JP4257506B2 - 耐熱性樹脂複合材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形性、射出成形性に優れ、かつ耐熱性、溶融時の流動性及び強度、靭性、摺動特性に優れた新規な樹脂組成物に係わる。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミドイミド樹脂(以下、PAI樹脂と略記)は、耐熱性、機械的強度、電気特性、耐薬品性に優れ、しかも自己潤滑性をもつプラスチック材料である。しかしながら、ワニス、フィルム用途以外は、溶融流動性に劣り、ほとんどのものは射出成形が困難な場合が多い。そのため、コンプレッションモールド法による成形を行っているのが現状である。
【0003】
一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPSと略記する。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と略記する。)は、耐熱性、電気特性、耐溶剤性に優れ、特に溶融流動性が優れているのが特徴である。また、充填材等を用いて強化することにより、優れた機械強度、剛性及び寸法安定性を付与せしめることが知られている。
【0004】
これらPAI樹脂およびPAS樹脂を複合化することにより、耐熱性、機械強度、流動性に優れた樹脂組成物を得られることが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記の樹脂組成物においても相溶化剤として用いられる化合物が、記載の高温下の条件で熱的に不安定であり揮発しやすいため、PAI樹脂が良好に相溶化しておらず、複合化後、良好な溶融流動性、靭性、機械的強度のある材料は得られていない。そのため、精密成形や薄物成形等の用途に不適であった。
【0006】
【特許文献1】
特許第2868043号公報
【特許文献2】
特開平11−293109号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PAI樹脂およびPAS樹脂からなる樹脂組成物に対し、樹脂の相溶性が改善され、溶融時に複合化が容易となり、溶融時の流動性、強度、靭性、耐熱性に優れた材料を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、(A)重量平均分子量Mwが1,000〜100,000であり、かつ分子中に含まれるアミン基が、0.02〜0.0002mol/gである芳香族ポリアミドイミド 5〜60重量部と、(B)ポリアリーレンスルフィド樹脂 95〜40重量部に、(C)下記一般式(1)で表されるシラン化合物を(A)と(B)の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部、及び(D)下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物を(A)と(B)の合計量100重量部に対して0.01〜20重量部を添加してなる樹脂組成物である。
【化3】
Figure 0004257506
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、およびハロゲン基から選ばれた1種類であり、nは0〜1,000の整数である。)
【化4】
Figure 0004257506
(式中、Eはエポキシ基を表し、R1は炭素数1〜18の炭化水素を表し、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、又はアミド結合を表し、Yはそれぞれ独立に水素原子、ビニル基、水酸基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれかを表し、R2は炭素数1〜18の炭化水素を表す。nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、nとmとの和は5以下である。)
【0009】
【発明の実施の形態】
(A)成分の芳香族ポリアミドイミド樹脂は、下記一般式で表される。
【化5】
Figure 0004257506
(Ar1は炭素数6〜18の2価の芳香族基表し、Ar2は炭素数6〜18の3価の芳香族基を表し、nは4〜400の整数を表す。)
【0010】
Ar1の具体例としては、以下のものが上げられるが、2種以上の化合物を混合して用いることもできる。
【化6】
Figure 0004257506
【0011】
特に好ましいものとして、以下のものが例示される。
【化7】
Figure 0004257506
【0012】
Ar2の具体例としては、以下のものが例示されるが、2種以上の化合物を混合して使用することもできる。
【化8】
Figure 0004257506
【0013】
PAI樹脂の製造方法は、例えば芳香族ジアミンと無水トリメリット酸モノクロリドを重合反応させる酸クロリド法(例えば、特公昭46−15513号公報)、芳香族ジイソシアネートと無水トリメリット酸を重合反応させるイソシアネート法(例えば、特公昭44−19274号公報)、芳香族ジアミンと無水トリメリット酸を200〜250℃に加熱する直接重合法(例えば、特公昭49−4077号公報)など、公知のいずれの製造方法でも用いることができる。
【0014】
本発明に使用されるPAI樹脂は、GPCを用いたPEG換算重量平均分子量が1,00〜100,000であるものが使用できる。好ましくは、PEG換算重量平均分子量が1,000〜50,000であり、より好ましくは1,000〜30,000である。
【0015】
また、本発明に使用されるPAI樹脂の分子中に含まれるアミン基が、塩酸を使用した中和滴定で測定して0.02〜0.0002mol/gであるものが使用できる。好ましくは、0.005〜0.0002mol/gである。
【0016】
また、本発明の樹脂組成物に使用される(B)成分であるPAS樹脂とは、式[−Ar−S−](但し、−Ar−は、アリーレン基である。)で表されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーである。[−Ar−S−]を1モル(基本モル)と定義すると、本発明で使用するPASは、この繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有するポリマーである。アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基である。)、p、p’−ジフェニレンスルホン基、p、p’−ビフェニレン基、p、p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基などを挙げることができる。PASとしては、主として同一のアリーレン基を有するポリマーを好ましく用いることができるが、加工性や耐熱性の観点から、2種以上のアリーレン基を含んだコポリマーを用いることもできる。
【0017】
これらのPAS樹脂の中でも、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を主構成要素とするPPSが、加工性に優れ、しかも工業的に入手が容易であることから特に好ましい。この他に、ポリアリーレンケトンスルフィド、ポリアリーレンケトンケトンスルフィドなどを使用することができる。コポリマーの具体例としては、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位とm−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンスルホンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマーなどを挙げることができる。これらのPAS樹脂は、結晶性ポリマーであることが好ましい。また、PAS樹脂は、靭性や強度の観点から、直鎖状ポリマーであることが好ましい。このようなPAS樹脂は、極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロゲン置換芳香族化合物とを重合反応させる公知の方法(例えば、特公昭63−33775号公報)により得ることができる。
【0018】
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムなどを挙げることができる。反応系中で、NaSHとNaOHを反応させることにより生成させた硫化ナトリウムなども使用することができる。ジハロゲン置換芳香族化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、p−ジブロモベンゼン、2,6−ジクロロナフタリン、1−メトキシ2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、p、p’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
PAS樹脂に多少の分岐構造または架橋構造を導入するために、1分子当たり3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロゲン置換芳香族化合物を少量併用することができる。ポリハロゲン置換芳香族化合物の好ましい例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼンなどのトリハロゲン置換芳香族化合物、及びこれらのアルキル置換体を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、経済性、反応性、物性などの観点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、及び1,2,3−トリクロロベンゼンがより好ましい。
【0020】
極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン、テトラアルキル尿素、ヘキサアルキル燐酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機アミド溶媒が、反応系の安定性が高く、高分子量のポリマーが得られやすいので好ましい。本発明で使用するPAS樹脂は、温度310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度が、通常、10〜600Pa・s、好ましくは50〜550Pa・s、より好ましくは70〜550Pa・sである。溶融粘度が異なる2種以上のPAS樹脂をブレンドして使用する場合には、ブレンド物の溶融粘度が前記範囲内にあることが好ましい。また、PAS樹脂の溶融粘度が100Pa・s以上であることが、機械的強度や靭性などの観点から特に望ましい。PAS樹脂の溶融粘度が小さすぎると、機械的強度や靭性などの物性が不充分となる恐れがある。PAS樹脂の溶融粘度が大きすぎると、溶融流動性が不充分となり、射出成形性や押し出し成形性が不充分となる恐れがある。
【0021】
本発明で使用するPAS樹脂は、重合終了後の洗浄したものを使用することができるが、さらに、塩酸、酢酸などの酸を含む水溶液、あるいは水−有機溶剤混合溶液により処理したものや、塩化アンモニウムなどの塩溶液で処理を行ったものなどを使用することが好ましい。特に、アセトン:水=1:2(容積比)に調整した混合溶媒中でのpHが8以下を示すようになるまで洗浄処理したPAS樹脂を用いると、樹脂組成物の溶融流動性及び機械的物性をより一層向上させることができる。
【0022】
本発明で使用するPAS樹脂は、100μm以上の平均粒子径を有する粒状物であることが望ましい。PAS樹脂の平均粒子径が小さすぎると、押出機による溶融押出しの際、フィード量が制限されるため、樹脂組成物の押出機内での滞留時間が長くなり、樹脂組成物の劣化等の問題が生じる恐れがある。また、製造効率上も望ましくない。
【0023】
本発明で使用するシラン化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化9】
Figure 0004257506
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、およびハロゲン基から選ばれた1種類であり、nは0〜1,000の整数である。)
【0024】
本発明で使用されるシラン化合物の沸点は、760mmHgで10℃以上が好ましい。より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。沸点が低すぎると樹脂との混練時に揮発し、改良効果が低下する。
【0025】
使用されるシラン化合物の粘度は、通常0.5〜100万mm2/sであるが、好ましくは1〜1万mm2/sであり、より好ましくは5〜1000mm2/sである。粘度が低すぎると溶融混練時に揮発し効果が見られず、また、高すぎるとシラン化合物の樹脂組成物中への分散が難しくなり添加効果が減少する。
【0026】
本発明で使用するシラン化合物は、PAI樹脂とPAS樹脂との合計量(樹脂成分)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8重量部、特に好ましくは0.1〜7重量部である。配合の割合が少なすぎると添加による改良効果が少なく、多すぎると成形加工時にガスが発生しやすくなり、成形品表面の荒れが発生する。
【0027】
本発明で使用するエポキシ化合物は、下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物が用いられる。
【化10】
Figure 0004257506
(式中、Eはエポキシ基を表し、R1は炭素数1〜18の炭化水素を表し、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、又はアミド結合を表し、Yはそれぞれ独立に水素原子、ビニル基、水酸基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれかを表し、R2は炭素数1〜18の炭化水素を表す。nは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、nとmとの和は5以下である。)
【0028】
本発明で使用されるエポキシ化合物としては、特に好ましくは、2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、4,5−エポキシ−2−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、及び5,6−エポキシ−2−ヘキサノールである。
【0029】
本発明で使用するエポキシ化合物は、PAI樹脂とPAS樹脂との合計量(樹脂成分)100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜7重量部である。配合の割合が少なすぎると添加による改良効果が少なく、多すぎると成形加工時にガスが発生しやすくなり、成形品表面の荒れが発生する。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、(A)PIA樹脂、(B)PAS樹脂、(C)シラン化合物、及び(D)エポキシ化合物を溶融混練りして製造される。溶融混練り温度は250〜400℃、好ましくは280〜360℃である。混練り方法は、押し出し機、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールその他で行うことが出来るが、好ましい方法は、2軸押し出し機による方法である。
【0031】
本発明に使用される樹脂組成物には、所望に応じて、充填材、顔料、滑剤、可塑剤、安定剤、紫外線剤、難燃剤、難燃助剤の添加剤、他の樹脂などその他の成分が適宣配合され得る。
【0032】
充填材の例としては、ガラスビーズ、ウオラストナイト、マイカ、タルク、カオリン、二酸化珪素、クレー、アスベスト、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、ケイソウ土、グラファイト、カーボランダム、二硫化モリブデンに代表される鉱物質充填材;ガラス繊維、ミルドファイバー、チタン酸カリウム繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、等を挙げることが出来る。充填材は、樹脂組成物(PIA樹脂+PAS樹脂)の1〜70重量%使用することが出来る。好ましい充填材は、ガラス繊維、ミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維であり、ウレタン、アミノ系等のシランカップリング剤で処理したものも好適に使用できる。
【0033】
顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛等が例示できる。
【0034】
滑剤としては、鉱物油、シリコン油、エチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ステアリン酸ナトリウムなどの金属塩、モンタン酸ナトリウム等の金属塩、モンタン酸アミドなどが代表的なものとして例示される。
【0035】
また可塑剤としては、一般に用いられるシラン系化合物や、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸化合物等、エピスルフィド基を持つ化合物等が挙げられる。また、一般に用いられる紫外線吸収剤、着色剤等を用いることができる。
【0036】
難燃剤としては、トリフェニルフォスフェートのようなリン酸エステル類、デカブロモビフェニル、ペンタブロモトルエン、ブロモ化エポキシ樹脂、等の臭化化合物;メラミン誘導体などの含窒素リン化合物等が挙げられる。難燃助剤を使用しても良く、その例としては、アンチモン、ほう素、亜鉛等の化合物等が挙げられる。
【0037】
他樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、4フッ化エチレンをはじめとするフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族樹脂が挙げられる。
【0038】
本発明においては、上記のような(A)PIA樹脂、(B)PAS樹脂、(C)シリコーンオイル、及び(D)エポキシ化合物よりなる樹脂組成物を得るが、成形は、通常の射出成形法によって行われ、シリンダー温度は、290〜360℃の範囲で行い、金型は十分な耐熱性を得るために120〜160℃にすることが望ましい。また、耐熱性を改良し、且つ残留応力を取り除く目的で成形後に熱処理することが望ましい。特に、金型温度が120℃より低い温度で成形した場合は熱処理するのが好ましい。熱処理の方法は、特に限定されるものではなく、例えば通常の熱風式オーブン、電子レンジまたはオーブンレンジを用いられる。熱処理温度は、150〜300℃、好ましくは、180〜280℃、最も好ましくは、200〜260℃で30秒〜48時間、好ましくは1時間〜36時間常圧もしくは減圧で行うこともできる。
【0039】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0040】
合成例1
水分含有量15ppmのN−メチルピロリドン3リットルを、5リットルの攪拌機、温度計、先端に塩化カルシウムを充填した乾燥管を装着した還流冷却器を備えた反応器に仕込んだ。ここに無水トリメリット酸555g(50モル%)、次いで2,4−トリレンジイソシアネート503g(50モル%)を加えた。無水トリメリット酸添加時の系内水分は30ppmであった。最初、室温から30分を要して内容物温度を120℃とし、この温度に保ったまま8時間継続した。重合終了後N−メチルピロリドンの2倍容量のメタノール中に強力な攪拌下で重合液を滴下し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを吸引ろ別し、さらにメタノールでよく洗浄し、200℃で減圧乾燥を行いポリアミドイミド樹脂を得た。GPCを用いてPEG換算重量平均分子量を測定したところ、Mw=9,000であった(溶媒:ジメチルホルムアミド)。ポリアミドイミド樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、塩酸を使用した中和滴定を行なったところ、分子中に含まれるアミン基が0.001mol/gであった。
【0041】
合成例2
5リットルの攪拌機を備えた反応器にアセトン1.5リットル、および水1.5リットルを仕込み、次いでトリエチルアミン202g、次いで無水トリメリット酸クロリド421g(50モル%)、さらにm−トリレンジアミン244g(50モル%)を加えた。室温で2時間攪拌し、析出したポリマーを吸引ろ別し、さらにメタノールでよく洗浄し、200℃で減圧乾燥を24時間行いポリアミドイミド樹脂を得た。GPCを用いてPEG換算重量平均分子量を測定したところ、Mw=7,000であった(溶媒:ジメチルホルムアミド)。ポリアミドイミド樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、塩酸を使用した中和滴定を行なったところ、分子中に含まれるアミン基が0.0007mol/gであった。
【0042】
合成例3
合成例1で無水トリメリット酸および2,4−トリレンジイソシアネートを加えた後に室温から50分を要して内容物温度を200℃とし、この温度を保ったまま6時間継続した。その後ポリマーを析出させた以降は合成例1と同様の方法にてポリアミドイミド樹脂を得た。GPCを用いてPEG換算重量平均分子量を測定したところ、Mw=120,000であった(溶媒ジメチルホルムアミド)。ポリアミドイミド樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、塩酸を使用した中和滴定を行なったところ、分子中に含まれるアミン基が0.0008mol/gであった。
【0043】
合成例4
合成例1で無水トリメリット酸および2,4−トリレンジイソシアネート仕込み後、室温から20分を要して内容物温度を90℃とし、この温度に保ったまま50分継続した。ついで115℃に昇温し、この温度に保ったまま8時間継続した。その後は合成例1と同様の方法にてポリアミドイミド樹脂を得た。GPCを用いてPEG換算重量平均分子量を測定したところ、Mw=8,000であった(溶媒:ジメチルホルムアミド)。ポリアミドイミド樹脂をジメチルホルムアミドに溶解し、塩酸を使用した中和滴定を行なったところ、分子中に含まれるアミン基が0.00001mol/gであった。
【0044】
実施例1
合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂49・5wt%とPAS樹脂(大日本インキ化学工業(株)製;DIC−PPS−LR03)49.5wt%とシリコーンオイル(東レダウコーニング(株)製SH200;ジメチルシリコーンオイル)0.5wt%と2,3−エポキシ−1−プロパノール0.5wt%をブレンドし、2軸押し出し機を用いて320℃で溶融混錬りしてペレット化し 樹脂組成物を製造した。
このペレットを射出成形し、1/8インチ厚の抗折試験片を得た。この試験片を用いて、曲げ強度、曲げ歪み(島津製作所(株)オートグラフ;AG5000B)を測定した。熱変形温度(18.6kg/cm2荷重)もこの試験片を用いて、窒素雰囲気下で測定(安田精機(株);HD−500−PC)した。溶融流動性はペレットから測定((株)東洋精機製作所キャピログラフ1B;350℃、シェアレート=1200sec-1)した。結果は、表1に示した。
【0045】
実施例2
合成例2で示したポリアミドイミド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0046】
実施例3
合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂45wt%とPAS樹脂(大日本インキ化学工業(株)製;DIC−PPS−LR03)45wt%とシリコーンオイル(東レダウコーニング(株)製SH200;ジメチルシリコーンオイル)5wt%と2,3−エポキシ−1−プロパノール5wt%をブレンドし、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0047】
実施例4
合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂49・5wt%とPAS樹脂(大日本インキ化学工業(株)製;DIC−PPS−LR03)49.5wt%とトリメチルエトキシシラン0.5wt%と2,3−エポキシ−1−プロパノール0.5wt%をブレンドし、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0048】
比較例1
合成例3で示したポリアミドイミド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0049】
比較例2
合成例4で示したポリアミドイミド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0050】
比較例3
合成例1で製造した芳香族ポリアミドイミド樹脂33wt%とPAS樹脂(大日本インキ化学工業(株)製;DIC−PPS−LR03)33wt%とシリコーンオイル(東レダウコーニング(株)製SH200;ジメチルシリコーンオイル)13.6wt%と2,3−エポキシ−1−プロパノール20.4wt%をブレンドし、実施例1と同様の方法にて樹脂組成物を製造した。結果は、表1に示した。
【0051】
【表1】
Figure 0004257506
【0052】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、分子中に含まれるアミノ基が特定量であるPAI樹脂とPAS樹脂からなる樹脂組成物を製造するに際して、特定のシラン化合物及び特定のエポキシ化合物を添加し、溶融混練することによって、溶融時に複合化が容易となり、溶融時の流動性、強度、靭性、耐熱性に優れた材料を得ることができ、工業的意義は大きい。

Claims (1)

  1. (A)重量平均分子量Mwが1,000〜100,000であり、かつ分子中に含まれるアミン基が、0.02〜0.0002mol/gである芳香族ポリアミドイミド 5〜60重量部と、(B)ポリアリーレンスルフィド樹脂 95〜40重量部に、(C)下記一般式(1)で表されるシラン化合物を(A)と(B)の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部、及び(D)2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、4,5−エポキシ−2−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール又は5,6−エポキシ−2−ヘキサノールを(A)と(B)の合計量100重量部に対して0.01〜20重量部を添加してなる樹脂組成物。
    Figure 0004257506
    (式中、Rはそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、およびハロゲン基から選ばれた1種類であり、nは0〜1,000の整数である。)
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