JP3707759B2 - 情報記録媒体及びオキソノール化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高エネルギー密度のレーザ光を用いて情報の書き込みが可能な情報記録媒体及び情報記録媒体の製造に有用な色素化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な情報記録媒体(光ディスク)は追記型CD(所謂CD−R)とも呼ばれ、例えばコンピュータ用ディスクメモリーなどとして広く利用されている。CD−R型の光ディスクの基本構造は、ポリマーなどからなる透明な円盤状基板と、この上に設けられたTe、In等の金属又は半金属;又はシアニン系、金属錯体系、キノン系などの色素からなるレーザ光により情報の記録が可能な記録層とを有する。なお、通常は、該記録層の上に金などからなる反射層、更に樹脂製の保護層が順に積層状態で設けられている。
【0003】
光ディスクへの情報の書き込み(記録)は、通常は780nm付近の波長のレーザ光を照射することにより行われ、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的な変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより情報が記録される。一方、情報の読み取り(再生)も通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(ピットの生成などによる記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。
【0004】
色素からなる記録層は、金属のように蒸着法でなく、塗布により容易に形成できるため、製造コストの面で有利であり、更に金属記録層に比べて高感度であるなどの利点を有する。しかし色素記録層は、一般に熱、あるいは光に対する経時的な安定性が低いなどの問題がある。従って、長期間にわたって熱、あるいは光に対しても安定した性能を維持できる記録層の開発が望まれる。しかし、今まで必ずしも満足すべき性能を持つ記録層が開発されていないのが現状である。
【0005】
特開昭63−209995号公報には、オキソノール色素からなる記録層が基板上に設けられた情報記録媒体が開示されている。この色素化合物を用いることにより、長期間にわたり安定した記録再生特性を維持し得るとされている。そしてここには、分子内に塩の形でアンモニウムが導入されたオキソノール色素化合物が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の検討によれば、上記公報に記載されているオキソノール色素を記録層に含む情報記録媒体は、熱に対する保存性及び耐久性(繰り返しの再生)は改善されるものの、長時間日光などの光に曝された場合には再生不良が発生し易く、耐光性に対してはなお充分ではないことが判明した。
従って、本発明の主な目的は、記録特性を長期にわたって充分維持し得るような高い安定性、特に耐光性においても高い安定性を有する情報記録媒体を提供することである。
また本発明の目的は、上記のような保存安定性の高い情報記録媒体の製造に有用な新規なオキソノール色素化合物を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者の研究により、従来のオキソノール系色素化合物に対してオニウム原子に水素原子が結合していないオニウム塩、特に第四級アンモニウム塩を導入した色素化合物を用いることにより、従来に比べて耐光性においても更に改良された保存安定性の高い情報記録媒体を製造できることが見出された。
【0008】
本発明は、基板上に、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体において、該記録層が、下記の一般式(I−1)で表される色素化合物及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含むことを特徴とする情報記録媒体にある。
【0009】
【化15】
【0010】
[式中、A1 、A2 、B1 及びB2 は各々独立に置換基を表し、Y1 及びZ1 は各々独立に、上記の式A−1、A−2、A−3及びA−4からなる群より選ばれる炭素環もしくは上記の式A−5、A−6、A−7及びA−42からなる群より選ばれる複素環を形成するために必要な原子団を表し、EおよびGは各々独立に、共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、X1 は、=O、=NRまたは=C(CN)2 を表し、X2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表し(但し、Rは置換基を表す)、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 は各々独立に、置換されていてもよいメチン基を表し、Mk+は、正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンを表し、RaとRbは各々独立に水素原子もしくは置換基を表し、m及びnは各々独立に0、1または2を表し、x及びyは各々独立に0または1を表し、そしてkは1〜10の整数を表す。]
【0011】
また本発明は、一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物にもある。
【0012】
【化16】
【0013】
[式中、A3 、A4 、B3 およびB4 は各々独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数2〜18のアシル基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基、炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリールチオ基、炭素数2〜18のアシルオキシ基、スルホニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、又は4〜7員の複素環基を表し(これらの置換基は、更に上記置換基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい)、Y2 及びZ2 は各々独立に上記の式A−1、A−2、A−3及びA−4からなる群より選ばれる炭素環もしくは上記の式A−5、A−6、A−7及びA−42からなる群より選ばれる複素環を形成するために必要な原子団を表し(これらの環は更に上記A3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基で置換されていても良く、また4〜7員の炭素環もしくは4〜7員の複素環と縮合していてもよい)、L6、L7、L8 、L9 及びL10は各々独立に、上記A3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基からなる群より選ばれる一又は二の基で置換されていてもよいメチン基を表し、M2+は第4級アンモニウムイオンを表し、RaとRbは各々独立に水素原子もしくは置換基を表し、そしてm1及びn1は各々独立に0、1または2を表す。]
【0014】
上記の本発明は、以下の態様であることが好ましい。
(1)一般式(I−1)又は(I−2)において、Mk+が第4級アンモニウムイオンである。
(2)一般式(I−1)または(I−2)において、kが1〜4である。
(3)一般式(I−1)または(I−2)において、kが2である。
(4)一般式(I−1)又は(I−2)で表される色素化合物において、Mk+が下記一般式(II)もしくは( III )で表されるオニウムイオンである。
【0015】
【化17】
【0016】
一般式(II)において、R1 及びR2 は各々独立にアルキル基、 アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、R3 及びR4 は各々独立に置換基を表し、但し、R1 とR3 、R2 とR4 又はR3 とR4 は各々互いに連結して環を形成しても良く、q1及びr1は各々独立に0〜4の整数を表し、そしてq1とr1の双方が2以上の場合には、複数のR3 及び複数のR4 は各々互いに同じでもあっても異なっていてもよい。また、一般式(III)において、R5 及びR6 は各々独立にアルキル基、 アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、R7 及びR8 は各々独立に置換基を表し、但し、R5 とR6 、R5 とR7 、R6 とR8 又はR7 とR8 は各々互いに連結して環を形成しても良く、q2及びr2は各々独立に0〜4の整数を表し、そしてq2とr2の双方が2以上の場合には、複数のR7 及び複数のR8 は各々互いに同じでもあっても異なっていてもよい。
【0017】
本発明はまた、基板上に、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体において、該記録層が、下記一般式(I−1)で表される色素化合物及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含むことを特徴とする情報記録媒体にもある。
【0018】
【化18】
【0019】
[式中、A1 、A2 、B1 及びB2 は各々独立に置換基を表し、Y1 及びZ1 は各々独立に、炭素環もしくは複素環を形成するために必要な原子団を表し、EおよびGは各々独立に、共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、X1 は、=O、=NRまたは=C(CN)2 を表し、X2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表し(但し、Rは置換基を表す)、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 は各々独立に、置換されていてもよいメチン基を表し、Mk+は、正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンを表し、m及びnは各々独立に0、1または2を表し、x及びyは各々独立に0または1を表し、そしてkは2を表す。]
【0020】
本発明はまた、一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物にもある。
【0021】
【化19】
【0022】
式中、A3 、A4 、B3 およびB4 は各々独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数2〜18のアシル基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基、炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリールチオ基、炭素数2〜18のアシルオキシ基、スルホニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、又は4〜7員の複素環基を表し(これらの置換基は、更に上記置換基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい)、Y2 及びZ2 は各々独立に4〜7員の炭素環もしくは4〜7員の複素環を形成するために必要な原子団を表し(これらの環は更に上記A3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基で置換されていても良く、また4〜7員の炭素環もしくは4〜7員の複素環と縮合していてもよい)、L6 、L7 、L8 、L9 及びL10は各々独立に、上記A3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基からなる群より選ばれる一又は二の基で置換されていてもよいメチン基を表し、M2+は一般式(V)もしくは(VI)で表される第4級アンモニウムイオンを表し、そしてm1及びn1は各々独立に0、1または2を表す。
【0023】
R11及びR12は、各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、 炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を表し(これらの基は、式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基で置換されていてもよい)、R13及びR14は、各々独立に、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される基と同義であり、但し、R11とR13、R12とR14又はR13とR14は各々互いに連結して4〜7員環を形成しても良く、q3及びr3は各々独立に0〜4の整数を表し、q3とr3の双方が2以上の場合には、複数のR13及び複数のR14は各々互いに同じであっても異なっていてもよい、そして
【0024】
R15及びR16は、各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、 炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を表し(これらの基は、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基で置換されていてもよい)、R17及びR18は、各々独立に、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される基と同義であり、ただし、R15とR16、R15とR17、R16とR18又はR17とR18は各々互いに連結して4〜7員環を形成しても良く、そしてq4及びr4は各々独立に0〜4の整数を表し、q4とr4の双方が2以上の場合には、複数のR17及び複数のR18は各々互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
上記の式において、m1及びn1は共に1であるか、あるいはm1が0でn1が2、又はm1が2でn1が0であることが好ましい。
【0026】
上記の一般式(IV−2)では、Y2 及びZ2 が形成する炭素環もしくは複素環が、各々独立に、ピラゾロン環、チオバルビツール酸環、バルビツール酸環、インダンジオン環、又はヒドロキシフェナレンオン環であることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の情報記録媒体に用いられる色素化合物について説明する。
【0028】
本発明の情報記録媒体に用いられる色素化合物は、アニオン部(色素成分)とカチオン部(オニウム成分)からなる。
【0029】
まず、アニオン部について詳述する。
上記式において、A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0030】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メトキシエチル、エトキシカルボニルエチル、シアノエチル、ジエチルアミノエチル、ヒドロキシエチル、クロロエチル、アセトキシエチル、トリフルオロメチル等)。
【0031】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルケニル基(例、ビニル等)。
【0032】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルキニル基(例、エチニル等)。
【0033】
炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル等)。
【0034】
炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアラルキル基(例、ベンジル、カルボキシベンジル等)。
【0035】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、クロロアセチル等);
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルまたはアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等)。
【0036】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等)。
【0037】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)。
炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル等)。
【0038】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、メトキシエトキシ等)。
炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)。
【0039】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等)。
炭素数6〜10のアリールチオ基(例、フェニルチオ等)。
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルキシ、ベンゾイルオキシ、クロロアセチルオキシ等)。
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ等)。
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等)。
【0040】
無置換のアミノ基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、メチルスルファモイルアミノ、フェニルスルファモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)。
【0041】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル等)。
無置換のスルファモイル基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)。
【0042】
ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等);水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基。
ヘテロ環基(例、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、アミノスルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、及びクマリン環など)。
【0043】
A1 及びA2 で表される置換基は、ハメットの置換基定数(σp )値が0.2以上のものであることが好ましい。ハメットの置換基定数は例えば、Chem.Rev.91,165(1991)に記載されている。特に好ましい置換基は、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基である。
【0044】
B1 及びB2 で表される置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアミノ基であることが好ましい。
【0045】
Y1 に結合する[−C(=L1 )−(E)x −C(=X1 )−](以下、便宜的に、W1と称する。)と、Z1 に結合する[−C(−L5 )=(G)y =C(−X2 - ) −](以下、便宜的に、W2と称する)とはそれぞれ共役状態にあるため、Y1 とW1とで形成される炭素環もしくは複素環、及びZ1 とW2とで形成される炭素環もしくは複素環はそれぞれ共鳴構造の1つとして考えられる。
上記Y1 とW1、及びZ1 とW2とで形成される炭素環もしくは複素環は、4〜7員環が好ましく、特に好ましくは、5員環または6員環である。これらの環は更に他の4〜7員環と縮合環を形成していても良い。またこれらは置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として示したものが挙げられる。複素環を形成するヘテロ原子として好ましいものは、B、N、O、S、Se、及びTeである。特に好ましくは、N、O及びSである。
x及びyは、それぞれ独立に0または1であり、好ましくは共に0である。
【0046】
X1 は、=O、=NR又は=C(CN)2 を表す。またX2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表す。Rは置換基を表す。Rで表される置換基は、前述したA1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として示したものが挙げられる。Rは、アリール基であることが好ましい。特に好ましくはフェニルである。
本発明においては、X1 は、=Oであり、またX2 は、−Oである場合が好ましい。
【0047】
Y1 とW1、およびZ1 とW2で形成される炭素環としては例えば、以下のものが挙げられる。なお、例示中、Ra 及びRb は各々独立に、水素原子または置換基を表す。
【0048】
【化20】
【0049】
好ましい炭素環は、A−1、及びA−4で示される炭素環である。
【0050】
Y1 とW1、およびZ1 とW2で形成される複素環としては例えば、以下のものが挙げられる。なお、例示中、Ra 、Rb 及びRc は各々独立に、水素原子または置換基を表す。
【0051】
【化21】
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
【0054】
【化24】
【0055】
【化25】
【0056】
好ましい複素環は、A−5、A−6、A−7、A−8、A−9及びA−42で示される複素環である。特に好ましいものは、A−5(ピラゾロン環)、A−6(バルビツール酸環)、A−7(チオバルビツール酸環)及びA−42(ベンゾ[b]チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド環)で示される複素環である。
Ra 、Rb 及びRc で表される置換基は、前記A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
またRa 、Rb 及びRc はそれぞれ互いに連結して炭素環又は複素環を形成してもよい。上記炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、及びベンゼン環などの飽和または不飽和の炭素環を挙げることができる。また複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、及びピラジン環など飽和または不飽和の複素環を挙げることができる。これらの炭素環又は複素環は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、前記A1 、A2 、B1 、又はB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
【0057】
L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 で表されるメチン基は各々独立に、置換基を有していてもよいメチン基である。その置換基としては、例えば、前述したA1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基とした挙げたものが挙げられる。好ましい置換基は、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、アミノ基、カルバモイル基及びヘテロ環基である。又置換基同志が連結して5〜7員環(例、シクロペンテン環、1−ジメチルアミノシクロペンテン環、1−ジフェニルアミノシクロペンテン環、シクロヘキセン環、1−クロロシクロヘキセン環、イソホロン環、1−モルホリノシクロペンテン環、シクロヘプテン環)を形成してもよい。本発明においては、m及びnが共に1であるか、あるいはmが0でnが2、又はmが2でnが0である場合が好ましい。
【0058】
次に、カチオン部について詳述する。
Mk+で表されるオニウムイオンは、正電荷を持ったオニウム原子に水素原子が結合していないものである。
Mk+で表されるオニウムイオンとしては、例えば、第4級アンモニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、セレノニウムイオン、ヨードニウムイオンなどが挙げられる。Mk+は、シアニン色素ではないことが好ましい。好ましくは第4級アンモニウムイオンである。
【0059】
第4級アンモニウムは、一般に第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミンなど)あるいは含窒素複素環(ピリジン環、ピコリン環、2,2´−ビピリジル環、4,4´−ビピリジル環、1,10−フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、N−メチルイミダゾール環、ピラジン環、テトラゾール環など)をアルキル化(メンシュトキン反応)、アルケニル化、アルキニル化あるいはアリール化して得られる。
【0060】
Mk+で表される第4級アンモニウムイオンとしては、含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンが好ましく、特に好ましくは第4級ピリジニウムイオンである。
【0061】
kは、1〜10の整数を表す。好ましくは1〜4である。特に好ましくは2である。
【0062】
Mk+で表されるオニウムイオンは、下記一般式(II)または一般式(III)で示されるものが最も好ましい。これらの化合物は、通常2,2’−ビピリジルあるいは4,4’−ビピリジルを目的の置換基をもつハロゲン化物とのメンシュトキン反応(例えば、特開昭61−148162号公報参照)あるいは、特開昭51−16675号公報、及び特開平1−96171号公報に記載の方法に準ずるアリール化反応により容易に得ることができる。
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。R3 、R4 、R7 及びR8 は、各々独立に置換基(置換原子を含む)を表す。R3 とR4 、R5 とR6 、そしてR7 とR8 は、それぞれが互いに連結して環を形成してもよく、あるいはまたR1 とR3 、R2 とR4 、R5 とR7 、そしてR6 とR8 は、それぞれが互いに連結して環を形成してもよい。q1及びq2、そしてr1及びr2はそれぞれ0から4の整数を表し、q1、q2、r1及びr2が各々2以上の場合には、それらの複数のR3 、R4 、R7 及びR8 はそれぞれ互いに同じであっても異なってもよい。
【0066】
上記R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルキル基は、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基である。これらは、直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状であってもよい。これらの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、及びシクロプロピル等が挙げられる。
【0067】
アルキル基の置換基の例としては、以下のものを挙げることができる。
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル);
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル);
炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、ナフチル);
ハロゲン原子(例、F、Cl、Br等);
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ);
炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、p−メトキシフェノキシ);
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ);
炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールチオ基(例、フェニルチオ); 炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル);
【0068】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル);
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ);
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル);
炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例、ナフトキシカルボニル);
無置換のアミノ基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メチルスルホニルアミノ);
【0069】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル);
無置換のスルファモイル基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル);
シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;水酸基;
ヘテロ環基(例、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、クマリン環)。
【0070】
上記R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、1,3−ブタジエニル等が挙げられる。
アルケニル基の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0071】
上記R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルキニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル、2−プロピニル等が挙げられる。
アルキニル基の置換基は、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0072】
上記R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアリール基は、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
アリール基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。またこれらの他に、アルキル基(例えば、メチル、エチル等)も好ましい。
【0073】
上記R1 、R2 、R5 及びR6 で表される複素環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和又は不飽和の複素環であり、これらの例としては、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、及びクマリン環が挙げられる。複素環基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0074】
R3 、R4 、R7 及びR8 で表される置換基は、前記A1 、A2 、B1 およびB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
本発明においては、R3 、R4 、R7 及びR8 で表される置換基は、水素原子またはアルキル基であることが好ましい。特に好ましくは、水素原子である。
【0075】
本発明においては、R5 とR6 が互いに連結して環を形成している場合が好ましい。形成される環は5〜7員環が好ましく、より好ましくは6員環である。
またR3 とR4 、及びR7 とR8 はそれぞれ互いに連結して炭素環または複素環を形成している場合も好ましい。更に好ましくは炭素環であり、特に好ましくは、R3 、R4 、R7 及びR8 がそれぞれ結合しているピリジン環との縮合芳香環である。
【0076】
なお、一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物において、A3 、A4 、B3 及びB4 、Y2 およびZ2 、L6 、L7 、L8 、L9 およびL10、並びにm1及びn1は、それぞれ前述した一般式(I−1)又は一般式(I−2)におけるA1 、A2 、B1 及びB2 、Y1 およびZ1 、L1 、L2 、L3 、L4 およびL5 、並びにm及びnとそれぞれ同義であり、またそれぞれについて好ましい範囲も同義である。
また、一般式(V)又は一般式(VI)で表されるM2+において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18、並びにq3、r3、q4及びr4は、それぞれ前述した一般式(II)または一般式(III)におけるR1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 及びR8 、並びにq1、r1、q2及びr2とそれぞれ同義であり、またそれぞれについて好ましい範囲も同義である。
【0077】
本発明で用いられる一般式(I−1)で表される色素化合物または(I−2)で表される色素化合物のアニオン部(「B−」で表示)とカチオン部(「C−」で表示)の例を以下に具体的に記載する。
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
【化30】
【0081】
【化31】
【0082】
【化32】
【0083】
【化33】
【0084】
【化34】
【0085】
【化35】
【0086】
【化36】
【0087】
【化37】
【0088】
【化38】
【0089】
【化39】
【0090】
【化40】
【0091】
【化41】
【0092】
【化42】
【0093】
【化43】
【0094】
【化44】
【0095】
【化45】
【0096】
【化46】
【0097】
【化47】
【0098】
【化48】
【0099】
【化49】
【0100】
【化50】
【0101】
【化51】
【0102】
【化52】
【0103】
【化53】
【0104】
【化54】
【0105】
【化55】
【0106】
【化56】
【0107】
【化57】
【0108】
【化58】
【0109】
【化59】
【0110】
【化60】
【0111】
【化61】
【0112】
【化62】
【0113】
【化63】
【0114】
【化64】
【0115】
【化65】
【0116】
【化66】
【0117】
本発明で用いられる好ましい具体的な化合物例を下記の表1に示す。
表1において、化合物例は、アニオン部とカチオン部とを組み合わせてなるものである。例えば、以下に、化合物No.1とNo.5の例を挙げて説明する。化合物No.1[アニオン部(B−3)/カチオン部(C−1)]で示される化合物例、及び化合物No.5[アニオン部(B−3)/カチオン部(C−22)]で示される化合物例は、それぞれ下記の式で示される。
【0118】
【化67】
なお、化合物No.2〜No.4、及び化合物No.6以降の化合物例についても同様な意味である。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
本発明に係る一般式(I−1)および一般式(I−2)で表される化合物は、下記の一般式(VII −1)および一般式(VII −2)で表される色素化合物のアルカリ金属塩(例、Li塩、Na塩、K塩など)、アンモニウム塩(NH4+塩)、あるいはトリエチルアンモニウム塩(Et3 NH+ 塩)、トリブチルアンモニウム塩(Bu3 NH+ 塩)などの有機イオンを対塩とする化合物と、下記一般式(VIII)で表されるオニウム塩との水または有機溶媒中(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミドなど)における塩交換反応によって容易に合成できる。
【0123】
【化68】
【0124】
式中、A5 及びA6 、B5 及びB6 、Y3 及びZ3 、並びにL11、L12、L13、L14およびL15、X3 及びX4 、E1及びG1、m3及びn3、並びにx1及びy1は、それぞれ前述した一般式(I−1)または一般式(I−2)におけるA1 、A2 、B1 及びB2 、Y1 およびZ1 、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 、X1 及びX2 、E及びG、m及びn、並びにx及びyとそれぞれ同義である。
【0125】
一般式(VIII):Mk+・k/rX-r
式中、Xr-は陰イオンを表し、rは1以上(好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜2)の整数を表す。
陰イオンとしては、例えば、ハライドイオン(Cl- 、Br- 、I- )、スルホナートイオン(CH3 SO3 - 、p−トルエンスルホナートイオン、ナフタレン−1,5−ジスルホナートイオン)、ClO4 - 、BF4 - 、及びPF6 - を挙げることができる。
【0126】
なお、一般式(VII −1)および一般式(VII −2)で表される色素化合物は、一般に該当する活性メチレン化合物(例、ピラゾロン、チオバルビツール酸、バルビツール酸、インダンジオン、ヒドロキシフェナレンオン等)とメチン染料にメチン基またはポリメチン基を導入するためのメチン源との縮合反応によって合成することができる。この種の化合物についての詳細は、特公昭39−22069号、同43−3504号、同52−38056号、同54−38129号、同55−10059号、同58−35544号、特開昭49−99620号、同52−92716号、同59−16834号、同63−316853号、及び同64−40827号各公報、並びに英国特許第1133986号、米国特許第3247127号、同4042397号、同4181225号、同5213956号、及び同5260179号各明細書を参照することができる。
具体的には、モノメチン基の導入には、オルトギ酸エチル、オルト酢酸エチルなどのオルトエステル類またはN,N−ジフェニルホルムアミジン塩酸塩等が、トリメチン鎖の導入には、トリメトキシプロペン、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンまたはマロンアルデヒドジアニル塩酸塩(あるいはこれらの誘導体)等が、またペンタメチン鎖の導入には、グルタコンアルデヒドジアニル塩酸塩または1−(2,4−ジニトロフェニル)−ピリジニウムクロリド(あるいはこれらの誘導体)等がそれぞれ使用される。
【0127】
以下に、一般式(I−1)で表される色素化合物又は一般式(I−2)で表される色素化合物の合成例を記載する。
【0128】
(合成例1)化合物No.5の合成
0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液20mLの中に下記の化合物a1gを室温にて添加し撹拌した。この溶液に下記の化合物b0.5gを水5mLに溶解した水溶液を添加した。同温度で30分撹拌後、析出した結晶を濾過し、水及びエタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.23gを得た。λmax =654nm(メタノール中)
【0129】
【化69】
【0130】
【化70】
【0131】
(合成例2)化合物No.8の合成
0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液10mLの中に前記で用いた化合物a0.53gを室温にて添加し撹拌した。この溶液に下記の化合物c0.2gを水5mLに溶解した水溶液を添加した。同温度で30分撹拌後、析出した結晶を濾過し、水及びエタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.4gを得た。λmax =654nm(メタノール中)
【0132】
【化71】
【0133】
(合成例3)化合物No.9の合成
前記で用いた化合物a1.0gを水20mLに懸濁させ、ここに0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液20mLを室温にて添加し撹拌した。この溶液に下記の化合物d0.4gを水5mLに溶解した水溶液を添加した。同温度で30分撹拌後、析出した結晶を濾過し、水及びにエタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.2gを得た。λmax =654nm(メタノール中)
【0134】
【化72】
【0135】
(合成例4)化合物No.28の合成
下記の化合物e1.0gをメタノール10mLに加え撹拌しながら、25%アンモニア水0.1mLを室温で滴下した。この溶液に、前記で用いた化合物c0.5gを水2mLに溶解した溶液を添加し、そのまま30分撹拌を続けた。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.8gを得た。
λmax =637nm(メタノール中)
【0136】
【化73】
【0137】
(合成例5)化合物No.67の合成
下記の化合物f0.55gをジメチルホルムアミド(DMF)10mLに溶解した。更に前記で用いた化合物c0.17gをこの溶液に添加し、室温で1時間撹拌した。その後、水70mLを加え、析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.5gを得た。λmax =607nm(メタノール中)
【0138】
【化74】
【0139】
(合成例6)化合物No.71の合成
下記の化合物g0.93gをメタノール30mLに加え撹拌しながら、前記で用いた化合物c0.35gをメタノール20mLに溶解した溶液を添加し、そのまま2時間撹拌を続けた。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.9gを得た。λmax =633nm(メタノール中)
【0140】
【化75】
【0141】
(合成例7)化合物No.86の合成
下記の化合物h1.0gをメタノールに加え、更にトリエチルアミン0.35mLを添加して溶解した。この溶液に前記で用いた化合物c0.46gを添加し、室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.85gを得た。λmax =661nm(メタノール中)
【0142】
【化76】
【0143】
(合成例8)化合物No.89の合成
下記の化合物i1.1gを1規定の水酸化ナトリウム水溶液2.5mLに溶解した。この溶液に前記で用いた化合物d0.46gを添加し、室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.9gを得た。λmax =652nm(メタノール中)
【0144】
【化77】
【0145】
(合成例9〜11)
化合物No.45、46、及び98についても前記合成例2、あるいは合成例4と同様な操作で合成した。以下に合成した化合物のメタノール中における最大吸収波長を示す。
化合物No.45:λmax=654(nm)
化合物No.46:λmax=674(nm)
化合物No.98:λmax=603(nm)
【0146】
(合成例12)化合物No.1の合成
前記で用いた化合物a2.6gを0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液50mLに溶解した。この溶液にテトラメチルアンモニウムブロミド0.8gを加え、室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、水洗後乾燥して、目的物2.45gを得た。λmax =654nm(メタノール中)
【0147】
(合成例13〜15)
化合物No.3、6及び7においてもテトラメチルアンモニウムブロミドに代えてそれぞれ対応する第4級アンモニウムブロミドを用いて合成例12と同様な操作で合成した。合成した各化合物のメタノール中における最大吸収波長(λmax)は、全て654(nm)であった。
【0148】
(合成例16)化合物No.99の合成
下記の化合物j1.3gをメタノール10mLに加え撹拌しながら、25%アンモニア水0.15mLを室温で滴下した。この溶液にテトラブチルアンモニウムブロミド1.4gを加え、室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.2gを得た。λmax =671nm(メタノール中)
【0149】
【化78】
【0150】
(合成例17)化合物No.100の合成
前記で用いた化合物j1.3gをメタノール10mLに加え撹拌しながら、25%アンモニア水0.15mLを室温で滴下した。この溶液に、前記で用いた化合物c0.38gをメタノール20mLに溶解した溶液にて添加し、そのまま2時間攪拌を続けた。析出した結晶を濾別し、メタノール洗浄乾燥して、目的物0.7gを得た。λmax =671nm(メタノール中)
【0151】
(合成例18)化合物No.102の合成
上記合成例17において、化合物jの代わりに、下記の化合物k1.1gを用いたこと以外は同様な操作にて目的物0.45gを得た。λmax =655nm(メタノール中)
【0152】
【化79】
【0153】
(合成例19)化合物No.106の合成
下記の化合物1(エル)1.0gをメタノール10mlに加え、更にトリエチルアミン0.2mlを添加して溶解した。この溶液に下記の化合物m0.3gをメタノール10mlに溶解した溶液を添加して室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.6gを得た。λmax =636nm(メタノール中)
【0154】
【化80】
【0155】
【化81】
【0156】
(合成例20)化合物No.107の合成
前記で用いた化合物g1.6gをメタノール20mlに加え、更にトリエチルアミン0.5mlを添加して溶解した。この溶液に下記の化合物n1gをメタノール5mlに溶解した溶液を添加して室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物1.6gを得た。λmax =640nm(ジメチルホルムアミド中)
【0157】
【化82】
【0158】
(合成例21)化合物No.109の合成
下記の化合物o2.5gをジメチルホルムアミド50mlに加え、更にトリエチルアミン1mlを添加して溶解した。この溶液に、前記で用いた化合物n1.5gをメタノール5mlに溶解した溶液を添加した。さらにこの反応液にメタノール50mlを徐々に加え、室温で1時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物3gを得た。λmax =707nm(ジメチルホルムアミド中)
【0159】
【化83】
【0160】
(合成例22)化合物No.112の合成
下記の化合物p3.5gをメタノール50mlに加え、更にトリエチルアミン1.5mlを添加して溶解した。この溶液に下記の化合物q2.5gをメタノール10mlに溶解した溶液を添加した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物4.4gを得た。λmax =661nm(ジメチルホルムアミド中)
【0161】
【化84】
【0162】
【化85】
【0163】
(合成例23)化合物No.115の合成
化合物pの代わりに下記の化合物rを4.6gを用いた以外は合成例22と同様な操作にて目的物2.3gを得た。λmax =655nm(メタノール中)
【0164】
【化86】
【0165】
(合成例24)化合物No.116の合成
下記の化合物s0.3gをジメチルホルムアミド5mlとメタノール15mlの混合溶液に加え、攪拌しながら、更にこの中に、トリブチルアミン1.2mlを滴下した。室温で30分攪拌したのち、下記の化合物t0.30gを添加し、そのまま2時間攪拌を続けた。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.25gを得た。λmax =606nm(ジメチルホルムアミド中)
【0166】
【化87】
【0167】
【化88】
【0168】
(合成例25)化合物No.117の合成
下記の化合物u0.32gをメタノールに加え、更にトリブチルアミン1.2mlを添加して溶解した。この溶液に前記で用いた化合物t0.28gを添加し、室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、目的物0.22gを得た。λmax =609nm(ジメチルホルムアミド中)
【0169】
【化89】
【0170】
本発明に係る上記一般式(I−1)で示される化合物または一般式(I−2)で示される化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいはそれぞれ二種以上を併用してもよい。また一般式(I−1)で示される化合物と一般式(I−2)で示される化合物とを組み合わせて用いてもよい。あるいはまた本発明に係る化合物とこれら以外の色素化合物と併用してもよい。
【0171】
本発明の情報記録媒体は、前記一般式(I−1)で示される化合物及び/または一般式(I−2)で示される色素化合物を含む記録層を基板上に設けてなるものである。
本発明の情報記録媒体は、記録層の上に更に反射層が設けられていることが好ましく、更に反射層の上に、保護層が設けられていることが好ましい。
本発明の情報記録媒体は、例えば、以下に述べるような方法により製造することができる。
基板は、従来の情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィンおよびポリエステル等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状としてまたは剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。
【0172】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善および接着力の向上および記録層の変質防止などの目的で、下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;およびシランカップリング剤などの表面改質剤をあげることができる。
下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製したのち、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。
下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0173】
また、基板(または下塗層)上には、トラッキング用溝またはアドレス信号等の情報を表す凹凸(グルーブ)が形成されていることが好ましい。このグルーブは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形あるいは押出成形する際に直接基板上に形成されることが好ましい。
また、グルーブの形成を、プレグルーブ層が設けられることにより行ってもよい。プレグルーブ層の材料としては、アクリル酸のモノエステル、ジエステル、トリエステルおよびテトラエステルのうち少なくとも一種のモノマー(またはオリゴマー)と光重合開始剤との混合物を用いることができる。
プレグルーブ層の形成は、例えば、まず精密に作られた母型(スタンパー)上に上記のアクリル酸エステルおよび重合開始剤からなる混合液を塗布し、さらにこの塗布液層上に基板を載せたのち、基板または母型を介して紫外線を照射することにより塗布層を硬化させて基板と塗布層とを固着させる。次いで、基板を母型から剥離することにより得ることができる。
【0174】
プレグルーブ層の層厚は、一般に0.05〜100μmの範囲にあり、好ましくは0.1〜50μmの範囲である。
プレグルーブの深さは300〜2000Åの範囲にあることが好ましく、またその半値幅は、0.2〜0.9μmの範囲にあることが好ましい。またプレグルーブ層の深さを1500〜2000Åの範囲にすることにより反射率をほとんど低下させることなく感度を向上させることができ、特に好ましい。従って、このような光ディスク(深いプレグルーブの基板に一般式(I−1)または一般式(I−2)の色素からなる記録層およびその上に反射層が形成された光ディスク)は、高い感度を有することから、低いレーザパワーでも記録が可能となり、これにより安価な半導体レーザの使用が可能となる、あるいは半導体レーザの使用寿命を延ばすことができる。
【0175】
基板上(又は下塗層)の表面(グルーブが形成されている場合には、その表面上)には、本発明に係る前記一般式(I−1)で示される化合物及び/または一般式(I−2)で示される色素化合物からなる記録層が設けられる。
なお、記録層には、更に耐光性を向上させるために一重項酸素クエンチャーとして知られる種々の化合物を含有することができる。クエンチャーの代表例としては、特開平3−224793号公報に記載の一般式(III)、(IV)もしくは(V)で表される金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩や特開平2−300287号公報や特開平2−300288号公報に示されているニトロソ化合物などを挙げることができる。
【0176】
記録層の形成は、本発明に係る色素化合物、更に所望によりクエンチャー、結合剤などを溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成したのち乾燥することにより行うことができる。
色素記録層形成用の塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノ−ル、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレンングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。上記溶剤は使用する化合物の溶解性を考慮して単独または二種以上組み合わせて用いることができる。
塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤などの各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0177】
結合剤を使用する場合に結合剤の例としては、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、色素化合物1重量部に対して一般に10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下である。
このようにして調製される塗布液の濃度は一般に0.01〜10重量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5重量%の範囲にある。
【0178】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは50〜300nmの範囲にある。また、記録層は基板の片面のみならず両面に設けられていてもよい。
【0179】
上記記録層の上に、情報の再生時における反射率の向上の目的で、反射層が設けられる。
反射層の材料である光反射性物質はレーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組み合わせで、または合金として用いてもよい。
反射層は、例えば上記反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより記録層の上に形成することができる。反射層の層厚は一般には10〜300nmの範囲にあり、好ましくは50〜200nmの範囲である。
【0180】
反射層の上には、記録層などを物理的および化学的に保護する目的で保護層が設けられていることが好ましい。この保護層は、基盤の記録層が設けられていない側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けられてもよい。
保護層に用いられる材料としては、例えば、SiO、SiO2 、MgF2 、SnO2 、Si3 N4 などの無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
保護層は、たとえばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを接着層を反射層上及び/または基板上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらの適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのちこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。
保護層の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲にある。
【0181】
本発明の情報記録媒体は、上述した構成からなる単板であってもよいが、あるいは更に上記構成を有する二枚の基板を記録層が内側となるように向かい合わせ、接着剤等を用いて接合することにより、貼り合わせタイプの記録媒体を製造することもできる。あるいはまた、二枚の円盤状基板のうち少なくとも一方に上記構成を有する基板を用いて、リング状内側スペーサとリング状外側スペーサとを介して接合することにより、エアーサンドイッチタイプの記録媒体を製造することができる。
本発明の情報記録媒体は上記のような方法で製造することができる。
このようにして得られる、反射率が極めて高くかつ記録再生特性にも優れた光ディスクは、耐光性においても向上している。即ち、本発明の情報記録媒体は反射率が70%前後と高いため、市販のCDプレーヤで再生することができる。従って、高反射率を有しかつ耐光性に優れた光ディスクも得ることができる。
【0182】
本発明の情報記録方法は、上記情報記録媒体を用いて、例えば、次のように行われる。
まず、情報記録媒体を定線速度(CDフォーマットの場合は1.2〜14m/秒)または定角速度にて回転させながら、基板側から半導体レーザー光などの記録用の光を照射する。この光の照射により、記録層と反射層との界面に空洞を形成(空洞の形成は、記録層または反射層の変形、あるいは両層の変形を伴って形成される)するか、基板が肉盛り変形する、あるいは記録層に変色、会合状態の変化等により屈折率が変化することにより情報が記録されると考えられる。記録光としては500nm〜850nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザービームが用いられる。このレーザービームの波長は好ましくは500nm以上、800nm以下である。そしてCD−Rに適したレーザービームの波長は770〜790nmの範囲である。
上記のように記録された情報の再生は、情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら記録時と同じ波長を持つ半導体レーザ光を基板側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0183】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記載する。
【0184】
[実施例1]
本発明に係る前記オキソノール系色素化合物(化合物No.1)3gを、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール100mLに溶解し、記録層形成用塗布液を得た。この塗布液を、表面にスパイラルプレグルーブ(トラックピッチ:1.7μm、グルーブ幅:0.4μm、グルーブ深さ:0.16μm)が射出成形により形成されたポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ:1.2mm)のそのプレグルーブ面に、スピンコートにより塗布し、記録層を形成した。記録層の厚さは、プレグルーブ内で約200nmであった。
【0185】
記録層上にAuをスパッタして、厚さ約100nmの金属反射層を形成した。更に反射層上にUV硬化性樹脂(UV硬化剤SD−220、大日本インキ化学工業(株))を塗布し、紫外線を照射して層厚7μmの保護層を形成した。
以上の工程により本発明に従う情報記録媒体(以下、サンプル)を得た。
【0186】
[実施例2〜15]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、表2に示す、本発明に係るオキソノール色素化合物を同量使用した以外は、実施例1と同様にして本発明に従う情報記録媒体を得た。
【0187】
[比較例1]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、色素成分がカチオン部分でアニオン部分が過塩素酸イオンからなる下記のシアニン色素化合物(比較化合物A)を同量使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0188】
【化90】
【0189】
[比較例2]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(比較化合物B)を同量使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0190】
【化91】
【0191】
[比較例3]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(比較化合物C)を同量使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0192】
【化92】
【0193】
[比較例4]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部にアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(比較化合物D)を同量使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0194】
【化93】
【0195】
[比較例5]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(比較化合物E)を同量使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0196】
【化94】
【0197】
[情報記録媒体の評価]
(1)変調度
情報記録媒体に、波長780nmの半導体レーザ光を照射し、プレグルーブをトラッキングしながら、定線速度1.4m/秒で、記録レーザパワーを4〜9mWの範囲で種々変えて、3Tと11TのEFM信号を記録した。レーザパワー0.5mWで再生し、最適記録パワーにおける3Tと11Tの変調度を求めた。
(2)反射率
上記の再生時の最適記録パワーにおけるプレグルーブ(非記録領域)の反射率を求めた。
(3)耐光性
上記のように記録された情報記録媒体にXeランプ(14万ルックス)を18時間又は36時間照射し、照射後の変調度及び反射率を上記と同様に測定した。また照射後の情報記録媒体の色の有無を下記の観点で目視で調べた。
AA:退色していない。
BB:退色しているが色は残っており、許容範囲である。
CC:ほとんど色が残っていない。
得られた評価結果を表2に示す。
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
上記表2の結果から、第四級アンモニウムイオンを導入してなるオキソノール化合物を含有した記録層を有する本発明に従うサンプル(実施例1〜18)の場合には、従来から良く知られているシアニン色素を含有した記録層を有する比較用のサンプル(比較例1)や第三級アンモニウム塩(比較例2、3及び5)やアンモニウム塩(比較例4)を導入してなるオキソノール化合物を含有した記録層を有する比較用のサンプル(比較例2〜5)に比べて、Xeランプを照射後においても変調度の変化は比較的少なく、高い耐光性を有していることがわかる。特に、二価のカチオン部を持つオキソノール化合物を含有した記録層を有するサンプルの場合(実施例3〜15、及び実施例17〜26)に、顕著に耐光性が改善されることがわかる。
【0201】
【発明の効果】
正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンをカチオン成分として導入した前記の色素化合物を使用することにより、高い変調度及び反射率を維持しながら、特に耐光性が顕著に向上した情報記録媒体を得ることができる。
Claims (24)
- 基板上に、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体において、該記録層が、下記一般式(I−1)で表される色素化合物及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含むことを特徴とする情報記録媒体。
- Mk+が第4級アンモニウムイオンである請求項1に記載の情報記録媒体。
- kが2である請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
- 色素化合物が、下記一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物である請求項1に記載の情報記録媒体。
- M2+が、下記の一般式(V)で表されるイオンである請求項6に記載の情報記録媒体。
- M2+が、一般式(VI)で表されるイオンである請求項6に記載の情報記録媒体。
- m及びnが共に1であるか、あるいはmが0でnが2、又はmが2でnが0である請求項1に記載の情報記録媒体。
- X1 が、=Oであり、X2 が、−Oである請求項1に記載の情報記録媒体。
- 記録層上に更に反射層が設けられている請求項1〜10のいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- 一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物。
- M2+が、一般式(V)で表されるイオンである請求項12記載のオキソノール化合物。
- M2+が、一般式(VI)で表されるイオンである請求項12に記載のオキソノール化合物。
- m1及びn1が共に1であるか、あるいはm1が0でn1が2、又はm1が2でn1が0である請求項12に記載のオキソノール化合物。
- 基板上に、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体において、該記録層が、下記一般式(I−1)で表される色素化合物及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含むことを特徴とする情報記録媒体。
- 一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物。
R11及びR12は、各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、 炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を表し(これらの基は、式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基で置換されていてもよい)、R13及びR14は、各々独立に、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される基と同義であり、但し、R11とR13、R12とR14又はR13とR14は各々互いに連結して4〜7員環を形成しても良く、q3及びr3は各々独立に0〜4の整数を表し、q3とr3の双方が2以上の場合には、複数のR13及び複数のR14は各々互いに同じであっても異なっていてもよい。] - m1及びn1が共に1であるか、あるいはm1が0でn1が2、又はm1が2でn1が0である請求項19に記載のオキソノール化合物。
- 一般式(IV−2)において、Y2 及びZ2 が形成する炭素環もしくは複素環が、各々独立に、ピラゾロン環、チオバルビツール酸環、バルビツール酸環、インダンジオン環、又はヒドロキシフェナレンオン環である請求項19に記載のオキソノール化合物。
- 一般式(IV−1)で表されるオキソノール化合物または一般式(IV−2)で表されるオキソノール化合物。
R15及びR16は、各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、 炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を表し(これらの基は、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される置換基で置換されていてもよい)、R17及びR18は、各々独立に、前記式(IV−1)又は(IV−2)のA3 、A4 、B3 及びB4 で表される基と同義であり、ただし、R15とR16、R15とR17、R16とR18又はR17とR18は各々互いに連結して4〜7員環を形成しても良く、そしてq4及びr4は各々独立に0〜4の整数を表し、q4とr4の双方が2以上の場合には、複数のR17及び複数のR18は各々互いに同じであっても異なっていてもよい。] - m1及びn1が共に1であるか、あるいはm1が0でn1が2、又はm1が2でn1が0である請求項22に記載のオキソノール化合物。
- 一般式(IV−2)において、Y2 及びZ2 が形成する炭素環もしくは複素環が、各々独立に、ピラゾロン環、チオバルビツール酸環、バルビツール酸環、インダンジオン環、又はヒドロキシフェナレンオン環である請求項22に記載のオキソノール化合物。
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