JP4214989B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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本願発明は600℃程度以下の比較的低温にて結晶性が窮めて優れている多結晶性半導体膜を形成する技術に関する。取り分けこの技術を用いて多結晶薄膜半導体装置に代表される薄膜半導体装置の性能を著しく向上せしめる製造方法に関する。
多結晶硅素薄膜トランジスタ(p−Si TFT)に代表される薄膜半導体装置を汎用ガラス基板を使用し得る600℃程度以下の低温にて製造する場合、従来以下の如き製造方法が取られて居た。まず基板上に半導体膜と成る非晶質硅素膜を低圧化学気相堆積法(LPCVD法)で形成する。次に此の非晶質膜にエキシマレーザー等を照射して多結晶硅素膜(p−Si膜)とした後、ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜を化学気相堆積法(CVD法)や物理気相堆積法(PVD法)にて形成する。次にタンタル等でゲート電極を作成して、金属(ゲート電極)−酸化膜(ゲート絶縁膜)−半導体(多結晶硅素膜)から成る電界効果トランジスタ(MOS−FET)を構成させる。最後に層間絶縁膜を此等の膜上に堆積し、コンタクトホールを開孔した後に金属薄膜にて配線を施して、薄膜半導体装置を完成させる。
特開昭60−105216号公報 特開平04−321219号公報 特開平11−354446号公報
しかしながら此等従来の薄膜半導体装置の製造方法では、半導体特性を良好する為に照射レーザー光のエネルギー密度を増すと、僅かなエネルギー密度の変動に依っても半導体特性が同一基板内に於いてすら大きくばらついていた。それ故、基板内で均質な多結晶半導体膜を得るには、レーザー光のエネルギー密度を最適値よりも可成り低く設定する必要が有った。斯くした事実に則し、従来の製造方法にてp−Si TFT等の薄膜半導体装置を安定的に製造するには、完成した薄膜半導体装置の電気特性を犠牲にせざるを得ないとの課題を有して居た。
そこで本発明は上述の諸事情を鑑み、その目的とする所は600℃程度以下との低温工程で優良な薄膜半導体装置を安定的に製造する方法を提供する事に有る。
本発明は、基板上に形成された半導体膜を能動層として用いる半導体装置の製造方法で
あって、低圧化学気相堆積法で堆積温度が430℃未満且つ堆積速度が0.5nm/mi
n以上の状態で、高次シランを含む原料気体を用いて非晶質半導体膜を堆積する工程と、
前記非晶質半導体膜を固相にて結晶化させ結晶性半導体膜を形成する工程と、前記
晶性半導体膜の膜厚方向表面側部分を溶融させた後に冷却固化させて、溶融されていない
多結晶半導体膜の膜厚方向基板側の膜部分を結晶源として溶融半導体膜の再結晶化を行う
工程と、を有することを特徴とする。
斯様な低温(430℃未満)で且つ比較的速い堆積速度で非晶質半導体膜を堆積すると、堆積により得られる非晶質膜を構成する非晶質粒が総じて大きくなり、斯くして此の非晶質膜を固相にて結晶化させた際に得られる固相成長多結晶膜の結晶粒を著しく増大することができる。大粒径の結晶粒から構成される多結晶膜は高い移動度の値を有し、此を活性層として用いて居る薄膜半導体装置は優れた性能を示す事と成る。
また、本発明の前記非晶質半導体膜は500℃程度から650℃程度の温度の熱処理で結晶化されてもよい。たとえば、前記非晶質半導体膜は550℃程度から600℃程度の温度の熱処理で結晶化される。さらに、前記非晶質半導体膜は酸化性雰囲気下にて結晶化されてもよい。
また、本発明の前記結晶性半導体膜の一部は光照射で溶融されてもよい。たとえば、前記光照射はレーザー光照射である。この前記レーザー光はエキシマレーザー光であってもよい。
本発明はガラスの歪点温度が630℃程度から750℃程度と云った低耐熱性ガラス基板、或いは単結晶硅素基板等の各種基板上に硅素膜(Si)や硅素ゲルマニウム膜(SixGe1-x:0<x<1)に代表される半導体物質を多結晶状態の半導体膜として形成する第一工程と、此の多結晶半導体膜の一部を溶融させた後に冷却固化過程を経て多結晶半導体膜の溶融再結晶化を進める第二工程とから構成される。
第一工程では基板上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する。半導体膜は硅素
をその主構成元素(硅素原子構成比が80%程度以上)として居る。基板としては単結晶
硅素等の半導体基板、或いは無アルカリガラスやセラミック等の絶縁性基板が用いられる
のが通常だが、基板の耐熱性が630℃程度以上有れば其の種類に囚われない。此等の基
板の表面には半導体膜に対する下地保護膜として、酸化硅素膜が100nm程度から10
μm程度堆積されて居るのが好ましい。下地保護膜としての酸化硅素膜は単に半導体膜と
基板との電気的絶縁性を取ったり、或いは基板が含有する不純物の半導体膜への拡散混入
を防ぐのみならず、下地酸化膜と結晶性半導体膜との界面を良質な物として居る。
本願発明では薄膜半導体装置の半導体膜は10nm程度から150nm程度の厚みを有し、半導体膜の膜厚方向全域に渡ってエネルギーバンドが曲がって居る場合(SOIの完全空乏化モデルに相当する)が考えられる。加えて本願発明に依る半導体膜では、半導体膜中に存在する捕獲準位が非常に少ない。斯様な状況下ではゲート絶縁膜と半導体膜との界面と共に、下地保護膜と半導体膜との界面も電気伝導に無視できぬ関与を及ぼす。酸化硅素膜は半導体膜と界面を成す際に界面捕獲準位を最も低減し得る物質で有るから、下地保護膜として適している訳で有る。半導体膜は此の下地保護膜上に形成される。従って下地保護膜としては半導体膜との界面に1012cm-2程度以下の界面準位を有する高品質な酸化硅素膜が望まれる。
更に本発明では、従来技術に比べて基板が500℃程度から650℃程度の温度に加熱されてる時間が長い。其れ故、基板から半導体層への不純物拡散が生じ易い。此を防ぎ、高純度の半導体膜を用いて優良なる薄膜半導体装置を本願発明にて作成するには、密度の高い稠密な酸化硅素膜を下地保護膜として使用するのが不可欠である。斯うする事で半導体膜中の不純物に起因する結晶核の発生を最小限に止め、最終的に得られる結晶化膜の平均結晶粒径を最大とし得るからで有る。
斯様な高品質で稠密な酸化硅素膜は、液温が25±5℃で濃度が1.6±0.2%の沸化水素(HF)酸水溶液に於けるエッチング速度が1.5nm/s以下となる物である。
通常、下地保護膜はプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、スパッター法と云った気相堆積法で形成される。此等の内でも、特に本願発明に適した下地保護膜を作成するには、PECVD法の中でも電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR−PECVD法)やヘリコンPECVD法、リモートPECVD法を利用する事で有る。
又、工業用周波数(13.56MHz)や其の整数倍の周波数を用いた汎用のPECVD法にて本願発明に適した酸化硅素膜を得るには、原料物質としてTEOS(Si−(O−CH2CH34)と酸素(O2)を使用し、酸素流量をTEOS流量の5倍以上に設定して酸化硅素膜を堆積すれば良い。或いは原料物質としてモノシラン(SiH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用い、希釈気体としてヘリウム(He)乃至はアルゴン(Ar)と云った希ガスを用いて、総気体流量中の希ガスの割合を90%程度以上(即ち総気体流量中の原料物質の割合を10%程度未満)として酸化硅素膜を堆積すれば良い。その際に基板温度は280℃以上で有る事が望まれる。基板が高純度の石英から成る時には下地保護膜と石英基板とが兼用される事も可能で有るが、表面状態を常に一定として半導体膜品質の変動を最小とするには、上述の方法にて下地保護膜を形成するのが好ましい。
此処に記述した方法で酸化硅素膜を堆積すれば、本願発明に適した下地保護膜と成り得る。しかしながら其の品質をより良くしたり、或いは通常の気相堆積法を利用し、且つ工程最高温度を600℃程度未満とした低温工程にて斯様な高品質酸化膜を形成するには、CVD法やPVD法と云った気相堆積法で酸化硅素膜を堆積した後、此の酸化硅素膜に第一熱処理を施せば良い。第一熱処理は処理温度が250℃程度から600℃程度の間の適当な温度で、30分から6時間程度に渡って行われる。此の処理は窒素や空気、或いはフォーミングガスと呼ばれる不活性気体(アルゴン等)と水素との混合気体など、いずれの雰囲気で行われ様とも、気相堆積法で作成された酸化硅素膜の品質を改善し得る。
しかしながら短時間で最も効果的に膜質改善を図るには、水蒸気を含有する雰囲気下にて第一熱処理が行われる事で有る。水蒸気濃度は露点で60℃程度から100℃程度が好ましく、更に雰囲気に酸素が添加されて居ればより効果的である。前述の水蒸気濃度で処理温度を300℃程度から450℃程度とした時に必要となる処理時間は凡そ3時間程度から30分程度で有る。
第一熱処理は温度と時間だけでも効果を示すので、此を真空中で行っても良い。例えば400℃程度から430℃程度の温度ならば、1時間半から1時間程度の熱処理時間でも酸化膜は改質される。従って最も簡便な酸化膜質改善方法は次工程の非晶質半導体膜堆積を低圧化学気相堆積法にて行い、半導体膜堆積直前に行われる基板の加熱乾燥処理と第一熱処理とを兼用させる事で有る。水蒸気を含む雰囲気下で熱処理を施した後に、より高い温度で真空中での熱処理を加えれば、酸化膜を改質した水分を真空熱処理に依り充分に取り除けられるので、第一熱処理としては最適と言える。
斯様に形成された下地保護膜上に半導体膜が化学気相堆積法(CVD法)で高次シラン(Sin2n+2:n=2,3,4)を原料気体の一種として堆積される。気相堆積法で形成された半導体膜は堆積直後には通常非晶質状態に有る。非晶質状態に有る薄膜は非晶質膜と呼ばれ、薄膜は多くの非晶質粒から、或いは非晶質粒と僅かな量の結晶粒から構成されて居る(M. Miyasaka, et al.: Jpn. J. Appl. Phys. vol.36 (1997) p.2049)。
本願発明では斯様にして得られた非晶質膜を第一工程で、固相にて結晶化して多結晶性半導体膜(固相成長多結晶膜)を得る。更に第二工程にて此の固相成長多結晶半導体膜の内で半導体膜の下部を除いた一部を溶融させ、溶融した半導体膜の冷却固化時に残留した下部を結晶源として半導体膜の再結晶化を進めて多結晶半導体膜(溶融結晶化膜)を得る。
非晶質膜を構成する非晶質粒が大きければ、此の非晶質膜から得られる固相成長多結晶膜を構成する結晶粒も大きく成る。固相成長多結晶膜を構成する結晶粒が大きければ、第二工程後に得られる溶融結晶化半導体膜を構成する結晶粒も大きく成り、斯くして結晶性薄膜半導体装置の高性能化が実現されるので有る。
本願発明では半導体膜形成の第一工程に先立ち、下地保護膜形成工程として、基板上に半導体膜に対する下地保護膜と成る酸化硅素膜を、気相堆積法等で形成する。更に此の下地保護膜形成工程が終了した後に、此の基板を洗浄する洗浄工程を設ける。洗浄工程は酸を含む水溶液を少なくとも含んでおり、酸の内でも弗化水素(HF)酸水溶液にて基板を洗浄する事が殊の他重要で有る。此の弗化水素酸水溶液に基板を浸す事は下地保護膜と成る酸化硅素膜の表層部を除去する事を意味する。
下地保護膜上の塵や埃は其の上に形成される半導体の純度を落とし、更には非晶質膜を堆積する時に非晶質核と成ったり、或いは非晶質膜を結晶成長させる時に結晶核とも成る。即ち、下地保護膜上の塵や埃の存在は最終的に得られる結晶性半導体膜の純度を落とすにのみならず、同時に非晶質膜の非晶質粒を小さくし、固相成長多結晶膜の結晶粒を小さくし、溶融結晶化膜の結晶粒を小さくし、結局薄膜半導体装置の性能を落とす事に繋がるので有る。従って優良な薄膜半導体装置を得る為には、半導体膜堆積前に基板を十分洗浄する必要が有る。此に依り純度が高く、結晶粒の大きい多結晶性半導体膜が後に得られる事と成る。
下地保護膜の付いた基板は石鹸等の界面活性剤を含む水溶液や酸を含む水溶液、或いはアルカリを含む水溶液、更にはエタノール等のアルコールやアセトン等のケトンなどの有機溶剤にて洗浄される。酸を含む水溶液としては硫酸(H2SO4)や塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、弗酸(HF)等の水溶液、或いは硫酸と過酸化水素水(H22)と純水(H2O)との混合液(以下本願明細書中では硫酸過水と略す)、塩酸と過酸化水素水と純水との混合液(塩酸過水と略す)、硝酸と過酸化水素水と純水との混合液(硝酸過水と略す)、硫酸と弗酸と純水(H2O)との混合液、塩酸と弗酸と純水との混合液、硝酸と弗酸と純水との混合液、アンモニアと弗酸と純水との混合液等が特に適して居る。アルカリを含む水溶液としてはアンモニア(NH3)水溶液や、アンモニアと過酸化水素水と純水との混合液(アンモニア過水と略す)が適して居る。半導体膜堆積前には此等の各種洗浄を適宜組み合わせ、最終的には純水で十分洗い流す必要が有る。ガラス基板の好ましい洗浄の一例としては次の方法が有る。
(1)有機溶剤洗浄工程
(1−1)アセトン等のケトン洗浄(有機物除去)
(0℃程度から30℃程度で1分程度から10分程度)
(1−2)エタノール等のアルコール洗浄(有機物除去)
(0℃程度から30℃程度で1分程度から10分程度)
(1−3)純水洗浄(ケトン、アルコール除去)
(0℃程度から30℃程度で1分程度から10分程度)
(2)アルカリ洗浄工程
(2−1)アンモニア過水洗浄(金属除去)
(50℃程度から100℃程度で1分程度から10分程度)
(2−2)純水洗浄(アンモニア除去)
(0℃程度から50℃程度で1分程度から10分程度)
(3)酸洗浄工程
(3−1)硫酸過水洗浄(金属除去)
(50℃程度から100℃程度で1分程度から10分程度)
(3−2)純水洗浄(硫酸除去)
(0℃程度から50℃程度で1分程度から10分程度)
(3−3)塩酸過水洗浄(金属除去)
(50℃程度から100℃程度で1分程度から10分程度)
(3−4)純水洗浄(塩酸除去)
(0℃程度から50℃程度で1分程度から10分程度)
(4)酸化硅素膜表層部除去工程
(4−1)弗酸水溶液洗浄(酸化膜表面除去及び酸化膜表面の水素終端化)
(0℃程度から30℃程度で1分程度から10分程度)
(4−2)純水洗浄(弗酸除去)
(0℃程度から30℃程度で1分程度から10分程度)
此の四工程から成る洗浄の内で最も重要なのは酸化硅素膜表層部除去工程の洗浄で有る。下地保護膜を成す酸化膜の表面層を除去すれば表面層に付着していた金属や塵等も自動的に取り除かれるからで有る。従って工程簡略化等の要請に依り半導体膜堆積前の洗浄工程を最少とさせたい時には、少なくとも酸化硅素膜表層部除去の洗浄だけは含まれる様に洗浄工程を設定すれば良い。但し、表層部除去に用いる洗浄液の寿命を長くして生産性を上げ、且つ下地保護膜上の不純物をより確実に除去するとの視点からは酸化硅素膜表層部除去工程の前にアルカリ洗浄乃至は酸洗浄を行うのが好ましい。
弗酸水溶液洗浄は下地酸化膜の表層部1nm程度から20nm程度が除去される様に行う。1nm程度以下では均一性の観点より洗浄効果が基板内で同一と成らず、20nm程度以上では下地酸化膜が薄い場合に下地酸化膜の不純物混入を防止する機能に障害が生ずる恐れが有るからで有る。
弗酸水溶液洗浄を半導体膜堆積直前に行う事は下地酸化膜表面を水素原子で終端する事を意味して居る。此の水素は比較的離脱が容易な為、半導体膜堆積工程の極初期にシランと化学反応を行い、結果として下地酸化膜と硅素膜との密着性を向上させる。加えて下地酸化膜と半導体膜との間の界面準位を減らす効果がある。
従って本願が示す様に能動層半導体膜の厚さが100nm程度未満で且つ半導体膜のエネルギーバンドが膜厚方向全体に渡って曲がって居る系(SOIの完全空乏化に相当する系)ではサブスレーシュホールド・スイングの改善や閾値電圧の低下、及びオフ電流の低減と云ったトランジスタ特性の改善が見られる。
斯様な効果が確実に達成されるには、酸化硅素膜表層部除去工程終了後直ちに(最長でも二時間程度以内に)、基板を第一工程が行われる気相堆積装置のロードロック室乃至は成膜室に設置するのが好ましい。
酸化硅素膜表層部除去の洗浄では上例の如く弗酸と純水の混合液(弗化水素酸水溶液)の他に弗酸水溶液とアンモニア等のアルカリ水溶液との混合液を用いても良い。此の混合液はガラスへの損傷を小さくするとの利点が有り、汎用無アルカリガラスを基板として用いる時の酸化硅素膜表層部除去の洗浄として最も適して居る。弗酸水溶液とアルカリ水溶液の混合液の一例としては弗化アンモン(NH4F)水溶液が考えられる。此等水溶液に於ける弗酸濃度は0.1%程度から10%程度を基本とする。
上述の洗浄と最後の純水に依る洗い流しが済んだ後に、下地保護膜上に非晶質半導体膜を堆積する。半導体膜堆積には各種気相堆積法が可能で有るが、高純度の半導体膜が容易に堆積されるとの立場からは、其の内でも特に低圧化学気相堆積法(LPCVD法)が適して居る。基板は純水に依る洗い流しが終了した後、基板に新たな塵や埃の付着を防ぐ為に、直ちに(長くとも二時間程度以内に)気相堆積装置内に設置されるべきで有る。
低圧化学気相堆積法は高真空型低圧化学気相堆積装置にて行われる。此は半導体膜の純度を高める事と、不純物に起因する非晶質核の発生を最小として、本願発明で最終的に得られる結晶性半導体膜を高純度で且つ大きな結晶粒から構成される様にする為で有る。高真空型とは非晶質半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10-7Torr程度以下とし得る装置で、具体的には成膜室への装置外部からの漏洩流量が、洗浄した基板からの最大脱ガス総流量(300mm×300mmのガラス基板17枚で最大脱ガス総流量は1×10-2(sccm)程度)の十分の一程度以下(先の例に則ると装置外部からの漏洩流量は1×10-3(sccm)程度以下)の気密性を有する装置で有る。装置成膜室の気密性は避け得ない基板からの脱ガスの最大流量の十分の一程度以下で有れば、仮令気密性に多少の変動が有ろうとも、総不純物流量(成膜室への装置外部からの漏洩流量と基板からの脱ガス流量との和)に対して著しい影響を及ぼさないからで有る。
斯様な高真空型低圧化学気相堆積装置は単に成膜室の気密性が優れて居るにのみならず、成膜室に於ける排気速度が100sccm/mTorr(不活性ガスを100sccm成膜室に流した時に得られる平衡圧力が1mTorrと成る排気速度)程度以上の排気能力を有して居る事が更に望まれる。斯うした高排気能力を有する装置では1時間程度の比較的短時間で、十分な洗浄を施された基板からの水等の脱ガス流量を装置の漏洩流量と同程度の水準迄低下せしめ、生産性を著しく高める事が可能と成るからで有る。
非晶質硅素膜に代表されるシリコンを主体とする半導体膜は高次シラン(Sin2n+2:nは2以上の整数)を原料気体の一種として堆積される。価格や安全性を考慮すると高次シランとしてはジシラン(Si26)が最も適している。
さて、高純度で高品質の半導体膜を堆積するには、低圧化学気相堆積装置に於ける装置外部からの漏洩流量(QL)の高次シラン流量(QSiH)に対する比(R=QL/QSiH)を10ppm程度以下(R≦10-5)とせねばならない。(先の漏洩流量が1×10-3(sccm)程度の例の場合、ジシラン流量は100sccm程度以上とする。)前述の如く、本願発明では高真空型低圧化学気相堆積装置を用いて基板からの脱ガス流量が外部からの漏洩流量(QL)程度以下に成ってから半導体膜の堆積を試みる。従って総不純物流量は外部からの漏洩流量(QL)と同程度の水準で有る。装置外部から成膜室へ漏洩する物質は主として空気で有る。空気中の80%を占める窒素は不活性で有るから、半導体品質に対して大きな問題は生じせしめず、不純物として問題と成るのは残りの20%を占める酸素で有る。
一方、成膜室に導入された高次シランの内で、実際に反応に関与して半導体膜に取り込まれる物は、成膜条件に依存して多少の変動は有るものの、大凡20%程度で有る。それ故、仮令成膜室内に存在する酸素等の不純物が総て半導体膜中に取り込まれるとの現実には有り得ぬ最悪の状況を想定しても、外部からの漏洩流量(QL)の高次シラン流量(QSiH)に対する比(R=QL/QSiH)を10ppm程度以下(R≦10-5)とすれば、堆積された半導体膜中の硅素原子に対する酸素原子等の不要な不純物の濃度は多くとも1017cm-3程度以下(実際は1016cm-3程度以下)と成り、高純度な半導体膜が得られるので有る。
高純度な多結晶半導体膜はそれを薄膜半導体装置の活性層(電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域やチャンネル形成領域、或いはバイポーラトランジスタのエミッター・ベース・コレクター領域)として用いた時に、半導体膜禁制帯中の捕獲準位を減らすと共に不純物元素に起因する移動度低下を最小限に押さえるとの効果を有する。
上述の諸条件に加え、更に本願発明では430℃程度未満との比較的低温で非晶質半導体膜の堆積を行う。この際に半導体膜の堆積速度が0.5nm/min程度以上と成る様に成膜室の圧力や高次シランの流量、或いは挿入基板枚数が設定される。
斯様な低温(430℃程度未満)で且つ比較的速い堆積速度をもって非晶質半導体膜を堆積すると、堆積により得られる非晶質膜を構成する非晶質粒が総じて大きくなり、斯くして此の非晶質膜を固相にて結晶化させた際に得られる固相成長多結晶膜の結晶粒は著しく増大するに到る。大粒径の結晶粒から構成される多結晶膜は高い移動度の値を有し、此を活性層として用いて居る薄膜半導体装置は優れた性能を示す事と成る。
此の説明から分かる様に高性能薄膜半導体装置を実現する上での一つの重要要件は非晶質膜の堆積条件に有る。430℃程度未満との低温で且つ0.5nm/min程度以上の堆積速度で非晶質半導体膜を堆積すると、非晶質粒の成長元と成る核(非晶質核)の発生速度が非晶質膜の成長速度に比べて遅く成り、それ故堆積非晶質膜を構成する非晶質粒が大きく成るので有る。
但し、半導体膜堆積の際に基板洗浄が不十分で有ると、基板上に付着した不純物が非晶質核として作用する為、非晶質粒は小さく成ってしまう。同様に気相堆積装置の機密度が不十分で有ると(例えばR=QL/QSiH>10-5)、外部から成膜室に漏洩した不純物気体が基板上に付着してやはり非晶質核と成ってしまい、結果として大粒径の非晶質粒からなる、優れた非晶質膜は得られない。
又、成膜室内での基板乾燥が不十分で有ると(この時には半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10-7Torr程度以下と成って居ない)、全く同じ原理で非晶質粒は小さく成る。高性能薄膜半導体装置を得る為には、基板に十分な洗浄(少なくとも表面酸化膜除去の洗浄工程)を施し、原料気体流量に対する機密度が十分で有る成膜装置(R=QL/QSiH≦10-5)を用いて、基板を成膜室で良く乾燥させた後(半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10-7Torr程度以下とした後)、ジシラン等の高次シランを原料気体として用いて430℃程度未満との堆積温度で且つ0.5nm/min程度以上の堆積速度で非晶質半導体膜を堆積する事が肝要なので有る。
この様にして非晶質半導体膜が得られた後に此の非晶質半導体膜を固相にて結晶化して、固相成長多結晶半導体膜を形成する。非晶質膜の結晶化は、非晶質膜を500℃程度から650℃程度の間の所定の温度で熱処理して進める事が好ましい。斯うした温度範囲に於ける固相結晶化では非晶質膜を構成する非晶質粒の大小と多結晶膜を構成する結晶粒の大小との相関が窮めて強いからで有る。換言すれば大きい非晶質粒から成る非晶質膜を上述の温度範囲の熱処理で固相にて結晶化すると、大きい結晶粒から成る固相成長多結晶膜が得られるので有る。
結晶化を行う際の熱処理温度はそれが低い程結晶核の生成が押さえられるのでより大きな結晶粒から成る多結晶膜が得られるが、それに応じて結晶化が完了する時間も長く成る。熱処理温度は500℃程度から650℃程度の間で出来る限り低い温度、理想的には550℃程度から600℃程度の間の所定の温度に設定される。
固相結晶化は酸素10ppm程度から100%程度迄含有した酸化性雰囲気下で進められるのが好ましい。こうする事に依り固相成長時に半導体膜表面に薄い酸化膜が形成される事に成る。酸化膜の形成は半導体原子との格子不整合をもたらし、結晶成長時に半導体膜に対して強い応力を及ぼす事と成る。
此の強い応力は半導体原子の移動を促進し、其の結果、固相成長多結晶膜に固有な積層欠陥や相晶欠陥を減少させる事に成るからで有る。換言すれば最終的に得られる薄膜半導体装置の閾値電圧やサブスレーシュホールド電圧を下げ、良好なスイッチング特性を有する薄膜半導体装置が得られる事に成る。
こうして第一工程で固相成長多結晶性半導体膜が形成された後に、第二工程にて多結晶性半導体膜の少なくとも表面を溶融結晶化して、多結晶性半導体膜の再結晶化を行う。第一工程迄に得られた固相成長多結晶膜は、入念な基板洗浄や成膜条件の制御に依り、結晶粒径が2μm程度から8μm程度といったきわめて大きな結晶粒から構成されて居る。
しかるに此等の固相成長膜は結晶粒内部に積層欠陥や相晶欠陥と云った内部欠陥を膨大な量(1×1018cm-3程度)で含んで居る(図1-a)。そこで本願発明では第二工程として大きな結晶粒を維持した儘、此等の内部欠陥を減少させるので有る。
第二工程では固相成長多結晶膜にレーザー光等の光照射を行い、半導体膜の一部を溶融させる(図1-b)。この際、半導体膜の膜厚方向の全体を溶融させるのでは無く、下地保護膜との界面近傍の一部を元の固相成長多結晶膜として残留させる。すると冷却固化時に此の残留固相成長膜が結晶源と成り、元の固相成長多結晶膜の結晶粒径を維持した儘再結晶化が生ずる。
斯様にして再結晶化後の結晶粒径も最初と同じ2μm程度から8μm程度と大きく成るのである。一方、本願発明の固相成長膜の内部欠陥は基板と平行に走る成分が多く、しかもエネルギー的には結晶状態よりも高い為、図1-bの部分溶融状態を経る事で其れ等の大半を消失せしめる事が可能と成り、其の結果大粒径で内部欠陥の無い多結晶膜が得られる事に成る(図1-c)。膜厚方向に対する溶融部の割合は内部欠陥を消失させるとの観点からはなるべく大きい方が良い。但し、膜厚方向全体が溶融する完全溶融状態に陥ると固相成長膜の結晶粒径を維持できず、無作為に結晶核が発生して結晶粒径が著しく小さくなってしまう。従って残留固相成長多結晶膜の膜厚は半導体膜の厚みの2%程度から10%程度が好ましい。
図2(a)〜(d)はMOS型電界効果トランジスタを形成する薄膜半導体装置の製造工程を断面で示した図で有る。本実施例1では基板101としてガラスの歪点温度が650℃の無アルカリガラスを用いた。然るに此以外の基板で有っても、薄膜半導体装置製造工程中の最高温度に耐えられれば、その種類や大きさは無論問われない。
まず基板101上に下地保護膜102と成る酸化硅素膜を堆積する。基板が高濃度に不純物がドープされた単結晶硅素基板等の導伝性物質の場合や、セラミックス基板等で半導体膜に取って望ましからざる不純物を含んでいる場合、酸化硅素膜堆積前に酸化タンタル膜や窒化硅素膜等の第一の下地保護膜を堆積しても良い。本実施例1では基板101上にプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)で酸化硅素膜を200nm程度堆積し、下地保護膜102とした。酸化硅素膜はECR−PECVDにて以下の堆積条件で堆積された。
モノシラン(SiH4)流量・・・60sccm
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・2.40mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2250W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
成膜時間・・・40秒
此の酸化膜の、液温が25℃で濃度が1.67%の沸化水素酸水溶液に於けるエッチング速度は0.5nm/sで有った。酸化硅素膜が堆積した後に基板に第一熱処理を施した。空気中に水蒸気を露点で97℃含む雰囲気にて、350℃の処理温度で3時間の熱処理を行った。
次に下地保護膜堆積後、基板を次の手順で洗浄した。
(1)超音波照射に依るイソプロピルアルコール洗浄(27℃、5分間)
(2)窒素バブリングされた純水洗浄(27℃、5分間)
(3)アンモニア過水洗浄(80℃、5分間)
(4)窒素バブリングされた純水洗浄(27℃、5分間)
(5)硫酸過水洗浄(97℃、5分間)
(6)窒素バブリングされた純水洗浄(27℃、5分間)
(7)希釈弗酸水溶液(弗酸濃度1.67%)洗浄(27℃、20秒間)
(8)窒素バブリングされた純水洗浄(27℃、5分間)
上記7番目の希釈弗酸水溶液洗浄により、下地酸化膜の表層部が凡そ10nm除去されて居る。こうして洗浄された下地保護膜上に真性非晶質硅素膜をLPCVD法にて50nm程度の膜厚に堆積した。上記8番目の純水洗浄が終了してから基板がLPCVD装置の成膜室に設置される迄の時間は約25分間で有った。
LPCVD装置はホット・ウォール型で容積が184.5l有り、基板挿入後の反応総面積は約44000cm2で有る。成膜室に於ける最大排気速度は120sccm/mTorrで有る。堆積温度は425℃で、此の温度にて1時間15分間に渡る基板の加熱乾燥処理が施された。此の加熱乾燥処理は下地保護膜で有る酸化硅素膜を改質する第一熱処理の一部を兼ねて居る。加熱乾燥処理の最中、基板が設置された成膜室には純度が99.9999%以上のヘリウム(He)を200(sccm)と純度が99.9999%以上の水素(H2)を100(sccm)導入し、成膜室の圧力は約2.5mTorrに保たれた。乾燥処理後に成膜室を孤立させた際の成膜室内圧力上昇は9.4×10-6Torr/minで有ったから、成膜室への装置外部からの漏洩流量(QL)と基板からの脱ガス流量の和で有る総不純物漏洩流量(QTL)はボイル・シャルルの法則に則り、
TL(sccm)=273.15(K)/698.15(K)
×9.4×10-6(Torr/min)/760(Torr)
×184.5×103(cm3
=8.93×10-4(sccm)
で有る。原料ガスで有る純度99.99%以上のジシラン(Si26)は200sccmの流量で成膜室に供給されたから、総不純物漏洩流量(QTL)に対する高次シランの比(QTL/QSiH)は4.465×10-6と成る。従って、当然漏洩流量(QL)の高次シラン流量(QSiH)に対する比(R=QL/QSiH)は4.465ppm以下で有る。斯うした乾燥処理が終了した半導体膜堆積直前の成膜室背景真空度は、425℃に於ける温度平衡条件で2.3×10-7Torrで有った。非晶質硅素膜堆積時に於ける堆積圧力は凡そ1.1Torrで有り、此の条件下で硅素膜の堆積速度は0.77nm/minで有る。
次にこうして得られた非晶質半導体膜に熱処理を施して、非晶質膜を固相にて結晶化させた。熱処理は大気圧の窒素99%と酸素1%の混合気体雰囲気下にて、600℃の温度で24時間行われた。この熱処理に依り半導体膜は非晶質状態から多結晶状態へと改質される(第一工程終了)。
第二工程として固相成長多結晶膜にクリプトン・フッ素(KrF)のエキシマレーザー光を照射して溶融再結晶化行った。レーザー光は幅150μmで長さ30cmの線状に集光され、此の線状の光を各照射毎に10%づつ幅方向にずらして、基板上を走査した。レーザー光の照射エネルギー密度は320mJ・cm-2で有った。本実施例1にて使用したエキシマレーザーでは50nmの半導体膜の最表面のみを溶融させるエネルギー密度は180mJ・cm-2で有り、完全溶融させるエネルギー密度は330mJ・cm-2で有ったから、半導体膜の膜厚方向に対して約93%が溶融した事に成る。即ち、下地保護膜近傍の約7%が固相成長多結晶膜として残留し、冷却固化時の結晶源と成って居た。斯様にして得られた結晶性硅素膜をパターニング加工して半導体膜の島103を形成した。(図2−a)
次にパターニング加工された半導体膜の島103を被う様に酸化硅素膜104をECR−PECVD法にて形成した。此の酸化硅素膜は薄膜半導体装置のゲート絶縁膜として機能する。ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜堆積条件は堆積時間が24秒と短縮された事を除いて、下地保護膜の酸化硅素膜の堆積条件と同一で有る。但し、酸化硅素膜堆積の直前にはECR−PECVD装置内で基板に酸素プラズマを照射して、半導体の表面に低温プラズマ酸化膜を形成した。プラズマ酸化条件は次の通りで有る。
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・1.85mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2000W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
処理時間・・・24秒
プラズマ酸化に依り凡そ3.5nmの酸化膜が半導体表面に形成されて居る。酸素プラズマ照射が終了した後、真空を維持した侭連続で酸化膜を堆積した。従ってゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜はプラズマ酸化膜と気相堆積膜の二者から成り、その膜厚は125nmで有った。斯様にしてゲート絶縁膜堆積が完了した。(図2−b)
引き続いて金属薄膜に依りゲート電極105をスパッター法にて形成する。スパッター時の基板温度は150℃で有った。本実施例1では750nmの膜厚を有するα構造のタンタル(Ta)にてゲート電極を作成し、このゲート電極のシート抵抗は0.8Ω/□で有った。
次にゲート電極をマスクとして、ドナー又はアクセプターとなる不純物イオン106を打ち込み、ソース・ドレイン領域107とチャンネル形成領域108をゲート電極に対して自己整合的に作成する。
本実施例1ではCMOS薄膜半導体装置を作製した。NMOSトランジスタを作製する際にはPMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたフォスヒィン(PH3)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを7×1015cm-2の濃度でNMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。反対にPMOSトランジスタを作製する際にはNMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたジボラン(B26)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを5×1015cmー2の濃度でPMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。(図2−c)イオン打ち込み時の基板温度は300℃で有る。
次にPECVD法でTEOS(Si−(OCH2CH34)と酸素を原料気体として、基板温度300℃で層間絶縁膜109を堆積した。層間絶縁膜は二酸化硅素膜から成り、その膜厚は凡そ500nmで有った。層間絶縁膜堆積後、層間絶縁膜の焼き締めとソース・ドレイン領域に添加された不純物元素の活性化を兼ねて、窒素雰囲気下350℃にて2時間の熱処理を施した。最後にコンタクトホールを開穴し、スパッター法で基板温度を180℃としてアルミニウムを堆積し、配線110を作成して薄膜半導体装置が完成した。(図2−d)
この様にして作成した薄膜半導体装置の伝達特性を測定した。測定した薄膜半導体装置のチャンネル形成領域の長さ及び幅は其々10μmで、測定は室温にて行われた。NMOSトランジスタのVds=8Vに於ける飽和領域より求めた移動度は155.2cm2・Vー1・s-1で有り、閾値電圧は3.71V、サブスレーシュホールド・スイングは0.430Vで有った。又、PMOSトランジスタのVds=−8Vに於ける飽和領域より求めた移動度は69.1cm2・Vー1・s-1で有り、閾値電圧は−2.44V、サブスレーシュホールド・スイングは0.427Vで有った。此等の薄膜半導体装置は其の特性が基板内で殆ど変動が無く、高性能薄膜半導体装置が均一に製造されて居た。
ここに対して従来技術で非晶質硅素膜を堆積してKrFエキシマレーザーで結晶化した比較例ではNMOSトランジスタの移動度が44.4cm2・Vー1・s-1、閾値電圧が4.97V、サブスレーシュホールド・スイングが0.571Vで、PMOSトランジスタの移動度が25.4cm2・Vー1・s-1、閾値電圧が−4.89V、サブスレーシュホールド・スイングが0.609Vで有った。この例が示す様に本発明に依るとN型とP型の両薄膜半導体装置共に高移動度で且つ低閾値電圧を有し、急峻なサブスレーシュホールド特性を示す良好な薄膜半導体装置が汎用ガラス基板を使用し得る低温工程にて、簡便且つ容易に、又安定的に作成し出来るので有る。
(発明の効果)
以上詳述してきた様に、従来低品質で品質のばらつきが大きかった結晶性半導体膜を洗浄方法や成膜工程を工夫し、更に簡単な熱処理等を組み合わせる事にて均一で高品質な結晶性半導体膜へと本願発明は改質出来るので有る。これに依り薄膜トランジスタに代表される薄膜半導体装置の電気特性を著しく向上させ、同時に薄膜半導体装置の動作安定性をも高めるとの効果が認められる。又、従来は移動度が高ければ閾値電圧も高かったり、或いは逆に閾値電圧が低ければ移動度が小さいなどと、移動度と閾値電圧との両立が困難であったが、本願は容易に此の相反する両者の、著しい改善を可能ならしめるとの効果を有して居る。
本願発明の原理を説明した図。 本願発明の製造工程を説明した図。
符号の説明
101・・・基板
102・・・下地保護膜
103・・・半導体膜の島
104・・・酸化硅素膜
105・・・ゲート電極
106・・・不純物イオン
107・・・ソース・ドレイン領域
108・・・チャネル形成領域
109・・・層間絶縁膜
110・・・配線

Claims (11)

  1. 基板上に形成された半導体膜を能動層として用いる半導体装置の製造方法であって、
    低圧化学気相堆積法で堆積温度が430℃未満且つ堆積速度が0.5nm/min以上
    の状態で、高次シランを含む原料気体を用いて非晶質半導体膜を堆積する工程と、
    前記非晶質半導体膜を固相にて結晶化させ結晶性半導体膜を形成する工程と、
    前記結晶性半導体膜の膜厚方向表面側部分を溶融させた後に冷却固化させて、溶融さ
    れていない多結晶半導体膜の膜厚方向基板側の膜部分を結晶源として溶融半導体膜の再結
    晶化を行う工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記高次シランはSin2n+2(n=2,3,4)を満たすものであることを特徴とす
    る半導体装置の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記低圧化学気相堆積法は高真空型低圧化学気相堆積装置にて行われることを特徴とす
    る半導体装置の製造方法。
  4. 請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記高真空型低圧化学気相堆積装置の背景真空度が前記基板を設置してから前記非晶質
    半導体膜を堆積する前において5×10-7Torr以下であることを特徴とする半導体装
    置の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
    前記非晶質半導体膜の堆積は、前記低圧化学気相堆積装置における高次シラン流量に対
    する漏洩流量の比が10ppm以下の状態で行われることを特徴とする半導体装置の製造
    方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
    前記非晶質半導体膜は500℃程度から650℃程度の温度の熱処理で結晶化されるこ
    とを特徴とする半導体装置の製造方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
    前記非晶質半導体膜は550℃程度から600℃程度の温度の熱処理で結晶化されるこ
    とを特徴とする半導体装置の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
    前記非晶質半導体膜は酸化性雰囲気下にて結晶化されることを特徴とする半導体装置の
    製造方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
    前記結晶性半導体膜の一部は光照射で溶融されることを特徴とする半導体装置の製造方
    法。
  10. 請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記光照射はレーザー光照射であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  11. 請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
    前記レーザー光はエキシマレーザー光であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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