JP4283928B2 - 燃料電池の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質層の一方の面に酸素極を備え且つ他方の面に燃料極を備えた複数のセルが、電気的に直列接続される状態で設けられ、
酸素含有ガスを前記酸素極に供給し、水素含有ガスを前記燃料極に供給して発電する燃料電池の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる燃料電池では、酸素極に供給する酸素含有ガスとしては、通常、空気を用いる。
空気中には、酸素極を構成する電極材に担持されている電極触媒に吸着されて、燃料電池の性能を劣化させる劣化原因ガス(例えば、二酸化窒素ガス)が含まれている。
そこで、従来では、空気中の劣化原因ガスを除去するガス処理装置を設けて、そのガス処理装置により劣化原因ガスを除去した空気を酸素極に供給することにより、性能劣化を防止していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の運転方法では、ガス処理装置を設置する必要があることから、燃料電池の価格が高くなるとともに、燃料電池が大型になるという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス処理装置の設置を不要にして燃料電池を低価格化並びに小型化するために、劣化原因ガスによる劣化を回復することができる燃料電池の運転方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1記載の発明〕
〔構成〕 請求項1に記載の発明の特徴構成は、前記酸素極への酸素含有ガスの供給を停止し、前記酸素極に水素を存在させて前記酸素極の劣化を回復する劣化回復処理を、
前記燃料極に水素含有ガスを供給し、前記酸素極に対する酸素含有ガスの供給を停止し、且つ、前記セルに発電状態と同じ向きの電流を流すことにより、前記酸素極で水素を発生させることにより行うことにある。
〔作用〕 請求項1に記載の特徴構成によれば、劣化回復処理を行うと、酸素極に水素が存在して、その水素の還元作用により、酸素極の電極触媒に吸着されている劣化原因ガスが還元されて、電極触媒から離脱するので、劣化が回復する。例えば、劣化原因ガスが二酸化窒素の場合、電極触媒に吸着されている二酸化窒素は、電極触媒に対する吸着力が弱い一酸化窒素又は窒素に還元されて、電極触媒から離脱する。
又、請求項1に記載の特徴構成によれば、燃料極に水素含有ガスを供給し、酸素極に対する酸素含有ガスの供給を停止し、且つ、セルに発電状態と同じ向きの電流を流す状態にすると、セルの電圧は発電状態における電圧とは逆極性になり、燃料極に供給された水素含有ガス中の水素はイオン化して、電解質層を酸素極へ移動して、酸素極で水素が発生する。そして、そのように酸素極に発生した水素により、劣化回復処理が行われる。
さらに、請求項1に記載の特徴構成によれば、電解質層として高分子膜を備えたセルが設けられている、所謂、高分子型燃料電池において、ガス処理装置を設けずに、劣化原因ガスが含まれたままの空気を酸素極に供給して燃料電池を運転し、劣化原因ガスにより性能が劣化すると、適宜に本発明による劣化回復処理を実行して、劣化を回復させる。
〔効果〕 従って、劣化原因ガスによる劣化を回復することができる燃料電池の運転方法を提供することができるようになったので、ガス処理装置を設けずに、劣化原因ガスが含まれたままの空気を酸素極に供給して燃料電池を運転しても、劣化原因ガスにより性能が劣化すると、適宜に劣化回復処理を実行して、劣化を回復することができる。
その結果、ガス処理装置の設置が不要となり、燃料電池を低価格化並びに小型化することができるようになった。
又、請求項1に記載の特徴構成によれば、酸素極で発生した水素は還元力が強いので、短時間で劣化を回復することができ、劣化回復処理に要する処理時間を短縮することができるようになった。
さらに、請求項1に記載の特徴構成によれば、高分子型燃料電池は、動作温度が例えば120°C以下と低いため、特に、劣化原因ガスの吸着による劣化を起こし易いため、従来では、ガス処理装置を設置するにしても特に高度に劣化原因ガスを除去できるものを設置する必要があったので、価格が高くなるという問題が特に顕著となっていた。
そこで、高分子型燃料電池において、本発明による燃料電池の運転方法を実施して劣化を回復するようにして、ガス処理装置を設置しないようにすることにより、低価格化の面での効果を特に顕著なものとすることができるようになった。
【0007】
〔請求項2記載の発明〕 請求項2に記載の発明の特徴構成は、前記複数のセルが複数のブロックに区分され、
各ブロック毎に、ブロックに属する前記セルに対する酸素含有ガスの供給及び停止が可能なように構成され、
前記複数のブロックのうち、一部のブロックは、酸素含有ガスの供給を継続して発電状態に維持した状態で、その発電した電流を残部のブロックに対して発電状態と同じ向きで流れるようにし、その残部のブロックに対して、酸素含有ガスの供給を停止して前記劣化回復処理を施すことにある。
〔作用〕 請求項2に記載の特徴構成によれば、複数のブロックのうち、一部のブロックは、酸素含有ガスの供給を継続して発電状態に維持した状態で、残部のブロックに対して、酸素含有ガスの供給を停止する。すると、発電状態のブロックで発電されて流れる電流は、酸素含有ガスの供給が停止されているブロックに流れ、その酸素含有ガスの供給が停止されているブロックに属するセルの電圧は発電状態における電圧とは逆極性になって、そのブロックに属するセルにおいては、酸素極に水素が発生して、劣化回復処理が行われる。
〔効果〕 従って、燃料電池の運転中においても、適宜、所定のブロックに対する酸素含有ガスに供給を停止することにより、そのブロックに対して劣化回復処理を施すことができるので、劣化回復処理を行うために燃料電池の運転を停止させることが不要となり、使い勝手を向上することができ、又、セルの電圧を逆極性にするために必要となる外部電流電源が不要になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
以下、図1ないし図6に基づいて、本発明の第1の実施の形態を説明する。
先ず、本発明の運転方法を実施する燃料電池について説明する。
燃料電池は、図1ないし図5に示すように、電解質層1の一方の面に酸素極2を備え且つ他方の面に燃料極3を備えた複数のセルCを、電気的に直列接続する状態で設け、酸素含有ガスを酸素極2に供給し、水素含有ガスを燃料極3に供給して発電するように構成してある。
セルCについて説明を加えると、セルCは、電解質層1の一方の面に酸素極2及び集電板4を配置し、且つ、他方の面に燃料極3及び集電板4を配置した状態で一体化して構成してある。
そして、そのようなセルCの複数を、互いの間に酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6を位置させた状態で積層状態に並置し、並びに、積層方向の両端部夫々に電力取り出し用の集電部7を設けて、セルスタックNCを構成してある。
酸素極側セパレータ5は、酸素極2側の面に、酸素含有ガスを通流させる酸素含有ガス通流溝5sを形成し、反対側の面に、冷却水を通流させる冷却水通流溝5wを形成してある。
燃料極側セパレータ6は、燃料極3側の面に水素含有ガスを通流させる水素含有ガス通流溝6fを形成し、反対側の面に、酸素極側セパレータ5の冷却水通流溝5wと面対称となる冷却水通流溝6wを形成してある。
【0012】
更に、電解質層1、酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6の夫々には、それらを重ねたときに夫々が積層方向に連なる状態で、厚さ方向に貫通する6個の孔1h,5h,6hを形成してある。積層方向視において、電解質層1、酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6の夫々に形成する6個の孔1h,5h,6hのうち、2個は酸素含有ガス通流溝5sの通流経路の両端部に各別に重なり、別の2個は水素含有ガス通流溝6fの通流経路の両端部に各別に重なり、残りの2個は冷却水通流溝5w,6wの通流経路の両端部に各別に重なる。
【0013】
従って、セルスタックNCには、電解質層1、酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6夫々の孔1h,5h,6hが積層方向に連なって形成される通路が6本形成されるが、それらのうちの2本は、各酸素含有ガス通流溝5sの両端部に各別に連通し、別の2本は、各水素含有ガス通流溝6sの両端部に各別に連通し、残りの2本は、各冷却水通流溝5w,6wの両端部に各別に連通している。
【0014】
更に、図5に示すように、セルスタックNCの積層方向の一端部には、各酸素含有ガス通流溝5sの端部に連通する2本の前記通路のうちの1本、各水素含有ガス通流溝6sの端部に連通する2本の前記通路のうちの1本、及び、各冷却水通流溝5w,6wの端部に連通する2本の前記通路のうちの1本に各別に連通する3個の筒状の接続部8を備えた端板9を設け、セルスタックNCの積層方向の他端部には、各酸素含有ガス通流溝5sの端部に連通する2本の前記通路のうちの他の1本、各水素含有ガス通流溝6sの端部に連通する2本の前記通路のうちの他の1本、及び、各冷却水通流溝5w,6wの端部に連通する2本の前記通路のうちの他の1本に各別に連通する3個の筒状の接続部8を備えた端板9を設けてある。
尚、端版9に設けた3個の接続部8は、酸素含有ガス用、水素含有ガス用及び冷却水用夫々を区別するために、酸素含有ガス用のものにsを、水素含有ガス用のものにfを、並びに、冷却水用のものにwを夫々付す。
【0015】
一方の端板9の酸素含有ガス供給用の接続部8sに酸素含有ガス供給路10を、水素含有ガス供給用の接続部8fに水素含有ガス供給路11を、冷却水供給用の接続部8wに冷却水供給路12を夫々接続し、一対の集電部7に発電電力を消費する外部負荷Rを接続する。
そして、酸素含有ガス供給路10を通じて酸素含有ガスを、水素含有ガス供給路11を通じて水素含有ガスと水蒸気との混合ガスを、並びに、冷却水供給路12を通じて冷却水を夫々供給すると、各セルCに対応する酸素含有ガス通流溝5sを酸素含有ガスが通流し、各セルCに対応する水素含有ガス通流溝6fを水素含有ガスと水蒸気との混合ガスが通流し、各セルCに対応する冷却水通流溝5w,6wを冷却水が通流する。
そして、各セルCにおいて、水素含有ガス通流溝6fを通流する水蒸気により高分子膜1が湿らされる状態で、酸素含有ガス中の酸素と水素含有ガス中の水素の電気化学反応により発電される。又、冷却水の通流により、各セルCの温度が所定の温度に維持される。
【0016】
電解質層1は、フッ素樹脂系のイオン交換膜(ナフィオン等)から形成し、酸素極2及び燃料極3は、白金等の電極触媒を担持したカーボンから成る多孔状の導電材から形成し、酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6は、カーボン等から成る気密性の導電材により形成してある。
【0017】
次に、図6に基づいて、上記の如き構成の燃料電池において、酸素極2に水素を存在させて劣化を回復する劣化回復処理を行う運転装置(以下、単に運転装置と称する場合がある)について説明を加える。
運転装置は、端板9における水素含有ガス供給用の接続部8fに接続する水素含有ガス供給部Sfと、一対の集電部7に接続した導電路13と、その導電路13に介装したスイッチ14及び直流電力供給用の外部電源15を備えて構成してある。
【0018】
水素含有ガス供給部Sfは、水素含有ガス供給路11、その水素含有ガス供給路11に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給源16、水素含有ガス供給路11を通流する水素含有ガスに水蒸気を混合する加湿部17 、及び、水素含有ガス供給路11に介装した水素含有ガス用開閉弁Va1及び水素含有ガス用比例弁Vp1を備えて構成してある。
【0019】
加湿部17は、気密状のケーシング17c内に、気相部分が形成される状態で水を貯留して構成し、その加湿部17を、水素含有ガス供給路11の上流側の開口端が液相部分に位置し、下流側の開口端が気相部分に位置する状態で、水素含有ガス供給路11の途中に介装してある。つまり、水素含有ガス供給路11の上流側の開口端から水素含有ガスを水中に噴出し、気相部分に存在している水蒸気を含んだ水素含有ガスを、水素含有ガス供給路11の下流側の開口端に流入させることにより、水素含有ガス供給路11を通流する水素含有ガスに水蒸気を混合するように構成してある。
外部電源15は、例えば二次電池にて構成することができる。
【0020】
尚、図6中のSsは、通常の運転用として元々設けてある酸素含有ガス供給部であり、同じく、Swは、通常の運転用として元々設けてある冷却水供給部である。
酸素含有ガス供給部Ssは、端板9における酸素含有ガス供給用の接続部8sに接続する酸素含有ガス供給路10と、その酸素含有ガス供給路10に酸素含有ガスとして空気を供給する送風機19と、酸素含有ガス供給路10に介装した酸素含有ガス用開閉弁Va2及び酸素含有ガス用比例弁Vp2等を備えて構成してある。
冷却水供給部Swは、冷却水供給用の接続部8wに接続する冷却水供給路12と、その冷却水供給路12に冷却水を供給する冷却水用ポンプ18等を備えて構成してある。
尚、水素含有ガス供給部Sfは、通常の運転用として元々設けているものを兼用している。
【0021】
次に、上記のように構成した運転装置を用いて劣化回復処理を行う運転方法について説明する。
酸素含有ガス用開閉弁Va2を閉じて、各セルCに対する酸素含有ガスの供給を遮断する。そして、水素含有ガス用開閉弁Va1を開くとともに、水素利用率が70%程度になるように比例弁Vp1により水素含有ガス供給量を調節し、並びに、スイッチ14を閉じて、各セルCを通常の運転時と同一方向で同一値の電流が流れるように、外部電源15を調節する。
従って、各セルCの燃料極3に水素含有ガスを供給し、各セルCの酸素極2に対する酸素含有ガスの供給を停止し、且つ、各セルCに発電状態と同じ向きの電流を流す状態となり、各セルCの酸素極2で水素が発生して、劣化回復処理が行われる。
【0022】
次に、図12に基づいて、劣化回復処理を行うことにより劣化が回復される状態を評価するための評価用の運転装置について説明する。尚、この評価用の運転装置は,本第1実施形態における劣化回復処理だけでなく、後述する第3及び第4実施形態における劣化回復処理も行えるように構成してある。
運転装置は、評価対象のセルスタックNCの端板9における水素含有ガス供給用の接続部8fに接続する水素含有ガス供給部Sfと、酸素含有ガス供給用の接続部8sに接続する酸素含有ガス供給部Ssと、冷却水供給用の接続部8wに接続する冷却水供給部Swと、一対の集電部7に接続した導電路13と、その導電路13に介装したスイッチ14等を備えて構成してある。
評価対象のセルスタックNCは、評価対象の1個のセルCを用いて、上述と同様の構成にて形成してある。
水素含有ガス供給部Sf、酸素含有ガス供給部Ss及び冷却水供給部Sw夫々は、上述と同様に構成してある。尚、水素含有ガス供給源16は、水素ガスを充填したボンベにて構成し、水素含有ガスとして純水素ガスを供給するように構成してある。
【0023】
更に、水素含有ガス供給路11から分岐させた分岐路11bを酸素含有ガス供給用の接続部8sに接続するとともに、その分岐路11bに分岐路用開閉弁Va4を介装してあり、その分岐路用開閉弁Va4を開くことにより、セルCの酸素極2に水素含有ガスを供給することができるようにしてある。
【0024】
又、酸素含有ガス供給路10にバイパス路10bを接続し、そのバイパス路10bに、加湿器17を、水素含有ガス供給路11に介装するのと同様の構成で介装し、並びに、バイパス路10bにバイパス路用開閉弁Va5を、酸素含有ガス供給路10においてバイパス路10bにて迂回される部分に本路用開閉弁Va6を夫々介装して、バイパス路用開閉弁Va5及び本路用開閉弁Va6の開閉操作により、酸素極2に供給する空気に水蒸気を混合させるか否かを切り換え自在にしてある。
【0025】
又、酸素含有ガス供給路10において、加湿器17よりも下流側に、二酸化窒素供給部Snを接続して、セルCの酸素極2に供給する空気に二酸化窒素ガスを混合させることができるように構成してある。二酸化窒素供給部Snは、酸素含有ガス供給路10に接続した二酸化窒素ガス供給路20と、その二酸化窒素ガス供給路20に二酸化窒素ガスを供給する二酸化窒素ガス供給源21と、二酸化窒素ガス供給路20に介装した二酸化窒素用開閉弁Va3及び二酸化窒素用比例弁Vp3を備えて構成してある。二酸化窒素ガス供給源21には、所定の濃度に二酸化窒素ガスを混合した空気を充填してある。
又、導電路13には、セルCの発電を停止した状態でセルCに外部から電流を流すための外部電源15、又は、発電状態において、セルCを流れる電流を調節する負荷調節装置22のいずれかを適宜接続する。
【0026】
次に、上述の評価用の運転装置を用いた運転方法について説明する。
先ず、導電路13に負荷調節装置22を接続して、スイッチ14を閉じ、並びに、水素含有ガス用開閉弁Va1、酸素含有ガス用開閉弁Va2及びバイパス路用開閉弁Va5を開状態とし、本路用開閉弁Va6、二酸化窒素ガス用開閉弁Va3及び分岐路用開閉弁Va4を閉状態にする。従って、セルCの酸素極2に空気と水蒸気との混合ガスが供給され、燃料極3に水素ガスと水蒸気との混合ガスが供給されて、セルCが発電状態となる。
この場合、酸素含有ガス用比例弁Vp2を空気利用率が30%になるように調節し、水素含有ガス用比例弁Vp1を水素利用率が70%になるように調節し、負荷調節装置22をセルCの電流密度が300mA/cm2 になるように調節し、セルCの温度が70°C程度になるように冷却水用ポンプ18を調節する。
この時のセルCの発電電圧は、628mVであった。
【0027】
続いて、下記のように運転状態を切り換えるが、以下の説明では、各開閉弁の調節については、開閉状態を切り換えるもののみについて説明する。
【0028】
続いて、二酸化窒素用開閉弁Va3を開状態に切り換えて、酸素極2に供給する空気に劣化原因ガスとして二酸化窒素ガスを強制的に含有させて、セルCを発電させ、セルCを強制的に劣化させる。この場合、二酸化窒素ガスの濃度が1ppmになるように二酸化窒素用比例弁Vp3を調節する。
上記の状態を約24時間継続すると、セルCの電圧は564mVにまで低下した。
【0029】
続いて、二酸化窒素用開閉弁Va3を閉状態に切り換えて、通常の発電状態を100時間程度継続しても、セルCの電圧は555mVであり、劣化が回復しないことが分かる。
続いて、導電路13に外部電源15を接続するとともに、酸素含有ガス用開閉弁Va2を閉状態に切り換えて酸素極2への空気の供給を遮断し、セルCを上記の発電状態と同一方向で同一値の電流が流れるように、外部電源15を調節する。この時のセルCの電圧は、−34mVになった。この状態を所定の時間(例えば、10分間程度)維持する。
【0030】
続いて、導電路13に負荷調節装置22を接続するとともに、酸素含有ガス用開閉弁Va2を開状態に切り換えて、通常の発電状態とし、負荷調節装置22をセルCの電流密度が300mA/cm2 になるように調節する。この状態にした直後のセルCの電圧は623mVであり、劣化が回復したことが分かる。この状態を100時間継続しても、セルCの電圧は620mVであり、劣化回復状態が維持されていることが分かる。
【0031】
〔第2実施形態〕
以下、図7ないし図9に基づいて、本発明の第2の実施の形態を説明する。
第2実施形態においては、セルスタックNCは、複数のブロックBに区分し、各ブロックB毎に、ブロックBに属するセルCの酸素極2に対する酸素含有ガスの供給及び停止が可能なように構成してある。
具体的には、ブロックB間において、酸素極側セパレータ5と燃料極側セパレータ6との間に位置させて、一方側のブロックBに対して酸素含有ガスを供給し、他方側のブロックBから酸素含有ガスを排出させるように構成した区画部材23を設けて、複数のブロックBに区分してある。
【0032】
図7及び図8に示すように、区画部材23には、一方側のブロックBにおける酸素含有ガス通流溝5sの一方の端部に連通する通路に連通する孔23mと、他方側のブロックBにおける酸素含有ガス通流溝5sの他方の端部に連通する通路に連通する孔23nを形成してある。一方の孔23mは、区画部材23の一方の面に開口し、且つ、端面に開口するように屈曲状に形成し、他方の孔23nは、区画部材23の他方の面に開口し、且つ、端面に開口するように屈曲状に形成してある。
各区画部材23の一方の孔23mには筒状の供給用の接続部24を連通接続し、他方の孔23nには筒状の排出用の接続部25を連通接続してある。
【0033】
そして、酸素含有ガス供給路10を、一方の端板9の酸素含有ガス供給用の接続部8s、各区画部材23の供給用の接続部24の夫々に並列接続するとともに、各酸素含有ガス供給路10に酸素含有ガス用開閉弁Va2を介装して、各酸素含有ガス用開閉弁Va2の開閉操作により、ブロックB毎に酸素含有ガスの供給及び停止が可能なように構成してある。
【0034】
次に、図9に基づいて、上記の如き構成の燃料電池において、酸素極2に水素を存在させて劣化を回復する劣化回復処理を行う運転装置について説明を加える。
運転装置は、酸素含有ガス供給路10を、一方の端板9の酸素含有ガス供給用の接続部8s、各区画部材23の供給用の接続部24の夫々に並列接続するとともに、各酸素含有ガス供給路10に酸素含有ガス用開閉弁Va2を介装した点、及び、導電路13に負荷調節装置22を接続した点以外は、上記の第1実施形態と同様に構成してある。
【0035】
次に、上記のように構成した運転装置を用いて劣化回復処理を行う運転方法について説明する。
複数のブロックBのうち、一部のブロックBの酸素含有ガス用開閉弁Va2を開き、残りのブロックBの酸素含有ガス用開閉弁Va2を閉じ、並びに、水素含有ガス用開閉弁Va1を開く。
従って、セルスタックNCを構成する複数のブロックBのうち、一部のブロックBは、酸素含有ガスを供給して発電状態に維持した状態で、残部のブロックBは、酸素含有ガスの供給を停止することになる。この場合、通常の発電状態と同様に電流が流れるように、負荷調節装置22を調節する。
すると、発電状態のブロックBで発電されて流れる電流は、酸素含有ガスの供給が停止されているブロックBにも流れるので、そのブロックBに属するセルCにおいては、酸素極2に水素が発生して、劣化回復処理が行われる。
【0044】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 上記の第1の実施形態における劣化回復処理において、外部電源15によりセルCに流す電流は、通常の運転時と同一方向であれば、電流値は適宜変更可能である。
又、第2実施形態における劣化回復処理においても、負荷調節装置22により調節する電流値は適宜変更可能である。
【0046】
(ロ) 上記の各実施形態において、水素含有ガスとは、水素ガスを主成分とするガスであり、純水素ガスに限定されるものではなく、例えば、炭化水素系のガスを水蒸気を用いて改質した改質ガスでも良い。水素含有ガスには、酸素ガスは含まれていないが、セルCにおける発電反応に影響を与えない程度の微量の酸素ガスを含んでいても良い。
【0047】
(ハ) 上記の各実施形態において、劣化回復処理を行うときのセルCの温度は、適宜変更可能である。
【0048】
(二) 本発明を適用することができる高分子型燃料電池の構成は、上記の各実施形態において例示した構成に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態では、1個のセルC置きに冷却水を通流させる冷却水流路を備えさせる場合について例示したが、これに代えて、複数のセルC置きに冷却水流路を備えさせたり、冷却水流路を備えさせずに、酸素極2に供給する酸素含有ガスにてセルCを冷却する空冷式に構成しても良い。
これらの場合、セルスタックNCの構成としては、複数のセルCを、互いの間に、一方の面に酸素含有ガス通流溝を且つ他方の面に水素含有ガス通流溝を備えたセパレータを位置させた状態で積層状態に並置する構成とする。
尚、複数のセルC置きに冷却水流路を備えさせる場合は、複数のセルC置きに、上記の実施形態の如き酸素極側セパレータ5及び燃料極側セパレータ6を設ける。
【0049】
あるいは、上記の実施形態の構成において、燃料極側セパレータ6を多孔状の導電材にて形成し、冷却水通流溝5w,6wを通流する冷却水の圧力が、水素含有ガス通流溝6sを通流する水素含有ガスの圧力よりも高くなるようにして、冷却水の一部を燃料極3側に燃料極側セパレータ6を透過させて、高分子膜1を湿らせる、所謂、内部加湿型に構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態にかかるセルスタックの要部の分解斜視図
【図2】 第1実施形態にかかるセルスタックの要部の分解斜視図
【図3】 第1実施形態にかかるセルスタックの要部の分解斜視図
【図4】 第1実施形態にかかるセルスタックの要部の分解斜視図
【図5】 第1実施形態にかかる燃料電池の概略構成を示すブロック図
【図6】 第1実施形態にかかる劣化回復処理を行う運転装置のブロック図
【図7】 第2実施形態にかかるセルスタックの要部の分解斜視図
【図8】 第2実施形態にかかる燃料電池の概略構成を示すブロック図
【図9】 第2実施形態にかかる劣化回復処理を行う運転装置のブロック図
【図10】 本発明にかかる劣化回復処理を行う評価用の運転装置のブロック図
【符号の説明】
1 電解質層
2 酸素極
3 燃料極
B ブロック
C セル
Claims (2)
- 電解質層の一方の面に酸素極を備え且つ他方の面に燃料極を備えた複数のセルが、電気的に直列接続される状態で設けられ、
酸素含有ガスを前記酸素極に供給し、水素含有ガスを前記燃料極に供給して発電する燃料電池の運転方法であって、
前記電解質層として高分子膜を備えたセルが設けられ、
前記酸素極への酸素含有ガスの供給を停止し、前記酸素極に水素を存在させて前記酸素極の劣化を回復する劣化回復処理を、
前記燃料極に水素含有ガスを供給し、前記酸素極に対する酸素含有ガスの供給を停止し、且つ、前記セルに発電状態と同じ向きの電流を流すことにより、水素含有ガスが供給されていない前記酸素極で水素を発生させることにより行う燃料電池の運転方法。 - 前記複数のセルが複数のブロックに区分され、
各ブロック毎に、ブロックに属する前記セルに対する酸素含有ガスの供給及び停止が可能なように構成され、
前記複数のブロックのうち、一部のブロックは、酸素含有ガスの供給を継続して発電状態に維持した状態で、その発電した電流を残部のブロックに対して発電状態と同じ向きで流れるようにし、その残部のブロックに対して、酸素含有ガスの供給を停止して前記劣化回復処理を施す請求項1記載の燃料電池の運転方法。
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