JP3841534B2 - 光学記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報をレーザ等により熱的情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体に使用される光学記録材料に関し、詳しくは、可視及び近赤外領域の波長を有し且つ低エネルギーのレーザ等により高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体に使用される光学記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に、光学記録媒体は、媒体と書き込みまたは読み出しヘッドが接触しないので記録媒体が摩耗劣化しないという特徴を有しており、特に、情報を熱的情報として付与する光学記録媒体は暗室による現像処理が不要である利点を有することからその開発が活発に行われている。
【0003】
このような光学記録媒体は記録光を熱として利用するものであり、例えば、基体の上に設けた薄い記録層に、光学的に検出可能なピットを形成させることにより情報を高密度に記録することができる。
【0004】
記録媒体への情報の書き込みは、記録層の表面に集束したレーザを走査し、照射されたレーザエネルギーを吸収した記録層にピットを形成させることによって行われる。この記録媒体に記録された情報は、形成されたピットを読み出し光で検出することができる。
【0005】
このような光学記録媒体の記録層としては、これまでアルミニウム蒸着膜等の金属薄膜、酸化テルル薄膜、ビスマス薄膜やカルコゲナイド系非晶質ガラス膜等の無機物質が主に用いられていた。
【0006】
これらの薄膜は塗工法によって形成することが困難であり、スパッタリングや真空蒸着法により形成する必要があるが、この方法はその操作が煩雑である欠点があった。しかも、上記の無機物質を用いた場合は、レーザ光に対する反射率が高い、熱伝導率が大きい、レーザ光の利用率が低い等の欠点があった。
【0007】
このため、無機物質に代えて、半導体レーザによってピットを形成することのできる、光学記録材料としての色素を主体とする有機化合物を記録層として用いる方法が提案されている。
【0008】
これらの色素としては、例えば、インドレニン系、チアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、キノリン系、セレナゾール系等のシアニン色素が知られている。これらの色素は、シアニン色素カチオンとハロゲンアニオン、過塩素酸アニオン等の各種のアニオンとの塩であり、特に、インドレニン系の色素は感度が高いので好ましく用いられている。
【0009】
このような色素を用いた光学記録媒体に、コンパクトディスク(CD)規格に対応した波長770〜830nmの近赤外半導体レーザによって書き込み再生の可能な光学記録媒体(CD−R)が実用化されている。
【0010】
また、最近770nmよりも短波長の620〜690nmの赤色半導体レーザが開発され、ビームスポットをより小さくすることで記録密度を上げ、またデータの圧縮技術などを使って、動画が記憶できるほどの大容量光学記録媒体(デジタルバーサティリティーディスク、DVD)も実用化されている。
【0011】
本発明は、このDVD規格に合致した、追記または記録が可能な光学記録媒体(DVD−R)に最適なシアニン色素に関するものである。
【0012】
これまで620〜690nmの赤色半導体レーザによる書き込みに対応した色素としては、例えば特開昭59−55795号公報等に、記録層にインドカルボシアニン色素を用いた光学記録媒体が提案されている。
【0013】
しかしながらこれらの色素は本来結晶性が大きく、DVD−R等のように薄膜として用いる場合には、該色素が時間の経過とともに徐々に結晶化し、感度や反射率の低下をきたしてしまう欠点を有していた。
【0014】
これまでも色素の結晶化を防ぐため、色素分子中に、立体的にかさ高い置換基を導入し、アモルファス化を図る等の対処をしてきた。しかし導入できる置換基は合成上限界があり、また特殊な置換基の導入は合成が困難となり、汎用性に欠ける問題があった。
【0015】
従って、本発明の目的は、光学記録媒体の記録層に使用される光学記録材料として有用な、光安定性、保存安定性及び溶媒への溶解性が良好であり、しかも、結晶性の低いシアニン色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の非対称インドレニン系シアニン色素を単独使用もしくは他の色素と併用することで、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記〔化4〕(前記〔化1〕と同じ)のΦ−9又はΦ−10で表される化合物からなることを特徴とする光学記録材料を提供するものである。
【0017】
【化4】
(式中、An- はアニオンを表す。)
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光学記録材料について詳細に説明する。
【0023】
さらに、An-で表されるアニオンとしては、例えば、塩素アニオン、臭素アニオン、沃素アニオン、弗素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化硼素アニオン等の無機系アニオン、または、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン等の有機リン酸アニオン等の有機系アニオン、あるいは、例えば、クエンチャーアニオンとして特開昭60−234892号公報に記載されたようなものが挙げられる。該クエンチャーアニオンの代表例としては、下記〔化7〕の一般式(A)および(B)で表されるアニオンが挙げられる。
【0024】
【化7】
【0025】
下記〔化8〕〜〔化19〕に示すΦ−1〜Φ−12のうち、Φ−9の化合物及びΦ−10の化合物が本発明の化合物である。尚、以下の例示では、アニオンを省いたシアニン色素カチオンで示している。
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
【化15】
【0034】
【化16】
【0035】
【化17】
【0036】
【化18】
【0037】
【化19】
【0038】
上記Φ−1〜Φ−12で表される化合物からなる光学記録材料は、上記シアニン色素カチオンとアニオンとの塩であり、3−メチルインドレニン誘導体と芳香族アルデヒド誘導体とを縮合反応した後、塩交換反応を行うことによって容易に合成することができる。
【0039】
次に、上記Φ−1〜Φ−12で表される化合物の具体的な合成例を挙げる。
【0040】
合成例1
2−(ジ−n−ブチルアミノフェニル−4’−ビニル)−1−(4”−ニトロベンジル)−3,3−ジメチル−5−ニトロ−3H−インドレニン過塩素酸塩(Φ−1の過塩素酸塩)の製造
【0041】
温度計、冷却管、窒素導入管つき丸底200mlフラスコに、N−(4’−ニトロベンジル)−5−ニトロ−2,3,3−トリメチルインドレニンブロマイド(Mw=394)11.8gとジ−n−ブチルアミノベンズアルデヒド(Mw=233 )9.2gとを加え、イソプパノール79gを溶媒として窒素気流下、82℃で2時間反応させた。反応終了後、メタノール30gで溶解した過塩素酸ナトリウム(Mw=140.5)5.6gを加え、65℃で30分反応させた。冷後析出した結晶を濾取し、得られた結晶をメタノール50gから再結晶を行い、緑色結晶13.4g(収率71%)を得た。λmax =595nm(クロロホルム溶液、以下同じ)ε=1.68×105 であった。
【0042】
合成例2〜12
Φ−2〜Φ−12の過塩素酸塩の製造
【0043】
置換基が、Φ−2からΦ−12の構造式に対応する原料(3−メチルインドレニン誘導体および芳香族アルデヒド誘導体)を用いる以外は合成例1と同様に合成を行った。各化合物のλmax 、εおよび収率を下記〔表1〕に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
本発明の光学記録材料は、光学記録媒体の記録層に適用され、該記録層の形成にあたっては従来周知の方法を用いることができる。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアルリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に溶解した溶液を基体上に塗布することによって容易に形成することができる。
【0046】
上記記録層の厚さは、通常、0.001〜10μであり、好ましくは0.01〜5μの範囲が適当である。上記記録層の形成方法は特に制限を受けず、例えばスピンコート法等の通常の方法を用いることができる。
【0047】
本発明に係る上記Φ−9又はΦ−10で表される化合物の含有量は、上記記録層100重量部中に好ましくは5〜100重量部である。また、上記Φ−9又はΦ−10で表される化合物とともにその他の色素を併用することもでき、この場合、本発明に係る上記Φ−9又はΦ−10で表される化合物とその他の色素との重量比(前者/後者)は、好ましくは5/95〜100/0、更に好ましくは10/90〜100/0である。該重量比が5/95未満であると保存安定性効果が低下することがあるため好ましくない。
【0048】
また、上記記録層は、本発明に係る上記Φ−9又はΦ−10で表される化合物の他に、必要に応じて、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、また界面活性剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0049】
更に、上記記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。これらは、例えば特開昭59−55795公報に提案されているような公知の化合物が用いられる。該化合物は、記録層100重量部中に好ましくは0〜50重量部の範囲で使用される。
【0050】
このような記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み光及び読み出し光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等が用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト等の任意の形状のものが使用できる。
【0051】
また上記記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成させることもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂等による保護層を形成することもできる。
【0052】
本発明の光学記録材料は、LD、CD、DVD、CD−R、DVD−R等の光ディスク用の色素として使用することができ、特に波長620〜690nmにおいて書き込み再生が可能な光学記録媒体に用いることが好ましく、とりわけ書き込み再生に620〜690nmの波長の光を用いるDVD−Rに好適である。
【0053】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、下記の実施例によって制限を受けるものではない。尚、下記の実施例中、実施例2−9及び2−10が本発明の実施例であり、その他の実施例は参考例である。
【0054】
実施例1
チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μ) を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、下記〔表2〕に示す重量比で混合された色素のエチルセルソルブ溶液をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの記録層を形成した。
【0055】
さらに記録層上に100nmの金の反射膜を蒸着法により形成した。
【0056】
このようにして作成した各媒体を、3.6m/sで回転させながら半導体レーザー (635nm、集光部出力7mW、周波数2KHz)を用いて基板裏面側から書き込みを行った。
【0057】
次いで、半導体レーザー (650nm、集光部出力0.1mW) を読み出し光とし、基板をとおしての反射光を検出してスペクトラムアナライザーにて、バンド巾30KHz でC/N比を測定した。
【0058】
また、0.1mWのレーザーを読み出し光とし、1μ秒巾、3KHz のパルスとして、静止状態で5分間照射した後及び40℃、相対湿度88%の条件下に2500時間保存した後の、基体裏面側からの反射率の変化(%)を測定した。
【0059】
それらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
【化20】
【0062】
実施例2
下記〔表3〕に示す色素Aと色素Yとを重量比1対3で混合した色素(実施例2-1 〜2-12)、又は色素A単独(実施例2-13)を用いて、実施例1と同様に各媒体を作成し、作成直後および60℃、相対湿度88%の条件下に2000時間保存した後の屈折率(n)を分光エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定した。それらの結果を〔表3〕に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
【化21】
【0065】
上記実施例から明らかなように、本発明に係る前記Φ−9又はΦ−10で表される化合物(非対称型シアニン色素)を用いた場合は、屈折率の変化が小さい(実施例2−9及び2−10参照)ことから、極めて信頼性の高い記録が可能となる。
【0066】
【発明の効果】
本発明の光学記録材料は、感度が高く、且つ光安定性、保存安定性及び溶媒への溶解性に優れ、しかも、結晶性の低いシアニン色素である。
従って、本発明の光学記録材料は、光学記録媒体に好適に使用されるものである。
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