秩序の乱れた部位から優先的に溶融させ、同時に高品質な結晶成分を選択的に残し、更には薄膜の厚み方向で略均一に溶融を進める為、3分の2程度以上を溶融させれる工程を何回か繰り返す事で少ない照射回数でも容易に良質な結晶化膜が得られるからで有る。従ってより好ましい下限値は半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2程度以上を溶融させる照射エネルギー密度で有る。(此の照射エネルギー密度を本願明細書では2/3溶融エネルギー密度(E2/3)と略称する。)
適切な照射エネルギー密度には上限値も存在する。半導体膜表面でのレーザー光のエネルギー密度が余りにも高いと、半導体薄膜は消失して仕舞うので、エネルギー密度は消失(Abrasion)を引き起こす値よりも当然小さくなければならない。(消失が生ずる照射エネルギー密度を本願明細書では消失エネルギー密度(EAb)と略称する。)此の値が最上限値となる。又、全面的な消失が生ぜずとも、半導体膜の厚み方向の全体が完全に溶融して仕舞うと(此の照射エネルギー密度を本願明細書では完全溶融エネルギー密度(ECM)と略称する)、半導体膜の部分的な消失が発生し易く成る。此は薄膜半導体装置を作成した際の欠陥を誘起して歩留まりを下げる要因と成り得るので、当然好ましくない。更には半導体膜の広い範囲で完全溶融が生ずると、完全溶融に伴う微結晶化を横成長で補えきれなくなり、其れが故レーザー照射後に得られる結晶性半導体膜は微細結晶粒から構成される成分が多くなる。斯う成ると薄膜半導体装置の電気特性も優れぬ物と化す。従って高歩留まりを以て優良な薄膜半導体装置を製造するには、半導体膜表面でのパルスレーザー光のエネルギー密度は半導体膜の厚み方向の全体が完全に溶融する値(ECM)よりも僅かに低い事が望まれる。此が適切な照射エネルギー密度に対する好ましい上限値となる。
【0040】
結局、波長λが370nm以上710nm以下のパルス発振する固体レーザー光を式5から式8の関係を満たす厚みを有する硅素を主体とした固相成長多結晶半導体膜に照射して薄膜半導体装置を作成する場合、固体レーザー光の半導体膜上に於ける望ましい照射エネルギー密度は表面溶融エネルギー密度(ESM)以上消失エネルギー密度(EAb)以下と成る。より好ましくは表面溶融エネルギー密度(ESM)以上完全溶融エネルギー密度(ECM)以下、或いは2/3溶融エネルギー密度(E2/3)以上消失エネルギー密度(EAb)以下、理想的には2/3溶融エネルギー密度(E2/3)以上完全溶融エネルギー密度(ECM)以下と云える。具体的に固体パルスレーザー光がNd:YAGレーザー光の第二高調波で、透明基板上に形成された硅素を主体とする半導体膜の厚みが28nm程度から96nm程度で有る場合の、半導体膜表面に於けるYAG2ωパルスレーザー光の照射エネルギー密度(x軸)と被照射半導体膜の溶融する体積成分(y軸)との関係を図6に示す。図6から分かる様に、斯様な条件下では
SM=100mJcm-2
CM=850mJcm-2
Ab=1500mJcm-2
で有るので、被照射半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2が溶融する照射エネルギー密度は
2/3=600mJcm-2
となる。従って、YAG2ω光の半導体膜上に於ける望ましい照射エネルギー密度は100mJcm-2程度以上1500mJcm-2程度以下で、より好ましくは100mJcm-2程度以上850mJcm-2程度以下、或いは600mJcm-2程度以上1500mJcm-2程度以下、理想的には600mJcm-2程度以上850mJcm-2程度以下と云える。
【0041】
本願発明の光照射工程は、結晶欠陥を多量に含んで居るものの大きな結晶粒より構成される固相成長多結晶半導体膜にパルスレーザー光を照射して、元の固相成長半導体膜の結晶粒径を維持した儘、且つ結晶欠陥を大幅に低減させる事を目的としている。その為にレーザーは発振安定性に優れた固体レーザーの使用が好ましく、結晶成分での吸収係数よりも非晶質成分での吸収係数の方が大きいレーザー光を完全溶融エネルギー密度より僅かに低いエネルギー密度にて照射する。此の際に吸収係数と半導体膜厚との関係を最適にしておけば、万が一完全溶融が生じても横成長に依り1μm程度から3μm程度の結晶粒が生じて微結晶化を防ぐ事が可能となる。
【0042】
完全溶融状態に陥った際に此の横方向への結晶成長を有効に活用するには、此処迄述べて来た条件の他にパルスレーザー光の半導体膜表面に於ける照射領域の形状の制御も重要となる。例えば照射領域が図7−aに示すように円形で、円の中心から外側に向かってレーザー光強度が減少して居る場合(図7−b)を考える。この時結晶は温度の低い外周から高温の中心に向かって成長するので、各結晶粒は成長するに従い互いにぶつかり合い、決して大きな結晶粒は形成され得ない。加えて半導体装置のアクティブ領域の方向(FETならばソース・チャンネル・ドレインの方向、バイポーラトランジスタならばエミッター・ベース・コレクターの方向)をいずれに取ろうとも、アクティブ領域内には必ず多くの結晶粒界が出現する事になり、斯うした照射領域形状にてレーザー照射を行って薄膜半導体装置を作成しても、決して優れた半導体装置には成り得ない。此に対して本願発明では照射領域を幅W(μm)で、長さL(mm)の線状乃至は略長方形とする(図8−a)。
【0043】
照射領域内の長さ方向に於ける断面(図8−aのA−A'断面)でのレーザー光照射エネルギー密度は照射領域の端部(図8−b、±L/2付近)を除いて略一様に分布している(図8−b)。具体的には長さ方向の左右其々の端部5%を除いた、中央部90%以内でのエネルギー密度の変動(平均値に対する標準偏差の比)は5%程度未満とされている。一方、照射領域内の幅方向に於ける断面(図8−aのB−B'断面)でのレーザー光照射エネルギー密度は略台形状を成すか(図9−a)、或いは略ガウス関数形を成す(図9−b)。幅方向断面が略ガウス関数形とは幅方向のレーザー光強度(図9−b)が実際にガウス関数で近似され得る分布形状にのみ成らず、其の強度が中心(図9−bに於ける0点)から微分可能な関数にて端部領域(図9−bに於ける±W/2付近)へと滑らかに減少している分布形状をも含む。幅方向断面が略台形状(図9−a)の場合、エネルギー密度分布の変動が5%程度未満となる中央平坦領域の割合は30%程度から90%程度が好ましく、それ故に上下其々の端部領域(図9−a、±W/2付近)は5%程度から35%程度となる。例えば幅W=100μmの場合、中央平坦領域は30μm程度から90μm程度で有り、上下其々の端部領域は5μm程度から35μm程度が望まれる。固相成長半導体膜から効果的に欠陥を低減し、万が一完全溶融した場合にも横成長により微結晶化を防ぐには、幅方向に於ける照射エネルギー密度勾配の最大値を取る位置と幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大値を取る位置とが略一致している事が望まれる。完全溶融するのは照射エネルギー密度が最大の位置であり、其処での照射エネルギー密度勾配が最大で有れば、横成長が最も促進されるからである。斯うした本願発明で理想的と言える幅方向断面は台形型(図10−a)乃至は富士山関数型(図10−b)のレーザー光強度分布で有る。
【0044】
半導体膜が完全溶融した時に横成長を促進させるには、レーザー光源の選択やそれに適する半導体膜厚の決定と言った膜厚方向の結晶成長抑制の他に、膜の水平方向への成長制御も重要と化す。具体的には線上乃至は長方形状のレーザー光照射領域の長さ(照射長と略称する)Lに対する幅(照射幅と略称する)Wの比(L/W)と照射領域の走査方法とを最適化させる事で、所望の方向への結晶成長が可能と化す。まず照射長Lに対する照射幅Wの比(L/W)を100程度以上とする。この比(L/W)が100程度以上有れば、各照射の際に温度勾配は照射領域の長さ方向には殆ど生ぜず、主として幅方向(図8−aのB−B'方向)に生ずる事になる。その結果、結晶は照射領域の幅方向へと一次元的な横成長を示すからで有る。照射幅Wは5μm程度から500μm程度が望まれるから、生産性を考慮すると此の比(L/W)は100程度以上、理想的には1000程度以上が望まれる。次いで斯様な形状の照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行き、基板全面の走査を行う。完全溶融した際に結晶は照射幅方向に成長して行くので、照射領域を幅方向にずらして行くと幾つかの結晶粒が幅方向に繋がる事も可能となる。斯うした照射方法を採用する事で、最終的に得られる結晶性半導体膜を構成する結晶粒は平均的に照射領域の幅方向(図8−aのB−B'方向)に大きく成る。従って薄膜半導体装置のアクティブ領域の方向(MOSFETならばソース・ドレイン方向、バイポーラトランジスタならばエミッター・コレクター方向)を照射幅方向に取る事で、アクティブ領域内(MOSFETのチャンネル形成領域内、又はバイポーラトランジスタのエミッター・ベース接合領域とベース領域、及びベース・コレクター接合領域)に結晶粒界が存在しない、或いは仮令結晶粒界が存在しても其の数が僅かと云った優れた薄膜半導体装置が実現されるので有る。
【0045】
レーザー照射領域を基板上で走査する際に各照射毎に照射領域をずらす量(此をずらし量と略称する)は、一回の照射で横成長する結晶の大きさ(此を結晶成長サイズと略称する)以下とするのが望ましい。理想的なずらし量は結晶成長サイズの半分程度以下で有る。斯うする事で完全溶融する様なレーザーエネルギー密度での照射が何度か連なって仕舞っても、薄膜半導体装置のアクティブ領域の方向へ結晶が繋がる確率は著しく増大するからである。レーザー光源としてYAG2ω光を利用した場合、結晶成長サイズは通常1μm程度から3μm程度である。従ってずらし量が3μm程度以下ならば結晶が繋がる可能性が生じ、2μm程度以下ならばその確率はより増大する。結晶成長サイズは常に3μm程度と決まっている訳ではなく、其れは或る確率関数に従って分布する。結晶成長サイズは大きい値を取る事も有れば、同様に小さい値をも取り得る。結晶成長サイズが1μm程度と小さい値であっても結晶粒を確実に繋げるには、換言すれば殆ど総ての結晶成長サイズの値に対しても結晶粒を確実に繋げるには、ずらし量を1μm程度以下とする。理想的には0.5μm程度以下で有る。ずらし量が0.1μm程度以下となると、YAG2ω光を20kHzとの高周波でパルス発振しても走査速度は2mm/sec程度以下と遅くなって仕舞う。500mmと云った様な大型基板を処理するには、生産性を考慮すると走査速度を2mm/sec程度以下と遅くする事は現実的ではない。従ってずらし量の下限値は0.1μm程度と云える。結晶を繋げる事よりも生産性を優先させれば、ずらし量の上限値は凡そ25μmで有る。
【0046】
優れた薄膜半導体装置を作成するには半導体膜上の任意の一点を照射するパルスレーザー光の照射回数(照射回数と略称する)をも最適化する必要が有る。照射回数が10回程度未満だと固相成長多結晶半導体膜中の欠陥を効率的に低減出来ない。反対に80回程度以上だと気相から半導体膜への不純物混入や半導体膜表面の粗さの増大などをもたらして仕舞う。取り分け照射回数が200回程度以上となると表面が酷く荒れ、斯うした膜を利用して薄膜半導体装置を作成してもゲートリーク等に依り半導体装置は丸で機能しない。結晶性半導体膜中の欠陥を効率的に低減し、且つ半導体膜の表面を平滑に保って優良なる薄膜半導体装置を製造するには、照射回数が10回程度以上80回程度以下となる様にレーザー照射領域を基板上にて走査する。優れた半導体装置を確実に製造するには、照射回数が20回程度以上60回程度以下となる様にパルスレーザー光を走査する。
【0047】
ずらし量と照射回数に最適値が存在するので、此等の値より最適な照射幅Wが定まる。照射幅Wはずらし量と照射回数との積で有る。ずらし量をx(μm)で、照射回数をn回で表した時、照射幅W(μm)は、
W(μm)=x(μm)×n (式9)
である。幅方向のレーザーエネルギー密度分布の如何に関わらず照射幅Wはレーザーエネルギー密度の強度が最大値の半分になる点の幅(Full Width Half Maximum: FWHM)に相当する。ずらし量の好ましい範囲の最下限が0.1μm程度であり、照射回数の好ましい最小値が10回程度であるから、好ましい最小照射幅は1μm程度となる。反対にずらし量の最大値が25μm程度で照射回数の最大値が80回程度だから、好ましい最大照射幅は2000μm程度と云える。より好ましい照射幅としては、ずらし量が0.5μm程度で照射回数が10回程度の時の5μm程度からずらし量が3μm程度で照射回数が80回程度の時の240μm程度の間で有る。ずらし量が1μm程度で照射回数が20回程度の時の、或いはずらし量が0.5μm程度で照射回数が40回程度の時の20μm程度から、ずらし量が2μm程度で照射回数が60回程度の時の120μm程度の間が理想的な照射幅と云える。完全溶融時に横成長した結晶粒を各照射毎に繋げるには、照射幅Wは最大横成長距離(3μm)の2倍となる6μm以下が望まれる。
【0048】
斯うした条件下に於ける望ましい発信周波数は走査速度が2mm/sec程度以上となる値である。パルスレーザー光の発信周波数f(Hz)と走査速度v(mm/sec)との関係は先のずらし量x(μm)を用いて、
v(mm/sec)=x(μm)×10-3×f(Hz) (式10)
と表現されるから、望ましい発信周波数f(Hz)は
f>2×103/x (式11)
で有る。ずらし量の好ましい範囲が0.1μm程度以上25μm程度以下で有ったから、式11より発信周波数の好ましい範囲は0.08kHz程度以上20kHz程度以下となる。より好ましくは0.67kHz程度以上20kHz程度以下、理想的には1kHz程度以上20kHz程度以下と云える。式9と式11より発信周波数f(Hz)と照射回数n(回)、及び照射幅W(μm)との間には
f>2×103×n/x (式12)
との関係が見いだされる。即ち、発信周波数と照射回数、及び照射幅とを式12の条件を満たす様に設定してパルスレーザー光を半導体膜に照射すると、高い生産性を以て優れた品質の薄膜半導体装置が製造される。
【0049】
半導体膜の完全溶融時に結晶粒の幅方向への一次元的な横成長を促進させるもう一つの重要な要素は、照射領域の幅方向に於けるレーザーエネルギー密度の勾配(エネルギー密度勾配と略称する)である。溶融結晶化時の結晶成長速度u(x)は半導体膜の温度勾配dT(x)/dxに比例する。
【0050】
u(x)=k・dT(x)/dx (式13)
但し此処でkは速度定数で、T(x)は半導体膜上の任意の点xに於ける半導体膜の温度である。半導体膜の溶融時間をtmで表らわすと、結晶成長サイズLcは結晶成長速度と溶融時間tmとの積にて表される。
【0051】
c=u×tm=k・dT/dx・tm (式14)
速度定数kは一定で溶融時間も略一定であるから、結晶成長サイズは半導体膜の温度勾配に比例する事になる。一方、半導体膜の温度は照射パルスレーザー光のエネルギー密度に比例するから、結局、結晶成長サイズLcはエネルギー密度勾配dE/dxに比例する。
【0052】
c∝dE/dx (式15)
結晶成長サイズを大きくするにはエネルギー密度勾配を大きくすれば良い訳である。出願人等が行った実験結果に依ると、YAG2ω光をパルスレーザー光として用いてガラス基板上の半導体膜を完全溶融結晶化させた場合、エネルギー密度勾配の最大値が3mJ・cm-2・μm-1程度以上である3.0mJ・cm-2・μm-1程度から4.0mJ・cm-2・μm-1程度の時に照射幅方向への結晶成長サイズは1μm程度以上となった。又、エネルギー密度勾配の最大値が10mJ・cm-2・μm-1程度から20J・cm-2・μm-1程度の時には照射幅方向への結晶成長サイズは2μm程度以上と増大した。更にエネルギー密度勾配の最大値が30mJ・cm-2・μm-1程度の時には照射幅方向への結晶成長サイズは3μm程度となった。従って良質な結晶性半導体膜を得て優良なる薄膜半導体装置を製造するにはエネルギー密度勾配の最大値を3mJ・cm-2・μm-1程度以上とするのが好ましく、10mJ・cm-2・μm-1程度から20J・cm-2・μm-1程度の間ならばより好ましく、理想的には30mJ・cm-2・μm-1程度以上である。
【0053】
本願発明に依ると低欠陥で大粒径の結晶性半導体膜を得るには、非晶質半導体膜を堆積する半導体膜堆積工程や斯うして得られた非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させる固相結晶化工程等を最適化して、2μm程度から5μm程度の結晶粒より構成される固相成長半導体膜を得た上で、光照射工程にて発振安定性に優れた固体レーザーで且つ結晶成分での吸収係数よりも非晶質成分での吸収係数の方が大きいレーザー光を完全溶融エネルギー密度より僅かに低いエネルギー密度にて照射する。斯うする事で固相成長半導体膜が有する2μm程度から5μm程度の結晶粒径を維持した儘、結晶内欠陥を劇的に低減させる。しかしながらどんなに安定なレーザー光で有ろうとも、必ず発振毎にエネルギー密度が変動する為、或る一定確率を以て半導体膜は完全溶融に見舞われる。従来は斯うした状況では平均粒径が数十nmの微結晶粒が発生していたが、本願発明では吸収係数と半導体膜厚との関係や線状乃至は略長方形状をした照射領域の形状、幅方向へのエネルギー密度勾配、照射領域を各照射毎に照射領域の幅方向に適当量ずらす走査方法等を最適化する事に依り、万が一完全溶融が生じても1μm程度から3μm程度の結晶粒を横成長させて微結晶化を防ぐ事を可能ならしめて居る。斯くして少なくとも照射幅方向に対する結晶粒長は著しく増大し、且つ結晶内欠陥も窮めて少なく、表面も平滑で、而も純度が高いとの優れた結晶性半導体薄膜が得られ、以て優良な薄膜半導体装置が容易に製造されるに至る。
【0054】
以上詳述してきた様に、従来低品質でばらつきも大きかった結晶性半導体膜を、本願発明では非晶質半導体膜の成膜方法やその固相状態での結晶化方法、及びその後に行われる光照射工程を工夫する事に依り、均一で高品質な結晶性半導体膜とする事が出来る。これに依り薄膜トランジスタに代表される薄膜半導体装置の電気特性を著しく向上させ、同時に薄膜半導体装置を低電圧にて動作させ、更には斯様な薄膜半導体装置を安定的に製造し得るとの効果が認められる。
【0055】
【実施例】
添付の図面を参照しながら、本発明を実施例に沿って説明する。
【0056】
(実施例1)
図11(a)〜(d)はMOS型電界効果トランジスタを形成する薄膜半導体装置の製造工程を断面で示した図で有る。本実施例1では基板101としてガラスの歪点温度が750℃の結晶化ガラスを用いた。然るに此以外の基板で有っても、薄膜半導体装置製造工程中の最高温度に耐えられるのならば、その種類や大きさは問われない。まず基板101上に下地保護膜102と成る酸化硅素膜を堆積する。基板がセラミックス基板等で半導体膜に取って望ましからざる不純物を含んでいる場合、酸化硅素膜堆積前に酸化タンタル膜や窒化硅素膜等の第一の下地保護膜を堆積しても良い。本実施例1では基板101上にプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)で酸化硅素膜を200nm程度堆積し、下地保護膜102とした。酸化硅素膜はECR−PECVDにて以下の堆積条件で堆積された。
【0057】
モノシラン(SiH4)流量・・・60sccm
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・2.40mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2250W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
成膜時間・・・40秒
此の酸化膜の、液温が25℃で濃度が1.67%の沸化水素酸水溶液に於けるエッチング速度は0.5nm/sで有った。
【0058】
斯様に形成された下地保護膜上に、半導体膜形成工程として真性非晶質硅素膜を高真空型LPCVD装置にて50nm程度の膜厚に堆積した。高真空型LPCVD装置はホット・ウォール型で容積が184.5l有り、基板挿入後の堆積可能領域の総面積は約44000cm2で有る。成膜室に於ける最大排気速度は120sccm/mTorrで有る。堆積温度は425℃で、半導体膜堆積前には此の温度にて1時間15分間に渡る基板の加熱乾燥処理が施された。乾燥熱処理の最中、基板が設置された成膜室には純度が99.9999%以上のヘリウム(He)を200(sccm)と純度が99.9999%以上の水素(H2)を100(sccm)導入し、成膜室の圧力は約2.5mTorrに保たれた。乾燥処理が終了し、半導体膜堆積直前の成膜室背景真空度は、425℃に於ける温度平衡条件にて2.5×10 7Torrで有った。非晶質硅素膜堆積時には成膜室に純度99.99%以上のジシラン(Si26)を200sccmの流量で供給し、堆積圧力は凡そ1.1Torrに保たれた。此の条件下で硅素膜の堆積速度は0.77nm/minで有る(半導体膜形成工程終了)。
【0059】
次に斯うして得られた非晶質半導体膜に熱処理を施して、非晶質膜を固相にて結晶化させた。熱処理は大気圧の窒素99%と酸素1%の混合気体雰囲気下にて、600℃の温度で24時間行われた。この熱処理に依り半導体膜は非晶質状態から多結晶状態へと改質される(固相結晶化工程終了)。
【0060】
次に光照射工程として固相結晶化工程にて得られた固相成長真性多結晶硅素膜にパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を照射して溶融結晶化を行った。パルスレーザー光の時間半値幅は約60nsで、発信周波数は200Hzで有った。レーザー光は幅方向に対して略ガウス形であり、照射幅が270μmで照射長が10mmの線状に集光された。幅方向に対するエネルギー密度勾配の最大値は3.72mJ・cm-2・μm-1であった。此の線状の光を各照射毎に2.5%づつ幅方向にずらして、基板上を走査した。ずらし量は6.75μmとなり、半導体膜上の任意の一点は約40回のレーザー照射を被って居る。レーザー光の照射エネルギー密度は700mJ・cm-2で有る。半導体膜表面に於ける照射エネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で有った。本実施例1にて使用したYAG2ωレーザー光では50nmの半導体膜の最表面のみを溶融させるエネルギー密度は100mJ・cm-2程度で有り、完全溶融させるエネルギー密度は850mJ・cm-2程度で有ったから、半導体膜の約80%が溶融した事に成る。斯様にして得られた結晶性硅素膜をパターニング加工して半導体膜の島103を形成した。トランジスタのソースドレイン方向とYAG2ωレーザー光の走査方向は略平行であった(光照射工程終了)。(図11−a)
次にパターニング加工された半導体膜の島103を被う様に酸化硅素膜104をECR−PECVD法にて形成した。此の酸化硅素膜は半導体装置のゲート絶縁膜として機能する。ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜堆積条件は堆積時間が24秒と短縮された事を除いて、下地保護膜の酸化硅素膜の堆積条件と同一で有る。但し、酸化硅素膜堆積の直前にはECR−PECVD装置内で基板に酸素プラズマを照射して、半導体の表面に低温プラズマ酸化膜を形成した。プラズマ酸化条件は次の通りで有る。
【0061】
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・1.85mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2000W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
処理時間・・・24秒
プラズマ酸化に依り凡そ3.5nmの酸化膜が半導体表面に形成されて居る。酸素プラズマ照射が終了した後、真空を維持した侭連続で酸化膜を堆積した。従ってゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜はプラズマ酸化膜と気相堆積膜の二者から成り、その膜厚は119nmで有った。斯様にしてゲート絶縁膜堆積が完了した。(図11−b)
引き続いて金属薄膜に依りゲート電極105をスパッター法にて形成する。スパッター時の基板温度は150℃で有った。本実施例1では750nmの膜厚を有するα構造のタンタル(Ta)にてゲート電極を作成し、このゲート電極のシート抵抗は0.8Ω/□で有った。次にゲート電極をマスクとして、ドナー又はアクセプターとなる不純物イオン106を打ち込み、ソース・ドレイン領域107とチャンネル形成領域108をゲート電極に対して自己整合的に作成する。本実施例1ではCMOS半導体装置を作製した。NMOSトランジスタを作製する際にはPMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたフォスヒィン(PH3)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを7×1015cm-2の濃度でNMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。反対にPMOSトランジスタを作製する際にはNMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたジボラン(B26)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを5×1015cm-2の濃度でPMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。(図11−c)イオン打ち込み時の基板温度は300℃で有る。
【0062】
次にPECVD法でTEOS(Si−(OCH2CH34)と酸素を原料気体として、基板温度300℃で層間絶縁膜109を堆積した。層間絶縁膜は二酸化硅素膜から成り、その膜厚は凡そ500nmで有った。層間絶縁膜堆積後、層間絶縁膜の焼き締めとソース・ドレイン領域に添加された不純物元素の活性化を兼ねて、窒素雰囲気下300℃にて4時間の熱処理を施した。最後にコンタクト・ホールを開穴し、スパッター法で基板温度を180℃としてアルミニウムを堆積し、配線110を作成して薄膜半導体装置が完成した。(図11−d)
この様にして作成した薄膜半導体装置の伝達特性を測定した。測定した半導体装置のチャンネル形成領域の長さ及び幅は其々10μmで、測定は室温にて行われた。一例を図12に示す。NMOSトランジスタのVds=8Vに於ける飽和領域より求めた移動度(飽和移動度)は333cm2・V-1・s-1で有り、閾値電圧は1.23V、サブスレーシュホールド・スイングは0.206V、閾値電圧とフラットバンド電圧とから求めたアクセプター型捕獲準位密度は8.56×1015cm-3で有った。更にVds=Vgs=4Vで定義したオン電流は2.96×10-5Aで有る一方、Vds=4V、Vgs=0Vに於けるオフ電流は2.19×10-12Aとなり、ゲート電圧の僅か4Vの変調で7桁以上のオンオフ比が取れる優れたN型薄膜半導体装置となった。同様にPMOSトランジスタのVds=−8Vに於ける飽和移動度は77cm2・V-1・s-1で有り、閾値電圧は−1.88V、サブスレーシュホールド・スイングは0.222V、閾値電圧とフラットバンド電圧とから求めたドナー型捕獲準位密度は1.56×1016cm-3で有った。
【0063】
更にVds=Vgs=−4Vで定義したオン電流は4.61×10-6Aで有る一方、Vds=−4V、Vgs=0Vに於けるオフ電流は2.10×10-12Aとなり、ゲート電圧の僅か4Vの変調で6.3桁以上のオンオフ比が取れる優れたP型薄膜半導体装置となった。此等の半導体装置は其の特性が基板内で殆ど変動が無く、高性能半導体装置が均一に製造されて居た。此に対して従来技術で非晶質硅素膜を堆積してエキシマ・レーザーで結晶化した比較例ではNMOSトランジスタの飽和移動度が33cm2・V-1・s-1、閾値電圧が3.70V、サブスレーシュホールド・スイングが0.646V、アクセプター型捕獲準位密度が2.65×1016cm-3で、PMOSトランジスタの飽和移動度が16cm2・V-1・s-1、閾値電圧が−7.06V、サブスレーシュホールド・スイングが0.617V、ドナー型捕獲準位密度は6.55×1016cm-3で有った。この例が示す様に本発明に依るとN型とP型の両半導体装置共に高移動度で低閾値電圧を有し、且つ急峻なサブスレーシュホールド特性を示す窮めて良好な薄膜半導体装置が600℃程度以下との低温工程にて、簡便且つ容易に、又安定的に作成し得る。取り分け、サブスレーシュホールド・スイング値から分かる様に禁制帯中央部付近の捕獲準位密度や、アクセプター型及びドナー型捕獲準位密度と云った獲準位密度を著しく低減するとの絶大なる効果を有し、薄膜半導体装置を用いた回路の低電圧駆動を可能ならしめている。又、従来技術では移動度が大きければ閾値電圧や捕獲準位密度も大きく成っていたが、本願発明に依ると、高移動度と低閾値電圧や低捕獲準位密度を同時に実現出来るとの優れた効果をも認められる。
【0064】
(実施例2)
光照射工程に於けるパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を半導体膜に照射する工程を除いて、その他の製造工程は実施例1と全く同様として薄膜半導体装置を作成した。本実施例2では幅270μmで長さ10mmの線状に集光されたYAG2ωパルスレーザー光を各照射毎に幅方向にずらす割合と、半導体膜上に於けるレーザー光照射エネルギー密度との二点のみを実施例1から変更した。線状のレーザー光を照射毎に幅方向にずらす割合は10%と5%、2.5%、1.67%との四水準を選んだ。此に応じて半導体膜上の任意の一点は其々約10回、約20回、約40回、約60回のレーザー照射を被る事になる。半導体膜上に於けるレーザー光の照射エネルギー密度は400mJ・cm-2から800mJ・cm-2迄変化させた。其れに比例してレーザーエネルギー密度勾配の最大値も1.99mJ・cm-2・μm-1から3.97mJ・cm-2・μm-1へと変化する。実施例1と同様、半導体膜表面に於けるYAG2ω光照射エネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で、ESMは100mJ・cm-2程度で有り、ECMは850mJ・cm-2程度で有った。
【0065】
斯うして作成された薄膜半導体装置の電気特性を図13から図20に示す。電気特性はチャンネル形成領域の長さと幅が共に10μmのトランジスタに対して、Vds=±0.1Vに於ける線形電流より求めた。従って本実施例2に示す移動度は電界効果移動度である。又、其々の値は各条件で作成された4個のトランジスタの平均値を表す。これらの図の横軸(x軸)は何れもYAG2ω光の半導体膜表面に於ける照射エネルギー密度を表し、縦軸(y軸)は対応する電気特性を表す。又、参考の為にYAG2ωレーザー光照射を施さぬ固相成長多結晶膜を用いたトランジスタの結果をも0mJ・cm-2の位置に示して有る。
【0066】
図13及び図14はNMOS及びPMOSのサブスレシュホールドスイングを示している。照射エネルギー密度が600mJ・cm-2程度を越えると、即ち半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融すると、閾値下特性は急激に改善され、NMOSもPMOSもサブスレシュホールドスイング値が0.3V以下との優れた値を示している。絶縁膜厚が119nmと厚いにも拘わらず優れた値を示している事実は、得られた結晶性半導体膜のエネルギーバンドダイヤグラムに於ける禁制帯中央部付近に位置する捕獲準位密度(深い捕獲準位密度)が窮めて少ない事を意味し、本願発明の光照射工程にて効率的に不対結合対等の結晶欠陥が低減されて居る事を証明している。而も良好な特性を示すエネルギー密度範囲が完全溶融直前の800mJ・cm-2程度迄と広がって居る。照射回数は10回でも効果が認められるが、20回から60回で閾値下特性は取り分け優れた値を示す。
【0067】
図15及び図16は閾値電圧とフラットバンド電圧より定まるアクセプター型捕獲準位数とドナー型捕獲準位数のYAG2ωレーザーエネルギー密度依存性を示して居る。図13や図14と同じ傾向が確認され、半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融すると両捕獲準位数が著しく低減する。この事は禁制帯中の伝導帯に近いアクセプター型捕獲準位密度(浅いアクセプター型捕獲準位密度)や価電子帯に近いドナー型捕獲準位密度(浅いドナー型捕獲準位密度)が窮めて少ない事を意味し、本願発明の光照射工程にて効率的に積層欠陥や双晶等の結晶欠陥が低減されて居る証しで有る。同様に図17及び図18はNMOS及びPMOSの線形電流より求めた閾値電圧を示し、半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融した場合に何れの導電型のトランジスタも閾値電圧が2V程度と実用性に富む事が分かる。閾値下特性と同様に照射回数が10回でも効果が認められるが、20回から60回が浅い捕獲準位密度を低減したり閾値電圧を低くするには最も好ましい。
【0068】
図19及び図20はNMOS及びPMOSの線形電流から求めた電界効果移動度に関するグラフで有る。照射エネルギー密度が600mJ・cm-2程度を越えると、即ち半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融すると、NMOSもPMOSも共に非常に大きな移動度が得られる。結晶粒内欠陥が少ない場合、移動度は理論的にも実験的にも結晶粒径と強い正の相関関係にある。従って、図19及び図20は本願発明に則って薄膜半導体装置を作成すると、結晶性半導体膜は大粒径で低欠陥の結晶粒より構成される事を意味する。照射回数は40回程度以上から60回程度以下の時に広いエネルギー密度範囲にて高い移動度が得られる。
【0069】
本実施例2が示す様に、半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融すると従来よりも窮めて優れた薄膜半導体装置を容易に製造する事が可能となり、照射回数が20回程度から60回程度であると捕獲準位密度が著しく低減され、40回程度以上から60回程度以下の時に低閾値電圧と高移動度とが両立するとの優れた効果が生ずる事が理解されよう。
【0070】
以上の様に、本発明の薄膜半導体装置の製造方法に依ると、安価なガラス基板の使用が可能となる低温プロセスを用いて高性能な薄膜半導体装置を容易に且つ安定的に製造する事が出来る。従って本発明をアクティブ・マトリックス液晶表示装置の製造に適用した場合には、大型で高品質な液晶表示装置を容易に且つ安定的に製造する事が出来る。更に他の電子回路の製造に適用した場合にも高品質な電子回路を容易に且つ安定的に製造する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の原理を説明した図。
【図2】 光の波長と半導体に於ける吸収係数との関係を説明した図。
【図3】 半導体膜厚と膜中での光強度との関係を説明した図。
【図4】 本願発明の原理を説明した図。
【図5】 本願発明の範囲を説明する波長と半導体膜厚との関係図。
【図6】 本願発明の一例のエネルギー密度と体積成分との関係図。
【図7】 レーザー光の照射形状を説明した図。
【図8】 本願発明のレーザ光の照射形状を説明した図。
【図9】 本願発明のレーザー光の照射形状を説明した図。
【図10】 本願発明のレーザー光の照射形状を説明した図。
【図11】 本願発明の製造工程を説明した図。
【図12】 本願発明の効果を説明した図。
【図13】 本願発明の効果を説明した図。
【図14】 本願発明の効果を説明した図。
【図15】 本願発明の効果を説明した図。
【図16】 本願発明の効果を説明した図。
【図17】 本願発明の効果を説明した図。
【図18】 本願発明の効果を説明した図。
【図19】 本願発明の効果を説明した図。
【図20】 本願発明の効果を説明した図。
【符号の説明】
101 基板
102 下地保護膜
103 半導体膜の島
104 酸化硅素膜
105 ゲート電極
106 不純物イオン
107 ソース・ドレイン領域
108 チャネル形成領域
109 層間絶縁膜
110 配線

Claims (14)

  1. 基板上もしくは下地保護膜上に珪素(Si)を主体とする非晶質半導体膜を形成する非晶質半導体膜形成工程と、
    前記非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて半導体膜を得る半導体膜形成工程と、
    前記半導体膜に固体発光素子を用いたレーザー光を照射することにより少なくとも前記半導体膜の表面側を溶融結晶化させてなる結晶性半導体膜を得る光照射工程と、を有し、
    前記レーザー光は、波長が370nm以上440nm以下であり、前記半導体膜の厚み方向における成分の3分の2以上を溶融させるエネルギー密度であり、
    前記エネルギー密度は、照射領域の幅方向の断面において略台形状の分布形状を有し、前記照射領域の幅方向におけるエネルギー密度勾配の最大値を取る位置とエネルギー密度の最大値を取る位置とが略一致しており、
    前記照射領域の幅方向におけるエネルギー密度勾配の最大値が3mJ・cm−2・μm−1以上であり、
    前記半導体膜の膜厚をd、前記レーザー光の波長をλとしたときに、
    2.4×10 αL1(λ−370) <d<6.0×10 αM1(λ−370)
    但し、αL1=8.7×10 ―3 nm −1
    αM1=1.04×10 ―2 nm −1
    の関係式を満たすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 基板上もしくは下地保護膜上に珪素(Si)を主体とする非晶質半導体膜を形成する非晶質半導体膜形成工程と、
    前記非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させて半導体膜を得る半導体膜形成工程と、
    前記半導体膜に固体発光素子を用いたレーザー光を照射することにより少なくとも前記半導体膜の表面側を溶融結晶化させてなる結晶性半導体膜を得る光照射工程と、を有し、
    前記レーザー光は、波長が440nm以上710nm以下であり、前記半導体膜の厚み方向における成分の3分の2以上を溶融させるエネルギー密度であり、
    前記エネルギー密度は、照射領域の幅方向の断面において略台形状の分布形状を有し、前記照射領域の幅方向におけるエネルギー密度勾配の最大値を取る位置とエネルギー密度の最大値を取る位置とが略一致しており、
    前記照射領域の幅方向におけるエネルギー密度勾配の最大値が3mJ・cm−2・μm−1以上であり、
    前記半導体膜の膜厚をd、前記レーザー光の波長をλとしたときに、
    9.8×10 αL2(λ−440) <d<32×10 αM2(λ−440)
    但し、αL2=4.9×10 ―3 nm −1
    αM2=5.2×10 ―3 nm −1
    の関係式を満たすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射工程が、前記レーザー光を繰り返し照射するものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光の前記半導体膜の多結晶珪素成分における吸収係数よりも非晶質珪素成分における吸収係数の方が大きいものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  5. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記固体発光素子が発振する前記レーザー光の前記半導体膜表面におけるレーザーエネルギー密度の変動が5%未満であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記固体発光素子が発振する前記レーザー光が前記半導体膜を照射する領域の形状が幅をW、長さをLとする長方形であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  7. 請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射工程が、前記レーザー光を前記幅方向に移動させながら繰り返し照射するものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射工程が、前記レーザー光を前記半導体膜の所定領域に照射した後、前記レーザー光を前記所定領域の一部に重なるよう前記幅方向に移動して照射するものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射工程が、前記レーザー光を連続発振して照射するものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  10. 請求項1ないし8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射工程が、前記レーザー光をパルス発振して照射するものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光がQスイッチ発振する固体レーザーの高調波であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  12. 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光がNdイオンドープされた結晶をレーザー媒体としたQスイッチ発振固体レーザーの高調波であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  13. 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光がQスイッチ発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  14. 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光がQスイッチ発振するNd:YVO4レーザー光の第二高調波であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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