JP4280891B2 - リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用 - Google Patents

リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP4280891B2
JP4280891B2 JP2001225402A JP2001225402A JP4280891B2 JP 4280891 B2 JP4280891 B2 JP 4280891B2 JP 2001225402 A JP2001225402 A JP 2001225402A JP 2001225402 A JP2001225402 A JP 2001225402A JP 4280891 B2 JP4280891 B2 JP 4280891B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
binder
structural unit
lithium ion
polymer
electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2001225402A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002110169A (ja
Inventor
雅裕 山川
隆雄 鈴木
陽久 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Zeon Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Zeon Corp filed Critical Zeon Corp
Priority to JP2001225402A priority Critical patent/JP4280891B2/ja
Publication of JP2002110169A publication Critical patent/JP2002110169A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4280891B2 publication Critical patent/JP4280891B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ノート型パソコンや携帯電話、PDAなどの携帯端末の普及が著しい。そしてこれらの電源に用いられている二次電池にはリチウムイオン二次電池が多用されてきている。リチウムイオン二次電池には、リチウムイオンの溶解している電解液を用いるリチウムイオン二次電池のほか、電解液の代わりにゲル状の電解質を用いたリチウムポリマー二次電池、固体状の電解質を用いたソリッドタイプリチウム二次電池、リチウムイオンの移動を利用した非水系電気二重層コンデンサーなどがある。
ところで、こうした携帯端末は、小型化、薄型化、軽量化、高性能化が急速に進んでいる。これに伴いリチウムイオン二次電池(以下、単に電池ということがある)に対しても、同様の要求がされており、更に低コスト化が強く求められている。
従来よりリチウムイオン二次電池用電極(以下、単に電極ということがある)としては、活物質をバインダーによって集電体に保持したものが最も一般的に用いられている。こうした電極用バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(以下、PVDFということがある)が工業的に多用されているが、PVDFを用いたバインダーは電池の高性能化に関して今日の要求レベルには十分な対応ができていない。これは、PVDFの結着性の低さに起因するものと推測される。
【0003】
そこで、より高性能の電池を求めて、PVDFに替わるバインダーの開発が盛んに行われ、特にエチレン性不飽和カルボン酸エステルなどの極性基を有するモノマーを用いて製造されたポリマーが集電体と活物質との結着性に優れている点で広く研究されている。例えば、少なくともアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルモノマー、アクリロニトリルモノマーおよび酸成分を有するビニルモノマーを共重合して得られるポリマー(特開平8−287915号公報)をバインダーとして用いることが提案されている。このようなバインダーを用いて電池の正極や負極を製造すると、活物質と集電体との結着性や活物質同士の結着性がPVDFより良好なため、優れた電池性能、即ち良好な充放電サイクル特性と高い容量を得ることができる。また、このようなバインダーは、PVDFをバインダーとして用いるものに比較して、バインダー使用量が少量でも、活物質が集電体に保持されることから、軽量化が可能である。更に、バインダー原料であるポリマーが安価であることから低コスト化も可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したPVDFに替わるエチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位を含有するポリマーは、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位を含有している。
しかしながら、本発明者の検討の結果、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位を含有するポリマーをバインダーとして製造された電極を用いた電池は、確かに20〜25℃の室温条件での充放電サイクル特性には優れているものの、特に正極のバインダーとして使用した場合、60℃以上での充放電サイクル特性が大幅に低下することが判明した。そして、本発明者らは、この原因が、バインダーの電気化学的反応性の高さにあると推察した。
【0005】
本発明者らは、高温での充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得るべく鋭意研究した結果、電極用バインダーとして、サイクリックボルタンメトリー(以下、CVということがある)により測定された電気化学的反応性の低い特定なポリマーを用いると、電池の高温での充放電サイクル特性が向上することを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、第一の発明として、(1)単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)およびメタクリロニトリルモノマー由来の構造単位(c)を有し、(2)(構造単位(a)+構造単位(c))/構造単位(b)=99.9〜1.5(重量比)、(3)構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(c)の合計がポリマーの全構造単位に対して70重量%以上であり、(4)エチレン性炭化水素モノマー由来の構造単位とジエン系モノマー由来の構造単位とを実質的に有さないポリマーからなるリチウムイオン二次電池電極用バインダーが提供され、第二の発明として、当該バインダーが、大気圧における沸点80〜350℃の分散媒中に粒子状で分散していることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物が提供され、第三の発明として当該バインダーと活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用スラリーが提供され、第四の発明として、バインダーと活物質とを含有する活物質層が集電体に保持されてなるリチウムイオン二次電池用電極が提供され、第五の発明として、当該電極を有するリチウムイオン二次電池が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
1.バインダー
本発明のバインダーは、単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)(以下、(a)ということがある)とエチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)(以下、(b)ということがある)とメタクリロニトリルモノマー由来の構造単位(c)(以下、(c)ということがある)を有するポリマーである。((a)+(c))/(b)は、99.9〜1.5、好ましくは99.5〜2であり、より好ましくは99〜2である(重量比)。
また、(a)、(b)および(c)の合計の割合は、ポリマーの全構造単位中70重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0008】
また本発明に関わるポリマーは、エチレンやプロピレンなどのエチレン性炭化水素モノマー由来の構造単位、およびブタジエンやイソプレンなどのジエンモノマー由来の構造単位を実質的に含まないものである。これらの構造単位を有する場合、電気化学的安定性が低下することがある。
【0009】
本発明に関わるポリマーは、その全構成単位中、30重量%未満、好ましくは20重量%未満の割合で、エチレン性炭化水素モノマー由来の構造単位やジエンモノマー由来の構造単位以外の構造単位であって、かつ(a)、(b)および(c)以外の構造単位を任意の構造単位として有しても良い。
最も好ましい任意の構造単位として、多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(以下、(d)ということがある)とジビニルベンゼンなどの架橋性モノマー由来の構造単位を挙げることができる。なお、「多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー」とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも2つ含むカルボン酸エステルモノマーのことを言う。本発明に関わるポリマー中には、任意の構造単位のうち、(d)と架橋性モノマー由来の構造単位以外の構造単位(以下、その他の構造単位という)も存在させることはできるが、その割合は、ポリマーの全構造単位に対して、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満の割合である。高い電気化学的安定性を確保するためには、その他の構造単位は実質的に存在しないのが最も望ましい。
【0010】
本発明において、単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)を与えるモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ラウリルなどのアルキル基が置換基を有していてもよいアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ラウリルなどのアルキル基が置換基を有していてもよいメタクリル酸アルキルエステル;
【0011】
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸ブチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸n−アミル、クロトン酸イソアミル、クロトン酸n−ヘキシル、クロトン酸2−エチルヘキシル、クロトン酸ヒドロキシプロピルなどのアルキル基が置換基を有していてもよいクロトン酸アルキルエステル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのジアルキルアミノ基含有メタクリル酸エステル;メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、およびフェノキシエチルアクリレートなどのアルコキシ基含有モノカルボン酸エステル;アクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基にリン酸残基、スルホン酸残基、ホウ酸残基などを有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。これらの単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーの中でも、アクリル酸アルキルエステルやメタアクリル酸アルキルエステルが好ましく、これらのアルキル部分の炭素数は1〜12、好ましくは2〜8であるものが特に好ましい例として挙げられる。
これらの単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
本発明において、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)を与えるモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーやマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーが挙げられる。これらの中でも特にアクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましい。
本発明において(c)を与えるモノマーは、メタクリロニトリルである。メタクリロニトリルモノマー由来の構造単位を有するものは、70℃でのCV測定で電気化学的反応性が低く、このようなバインダーを用いて得られた電池は、高温での充放電サイクル特性が良好である。
【0013】
本発明のバインダーは、上記(a)、(b)および(c)以外に、多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(d)を有するポリマーが好ましい。このような(d)を与えるモノマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリル酸エステル;ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレートなどのジアクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリル酸エステル;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ヘプタエチレングリコールジメタクリレート、オクタエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ヘキサプロピレングリコールジメタクリレート、ヘプタプロピレングリコールジメタクリレート、オクタプロピレングリコールジメタクリレートなどのポリアルキレングリコールジメタクリレートや、これらのメタクリレートの一部をアクリレートに変えた化合物;などが挙げられる。(d)は、本発明のバインダーであるポリマーの全構造単位に対して30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、かつ0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上の割合で存在すると、安定した高温での充放電サイクル特性が得られるので好ましい。
【0014】
本発明のバインダーとして用いる好ましいポリマーの具体例を以下に示す。これらは未架橋ポリマーでも架橋ポリマーであっても良いが、耐電解液性などに優れる傾向にあるため、架橋ポリマーであるのが好ましい。架橋ポリマーは、適当量の架橋性モノマー存在下で以下に例示するポリマーを製造することで得られる。
アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸エチル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ブチル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/エチレングリコールジメタクリレート/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸ヒドロキシプロピル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ジエチルアミノエチル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、クロトン酸2−エチルヘキシル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/クロトン酸エチル/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸エチル/ポリエチレングリコールジアクリレート/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン/アクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸/マレイン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/イタコン酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/イタコン酸/メタクリロニトリルコポリマー
【0015】
アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸エチル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ブチル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/エチレングリコールジメタクリレート/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、クロトン酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/クロトン酸エチル/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸エチル/ポリエチレングリコールジアクリレート/メタクリル酸/メタクリロニトリルコポリマー
【0016】
アクリル酸2−エチルヘキシル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸エチル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ブチル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/エチレングリコールジメタクリレート/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸ヒドロキシプロピル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、クロトン酸2−エチルヘキシル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/クロトン酸エチル/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸エチル/ポリエチレングリコールジアクリレート/クロトン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸エチル/イタコン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸ブチル/イタコン酸/メタクリロニトリルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル/エチレングリコールジメタクリレート/イタコン酸/メタクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
【0017】
更に、電池が60℃での充放電サイクル特性にも優れているためには、バインダーが60℃で電気化学的に安定であることが重要である。
この電気化学的安定性は、サイクリックボルタンメトリーにより測定することができる。この方法によれば、検体中に一定速度で電位を走査し、酸化反応や還元反応が生じた場合、ピーク電流値が求められる。このピーク電流値が高いほど、酸化反応や還元反応を生じさせる物質が検体中に含まれることになる。
二次電池に用いるバインダーは、繰り返しの充放電にさらされる。サイクリックボルタンメトリー(CV)を繰り返した場合、次第に高いピーク電流値を示すようなバインダーを用いて製造された電極は、充放電により酸化反応または還元反応を起こしやすいため、そのような電極を用いても充放電特性に劣る電池しか与えられない。
従って、本発明のバインダーは70℃雰囲気でのCV測定(測定法は後記)で、3ボルトから5ボルトまでの電位走査を5回繰り返したときの5回目の4.6ボルトにおける電流値が、150μA/cm以下、好ましくは、120μA/cm以下、より好ましくは100μA/cm以下である。
【0018】
こうした本発明のバインダーは、任意の液状媒体中に粒子の形状で分散された後述する本発明のバインダー組成物として使用することができるほか、有機溶剤に溶解したバインダー組成物として用いることもできる。また他のバインダーと併用して用いることもできる。
【0019】
2.バインダー組成物
本発明においてバインダー組成物は、上述した本発明のバインダーが粒子の形状で特定の分散媒中に分散されている。本発明のバインダー組成物中、ポリマー粒子量は、固形分量で、組成物重量に基づき0.2〜80重量%、好ましくは0.5〜70重量%、より好ましくは0.5〜60重量%である。
【0020】
本発明のバインダー組成物に用いるバインダー粒子は、単一ポリマーからなる粒子であっても、2種以上のポリマーからなる複合ポリマー粒子であってもよい。
複合ポリマー粒子は異形構造をとるが、この異形構造とは、通常ラテックスの分野でコアシェル構造、複合構造、局在構造、だるま状構造、いいだこ状構造、ラズベリー状構造などと言われる構造(「接着」34巻1号第13〜23頁記載、特に第17頁記載の図6参照)である。
【0021】
本発明のバインダー組成物中、バインダーであるポリマーが粒子として存在していることは透過型電子顕微鏡や光学顕微鏡などにより確認すればよい。粒子の体積平均粒径は、0.001μm〜500μm、好ましくは0.01μm〜200μmである。体積平均粒径はコールターカウンターやマイクロトラックを用いて測定することができる。
【0022】
本発明のバインダー組成物を製造する方法は特に制限されない。
分散媒が有機液状物質である場合は、製造効率の良さなどから、通常の方法によってポリマー粒子が水に分散されたポリマーの水分散体を製造した後、ポリマーの水分散体中の水を特定の有機液状物質に置換する方法が挙げられる。置換方法としては、ポリマーの水分散体に有機分散媒を加えた後、分散媒中の水分を蒸留法、分散媒相転換法などにより除去する方法などが挙げられる。
【0023】
ポリマーの水分散体(以下、ラテックスと言うことがある)の製造方法は特に制限されず、乳化重合法や懸濁重合法によって製造することができる。このほか、分散重合法によって直接本発明のバインダー組成物を製造することもできる。乳化剤や分散剤、重合開始剤、重合助剤などの添加剤や、重合温度や時間などの重合条件も一般的に用いられるものを任意に選択すれば良く、その使用量も一般的な量でよい。
また、重合に際しては、シード粒子を採用する、いわゆるシード重合もできる。
バインダーが複合ポリマー粒子であるものを得るには、例えば、任意の1種以上のモノマー成分を常法により重合し、引き続き、残りの1種以上のモノマー成分を添加し、常法により重合させる方法(二段重合法)などを採用すれば良い。
また、ポリマーの水分散体は、適当な塩基性水溶液を加えて、pHを4〜11、好ましくは5〜9の範囲に調整すると、集電体と活物質との結着性を向上させるため好ましい。
【0024】
本発明のバインダー組成物の調製に用いる分散媒は、水であっても有機液状物質であってもよく、通常、大気圧における沸点が80〜350℃、好ましくは100〜300℃の分散媒が選ばれる。有機液状物質の中で好ましい分散媒としては次のものが例示される。尚、分散媒名の後の( )内の数字は大気圧での沸点(℃)であり、小数点以下を四捨五入又は切り捨てた値である。
【0025】
n−ドデカン(216)、デカヒドロナフタレン(189〜191)およびテトラリン(207)などの炭化水素類;2−エチル−1−ヘキサノール(184)および1−ノナノール(214)などのアルコール類;ホロン(197)、アセトフェノン(202)およびイソホロン(215)などのケトン類;酢酸ベンジル(213)、酪酸イソペンチル(184)、γ−ブチロラクトン(204)、乳酸メチル(143)、乳酸エチル(154)および乳酸ブチル(185)などのエステル類;o−トルイジン(200)、m−トルイジン(204)およびp−トルイジン(201)などのアミン類;N−メチル−2−ピロリドン(202)、N,N−ジメチルアセトアミド(194)およびジメチルホルムアミド(153)などのアミド類;ならびにジメチルスルホキシド(189)およびスルホラン(287)などのスルホキシド・スルホン類などが挙げられる。
分散媒としては、特に、水、N−メチル−2−ピロリドン、乳酸メチル、乳酸エチルが好ましい。
【0026】
本発明のバインダー組成物は、電解液に対する溶解性が低いことが、電極の結着持続性の点から好ましい。結着持続性は充放電サイクル特性に影響し得る。電解液への溶解性は、バインダーポリマーのゲル含有率で表される。このゲル含有率は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=50/50(20℃での体積比)混合液にLiPFが1モル/リットルの濃度で溶解している電解液に対するポリマーの不溶分百分率で表される。本発明のバインダーポリマーのゲル含有率は、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。ゲル含有率がこの範囲であると、充放電サイクル特性が良好である。
【0027】
また、本発明においてはバインダー組成物に、後述する電池電極用スラリーの塗料性を向上させる粘度調整剤や流動化剤などの添加剤を併用することができる。これらの添加剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー並びにこれらのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、酢酸ビニルポリマー;ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンのようなフッ素系ポリマー;などが挙げられる。これらの添加剤の使用割合は、必要に応じて自由に選択することができる。また、これらのポリマーはバインダー組成物中で溶解していても良く、粒子形状である必要はない。
これらの中でも、最終的に電極に残留する添加剤については、電気化学的安定性の高い添加剤を使用するのが特に好ましい。
【0028】
3.電池電極用スラリー
本発明の電池電極用スラリーは、本発明のバインダーと、後述する活物質や必要に応じて用いられる添加剤とを含有するものである。その調製方法は特に制限されず、例えば、本発明のバインダーを任意の媒体に溶解又は分散させたものと活物質や添加剤とを混合すればよい。
本発明の電池電極用スラリーの中でも、特に本発明のバインダー組成物と活物質とを含有するものは、充放電特性に優れ好ましい。
【0029】
活物質は、通常のリチウムイオン二次電池で使用されるものであれば、いずれであっても用いることができる。
負極活物質としては、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)、ピッチ系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセン等の導電性高分子、複合金属酸化物やその他の金属酸化物などが例示される。
【0030】
正極活物質としては、TiS、TiS、非晶質MoS、Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの金属硫化物や金属酸化物、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnなどのリチウム含有複合金属酸化物などが例示される。尚、これらの金属化合物を構成する元素の組成比は化学量論組成からずれている場合が多い。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子など有機系化合物を用いることもできる。
【0031】
本発明の電池電極用スラリー中の活物質の量は特に制限されないが、通常、バインダー対して重量基準で1〜1000倍、好ましくは2〜500倍、より好ましくは3〜500倍になるように配合する。活物質量が少なすぎると、電極としての機能が不十分になることがある。また、活物質量が多すぎると活物質が集電体に十分固定されず脱落しやすくなる。なお、電極用スラリーに分散媒である水や有機液状物質を追加して集電体に塗布しやすい濃度に調節して使用することもできる。
【0032】
必要に応じて、本発明のスラリーにはバインダー組成物の項で例示したのと同じ粘度調整剤や流動化剤を添加してもよく、また、グラファイト、活性炭などのカーボンや金属粉のような導電材等を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0033】
4.リチウムイオン二次電池電極
本発明の電極は、上記本発明のバインダーと活物質とを含有する活物質層が集電体に保持されてなるものである。
このような電極は、例えば上述した本発明のスラリーを金属箔などの集電体に塗布し、乾燥して集電体表面に活物質を固定することで製造される。本発明の電極は、正極、負極何れであってもよいが、特に正極を用いた時に著効を示す。
集電体は、導電性材料からなるものであれば特に制限されないが、通常、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属製のものを用いる。形状も特に制限されないが、通常、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものを用いる。
【0034】
スラリーの集電体への塗布方法も特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、浸漬、ハケ塗りなどによって塗布される。塗布する量も特に制限されないが、分散媒を乾燥等の方法によって除去した後に形成される活物質層の厚さが通常0.005〜5mm、好ましくは0.01〜2mmになる程度の量である。乾燥方法も特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。乾燥条件は、通常は応力集中が起こって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離しない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く分散媒が除去できるように調製する。
さらに、乾燥後の集電体をプレスすることにより電極の活物質層の密度を高めても良い。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法が挙げられる。
【0035】
5.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、電解液や本発明のリチウムイオン二次電池用電極を含み、必要に応じてセパレーター等の部品を用いて、常法に従って製造されるものである。例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、電池形状に応じて巻く、折るなどして、電池容器に入れ、電解液を注入して封口する。電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
【0036】
電解液は通常、リチウムイオン二次電池に用いられるものであればいずれでもよく、活物質の種類に応じて電池としての機能を発揮するものを選択すればよい。
電解質としては、例えば、従来より公知のリチウム塩がいずれも使用でき、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCS0、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
【0037】
この電解質を溶解させる溶媒(電解液溶媒)は、一般的に電解液溶媒として用いられるものであれば特に限定されるものではない。通常、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチルラクトンなどのラクトン類等が含有された溶媒が用いられる。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本実施例における部および%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0039】
実施例および比較例中の評価は以下の条件にて行った。
1.バインダーの特性
(ゲル含有率)
電解液に溶解しないバインダーの割合をゲル含有率とする。
バインダーの水又は有機液状物質分散液を約0.1mm厚のポリマー膜ができるようにガラス板に塗布した後、120℃で24時間風乾し、さらに120℃で2時間真空乾燥した。ここで得られたポリマー膜の重量D1を測定した。測定後、膜を200メッシュSUS金網で作った籠に入れ、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=50/50(20℃での体積比)混合液にLiPFが1モル/リットルの濃度で溶解している電解液に、60℃で72時間浸漬した後、200メッシュ金網で濾過して、金網上に残留した不溶分を120℃、2時間真空乾燥させたものの重量D2を測定した。(D2/D1)×100の計算式から算出される値をゲル含有率(%)とした。
ゲル含有率が大きいほど電解液に対して安定なバインダーである。
【0040】
(電気化学的安定性:CV値)
サイクリックボルタンメトリーで測定した。
すなわち、バインダーの水又は有機液状物質分散液をアセチレンブラック:バインダ=100:40(重量比)で混合し、均一なスラリーを得たのち、アルミニウム箔に塗布し、120℃で2時間風乾し、さらに120℃で真空乾燥し、50μmの厚さの電極を製造した。これを作用電極とした。対極および参照極にはリチウム金属箔を用いた。電解液としてはエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=70/30(20℃での体積比)混合液にLiPFが1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いた。
測定器はポテンショスタット(HA−301:北斗電工社製)および簡易型関数発生器(HB−111:北斗電工社製)を用いた。スイープ条件は70℃で開始電位3V、折り返し電位5V、スイープ速度5mV/sec、三角波スイープで連続5回繰り返しの測定を行い、4.6Vでの単位面積当たりの電流値(CV値、単位はμA/cm)を測定した。5回目のCV値が、150μA/cm以下であれば、そのバインダーは電気化学的に安定である。尚、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)について測定を行った結果、CV値は138μA/cmであった。
【0041】
2.電極の特性
(折り曲げ)
後述する方法で製造した電極を幅2cm×長さ7cmに切り、長さ方向の中央(3.5cmのところ)を直径0.7mmのステンレス棒を支えにして180°折り曲げたときの折り曲げ部分の塗膜の状態を、10枚の電極片についてテストし、10枚すべてにひび割れ又は剥がれが全く生じていない場合を○、1枚以上に1カ所以上のひび割れ又は剥がれが生じた場合を×と評価する。
【0042】
3.電池の特性(高温充放電サイクル特性)
以下の方法で製造したコイン型電池を用いて60℃雰囲気下、負極試験は正極を金属リチウムとして0Vから1.2Vまで、正極試験は、負極を金属リチウムとして3Vから4.2Vまで、0.4Cの定電流法によって3サイクル目の放電容量(単位=mAh/g:活物質当たり)と、30サイクル目の放電容量(単位=mAh/g:活物質当たり)を測定し、3サイクル目の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の割合を百分率で算出した。この値が大きいほど容量減が少なく良い結果である。
【0043】
コイン型電池の製造
正極は以下のようにして製造した。正極スラリーをアルミニウム箔(厚さ20μm)に、それぞれドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で15分間乾燥機で乾燥した。更に真空乾燥機にて0.6kPa、120℃で2時間減圧乾燥した後、2軸のロールプレスによって活物質密度が3.2g/cmとなるように圧縮し、活物質層の厚さ80μmの電極を得た。
負極は、負極スラリーを銅箔(厚さ18μm)に塗布し、活物質密度が1.5g/cmとなるように圧縮した他は、正極と同様にして製造した。
この正極および負極を直径15mmの円形に切り抜き、直径18mm、厚さ25μmの円形ポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーターを介在させて、互いに活物質層が対向し、外装容器底面に正極のアルミニウム箔又は金属リチウムが接触するように配置し、さらに負極の銅箔又は金属リチウム上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製コイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介させて外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップを被せて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約2mmのコイン型電池を製造した。電解液はエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=50/50(20℃での体積比)にLiPFが1モル/リットルの濃度で溶解した溶液を用いた。
【0044】
(実施例1)
アクリル酸2−エチルヘキシル80部、アクリル酸8部、及びメタクリロニトリル15部を、水中で、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを用い、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた乳化重合によりポリマー粒子aを28%含むラテックスAを得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ100%であった。
コバルト酸リチウム92部に、アセチレンブラック5部、ポリマー粒子a固形分2部相当量のラテックスA及びカルボキシメチルセルロースナトリウム1部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が70%になるように水を加えて十分に均一になるまで混合して正極スラリーを得た。このスラリーを用いて上述の方法により正電極を製造し、負極にリチウム金属を用いて電池を製造した。バインダー(ポリマー粒子a)、電極および電池を評価したところ、表1の結果が得られた。
【0045】
(実施例2)
アクリル酸2−エチルヘキシル84部、メタクリル酸2部、メタクリロニトリル10部、およびエチレングリコールジメタクリレート2部、およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート2部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリマー粒子bを30%含むラテックスBを得た。重合転化率は99%であった。
ラテックスAの代わりにラテックスBを用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー(ポリマー粒子b)、正電極および電池の性能を評価したところ、表1の結果が得られた。
【0046】
(実施例3)
アクリル酸2−エチルヘキシルの代わりにメタクリル酸2−エチルヘキシル84部を用いたこと以外は実施例2と同様にして、ポリマー粒子cを25%含むラテックスCを得た。重合転化率はほぼ100%であった。
ラテックスAの代わりにラテックスCを用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー(ポリマー粒子c)、正電極および電池の性能を評価したところ、表1の結果が得られた。
【0047】
(実施例4)
実施例1で得たラテックスA100部に、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ということがある)300部を加えた。該混合溶液を攪拌しながら真空ポンプにて減圧し、80℃に加熱して、水分を除去し、ポリマー粒子aを10%含むNMP分散体Aを得た。
ラテックスAの代わりにNMP分散体Aを用い、水の代わりにNMPを用い、カルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりにα化ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉を用いた他は、実施例1と同様にして、バインダー(ポリマー粒子a)、正電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
【0048】
(実施例5)
実施例4のラテックスAの代わりにラテックスBを用いた他は、実施例4と同様にして、ポリマー粒子bを10%含むNMP分散体Bを製造し、これを用いて実施例4と同様に、バインダー(ポリマー粒子b)、正電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
【0049】
(比較例1)
メタクリロニトリルに代えてアクリロニトリルを用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリマー粒子pを33%含むラテックスPを得た。重合転化率は99%であった。ラテックスAの代わりにラテックスPを用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー(ポリマー粒子p)、正電極および電池を製造し、評価したところ表1の結果が得られた。
【0050】
(比較例2)
メタクリロニトリル量を0部とした他は、実施例5と同様にしてポリマー粒子qを10%含むNMP分散体Qを得た。重合転化率はほぼ100%であった。NMP分散体Bの代わりにNMP分散体Qを用いた以外は、実施例5と同様にしてバインダー(ポリマー粒子q)、正電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
【0051】
(実施例6)
天然黒鉛97部に、実施例1で得られたラテックスAのポリマー固形分3部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム1部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が40%となるように水を加えて十分に混合して負極用スラリーを得た。このスラリーを用いて上述の方法によって負電極を製造し、正極にリチウム金属を用いて電池を製造した。バインダー(ポリマー粒子a)、負電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
【0052】
(実施例7)
ラテックスAの代わりにNMP分散体Bを用い、水の代わりにNMPを用いた他は、実施例6と同様にして、バインダー(ポリマー粒子b)、負電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
(比較例3)
ラテックスAの代わりにラテックスPを用いた以外は、実施例6と同様にして、バインダー(ポリマー粒子p)、負電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
(比較例4)
NMP分散体Bの代わりにNMP分散体Qを用いたほかは、実施例7と同様にして、バインダー(ポリマー粒子q)、負電極および電池を評価したところ表1の結果が得られた。
【0053】
【表1】
Figure 0004280891
【0054】
以上の結果から、アクリロニトリルを含有する従来のバインダーは、70℃でのCVにより測定された電気化学的反応性が高く、このようなバインダーを用いて製造された電池は、高温での充放電サイクル特性が悪いことが判る。一方、本発明のバインダーは、アクリロニトリルの代わりにメタクリロニトリルを有するものであり、このようなバインダーは電気化学的反応性が低く、高温での充放電特性に優れた電池を与えることができることが判る。
【0055】
【発明の効果】
本発明のバインダーをリチウムイオン二次電池の電極製造に用いると、耐電解液性に優れ、電気化学的にも安定なので、60℃の高温での充放電サイクル特性に優れ、更に集電体との結着性にも優れたリチウム二次電池を製造することができる。

Claims (5)

  1. (1)単官能エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)およびメタクリロニトリルモノマー由来の構造単位(c)を有し、
    (2)(構造単位(a)+構造単位(c))/構造単位(b)=99.9〜1.5(重量比)、
    (3)構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(c)の合計がポリマーの全構造単位に対して70重量%以上であり、
    (4)エチレン性炭化水素モノマー由来の構造単位とジエン系モノマー由来の構造単位とを実質的に有さない
    ポリマーからなるリチウムイオン二次電池電極用バインダー。
  2. 請求項1記載のバインダーが、大気圧における沸点80〜350℃の分散媒中に粒子状で分散していることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
  3. 請求項1記載のバインダーと活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用スラリー。
  4. 請求項1記載のバインダーと活物質とを含有する活物質層が集電体に保持されてなるリチウムイオン二次電池用電極。
  5. 請求項4記載の電極を有するリチウムイオン二次電池。
JP2001225402A 2000-07-26 2001-07-26 リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用 Expired - Lifetime JP4280891B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001225402A JP4280891B2 (ja) 2000-07-26 2001-07-26 リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-225456 2000-07-26
JP2000225456 2000-07-26
JP2001225402A JP4280891B2 (ja) 2000-07-26 2001-07-26 リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002110169A JP2002110169A (ja) 2002-04-12
JP4280891B2 true JP4280891B2 (ja) 2009-06-17

Family

ID=26596710

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001225402A Expired - Lifetime JP4280891B2 (ja) 2000-07-26 2001-07-26 リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4280891B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8333838B2 (en) 2003-04-23 2012-12-18 Stella Chemifa Corporation Method for producing fluoride crystal

Families Citing this family (25)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4678301B2 (ja) * 2003-01-15 2011-04-27 日本ゼオン株式会社 電気二重層キャパシタ用電極の製造方法
US20060153972A1 (en) * 2003-02-25 2006-07-13 Yoshitsugu Hirokawa Method of manufacturing electrode for electrochemical device
KR100491026B1 (ko) * 2003-03-05 2005-05-24 주식회사 엘지화학 전지특성, 접착성, 코팅특성이 조절된 2상 이상의 구조를가지는 리튬 2차 전지용 바인더
JP4243964B2 (ja) * 2003-03-10 2009-03-25 日立マクセル株式会社 非水二次電池
WO2004084245A1 (ja) * 2003-03-18 2004-09-30 Zeon Corporation 電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物
WO2005013298A1 (ja) * 2003-08-04 2005-02-10 Zeon Corporation 電気二重層キャパシタ電極用バインダー
JP4483784B2 (ja) * 2003-10-24 2010-06-16 日本ゼオン株式会社 電気二重層キャパシタ電極用バインダー
JP4432906B2 (ja) * 2003-11-28 2010-03-17 日本ゼオン株式会社 電気二重層キャパシタ用バインダー
WO2006033173A1 (ja) * 2004-09-22 2006-03-30 Hitachi Chemical Company, Ltd. 非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物、非水電解液系エネルギーデバイス電極及び非水電解液系エネルギーデバイス
JP4774728B2 (ja) * 2004-11-29 2011-09-14 大日本印刷株式会社 正極活物質層用塗工組成物、該組成物から形成される正極板、および該正極板を有する非水電解液二次電池
JP5151475B2 (ja) * 2005-03-23 2013-02-27 日本ゼオン株式会社 非水電解質二次電池電極用バインダー、電極、ならびに非水電解質二次電池
KR100767966B1 (ko) * 2005-04-07 2007-10-17 주식회사 엘지화학 우수한 속도 특성 및 수명 특성을 갖는 리튬 이차 전지용바인더
KR20080064590A (ko) * 2007-01-05 2008-07-09 삼성에스디아이 주식회사 리튬 전지용 애노드 및 이를 채용한 리튬 전지
WO2008087966A1 (ja) * 2007-01-16 2008-07-24 Zeon Corporation 結着剤組成物、電極用スラリー、電極および非水電解質二次電池
CN102473918B (zh) * 2009-07-01 2015-04-01 日本瑞翁株式会社 二次电池用正极及二次电池
WO2011061818A1 (ja) 2009-11-18 2011-05-26 トヨタ自動車株式会社 電池用電極の製造方法
KR20130042558A (ko) * 2010-07-16 2013-04-26 가부시키가이샤 닛폰 쇼쿠바이 2 차 전지용 수계 전극 바인더
KR101732472B1 (ko) 2010-09-01 2017-05-04 제온 코포레이션 이차 전지 정극용 수계 바인더 조성물, 이차 전지 정극용 슬러리 조성물, 이차 전지 정극 및 이차 전지
JP6029823B2 (ja) * 2011-09-12 2016-11-24 学校法人東京理科大学 二次電池電極用水系組成物および二次電池正極用電極
JP6109525B2 (ja) * 2011-10-24 2017-04-05 東洋インキScホールディングス株式会社 ニッケル水素二次電池電極形成用エマルションバインダーおよびニッケル水素二次電池電極形成用合材インキ
CA2854706A1 (en) * 2011-11-07 2013-05-16 Denki Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha Binder composition for electrode
US10014525B2 (en) * 2013-01-29 2018-07-03 Osaka Soda Co., Ltd. Binder for battery electrode, and electrode and battery using same
US9876231B2 (en) * 2013-05-15 2018-01-23 Zeon Corporation Binder composition for positive electrode of lithium ion secondary battery, slurry composition for positive electrode of lithium ion secondary battery and method of producing the same, method of producing positive electrode for lithium ion secondary battery, and lithium ion secondary battery
CN108886120B (zh) * 2016-04-15 2020-12-25 日本瑞翁株式会社 非水电解液电池用水系密封剂组合物
JP6491137B2 (ja) * 2016-04-28 2019-03-27 トヨタ自動車株式会社 リチウムイオン二次電池の正極作製用導電ペースト

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8333838B2 (en) 2003-04-23 2012-12-18 Stella Chemifa Corporation Method for producing fluoride crystal

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002110169A (ja) 2002-04-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4280891B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用
US6656633B2 (en) Binder for electrode for lithium ion secondary battery, and utilization thereof
JP4433509B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物及びその利用
JP4399904B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物およびその利用
JP3627586B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダー、およびその利用
JP3703582B2 (ja) 電極バインダー、電極バインダー溶液、電極合剤、電極構造体および電池
JP4178953B2 (ja) 二次電池正極用スラリー組成物、二次電池正極および二次電池
JP4311002B2 (ja) 電極用スラリー組成物、電極および二次電池
JP4081895B2 (ja) リチウムイオン二次電池用のゲル状電解質及びゲル状電解質リチウムイオン二次電池
JP4325061B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用
JP4415453B2 (ja) リチウムイオン二次電池電極用バインダーおよびその利用
JP2018510459A (ja) ゲル高分子電解質、その製造方法およびゲル高分子電解質を含む電気化学素子
WO2010092977A1 (ja) リチウム二次電池の電極合剤用スラリー、該スラリーを用いた電極およびリチウム二次電池
JP2003223895A (ja) 二次電池電極用スラリー組成物、二次電池電極および二次電池
JP7160696B2 (ja) 非水電解質二次電池用電極
JP4368114B2 (ja) リチウムイオン二次電池および二次電池の製造法
JP4200349B2 (ja) 電極用スラリー組成物、電極およびリチウムイオン二次電池
JPH1167216A (ja) 非水電解質二次電池
JPH1167215A (ja) 非水電解質二次電池
KR20190080697A (ko) 이차전지용 바인더, 이차전지용 바인더 수지 조성물, 이차전지용 전극, 및 이차전지
WO2018131572A1 (ja) 非水電解質電池電極用増粘安定剤、並びに、それを含むバインダー組成物、非水電解質電池電極用スラリー組成物、非水電解質電池電極及び非水電解質電池
JP4707312B2 (ja) 非水溶媒系二次電池
JP2020145062A (ja) 二次電池用負極合剤、二次電池用負極、および二次電池
JPH09237623A (ja) 非水電解質二次電池
JP4240604B2 (ja) バインダー組成物、電池電極用スラリー、電極及び電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060307

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090218

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090303

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4280891

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130327

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130327

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140327

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250