JP3768346B2 - 情報記録媒体及び情報の記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高エネルギー密度のレーザ光を用いて情報の書き込み(記録)や読み取り(再生)が可能なヒートモード型の情報記録媒体及び情報記録方法に関するものである。特に本発明は、可視レーザ光を用いて情報を記録するのに適した追記型のデジタル・ビデオ・ディスク(DVD−R)のようなヒートモード型の情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な情報記録媒体(光ディスク)が知られている。該情報記録媒体は、追記型CD(所謂CD−R)とも称され、市販のCDプレーヤを用いて再生できる利点を有しており、最近のパーソナルコンピュータの普及に伴ってその需要も増大している。CD−R型の情報記録媒体の代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金などの金属からなる反射層、更に樹脂製の保護層をこの順に積層したものである。そして光ディスクへの情報の記録は、近赤外域のレーザ光(通常は780nm付近の波長のレーザ光)を光ディスクに照射して記録層を局所的に発熱変形させることにより行われる。一方情報の読み取り(再生)は通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を光ディスクに照射して、記録層が発熱変形された部位(記録部分)と変形されない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。
【0003】
近年、高い記録密度を持つ情報記録媒体が求められている。記録密度を高めるには、照射されるレーザの光径を小さく絞ることが有効であり、また波長が短いレーザ光ほど光径を小さく絞ることができるため、高密度化に有利であることが理論的に知られている。従って、従来から用いられている780nmより短波長のレーザ光を用いて記録再生を行うための光ディスクの開発が進められており、例えば、追記型デジタル・ビデオ・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。この光ディスクは、トラックピッチがCD−Rの1.6μmより狭い0.8μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に更に反射層および保護層を設けてなるディスクを二枚、あるいは該ディスクと略同じ寸法の円盤状保護基板とを該記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造となるように製造されている。そしてDVD−Rは、可視レーザ光(通常は600nm〜700nmの範囲の波長のレーザ光)を照射することにより、記録及び再生が行われ、CD−R型の光ディスクより高密度の記録が可能であるとされる。
【0004】
DVD−R型の情報記録媒体は、従来のCD−R型に比べて数倍の情報量を記録することができるため、高い記録感度を有していることは勿論のこと、特に大量の情報を速やかに処理する必要から高速記録に対してもエラーの発生率が少ないことが望まれる。また色素からなる記録層は、一般に熱、あるいは光に対する経時的な安定性が低いため、長期間にわたって熱、あるいは光に対しても安定した性能を維持できる記録層の開発が望まれる。
【0005】
特開昭63−209995号公報には、オキソノール色素からなる記録層が基板上に設けられたCD−R型の情報記録媒体が開示されている。この色素化合物を用いることにより、長期間にわたり安定した記録再生特性を維持し得るとされている。そしてここには、分子内に塩の形でアンモニウムが導入されたオキソノール色素化合物が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記公報に記載されているオキソノール色素をDVD−R型の情報記録媒体に用い、その性能について検討を行なった。その結果、該オキソノール色素を記録層に含むDVD−R型の情報記録媒体は、変調度も高く、またジッターも低い値を示すことから記録感度が高く、かつエラーの発生率も少なく、比較的高い記録特性を示すものの、長時間日光などの光に曝された場合には再生不良が発生し易く、従って耐光性に対してはなお充分でないことが判明した。
従って、本発明の主な目的は、記録特性を長期にわたって充分維持し得るような高い安定性(特に耐光性においても高い安定性)を有する、可視レーザ光により情報の記録及び再生を好適に行うことができるDVD−R型の情報記録媒体及び該情報記録媒体を用いる情報の記録方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者の研究により、従来のオキソノール系色素化合物に対してオニウム原子に水素原子が結合していないオニウム塩、特に第四級アンモニウム塩を導入した色素化合物を用いることにより、高い耐光性が備えられた、可視レーザ光による情報の記録及び再生が可能なDVD−R型の情報記録媒体を製造できることが見出された。
【0008】
本発明は、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体にある。
【0009】
【化5】
【0010】
[式中、A1 、A2 、B1 及びB2 は各々独立に置換基を表し、Y1 及びZ1 は各々独立に、炭素環もしくは複素環を形成するために必要な原子団を表し、EおよびGは各々独立に、共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、X1 は、=O、=NRまたは=C(CN)2 を表し、X2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表し(但し、Rは置換基を表す)、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 は各々独立に、置換されていてもよいメチン基を表し、Mk+は、正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンを表し、m及びnは各々独立に0、1または2を表し、x及びyは各々独立に0または1を表し、そしてkは1〜10の整数を表す、ただし、Y 1 及びZ 1 が形成する複素環は、後記する式(イ)の骨格を有する複素環基を包含しない。]
【0011】
また本発明は、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなる二枚の積層体を、あるいはトラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなる積層体と円盤状保護基板とを、それぞれの記録層が内側となるように接合してなるヒートモード型の情報記録媒体にもある。
【0012】
【化6】
【0013】
[式中、A1 、A2 、B1 及びB2 は各々独立に置換基を表し、Y1 及びZ1 は各々独立に、炭素環もしくは複素環を形成するために必要な原子団を表し、EおよびGは各々独立に、共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、X1 は、=O、=NRまたは=C(CN)2 を表し、X2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表し(但し、Rは置換基を表す)、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 は各々独立に、置換されていてもよいメチン基を表し、Mk+は、正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンを表し、m及びnは各々独立に0、1または2を表し、x及びyは各々独立に0または1を表し、そしてkは1〜10の整数を表す、ただし、Y 1 及びZ 1 が形成する複素環は、後記する式(イ)の骨格を有する複素環基を包含しない。]
【0014】
更に本発明は、上記の情報記録媒体に600nm〜700nmの波長のレーザ光を照射して情報を記録する情報の記録方法にもある。
【0015】
本発明の情報記録媒体及び情報の記録方法は、以下の態様であることが好ましい。
(1)一般式(I−1)又は(I−2)において、Mk+が第4級アンモニウムイオンである。
(2)一般式(I−1)または(I−2)において、kが1〜4である。
(3)一般式(I−1)または(I−2)において、kが2である。
(4)一般式(I−1)または(I−2)において、Mk+が、下記一般式(II)もしくは (III )で表されるオニウムイオンである。
【0016】
【化7】
【0017】
[式中、R1 及びR2 は各々独立にアルキル基、 アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、R3 及びR4 は各々独立に置換基を表し、但し、R1 とR3 、R2 とR4 及びR3 とR4 は互いに連結して環を形成しても良く、q1及びr1は各々独立に0〜4の整数を表し、そしてq1とr1の双方が2以上の場合には、複数のR3 及び複数のR4 は各々互いに同じであっても異なっていてもよい、そして
式中、R5 及びR6 は各々独立にアルキル基、 アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、R7 及びR8 は各々独立に置換基を表し、但し、R5 とR6 、R5 とR7 、R6 とR8 及びR7 とR8 は互いに連結して環を形成しても良く、q2及びr2は各々独立に0〜4の整数を表し、そしてq2とr2の双方が2以上の場合には、複数のR7 及び複数のR8 は各々互いに同じであっても異なっていてもよい。]
【0018】
なお、前述のように、一般式(I−2)におけるY1 及びZ1が形成する複素環は、下記式(イ)の骨格を有する複素環基を包含しない。
【0019】
【化8】
【0020】
(5a)Mk+が含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオン(特に、第4級ピリジニウムイオン)である。
【0021】
(6)一般式(I−1)又は(I−2)において、mが0でnが1であるか、あるいはmが1でnが0であるかのいずれかである。
(7)一般式(I−1)又は(I−2)において、X1 が、=Oであり、X2 が、−Oである。
(8)記録層上に更に反射層が設けられている。
(9)円盤状基板(円盤状保護基板も含む)が、その直径が120±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるか、あるいはその直径が80±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるかのいずれかである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の情報記録媒体は、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなるものである。
【0023】
【化9】
【0024】
以下に、本発明に用いられる上記色素化合物について説明する。
本発明に用いられる色素化合物は、色素成分である、アニオン性の成分(以下、アニオン部)と、オニウム成分である、カチオン性の成分(以下、カチオン部)からなる。
まず、アニオン部について詳述する。
上記式において、A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基としては、例えば以下のものを挙げることができる。
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メトキシエチル、エトキシカルボニルエチル、シアノエチル、ジエチルアミノエチル、ヒドロキシエチル、クロロエチル、アセトキシエチル、トリフルオロメチル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルケニル基(例、ビニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルキニル基(例、エチニル等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアラルキル基(例、ベンジル、カルボキシベンジル等);
【0025】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、クロロアセチル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、メトキシエトキシ等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等);炭素数6〜10のアリールチオ基(例、フェニルチオ等);
【0026】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルキシ、ベンゾイルオキシ、クロロアセチルオキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等);無置換のアミノ基、又は炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、メチルスルファモイルアミノ、フェニルスルファモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等);
【0027】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル等);無置換のスルファモイル基、又は炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等);ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等);水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基;ヘテロ環基(例、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピリジン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、クマリン環など)。炭素数1〜18(好ましくは炭素数0〜8)の置換もしくは無置換のアミジノ基(例、無置換のアミジノ等);
【0028】
A1 及びA2 で表される置換基は、ハメットの置換基定数(σp )値が0.2以上のものであることが好ましい。ハメットの置換基定数は例えば、Chem.Rev.91,165(1991)に記載されている。特に好ましい置換基は、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基である。
【0029】
B1 及びB2 で表される置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアミノ基であることが好ましい。
【0030】
Y1 に結合する[−C(=L1 )−(E)x −C(=X1 )−](以下、便宜的に、W1と称する)と、Z1 に結合する[−C(−L5 )=(G)y =C(−X2 - ) −](以下、便宜的に、W2と称する)とはそれぞれ共役状態にあるため、Y1 とW1とで形成される炭素環もしくは複素環、及びZ1 とW2とで形成される炭素環もしくは複素環はそれぞれ共鳴構造の1つとして考えられる。
上記Y1 とW1、及びZ1 とW2とで形成される炭素環もしくは複素環は、4〜7員環が好ましく、特に好ましくは、5員環または6員環である。これらの環は更に他の4〜7員環と縮合環を形成していても良い。またこれらは置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として示したものが挙げられる。複素環を形成するヘテロ原子として好ましいものは、B、N、O、S、Se、及びTeである。特に好ましくは、N、O及びSである。
x及びyは、それぞれ独立に0または1であり、好ましくは共に0である。
【0031】
X1 は、=O、=NR又は=C(CN)2 を表す。またX2 は、−O、−NR又は−C(CN)2 を表す。Rは置換基を表す。Rで表される置換基は、前述したA1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として示したものが挙げられる。Rは、アリール基であることが好ましい。特に好ましくはフェニルである。
本発明においては、X1 は、=Oであり、またX2 は、−Oである場合が好ましい。
【0032】
Y1 とW1、およびZ1 とW2で形成される炭素環としては例えば、以下のものが挙げられる。なお、例示中、Ra 及びRb は各々独立に、水素原子または置換基を表す。
【0033】
【化10】
【0034】
好ましい炭素環は、A−1、及びA−4で示される炭素環である。
【0035】
Y1 とW1、およびZ1 とW2で形成される複素環としては例えば、以下のものが挙げられる。なお、例示中、Ra 、Rb 及びRc は各々独立に、水素原子または置換基を表す。
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
好ましい複素環は、A−5、A−6、A−7、及びA−42で示される複素環であり、更に好ましくは、A−5、A−6、及びA−7である。
Ra 、Rb 及びRc で表される置換基は、前記A1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
【0042】
またRa 、Rb 及びRc はそれぞれ互いに連結して炭素環又は複素環を形成してもよい。上記炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、ベンゼン環などの飽和または不飽和の炭素環を挙げることができる。また上記複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリノ環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環などの飽和または不飽和の複素環を挙げることができる。これらの炭素環又は複素環は置換基を有していてもよい。置換基としてはA1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
【0043】
L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 で表されるメチン基は各々独立に、置換基を有していてもよいメチン基である。その置換基としては、例えば、前述したA1 、A2 、B1 及びB2 で表される置換基とした挙げたものが挙げられる。好ましい置換基は、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、アミノ基、カルバモイル基及びヘテロ環基である。又置換基同志が連結して5〜7員環(例、シクロペンテン環、1−ジメチルアミノシクロペンテン環、1−ジフェニルアミノシクロペンテン環、シクロヘキセン環、1−クロロシクロヘキセン環、イソホロン環、1−モルホリノシクロペンテン環、シクロヘプテン環)を形成してもよい。
本発明においては、mが1でnが0であるか、あるいはmが0でnが1である場合が好ましい。
【0044】
次に、カチオン部について詳述する。
Mk+で表されるオニウムイオンは、正電荷を持ったオニウム原子に水素原子が結合していないものである。
Mk+で表されるオニウムイオンとしては、例えば、第4級アンモニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、セレノニウムイオン、ヨードニウムイオンなどが挙げられる。Mk+は、シアニン色素ではないことが好ましい。好ましくは第4級アンモニウムイオンである。
【0045】
第4級アンモニウムは、一般に第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミンなど)あるいは含窒素複素環(ピリジン環、ピコリン環、2,2’−ビピリジル環、4,4’−ビピリジル環、1,10−フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、N−メチルイミダゾール環、ピラジン環、テトラゾール環など)をアルキル化(メンシュトキン反応による)、アルケニル化、アルキニル化あるいはアリール化して得られる。
【0046】
Mk+で表される第4級アンモニウムイオンとしては、含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンが好ましく、特に好ましくは第4級ピリジニウムイオンである。
【0047】
kは、1〜10の整数を表す。好ましくは1〜4である。特に好ましくは2である。
【0048】
Mk+で表されるオニウムイオンは、下記一般式(II)または一般式(III)で示されるものが最も好ましい。これらの化合物は、通常2,2’−ビピリジルあるいは、4,4’−ビピリジルを目的の置換基をもつハロゲン化物とのメンシュトキン反応(例えば、特開昭61−148162号公報参照)、あるいは特開昭51−16675号公報、及び特開平1−96171号公報に記載の方法に準ずるアリール化反応により容易に得ることができる。
【0049】
【化16】
【0050】
【化17】
【0051】
式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表す。R3 、R4 、R7 およびR8 は、各々独立に置換基(置換原子を含む)を表す。R3 とR4 、R5 とR6 、そしてR7 とR8 は、それぞれが互いに連結して環を形成してもよく、あるいはまたR1 とR3 、R2 とR4 、R5 とR7 、そしてR6 とR8 は、それぞれが互いに連結して環を形成してもよい。q1及びq2、そしてr1及びr2はそれぞれ0から4の整数を表し、q1、q2、r1及びr2が各々2以上の場合には、それらの複数のR3 、R4 、R7 及びR8 はそれぞれ互いに同じであっても異なってもよい。
【0052】
R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルキル基は、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基である。これらは、直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状であってもよく、これらの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、及びシクロヘキシル等が挙げられる。
【0053】
アルキル基の置換基の例としては、以下のものを挙げることができる。
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、ナフチル);ハロゲン原子(例、F、Cl、Br等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシ(例、フェノキシ、p−メトキシフェノキシ);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールチオ(例、フェニルチオ);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル);
【0054】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル);炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例、ナフトキシカルボニル);無置換のアミノ基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メチルスルホニルアミノ);
【0055】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル);無置換のスルファモイル基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル);シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;水酸基;ヘテロ環基(例、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、クマリン環)。
【0056】
R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、1,3−ブタジエニル等が挙げられる。
アルケニル基の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0057】
R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルキニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル、2−プロピニル等が挙げられる。
アルキニル基の置換基は、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0058】
R1 、R2 、R5 およびR6 で表されるアリール基は、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
アリール基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。またこれらの他に、アルキル基(例えば、メチル、エチル等)も好ましい。
【0059】
上記R1 、R2 、R5 及びR6 で表される複素環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和又は不飽和の複素環であり、これらの例としては、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、及びクマリン環が挙げられる。複素環基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0060】
R3 、R4 、R7 及びR8 で表される置換基は、前記A1 、A2 、B1 およびB2 で表される置換基として挙げたものと同義である。
本発明においては、R3 、R4 、R7 及びR8 で表される置換基は、水素原子またはアルキル基であることが好ましい。特に好ましくは、水素原子である。
【0061】
本発明においては、R5 とR6 が互いに連結して環を形成していることが好ましい。形成される環は5〜7員環が好ましく、より好ましくは6員環である。
またR3 とR4 、及びR7 とR8 はそれぞれ互いに連結して炭素環または複素環を形成している場合も好ましい。より好ましくは、炭素環であり、特に好ましくは、R3 、R4 、R7 及びR8 がそれぞれ結合しているピリジン環との縮合芳香環である。
【0062】
本発明で用いられる一般式(I−1)又は(I−2)で表される色素化合物のアニオン部とカチオン部の例を以下に具体的に記載する。
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
【化24】
【0070】
【化25】
【0071】
【化26】
【0072】
【化27】
【0073】
【化28】
【0074】
【化29】
【0075】
【化30】
【0076】
【化31】
【0077】
【化32】
【0078】
【化33】
【0079】
【化34】
【0080】
【化35】
【0081】
【化36】
【0082】
【化37】
【0083】
【化38】
【0084】
【化39】
【0085】
【化40】
【0086】
【化41】
【0087】
【化42】
【0088】
【化43】
【0089】
【化44】
【0090】
【化45】
【0091】
【化46】
【0092】
【化47】
【0093】
【化48】
【0094】
本発明で用いられる好ましい具体的な色素の化合物例を下記の表1に示す。
表1において、化合物例は、アニオン部とカチオン部とを組み合わせてなるものである。例えば、以下に、化合物No.1とNo.3の例を挙げて説明する。化合物No.1[アニオン部(B−3)/カチオン部(C−3)]で示される化合物例、及び化合物No.3[アニオン部(B−3)/カチオン部(C−22)]で示される化合物例は、それぞれ下記の式で示される。
【0095】
【化49】
なお、化合物No.2及びNo.4以降の化合物例についても同様な意味である。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
本発明に係る一般式(I−1)および一般式(I−2)で表される化合物は、下記の一般式(IV−1)および一般式(IV−2)で表される色素化合物のアルカリ金属塩(例、Li塩、Na塩、K塩など)、アンモニウム(NH4+)塩、あるいはトリエチルアンモニウム(Et3 NH+ )塩、トリブチルアンモニウム(Bu3 NH+ )塩などの有機イオンを対塩とする化合物と、下記一般式(V)で表されるオニウム塩との水または有機溶媒中(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミドなど)における塩交換反応によって容易に合成できる。
【0100】
【化50】
【0101】
式中、A3 及びA4 、B3 及びB4 、Y2 及びZ2 、並びにL6 、L7 、L8 、L9 およびL10、X3 及びX4 、E1及びG1、m2及びn2、並びにx1及びy1は、それぞれ前述した一般式(I−1)または一般式(I−2)におけるA1 、A2 、B1 及びB2 、Y1 およびZ1 、L1 、L2 、L3 、L4 及びL5 、X1 及びX2 、E及びG、m及びn、並びにx及びyとそれぞれ同義である。
【0102】
【化51】
【0103】
式中、Xr-は陰イオンを表し、rは1以上(好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜2)の整数を表す。陰イオンとしては、例えば、ハライドイオン(Cl- 、Br- 、I- など)、スルホナートイオン(CH3 SO3 - 、p−トルエンスルホナートイオン、ナフタレン−1,5−ジスルホナートイオン)、ClO4 - 、BF4 - 、PF6 - を挙げることができる。
【0104】
なお、一般式(IV−1)および一般式(IV−2)で表される色素化合物は、一般に該当する活性メチレン化合物(例、ピラゾロン、チオバルビツール酸、バルビツール酸、インダンジオン、ヒドロキシフェナレンオン等)とメチン染料にメチン基またはポリメチン基を導入するためのメチン源との縮合反応によって合成することができる。この種の化合物についての詳細は、特公昭39−22069号、同43−3504号、同52−38056号、同54−38129号、同55−10059号、同58−35544号、特開昭49−99620号、同52−92716号、同59−16834号、同63−316853号、同64−40827号各公報、及び特願平8−276829号明細書、並びに英国特許第1133986号、米国特許第3247127号、同4042397号、同4181225号、同5213956号、及び同5260179号各明細書を参照することができる。具体的には、モノメチン基の導入には、オルトギ酸エチル、オルト酢酸エチルなどのオルトエステル類またはN,N−ジフェニルホルムアミジン塩酸塩等が、トリメチン鎖の導入には、トリメトキシプロペン、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンまたはマロンアルデヒドジアニル塩酸塩(あるいはこれらの誘導体)等が、またペンタメチン鎖の導入には、グルタコンアルデヒドジアニル塩酸塩または1−(2,4−ジニトロフェニル)−ピリジニウムクロリド(あるいはこれらの誘導体)等がそれぞれ使用される。
【0105】
本発明に係る上記一般式(I−1)または一般式(I−2)で示される化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいはそれぞれ二種以上を併用してもよい。また一般式(I−1)で示される化合物と一般式(I−2)で示される化合物とを組み合わせて用いてもよい。あるいはまた本発明に係る化合物とこれら以外の色素化合物とを併用してもよい。
【0106】
本発明の情報記録媒体は、前記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で示される色素化合物を含む記録層が、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に設けてなるものである。本発明の情報記録媒体は、記録層の上に更に反射層が設けられていることが好ましく、更に反射層の上には、保護層を設けることもできる。
【0107】
本発明の情報記録媒体は、具体的には、下記の態様であることが好ましい。
(1)トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に前記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で示される色素化合物を含む記録層が設けられてなる二枚の積層体を、それぞれの記録層が内側となるように接合してなるDVD−R型の情報記録媒体。
(2)トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に前記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなる積層体と該円盤状基板と略同じ寸法の円盤状保護基板とを記録層が内側となるように接合してなるDVD−R型の情報記録媒体。
なお、上記の態様においても記録層の上には反射層が設けられていることが好ましい。また反射層の上には更に保護層が設けられていてもよい。
【0108】
本発明の情報記録媒体の製造法を以下に説明する。
本発明の情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するために、CD−Rに比べてより狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いること以外は、基本的にCD−R型の情報記録媒体の製造に用いられる材料を使用して製造することができる。即ち、DVD−R型の情報記録媒体は、基板上に、記録層、及び反射層、そして所望により保護層を順に形成した積層体を二枚作成し、記録層を内側にしてこれらを接着剤により接合することにより、あるいはまた、該積層体と、該積層体の基板と略同じ寸法の円盤状保護基板とを同様にして接着剤により接合させることにより、製造することができる。
【0109】
基板(保護基板も含む)は、従来の情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィンおよびポリエステル等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状としてまたは剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。基板としては、その直径が120±3mmで厚みが0.6±0.1mm、あるいはその直径が80±3mmで厚みが0.1mmのものを用いることが好ましい。
【0110】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善および接着力の向上および記録層の変質防止などの目的で、下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;およびシランカップリング剤などの表面改質剤を挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製したのち、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0111】
また、基板(または下塗層)上には、トラッキング用溝またはアドレス信号等の情報を表す凹凸(プレグルーブ)が形成されている。このプレグルーブは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形あるいは押出成形する際に直接基板上に前記のトラックピッチで形成することが好ましい。また、プレグルーブの形成を、プレグルーブ層を設けることにより行ってもよい。プレグルーブ層の材料としては、アクリル酸のモノエステル、ジエステル、トリエステルおよびテトラエステルのうち少なくとも一種のモノマー(またはオリゴマー)と光重合開始剤との混合物を用いることができる。プレグルーブ層の形成は、例えば、まず精密に作られた母型(スタンパー)上に上記のアクリル酸エステルおよび重合開始剤からなる混合液を塗布し、更にこの塗布液層上に基板を載せたのち、基板または母型を介して紫外線を照射することにより塗布層を硬化させて基板と塗布層とを固着させる。次いで、基板を母型から剥離することにより得ることができる。プレグルーブ層の層厚は、一般に0.05〜100μmの範囲にあり、好ましくは0.1〜50μmの範囲である。
【0112】
プレグルーブの深さは300〜2000Åの範囲にあることが好ましく、またその半値幅は、0.2〜0.9μmの範囲にあることが好ましい。またプレグルーブ層の深さを1500〜2000Åの範囲にすることにより反射率をほとんど低下させることなく感度を向上させることができ、特に好ましい。従って、このような光ディスク(深いプレグルーブの基板に一般式(I−1)または一般式(I−2)の色素からなる記録層およびその上に反射層が形成された光ディスク)は、高い感度を有することから、低いレーザパワーでも記録が可能となり、これにより安価な半導体レーザの使用が可能となる、あるいは半導体レーザの使用寿命を延ばすことができる。
【0113】
基板上(又は下塗層)のプレグルーブが形成されているその表面上には、本発明に係る前記式で示される色素化合物からなる記録層が設けられる。記録層には、更に耐光性を向上させるために一重項酸素クエンチャーとして従来から知られている種々の化合物を含有することができる。クエンチャーの代表例としては、特開平3−224793号公報に記載の一般式(III)、(IV)もしくは(V)で表される金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩や特開平2−300287号公報や特開平2−300288号公報に示されているニトロソ化合物などを挙げることができる。
【0114】
記録層の形成は、本発明に係る色素、更に所望によりクエンチャー、結合剤などを溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成したのち乾燥することにより行うことができる。
色素記録層形成用の塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノ−ル、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。上記溶剤は使用する化合物の溶解性を考慮して単独または二種以上組み合わせて用いることができる。なお、塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑財などの各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0115】
結合剤の例としては、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、色素100重量部に対して20重量部が上限であり、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。このようにして調製される塗布液中の色素の濃度は一般に0.01〜10重量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5重量%の範囲にある。
【0116】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは50〜300nmの範囲にある。
【0117】
上記記録層の上に、特に情報の再生時における反射率の向上の目的で、反射層が設けられる。反射層の材料である光反射性物質はレーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組み合わせで、または合金として用いてもよい。反射層は、例えば上記反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより記録層の上に形成することができる。反射層の層厚は一般には10〜300nmの範囲にあり、好ましくは50〜200nmの範囲である。
【0118】
反射層の上には、記録層などを物理的および化学的に保護する目的で保護層が設けられていてもよい。この保護層は、基盤の記録層が設けられていない側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けられてもよい。保護層に用いられる材料としては、例えば、SiO、SiO2 、MgF2 、SnO2 、Si3 N4 などの無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
【0119】
保護層は、たとえばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを接着層を反射層上及び/または基板上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのちこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲にある。
【0120】
以上の工程により、基板上に記録層、及び反射層、そして所望により保護層を設けた積層体を作製することができる。そして得られた二枚の積層体を各々の記録層が内側となるように接着剤で貼り合わせることにより、二つの記録層を持つDVD−R型の情報記録媒体を製造することができる。また得られた積層体と、該積層体の基板と略同じ寸法の円盤状保護基板とを、その記録層が内側となるように接着剤で貼り合わせることにより、片側のみに記録層を持つDVD−R型の情報記録媒体を製造することができる。いずれの態様のDVD−R型の情報記録媒体においてもその全体の厚みは、1.2±0.2mmとなるように調製することが好ましい。
【0121】
本発明の情報記録方法は、上記情報記録媒体を用いて、例えば、次のように行われる。
まず、情報記録媒体を所定の定線速度(CDフォーマットの場合は1.2〜14m/秒)または所定の定角速度にて回転させながら、基板側から半導体レーザ光などの記録用のレーザ光を照射する。この光の照射により、記録層と反射層との界面に空洞を形成(空洞の形成は、記録層または反射層の変形、あるいは両層の変形を伴って形成される)するか、基板が肉盛り変形する、あるいは記録層に変色、会合状態の変化等により屈折率が変化することにより情報が記録されると考えられる。記録光としては、可視域のレーザ光、通常600nm〜700nm(好ましくは620〜680nm、更に好ましくは、630〜650nm)の範囲の発振波長を有する半導体レーザービームが用いられる。記録光は、NAが0.55〜0.7の光学系を通して集光されることが好ましい。上記のように記録された情報の再生は、情報記録媒体を所定の定線速度で回転させながら記録時と同じ波長を持つ半導体レーザ光を基板側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。本発明の情報記録媒体は、通常のCDフォーマットの場合の1倍速はもとより、それ以上の高速での記録再生も可能である。
【0122】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記載する。
【0123】
[実施例1]
本発明に係る前記オキソノール系色素化合物(化合物No.1)3gを、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール100mLに溶解し、記録層形成用塗布液を得た。この塗布液を、表面にスパイラルプレグルーブ(トラックピッチ:0.8μm、グルーブ幅:0.4μm、プレグルーブ深さ:0.15μm)が射出成形により形成されたポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ:0.6mm)のそのプレグルーブ面に、スピンコートにより塗布し、記録層を形成した。記録層の厚さは、プレグルーブ内で約200nmであった。
次いで、記録層上にAuをスパッタして、厚さ約100nmのAuからなる反射層を形成し、基板上に、記録層及び反射層が順に設けられた積層体を得た。
【0124】
別に、ポリカーボネート保護基板(直径:120mm、厚さ:0.6mm)を用意した。
次いで、上記積層体とポリカーボネート保護基板とを記録層が内側となるように接着剤を用いて貼り合わせ、厚さ1.2mmの本発明に従うDVD−R型の情報記録媒体(以下、単にサンプルと称す)を製造した。
【0125】
[実施例2〜19]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、表2に示す、本発明に係るオキソノール色素化合物を同量使用した以外は実施例1と同様にして本発明に従うDVD−R型の情報記録媒体を得た。
【0126】
[比較例1]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(化合物A)を同量使用した以外は実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0127】
【化52】
【0128】
[比較例2]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(化合物B)を同量使用した以外は実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0129】
【化53】
【0130】
[比較例3]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部にアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(化合物C)を同量使用した以外は実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0131】
【化54】
【0132】
[比較例4]
実施例1において、前記オキソノール色素化合物(化合物No.1)の代わりに、カチオン部に三個のエチル基で置換されたアンモニウム塩を持つ下記のオキソノール色素化合物(化合物D)を同量使用した以外は実施例1と同様にして比較用の情報記録媒体を得た。
【0133】
【化55】
【0134】
[情報記録媒体の評価]
(1)変調度及びジッター
上記実施例及び比較例の情報記録媒体に、波長635nmの半導体レーザ光をNA0.6のレンズで集光し、線速度3.68m/s、変調周波数4MHzで信号を記録し、変調度のパワー依存性と最適パワーにおけるジッターを測定した。
【0135】
(2)耐光性
上記のように記録された情報記録媒体にXeランプ(14万ルックス)を8時間照射し、照射後の変調度及びジッターを上記と同様に測定した。また照射後の情報記録媒体の色の有無を以下の観点で目視で調べた。
AA:退色していない。
BB:退色しているが色は残っており、許容範囲である。
CC:ほとんど色が残っていない。
得られた評価結果を表2に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
上記表2の結果から、第四級アンモニウムイオンを導入してなるオキソノール化合物を含有した記録層を有する本発明に従うサンプル(実施例1〜19)の場合には、Xeランプを照射後においても変調度は比較的高い値で維持されており、またジッターも比較的低い値を示していることから、高い記録感度と共にエラーの発生率も少なく、良好な記録特性が維持されていることがわかる。また照射後の退色も殆どないこともわかる。従って、本発明に従う情報記録媒体は、高い耐光性を有していると共に、高速記録や高周波数記録に適しているということができる。特に前記一般式(II)又は(III)で表される第四級アンモニウムイオンを含む二価のカチオン部を持つオキソノール化合物を含有した記録層を有するサンプルの場合(実施例3、及び実施例6〜19)には、耐光性が顕著に改善されることがわかる。
【0138】
一方、第三級アンモニウム塩(比較例1、2及び4)やアンモニウム塩(比較例3)を導入してなるオキソノール化合物を含有した記録層を有する比較用のサンプル(比較例1〜4)の場合には、Xeランプを照射後においては変調度、ジッター共に測定不可となり、記録特性は低下し易くなり、また退色し易いこともわかる。
【0139】
【発明の効果】
正電荷を持つオニウム原子に水素原子が結合してないオニウムイオンをカチオン成分として導入した本発明に係る色素化合物を使用することにより、光照射後においても記録感度が高く、またエラーの発生率も少ないなど高い記録特性が維持されると共に、退色も殆どないDVD−R型の情報記録媒体を得ることができる。特に、二価のカチオン部を持つオキソノール色素化合物を用いることにより、より高い耐光性を有し、かつDVD−R型に好適な情報記録媒体を製造することができる。
Claims (11)
- トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む、レーザ光により情報の記録が可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体。
- M k+ が含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンである請求項1に記載の情報記録媒体。
- Mk+が第4級ピリジニウムイオンである請求項2に記載の情報記録媒体。
- kが2である請求項1に記載の情報記録媒体。
- M k+ が、下記一般式( II )もしくは (III )で表されるオニウムイオンである請求項1に記載の情報記録媒体。
R 5 及びR 6 は各々独立に、アルキル基、 アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、R 7 及びR 8 は各々独立に置換基を表し、但し、R 5 とR 6 、R 5 とR 7 、R 6 とR 8 又はR 7 とR 8 は互いに連結して環を形成しても良く、q2及びr2は各々独立に0〜4の整数を表し、そしてq2とr2の双方が2以上の場合には、複数のR 7 及び複数のR 8 は各々互いに同じであっても異なっていてもよい。] - mが1でnが0であるか、又はmが0でnが1であるかのいずれかである請求項1に記載の情報記録媒体。
- X 1 が、=Oであり、X 2 が、−Oである請求項1に記載の情報記録媒体。
- トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなる二枚の積層体を、あるいはトラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に下記一般式(I−1)及び/又は一般式(I−2)で表される色素化合物を含む記録層が設けられてなる積層体と円盤状保護基板とを、それぞれの記録層が内側となるように接合してなるヒートモード型の情報記録媒体。
- 記録層上に更に反射層が設けられている請求項1〜8のいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- 円盤状基板が、その直径が120±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるか、あるいはその直径が80±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるかのいずれかである請求項1〜9のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- 請求項1〜10のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体に600nm〜700nmの波長のレーザ光を照射して情報を記録する情報の記録方法。
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