JP4260062B2 - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光ピックアップ装置に関し、特に、波長の異なる数種のレーザ光を記録媒体に照射する互換型の光ピックアップ装置に用いて好適なものである。
現在、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等、様々な光ディスクが商品化され普及している。さらに、最近では、青紫レーザ光を用いて情報を記録再生する次世代DVDの規格化が進められている。この次世代DVDは、波長405nm程度の青紫レーザ光を用いて情報を記録再生するものである。レーザ光の短波長化によって、さらなる高密度化を図ることができる。
このように、ディスクの多様化が進むと、異なる種類のディスクに対し記録再生を行い得る、いわゆる互換型の光ピックアップ装置の開発が要求される。ここで、波長の異なるレーザ光をディスクに照射するには、それぞれの波長のレーザ光を出射する半導体レーザを個別に配する手法が採られ得る。しかし、こうすると、それぞれの半導体レーザを配するためのスペースと、各レーザ光を対物レンズに導くための光学素子が個別に必要となり、外形寸法の大型化と部品点数の増加を招く。そこで、一つのCAN内に出射波長の異なる複数のレーザ素子を同時に装備する手法が検討されている。こうすると、半導体レーザの配置スペースを削減でき、且つ、各レーザ光について光学系を共用できるようになる。
ところが、このように一つのCAN内に複数のレーザ素子を装備すると、各レーザ素子の配置ギャップに応じて、レーザ光の光軸間にズレが生じる。このため、一つのレーザ光の光軸に光学系を位置合わせすると、他のレーザ光の光軸が光学系に対してずれてしまい、これら他のレーザ光にて記録再生を行う際に、記録媒体または光検出器上のレーザ光に収差が生じ、光学特性が劣化するとの問題が生じる。
そこで、以下の特許文献1では、数種のレーザ素子を収容した半導体レーザの直後に複屈折素子を配し、この複屈折素子にてそれぞれのレーザ光の光軸を一致させてから、光学系にレーザ光を導くようにしている。すなわち、基準となるレーザ光の偏光面とその他のレーザ光の偏光面が互いに直交するよう複数のレーザ素子を同一CAN内に配すると共に、この半導体レーザの直後に、基準レーザ光はそのまま通過させ、その他のレーザ光は基準レーザ光の光軸に一致するように屈折させる複屈折素子を配する。かかる構成により、各レーザ光の光軸を一致させた後に、レーザ光を後段の光学系に導くことができ、もって、各波長のレーザ光を記録媒体に対し収差なく収束させることができる。
また、以下の特許文献2には、ディスクからの反射光を受光する光検出器の直前に回折格子を配し、これにより、一つの光検出器に各波長の反射光を導く技術が記載されている。すなわち、同一CAN内に3つのレーザ素子を配し、各レーザ素子から出射される波長の異なるレーザ光を同一光学系にてディスク上に収束させ、その反射光を、前記回折格子にて回折させ、一つの光検出器上に収束させるものである。かかる構成により、各レーザ光を光検出器に適正に収束させることができ、乱れのない検出信号を得ることができる。
特開平6−131688号公報 特開平11−134702号公報
上記特許文献1に記載の技術によれば、別途、複屈折素子が必要となり、また、基準となるレーザ光の偏光面とその他のレーザ光の偏光面が直交するよう、それぞれのレーザ素子を形成する必要がある。しかし、このように偏光面を相違させながらレーザ素子を形成するのは容易ではなく、また、複屈折素子は高価であるため、光ピックアップ装置全体のコスト上昇を招くとの問題も生じる。
さらに、複屈折素子における屈折作用には波長依存性があるものの、互換型光ピックアップ装置にて用いられるレーザ光の波長を考慮すると、各波長のレーザ光を複屈折素子にて屈折させたときの屈折角は、それほど変わらないものとなる。たとえば、CD用のレーザ光(波長780nm)とDVD用のレーザ光(波長655nm)との間には100nm程度の波長差しかないため、複屈折素子における両レーザ光の屈折角は殆ど同じ大きさとなる。
したがって、CD用のレーザ光とDVD用のレーザ光を複屈折素子による屈折によって次世代DVD用のレーザ光に光軸合わせしようとする場合には、CD用レーザ光とDVD用レーザ光を、光軸がほぼ一致する程度にまで接近させた状態で複屈折素子に入射させる必要が生じるが、製造上、レーザ素子をそこまで接近させて配置するのは不可能に近い。よって、CD用レーザ光(波長780nm)とDVD用レーザ光(波長655nm)の光軸を複屈折素子にて次世代DVD用レーザ光の光軸に一致させることは極めて困難である。
また、特許文献2の発明によれば、光検出器の直前に配された一つの回折格子によって各波長の反射光に回折作用を施し、それぞれ光検出器上に導くものであるから、各波長のレーザ光の光軸間に距離変動が生じた場合には、かかる距離変動に応じて回折格子の設計を適宜変更しない限り、各波長のレーザ光を適正に光検出器上に導くことができない。
しかし、製造誤差等によってレーザ素子間の配置ギャップに変動が生じたような場合に、一々、その配置ギャップに応じて回折格子を設計し直すのは現実的でない。よって、かかる場合には、実際上、既存の回折格子をそのまま使わざるを得ず、このため、光軸補正を適正に行うことはできなくなる。また、メーカ毎にレーザ素子間の配置ギャップの設計値が相違するような場合には、それに応じてそれぞれ個別に、回折格子を準備する必要が生じる。
そこで、本発明は、コスト上昇を抑制しながら、円滑に光軸調整を行なうことができ、しかも、レーザ素子間の配置ギャップに変動が生じた場合にも的確に光軸補正を行ない得る光ピックアップ装置を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み、本発明は以下の特徴を有する。
本発明は、記録媒体に対し波長の異なるレーザ光を照射する光ピックアップ装置において、出射波長がλ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の3つのレーザ素子からなっており、且つ、出射波長が最も短いレーザ素子を挟んで他の2つのレーザ素子が並ぶようにして同一筺体内に収容された半導体レーザと、前記レーザ素子から出射された各レーザ光の光軸を回折作用によって一致させる回折格子とを備え、前記回折格子は、波長λ2、λ3のレーザ光に対応してそれぞれ準備されるとともに、波長λ2、λ3のレーザ光の±n次回折光(nは1以上の整数)を波長λ1のレーザ光の光軸に整合させる回折作用を波長λ2、λ3のレーザ光に付与するように、格子パターンのステップの高さがそれぞれ調整されていることを特徴とする。
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。但し、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
本発明によれば、光軸調整用の光学素子として安価な回折格子を用いるものであるから、光ピックアップ装置のコスト上昇を抑制することができる。また、光軸調整を行おうとするレーザ光毎にそれぞれ個別に回折格子を準備するものであるから、レーザ素子間の配置ギャップに変動が生じても、対応する回折格子を光軸方向に位置調整することで、当該レーザ光の光軸を基準となる光軸に整合させることができる。このように、本発明によれば、光ピックアップ装置のコスト上昇を抑制しながら、簡易且つ円滑に、レーザ光の光軸調整を行なうことができる。
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1に実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す。なお、この光ピックアップ装置は、CD/DVD/次世代DVD用の互換型として用いられるものである。また、同図中、再生回路201、サーボ回路202およびコントローラ203は、光ディスク装置側の構成である。
図示の如く、光ピックアップ装置は、3波長レーザ101と、第1の回折格子102と、コリメータレンズ103と、偏光BS(ビームスプリッタ)104と、ミラー105と、開口制限素子106と、波面補正素子107と、λ/4板108と、対物レンズ109と、集光レンズ110と、第2の回折格子111と、光検出器112と、対物レンズアクチュエータ300を備えている。
3波長レーザ101は、CD用のレーザ光(波長780nm)、DVD用のレーザ光(波長655nm)、次世代DVD用のレーザ光(波長408nm)をそれぞれ出射する3つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。ここで、それぞれのレーザ素子は一つの直線上に並ぶよう所定のギャップをおいて配置されている。また、各素子から出射されるレーザ光は互いに偏光面が平行となっている。なお、各レーザ素子の配置については後述する。
第1の回折格子102は、3波長レーザ101から出射されるレーザ光のうち、CD用レーザ光の光軸を、回折作用によって、次世代DVD用レーザ光の光軸に整合させる。すなわち、第1の回折格子102には、CD用レーザ光の光軸ずれを補正できるよう設計されたパターンが形成されている。なお、回折格子の構成および光軸ずれの補正作用については後述する。
コリメータレンズ103は、第1の回折格子102から入射された各波長のレーザ光を平行光に変換する。ここで、コリメータレンズ103は、たとえば、各波長のレーザ光に対し色消し効果を実現できるよう、アッベ数と曲率(球面)が調整された複数枚のレンズを貼り合わせて形成されている。
偏光BS104は、その偏光面が3波長レーザ101から出射されるレーザ光の偏光面に一致するように調整・配置されている。したがって、コリメータレンズ103によって平行光に変換された各波長のレーザ光は、それぞれ偏光BS104をほぼ全透過する。
ミラー105は、偏光BS104からのレーザ光の光路を対物レンズ109方向に立ち上げる。
開口制限素子106は、各ディスクの基板厚に応じてレーザ光の外周を遮光し、これにより、対物レンズ109に対する各レーザ光の開口数(NA)を調整する。すなわち、対物レンズ109の開口数は、ディスク毎の基板厚に応じて、あらかじめレーザ光毎に決められており、開口制限素子106は、ディスクの基板厚に対応する開口数となるようレーザ光の外周部を遮光し、各レーザ光を適正な有効径にて対物レンズ109に入射させる。
たとえば、当該光ピックアップ装置がCD/DVD/次世代DVD(基板厚0.6mm)互換用である場合、CDの基板厚(1.2mm)のみが他のディスクに比べて大きく、これに応じてCD用レーザ光のNAのみが他に比べて小さく設定さている。開口制限素子106は、CD用レーザ光のみ外周部を遮光し、対物レンズ109に対するCD用レーザ光の有効径を調整し、これにより、CD用レーザ光の開口数を設定値に調整する。
なお、開口制限素子106としては、たとえば、回折素子を用いることができる。この回折素子には、レーザ光の外周部が入射する位置に波長選択性の回折パターンが形成されており、このパターンの回折作用によって、当該波長のレーザ光の外周部を発散させる。たとえば、CD/DVD/次世代DVD(基板厚0.6mm)互換の場合には、CD用レーザ光(波長780nm)のみを回折させる回折パターンが、外周部入射位置に形成される。これにより、CD用レーザ光の外周部が回折により発散され、中央部のみが対物レンズ109方向に導かれる。
この他、開口制限素子106として、偏光フィルタを用いることもできる。すなわち、開口制限したいレーザ光の外周部位置に偏光フィルタを配するとともに、当該レーザ光の偏光面を偏光フィルタの偏光面に対して直交させる。この場合、開口制限したいレーザ光の偏光面のみを偏光フィルタの偏光面に対して直交させることから、当該レーザ光の偏光面を他のレーザ光の偏光面に対し90°回転させる手段が別途必要となる。この手段としては、たとえば、波長選択性のλ/2板を用いることができる。
さらに、開口制限素子106として、位相フィルタを用いることもできる。この場合、開口制限したいレーザ光のみフィルタリングされるよう、位相フィルタの厚みを調整する必要がある。
波面補正素子107は、サーボ回路202からのサーボ信号に応じて、レーザ光の波面状態を補正する。上述の如く、3波長レーザ101から出射される各波長のレーザ光は、コリメータレンズ103によって全て平行光とされるため、開口制限素子106を通過した後も平行光となっている。これに対し、対物レンズ109が、たとえば、所定波長のレーザ光にのみ有限系となるよう設計されている場合には、当該波長のレーザ光の波面状態をそれに応じて補正する必要がある。波面補正素子107は、かかる場合に、当該波長のレーザ光の波面状態が適正状態となるよう、当該波長のレーザ光に波面補正作用を付与する。
具体的には、対物レンズ109が、DVD用のレーザ光(波長655nm)と次世代DVD用のレーザ光(波長408nm)に対しては無限系、CD用のレーザ光(波長780nm)に対しては有限系となるよう設計されている場合、波面補正素子107は、CD用レーザ光を用いる場合にのみ駆動され、CD用レーザ光の波面状態を、対物レンズ109の仕様に合うような波面状態に補正する。
なお、波面補正素子107としては、たとえば、特許第2895150号公報に記載のような液晶素子を用いることができる。すなわち、液晶素子を光軸方向に挟むようにして同心リング状の透明電極を複数配するとともに、レーザ光の光軸が同心リング状の透明電極の中心を貫くよう液晶素子を配置し、前記透明電極に電圧を印加することで、液晶素子の屈折率をリング状に相違せしめ、これにより、レーザ光の波面状態を湾曲させる。ここで、透明電極位置の屈折率は、印加する電圧の大きさによって調整できるため、印加電圧を調整することによって、レーザ光の波面状態を適正状態に調整することができる。
この他、波面補正素子107としては、特開2003−149443号公報に記載のような複屈折素子を用いることもできる。また、ビームエキスパンダやレンズ介挿機構等のメカニカル調整機構を用いることもできる。
なお、対物レンズ109が全てのレーザ光に対し無限系である場合には、波面補正素子107は不要である。この場合、図1に示す光学系から波面補正素子107が省略される。
λ/4板108は、偏光BS104を全透過したレーザ光(直線偏光)を円偏光に変換する。また、ディスクから反射されたレーザ光(円偏光)を、入射時の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。したがって、ディスクから反射されたレーザ光は、偏光ビームBS104によってほぼ全反射される。
対物レンズ109は、各波長のレーザ光を記録層上に適正に収束させるよう設計されている。なお、対物レンズ109は、上述の如く、各レーザ光に対し無限系あるいは有限系となるよう設計されている。
対物レンズアクチュエータ300は、サーボ回路202からのサーボ信号(トラッキングサーボ信号およびフォーカスサーボ信号)に応じて、対物レンズ109を駆動する。なお、対物レンズアクチュエータ300の構成は、従来周知であるので、説明を省略する。
集光レンズ110は、偏光BS104によって反射されたレーザ光(ディスクからの反射光)を光検出器112上に集光する。
第2の回折格子111は、3波長レーザ101から出射されるレーザ光のうち、DVD用レーザ光の光軸を、回折作用によって、次世代DVD用レーザ光の光軸に整合させる。すなわち、第2の回折格子111には、DVD用レーザ光の光軸ずれを補正できるよう設計されたパターンが形成されている。なお、回折格子の構成および光軸ずれの補正作用については後述する。
光検出器112は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。各センサーからの信号は、ディスク装置側の再生回路201およびサーボ回路202に出力される。
再生回路201は、光検出器112から受信したセンサー信号を演算処理して再生RF信号を導出し、これを復調して再生データを生成する。
サーボ回路202は、光検出器112から受信したセンサー信号を演算処理してトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を導出し、これに基づいてトラッキングサーボ信号およびフォーカスサーボ信号を生成して対物レンズアクチュエータ108に出力する。また、コントローラ203からの指令に応じて、波面補正素子107に駆動信号を出力する。
コントローラ203は、キー入力部(図示せず)からの入力指令等に応じて各部を制御する。
図2に、3波長レーザ101の構成を示す。なお、同図(b)は、同図(a)を右側から見た右側面図である。
図において、101a〜101cは、レーザ素子である。図示のとおり、レーザ素子101a〜101cは、出射口側から見て一直線上に並ぶよう、基体101dにマウントされている。ここで、各レーザ素子間の間隔は、レーザ素子101aおよびレーザ素子101cから出射されるレーザ光が、上記第1の回折格子102によって、レーザ素子101bから出射されるレーザ光の光軸に一致するよう回折される間隔に設定されている。
図3を参照して、回折格子による光軸ずれの補正作用について説明する。
回折格子のレーザ光入射側の面に、同図に示すホログラム格子パターンが形成されている場合、発光点1、2からのレーザ光は、この格子パターンによって回折作用を受ける。なお、同図には、ステップ数=3の格子パターンが示されている。
ここで、格子ピッチをpとすると、レーザ光の1次光の回折角θと波長λの関係は、
λ=p sinθ …(1)
θ=sin-1λ/p …(2)
と規定される。したがって、発光点1と発光点2からのレーザ光の光軸を回折格子による回折にて基準光軸に一致させようとすると、発光点間隔d1、d2は、
d1=Ltanθ1 …(3)
d2=Ltanθ2 …(4)
と規定される。よって、発光点1、2からのレーザ光の波長λ1、λ2と、回折格子の格子ピッチpから、発光点間隔d1、d2は、
d1=Ltan(sin-1λ1/p) …(5)
d2=Ltan(sin-1λ2/p) …(6)
として設定される。
ここで、上記式(5)(6)を参照すると、単純光路長Lが同じであれば、発光点間隔d1、d2は、出射レーザ光の波長λ1、λ2に比例することが分かる。したがって、発光点間隔d1、d2を大きくするには、発光点1、2からのレーザ光の波長を大きくしてやれば良い。
本実施の形態では、3波長レーザ101からCD用レーザ光(波長780nm)、DVD用レーザ光(波長655nm)、次世代DVD用レーザ光(波長408nm)が出射される。よって、発光点間隔を大きくするには、波長の大きいCD用のレーザ光(波長780nm)とDVD用のレーザ光(波長655nm)を回折させて、これらレーザ光の光軸を次世代DVD用のレーザ光(波長408nm)の光軸に整合させるようにすれば良い。
すなわち、3波長レーザ101に格納されるレーザ素子101a〜101c(図2参照)のうち、中央のレーザ素子101bとして出射レーザ波長の最も小さい次世代DVD用のレーザ素子(波長:408nm)を配置し、これを挟むようにして、CD用、DVD用のレーザ素子(波長:655nm、波長:780nm)を配置する。これにより、レーザ素子間の間隔d1、d2を大きくでき、レーザ素子101a〜101cの配置を容易に行うことができる。
なお、回折格子による光軸補正においては、回折効率の関係から、光軸合わせを行おうとするレーザ光のパワーが低下する。したがって、パワーを高く維持したいレーザ光については、光軸合わせの対象から外すのがよい。
次世代DVD用レーザ光(波長:408nm)を出射するレーザ素子の出射パワーは、現時点において、CD用レーザ光(波長780nm)やDVD用レーザ光(波長655nm)のレーザパワーに比べると、微弱である。上記のように、次世代DVD用のレーザ素子(波長:408nm)をセンターに配置し、回折による軸補正を行わないようにすると、もともと微弱な次世代DVD用レーザ光のパワーを高く維持することができる。
図4に、3波長レーザ101から出射される3つのレーザ光と、第1の回折格子102および第2の回折格子111による光軸調整作用の関係を示す。
図示の如く、3波長レーザ101から出射される3つのレーザ光のうち、CD用レーザ光(波長:780nm)の光軸が、第1の回折格子102によって、次世代DVD用レーザ光(波長:408nm)の光軸に整合される。DVD用レーザ光(波長655nm)は、第1の回折格子102によって光軸調整されず、出射時の光軸ズレのまま、対物レンズ109に入射される。
対物レンズ109は、基準光軸である次世代DVD用レーザ光の光軸に位置調整されているため、CD用レーザ光と次世代DVD用レーザ光は、対物レンズ109によって、収差なく、ディスク上に収束される。これに対し、DVD用レーザ光は、光軸がずれた状態で対物レンズ109に入射されるため、ディスク上の収束光に収差が生じる。
一般に、収差の大きさは、レーザ光の波長の大きさに反比例するため、DVD用レーザ光に生じる収差は、記録/再生特性に深刻な影響を与える程度にまで大きくならない。むしろ、DVD用レーザ光を記録用ビームとして用いる場合には、光軸合わせ時の回折によってレーザパワーが低下するよりも、本実施の形態のように、回折による光軸調整を行わずに、高いレーザパワーを確保することを優先する方が好ましいと言える。なお、記録に必要なレーザパワーを確保できる場合には、DVD用レーザ光の光軸を調整するための回折格子を、別途、コリメータレンズ103の前段に配するようにしても良い。
ディスクから反射されたレーザ光のうち、DVD用レーザ光は、第2の回折格子111によって回折され、光検出器112上に導かれるよう光軸が曲げられる。CD用レーザ光と次世代DVD用レーザ光は、第2の回折格子111によって光軸調整されず、そのまま光検出器112上に収束される。
なお、第1の回折格子102と第2の回折格子111は、それぞれ、上記式(5)(6)をもとに、CD用レーザ光とDVD用レーザ光の光軸を次世代DVD用レーザ光の光軸に整合させるような格子パターン(格子ピッチ:p)が設定されている。したがって、次世代DVD用レーザ素子に対するCD用レーザ素子とDVD用レーザ素子の発光点間隔d1、d2が、格子パターン設定時の発光点間隔からずれた場合、そのままでは、CD用レーザ光とDVD用レーザ光の光軸調整を適正に行うことはできない。この場合には、第1の回折格子102と第2の回折格子111を基準光軸方向に前後させて、単純光路長Lを調整する。
図5に、第1の回折格子102と第2の回折格子111による光軸補正作用を示す。
レーザ素子101a(CD用)の発光点間隔d1が設計時よりも大きくなった場合、θ1が設計時の値となる位置に、第1の回折格子102を3波長レーザ101から遠ざける。逆に、発光点間隔d1が設計時よりも小さくなった場合には、θ1が設計時の値となる位置に、第1の回折格子102を3波長レーザ101に近づける。
同様に、レーザ素子101c(DVD用)の発光点間隔d2が設計時よりも大きくなった場合には、θ2が設計時の値となる位置に、第2の回折格子111を3波長レーザ101から遠ざけ、また、発光点間隔d2が設計時よりも小さくなった場合には、θ2が設計時の値となる位置に、第2の回折格子111を3波長レーザ101に近づける。
実際には、DVD用レーザ光を発光させてディスク(DVD)にレーザ光を照射した状態で、第2の回折格子111を光軸方向に前後させて、光検出器112からの出力をモニターし、光検出器112からの出力が最良となる位置に、第2の回折格子111を位置づける。その後、CD用レーザ光を発光させてディスク(CD)にレーザ光を照射した状態で、第1の回折格子102を光軸方向に前後させて、光検出器112からの出力をモニターし、光検出器112からの出力が最良となる位置に、第1の回折格子102を位置づける。
図6に、第1の回折格子102の格子パターンと回折効率の関係を示す。
同図は、格子パターンのステップ数を3ステップとしたときのシミュレーション結果である。なお、シミュレーションの条件は、シミュレーション結果を示す特性グラフの下方欄外に示すとおりである。また、グラフ中に付記されたBlue−0th、Red−0th、IR−1stは、それぞれ波長408nmレーザ光の0次回折光、波長655nmレーザ光の0次回折光、波長780nmレーザ光の−1次回折光の回折効率特性であることを示すものである。
同図から、格子パターンが3ステップの場合には、ステップ高さHを4.35μm程度に設定すると、波長408nmの青紫レーザ光(次世代DVD用)と波長655nmの赤色レーザ光(DVD用)の回折効率を100%近くに維持しながら、波長780nm(CD用)のレーザ光の回折効率を40%強程度にまで高めることができることが分かる。
図7に、第1の回折格子111の格子パターンと回折効率の関係を示す。
同図は、格子パターンのステップ数を4ステップとしたときのシミュレーション結果である。なお、シミュレーションの条件は、シミュレーション結果を示す特性グラフの下方欄外に示すとおりである。また、グラフ中に付記されたBlue−0th、Red+1th、IR−0thは、それぞれ波長408nmレーザ光の0次回折光、波長655nmレーザ光の+1次回折光、波長780nmレーザ光の0次回折光の回折効率特性であることを示すものである。
同図から、格子パターンが4ステップの場合には、ステップ高さHを1.75μm程度に設定すると、波長408nmの青紫レーザ光(次世代DVD用)と波長780nmの赤外レーザ光(CD用)の回折効率を100%近くに維持しながら、波長655nm(DVD用)のレーザ光の回折効率を80%程度にまで高めることができることが分かる。
なお、図6および図7に示す回折格子を第1の回折格子102および第2の回折格子111として用いた場合、第1の回折格子102および第2の回折格子111を通過した後における青紫レーザ光(次世代DVD用)、赤色レーザ光(DVD用)、赤外レーザ光(CD用)の回折効率は、95.5%×96.1%=91.8%、95.9%×78.2%=75.0%、42.3%×98.0%=41.5%となる。このように、2つの回折格子を用いても、光検出器112上に十分なパワーのレーザ光を収束させることができる。特に、青紫レーザ光(次世代DVD用)については、10%足らずしか低下しておらず、レーザパワーを高く維持することができる。
なお、格子パターンのステップ高さは、上記図6および図7に示すシミュレーションを行い、その結果をもとに、各波長の回折効率を比較し、各波長のレーザ光が満たすべき条件を考慮して、最も好ましいステップ高さを設定するようにすると良い。たとえば、上記の如く、青紫レーザ光の出射パワーは、現時点のところ、他のレーザ光に比べ微弱であることから、まず、青紫レーザ光の回折効率を90%以上に設定し、次に、これを満たすステップ高さのレンジから、残り2つのレーザ光に最適のステップ高さを見つけるようにすれば良い。このとき、上記の如く、CD用レーザ光のパワーをそれほど高く設定する必要がない場合(対象ディスクが再生専用CDの場合等)には、DVD用レーザ光の回折効率が少しでも大きくなるステップ高さを見つけるようにする。また、CD用、DVD用の何れのパワーも大きくする場合には、両パワーがバランス良く高くなるステップ高さを見つけるようにする。
以上、本実施の形態によれば、光軸調整用の光学素子として安価な回折格子を用いるため、光ピックアップ装置のコスト上昇を抑制することができ、また、光軸調整を行おうとするレーザ光毎にそれぞれ個別に第1および第2の回折格子102、111を配しているので、レーザ素子間の配置ギャップに変動が生じても、対応する回折格子を基準光軸方向に位置調整することで、当該レーザ光の光軸を基準光軸に円滑に整合させることができる。このように、本実施の形態によれば、光ピックアップ装置のコスト上昇を抑制しながら、簡易且つ円滑に、レーザ光の光軸調整を行なうことができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
たとえば、上記実施の形態では、青紫レーザ光用のレーザ素子をセンターに配するようにしたが、他のレーザ素子をセンターに配するようにしても良い。ただし、この場合には、上記式(5)(6)から、上記実施の形態に比べ、発光点間隔が小さくなり、これに応じて、レーザ素子の配置マージンが厳しくなり、また、青紫レーザ光の回折効率(パワー)は低下する。
また、上記実施の形態では、第1および第2の回折格子のステップ数をそれぞれ3ステップ、4ステップとしたが、これ以外のステップ数にて、第1および第2の回折格子を設計することもできる。
さらに、上記実施の形態では、第1の回折格子102を3波長レーザ101の直後に配し、第2の回折格子111を光検出器112の直前に配するようにしたが、図8に示す如く、第2の回折格子111も3波長レーザ101の直後に配するようにしても良い。この場合、DVD用レーザ光は、光軸調整がなされた後、対物レンズ109に入射されるので、ディスク上におけるDVD用レーザ光に収差が生じることはない。よって、上記に比べ、ディスク上におけるDVD用レーザ光の光学特性を向上させることができる。
また、第1の回折格子102と第2の回折格子111を、共に、光検出器112の直前に配するようにしても良い。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図 実施の形態に係る3波長レーザの構成を示す図 実施の形態に係る回折格子による光軸ずれの補正作用を説明する図 第1の回折格子と第2の回折格子による光軸調整作用を説明する図 第1の回折格子と第2の回折格子による光軸調整作用を説明する図 第1の回折格子による回折効率のシミュレーション結果を示す図 第2の回折格子による回折効率のシミュレーション結果を示す図 実施の形態の変更例を示す図
符号の説明
101 3波長レーザ
101a レーザ素子(出射波長:780nm)
101b レーザ素子(出射波長:655nm)
101c レーザ素子(出射波長:408nm)
102 第1の回折格子
111 第2の回折格子

Claims (1)

  1. 記録媒体に対し波長の異なるレーザ光を照射する光ピックアップ装置において、
    出射波長がλ1、λ2、λ3(λ1<λ2<λ3)の3つのレーザ光からなっており、且つ、出射波長が最も短いレーザ素子を挟んで他の2つのレーザ素子が並ぶようにして同一筐体内に収容された半導体レーザと、
    前記レーザ素子から出射された各レーザ光の光軸を回折作用によって一致させる回折格子とを備え、
    前記回折格子は、
    波長λ3のレーザ光の±1次回折光を波長λ1のレーザ光の光軸に整合させる第1回折作用を波長λ3のレーザ光に付与するとともに、波長λ1、λ2のレーザ光に前記第1回折作用を付与しないように、格子パターンのステップの高さが調整されている第1回折格子と、
    波長λ2のレーザ光の±1次回折光を波長λ1のレーザ光の光軸に整合させる第2回折作用を波長λ2のレーザ光に付与するとともに、波長λ1、λ3のレーザ光に前記第2回折作用を付与しないように、格子パターンのステップの高さが調整されている第2回折格子とを含むことを特徴とする光ピックアップ装置。
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