JP4265721B2 - 光学記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報をレーザー等による熱的情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体に使用される光学記録材料に関し、詳しくは、可視及び近赤外領域の波長を有し、かつ低エネルギーのレーザー等により高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体に使用される光学記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に光学記録媒体は、媒体と書き込み又は読み出しヘッドが接触しないので記録媒体が摩耗劣化しないという特徴を有しており、特に、情報を熱的情報として付与する光学記録媒体は暗室による現像処理が不要である利点を有することからその開発が盛んに行なわれている。
【0003】
このような光学記録媒体は記録光を熱として利用するものであり、例えば、基体上に設けた薄い記録層に、光学的に検出可能なピットを形成させることにより情報を高密度に記録させる。
【0004】
上記記録層に用いられる材料としては、例えば、インドレニン系、チアゾール系、イミダゾール系、チオキサゾール系、キノリン系、セレナゾール系等のシアニン色素が知られている。これらの色素は、シアニン色素カチオンとハロゲンアニオン、六フッ化リンアニオン等の各種アニオンとの塩であり、特に、インドレニン系の色素は感度が高く記録特性がよいので好ましく用いられている。
【0005】
このような色素を用いた光学記録媒体として、コンパクトディスク(CD)規格に対応した波長770〜830nmの近赤外線半導体レーザーによって書き込み再生可能な光学記録媒体(CD−R)が実用化されている。近年の光学記録媒体に求められる更なる記録速度、読み出し速度の高速化に対応できなくなってきており、更に記録特性の良好な材料が求められている。
【0006】
例えば、特開平2−45191号公報には、N−シクロアルキルインドレニン系のシアニン色素が提案されているが、これらは製造が困難であり、極性溶媒への溶解性に劣るため基材への塗布に支障をきたす問題点を有しており、また、特開2000−108510号公報には、ニトロインドレニン系のシアニン色素が提案されており、N−シクロヘキシルエチル基を有する化合物が具体例として記載されているものの、これらは短波長側に吸収波長を有することからCD−R用の色素としては全く不適切なものであった。
【0007】
従って、本発明の目的は、記録特性に優れた光学記録媒体に適する光学記録材料及び該化合物を用いた光学記録媒体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、インドレニン系シアニン色素に特定の置換基を導入した化合物からなる光学記録材料が、記録特性に優れた光学記録媒体を与えることを知見し、本発明に到達した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表される化合物からなることを特徴とする光学記録材料及び該光学記録材料からなる薄膜を形成したことを特徴とする光学記録媒体を提供するものである。
【0010】
【化2】
(式中、R1、R2は各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Yは水素原子、ハロゲン原子、エーテル結合を有することのできる炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、lは1〜4を表す)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、上記要旨をもってなる本発明の光学記録材料及び光学記録媒体についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る上記一般式(I)で表される化合物は、光学記録媒体の記録層に使用される色素であり、該色素は、インドレニン環の窒素原子にシクロヘキシルエチル基が結合しており、後記の実施例に示したとおり、シャープな分解曲線を有し、明確なピットを形成し、かつ高速記録が可能な光学記録媒体を与えることが特徴である。
【0013】
また、シクロヘキシルエチル基の導入により、極性溶媒への溶解性が改善される効果も有する。
【0014】
上記一般式(I)において、式中、Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、Yで表されるエーテル結合を有することのできる炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、ペンチル、第二ペンチル、第三ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、第三オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、ベンジル、フェニルエチル等の基が挙げられ、Yで表される炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の基が挙げられる。R1、R2で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等が挙げられる。R、R’で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)で表される化合物の代表例としては、下記化合物No.1〜7等が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニン色素カチオンで示している。
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】
上記一般式(I)で表される化合物からなる本発明の光学記録材料は、上記シアニン色素カチオンとアニオンとの塩であり、従来周知の方法に準じて製造することができる。
【0027】
本発明に係る上記の化合物は、光学記録媒体の記録層として適用され、該記録層の形成にあたっては従来周知の方法を用いることができる。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に溶解した溶液を基体上に塗布することによって容易に形成することができる。
【0028】
上記記録層の厚さは、通常、0.001〜10μmであり、好ましくは0.01〜5μmの範囲が適当である。上記記録層の形成方法は特に制限を受けず、例えばスピンコート法等の通常用いられる方法を用いることができる。
【0029】
本発明の光学記録材料を、光学記録媒体の記録層に含有させる際の該記録層に対する使用量は、好ましくは50〜100重量%である。
【0030】
また、上記記録層は、本発明の光学記録材料のほかに、必要に応じて、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0031】
さらに、上記記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。これらの化合物としては、例えば、特開昭59−55795号公報に提案されているような公知の化合物が用いられる。該化合物は、記録層に対して好ましくは0〜50重量%の範囲で使用される。
【0032】
このような記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み光及び読み出し光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等が用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものが使用できる。
【0033】
また、上記記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等による保護層を形成することもできる。
【0034】
本発明の光学記録材料は、LD、CD、DVD、CD−R、DVD−R等の光ディスク用色素として使用することができ、特に高速対応のCD−Rに好適である。
【0035】
【実施例】
以下、合成例、実施例、比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。尚、以下の実施例のうち、実施例1−3は、参考例である。
【0036】
〔合成例1〕
(化合物No.1の六フッ化リン塩の合成)
1−シクロヘキシルエチルー2,3,3−トリメチルー3H−ベンゾ[e]インドリウムトルエンスルホネート10.2g、1,1,3,3−テトラメトキシプロパン1.6g、ピリジン4.0gを混合し、3時間加熱還流した。クロロホルムを用いて油水分離、15重量%六フッ化リンのカリウム塩による塩交換、油水分離を行った。脱水、脱溶媒をへて、再結晶を行い、ろ過、乾燥して緑色固体4.8g(収率59.3重量%、純度98重量%)を得た。
得られた結晶について、 1H−NMRにより構造を確認した。結果を以下に示す。
・ 1H−NMR(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.03〜1.09;m;4)(1.12〜1.25;m;8)
(1.29〜1.35;m;2)(1.59〜1.68;m;8)
(1.75〜1.79;d;4)(2.04;s;12)
(4.05〜4.09;t;4)(6.05〜6.09;d;2)
(6.52〜6.58;t;1)(7.28〜7.30;d;2)
(7.43〜7.47;t;2)(7.58〜7.62;t;2)
(7.89〜7.91;d;2)(8.15〜8.25;m;4)
【0037】
〔合成例2〕
(化合物No.2の六フッ化リン塩合成)
合成例1において、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンの代わりに1,1,3,3−テトラエトキシー2−メチルプロパンを用いる以外は、合成例1と同様にして、化合物No.2の六フッ化リン酸塩を得た。
得られた結晶について、 1H−NMRにより構造を確認した。結果を以下に示す。
・ 1H−NMR(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.03〜1.09;m;4)(1.12〜1.25;m;8)
(1.30〜1.36;m;2)(1.71〜1.77;s+m;11)
(1.80〜1.83;d;4)(2.07;s;12)
(4.11〜4.15;t;4)(6.04〜6.07;d;2)
(7.28〜7.30;d;2)(7.45〜7.48;t;2)
(7.61〜7.65;t;2)(7.90〜7.92;d;2)
(8.07〜8.11;d;2)(8.22〜8.24;d;2)
【0038】
〔合成例3〕
(化合物No.1の過塩素酸塩の合成)
合成例1において、15重量%六フッ化リンのカリウム塩の代わりに15重量%過塩素酸のナトリウム塩を用いる以外は、合成例1と同様にして化合物No.1の過塩素酸塩を得た。
得られた結晶について、 1H−NMRにより構造を確認した。結果を以下に示す。
・ 1H−NMR(ケミカルシフトppm;多重度;プロトン数)
(1.03〜1.09;m;4)(1.12〜1.25;m;8)
(1.29〜1.35;m;2)(1.59〜1.68;m;8)
(1.75〜1.79;d;4)(2.04;s;12)
(4.05〜4.09;t;4)(6.05〜6.09;d;2)
(6.52〜6.58;t;1)(7.28〜7.30;d;2)
(7.43〜7.47;t;2)(7.58〜7.62;t;2)
(7.89〜7.91;d;2)(8.15〜8.25;m;4)
【0039】
〔実施例1 〕
上記の合成例により得られた六フッ化リン塩の示差熱分析を行った。下記の表1に融点、分解温度及び分解熱量(mJ/mg)を示す。また、テトラフルオロプロパノールに溶解し、その溶解可能限界(mg/ml)を下記の表1に示す。さらにメタノールに溶解し、UV吸収スペクトルを測定し、ピーク波長(λmax)を下記表1に示した。
【0040】
比較のため下記比較化合物を用いた。比較化合物2〜6に関しては、UVスペクトルのみを測定した。但し、比較化合物3〜6はクロロホルムに溶解したものをUVスペクトル測定した。記録媒体としたときに770〜830nmで記録、再生を行うためには、溶液系で650〜750nmのピーク波長(λmax)を有することが望まれ、これを超える場合には感度が低下する恐れがある。
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
【表1】
【0048】
上記実施例より明らかなように、トリメチンタイプでインドレニン環がニトロ基で置換された化合物は、N位にアルキル基を有するもの(比較例1−5)であっても、N位にシクロヘキシルアルキル基を有するもの(比較例1−6)であってもλmaxが580nmとなり実用範囲よりもかなり低い値を示し、トリメチンタイプでインドレニン環に置換基を持たないもの(比較例1−4)ではλmaxが564nmとなりさらに低い値を示す。トリメチンタイプでインドレニン環がベンゾ置換されたもの(比較例1−3)はλmaxが600nmとなり前者と比較すれば高い値を示すもののいまだ実用範囲よりもかなり低い値を示す。ペンタメチンタイプでインドレニン環に置換基を持たないもの(比較例1−2)ではλmaxが642nmとなりさらに高い値を示すもののいまだ実用範囲よりも低い値を示す。
【0049】
これに対して、ペンタメチンタイプでインドレニン環がベンゾ置換されたもの(実施例1−1、実施例1−2、比較例1−1)はλmaxが676〜680nmとなり、実用的な範囲に達することができる。
【0050】
しかし、これらペンタメチンタイプでインドレニン環がベンゾ置換されたものであってもN位にアルキル基を有する化合物(比較例1−1)では、分解熱量が−731mJ/mgとかなり大きな値を示すため感度が低下する欠点を有している。
【0051】
これに対して、本発明のペンタメチンタイプでインドレニン環がベンゾ置換されたものであってもN位にシクロヘキシルアルキル基を有する化合物(実施例1−3)では、分解熱量が−535mJ/mgと小さな値を示すため優れた感度を有する。
【0052】
さらに、これのカウンターアニオンを過塩素酸アニオンから六フッ化リンアニオンに変えた化合物(実施例1−1、実施例1−2)では、分解熱量が−37.9mJ/mgあるいは−80.3mJ/mgと小さな値を示すため優れた感度を有する。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、高感度な光学記録媒体に適する光学記録材料及び該化合物を用いた光学記録媒体を提供できる。とりわけ、770〜830nmのレーザーで記録、再生されるCD−R用の光学記録媒体として有効である。
Claims (5)
- 上記一般式(I)において、lが2であり、R1、R2がメチルである化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の光学記録材料。
- 上記一般式(I)において、lが2であり、R1、R2がメチルであり、Yが水素原子又はメチル基である化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の光学記録材料。
- 基体上に、請求項1〜3の何れかに記載の光学記録材料からなる薄膜を形成したことを特徴とする光学記録媒体。
- 770〜830nmのレーザーで記録、再生されることを特徴とする請求項4記載の光学記録媒体。
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