JP4255644B2 - ミシン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミシンに関し、特に穴かがり縫目の千鳥縫いの前後の前閂止部と奥閂止部において千鳥縫目に先行する複数針と後続する複数針の糸張力を複数段階に調節可能にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
加工布に縫製を行う種々のミシンのうち、例えば、穴かがりミシンは、実施形態に係る図7に示すように、前閂止部61の縫い始め部61aから左千鳥縫目62、奥閂止部63、右千鳥縫目64、前閂止部61を順に縫製して、加工布に穴かがり縫目60を形成するものである。ここで、左右の千鳥縫目62,64においては、山立ち状に縫目を形成するために、上糸の張力を高くして上調子で縫製を行う。一方、閂止部61、63においては、上糸と下糸の張力が均等になるように千鳥縫目62,64よりも上糸の張力を低くして縫製を行う。
【0003】
前記のように、千鳥縫目62,64と閂止部61,63とで、異なる上糸張力により縫製を行うために、縫製中に予め設定された複数の張力値の間でに上糸張力を切換可能な穴かがりミシンが提案されている。例えば、特開平11−333173号公報に記載の穴かがりミシンおいては、図12に示すように、予め、千鳥縫目62,64における上糸張力Taと、閂止部61,63における上糸張力Tbを夫々予め設定しておき、穴かがり縫目60の縫製中に、縫製する縫目に応じて糸調子器により上糸に付与する上糸張力を切換えるように構成してある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に記載の穴かがりミシンにおいては、図12に示すように、上糸張力が千鳥縫目と閂止部との間で1段階で急激に変化するため、以下のような問題がある。
即ち、閂止部から千鳥縫目に移行する際には、上糸張力が急激に増加することになるが、千鳥縫目の開始端はまだ張力が十分でなく縫目を山立ち状に形成することができないため、縫目が汚くなる。
【0005】
逆に、千鳥縫目から閂止部に移行する際には、上糸張力が急激に減少することになるが、その際に糸の伸びが一気に開放されて、天秤による上糸の引き上げ量以上に糸が繰り出された状態となって、やはり縫目が汚くなる。さらに、その余分に繰り出された上糸のループに回転釜の剣先がからんで二重掛けが生じ、糸切れが発生しやすくなる。
本発明の目的は、千鳥縫目と閂止部との間付近の縫目を綺麗に形成すること、千鳥縫目の縫製から閂止部の縫製に移行する際の糸切れを防止すること、等である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1のミシンは、加工布に穴かがり縫目を縫製するミシンにおいて、糸に張力を付与する糸調子器と、糸調子器により糸に付与する張力を調整可能な張力調整手段と、少なくとも、穴かがり縫目のうちの千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目と、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目における糸張力を複数段階に設定可能な張力設定手段と、この張力設定手段で設定された糸張力となるように、張力調整手段を制御する張力制御手段とを備え、前記張力設定手段は、前閂止部において、縫い始め部における複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定し、且つ奥閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定するとともに、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定し、且つ前閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定することを特徴とするものである。
【0007】
穴かがり縫目の千鳥縫目においては、山立ち状の縫目を形成するために、例えば、上糸の張力を高くして上調子気味に縫製する必要がある。ここで、張力設定手段は、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目と、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目における糸張力を複数段階に設定可能であり、この設定された糸張力となるように張力制御手段により張力調整手段を制御して糸調子器により糸に所定の張力を付与する。従って、例えば、千鳥縫目の縫製開始前から上糸張力を複数段階で徐々に上昇させるように設定して、千鳥縫目の開始端から所定の高い張力で千鳥縫目を縫製していくことができる。さらに、千鳥縫目の縫製終了直後から上糸張力を複数段階で徐々に減少させるように設定して、千鳥縫目の縫製直後に急激に張力が減少しないようにして、上糸が余分に繰り出されるのを防止したりすることができる。
【0008】
そして、前記張力設定手段は、前閂止部において、縫い始め部における複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定する。従って、例えば、前閂止部の縫い始め部において千鳥縫目の開始端までに複数段階で徐々に上糸張力を増加させて、千鳥縫目の開始端で千鳥縫目を縫製するのに十分な高い上糸張力を確保することができる。
【0009】
そして、前記張力設定手段は、奥閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定するとともに、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定する。
従って、例えば、奥閂止部において千鳥縫目の終端から上糸張力を複数段階で徐々に減少させて、急激に張力が減少しないようにして、上糸が余分に繰り出されるのを防止できる。さらに、次の千鳥縫目の開始端まで複数段階で徐々に上糸張力を増加させて、千鳥縫目の開始端で千鳥縫目を縫製するのに十分高い上糸の張力を確保することができる。
【0010】
そして、前記張力設定手段は、前閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定する。従って、例えば、前閂止部において、奥閂止部において千鳥縫目の縫製直後から上糸張力を複数段階で徐々に減少させて、急激に張力が減少しないようにして、上糸が余分に繰り出されるのを防止できる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、加工布にに示す穴かがり縫目を形成するとともに、その穴かがり縫目の内側にボタン穴を形成するボタン穴用の穴かがりミシンに本発明を適用した一例である。
【0019】
この穴かがりミシンMは、図7〜図9に示すように、前閂止部61の縫い始め部61a(P1〜P4)、左千鳥縫目62(P5〜P45)、奥閂止部63(P46〜P55)、右千鳥縫目64(P56〜P96)、前閂止部61(P97〜P105)、止め縫い部65(P106〜P109)の順に縫製して加工布9に穴かがり縫目60を形成するとともに、穴かがり縫目の内側にボタン穴70を形成するものである。尚、Pi(i=1〜109)は針落点を示す。
【0020】
図1に示すように、穴かがりミシンMには、ミシンテーブル1に、ミシンモータ2と、穴かがりミシンMを起動又は停止させる為のペダル3と、穴かがりミシンMの縫製作業に関する種々の設定を行う為の操作パネル4と、穴かがりミシンM全体の制御系を司る制御装置5等が設けられている。
【0021】
図1、図2に示すように、穴かがりミシンMは、ベッド部6と脚柱部7とアーム部8とを有するミシン本体を有し、このミシン本体には、加工布9を前後に布送りする布送り機構10、加工布9に縫目を形成する縫製機構11、加工布9にボタン穴70を形成するカッタ26を有するボタン穴形成機構12等が設けられている。さらに、ミシン本体の右側面には、上糸に張力を付与する糸調子器13と、糸調子器13により上糸に付与する張力を調整可能なソレノイドアクチュエータ14(図3参照)も設けられている。
【0022】
図2に示すように、布送り機構10は、送り台20と、押え足21と、ステッピングモータ22(図4参照)などを有し、加工布を押え足21で送り台20に押えた状態で、ステッピングモータ22により送り台20と押え足21とを一体的に前後に駆動することで、加工布9も前後に布送りされる。
縫製機構11は、針棒23と、針棒23の下端に連結されて糸駒等の上糸供給源(図示略)から糸調子器13を介して延びる上糸が装着される縫針24とを有する。さらに、図示しないが、縫製機構11は、ミシンモータ2の駆動力により針棒23を上下に往復駆動する針棒上下駆動機構、ステッピングモータ25(図4参照)の駆動力により針棒23を左右に揺動駆動する針棒揺動駆動機構、送り台20の下側に装着され下糸が巻付けられるボビン、送り台20の下側にて上下動する縫針24付近における上糸を捕捉しボビンから延びる下糸と交わらせる糸輪捕捉器等も備えている。
【0023】
ボタン穴形成機構12は、カッタ26、カッタホルダ27、カッタ取付軸28、カッタ駆動用ソレノイド29(図4参照)等を有し、カッタ駆動用ソレノイド29によりカッタ取付軸28とカッタホルダ27を介してカッタ26を上下に駆動することにより、加工布9にボタン穴70を形成する。
【0024】
次に、糸調子器13とソレノイドアクチュエータ14について説明する。
図3に示すように、糸調子器13は、アーム部8に設けられた糸調子器取付穴8aに嵌合された外筒部材30と、この外筒部材30内に固定的に収容された内筒部材31と、内筒部材31の先端部に固定された固定皿32と、内筒部材31に摺動自在に外嵌された可動皿33と、内筒部材31に摺動自在に内嵌され且つ可動皿33と連結された軸部材34と、可動皿33を固定皿32の方向に付勢するスプリング35などを有する。
【0025】
ソレノイドアクチュエータ14は、コイル36と、このコイル36内に挿入され磁性体からなるプランジャ37とを有し、コイル36はコイル支持体38を介してアーム部8に取付けられている。プランジャ37の上端にはロッド37aが延設され、このロッド37aはリンク部材39を介して軸部材34と連結されている。コイル36に電流が通電されると、ロッド37aが進退駆動されるとともに軸部材34が左右に駆動されて、固定皿32と可動皿33との間に挟持された上糸に付与される張力が変化する。
ソレノイドアクチュエータ14は、図11に示すように、駆動力(上糸に付与される張力)−電流の関係でリニアの特性を有し、コイル36に通電される電流値を制御装置5で制御することで、上糸に付与される張力が所定の値に調整される。
【0026】
次に、制御装置5について説明する。
図4に示すように、制御装置5は、CPU40、ROM41、RAM42、書換え可能なメモリであるEEPROM43、これらを接続するバス44を含むマイクロコンピュータと、入力インターフェース45と、出力インターフェース46とを有する。入力インターフェース45には、ペダル3の操作に応じた起動停止スイッチ3aからの信号や、操作パネル4からの信号、ミシン主軸(図示略)の位相検出用エンコーダ47からの信号などが入力される。出力インターフェース46からは、ミシンモータ2、ステッピングモータ22,25、カッタ駆動用ソレノイド29、ソレノイドアクチュエータ14を夫々駆動する為の駆動回路48〜52に制御信号が出力される。
【0027】
EEPROM43には、針落点Pi(i=1〜109)の縫製データや、図5に示すような、各針落点Piにおける上糸の張力Tiを設定する後述のテーブルTBなどが格納されている。ROM42には、テーブルTBの内容を設定、変更する為のプログラム、このテーブルTBで設定された糸張力となるようにソレノイドアクチュエータ14を制御しつつ縫製作業を制御する縫製制御プログラムなどが格納されている。
【0028】
次に、テーブルTBについて図5〜図9を参照して以下詳細に説明する。
図5に示すように、テーブルTBにおいては、各針落点Piに上糸の張力Tiが対応づけられて格納されている。図6、図7に示すように、左右の千鳥縫目62,64を山立ち状に形成するために、テーブルTBにおいて、千鳥縫目62、64の上糸張力Taは高く設定され(例えば、1.5N)、一方、前閂止部61、奥閂止部63の基本上糸張力Tbはそれよりも低い値に設定されている(例えば、0.6N)。さらに、糸切り時の上糸張力Tcは前閂止部61の上糸張力よりもやや高く設定されている(例えば、0.8N)。
【0029】
図6〜図8に示すように、このテーブルTBにおいて、上糸張力は、先ず、前閂止部61において、縫い始め部61aにおける左千鳥縫目62の開始端(P5)に先行する4針(P1〜P4)の縫目の上糸張力は4段階でTaまで増加するように設定されている。開始端(P5)以降の左千鳥縫目62においては、上糸張力はTaで一定になるように設定されている。
【0030】
次に、図6、図7、図9に示すように、奥閂止部63においては、右千鳥縫目64の終端(P45)に後続する5針(P46〜P50)の縫目の上糸張力はTaからTbまで5段階で減少するように設定されている。さらに、右千鳥縫目64の開始端(P56)に先行する3針(P53〜P55)の縫目の上糸張力はTbからTaまで3段階で増加するように設定されている。開始端(P56)以降の右千鳥縫目64においては、上糸張力はTaで一定になるように設定されている。
【0031】
図6〜図8に示すように、前閂止部61において、右千鳥縫目64の終端(P95)に後続する3針(P96〜P98)の縫目の糸張力を3段階でTaからTbまで減少するように設定されている。さらに、止め縫い部65における縫い終わり点(P109)において上糸張力はTcに設定されている。尚、このテーブルTBは書換え可能なEEPROM43に格納されているため、操作パネル4から張力データTiを入力することにより、テーブルTBの内容を自由に変更することができる。
【0032】
次に、縫製制御プログラムについて、図10のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、電源が投入されて、初期設定が行われた後(S10)、縫製開始の為にペダル3が操作されると(S11:Yes )、各針落点Piにおいての以下の処理を繰り返す(S12〜S19)。まず、針落点Piの縫製データ及びテーブルTBの張力データTiをEEPROM43から読込み(S13)、図11のマップより上糸張力Tiに対応する出力電流Iを演算する(S14)。次に、ソレノイドアクチュエータ14の電流をIにする制御信号を出力して、上糸張力がTiとなるようにソレノイドアクチュエータ14を制御してから(S15)、針落点Piの縫製処理を行う(S16)。位相検出用エンコーダ47の針下信号がONになり(S17:Yes )、次の縫製データがあればS13へ戻り、縫製データが終了すれば(S19:Yes )、縫製作業を終了する。
【0033】
この際、テーブルTBでは、前閂止部61及び奥閂止部63において、千鳥縫目62,64の開始端に先行する複数針の縫目と、千鳥縫目62,64の終端に後続する複数針の縫目における上糸張力が複数段階に設定されているので、左右の千鳥縫目62,64の開始端から所定の高い張力Taで千鳥縫目62,64を縫製することができるし、千鳥縫目62,64の縫製終了後に急激に張力が減少することもない。
【0034】
尚、以上の説明において、ソレノイドアクチュエータ14が張力調整手段に相当し、EEPROM43とテーブルTBが張力設定手段に相当し、マイクロコンピュータと図10のフローチャートにおけるS13〜S15が張力制御手段に相当する。
【0035】
以上説明した穴かがりミシンMによれば、テーブルTBにより、前閂止部61の縫い始め部61a及び奥閂止部63において、左右の千鳥縫目62,64の縫製前に上糸張力が複数段階で増加するように上糸張力を設定し、この上糸張力となるようにソレノイドアクチュエータ14を制御して、左右の千鳥縫目62,64の開始端から所定の高い張力Taで千鳥縫目62,64を縫製していくことができ、千鳥縫目62,64の開始端付近の縫目を山立ち状の綺麗な縫目に縫製することができる。
【0036】
さらに、前閂止部61及び奥閂止部63において、千鳥縫目62,64の縫製終了直後から上糸張力が複数段階で減少するように設定し、千鳥縫目62,64の縫製終了後に急激に張力が減少しないようにして、上糸が余分に繰り出されるのを防止でき、千鳥縫目62,64の終端付近の縫目を山立ち状の綺麗な縫目に縫製することができるし、二重掛け等による糸切れも防止することもできる。
【0037】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。
1)EEPROM43に格納されているテーブルTBの張力データTiは、操作パネル4から針落点Pi毎に入力するように構成してもよい。また、例えば、図6において、左千鳥縫目62の終端P45の上糸張力Taと、P45から5針進んだP50における奥閂止部63の基本上糸張力Tbとを入力し、P46〜P49の上糸張力をTaとTbとの間で演算して求めるようにしてもよい。さらには、張力を変化させる最初の針落点(図6のP45)と、変化させる針数(図6のP46〜P49までの4針)とを指定し、予め設定された変化量でこれらの間の張力を徐々に変化させるようにしてもよい。
【0038】
2)糸調子器13により上糸に付与する張力を調整する張力調整手段を、例えば、パルスモータ等で構成して、テーブルTBで左右の千鳥縫目62,64における上糸張力Taと、左右の千鳥縫目62,64の開始端に先行する複数針前の縫目または千鳥縫目62,64の終端に後続する複数針後の縫目における上糸張力Tbとを設定し、且つそれら複数針の縫目に亙って上糸張力を徐々に変化するようにパルスモータのパルス数等を設定するようにしてもよい。
【0039】
例えば、図6において、左千鳥縫目62の開始端(P45)の上糸張力Taと、その5針後のP50の縫目における奥閂止部63の基本上糸張力Tbを設定するとともに、P45〜P50での上糸張力が徐々に増加するようにパルスモータのパルス数を設定する。この場合、P45〜P50の間において、ある1針の縫製中に針棒23が上下に昇降する間においても上糸張力を徐々に変化させることが可能である。その他、縫い始め部61aのP1〜P5までの間で張力を徐々に増加させたり、奥閂止部63のP53〜P56の間で張力を徐々に増加させたり、前閂止部61のP96〜P99の間で張力を徐々に減少させたりする場合も同様である。
【0040】
3)張力データTiは、フレキシブルディスクや穴かがりミシンMに接続されたパーソナルコンピュータ等のハードディスクなど、他の記憶媒体からEEPROM43に入力したり、さらには、これらの記憶媒体から直接RAM42に読込むように構成してもよい。
【0041】
4)糸調子器13により下糸に張力を付与するようにしたり、あるいは、上糸と下糸の両方に張力を付与するように構成し、下糸張力を前記実施形態の上糸張力と同様にテーブル等で設定してもよい。
5)その他、穴かがりミシンに限らず、2種類以上の糸張力で縫製を行う種々のミシンに本発明を適用して、第1の糸張力から第2の糸張力に移行するときに糸張力を徐々に変化するように設定することができる。
【0042】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、張力設定手段により、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目と、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目における糸張力を複数段階に設定し、この設定された糸張力となるように張力制御手段により張力調整手段を制御して糸調子器により糸に所定の張力を付与することができるので、以下のような効果が得られる。
【0043】
例えば、千鳥縫目の縫製開始前から上糸張力を複数段階で徐々に上昇させるように設定して、千鳥縫目の開始端から所定の高い張力で千鳥縫目を縫製していくことができ、千鳥縫目の開始端付近の縫目を綺麗に縫製することができる。
さらに、千鳥縫目の縫製終了直後から上糸張力を複数段階で徐々に減少させるように設定して、千鳥縫目の縫製終了後に急激に張力が減少しないようにして、上糸が余分に繰り出されるのを防止し、千鳥縫目の終端付近の縫目を綺麗に縫製することができるし、二重掛け等による糸切れも防止することもできる。
【0044】
そして、前記張力設定手段は、前閂止部において、縫い始め部における複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定するので、前閂止部の縫い始め部において、例えば、千鳥縫目の開始端までに徐々に上糸張力を増加させて、千鳥縫目の開始端に千鳥縫目を縫製するのに十分高い張力を確保して、千鳥縫目の開始端においても綺麗な山立ち状の縫目を形成することができる。
【0045】
そして、前記張力設定手段は、奥閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定するとともに、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定するので、奥閂止部において、例えば、千鳥縫目の終端から上糸張力を徐々に減少させて、上糸が余分に繰り出されるのを防止でき、千鳥縫目の終端においても綺麗な縫目を形成することができるし、二重掛け等による糸切れも防止できる。さらに、次の千鳥縫目の開始端まで徐々に上糸張力を増加させて、千鳥縫目の開始端において千鳥縫目を縫製するのに十分高い張力を確保して、その千鳥縫目の開始端においても綺麗な山立ち状の縫目を形成することができる。
【0046】
しかも、前記張力設定手段は、前閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定するので、前閂止部において、例えば、千鳥縫目の終端から上糸張力を徐々に減少させて、上糸が余分に繰り出されるのを防止でき、千鳥縫目の終端においても綺麗な縫目を形成することができるし、二重掛け等による糸切れも防止できる。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る穴かがりミシンの斜視図である。
【図2】アーム部の前端部周辺の部分拡大図である。
【図3】糸調子器及びソレノイドアクチュエータの断面図である。
【図4】穴かがりミシンの制御系を示すブロック図である。
【図5】テーブルTBを示す図である。
【図6】糸張力の変化を示すタイムチャートである。
【図7】穴かがり縫目を示す図である。
【図8】図7の前閂止部の部分拡大図である。
【図9】図7の奥閂止部の部分拡大図である。
【図10】縫製制御プログラムのフローチャートである。
【図11】張力と電流との関係を示すマップである。
【図12】従来の穴かがりミシンにおける張力の変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
M 穴かがりミシン
9 加工布
13 糸調子器
14 ソレノイドアクチュエータ
40 CPU
41 ROM
42 RAM
43 EEPROM
60 穴かがり縫目
61 前閂止部
61a 縫い始め部
62 右千鳥縫目
63 奥閂止部
64 左千鳥縫目
Claims (1)
- 加工布に穴かがり縫目を縫製するミシンにおいて、
糸に張力を付与する糸調子器と、
糸調子器により糸に付与する張力を調整可能な張力調整手段と、
穴かがり縫目のうちの千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目と、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目における糸張力を複数段階に設定可能な張力設定手段と、
この張力設定手段で設定された糸張力となるように、張力調整手段を制御する張力制御手段とを備え、
前記張力設定手段は、
前閂止部において、縫い始め部における複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定し、且つ
奥閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定するとともに、千鳥縫目の開始端に先行する複数針の縫目の糸張力を複数段階で増加するように設定し、且つ
前閂止部において、千鳥縫目の終端に後続する複数針の縫目の糸張力を複数段階で減少するように設定する、
ことを特徴とするミシン。
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