JP4235698B2 - 感光性組成物およびその硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギー線の照射により大気中において硬化塗膜を形成し、形成された塗膜が、塗料、接着剤、インキ、フィルムコーティング、より具体的には、インクジェット用UVインク、液晶や有機EL等のディスプレイパネル用シール材、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、次世代光ディスクであるBlu−rayディスクの表面保護層形成材、反射防止膜形成用コーティング材、ハードコーティング材として有用な感光性組成物およびその硬化物に関する。
紫外線等のエネルギー線を用いた硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法となっている。現在の光硬化システムの主流は、(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化系であるが、エポキシやビニルエーテル、オキセタン等の材料を使用したカチオン硬化系材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、表面および薄膜硬化性に優れる(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な接着性を有する(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むことから(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能等、ラジカル硬化系に比べ優れた特長を有することから、近年、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等への応用が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
光カチオン硬化系で主に用いられる化合物としてエポキシ化合物が挙げられ、中でもとりわけ反応性に富む脂環式エポキシ化合物が多用される(特許文献1参照)。このものは、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことからラジカル系に比べても優れた表面硬化性を有するが、重合の進行に伴い反応率が低下し内部の硬化性が不十分となり、十分な硬化物性が得られないと言う問題がある。また用いられる化合物の種類が少なく、得られる硬化物の物性を制御するには困難を要する。一方、熱硬化で広く用いられているグリシジル型エポキシ化合物は、前記脂環式エポキシ化合物に比べ種類は豊富だが光カチオン硬化させた場合反応性が不十分であり、安全性上問題があるSbFやAsF等の特殊な開始剤や、熱硬化を併用する等の方法を用いなければならない。これに対し、オキセタン化合物は光カチオン重合において、単独での開始反応は遅いものの成長反応速度が速い為、エポキシ化合物と併用することにより重合速度が向上することが知られている。しかし、この場合でも光硬化性は従来のラジカル系と比較すると未だ十分とは言えず、さらなる高感度化が必要である。この他、ビニルエーテル化合物が高いカチオン重合性を有することが知られているが、単独重合で得られた硬化膜は前記エポキシやオキセタンに比べ硬化収縮が大きく、基材との接着性が低下するという問題がある。
そこで前記脂環式エポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用することにより、エポキシ化合物の重合性を高め、且つ接着性を保持しようとする試みが数多くなされている(例えば、特許文献2および3)。さらに、この組合せからなる組成物を特定の用途、例えば立体リソグラフィー用組成物(特許文献4)や、光ディスク用オーバーコート剤(特許文献5)、インクジェット記録方式用紫外線硬化性組成物(特許文献6)として使用する試みがなされている。しかし、このように単にエポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用した組成物では、確かにエポキシ化合物の反応性は若干向上できるが、ビニルエーテル化合物の反応性が大きく低下し、結果として十分な硬化膜物性を得ることができない。これを改良する目的で上記試みでは(特許文献4、5)、ビニルエーテル化合物として多官能のものを用いているが、その効果は未だ不十分である。
一方、エポキシ化合物から成るカチオン系組成物に、水酸基含有化合物として脂肪族系多価アルコール(特許文献7、8)や、フェノール化合物(特許文献9、10)を任意の成分として用い硬化性を高める試みがなされているが、前者の場合エポキシ化合物の反応性は向上するものの硬化膜が脆弱化するという問題点がある。また、後者ではジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等のフェノール性芳香環1個あるいは2個のフェノール化合物、さらには分子中にメチロール基を有するレゾール型フェノール化合物が開示されているが、共に硬化性が不十分であり、特にレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、硬化膜の硬度が徐々に低下するという問題がある。
また、特許文献11にも、フェノール化合物を添加する技術が開示されているが、この場合も、フェノール化合物が、ラジカル禁止剤、または、酸化防止剤としてし作用することにより、不安定な開始剤を含むカチオン系組成物の長期の保存が可能となるものの、組成物の光硬化性そのものの向上は期待することできない。
米国特許第3794576号明細書 特開平6−298911号公報 特開平9−328634号公報 特許第2667934号公報 特開平4−120182号公報 特開平9−183928号公報 特許第1266325号公報 特表2001−527143号公報 特表2002−509982号公報 特許第3251188号公報 特開2002−69269号公報 角岡正弘、他著「カチオン硬化技術の工業展開」MATERIAL STAGE、技術情報協会、2002年5月10日、第2巻、第2号、P.39−92
本発明は、大気中の酸素により阻害されない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)有し、その光硬化物が樹脂、金属、ガラスといった様々な基材に対する良好な接着性を示す、カチオン系感光性組成物、並びに該組成物からなる感光性のコーティング材、インクジェットインク、接着剤、とりわけ有機EL等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用シール剤、およびそれらの光硬化物を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のエポキシ化合物、特定の多核フェノール化合物および光カチオン重合開始剤から成る感光性組成物、さらにはこれに水酸基を有するビニルエーテル化合物もしくはオキセタン化合物を含有して成る感光性組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)を30〜90wt%、3〜5個のフェノール性芳香環からなり、そのすべての水酸基のいずれのオルト位にもメチロール基、炭素数4以上から成るアルキル基またはシクロアルキル基のいずれもが置換されておらず、かつその水酸基の少なくとも一方のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を2個以上有する、多核フェノール化合物(b)を0.1〜40wt%、およびエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)を0.1〜10wt%を含有することを特徴とする感光性組成物であり、さらには分子中に水酸基を1個以上とビニルエーテル基またはオキセタニル基の少なくともどちらか一方を1個以上有する水酸基含有化合物(d)を1〜60wt%含有することを特徴とする感光性組成物を提供するものである。
代表的なOLED素子部の断面模式図である。 特殊な封止構造を有するOLEDディスプレイ素子部の断面模式図である。
符号の説明
1 基板
2 正孔注入電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子注入電極
6 封止材
7 接着剤(層)
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明においては、優れた光硬化性を実現するために分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)を用いることが重要である。このような化合物としては、上記要件を満足するものであれば特に制限はなく、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
2官能脂環式エポキシ化合物としてはセロキサイド2021、2080、3000(ダイセル化学工業社製)、UVR−6110、6105、6128、ERLX−4360(ダウ・ケミカル日本社製)、3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としてはエポリードGT300、GT400(ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
これらのうち、脂環式エポキシ化合物がカチオン重合反応性に優れるため好ましい。これらエポキシ基を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の多核フェノール化合物(b)は、複数のフェノール性芳香環からなる。ここでいう、フェノール性芳香環とは、フェノール性水酸基を有する芳香環のことである。本発明において、フェノール性水酸基は、光架橋反応で重要な役割を果たすものであり、このようなフェノール性水酸基を有する多核フェノール化合物を用いることにより、初めて本発明の優れた光硬化性を呈する、感光性組成物が得られる。
また、多核フェノール化合物(b)は、そのすべての水酸基のいずれのオルト位にもメチロール基を有さない。すなわち、多核フェノール化合物(b)には、一般にレゾール樹脂と呼ばれる分子中にメチロール基を有するものは含まれない。メチロール基はエポキシ基との反応性は有するが、反応の結果形成された結合は酸性条件下で不安定であり、硬化後に得られる膜硬度が経時で低下する問題がある為好ましくない。さらに、多核フェノール化合物(b)は、オルト位に炭素数4以上から成るアルキル基またはシクロアルキル基を有しないことが特徴であり、特に嵩高いt−ブチル基等のヒンダードフェノールといった、一般にラジカル禁止剤や酸化防止剤と呼ばれるフェノール化合物はこれには含まれない。これは、多核フェノール化合物(b)は、そのフェノール性水酸基が直接光硬化反応に関与するため、反応の阻害因子となる嵩高い置換基がフェノール性水酸基のオルト位に置換したものは好ましくないからである。
さらに、多核フェノール化合物(b)は、フェノール性芳香環が3〜5個から成り、且つ、その分子中に、その水酸基の少なくとも一方のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、少なくとも2つ以上有することが必須要件である。1〜2個のフェノール性芳香環では、光硬化反応において、効率的に架橋構造を形成することができず、また6個以上の場合、架橋反応に関与しないフェノール性水酸基が発生し硬化性および硬化膜物性に悪影響を及ぼす。
このような多核フェノール化合物としては、例えば下記一般式(5)〜(13)で示される種々の多核フェノール化合物、
Figure 0004235698
Figure 0004235698
Figure 0004235698
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基を示し、異なるベンゼン環のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また各々のベンゼン環におけるp個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。pは0〜4の整数であり、異なるベンゼン環のpは互いに同一でも異なってもよく、qは1〜3の整数であり、異なるベンゼン環のqは互いに同一でも異なってもよい。p+q≦5である。但し、Rの炭素数が4または5の場合、Rはベンゼン環上の水酸基に対しオルト位に位置することはない)、
Figure 0004235698
(式中、Rは炭素数が1〜3であること以外は、式(5)と同じ。pおよびqは式(5)と同じ)、
Figure 0004235698
(式中、Bは下記式(10)、(11)及び(12)で表される基から選ばれた1つの基でありRおよびpは式(5)と同じ)、
Figure 0004235698
Figure 0004235698
Figure 0004235698
および
Figure 0004235698
(式中、R、p及びqは、式(5)に同じ)。
さらに、下記式(1)、(3)で示される種々の多核フェノール化合物、
Figure 0004235698
(式中Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基またはアラルキル基を示し、式中の複数のRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数、nは1〜3の整数である)、
Figure 0004235698
(式中nは1〜3の整数を示す)、
および、低分子量の鎖状ポリブタジエンとフェノールとのFriedel−Crafts反応付加物である3〜5個のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物等を挙げることができる。
これらのうち、エポキシ化合物(a)や水酸基を含有するビニルエーテルまたはオキセタンとの相溶性および反応性に優れる前記一般式(1)で示される多核フェノール化合物(e)、及び、吸湿性が低く耐水性に優れた硬化物が得られる、前記一般式(3)で示される付加化合物に相当する多核フェノール化合物(g)が好ましい。
多核フェノール化合物(e)において、mは1〜3であるのが好ましく、より好ましくは1である。また、mが1〜3の場合、置換基Rはベンゼン環の水酸基に対しパラ位に結合したものが好ましい。ここでRは、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましい。例えば、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、炭素数6のシクロヘキシル基が好ましい例として挙げられ、炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、アラルキル基としては例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α’ジメチルベンジル基等が挙げられる。
多核フェノール化合物(e)は、例えば、Rで表される置換基を有するフェノール(R置換フェノール)またはフェノールを、公知の合成方法、すなわち塩酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン等と0〜150℃で数時間から数十時間反応させることにより、nが0以上の整数で示される縮合体として得られる。このとき反応条件にもよるが、一般に、用いるR置換フェノールまたはフェノールとホルムアルデヒドの量比を決定することにより、副生成物として生成する下記一般式(2)で示される種々の多核フェノール化合物(f)の量を制御することができる。
Figure 0004235698
(式中Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基またはアラルキル基を示し、式中の複数のRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数、nは0または4以上の整数である)
例えば、R置換フェノールがホルムアルデヒドより多すぎると、フェノール2核体の含有量が増加し、逆に少なすぎると6個以上のフェノール性芳香環からなる多核フェノール化合物(f)の含有量が増加する。得られた縮合体中の、多核フェノール化合物(e)成分の含有量が少なすぎる場合、蒸留または再沈等の方法により未反応原料および多核フェノール化合物(f)を除去することができる。
本発明においては、その多核フェノール化合物(e)及び(f)の合計に対する多核フェノール化合物(e)の割合は40wt%以上であることが好ましく、より好ましくは、50wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上である。多核フェノール化合物(e)の含有率が40wt%より少ない場合、例えば、一般式(2)においてn=0のフェノール2核体の量が多すぎる場合、感光性組成物の光硬化性が低下し十分な光感度が得られなくなる。一方、一般式(2)においてnが4以上の縮合体に相当する多核フェノール化合物(f)の量が、多すぎる場合、光硬化反応終了後においても、未反応のフェノール性水酸基が残存し、その硬化物である皮膜が、十分な耐水性を示さない、あるいは、耐光性の不足により顕著な黄変を示すといった、問題が生じ好ましくない。
市販されているものとしては、例えば新規分子量分布集約型ノボラック樹脂:PAPS(製品名:旭有機材工業社製)が、本発明の多核体フェノール(e)として好適に用いられる。
多核フェノール化合物(e)の合成に用いられるR置換フェノールの具体的な例としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、m−sec−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−(α−メチルベンジル)フェノール、m−(α−メチルベンジル)フェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−クロロフェノール、m−クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。
一方、多核フェノール化合物(g)は、ジシクロペンタジエンとフェノールをBF3などの酸触媒の存在下でFriedel−Crafts反応を行うことにより得ることができる。この時、使用するジシクロペンタジエンとフェノールの量比を決定することにより、副生成物として生成する下記一般式(4)で示される種々の多核フェノール化合物(h)の量を制御することができる。
Figure 0004235698
(式中、nは0または4以上の整数を示す)
本発明においては、多核フェノール化合物(g)及び(h)の合計に対する多核フェノール化合物(g)の割合は40wt%以上であることが好ましく、より好ましくは50wt%以上であり、さらに好ましくは60wt%以上である。多核フェノール化合物の含有率が40wt%より少ない場合、例えば、一般式(4)においてn=0のフェノール2核体が多すぎる場合、感光性組成物の硬化性が低下し十分な光感度が得られなくなる。一方、一般式(4)においてnが4以上の付加物に相当する多核フェノール化合物(h)の量が多すぎる場合、感光性組成物の他の成分への溶解性が不足すると共に、光硬化反応終了後においても、未反応のフェノール性水酸基が残存し、その硬化物である皮膜の耐水性が損なわれ、さらには、硬化後の十分な皮膜特性が得られなくなる等の問題が起こり好ましくない。
市販のものとしては、例えば、日石特殊フェノール樹脂DPPシリーズ(新日本石油化学社製)のうちDPP−6125が、好適な多核フェノール化合物(g)として用いることができる。
本発明で用いられる多核フェノール化合物(b)としては、前記した種々の多核フェノール化合物のうち1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用するエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であり、特に好ましいものとしては照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩である。具体的には、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF ̄、PF ̄、SbF ̄、[BX] ̄(ただし、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩である。具体的には四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等を挙げることができ、CD−1012(商品名:SARTOMER社製)、PCI−019、PCI−021(商品名:日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(商品名:旭電化社製)、UVI−6990(商品名:ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI−100A(商品名:サンアプロ社製)、TEPBI−S(商品名:日本触媒社製)、R HODORSIL PHOTOINITIATOR2074(商品名:Rhodia社製)等を用いることができ、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明では、さらに水酸基含有化合物(d)を用いることにより、より一層優れた硬化性と接着性、耐水性を有する硬化物を与える光硬化性を得ることができる。このような水酸基含有化合物(d)としては、分子中に水酸基を1個以上とカチオン重合性を有するビニルエーテル基またはオキセタニル基の少なくともどちらか一方を1個以上有する化合物であり、1分子中に水酸基と前記カチオン重合性基の両方を併せ持つことが重要である。このことは、本発明の感光性組成物の光架橋メカニズムが、従来一般に用いられている水酸基を含有せず、複数の重合反応性官能基を有する多官能ビニルエーテル、オキセタン化合物を種々併用する系のメカニズムとは異なっていることを示唆している。すなわち、ここでは、前記多核フェノール化合物と同様、水酸基を光硬化反応に直性関与させることが重要であり、これによりビニルエーテル基またはオキセタニル基による光カチオン重合と協奏的に反応が進行するため、前記多核フェノール化合物にさらにこれらの化合物を併用することでこれまで困難であった優れた硬化性が発現できたものと考えている。従来の重合反応性官能基をただひとつ有する単官能のビニルエーテル、オキセタンは、多官能ビニルエーテル、オキセタンに比べ硬化性が著しく低く問題であったが、本発明の水酸基含有化合物の場合、単官能化合物でも、十分に高い硬化性を有する感光性組成物を与えることができる。
ここで用いられる水酸基を有するビニルエーテル化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等を挙げることができる。
また、本発明で用いられる水酸基を有するオキセタン化合物としては、下記一般式(14)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 0004235698
(式中、R4は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等のC1〜6のアルキル基、C1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基である。R5は、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン等のC1〜6のアルキレン基、および前記アルキレン基にエーテルが結合したオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等のオキシアルキレン基を示す。)
これらのうち、R4としては低級アルキル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。またR5としては、メチレン基が好ましい。
これらの水酸基含有化合物は、単独でも2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の感光性組成物には、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を発生させる、他の重合開始剤を本発明の本発明の重合開始剤(c)と併用することもできる。他の重合開始剤の具体的な例としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
本発明の感光性組成物には、水酸基を含有しない多官能のビニルエーテルもしくはオキセタンを本願発明の水酸基含有化合物(d)と併用することも可能である。このようなビニルエーテルとしては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。また、このようなオキセタンとしては、1,4−ビス([(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等を挙げることができる。
この他、硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度にカチオン重合性を示す他の化合物を添加することができる。これらの化合物としては、例えば前記以外の低分子量のエポキシ化合物を希釈剤として用いることができ、また環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等が挙げられる。また従来用いられる、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールと言ったジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等を用いることもできる。
本発明の感光性組成物には、本発明の感光性組成物には、さらに必要に応じてエネルギー線に対する硬化性を促進する(感度の向上)目的で、(メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類およびビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物および光ラジカル開始剤等を添加してもよい。このうち特に、1分子中にビニル基とアクリレート基の双方を有するビニルアクリレート化合物は、低粘度で且つカチオン重合性もある為、高い感度を維持しながら低粘度化が可能であることから、インクジェット用途に用いる場合有効な希釈剤である。この他、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
このうち特に透湿性を低下させるのに、微粒子無機フィラーおよびシランカップリング剤の添加が有効である。このような微粒子無機フィラーとしては、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーであり、具体的にはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、雲母等が挙げられる。微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの、および表面処理したもの共に使用でき、表面処理した微粒子無機フィラーとしては例えば、メトキシ化、トリメチルシリル化、オクチルシリル化、またはシリコーンオイルで表面処理したものが挙げられ、これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基等の反応性基を有するアルコキシシラン化合物であり、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
次に、本発明において用いられる感光性組成物中の各成分の組成割合について説明する。なお、以下に示される部はすべて重量部を表す。
感光性組成物において多核フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基濃度(多価フェノール化合物(b)のモル数×1分子中の水酸基数と定義する)および水酸基含有化合物(d)の水酸基濃度(水酸基含有化合物(d)のモル数×1分子中の水酸基数と定義する)の和は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基濃度(エポキシ化合物(a)のモル数×1分子中のエポキシ基数と定義する)以下であることが好ましく、より好ましくはエポキシ基の官能基濃度1に対し0.8以下である。これは、感光性組成物中のエポキシ基濃度に比べフェノール性水酸基濃度ないし水酸基濃度が過剰であると、硬化後の膜の親水性が高くなり過ぎ耐水性が不足する、あるいは硬化膜が脆弱化するなどして、硬化膜特性が不十分となるためである。実際の配合割合としてはそれぞれの化合物の分子量にもよるが、一般に1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)は30〜90wt%であり、好ましくは60〜90wt%である。多核フェノール化合物(b)は0.1〜40wt%であり、好ましくは0.5〜20wt%である。水酸基含有化合物(d)は1〜60wt%であり、好ましくは10〜40wt%である。このうち多核フェノール化合物(b)に水酸基含有化合物(d)を併用する場合、その配合割合は特に制限はないが、多核フェノール化合物は極少量でもその添加効果は大きいことから、両者の合計を100とした時、多核フェノール化合物1〜50に対し水酸基含有化合物50〜99が好ましい。
本発明の感光性組成物におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)の含有率は、0.1〜10wt%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜5wt%である。10wt%より多い場合、高価な開始剤を過剰に使用することになることから経済的に望ましくないだけでなく、光線透過率が低下し膜底部の硬化が不足するため好ましくない。また0.1wt%より少ない場合、エネルギー線照射により発生する活性カチオン物質の量が不足し、十分な硬化性が得られなくなる。
前記必要に応じて用いられる微粒子無機フィラーの含有量は、本発明のカチオン重合性感光性組成物において0〜70wt%であり、好ましくは0.1〜60wt%である。また、シランカップリング剤の含有量は、同様に本発明のカチオン重合性感光性組成物において0〜10wt%であり、好ましくは0.1〜10wt%である。
本発明の感光性組成物は、その優れた硬化性および種々の基材に対する優れた接着性を有することから、感光性接着剤として有用である。特にエネルギー線照射による重合転化率が高いことから生産性に優れ、さらに、耐湿性にも優れることから、良好な接着性のみならず高い信頼性が要求される液晶ディスプレイ、有機EL(OLED)ディスプレイ、電子ペーパー等のFPD用シール剤として好適である。中でもOLEDディスプレイ用シール剤には、高い耐透湿性が求められることから、本発明に係わるシール剤にとって最も好ましい適用例である。
以下、本発明の感光性組成物のOLEDディスプレイ用シール剤としての応用例を図1および2を参照しながら説明する。
図−1は、代表的なOLED素子部の断面図である。図−1において基板1の上に正孔注入電極2が形成され、その上部に正孔輸送層3と発光層4が形成され、さらにその上に電子注入電極5が形成される。そして、これらの積層体の周囲には外部から素子を守るための封止材6が形成され、この封止材は正孔注入電極2と、本発明のカチオン重合性感光性組成物から成るシール剤を用いた接着層7により張り合わされている。
基板1としては、透明または半透明なガラス、またはポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系ポリマー等の樹脂等が用いられるが、これらの材料を薄膜化したフレキシブルな基板を用いることもできる。
正孔注入電極2は、透明性のある導電性物質により形成されており、ITO、ATO(SbをドープしたSnO)、AZO(AlをドープしたZnO)等が用いられる。
正孔輸送層3としては、正孔移動度が高く、透明で成膜性が良いものが好ましくTPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン)等のトリフェニルアミン誘導体の他にポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、ポルフィリン化合物、N,N,N‘,N’−テトラキス(p−トリル)−p−フェニレンジアミン、N,N,N‘,N’−テトラフェニル−4,4‘−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール等の芳香族第三級アミン、スチルベン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系アニリン系誘導体、ポリ3−メチルチオフェン等の有機材料が用いられる。
発光層4としては、可視領域で蛍光特性を有し、且つ成膜性の良い蛍光体から成るものが好ましい。このようなものとしては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、Be−ベンゾキノリノール(BeBq)、および2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4−ビス[5,7−ジ(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]スチルベン、2,5−ビス([5−α,α’−ジメチルベンジル]−2−ベンゾオキサゾリル−チオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノール)インジウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール−)カルシウム等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体、ジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン等のジスチリルピラジン誘導体、およびナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系誘導体、等が用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。
電子注入電極5としては、Al、In、Mg、Ti等の金属、Mg−Ag、Mg−In等のMg合金、Al−Li、Al−Sr、Al−Ba等のAl合金等が挙げられる。このうち特に、Al−MgあるいはAl−Li−Mg等の合金は仕事関数が低く、且つ耐食性にも優れており好ましい。
封止材6としては、通常ステンレスやガラス等の水蒸気バリア性に優れた材料が用いられ、これを本発明のカチオン重合性感光性組成物から成るシール剤を用いて、対向の正孔注入電極が形成された基板と張り合わされる。
図−2は、本発明のその他の封止構造から成るOLEDディスプレイ素子部の断面図である。この構造においては、基板1上に正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4および電子注入電極5を順次形成した後、本発明のカチオン重合性感光性組成物から成るシール剤を接着層7として形成し、その後封止材6を張り合わせる方法で形成されるものである。このような固体膜による全面封止は、封止材6としてフレキシブルな材質のものを用いる場合、特に有効な方法である。
基板1上に、上記正孔注入電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子注入電極5を順次積層した多層構造を形成する方法としては、公知の方法である抵抗加熱蒸着法やイオンビームスパッタ法、および常圧で形成できるインクジェット法、印刷法等を用いて行うことができる。ついで、本発明のシール剤を多層構造上に塗布する方法としては、シール剤が均一に塗布できる方法であれば特に制約はないが、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷等の印刷法によるものやディスペンサーを用いて塗布する方法等が挙げられる。
本発明のシール剤により形成された接着層7に封止材6を張り合わせた後、封止材6側または基板1側からエネルギー線として光を照射することにより硬化が行われる。ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で硬化させることができるものであれば特に制限はなく、通常、紫外線、可視光線の波長の光を照射できるものであり、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯、無電極放電ランプ等が挙げられる。このように本発明では、上記の如く前記感光性組成物から成る接着剤をシール剤として用いて、製造されるFPD、中でも特にOLEDディスプレイを提供するものである。
また本発明の感光性組成物は、空気中において薄膜を高速に硬化することが出来ることから、非加熱で高速に硬化することが要求される樹脂フィルム、基板等へのコーティング材としても好適に使用される。このような例としては、FPD等に用いられる反射防止膜形成用コーティング材が挙げられ、基材上に塗布、硬化した後1.4以下の屈折率を持った被膜を形成させる為に、本発明の感光性組成物に空隙を有した多孔質微粒子を含有させることにより得られる。
このような多孔質微粒子としては、平均粒径が5nm〜1μmであるシリカ粒子が挙げられ、特に5〜100nmの平均粒径を有するシリカ粒子が好ましい。具体的には、親水性または表面を疎水化処理したフュームドシリカであるアエロジル(日本アエロジル社製)や、シリカ粒子が直鎖状に連結したパールネックレス状シルカゾルであるスノーテックスPS(日産化学社製)等を挙げることができる。
これらの多孔質微粒子は、感光性組成物100重量部に対し10〜70重量部の範囲で添加して用いられ、ホモジナイザー等を用いて組成物内に均一に分散することが好ましい。本コーティング材組成物には、必要に応じて有機基が結合したアルコキシシランである前記シランカップリング剤やテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを併用しても良い。
このようにして得られるコーティング剤を、透明な基材、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂基材や、ガラス等の無機材料上に反射防止膜として厚さ10nm〜1μmの範囲で形成させる。基材上への塗布に当たっては、比較的薄膜を高い精度で形成する必要があることから、特にマイクログラビア法、ロールコート法、フローコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、スプレーコート法等が用いられる。
また本発明の組成物を用いた場合、塗布された薄膜を硬化させるのに前記活性光線を照射することにより高速に行なうことが出来るのが大きな特徴であるが、必要に応じて加熱硬化を併用してもよい。すなわち、本発明の組成物は本質的に溶剤等は含まないが、粘度調整の為の希釈をした場合、および多孔質微粒子をゾルの形態で用いた場合には、組成物が溶剤を含有することがある。この場合は、事前に溶剤成分を揮散させるために、光照射前に、通常50〜150℃で数分程度の加熱を行っても良い。また、露光後に同様に加熱をすることにより硬化をさらに促進させることも可能である。
さらに、本発明の組成物に着色剤を添加することにより、感光性のインクジェットインクとすることができる。本発明の感光性組成物は、比較的低粘度化が容易であるという特徴も有しており、優れた光硬化性とあいまって、適当な着色剤と混合することにより感光性のインクジェットインクとしても好適に用いることが可能である。
本発明において用いられる着色剤としては、有機顔料および/または無機顔料の種々のものが使用可能である。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボンおよび酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒、およびカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー、およびパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、およびインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン、およびパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、およびキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーおよびインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、およびポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料、その他各種蛍光顔料、金属紛顔料、体質顔料等が挙げられる。本発明の組成物中におけるこれらの顔料の含有量は1〜50wt%であり、好ましくは5〜25wt%である。
上記顔料には必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、本発明で用いることができる顔料分散剤としては例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる2種以上の単量体から成るブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩が挙げられる。
顔料の分散方法としては、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることが出来る。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離機やフィルターを用いてもよい。
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性等を考慮して選択するが、光沢向上、質感向上の観点からも粒径は適宜選択することが好ましい。
以上述べたように、本発明の感光性組成物はその特徴を生かし、上記の種々の用途において好適に用いることができる。
本発明を実施例に基づいて説明する。実施例および比較例中の「部」は重量部を、%はwt%を意味する。
なお、感光性組成物の光硬化性および硬化膜の物性評価は、以下の方法で行った。
<光硬化性および硬化膜の物性評価>
・タックフリー露光量(TFED):露光後被膜を指触観察し、表面が硬化しベタツキがなくなるのに必要な最小露光量を求めた。
・耐水性:タックフリー露光量で硬化した被膜を室温24時間水中に浸漬した後、表面状態を目視にて観察し、表面あれがない場合良好と判定した。
・接着性:用意された基材上に形成された硬化膜に対し碁盤目テープ剥離(クロスカット)試験を行い、残存率(100マス中100全て剥離せずに残った場合100/100とする)の測定を行った。
・屈曲性:表面処理を行った2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に形成された硬化膜に対し、180度折り曲げ試験を行いクラック等のひび割れが生じたものは×、変化がなかったものは○とした。
・転化率:FT−IRによりエポキシ基、ビニル基の紫外線照射前後の各吸収の減少率から反応率を算出して求めた。
[実施例1]
分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物(a)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100部、多核フェノール化合物(b)としてフェノール3〜5核体の含有率が50wt%のp−tert−Bu−フェノールノボラック樹脂(PAPSシリーズ:旭有機材工業社製)6部、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)としてヨードニウム塩型のTEPBI−S(商品名:日本触媒社製)2部を十分混合することにより感光性組成物を得た。これをガラス、アルミニウム、OPPフィルム、PETの各基材上にバーコーターを用い膜厚4μmになるように塗工した後、400W高圧水銀灯露光機(セン特殊光源社製)で露光し、塗膜の光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、さらに水酸基含有化合物(d)としてヒドロキシエチルビニルエーテル14部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2において、成分(c)としてTEPBI−S2部の代わりに、スルホニウム塩型であるUVI−6990(約50%プロピレンカーボネート溶液:ダウ・ケミカル日本社製)4部、成分(d)としてヒドロキシエチルビニルエーテル14部の代わりに、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル18部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
成分(a)として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート70部、成分(b)としてPAPS型p−tert−Bu−フェノールノボラック樹脂4部、成分(d)としてヒドロキシブチルビニルエーテル24部を十分混合することにより感光性組成物を調製した後、実施例1と全く同様にして、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例3において、成分(b)としてPAPS型p−tert−Buフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂であるDPP−6125(新日本石油化学社製)9部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例3において、さらにビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(東亞合成社製)6部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例3で得られた感光性組成物に、さらに1,4−ブタンジオールジビニルエーテル9部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例3において、成分(d)として4−ヒドロキシブチルビニルエーテル18部の代わりにシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル15部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例3において、成分(d)として4−ヒドロキシブチルビニルエーテル18部の代わりに3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン18部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例3において、成分(d)として4−ヒドロキシブチルビニルエーテル18部の代わりに3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン9部および4−ヒドロキシブチルビニルエーテル9部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例3において、さらに成分(a)としてエポキシ樹脂EPICLONHP7200(商品名:大日本インキ工業社製)10部を用いて感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
成分(a)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100部と成分(c)としてUVI−6990の4部のみからなる感光性組成物調製した後、前記実施例1と同様にして、感光性組成物の光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例3において、成分(b)の多核フェノール化合物を用いずに感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例9において、成分(b)の多核フェノール化合物を用いずに感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例10において、成分(b)の多核フェノール化合物を用いずに感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、成分(b)の多核フェノール化合物6部の代わりに、多価アルコールであるペンタエリスリトール6部を用いることにより感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1において、成分(b)の多核フェノール化合物6部の代わりに、水酸基を有しないビニルエーテル化合物であるブタンジオールジビニルエーテル40部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例7]
実施例1において、成分(b)のPAPS型p−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、レゾール型フェノール樹脂であるCRG−951(昭和高分子社製)6部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例8]
実施例3において、成分(b)のPAPS型p−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、レゾール型フェノール樹脂であるCRG−951(昭和高分子社製)6部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例9]
実施例3において、成分(b)のPAPS型p−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tBu−4’−ヒドロキシフェノル)プロピオネート]メタン(和光純薬工業社製)6部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例10]
実施例3において、成分(b)のPAPS型p−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、2核体フェノールである2,2’−メチレンビス(4−tBuフェノール)6部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例11]
実施例3において、成分(b)のPAPS型p−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、6個以上のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物の含有率が高く、フェノール3〜5核体の含有率が25%であるp−tBuフェノールノボラック樹脂6部を用いることにより、感光性組成物の調製、光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例12]
実施例3において、成分(b)としてp−tBuフェノールノボラック樹脂6部の代わりに、p−tBuフェノールノボラック樹脂70部(56wt%に相当)を用いることにより、感光性組成物の調製、該組成物の光硬化性および硬化膜の物性評価を行った。結果を表1に示す。
以上の結果から、実施例に示した感光性組成物はすべてエネルギー線の照射により優れた光硬化性、耐水性および各種基板との接着性を示し、特に水酸基含有化合物(d)を含有する組成物(実施例2〜11)においては、転化率および屈曲性にも優れることが分かる。比較例1〜4は、夫々実施例1、3、9、10から多核フェノール化合物(b)を除いたものに相当する感光性組成物についてのものであるが、TFEDの値が高くなり、硬化性が低下すると共に接着性も不良になることが分かる。そこで比較例5において、多核フェノール化合物(b)の代わりに多価アルコールを用いることも試みたが、所望の性能は得られていない。また、比較例7、8において本発明の多核フェノールに代え、熱硬化性樹脂であるレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、硬化物性が不足するのに加え経時で硬化した表面のタックが復元する現象が見られ好ましくない。この他、成分(b)とは異なる、多核フェノール化合物として、比較例9において、オルト位にtBu基を有するフェノール系酸化防止剤を用いた場合、比較例10において、フェノール2核体のみを用いた場合、比較例11において、フェノール性芳香環6個以上を有する多核フェノール化合物の含有率が高く3〜5核体の含有率が40wt%未満であるp−tBuフェノールノボラック樹脂を用いた場合、いずれも、満足の行く性能は得られていないことが分かる。また、比較例12において、本発明の多核フェノールを用いた場合であっても、その使用量が56wt%と40wt%を超える場合接着性および耐水性が低下することが分かる。
以下、本発明の感光性組成物を感光性インクジェットインクとして用いた場合について説明する。
[実施例12]
実施例4において、さらにトリエチレングリコールジビニルエーテル9部を用いることにより感光性組成物を調製した。該組成物中に、顔料として酸化チタン顔料CR−50(石原産業社製)5部、顔料分散剤として32000脂肪族変性系分散剤ソルスパーズ32000(ゼネカ社製)1.5部、光増感剤として2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製)1部をサンドミルを用いて、4時間かけて分散させ、得られた組成物をメンブランフィルターで加圧ろ過することでエネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。得られたインク粘度は、E型粘度計(25℃)で測定した結果、25mPasと比較的低粘度であった。このインクをピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてガラス、アルミニウム、OPPフィルム、PETの各基材上に印字を行い、その後紫外線照射装置(メタルハライドランプ1灯:出力120W)によりインクの硬化を行い、その光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例13]
実施例12において、トリエチレングリコールジビニルエーテル9部の代わりに、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート9部を用い、以下同様にしてエネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。インク粘度は、E型粘度計(25℃)で測定した結果、25mPasであった。このインクを同様にしてピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてガラス、アルミニウム、OPPフィルム、PETの各基材上に印字を行い、その後紫外線照射装置(同上)によりインクの硬化を行い、その光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例12、13に示すように、本発明の感光性組成物は、低粘度で優れた光硬化性、耐水性、接着性、屈曲性を併せ持つことから、これを感光性インクジェットインクに好適に利用できる。
次に、本発明の感光性組成物のOLEDディスプレイ用シール剤としての特性を評価する実施例を示す。
[実施例14]
実施例3の感光性組成物をバーコーターを用い塗工した後、400W高圧水銀灯露光機(セン特殊光源社製)を用いて、露光量3000mJ/cmの条件で光照射することにより、膜厚100μmの硬化膜を得た。こうして得られたフィルムをJIS K7129Aに準じて水蒸気透過度テスター:L80−5000型(LYSSY社製)を用い、40℃×90%RH条件下で透湿量を測定したところ5g/m2・24hrであった。また、本感光性組成物を30mm×5mm、厚さ約10μmでSUS/ガラス間にはさみ、同様に、露光量500mJ/cmの条件で光照射し接着させた後、RTC−1210A引張り試験機((株)A&D社製)により引張り速度5mm/minで接着強度を測定したところ、15MPaと良好な接着強度を示した。
[実施例15]
実施例14において、実施例3の感光性樹脂の代わりに、実施例5の感光性組成物を用いて硬化膜の透湿量、接着強度を測定したところ、各々、3g/m・24hr、13MPaであった。
[実施例16]
実施例14において、実施例3の感光性樹脂の代わりに、実施例8の感光性組成物を用いて硬化膜の透湿量、接着強度を測定したところ、各々、3g/m・24hr、13MPaであった。
[比較例13]
実施例14において、実施例3の感光性樹脂の代わりに、比較例2の感光性組成物を用い、用いて硬化膜の透湿量、接着強度を測定したところ、各々、45g/m・24hr、5MPaであった。
上記実施例14〜16に示される本発明のカチオン重合性感光性組成物は、優れた光硬化性、耐水性、屈曲性と高い接着性に加え、さらに低い透湿性を併せ持つことが明らかである。それに対し、比較例13で示される本発明の多核フェノール(b)を含有しない組成物では接着強度も低い上に透湿度も大きく、シール剤として用いる場合適当ではないことが分かる。OLEDディスプレイの製造において、シール剤を用いて封止材を張り合わせる工程は、製造されるOLEDディスプレイの信頼性を決定する重要な工程である。したがって、本実施例において優れた評価特性を示す感光性組成物は、FPD用シール剤、特に低透湿率が要求されるOLEDディスプレイに好適に利用できる。
最後に、本発明の感光性組成物を反射防止膜形成用コーティング材として用いた場合の実施例について説明する。
[実施例17]
実施例4の感光性組成物60部に、さらに表面を疎水化処理したヒュームドシリカであるR812(製品名:日本アエロジル社製)40部、溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬工業)100部を添加し、ホモジナイザーにより十分に混合し反射防止膜用の感光性組成物を得た。黒色顔料含有のPMMA樹脂であるデラグラス(商品名:旭化成ケミカルズ社製)を基板に用い、該組成物をスピンコーター(ミカサ社製)により0.1μmの膜厚になるように塗布しその後紫外線照射を行った。その後、80℃、1分間加熱し溶剤を除去することで反射率測定試料を得た。該試料の絶対鏡面反射スペクトルを紫外線可視分光光度計(V−550:日本分光社製)を用いて測定した。その結果、620nmにおいて反射率は0.8%と極めて低い反射率を示した。
Figure 0004235698
Figure 0004235698
本発明の感光性組成物は、大気中における硬化性と硬化物の種々の基材に対する接着性、硬化耐水性、および柔軟性に優れることから、感光性のコーティング材、インクジェットインク、接着剤、とりわけ有機EL等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用シール剤等の分野で好適に利用できる。

Claims (14)

  1. 分子中にエポキシ基を2個以上有するエボキシ化合物(a)を30〜90wt%、3〜5個のフェノール性芳香環からなり、そのすべての水酸基のいずれのオルト位にもメチロール基、炭素数4以上から成るアルキル基またはシクロアルキル基のいずれもが置換されておらず、かつその水酸基の少なくとも一方のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を2個以上有する、多核フェノール化合物(b)0.1〜40wt%、およびエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)0.1〜10wt%からなることを特徴とする感光性組成物
  2. さらに分子中に水酸基を1個以上とビニルエーテル基またはオキセタニル基の少なくともどちらか一方を1個以上有する水酸基含有化合物(d)1〜60wt%含有からなる請求項1に記載の感光性組成物
  3. エポキシ化合物(a)の有するエポキン基が脂環式エポキシ基である請求項1または2の感光性組成物
  4. 多核フェノール化合物(b)が、下記一般式(1)で示される、種々の多核フェノール化合物(e)からなり、さらに、下記一般式(2)で示される、種々の多核フェノール化合物(f)を含み、多核フェノール化合物(e)及び(f)の合計に対する多核フェノール化合物(e)の割合が40wt%以上である請求項1〜3いずれかの感光性組成物
    Figure 0004235698
    (式中Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基またはアラルキル基を示し、式中の複数のRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数、nは1〜3の整数である)
    Figure 0004235698
    (式中Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基またはアラルキル基を示し、式中の複数のRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数、nは0または4以上の整数である)
  5. 多核フェノール化合物(b)が、下記一般式(3)で示される、種々の多核フェノール化合物(g)からなり、さらに、下記一般式(4)で示される、種々の多核フェノール化合物(h)を含み、多核フェノール化合物(g)及び(h)の合計に対する多核フェノール化合物(g)の割合が40wt%以上である請求項1〜3いずれかの感光性組成物。
    Figure 0004235698
    (式nは1〜3の整数を示す)
    Figure 0004235698
    (式nは0または4以上の整数を示す)
  6. 請求項1〜5いずれかの感光性組成物に活性光線を照射し、さらに必要に応じて加熱することにより得られる硬化物。
  7. 請求項1〜5いずれかの感光性組成物からなる感光性接着剤。
  8. 請求項1〜5いずれかの感光性組成物からなる感光性コーティング材。
  9. 請求項1〜5いずれかの感光性組成物及び着色剤からなる感光性インクジェットインク。
  10. 請求項7〜9いずれかの感光性材料に活性光線を照射し、きらに必要に応じて加熱することにより得られる硬化物。
  11. 請求項7の感光性接着剤をシール剤として用いて製造されたフラットパネルディスプレイ。
  12. フラットパネルディスプレイが有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである請求項11のフラットパネルディスプレイ。
  13. さらに、アルコキシシランを含有する、請求項8の感光性コーティング材。
  14. アルコキシシランが、テトラエトキシシランである、請求項13の感光性コーティング材。
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