JP4289532B2 - レバー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用のシートリフター等に具備されて好適なレバー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のシートには、シートの高さを調節してステアリングに対する運転者の位置を適正にすることができる上記シートリフターが装備されている場合が多い。このシートリフターは、平行リンクやシザーズリンク等の昇降機構を介してシートをフロア上に支持し、昇降機構を作動させてシートを昇降させる構成が一般的である。昇降機構は、一般に、備えられた作動軸を回転させることにより作動するようになされており、その作動軸を回転させる操作手段として、従来ではダイヤルが広く採用されていた。このダイヤル式の操作手段は、作動軸に直結するギヤを直接回転させるので構成が簡素であるといった利点はあるものの、操作力が重く、使い勝手に劣るといった欠点があった。
【0003】
そこで、ダイヤル式に代えてレバー式の操作手段が広く採用されている。このレバー式は、レバーを上向きあるいは下向きに操作することにより、昇降機構の作動軸を回転させる構成となっている。例えば、米国特許5865285号では、中立位置に付勢されているレバーを操作すると、その入力動作がギヤを経て作動軸に伝わり、レバーを離すとレバーが中立位置に戻るレバー装置が提案されている。この場合のレバーの入力動作をギヤに伝える伝達部材は、レバーを上向きに操作した時のみギヤに噛み合うラッチと、レバーを下向きに操作した時のみギヤに噛み合うラッチで構成されている。これらラッチは一方向ラチェット構造であり、レバーの操作方向に応じて、ギヤに噛み合うラッチが切り換わるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許のレバー装置にあっては、レバーの入力動作をギヤに伝えるラッチとして、上昇側と下降側の2つを具備させる必要がある。このため、部品点数が多く、かつ、構造が複雑になりがちであり、これに伴って故障を招きやすいといった問題を有している。
よって本発明は、部品点数の低減とともに構造の簡素化が図られ、信頼性の高いレバー装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持部材と、この支持部材に回転自在に装着され、被操作部材に連結されるギヤと、このギヤの回転軸と同軸のレバー軸を中心に、少なくとも中立位置から正逆方向に所定角度回転自在に設けられたレバーと、このレバーを中立位置に復帰させるリターンスプリングと、レバーにラッチ軸を介して回転自在に支持され、レバーの回転をギヤに伝えて該ギヤにレバーの回転方向に応じた正転方向または逆転方向のトルクを発生させるラッチと、このラッチと支持体の間に介在し、支持体に設けられた前記回転軸と同心の上下方向に延びる弧状のガイド孔に移動可能な状態で係合することで、レバーを所定角度回転させた時点でガイド穴の端に接触し、ラッチを支持体に係合させる係合軸とを備え、ラッチが係合軸を介して支持体に係合した状態からさらにレバーを回転させることにより、ラッチが、係合軸を支点として、かつ、ラッチ軸を力点として回転させられ、ギヤに対するラッチの噛み合いがギヤを正転させる方向または逆転させる方向のいずれか一方に切り換わるようになされていることを特徴としている。
【0006】
本発明では、レバーの入力動作はラッチを介して被操作部材に連結されたギヤに伝わる。ラッチは、係合軸が支持体に係合することにより、レバーの回転方向に応じてギヤを正転させる方向と逆転させる方向のいずれかに切り換えられる。本発明によれば、1つのラッチでギヤの正転または逆転を切り換えることができるので、部品点数の低減とともに構造の簡素化が図られる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をシートリフターに適用した一実施形態を説明する。
A.レバー装置の構成
図1は一実施形態に係るレバー装置の分解斜視図、図2は図1に示すレバー装置を組み立てた状態の側面図、図3は図2の横断面図である。これら図に示すように、レバー装置は、ブラケット(支持部材)10、ギヤ20、レバー30、ラッチ40、リターンスプリング50およびスナップスプリング60とを備えている。図1〜図3の符合70は、レバー30装置の動作をシートリフターの昇降機構に伝達するスプリングブレーキである。
【0008】
図1に示すように、ブラケット10は、軸孔11を有するプレート部12の周縁に、図示せぬシートへの固定部である複数(この場合3つ)のフランジ部13が形成されたものである。プレート部12の一端側であって中央のフランジ部13の近傍には、ギヤ20側に突出する凸片14が形成されている。また、プレート部12には、軸孔11と同心の上下方向に延びる弧状のガイド孔15が形成されている。ブラケット10の軸孔11には、フランジ部13および凸片14が突出する側から、ギヤ20が回転自在に装着されている。
【0009】
ギヤ20は、山および谷のプロフィールが丸みを帯びた平ギヤであって、その軸心の一端側にボス(レバー軸)21が、また、他端側に、スプリング装着胴部22と、この胴部22よりも小径のギヤ軸(ギヤの回転軸)23が互いに同軸的に設けられている。ギヤ20は、ギヤ軸23が、ブラケット10の軸孔11に回転自在、かつ離脱不能な状態に嵌め込まれている。ギヤ20のスプリング装着胴部22には、リターンスプリング50が巻回されている。このリターンスプリング50はねじりコイルスプリングであり、図2に示すように、両端の腕部50a,50bがブラケット10の凸片14と、後述するレバー30の係合片35を挟んでいる。
【0010】
ギヤ20のボス21には、レバー30が回転自在に支持されている。レバー30は、鋼板等により成形された板状レバーであり、その長手方向中間部には、クランク状の屈曲部31が形成されている。レバー30には、図1〜図3で左側の端部である基端部に軸孔32が形成されており、さらに軸孔32に隣接してピン孔33が、また、屈曲部31よりも先端側(図1〜図3で右側)であって屈曲部31の近傍に、スプリング掛け孔34が形成されている。また、レバー30の基端には、ブラケット10側に折れ曲がった係合片35が形成されている。レバー30は、図2に示すように係合片35がリターンスプリング50の各腕部50a,50bの間で、かつ図3に示すようにブラケット10の凸片14とリターンスプリング50のコイル部分との間に配された状態で、軸孔32がギヤ20のボス21に回転自在に嵌め込まれている。なお、レバー30の先端部には、図示せぬグリップ部材が装着される。
【0011】
レバー30のピン孔33には、ブラケット10と反対側の方向から軸ピン(ラッチ軸)36が挿入され、この軸ピン36はレバー30に溶接等の手段により固定されている。そして、この軸ピン36におけるレバー30からブラケット10側への突出部分に、ラッチ40が回転自在に装着されている。
【0012】
ラッチ40は、図1に示すように、凹状周縁40aと凸状周縁40bとを有する略三日月状の対称形をなすものであって、中央にピン孔41が形成され、凸状周縁40bの中央には膨出部42が形成されている。ラッチ40の両端部は、先端が比較的尖鋭な三角形状の突起に形成されており、一端側(図1および図2で上側)が上昇側ラッチ部43、他端側(図1および図2で下側)が下降側ラッチ部44とされている。膨出部42には、軸ピン36と平行でブラケット10側に延びる係合ピン(係合軸)45の一端が固着されている。
【0013】
このラッチ40は、ピン孔41を前記軸ピン36に嵌め込むことにより、軸ピン36を支点としてレバー30に回転自在に装着されている。この装着状態で、係合ピン45は、図3に示すようにブラケット10のガイド孔15に挿入されている。また、レバー30のスプリング掛け孔34と係合ピン45とには、引っ張りスプリングであるスナップスプリング60が架け渡されている。なお、図4〜図9では、スナップスプリング60の図示を省略している。
【0014】
図1に示すように、スプリングブレーキ70は、スプライン軸である入力軸71と、駆動ギヤ72が設けられた出力軸73と、これら軸71,73の間に介在するブレーキ機構74とから構成されている。ブレーキ機構74は、出力軸73に回転トルクがかかると出力軸73を制動して回転させず、一方、入力軸71に回転トルクがかかると、制動を解除するとともに双方の軸71,73を接続して出力軸73を回転させる。すなわち、ブレーキ機構74により、入力軸71が回転するとその方向に出力軸73も回転するが、出力軸73を回転させようとしても回転せず入力軸71も当然回転しないようになっている。
【0015】
スプリングブレーキ70の入力軸71は、ギヤ20のボス21に形成された内歯24に嵌合され、ギヤ20の回転が入力軸71を介して出力軸73に伝達するようになっている。出力軸73の駆動ギヤ72には、図示せぬシートリフターの昇降機構を作動させる作動軸が連結され、図1の矢印A1方向に回転するとシートが上昇し、矢印B1方向に回転するとシートが下降するように設定されている。なお、図3では、出力軸73および駆動ギヤ72を省略している。
【0016】
B.レバー装置の動作
次に、上記レバー装置の動作を説明する。
レバー30は、ギヤ20のボス21を支点として上向きあるいは下向きに回転させることができるが、その回転させる力を解除すると、リターンスプリング50によりほぼ水平な中立位置に戻される。また、ラッチ40は、レバー30の操作に伴って上昇側ラッチ部43がギヤ20に噛み合うか、下降側ラッチ部44がギヤ20に噛み合うかのいずれかの状態となり、その状態は、スナップスプリング60により付勢される。図2は、レバー30が上向きに回転操作された後で、ラッチ40の上昇側ラッチ部43がギヤ20に噛み合っている状態を示している。また、図6は、レバー30が下向きに回転操作された後で、ラッチ40の下降側ラッチ部44がギヤ20に噛み合っている状態を示している。シートを上昇させるにはレバー30を上向きに回転させ、逆に下降させるにはレバー30を下向きに回転させるわけであるが、まず、図2の状態からシートを上昇させる際の動作を説明する。
【0017】
図2の状態から、手動でレバー30を矢印A2方向の上向きに回転させると、その回転トルクがラッチ40を介してギヤ20に伝わり、ギヤ20はレバー30と同方向(図1で矢印A3方向)に回転する。ギヤ20の回転は、スプリングブレーキ70の入力軸71から出力軸73、駆動ギヤ72に伝わり、シートが上昇する。レバー30のストロークは、図4に示すように、係合ピン45がブラケット10のガイド孔15の上端縁に当たる位置が最大となる。また、レバー30を上向きに回転させると、係合片35がリターンスプリング50の一方の腕部50aを押し下げることにより、レバー30を中立位置に戻す付勢力が発生する。
【0018】
レバー30をフルストロークまで操作した後にレバー30から手を離すと、リターンスプリング50によりレバー30は下向きに回転して中立位置に戻ろうとする。ここで、スナップスプリング60によってラッチ40の上昇側ラッチ部43がギヤ20に付勢され、これにより、上昇側ラッチ部43は、図5に示すように固定状態のギヤ20には噛み合わずギヤ20を乗り越えていくラチェット構造となっているので、レバー30は中立位置に戻ることができる。すなわち、図2の状態に戻る。以上の操作を繰り返し行うことにより、シートを所望の高さに調節することができる。なお、シート側の負荷はスプリングブレーキ70のブレーキ機構74によって入力軸71に伝わらないので、レバー30を離してギヤ20を保持する力を解除しても、ギヤ20は逆転しない。
【0019】
次に、ラッチ40の下降側ラッチ部44がギヤ20に噛み合っている図6の状態から、シートを上昇させる際の動作を説明する。図6の状態からレバー30を上向きに回転させる動作は、ラッチ40の下降側ラッチ部44がギヤ20を乗り越えていくことにより可能であり、やがて図7に示すように、係合ピン45がブラケット10のガイド孔15の上端縁に当たる。ここからさらにレバー30を上向きに回転させると(この動作はスナップスプリング60の力に抗して、となる)、ラッチ40が、係合ピン45を支点として、かつ、軸ピン36を力点として図8〜図9に示すように図中反時計方向に回転し、ラッチ40の上昇側ラッチ部43がギヤ20に噛み合う。また、この際にスナップスプリング60は、最大に伸びる思案点を過ぎてから元の状態に戻るスナップ作用により、上昇側ラッチ部43がギヤ20に噛み合う状態を付勢する位置に移動する。図8のレバー30の位置は、スナップスプリング60が最大に伸びた思案点の状態における位置を示している。
【0020】
このようにして、ギヤ20に対するラッチ40の噛み合いが上昇側ラッチ部43に切り換えられる。この後は、一旦レバー30を離してレバー30を中立位置に戻してから(これで図2の状態になる)、上記と同様のシートを上昇させる動作を行う。
【0021】
次に、図2の状態、すなわちシートを上昇させた後の状態から、シートを下降させる動作を説明する。図2の状態からレバー30を図中矢印B2方向の下向きに回転させる動作は、ラッチ40の上昇側ラッチ部43がギヤ20を乗り越えていくことにより可能であり、やがて係合ピン45がブラケット10のガイド孔15の下端縁に当たる。なお、レバー30を下向きに回転させると、係合片35がリターンスプリング50の他方の腕部50bを押し上げることにより、レバー30を中立位置に戻す付勢力が発生する。ここから、さらにスナップスプリング60の力に抗してレバー30を下向きに回転させると、ラッチ40が、係合ピン45を支点として、かつ、軸ピン36を力点として図2における時計方向に回転し、ラッチ40の下降側ラッチ部44がギヤ20に噛み合う。また、この際にスナップスプリング60は、最大に伸びる思案点を過ぎてから元の状態に戻るスナップ作用により、下降側ラッチ部44がギヤ20に噛み合う状態を付勢する位置に移動する。
【0022】
このようにして、ギヤ20に対するラッチ40の噛み合いが下降側ラッチ部44に切り換えられる。この後は、一旦レバー30を離して中立位置に戻してから、レバー30を下向きに回転させる操作を繰り返すことにより、ギヤ20は図1の矢印B3方向に回転し、上昇の際の逆の動作によってシートは下降する。
【0023】
上記実施形態では、レバー30の入力動作はラッチ40、ギヤ20を経て、シートリフターの昇降機構に連結されるスプリングブレーキ70の駆動ギヤ72に伝わる。そして、ギヤ20に対するラッチ40の噛み合いは、係合ピン45がブラケット10のガイド孔15の上端縁あるいは下端縁に係合した状態からさらにレバー30を操作することにより、レバー30の回転方向に応じて、ギヤ20を正転させる方向または逆転させる方向のいずれかに切り換えられる。本実施形態によれば、1つのラッチ40でギヤ20の正転または逆転を切り換えることができるので、部品点数を比較的低減させることができるとともに、構造の簡素化が図られる。したがって、故障しにくく、高い信頼性が発揮される。
【0024】
なお、本発明のレバー装置は、上記シートリフターのみならず、レバーの操作方向に応じて作動方向を切り換える各種機構に対して好適に採用することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、1つのラッチにより作動方向の切り換えがなされるので、部品点数の低減とともに構造の簡素化が図られ、その結果、高い信頼性を得ることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の分解斜視図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、レバーが中立位置にあり、かつラッチの上昇側ラッチ部がギヤに噛み合っている状態を示している。
【図3】 本発明の一実施形態のレバー装置の横断面図である。
【図4】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、図2の状態からレバーが上向きにフルストローク操作された状態を示している。
【図5】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、図4の状態からレバーを離してレバーが中立位置に戻りつつある状態を示している。
【図6】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、レバーが中立位置にあり、かつラッチの下降側ラッチ部がギヤに噛み合っている状態を示している。
【図7】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、図6の状態からレバーを上向きに操作した状態を示している。
【図8】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、図7の状態からさらにレバーを上向きに操作した状態を示している。
【図9】 本発明の一実施形態に係るレバー装置の側面図であって、図8の状態からさらにレバーを上向きに操作してレバーがフルストロークになった状態を示している。
【符号の説明】
10…ブラケット(支持部材)、20…ギヤ、21…ボス(レバー軸)、
23…ギヤ軸(ギヤの回転軸)、30…レバー、36…軸ピン(ラッチ軸)、
40…ラッチ、43…上昇側ラッチ部、44…下降側ラッチ部、
45…係合ピン(係合軸)、50…リターンスプリング。

Claims (1)

  1. 支持部材と、
    この支持部材に回転自在に装着され、被操作部材に連結されるギヤと、
    このギヤの回転軸と同軸のレバー軸を中心に、少なくとも中立位置から正逆方向に所定角度回転自在に設けられたレバーと、
    このレバーを中立位置に復帰させるリターンスプリングと、
    前記レバーにラッチ軸を介して回転自在に支持され、レバーの回転を前記ギヤに伝えて該ギヤにレバーの回転方向に応じた正転方向または逆転方向のトルクを発生させるラッチと、
    このラッチと前記支持体の間に介在し、前記支持体に設けられた前記回転軸と同心の上下方向に延びる弧状のガイド孔に移動可能な状態で係合することで、前記レバーを所定角度回転させた時点で前記ガイド穴の端に接触し、前記ラッチを前記支持体に係合させる係合軸とを備え、
    前記ラッチが前記係合軸を介して前記支持体に係合した状態からさらに前記レバーを回転させることにより、ラッチが、係合軸を支点として、かつ、前記ラッチ軸を力点として回転させられ、前記ギヤに対するラッチの噛み合いがギヤを正転させる方向または逆転させる方向のいずれか一方に切り換わるようになされていることを特徴とするレバー装置。
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