JP4127925B2 - 光学記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報をレーザ等による熱的情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体に使用される光学記録材料に関し、詳しくは、可視及び近赤外領域の波長を有し、且つ低エネルギーのレーザ等により高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体に使用される光学記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に光学記録媒体は、媒体と書き込み又は読み出しヘッドが接触しないので記録媒体が摩耗劣化しないという特徴を有しており、特に、情報を熱的情報として付与する光学記録媒体は暗室による現像処理が不要である利点を有することからその開発が盛んに行なわれている。
【0003】
このような光学記録媒体は記録光を熱として利用するものであり、例えば、基体上に設けた薄い記録層に、光学的に検出可能なピットを形成させることにより情報を高密度に記録させることができる。
【0004】
記録媒体への情報の書き込みは、記録層の表面に収束したレーザを走査し、照射されたレーザエネルギーを吸収した記録層にピットを形成させることによって行われる。この記録媒体に記録された情報は、形成されたピットを読み出し光で検出することができる。
【0005】
このような光学記録媒体の記録層としては、これまでアルミニウム蒸着膜等の金属薄膜、酸化テルル薄膜、ビスマス薄膜やカルコゲナイド系非晶質ガラス膜等の無機質が主に用いられていた。
【0006】
これらの薄膜は塗工法によって形成することが困難であり、スパッタリングや真空蒸着法により形成する必要があったが、その操作は煩雑であり、更に上記の無機質を用いた場合には、レーザ光に対する反射率が高い、熱伝導率が大きい、レーザ光の利用効率が低い等の欠点を有していた。
【0007】
このため、無機物質に代えて、半導体レーザによってピットを形成することのできる、光学記録材料としての色素を主体とする有機化合物を記録層として用いる方法が提案されている。
【0008】
これらの色素としては、例えば、インドレニン系、チアゾール系、イミダゾール系、チオキサゾール系、キノリン系、セレナゾール系等のシアニン色素が知られている。これらの色素は、シアニン色素カチオンとハロゲンアニオン、過塩素酸アニオン等の各種アニオンとの塩であり、特に、インドレニン系の色素は感度が高いので好ましく用いられている。
【0009】
このような色素を用いた光記録媒体に、コンパクトディスク(CD)規格に対応した波長770〜830nmの近赤外半導体レーザによって書き込み再生可能な光記録媒体(CD−R)が実用化されている。
【0010】
また、最近770nmよりも短波長の620〜690nmの赤色半導体レーザが開発され、ビームスポットをより小さくすることで記録密度を上げ、またデータ圧縮技術等を使って、動画が記録できるほどの大容量光記録媒体(デジタルバーサティリティーディスク、DVD)も開発されている。
【0011】
本発明は、このDVD規格に合致した、追記又は記録が可能な光記録媒体(DVD−R)に最適なシアニン色素に関するものである。
【0012】
例えば、書き込みを635nmで行い、読み出しに650nmの波長を利用する光記録媒体に用いる色素では、635nmに書き込みのための感度を持ち、且つ650nmに高い反射率を持つもの、すなわち分子吸光係数の大きいものが望ましい。
【0013】
これまで620〜690nmの赤色半導体レーザによる書き込みに対応した色素としては、例えば、特開昭59−55795号公報に、記録層にインドカルボシアニン色素を用いた光記録媒体が提案されている。
【0014】
しかしながら、これらの色素では、前記DVD−R規格の吸収波長に対して正確に合致しているとはいえず、また反射率についても充分とはいえなかった。
【0015】
したがって、本発明の目的は、光学記録媒体の記録層に使用される、光安定性、保存安定性及び溶媒への溶解性が良好であり、且つ、感度の高い光学記録材料を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、インドレニン系のシアニン色素に特定の置換基を持たせた化合物が、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0017】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記〔化2〕(前記〔化1〕と同じ)の一般式(I)で表される化合物からなることを特徴とする光学記録材料を提供するものである。
【0018】
【化2】
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光学記録材料について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る上記一般式(I)で表される化合物は、光学記録媒体の記録層に使用される色素である。
【0021】
上記一般式(I)において、式中、R1 で表される炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、ブチレン等が挙げられ、R2 中の置換基である炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、上記アルキル基から誘導される基が挙げられ、炭素原子数1〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、オクテニル等が挙げられ、炭素原子数1〜8のアルケニルオキシ基としては、上記アルケニル基から誘導される基が挙げられ、R2 中の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基で表されるR2 としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられ、炭素数1〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル等が挙げられる。
【0022】
An- で表されるアニオンとしては、例えば、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン、又は、ベンゼンスルホン酸アニオントルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン等の有機リン酸アニオン等の有機系アニオン、あるいは、例えば、クエンチャーアニオンとして、特開昭60−234892号公報に記載されたようなアニオンが挙げられる。該クエンチャーアニオンの代表例としては、下記〔化3〕の一般式(A)及び(B)で表されるアニオンが挙げられる。
【0023】
【化3】
【0024】
また、上記一般式(I)中のnは1〜3の整数を示すが、特にnが1である化合物が、書き込み及び再生の620〜690nmの波長に対して感度に優れるため好ましい。
【0025】
上記一般式(I)で表される化合物の代表例としては、下記化合物No.1〜13等が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニン色素カチオンで示している。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
上記一般式(I)で表される化合物からなる本発明の光学記録材料は、上記シアニン色素カチオンとアニオンとの塩であり、従来周知の方法に準じて製造することができる。
【0040】
次に、上記一般式(I)で表される化合物の具体的な合成例を挙げる。
【0041】
(合成例1)化合物No.6の六フッ化リン塩合成
▲1▼温度計、冷却管、窒素導入管つき丸底500mlフラスコに、4−ニトロフェニルヒドラジン15.3g(0.10mol)、酢酸30.0g(0.50mol)を仕込み、80℃で3−メチル−2−ペンタノン10.0g(0.10mol)を滴下し、100℃まで昇温させた。発熱に注意しながら濃硫酸19.6g(0.20mol)をゆっくり滴下し、滴下終了後一時間還流させた。冷却後、28重量%アンモニア水24.3g、10重量%水酸化ナトリウム水溶液16.0gで中和後、トルエン100ml、水100mlを加え油水分離を行った。トルエン層を三回水洗した後、無水硫酸ナトリウムで脱水、濃縮し、シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(重量)溶媒でカラム精製を行い2,3−ジメチル−3−エチル−5−インドレニン10.0g(収率46%)を得た。
【0042】
▲2▼200mlフラスコに上記▲1▼で得た2,3−ジメチル−3−エチル−5−インドレニン10.0g(0.039mol)、4−クロロベンゼンスルホン酸フェノキシエチルエステル12.2g(0.039mol)を仕込み、135℃で一時間反応させた後、酢酸エチル50gを加えて晶析させ、濾取、洗浄後、真空乾燥し淡茶色結晶5.7g(28%)を得た。
【0043】
▲3▼100mlフラスコに▲2▼で得た中間体5.3g、N,N−ジフェニルホルムアミド0.98g(0.0050mol)、ピリジン15.8g(0.20mol)、無水酢酸5.1g(0.050mol)を仕込み、115〜120℃で2時間反応させた。ジメチルホルムアミド36.9gと六フッ化リンカリウム3.7gを加え、100℃で一時間反応させた後、クロロホルム50g、水50gを加え油水分離を行った。クロロホルム相を二回水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲル、酢酸エチル溶媒でカラム精製で祖精製し、祖精製物をジメチルホルムアミド/メタノール=10.6/42.4(重量)から再結晶させ、得られた結晶を洗浄、乾燥し、目的の化合物である緑色結晶を0.57g(収率14.0%)得た。
【0044】
得られた結晶の光学的特性として次の結果を得た。
・λmax (クロロホルム溶液、以下同じ)=579.0nm
・ε(λmax におけるモル吸光係数、以下同じ)=2.10×105
【0045】
上記(合成例1)と同様に、化合物No.2〜5の六フッ化リン塩を合成し、各化合物についてλmax 及びεを測定した。それらの結果を下記〔表1〕に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明の光学記録材料は、光学記録媒体の記録層として適用され、その形成にあたっては従来周知の方法を用いることができる。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に溶解した溶液を基体上に塗布することによって容易に形成することができる。即ち、基体上に、上記一般式(I)で表される化合物からなる薄膜を記録層として形成した光学記録媒体を形成することができる。
【0048】
上記記録層の厚さは、通常、0.001〜10μであり、好ましくは0.01〜5μの範囲が適当である。上記記録層の形成方法は特に制限を受けず、例えばスピンコート法等の通常用いられる方法を用いることができる。
【0049】
本発明の光学記録材料を、光学記録媒体の記録層に含有させる際の該記録層に対する使用量は、好ましくは50〜100重量%である。
【0050】
また、上記記録層は、本発明の光学記録材料のほかに、必要に応じて、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0051】
更に、上記記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。これらの化合物としては、例えば、特開昭59−55795号公報に提案されているような公知の化合物が用いられる。該化合物は、記録層に対して好ましくは0〜50重量%の範囲で使用される。
【0052】
このような記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み光及び読み出し光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等が用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものが使用できる。
【0053】
また、上記記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等による保護層を形成することもできる。
【0054】
本発明の光学記録材料は、LD、CD、DVD、CD−R、DVD−R等の光ディスク用色素として使用することができ、特に書き込み再生に620〜690nmの波長の光を用いるDVD−Rに好適である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0056】
(実施例1)
チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μ)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、下記〔表2〕に示す色素及び芳香族ニトロソ化合物(DQ−24:旭電化工業(株)製)の1:0.1(重量比)のエチルセロソルブ溶液をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの記録層を形成し、更に、記録層上に100nmの金の反射膜を蒸着法により形成した。
このようにして作成された各媒体を、3.6m/sで回転させながら半導体レーザ(635nm、集光部出力7mW、周波数2kHz)を用いて基盤裏面側から書き込みを行い、次いで、半導体レーザ(650nm、集光部出力0.1mW)を読み出し光とし、基盤を通しての反射光を検出してスペクトラムアナライザにて、バンド巾30kHzでC/N比を測定した。
また、0.1mWのレーザを読み出し光とし、1μ秒巾、3kHzのパルスとして、静止状態で5分間照射した後及び40℃、相対湿度88%の条件下に2500時間保存した後の、基盤裏面側からの反射率の変化(%)を測定した。それらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(実施例2)
下記〔表3〕に示す色素を用いて実施例1と同様に各媒体を作成し、分光エリプソメータ(M−150、日本分光(株)製)を用いて屈折率(n)と消衰係数(k)を測定した。それらの結果を下記〔表3〕に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
(実施例3)
下記〔表4〕に示す色素を用いて実施例1と同様に各媒体を作成し、キセノン耐候性試験機(テーブルサン、スガ試験機(株)社製)を用いて、50000ルクスの光を照射し、λmax における吸光度半減期(λmax における吸光度の値が、媒体作成時の50%まで低下するのに要する時間)を測定した。それらの結果を下記〔表4〕に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
上記実施例から明らかなように、前記一般式(I)で表される化合物からなる本発明の光学記録材料を用いた場合は、従来のシアニン色素を用いた場合と比較して、書きこみ感度に優れ、照射後及び保存後の反射率の低下が著しく小さく、またnとkのバランスが優れることから、極めて信頼性の高い記録が可能となる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の光学記録材料は、光安定性、保存安定性及び溶媒への溶解性が良好であり、且つ感度の高いものである。
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