JP2000286211A - 薄膜半導体装置の製造方法 - Google Patents

薄膜半導体装置の製造方法

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JP2000286211A
JP2000286211A JP11094350A JP9435099A JP2000286211A JP 2000286211 A JP2000286211 A JP 2000286211A JP 11094350 A JP11094350 A JP 11094350A JP 9435099 A JP9435099 A JP 9435099A JP 2000286211 A JP2000286211 A JP 2000286211A
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semiconductor film
semiconductor
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semiconductor device
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JP11094350A
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Mitsutoshi Miyasaka
光敏 宮坂
Tetsuya Ogawa
哲也 小川
Hidetada Tokioka
秀忠 時岡
Yukio Sato
行雄 佐藤
Mitsuo Inoue
満夫 井上
Tomohiro Sasagawa
智広 笹川
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Seiko Epson Corp
Mitsubishi Electric Corp
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Seiko Epson Corp
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優良な多結晶薄膜半導体装置を比較的低温で
製造する。 【解決手段】 下地保護膜を堆積後、半導体膜を形成す
る。その後、波長が370nm以上710nm以下のパ
ルスレーザー光を半導体膜に照射し、半導体膜の一部分
を溶融させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は600℃程度以
下、好ましくは425℃程度以下の比較的低温にて結晶
性が窮めて優れている多結晶性半導体膜を形成する技術
に関する。取り分けこの技術を用いて多結晶硅素薄膜ト
ランジスタに代表される薄膜半導体装置の性能を著しく
向上せしめる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多結晶硅素薄膜トランジスタ(p−Si
TFT)に代表される薄膜半導体装置を汎用ガラス基
板を使用し得る600℃程度以下、或いは非晶質硅素薄
膜トランジスタ(a−Si TFT)の製造温度と同程
度の425℃程度以下の低温にて製造する場合、従来以
下の如き製造方法が取られて居た。まず基板上に半導体
膜と成る非晶質硅素膜を50nm程度の厚みに低圧化学
気相堆積法(LPCVD法)で堆積する。次に此の非晶
質膜にXeClエキシマレーザー(波長308nm)を
照射して多結晶硅素膜(p−Si膜)とする。XeCl
エキシマレーザー光の非晶質硅素と多結晶硅素中での吸
収係数は其々0.139nm-1と0.149nm-1と大
きい為、半導体膜に入射したレーザー光の9割は表面か
ら15nm以内で吸収される。又、非晶質硅素での吸収
係数の方が多結晶硅素での吸収係数よりも7%程小さく
なって居る。その後、ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜を
化学気相堆積法(CVD法)や物理気相堆積法(PVD
法)にて形成する。次にタンタル等でゲート電極を作成
して、金属(ゲート電極)−酸化膜(ゲート絶縁膜)−
半導体(多結晶硅素膜)から成る電界効果トランジスタ
(MOS−FET)を構成させる。最後に層間絶縁膜を
此等の膜上に堆積し、コンタクトホールを開孔した後に
金属薄膜にて配線を施して、薄膜半導体装置が完成す
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら此等従来
の薄膜半導体装置の製造方法では、エキシマレーザー光
のエネルギー密度制御が困難で、僅かなエネルギー密度
の変動に依っても半導体膜質が同一基板内に於いてすら
大きなばらつきを示して居た。又、膜厚や水素含有量に
応じて定まる閾値よりも照射エネルギー密度が僅かに大
きく成った丈でも半導体膜には激しい損傷が入り、半導
体特性や製品歩留まりの著しい低下を招いて居た。斯う
した事から基板内で均質な多結晶半導体膜を得るには、
レーザー光のエネルギー密度を最適値よりも可成り低く
設定する必要が有り、それ故に良好な多結晶薄膜を得る
にはエネルギー密度の不足が否めなかった。又、最適な
エネルギー密度でレーザー照射を施しても、多結晶膜を
構成する結晶粒を大きくする事が困難で、膜中に多くの
欠陥を残留させているのが実状であった。斯くした事実
に則し、従来の製造方法にてp−Si TFT等の薄膜
半導体装置を安定的に製造するには、完成した薄膜半導
体装置の電気特性を犠牲にせざるを得ないとの課題を有
して居た。
【0004】そこで本発明は上述の諸事情を鑑み、その
目的とする所は600℃程度以下、理想的には425℃
程度以下との低温工程にて優良な薄膜半導体装置を安定
的に製造する方法を提供する事に有る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は基板上に形成さ
れた硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜を能動層
として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、
基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
護膜形成工程と、此の下地保護膜上に硅素(Si)を主
体とした半導体膜を形成する第一工程と、半導体膜に3
70nm以上710nm以下の波長を有するパルスレー
ザー光を照射する第二工程とを含み、此のパルスレーザ
ー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が半導体
膜の一部分を溶融させるのに十分な強度で有る事を特徴
とする。照射エネルギー密度は被照射半導体膜の厚み方
向の3分の2以上を溶融させる強度で有るのが好まし
い。但し、照射エネルギー密度は被照射半導体膜を厚み
方向で完全に溶融させる強度で有っては成らない。
【0006】パルスレーザー光照射時のレーザー光の波
長をλ(nm)とし、半導体膜の膜厚をd(nm)とす
ると、波長λが440nm以上710nm以下の場合、
波長λと膜厚dとは 9.8×10αL2(λ-440)<d<53×10
αH2(λ-440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αH2=5.4×10―3 nm-1 との関係式を満たして居るのが好ましい。更に、膜厚d
と波長λとが 9.8×10αL2(λ-440)<d<32×10
αM2(λ-440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αM2=5.2×10―3 nm-1 との関係式を満たして居ればより好ましい。此の様なパ
ルスレーザー光として最も優れて居るのがNd:YAG
レーザー光の第二高調波(YAG2ωと略称する。その
波長は約532nm)で有る。此の場合にもNd:YA
Gパルスレーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギ
ー密度は半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な強度
とされる。理想的には照射エネルギー密度が被照射半導
体膜の厚み方向の3分の2以上を溶融させ、且つ被照射
半導体膜を厚み方向で完全に溶融させぬ強度で有る。具
体的にはNd:YAGレーザー光の第2高調波を厚みが
28nm程度から96nm程度の半導体膜に照射する場
合、半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が600m
Jcm-2以上で有るか、或いは850mJcm-2以下と
成るエネルギー密度で有る事が望ましい。
【0007】パルスレーザー光の波長λが370nm以
上440nm以下の場合には、波長λと膜厚dとは 2.4×10αL1(λ-370)<d<11.2×10
αH1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αH1=9.6×10―3 nm−1 との関係式を満たして居るのが望ましい。より好ましく
は、波長λと膜厚dとが 2.4×10αL1(λ-370)<d<6.0×10
αM1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αM1=1.04×10―2 nm-1 との関係式を満たして居る事である。此の時もパルスレ
ーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度は半
導体膜の一部分を溶融させるのに十分な強度とされる。
先と同様、理想的には照射エネルギー密度が被照射半導
体膜の厚み方向の3分の2以上を溶融させ、且つ被照射
半導体膜を厚み方向で完全に溶融させぬ強度と云える。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明はガラスの歪点温度が55
0℃程度から650℃程度と云った低耐熱性ガラス基
板、或いは高耐熱性プラスティック基板等の各種透明基
板上に形成された結晶性の半導体膜を能動層として用い
て居る薄膜半導体装置の製造方法に関わり、基板上に下
地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工
程と、此の下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半
導体膜を形成する第一工程と、斯様に形成された半導体
膜にパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、更
に先のパルスレーザー光の波長λが370nm以上71
0nm以下で有り、此のパルスレーザー光の半導体膜上
に於ける照射エネルギー密度が半導体膜の一部を溶融さ
せるのに十分な強度で有る事を以て其の特徴と成す。斯
様なパルスレーザー光の内でも、レーザー光の多結晶硅
素中での吸収係数μpSiが10-3nm-1以上10-2nm
-1以下の場合がより好ましい。
【0009】第一工程では下地保護膜上に硅素(Si)
を主体とした半導体膜を形成する。半導体膜としては硅
素膜(Si)や硅素ゲルマニウム膜(SixGe1-x:0
<x<1)に代表される半導体物質が使用され、硅素を
その主構成元素(硅素原子構成比が80%程度以上)と
する。基板は液晶表示装置に用いられる透明無アルカリ
ガラス、或いはプラスティックやセラミック等の絶縁性
基板が用いられるのが通常だが、基板の耐熱性(ガラス
基板の場合は歪み点温度)が550℃程度以上有れば、
其の種類に囚われない。此等の基板の表面には半導体膜
に対する下地保護膜として、酸化硅素膜が100nm程
度から10μm程度堆積されて居る。下地保護膜として
の酸化硅素膜は単に半導体膜と基板との電気的絶縁性を
取ったり、或いは基板が含有する不純物の半導体膜への
拡散混入を防ぐにのみならず、下地酸化膜と結晶性半導
体膜との界面を良質な物とする。本願発明では、薄膜半
導体装置の半導体膜は10nm程度から200nm程度
の厚みを有し、半導体膜の膜厚方向全域に渡ってエネル
ギーバンドが曲がって居る場合(SOIの完全空乏化モ
デルに相当する)が主たる対象とされる。斯様な状況下
ではゲート絶縁膜と半導体膜との界面と共に、下地保護
膜と半導体膜との界面も電気伝導に無視出来ぬ関与を及
ぼす。酸化硅素膜は半導体膜と界面を成す際に界面捕獲
準位を最も低減し得る物質で有るから下地保護膜として
適している訳で有る。半導体膜は此の下地保護膜上に形
成される。従って下地保護膜としては半導体膜との界面
に1012cm-2程度以下の界面準位を有する酸化硅素膜
の使用が本願では望まれる。更に本発明では、従来技術
に比べて半導体膜の下部も高温に加熱される傾向が強い
為に、基板からの不純物拡散が生じ易い。此を防ぎ、高
純度の半導体膜を用いて優良なる薄膜半導体装置を本願
発明にて作成するには、密度の高い稠密な酸化硅素膜を
下地保護膜として使用するのが不可欠である。この様な
酸化硅素膜は、液温が25ア5℃で濃度が1.6ア0.2
%の沸化水素(HF)酸水溶液に於けるエッチング速度
が1.5nm/s以下となる物である。通常、下地保護
膜はプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化
学気相堆積法(LPCVD法)、スパッター法と云った
気相堆積法で形成される。此等の内でも、特に本願発明
に適した下地保護膜を作成するには、PECVD法の中
でも電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR−P
ECVD法)やヘリコンPECVD法、リモートPEC
VD法を利用する事が好ましい。又、工業用周波数(1
3.56MHz)や其の整数倍の周波数を用いた汎用の
PECVD法にて本願発明に適した酸化硅素膜を得るに
は、原料物質としてTEOS(Si−(O−CH2
34)と酸素(O2)とを使用し、酸素流量をTEO
S流量の5倍以上に設定して酸化硅素膜を堆積すれば良
い。或いは原料物質としてモノシラン(SiH4)と亜
酸化窒素(N2O)とを用い、希釈気体としてヘリウム
(He)乃至はアルゴン(Ar)と云った希ガスを用い
て、総気体流量中の希ガスの割合を90%程度以上(即
ち総気体流量中の原料物質の割合を10%程度未満)と
して酸化硅素膜を堆積すれば良い。その際に基板温度は
280℃以上で有る事が望まれる。基板が高純度の石英
から成る時には下地保護膜と石英基板とが兼用される事
も可能で有るが、表面状態を常に一定として半導体膜品
質の変動を最小とするには、上述の方法にて下地保護膜
を形成するのが好ましい。
【0010】下地保護膜上に非晶質状態又は多結晶状態
に有る半導体膜が化学気相堆積法(CVD法)で、好ま
しくは高次シラン(Sin2n+2:n=2,3,4)を
原料気体の一種として用いて、堆積形成される。半導体
膜堆積にはプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や
低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、常圧化学気相堆
積法(APCVD法)、スパッター法と云った各種気相
堆積法が可能で有るが、高純度の半導体膜が容易に堆積
されるとの立場からは、其の内でも特に低圧化学気相堆
積法(LPCVD法)が適して居る。低圧化学気相堆積
法は高真空型低圧化学気相堆積装置にて行われる。此は
半導体膜の純度を高める事と、不純物に起因する結晶核
の発生を最小として、本願発明で最終的に得られる結晶
性半導体膜を高純度で且つ大きな結晶粒から構成される
様にする為で有る。取り分け本願発明では、第二工程に
て半導体膜を厚み方向で比較的均一に加熱して横方向へ
の結晶成長を促進させるので、不純物に起因する結晶核
の発生を最小とするならば、大きな結晶粒から成る多結
晶半導体薄膜を容易に得る事が可能となる。高真空型と
は半導体膜堆積直前の成膜室に於ける背景真空度が5×
10-7Torr程度以下とし得る装置で有る。斯様な高
真空型低圧化学気相堆積装置は単に成膜室の気密性が優
れて居るにのみならず、成膜室に於ける排気速度が10
0sccm/mTorr(不活性ガスを100sccm
成膜室に流した時に得られる平衡圧力が1mTorrと
成る排気速度)程度以上の排気能力を有して居る事が更
に望まれる。斯うした高排気能力を有する装置では1時
間程度との比較的短時間で、基板等からの脱ガス流量を
充分に低減せしめ、生産性を高く保って尚、高純度半導
体薄膜の堆積を可能とするからで有る。
【0011】非晶質硅素膜に代表される硅素を主体とす
る半導体膜は高次シラン(Sin2n+2:nは2以上の
整数)を原料気体の一種として堆積されるのが好まし
い。価格や安全性を考慮すると高次シランとしてはジシ
ラン(Si26)が最も適している。ジシランを低圧化
学気相堆積法に適応すると、425℃程度以下の低温に
て高純度の非晶質硅素膜を0.5nm/min程度以上
との比較的速い堆積速度にて得ることが出来る。本願発
明に適した良質な非晶質半導体膜を得るには、堆積温度
と堆積速度の制御が重要となる。堆積温度は430℃程
度以下で、且つ堆積速度が0.6nm/min程度以上
と成る様にジシラン流量や成膜時の圧力を定める必要が
ある。
【0012】基板面積が2000cm2程度以上有る大
型基板を用いる場合には、LPCVD法の使用が困難と
化す。其の様な状況下では、プラズマボックス型のPE
CVD装置にて半導体膜を堆積する。プラズマボックス
型のPECVD装置は、プラズマ処理を行う成膜室が其
れよりも大きな別の真空の部屋内に設置されて居るの
で、成膜室内の背景真空度を1×10-6Torr程度以
下とし得る。背景真空度は高真空型LPCVD装置に劣
るものの、半導体膜の堆積速度を3nm/min程度以
上と大きく出来るので、結果として不純物に起因する結
晶核の発生を最少とする高純度の半導体膜が得られる。
PECVD法を本願発明に適応するには、成膜室内の背
景真空度を1×10-6Torr程度以下として、且つ半
導体膜の堆積速度を3nm/min程度以上となる条件
にて半導体膜を堆積する。非晶質膜堆積時の基板温度は
350℃程度から450℃程度の間である。350℃程
度よりも温度が高ければ非晶質膜中に含有される水素量
を8%程度以下と低減出来、第二工程の結晶化を安定的
に行うことが可能と成る。450℃程度よりも低ければ
非晶質膜を構成する非晶質粒が大きく成り、此の非晶質
膜を結晶化した際に得られる多結晶膜を構成する結晶粒
も大きく出来る。第二工程に於けるレーザー結晶化を安
定的に進めるには非晶質半導体膜内の水素量を好ましく
は硅素に対して5%程度未満とする。此の様に水素含有
量の少ない硅素膜は堆積速度を25nm/min以下と
すれば成膜され得る。PECVD法を適応する場合には
原料気体としてジシランの他にモノシランを使用しても
良い。
【0013】此の様にして非晶質半導体膜又は多結晶半
導体膜が得られた後に、第二工程として此等半導体膜に
パルスレーザー光を照射して非晶質半導体膜の結晶化、
乃至は多結晶半導体膜の再結晶化を進める。レーザー光
としては連続発振の物も使用可能で有るが、パルス発振
のレーザー光の使用がより好ましい。其れは後述する様
に、本願発明は結晶の横成長を促進し、其の場合には連
続発振よりは、一回の照射毎に適当な距離を移動し得る
パルス発振の方が大きな結晶粒から成る多結晶半導体薄
膜が確実に得易いからで有る。半導体膜にレーザー光を
照射する際には波長λが370nm以上710nm以下
のパルスレーザー光を使用する。此等の光の非晶質硅素
中及び多結晶硅素中での吸収係数を図1に示す。図1の
横軸は光の波長で、縦軸が吸収係数である。破線(Amorp
hous Silicon)が非晶質硅素を表し、実線(Polysilicon)
は多結晶硅素を表して居る。図1から分かる様に、37
0nmから710nmの波長領域では光の吸収係数は多
結晶硅素中よりも非晶質硅素中での方が大きくなる。例
えば波長が約532nmで有るYAG2ω光の非晶質硅
素での吸収係数μaSiと多結晶硅素での吸収係数μpSi
其々、 μaSi(YAG2ω)=0.01723nm-1 μpSi(YAG2ω)=0.00426nm-1 と、非晶質硅素での吸収係数の方が多結晶硅素での吸収
係数よりも4倍余りも大きく成って居る。多結晶膜は微
視的には結晶成分と非晶質成分とから構成されて居る。
結晶成分とは結晶粒内で積層欠陥等の欠陥が非常に少な
い部位で、略単結晶状態に有る箇所と言える。一方、非
晶質成分とは結晶粒界や結晶粒内の欠陥部等の構造秩序
に乱れが見られる部位で、所謂非晶質状態に有る箇所と
言える。レーザー光を照射して結晶化を進めるとの溶融
結晶化では、非溶融部が冷却固化過程に於ける結晶成長
の核と成る。高い構造秩序を有する結晶成分が結晶成長
核と成れば、其処から成長する結晶は矢張り高い構造秩
序を有する良質な結晶化膜と成る。此に反して、構造秩
序の乱れた部位が結晶成長核と成れば、積層欠陥等が冷
却固化過程に其処から成長するので、最終的に得られる
結晶化膜は欠陥等を含んだ低品質な物と化す。従って優
良な結晶化膜を得るには、多結晶膜中の結晶成分を溶融
させずに此を結晶成長の核とし、非晶質成分を優先的に
溶融させれば良い事に成る。本願発明では、照射レーザ
ー光の非晶質硅素に於ける吸収係数が多結晶硅素に於け
る吸収係数よりも大きいので、非晶質成分が結晶成分に
比べて優先的に加熱される。具体的には、結晶粒界や欠
陥部が容易に溶融し、略単結晶状態に有る良質な結晶成
分が結晶成長核と成るので、欠陥部や不対結合対等が大
幅に低減し、粒界も構造秩序の高い対応粒界が支配的と
成る。此の事は半導体膜の電気特性からすると、エネル
ギーバンド図に於ける禁制帯中央部付近の捕獲準位密度
を大きく減少させるとの効果をもたらす。又、斯様な半
導体膜を薄膜半導体装置の能動層(ソース領域やドレイ
ン領域、チャンネル形成領域)に用いると、オフ電流値
が小さく、急峻な閾値下特性を示し(サブスレーシュホ
ールドスィング値が小さく)、閾値電圧の低いトランジ
スタを得る事に成る。従来技術で此の様な優れた薄膜半
導体装置がなかなか製造出来なかったのは、溶融結晶化
に適した波長を有するレーザー光を使用しておらず、結
晶成分も非晶質成分をも一緒に溶融させて居た事が原因
の一つと云えよう。此処に述べた本願発明の原理が最も
効果的に働くのは、多結晶硅素での吸収係数の非晶質硅
素での吸収係数に対する比(μpSi/μaSi)が大きい時
で有る。図1を見ると、光の波長が450nm程度から
650nm程度の時に此の比が大きく成る事が分かる。
従って本願発明の第二工程にて照射するパルスレーザー
光の最も好ましい波長は450nm程度以上650nm
程度以下と云える。波長が450nmの光の多結晶硅素
中での吸収係数μpSiは1.127×10-2nm-1で、
波長が650nmの光の多結晶硅素中での吸収係数μ
pSiは8.9×10-4nm-1で有る。従って波長が45
0nm程度以上650nm程度以下のパルスレーザー光
を照射するとの第二工程は、パルスレーザー光として多
結晶硅素中での吸収係数μpSiが大凡10-3nm-1以上
10-2nm-1以下となる物を用いて居る事になる。
【0014】良質な多結晶半導体膜を得るにはレーザー
光の発振安定性が最も重要なので、パルスレーザー光は
固体発光素子にて形成されるのが望ましい。(本願では
此を固体レーザーと略称する。)従来のエキシマガスレ
ーザーでは、レーザー発振室内でのキセノン(Xe)や
塩素(Cl)などのガスの不均一性や、ガス自体の劣化
或いはハロゲンに依る発振室内の腐食等に起因して、発
振強度のばらつきが5%程有り、更に発振角のばらつき
も5%程度認められた。発振角のばらつきは照射領域面
積のばらつきをもたらすので、結果として半導体膜表面
でのエネルギー密度(単位面積あたりのエネルギー値)
は総計で10%以上も変動して居り、此が優良なる薄膜
半導体装置を製造する上での一つの阻害要因となってい
た。又、レーザー発振の長期安定性にも欠け、薄膜半導
体装置のロット間変動をもたらしていた。此に対して固
体レーザーには斯様な問題が存在し得ぬが故、レーザー
発振は窮めて安定で、半導体膜表面でのエネルギー密度
の変動を5%程度未満とし得るので有る。本願発明をよ
り効果的に実用するには、この様に半導体膜表面でのレ
ーザーエネルギー密度の変動が5%程度未満となる固体
レーザーの使用が求められる。更に、固体レーザーの使
用は薄膜半導体装置製造時に於けるロット間変動を最小
化するとの効果や、従来頻繁に行われて居た煩雑なガス
交換作業から薄膜半導体装置の製造を解放し、以て薄膜
半導体装置を製造する際の生産性の向上や低価格化を導
くとの効果を有する。先の波長や吸収係数の要請と固体
レーザーの要請とを同時に満たし得るのがネオジウム
(Nd)をイットリウム(Y)とアルミニウム(A
l)、酸素(O)等の化合物に添加したNd:YAGレ
ーザー光の第二高調波(YAG2ω光、波長532n
m)である。従って、本願発明の第二工程では半導体膜
表面に於けるエネルギー密度の変動が5%程度未満のY
AG2ω光を半導体膜に照射するのが最も適している。
【0015】さて、半導体膜中では光は吸収され、入射
光は指数関数的に其の強度を減衰させる。今、入射光強
度をI(0)とし、硅素を主体とした多結晶半導体膜中で
の表面からの距離をx(nm)、場所xでの強度をI
(x)とすると、此等の間には吸収係数μpSiを用いて次の
関係が成り立つ。
【0016】 I(x)/I(0)=exp(−μpSi・x) (式1) 吸収係数μpSiが10-3nm-1の場合と10-2nm-1
場合、及び本願発明のパルスレーザー光として最も優れ
ているNd:YAGレーザー光の第二高調波(YAG2
ω光)の場合と、従来技術のXeClエキシマレーザー
光の場合とで式1の関係を図2に示す。硅素膜が効率的
に加熱される為には入射光の少なくとも10%程度は半
導体膜により吸収される必要があるので、図2中には其
の条件となる0.9の位置に横点線を引いてある。又、
光の強度は其の儘硅素に加えられる熱量を意味し、故に
図2はレーザー光照射時に於ける硅素膜中での温度分布
をも表している事になる。出願人等の研究に依ると、従
来のエキシマレーザー照射で半導体膜の表面が激しく損
傷を被る一方、其の下部では低品質な半導体層が残り、
其れが為優良なる多結晶半導体膜が得られぬ理由は、表
面と下部との間に存在する大きな温度差に由来する。表
面での損傷が生ぜず、且つ半導体膜の厚み方向で略全体
が比較的均一に溶融するのは、半導体膜下部に於ける光
の強度が入射光強度の半分程度以上の時である。此の条
件を満たす時には表面と下部との温度差は小さくなる。
そこで図2には光の強度が表面の半分となる0.5の位
置にも横点線を引いてある。従って硅素を主体とした半
導体膜が効果的に加熱され、且つ半導体膜に損傷が入ら
ずに膜厚全体で良好な結晶化が進む条件は、図2で0.
9の横点線と0.5の横点線とに挟まれた領域となる。
従来技術のXeClエキシマレーザー光は入射光の殆ど
が半導体膜表面にて吸収されるので、レーザー結晶化に
適した半導体膜厚は1nmから4nmと限られて居る事
が分かる。此に対して本願発明の条件では広い膜厚範囲
にて良好な結晶化が行われる事になる。
【0017】レーザー光を用いた溶融結晶化では、何れ
のレーザー光を用いようとも、温度勾配に沿って結晶は
成長する。一方、薄膜半導体装置で利用される半導体膜
の厚みは、通常30nm程度から100nm程度であ
る。先にも述べた様に、従来のXeClエキシマレーザ
ー光に依る結晶化では半導体膜表面の4nm程度以内で
殆どの光が吸収され、表面近傍のみが加熱される事に起
因して、半導体膜内では上下方向に急峻な温度勾配が生
ずる(図3、a−1)。此の為に結晶は半導体膜の下部
から表面に向かって成長し、レーザー照射後に得られる
多結晶膜は小さな結晶粒から構成される傾向が強かった
(図3、a−2)。(この様に従来技術では下から上に
向かって小さな結晶粒が沢山成長して居たので、半導体
膜中の不純物に起因する結晶核の存在は然程重要な問題
ではなかった。)此に対して本願発明では、溶融結晶化
に最も適した吸収係数を有するレーザー光を照射するの
で、半導体膜が膜厚方向で均一に加熱される。其の結
果、レーザー照射領域の端部に於いては、温度勾配が横
方向に生じ(図3、b−1)、結晶は上下方向よりも寧
ろ横方向に成長し易くなる。即ち、照射領域の端部には
大きな結晶粒が成長する事になる(図3、b−2)。照
射領域内の端部以外の場所でも上下方向の温度差が小さ
い為に、半導体膜下部での結晶核発生確率が従来よりも
著しく低減して、平均的には多結晶半導体膜を構成する
結晶粒は従来よりも大きくなる。横方向への結晶成長が
促進されるのは表面と下部との光強度が其れ程変わらな
い時で、実験に依ると半導体膜下部に於ける光強度が入
射光強度の三分の一程度以上となる場合である。そこで
図2には横成長が生じ易くなる条件の0.667の位置
にも横点線を描いてある。従って硅素を主体とした半導
体膜が効果的に加熱され、且つ横成長が生じて大きな結
晶粒から成る多結晶半導体膜が形成される条件は、図2
で0.9の横点線と0.667の横点線とに挟まれた領
域となる。無論、結晶粒を大きくするには此処に述べた
温度勾配の他に不純物に基付く結晶核を抑制せねばなら
ないので、下地保護膜や第一工程での半導体膜形成等に
も前述の配慮が求められる。
【0018】図2を見ると、吸収係数が10-3nm-1
上で10-2nm-1以下で有っても総ての半導体膜厚で優
良なる多結晶膜が得られるのではない事が分かる。例え
ばYAG2ω光(吸収係数μpSi=4.26×10-3
-1)では硅素膜が効果的に加熱されるのは半導体膜の
厚みが25nm程度以上の時であり、表面での損傷が無
く膜厚全体が略溶融するのは半導体膜の厚みが165n
m程度以下の時で有る。又、横成長が生じて結晶粒が大
きく成るのは半導体膜厚が95nm程度以下の時で有
る。従って、YAG2ωレーザー光を硅素を主体とした
半導体膜に照射する時に好ましい半導体膜の厚みは25
nm程度以上165nm程度以下で、理想的には25n
m程度以上95nm程度以下となる。此の様に使用する
レーザー光の多結晶硅素中での波長や吸収係数に応じて
最適半導体膜厚は異なって来る。具体的には硅素膜が効
果的に加熱され、且つ表面損傷無く膜厚全体が略溶融す
るのは式1でxを半導体膜の厚みdとして、I(d)/I
(0)が0.5と0.9との間に有る時だから、 0.5<I(d)/I(0)<0.9 (式2) と表現される。式2を、式1を用いてdに関して解く
と、 0.105・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1 (式3) との関係式が得られる。同様に、硅素膜が効果的に加熱
され、且つ横成長が生じて結晶粒が大きく成るのはI
(d)/I(0)が0.667と0.9との間に有る時だか
ら、 0.405・μpSi -1<d<0.693・μpSi -1 (式4) との関係式が得られる。半導体膜の厚みdと、此の半導
体膜に照射するパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸
収係数μpSiとが上述の式3乃至式4を満たして居る時
には必ず優良なる多結晶半導体薄膜が得られ、以て優れ
た薄膜半導体装置が製造される訳である。
【0019】上述の式3及び式4の関係を、図1に示し
た光の波長と吸収係数との関係を考慮して、波長と硅素
を主体とした半導体薄膜の厚みとの関係に描き直した物
が図4で有る。図4の三角印より上の領域で半導体薄膜
は加熱され、丸印より下の領域には表面損傷が生ぜず半
導体膜の厚み方向で全体が比較的均一に溶融する照射エ
ネルギー密度が存在し得る。又、四角印より下の領域で
は上下の温度差が小さく成るので、結晶の横方向への成
長が促進される。図4では更に丸印や四角印、三角印を
其々直線で近似してある。此の近似直線を用いると、波
長λが440nm以上710nm以下の場合、波長λと
膜厚dとが 9.8×10αL2(λ-440)<d<53×10
αH2(λ-440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αH2=5.4×10―3 nm-1 との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体
薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半
導体膜の厚み方向で薄膜の略全体を溶融させ得る事にな
る。例えばレーザー光としてYAG2ω光を用いる場
合、波長が532nmなので、此の条件を満たす半導体
膜厚は28nmから166nmとなる。更に、膜厚dと
波長λとが 9.8×10αL2(λ-440)<d<32×10
αM2(λ−440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αM2=5.2×10―3 nm-1 との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体
薄膜は効率的に加熱され、且つ結晶の横方向への成長も
促進されるのでより好ましい。YAG2ω光をレーザー
光として用いるのならば、半導体膜厚が28nmから9
6nmの時に、此の条件は満たされる。
【0020】同様に波長λが370nm以上440nm
以下の場合には、波長λと膜厚dとが 2.4×10αL1(λ-370)<d<11.2×10
αH1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αH1=9.6×10―3 nm-1 との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体
薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半
導体膜の厚み方向で薄膜の略全体を溶融させ得る事にな
る。波長λと膜厚dとが 2.4×10αL1(λ-370)<d<6.0×10
αM1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αM1=1.04×10―2 nm-1 との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体
薄膜は効率的に加熱され、且つ結晶の横方向への成長も
促進されるのでより好ましい。
【0021】優良なる結晶性半導体薄膜を得るにはパル
スレーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度
の制御も重要となる。換言すると、優れた薄膜半導体装
置を製造するには照射エネルギー密度を適切な範囲内に
制御せねばならない。まず、溶融結晶化を進める為に
は、被照射半導体膜の少なくとも一部が溶融するのに十
分な強度をパルスレーザー光は有しておらねばならな
い。此が半導体膜上に於けるパルスレーザー光照射エネ
ルギー密度の適切な範囲の最下限値である。(通常は最
表面が溶融する照射エネルギー密度が此の値に相当する
ので、本願明細書では此をESMと略称する。)更に実験
に依ると、パルスレーザー光のエネルギー密度が被照射
半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2程度以
上を溶融させる時に窮めて良質な結晶性半導体膜が得ら
れ、其れ故に斯様な結晶性半導体膜を能動相として用い
て居る薄膜半導体装置は優れた電気特性を示す様にな
る。此は本願発明のパルスレーザー光が非晶質成分等の
構造秩序の乱れた部位から優先的に溶融させ、同時に高
品質な結晶成分を選択的に残し、更には薄膜の厚み方向
で略均一に溶融を進める為、3分の2程度以上を溶融さ
せれる工程を何回か繰り返す事で少ない照射回数でも容
易に良質な結晶化膜が得られるからで有る。従ってより
好ましい下限値は半導体膜の厚み方向に於ける体積成分
の3分の2程度以上を溶融させる照射エネルギー密度で
有る。(此の照射エネルギー密度を本願明細書ではE
2/3と略称する。) 適切な照射エネルギー密度には上限値も存在する。半導
体膜表面でのレーザー光のエネルギー密度が余りにも高
いと、半導体薄膜は消失して仕舞うので、エネルギー密
度は消失(Abrasion)を引き起こす値よりも当然小さくな
ければならない。(消失が生ずる照射エネルギー密度を
本願明細書ではEAbと略称する。)此の値が最上限値と
なる。又、全面的な消失が生ぜずとも、半導体膜の厚み
方向の全体が完全に溶融して仕舞うと(此の照射エネル
ギー密度を本願明細書ではECMと略称する)、部分的な
消失が発生し易く成る。此は薄膜半導体装置を作成した
際の欠陥を誘起して歩留まりを下げるので、当然好まし
くない。更には半導体膜の厚み方向全体が完全溶融する
と、膜中で結晶核が爆発的に発生し、其れが為、レーザ
ー照射後に得られる結晶化膜は微細な結晶粒から構成さ
れる事となる。斯う成ると薄膜半導体装置の電気特性も
優れぬ物と化す。従って、高歩留まりを以て優良な薄膜
半導体装置を製造するには、半導体膜表面でのパルスレ
ーザー光のエネルギー密度は半導体膜の厚み方向の全体
が完全に溶融する値(ECM)よりも低い事が求められ
る。此が適切な照射エネルギー密度に対する好ましい上
限値となる。パルスレーザー光がNd:YAGレーザー
光の第2高調波で、透明基板上に形成された硅素を主体
とする半導体膜の厚みが28nm程度から96nm程度
で有る場合の、半導体膜表面に於けるYAG2ωパルス
レーザー光の照射エネルギー密度(x軸)と被照射半導
体膜の溶融する体積成分(y軸)との関係を図5に示
す。図5から分かる様に、斯様な条件下では ESM=100mJcm-2CM=850mJcm-2Ab=1500mJcm-2 で有るので、被照射半導体膜の厚み方向に於ける体積成
分の3分の2が溶融する照射エネルギー密度は E2/3=600mJcm-2 となる。従って、YAG2ω光の半導体膜上に於ける望
ましい照射エネルギー密度は100mJcm-2程度以上
1500mJcm-2程度以下で、より好ましくは100
mJcm-2程度以上850mJcm-2程度以下、或いは
600mJcm-2程度以上1500mJcm-2程度以
下、理想的には600mJcm-2程度以上850mJc
-2程度以下と云える。
【0022】(実施例1)図6(a)〜(d)はMOS
型電界効果トランジスタを形成する薄膜半導体装置の製
造工程を断面で示した図で有る。本実施例1では基板1
01としてガラスの歪点温度が650℃の無アルカリガ
ラスを用いた。然るに此以外の基板で有っても、薄膜半
導体装置製造工程中の最高温度に耐えられるのならば、
その種類や大きさは無論問われない。まず基板101上
に下地保護膜102と成る酸化硅素膜を堆積する。基板
がセラミックス基板等で半導体膜に取って望ましからざ
る不純物を含んでいる場合、酸化硅素膜堆積前に酸化タ
ンタル膜や窒化硅素膜等の第一の下地保護膜を堆積して
も良い。本実施例1では基板101上にプラズマ化学気
相堆積法(PECVD法)で酸化硅素膜を200nm程
度堆積し、下地保護膜102とした。酸化硅素膜はEC
R−PECVDにて以下の堆積条件で堆積された。
【0023】 モノシラン(SiH4)流量・・・60sccm 酸素(O2)流量・・・100sccm 圧力・・・2.40mTorr マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2250W 印可磁場・・・875Gauss 基板温度・・・100℃ 成膜時間・・・40秒 此の酸化膜の、液温が25℃で濃度が1.67%の沸化
水素酸水溶液に於けるエッチング速度は0.5nm/s
で有った。
【0024】斯様に形成された下地保護膜上に、第一工
程として真性非晶質硅素膜を高真空型LPCVD装置に
て50nm程度の膜厚に堆積した。高真空型LPCVD
装置はホット・ウォール型で容積が184.5l有り、
基板挿入後の堆積可能領域の総面積は約44000cm
2で有る。成膜室に於ける最大排気速度は120scc
m/mTorrで有る。堆積温度は425℃で、半導体
膜堆積前には此の温度にて1時間15分間に渡る基板の
加熱乾燥処理が施された。乾燥熱処理の最中、基板が設
置された成膜室には純度が99.9999%以上のヘリ
ウム(He)を200(sccm)と純度が99.99
99%以上の水素(H2)を100(sccm)導入
し、成膜室の圧力は約2.5mTorrに保たれた。乾
燥処理が終了し、半導体膜堆積直前の成膜室背景真空度
は、425℃に於ける温度平衡条件にて2.5×10
―7Torrで有った。非晶質硅素膜堆積時には成膜室
に純度99.99%以上のジシラン(Si26)を20
0sccmの流量で供給し、堆積圧力は凡そ1.1To
rrに保たれた。此の条件下で硅素膜の堆積速度は0.
77nm/minで有る。
【0025】次に第二工程として第一工程にて得られた
真性非晶質硅素膜にパルス発振するNd:YAGレーザ
ー光の第二高調波を照射して溶融再結晶化を行った。パ
ルスレーザー光の時間半値幅は約60nsで、発信周波
数は200Hzで有った。レーザー光は幅270μmで
長さ5mmの線状に集光され、此の線状の光を各照射毎
に2.5%づつ幅方向にずらして、基板上を走査した。
従って半導体膜上の任意の一点は約40回のレーザー照
射を被って居る。レーザー光の照射エネルギー密度は7
50mJ・cm-2で有る。半導体膜表面に於ける照射エ
ネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で有った。
本実施例1にて使用したYAG2ωレーザー光では50
nmの半導体膜の最表面のみを溶融させるエネルギー密
度は100mJ・cm-2程度で有り、完全溶融させるエ
ネルギー密度は850mJ・cm-2程度で有ったから、
半導体膜の約87%が溶融した事に成る。斯様にして得
られた結晶性硅素膜をパターニング加工して半導体膜の
島103を形成した。(図6−a) 次にパターニング加工された半導体膜の島103を被う
様に酸化硅素膜104をECR−PECVD法にて形成
した。此の酸化硅素膜は半導体装置のゲート絶縁膜とし
て機能する。ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜堆積条件は
堆積時間が24秒と短縮された事を除いて、下地保護膜
の酸化硅素膜の堆積条件と同一で有る。但し、酸化硅素
膜堆積の直前にはECR−PECVD装置内で基板に酸
素プラズマを照射して、半導体の表面に低温プラズマ酸
化膜を形成した。プラズマ酸化条件は次の通りで有る。
【0026】酸素(O2)流量・・・100sccm 圧力・・・1.85mTorr マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2000W 印可磁場・・・875Gauss 基板温度・・・100℃ 処理時間・・・24秒 プラズマ酸化に依り凡そ3.5nmの酸化膜が半導体表
面に形成されて居る。酸素プラズマ照射が終了した後、
真空を維持した侭連続で酸化膜を堆積した。従ってゲー
ト絶縁膜と成る酸化硅素膜はプラズマ酸化膜と気相堆積
膜の二者から成り、その膜厚は122nmで有った。斯
様にしてゲート絶縁膜堆積が完了した。(図6−b) 引き続いて金属薄膜に依りゲート電極105をスパッタ
ー法にて形成する。スパッター時の基板温度は150℃
で有った。本実施例1では750nmの膜厚を有するα
構造のタンタル(Ta)にてゲート電極を作成し、この
ゲート電極のシート抵抗は0.8Ω/□で有った。次に
ゲート電極をマスクとして、ドナー又はアクセプターと
なる不純物イオン106を打ち込み、ソース・ドレイン
領域107とチャンネル形成領域108をゲート電極に
対して自己整合的に作成する。本実施例1ではCMOS
半導体装置を作製した。NMOSトランジスタを作製す
る際にはPMOSトランジスタ部をアルミニウム(A
l)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%
の濃度で希釈されたフォスヒィン(PH3)を選び、加
速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを7ラ1015
cm-2の濃度でNMOSトランジスタのソース・ドレイ
ン領域に打ち込んだ。反対にPMOSトランジスタを作
製する際にはNMOSトランジスタ部をアルミニウム
(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に
5%の濃度で希釈されたジボラン(B26)を選び、加
速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを5×1015
cm-2の濃度でPMOSトランジスタのソース・ドレイ
ン領域に打ち込んだ。(図6−c) イオン打ち込み時の基板温度は300℃で有る。
【0027】次にPECVD法でTEOS(Si−(O
CH2CH34)と酸素を原料気体として、基板温度3
00℃で層間絶縁膜109を堆積した。層間絶縁膜は二
酸化硅素膜から成り、その膜厚は凡そ500nmで有っ
た。層間絶縁膜堆積後、層間絶縁膜の焼き締めとソース
・ドレイン領域に添加された不純物元素の活性化を兼ね
て、窒素雰囲気下350℃にて2時間の熱処理を施し
た。最後にコンタクト・ホールを開穴し、スパッター法
で基板温度を180℃としてアルミニウムを堆積し、配
線110を作成して薄膜半導体装置が完成した。(図6
−d) この様にして作成した薄膜半導体装置の伝達特性を測定
した。測定した半導体装置のチャンネル形成領域の長さ
及び幅は其々10μmで、測定は室温にて行われた。4
個のNMOSトランジスタのVds=8Vに於ける飽和
領域より求めた平均の移動度は117cm2・V-1・s
-1で有り、平均の閾値電圧は3.41V、平均のサブス
レーシュホールド・スイングは0.260V、閾値電圧
とフラットバンド電圧とから求めた平均のアクセプター
型捕獲準位密度は2.05×1016cm-3で有った。
又、4個のPMOSトランジスタのVds=−8Vに於
ける飽和領域より求めた平均の移動度は62cm2・V
-1・s-1で有り、平均の閾値電圧は−0.81V、平均
のサブスレーシュホールド・スイングは0.368V、
閾値電圧とフラットバンド電圧とから求めた平均のドナ
ー型捕獲準位密度は1.62×1016cm-3で有った。
此等の半導体装置は其の特性が基板内で殆ど変動が無
く、高性能半導体装置が均一に製造されて居た。此に対
して従来技術で非晶質硅素膜を堆積してエキシマ・レー
ザーで結晶化した比較例ではNMOSトランジスタの平
均の移動度が33cm2・V-1・s-1、平均の閾値電圧
が3.70V、平均のサブスレーシュホールド・スイン
グが0.646V、平均のアクセプター型捕獲準位密度
が2.65×1016cm-3で、PMOSトランジスタの
平均の移動度が16cm2・V-1・s-1、平均の閾値電
圧が−7.06V、平均のサブスレーシュホールド・ス
イングが0.617V、平均のドナー型捕獲準位密度は
6.55×1016cm-3で有った。この例が示す様に本
発明に依るとN型とP型の両半導体装置共に高移動度で
低閾値電圧を有し、且つ急峻なサブスレーシュホールド
特性を示す良好な薄膜半導体装置が汎用ガラス基板を使
用し得る低温工程にて、簡便且つ容易に、又安定的に作
成し得る。取り分け、サブスレーシュホールド・スイン
グ値から分かる様に禁制帯中央部付近の捕獲準位密度
や、ドナー型捕獲準位密度と云った獲準位密度を著しく
低減するとの絶大なる効果を有し、薄膜半導体装置を用
いた回路の低電圧駆動を可能ならしめている。又、従来
技術では移動度が大きければ閾値電圧や捕獲準位密度も
大きく成っていたが、本願発明に依ると、高移動度と低
閾値電圧や低捕獲準位密度を同時に実現出来るとの優れ
た効果をも認められる。
【0028】(実施例2)第二工程に於けるパルス発振
するNd:YAGレーザー光の第二高調波を半導体膜に
照射する工程を除いて、その他の製造工程は実施例1と
全く同様として薄膜半導体装置を作成した。本実施例2
では幅270μmで長さ5mmの線状に集光されたYA
G2ωパルスレーザー光を各照射毎に幅方向にずらす割
合と、半導体膜上に於けるレーザー光照射エネルギー密
度との二点のみを実施例1から変更した。線状のレーザ
ー光を照射毎に幅方向にずらす割合は5%と2.5%、
1.2%、0.6%との四水準を選んだ。此に応じて半
導体膜上の任意の一点は其々約20回、約40回、約8
3回、約250回のレーザー照射を被る事になる。半導
体膜上に於けるレーザー光の照射エネルギー密度は30
0mJ・cm-2から800mJ・cm-2迄変化させた。
実施例1と同様、半導体膜表面に於けるYAG2ω光照
射エネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で、E
SMは100mJ・cm-2程度で有り、ECMは850mJ
・cm-2程度で有った。
【0029】斯うして作成された薄膜半導体装置の電気
特性を図7から図12に示す。これらの図の横軸(x
軸)は何れもYAG2ω光の半導体膜表面に於ける照射
エネルギー密度を表し、縦軸(y軸)は対応する電気特
性を表す。又、参考の為に従来技術に相当するエキシマ
レーザーで得られた最も良い結果をも黒丸にて示して有
る。
【0030】図7及び図8はNMOS及びPMOSのサ
ブスレシュホールドスイングを示している。照射エネル
ギー密度が550mJ・cm-2程度を越えると、即ち半
導体膜の厚み方向に於ける体積成分の60%程度以上が
溶融すると、従来よりも閾値下特性を改善出来る事が分
かる。更に600mJ・cm-2程度以上の時(半導体膜
の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融し
た時)には、従来よりも著しく特性が改善され、而も良
好な特性を示すエネルギー密度範囲が完全溶融直前の8
00mJ・cm-2程度迄と広がって居る事が確認出来
る。
【0031】図9及び図10はアクセプター型捕獲準位
とドナー型捕獲準位のエネルギー密度依存性を示して居
る。図7や図8と同じ傾向に加えて、照射エネルギー密
度が650mJ・cm-2程度を越えると、即ち半導体膜
の厚み方向に於ける体積成分の73%程度以上が溶融す
ると、ドナー型捕獲準位を従来の3分の1程度以下に迄
低減し得るとの顕著な効果が認められて居る。
【0032】図11及び図12はNMOS及びPMOS
の移動度に関するグラフで有る。照射エネルギー密度が
650mJ・cm-2程度を越えると、即ち半導体膜の厚
み方向に於ける体積成分の73%程度以上が溶融する
と、NMOSもPMOSも共に非常に大きな移動度が得
られる。
【0033】本実施例2が示す様に、半導体膜の厚み方
向に於ける体積成分の60%程度以上が溶融すると、従
来よりも優れた薄膜半導体装置を製造する事が可能とな
り、67%程度以上が溶融すると捕獲準位密度を著しく
低減し、更に73%程度以上が溶融すると、低閾値電圧
と高移動度とが両立するとの優れた効果が生ずる事が理
解されよう。
【0034】
【発明の効果】以上詳述してきた様に、従来低品質でば
らつきも大きかった結晶性半導体膜を、本願発明では成
膜方法や結晶化工程を工夫する事に依り、均一で高品質
な結晶性半導体膜とする事が出来る。これに依り薄膜ト
ランジスタに代表される薄膜半導体装置の電気特性を著
しく向上させ、同時に薄膜半導体装置を低電圧にて動作
させ、更には斯様な薄膜半導体装置を安定的に製造し得
るとの効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光の波長と半導体に於ける吸収係数との関係
を説明した図。
【図2】 半導体膜厚と膜中での光強度との関係を説明
した図。
【図3】 本願発明の原理を説明した図。
【図4】 本願発明の範囲を説明する波長と半導体膜厚
との関係図。
【図5】 本願発明の一例のエネルギー密度と体積成分
との関係図。
【図6】 本願発明の製造工程を説明した図。
【図7】 本願発明の効果を説明した図。
【図8】 本願発明の効果を説明した図。
【図9】 本願発明の効果を説明した図。
【図10】 本願発明の効果を説明した図。
【図11】 本願発明の効果を説明した図。
【図12】 本願発明の効果を説明した図。
【符号の説明】
101・・・基板 102・・・下地保護膜 103・・・半導体膜の島 104・・・酸化硅素膜 105・・・ゲート電極 106・・・不純物イオン 107・・・ソース・ドレイン領域 108・・・チャネル形成領域 109・・・層間絶縁膜 110・・・配線
フロントページの続き (72)発明者 小川 哲也 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 時岡 秀忠 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 佐藤 行雄 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 井上 満夫 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 笹川 智広 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 5F052 AA02 BA02 BA07 BB03 CA07 DA02 DB02 EA11 JA01

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成された硅素(Si)を主体
    とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半
    導体装置の製造方法に於いて、 基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
    護膜形成工程と、 該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を
    形成する第一工程と、 該半導体膜に370nm以上710nm以下の波長を有
    するパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、 該パルスレーザー光の該半導体膜上に於ける照射エネル
    ギー密度が該半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な
    強度で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜上
    に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜の厚み方向の
    3分の2以上を溶融させる強度で有る事を特徴とする請
    求項1記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜上
    に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜を厚み方向で
    完全に溶融させぬ強度で有る事を特徴とする請求項1ま
    たは2記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記パルスレーザー光がNd:YAGレ
    ーザー光の第2高調波で有る事を特徴とする請求項1記
    載の薄膜半導体装置の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高調
    波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が該半
    導体膜の厚み方向の3分の2以上を溶融させる強度で有
    る事を特徴とする請求項4記載の薄膜半導体装置の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高調
    波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が該半
    導体膜を厚み方向で完全に溶融させぬ強度で有る事を特
    徴とする請求項4または5記載の薄膜半導体装置の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高調
    波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が60
    0mJcm-2以上で有る事を特徴とする請求項4記載の
    薄膜半導体装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高調
    波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が85
    0mJcm-2以下で有る事を特徴とする請求項4または
    7記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  9. 【請求項9】 基板上に形成された硅素(Si)を主体
    とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半
    導体装置の製造方法に於いて、 基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
    護膜形成工程と、 該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を
    膜厚d(nm)と成る様に形成する第一工程と、 該半導体膜に440nm以上710nm以下の波長λ
    (nm)を有するパルスレーザー光を照射する第二工程
    とを含み、 該膜厚dと該波長λとは 9.8×10αL2(λ-440)<d<53×10
    αH2(λ-440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αH2=5.4×10―3 nm-1 との関係式を満たして居り、 該パルスレーザー光の該半導体膜上に於ける照射エネル
    ギー密度が該半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な
    強度で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  10. 【請求項10】 基板上に形成された硅素(Si)を主
    体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜
    半導体装置の製造方法に於いて、 基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
    護膜形成工程と、 該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を
    膜厚d(nm)と成る様に形成する第一工程と、 該半導体膜に440nm以上710nm以下の波長λ
    (nm)を有するパルスレーザー光を照射する第二工程
    とを含み、 該膜厚dと該波長λとは 9.8×10αL2(λ-440)<d<32×10
    αM2(λ-440) 但し、αL2=4.9×10―3 nm-1 αM2=5.2×10―3 nm−1 との関係式を満たして居り、 該パルスレーザー光の該半導体膜上に於ける照射エネル
    ギー密度が該半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な
    強度で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜
    上に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜の厚み方向
    の3分の2以上を溶融させる強度で有る事を特徴とする
    請求項9または10記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜
    上に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜を厚み方向
    で完全に溶融させぬ強度で有る事を特徴とする請求項9
    乃至11のいずれか一項に記載の薄膜半導体装置の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 前記パルスレーザー光がNd:YAG
    レーザー光の第2高調波で有る事を特徴とする請求項9
    または10記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高
    調波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が該
    半導体膜の厚み方向の3分の2以上を溶融させる強度で
    有る事を特徴とする請求項13記載の薄膜半導体装置の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高
    調波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が該
    半導体膜を厚み方向で完全に溶融させぬ強度で有る事を
    特徴とする請求項13または14記載の薄膜半導体装置
    の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高
    調波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が6
    00mJcm−2以上で有る事を特徴とする請求項13
    記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記Nd:YAGレーザー光の第2高
    調波の前記半導体膜上に於ける照射エネルギー密度が8
    50mJcm-2以下で有る事を特徴とする請求項13ま
    たは16記載の薄膜半導体装置の製造方法。
  18. 【請求項18】 基板上に形成された硅素(Si)を主
    体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜
    半導体装置の製造方法に於いて、 基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
    護膜形成工程と、 該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を
    膜厚d(nm)と成る様に堆積する第一工程と、 該半導体膜に370nm以上440nm以下の波長λ
    (nm)を有するパルスレーザー光を照射する第二工程
    とを含み、 該膜厚dと該波長λとは 2.4×10αL1(λ-370)<d<11.2×10
    αH1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αH1=9.6×10―3 nm-1 との関係式を満たして居り、 該パルスレーザー光の該半導体膜上に於ける照射エネル
    ギー密度が該半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な
    強度で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  19. 【請求項19】 基板上に形成された硅素(Si)を主
    体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜
    半導体装置の製造方法に於いて、 基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保
    護膜形成工程と、 該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を
    膜厚d(nm)と成る様に堆積する第一工程と、 該半導体膜に370nm以上440nm以下の波長λ
    (nm)を有するパルスレーザー光を照射する第二工程
    とを含み、 該膜厚dと該波長λとは 2.4×10αL1(λ-370)<d<6.0×10
    αM1(λ-370) 但し、αL1=8.7×10―3 nm-1 αM1=1.04×10―2 nm-1 との関係式を満たして居り、 該パルスレーザー光の該半導体膜上に於ける照射エネル
    ギー密度が該半導体膜の一部分を溶融させるのに十分な
    強度で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜
    上に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜の厚み方向
    の3分の2以上を溶融させる強度で有る事を特徴とする
    請求項18または19記載の薄膜半導体装置の製造方
    法。
  21. 【請求項21】 前記パルスレーザー光の前記半導体膜
    上に於ける照射エネルギー密度が該半導体膜を厚み方向
    で完全に溶融させぬ強度で有る事を特徴とする請求項1
    8乃至21のいずれか一項に記載の薄膜半導体装置の製
    造方法。
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