JP4226703B2 - 無機質基材用複合塗膜形成方法 - Google Patents
無機質基材用複合塗膜形成方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な無機質基材用複合塗膜形成方法に係わる。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来、建物の外壁材として、セメント系、珪酸カルシウム系、石膏系等の無機質材料を主成分とする無機質多孔質基材の表面に、防水性、ブロッキング性、耐候性、耐エフロレッセンス性、耐黴性、耐凍害性等の性能をもたせる目的で、塗料が塗装されている。
【0003】
上記した無機質材料の塗装方法としては、下塗り塗料及び上塗り塗料として加水分解性シリル基含有重合体に硬化触媒を配合してなる有機溶剤系塗料を塗装する方法が知られている(特開昭60−17128号公報)。しかしながら、上記した公報の塗装方法は、有機溶剤を使用しているために塗装作業者の作業環境や火災等による危険性等に問題があり、ユーザーから無公害で危険性のない水性塗料による塗装方法が要求されている。また、上記した塗料を単に水性化するだけでは上記した性能を満足させることは困難である。
【0004】
また、シリコンを含有する無機質用水性塗料として、例えば、特開昭58−180563号公報、特開平5−140502号公報及び特開平8−143773号公報等に記載されている。しかしながら、これらの水性塗料を下塗り塗料又は上塗り塗料として適用しても上記した性能を全て満足させることはできない。即ち、該水性塗料として、シリコン成分の多いものを1コートとして使用した場合には耐候性、耐汚染性、耐ブロッキング性等の塗膜性能や塗膜外観等は良くなるが、耐エフロレッセンス性、耐凍害性、耐透水性等の塗膜性能が悪くなり、一方、シリコン成分の少ないものを1コートとして使用した場合には耐エフロレッセンス性、耐凍害性、耐透水性等の塗膜性能は良くなるが、耐候性、耐汚染性、耐ブロッキング性等の塗膜性能や塗膜外観等が悪くなり、両者の塗膜性能を満足させるものが得られない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特に下塗り塗料及び上塗り塗料を使用することによりその必要とされる機能を分離し、そしてその機能を十分に発揮させるために特定の組成を有する下塗り塗料及び上塗り塗料とを組み合わせることにより、無機建材に要求される塗膜性能や塗膜外観を満足させるができ、且つ無公害で火災等の危険性のない、無機質基材用に適した複合塗膜の形成方法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、無機質基材表面に下塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(A)を塗装し、次いで上塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(B)を塗装して複合塗膜を形成する方法であって、該エマルション塗料(B)が水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)及びポリイソシアネートにアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとジアルカノールアミンとを反応させることにより得られる乳化剤とポリイソシアネートとを含有してなる水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を硬化性樹脂成分として含有し、かつ該樹脂成分(B1)に含まれるシリコン成分の含有量がエマルション塗料(A)を構成するビニルシリコン系樹脂に含まれるシリコン成分の含有量よりも多いことを特徴とする無機質基材用複合塗膜形成方法に係わる。
【0007】
本発明方法で使用する無機質基材は、特に制限されずに使用することができるが、例えば、セメント系、珪酸カルシウム系、石膏等の無機質材料を主成分とする無機質多孔質基材(例えば、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板等の建築材料、構造材料、土木材料、あるいは工業材料として使用されているもの)に塗装することが好ましい。また、このものの形状としては、例えば、瓦状、板状、加工板状、角状、パイプ状等いずれの形状においても適用することができる。
【0008】
上記した無機質基材は、例えば、無機質系水硬性物質を押し出し成形法、プレス成形法、一体成形法、乾式成形法、鋳込成形法、抄造法等の通常の方法により板状に成形し、次いで必要に応じて加熱養生(例えば、40〜100℃で4時間〜20時間加熱)やオートクレーブ養生(特に制限なしに窯業系基材で採用されている条件で行うことができる。通常は約160〜170℃、約8〜9Kgf/cm2、約4〜8時間、水蒸気存在下で行われる。)の手段により養生させことにより得られる。前記下塗りエマルション塗料の塗装時期は、成形直後の板でも、養生の前後の板でも適用可能である。
【0009】
本発明方法において、シリコン含有量とは、ビニルシリコン系樹脂を総重量基準(固形分)とし、このものに含まれる混合物もしくは反応物に相当するシリコン樹脂成分の含有重量割合を表す。
【0010】
また、本発明方法で使用するビニルシリコン系樹脂のビニルなる語句は、分子末端にビニル基を有する、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はスチリル基のラジカル性ビニルモノマーをラジカル共重合反応させてなる意味である。
【0011】
本発明方法で使用する下塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(A)は、このものに含まれるビニルシリコン系樹脂中のシリコン成分の含有量が上塗り用のエマルション塗料(B)に含まれる樹脂成分(B1)中のシリコン成分の含有量よりも少ない要件が重要である。即ち、下塗り塗料として上塗り塗料よりもシリコン成分の含有量を少なくすることにより、下塗りとしての機能(例えば、耐エフロレッセンス性、耐凍害性等)を発揮させると共に上塗り塗料がハジキ等の塗装欠陥を起こさずに塗装することができ、また、上塗り塗膜に対する付着性が良くなるといった効果がある。
【0012】
該エマルション塗料(A)としては、上記した要件を満たすものであれば特に制限されることなく従来から公知の水性ビニルシリコン系エマルション塗料を使用することができるが、特に乳化重合したエマルション塗料を使用することが好ましい。
【0013】
このような乳化重合したエマルション塗料としては、例えば、下記エマルション塗料(B)に記載したエマルション塗料において、水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)と同様の水酸基含有ビニルシリコン系樹脂(A')及び水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)から水酸基を除いたビニルシリコン系樹脂(A'')と必要に応じて水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を含有してなるエマルション塗料(A)を使用することが好ましい。
【0014】
また、エマルション塗料(A)として、乳化重合以外のエマルションも使用することができる。該エマルションとしては、例えば、ビニルシリコンモノマー(a)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(b)及び必要に応じてその他のビニルモノマー(c)をラジカル共重合反応させてなる共重合体(A''')を塩基性化合物(アミン化合物、アンモニア、無機塩基化合物等)で中和したのち、水に分散化したものが好ましい。
【0015】
ビニルシリコンモノマー(a)としては、例えば、ビニルisoプロポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン等のヒドロキシシラン及び/又は加水分解性シラン基含有ビニル系モノマー等が挙げられる。
【0016】
カルボキシル基含有ビニルモノマー(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0017】
その他のビニルモノマー(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tertブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビト−ル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキル又はシクロアルキルエステルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC2〜C8 ヒドロキシアルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ダイアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ビニルアルキルケトン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、Nーブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0018】
エマルション(A)において、シリコン成分の含有量はビニルシリコン系樹脂(A)を基準として1重量%以上で20重量%未満の範囲、特に2〜10重量%の範囲が好ましい。シリコン成分が、1重量%未満になると上塗り塗膜との層間密着性、耐ブロッキング性等が低下し、20重量%を超えると、耐エフロレッセンス性、耐凍害性、耐水性等の塗膜性能が悪くなるので好ましくない。
【0019】
また、ビニルシリコン系樹脂(A)として、水酸基を含有するものは、下記ポリイソシアネート(エマルションBで使用するイソシアネート基含有化合物成分(B2)と同様のもの)により架橋塗膜を形成することもできる。該水酸基の含有量は水酸基価が1〜300KOHmg/g、特に1〜250KOHmg/gの範囲が好ましい。
【0020】
水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を配合する場合には、例えば、このエマルション塗料に水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を配合することにより製造できる。
【0021】
水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)に用いられる乳化剤は、ポリイソシアネートにアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとジアルカノールアミンとを反応させることにより得られる。
【0022】
該ポリイソシアネートとしては、例えばテトラメチレンジイソシアネート,1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート,ドデカメチレンジイソシアネート,トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート,リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート,1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート,水素添加キシリレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,3,3′−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート,2,4−トリレンジイソシアネート,2,6−トリレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート,p−フェニレンジイソシアネート,4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート,2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート,3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート,1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート,2,4,6−トリイソシアネートトルエン,2,4,4′−トリイソシアネートジフェニルエーテル,トリ(イソシアネートフェニル)メタン,トリ(イソシアネートフェニル)チオフォスファイト等のトリイソシアネート類,ジイソシアネートの3モルと水の1モルから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート,ジイソシアネート類の三量化により形成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート,ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート製造の際に副生するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート,およびグリコール類,トリオール類またはポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオール等に上記のポリイソシアネートを付加して得られるアダクト型ポリイソシアネートやイソシアネートプレポリマー等のポリイソシアネート類およびこれらの混合物等が挙げられる。好適にはジイソシアネートが用いられる。
【0023】
該アルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えばメトキシポリメチレンエーテルグリコール,エトキシポリメチレンエーテルグリコール,メトキシポリエチレンエーテルグリコール,エトキシポリエチレンエーテルグリコール,メトキシポリブチレンエーテルグリコール,エトキシポリブチレンエーテルグリコール等が挙げられる。該アルコキシポリアルキレンエーテルグリコールは平均分子量が100〜4000のものが好ましく用いられる。平均分子量が400〜2000のものが特に好ましく用いられる。アルコキシポリアルキレンエーテルグリコールの平均分子量が100より小さいと、水中分散性ポリイソシアネート組成物の界面活性作用を有する部分が少なくなり、水中分散性が悪くなる場合があり、また、アルコキシポリアルキレンエーテルグリコールの分子量が4000を越えると水中分散性ポリイソシアネートの粘度が高くなり、水中分散性が悪くなる場合があるからである。
【0024】
該ジアルカノールアミンとしては、例えばジメタノールアミン,ジエタノールアミン,ジプロパノールアミン,ジイソプロパノールアミン,ジエタノールアニリン等が挙げられる。
【0025】
該乳化剤は、ポリイソシアネートにアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとジアルカノールアミンとを反応させることにより得られるが、より具体的にはポリイソシアネートとアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとをイソシアネート基/水酸基の当量比が3〜30、好ましくは10〜25で反応させた後、未反応のポリイソシアネートを除去し、次いでジアルカノールアミンとイソシアネート基/アミノ基の当量比が0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.2で反応させることにより得られる。ポリイソシアネートとアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとの反応は、40〜100℃程度で2〜24時間程度行う。窒素雰囲気下で行うことが望ましく、溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性な溶媒であればいずれでもよく、酢酸エチル,酢酸ブチル,セロソルブアセテート等のエステル系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン等の複素環系溶媒等が挙げられる。
【0026】
未反応のポリイソシアネートの除去は、蒸留法,抽出法等公知の手法が用いられる。該蒸留法としては、連続蒸留法,回分蒸留法,薄膜蒸留法等が挙げられる。薄膜蒸留法が好適に用いられる。該抽出法としては、連続抽出,回分抽出等の液−液抽出等が用いられ、抽出溶媒としてはヘキサン,酢酸エステル等の比較的低極性の溶媒が用いられる。次いで行うジアルカノールアミンとの反応は、室温〜120℃程度で、窒素雰囲気下において行うことが望ましい。前記と同様に溶媒を用いてもよい。このようにして得られる乳化剤とポリイソシアネートとを組み合わせることにより水中分散性ポリイソシアネートが得られる。水中分散性ポリイソシアネートにおいて、乳化剤とともに用いられるポリイソシアネートは、乳化剤の製造時に用いられる前記ポリイソシアネートと同様のものが用いられる。好適には脂肪族系ポリイソシアネートが用いられる。
【0027】
水中分散性ポリイソシアネートは、乳化剤とポリイソシアネートとを乳化剤中の活性水素基とポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比が1〜70、好ましくは2〜50の割合で含有させたものであるが、これらを反応させてもよい。反応させる場合は、室温〜120℃程度で1〜24時間程度行う。得られた水中分散性ポリイソシアネート組成物の平均官能基数は2〜5、好ましくは2.5〜4であり、またイソシアネート基含有率が3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。水中分散性ポリイソシアネートの平均官能基数が2に満たないとエマルション塗料(B)としての水中分散性、耐水性に劣る場合があり、また、5を越えると水中分散性ポリイソシアネートの水中分散性が悪くなる場合があるからである。また、イソシアネート基含量が3重量%に満たないとエマルション塗料(B)としての水中分散性,耐水性に劣る場合があり、また、50重量%を越えると水中分散性ポリイソシアネートの水中分散性が悪くなる場合があるからである。
【0028】
上記した水中分散性イソシアネートは、水酸基を含有させたエマルションに配合されるが、これは室温でエマルションの攪拌下で水中分散性イソシアネートを室温で混合することにより得られる。
【0029】
該水中分散性ポリイソシアネートは、エマルション中の水酸基に対してNCO/OH当量比が約0.5/1ないし5/1、好ましくは約0.8/1ないし2/1になるように配合することが好ましい。該水中分散性ポリイソシアネートはエマルション中に分散されたアクリルシリコン樹脂成分が乳化剤として働くことによりエマルション中に水中分散性ポリイソシアネートが均一に分散され安定なエマルションが得られる。
【0030】
本発明で使用するエマルション塗料(A)には、上記以外に必要に応じて着色剤、充填剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、アニオン/ノニオン両性界面活性剤、反応性界面活性剤、ポリヒドラジド化合物(例えば、下記と同様のもの)、コロイダルシリカ、加水分解性シラン基及び/又はヒドロキシシラン基含有化合物、上記以外の樹脂やエマルション(例えば、エポキシエマルション及び必要に応じてエポキシエマルション用硬化剤″アミン化合物硬化剤等″)、有機溶剤、硬化触媒、防腐剤、顔料分散剤、流動性調整剤、消泡剤等を配合することができる。
【0031】
次に、本発明方法で使用する上塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(B)について述べる。
【0032】
該エマルション塗料(B)は、水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)及び上記した水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を硬化性樹脂成分として含有し、かつ該樹脂成分(B1)に含まれるシリコン成分の含有量がエマルション塗料(A)を構成するビニルシリコン系樹脂に含まれるシリコン成分の含有量よりも多いものである。
【0033】
エマルション塗料(B)は、水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)及び水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を含有してなるものであり、水酸基含有ビニルシリコン系樹脂(B1)のエマルションに水中分散性ポリイソシアネート(B2)を配合してなる常温硬化型水性エマルション塗料である。
【0034】
水酸基含有ビニルシリコン系樹脂(B1)のエマルション(B−a)としては、上記した条件を満たすものであれば従来から公知のものを使用することができる。該エマルション(B−a)としては、好ましいものとして、例えば、下記のものが挙げられる。
【0035】
(1)実質的にシリコン成分を含有しないエマルション粒子表面にシリコン成分及びシリコン成分とエチレン性重合体で包囲されたエマルションである。また、水酸基はエマルション粒子内もしくは外部に含有することができる。このものとしては、例えば,下記のものを挙げることができる。
【0036】
(a)水酸基を含有するビニルモノマーを乳化重合して得られる水酸基含有重合体エマルションにオルガノシランを添加し、該オルガノシランを縮合反応させることにより、重合体とポリシロキサンとを複合化させたエマルション。
【0037】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC2〜C8 ヒドロキシアルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル等の水酸基含有ビニルモノマーを使用することができる。また、該水酸基含有ビニルモノマー以外に、上記その他のビニルモノマー(c)に記載した水酸基含有ビニルモノマー以外のビニルモノマーが使用できる。
【0038】
乳化重合は、通常の乳化重合条件下で行うことができる。例えば、水性媒体中に上記ビニルモノマー成分 、必要に応じて、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤などを添加し、温度30〜100℃で1〜30時間程度重合反応を行う。ここで、必要に応じて使用される乳化剤としては、陰イオン性、非イオン性、または陰イオン−非イオン性の組み合わせが使用できる。陰イオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルの硫酸塩などが好ましく使用される。非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが使用される。また、両性乳化剤としては、ラウリルベタインが適当である。陽イオン界面活性剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライドなどが使用できる。乳化剤の使用量は、通常、ビニルモノマー成分100重量部あたり、0〜5重量部であるが、耐水性の点で、ソープフリー系、反応性乳化剤の使用系が好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、例えば、水溶性の過硫酸塩、過酸化水素などが使用可能であり、場合によっては還元剤と組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、ビニルモノマー成分100重量部あたり、0.1〜3重量部程度である。
【0040】
得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)は、−40〜90℃、好ましくは−20〜90℃、さらに好ましくは0〜70℃、特に好ましくは10〜60℃であり、−40℃未満では硬度が劣り、一方90℃を超えると屈曲性が劣るものとなる。また、共重合体の水酸基価は1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性、耐汚染性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。共重合体の酸価は、好ましくは2〜60、さらに好ましくは5〜50、特に好ましくは5〜40であり、2未満では層間付着性に劣る場合があり、一方60を超える場合には耐水性が充分でない場合がある。さらに、前記ビニルモノマー成分を共重合して得られる共重合体全体の重量平均分子量は、好ましくは10万以上、さらに好ましくは30万以上、特に好ましくは40万以上であり、10万未満では耐水性が充分でない場合がある。
【0041】
上記共重合体中で反応させるオルガノシラン は、一般式Rn Si(OR′)4-n (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R′は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基、nは0〜3の整数を示す)で表されるアルコキシシラン、またはRmSiO(4-m)/2 (式中、Rは前記に同じ、mは0〜3の数を示す)で表される環状シロキサンなどが挙げられる。式中、Rは、炭素数1〜8の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、γ−クロロプロピル基、ビニル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−アミノプロピル基などが挙げられる。また、式中、R′は、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。
【0042】
式中のRまたはR′の炭素数が大きくなると、水溶性が低下し、前記共重合体に対するオルガノシランの吸収率が低下し好ましくない。これらのオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシランなどを挙げることができ、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランである。また、環状シロキサンとしては、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらのオルガノシロキサンは、1種単独または2種以上を併用することができ、他の例えばチタン、アルミニウムなどの金属アルコキシドと併用することもできる。また、必要に応じて公知のシランカップリング剤を併用することもできる。さらに、これらのオルガノシランは、必要に応じて有機溶媒に溶解して使用することもできる。
【0043】
オルガノシラン の使用量は、本発明の範囲に入るように適宜選択すればよい。
【0044】
共重合体中でオルガノシランを反応させる方法としては、該共重合体が分散された前記共重合体組成物中にオルガノシランを添加し、よく攪拌することにより容易に達成される。シードとなる前記共重合体にオルガノシランを効率よく吸収させ反応させるために、必要に応じて水に対する溶解度が10重量%以下の溶媒を、あらかじめ該共重合体中に吸収させておくことも可能である。
【0045】
オルガノシランの吸収が充分でない状態で反応が進むのを避けるために、共重合体組成物はpH4〜10、好ましくはpH5〜9、さらに好ましくはpH6〜8に調整し、温度は90℃以下、好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下の条件で、オルガノシランを添加、吸収させることが望ましい。共重合体中に吸収されたオルガノシランの縮合反応は、反応温度および水素イオン濃度を変えることにより容易に制御され、ポリシロキサンの重合度を調整することができる。オルガノシランの縮合反応は、温度30℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上で行うことができる。
【0046】
このようにして得られるエマルション粒子の平均粒径は、通常、0.03〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μm、さらに好ましくは0.05〜0.2μm程度であり、0.03μm未満では塗料の粘度が上昇し、低固形分の組成物しか得られず、使用条件により機械的シェアが過酷な場合においては、凝固物を発生して好ましくなく、一方0.5μmを超えると塗料の貯蔵安定性が劣り好ましくない。この平均粒径の調整は、乳化剤量、オルガノシランの吸収量などを適宜選択することによって行われる。
【0047】
(b)上記した水酸基を含有するビニルモノマーを乳化重合して得られる水酸基含有重合体エマルションにオルガノシランを添加し、該オルガノシランを縮合反応させることにより、重合体とポリシロキサンとを複合化させたエマルションとして、第1段階で水酸基含有ビニルモノマーを必須成分とするオレフイン性不飽和単量体を乳化重合してラテツクス形状の有機樹脂状重合体を製造し,第2段階でこのラテツクス粒子の存在下に低分子量のオルガノシロキサン(例;オクタメチルシクロテトラシロキサン等)を重合させて,ラテツクス粒子をオルガノポリシロキサンの殻体で包囲させることにより,少なくとも30℃の軟化点温度を有する重合したオレフイン性不飽和単量体単位を含む有機樹脂状重合体からなる芯体とそれを覆うオルガノポリシロキサンからなる殻体とを有する多相重合体のエマルションも使用することができる(特開昭63−202630号公報参照)。なお、該多相重合体エマルションにおいて、水酸基の含有量(重合体として)は水酸基価(重合体)で1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性、耐汚染性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。
【0048】
(c)水性媒体中において,シ−ドラテツクスを得(第一段階)たのち、このシ−ドラテツクスと加水分解性シランの存在下に,(イ)COOH基含有エチレン性不飽和単量体0.1〜10重量%,(ロ)その他のエチレン性不飽和単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物を液入して重合させて(第2段階)得られる重合体ラテックス(特開平4−175343号公報参照)も使用することができる。上記した重合体ラテックスにおいてシードラテックス及び/又はその他のエチレン性不飽和単量体として水酸基含有ビニルモノマーを必須成分として使用することにより重合ラテックス中に水酸基を導入することができる。水酸基の含有量(重合体として)は水酸基価(重合体)で1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性、耐汚染性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。
【0049】
(2)シリコン成分を含有するエマルション粒子にシリコン成分を包囲してなるエマルション。水酸基はエマルション粒子内もしくは外部に含有することができる。
【0050】
上記した(1)に記載の(a)〜(c)のエマルションにおいて、シリコン成分を包囲させる前のエマルション粒子にシリコン成分を含有させたものを使用することができる。水酸基の含有量(重合体として)は水酸基価(重合体)で1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。
【0051】
(3)シリコン成分を含有するエマルション粒子にシリコン成分を含有しない樹脂で包囲してなるエマルション。水酸基はエマルション粒子内もしくは外部に含有することができる。上記したものとしては、例えば、特開平8−3253号公報、特開平4−261454号公報に記載されるものを使用することができる。
【0052】
エマルションとしては、水酸基の含有量(重合体として)は水酸基価(重合体)で1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性、耐汚染性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。
【0053】
(4)シリコンエマルションとして、上記(1)〜(3)のように複合化させないで得られるエマルションが使用できる。このものとしては、例えば、上記ビニルシリコンモノマー(a)、上記カルボキシル基含有ビニルモノマー(b)、上記水酸基含有ビニルモノマー及び必要に応じて上記その他のビニルモノマー(c)をラジカル共重合反応させてなる共重合体を塩基性化合物で中和したのち、水に分散化した、上記エマルション(A''')の水酸基を含有するものが挙げられる。該共重合体において、水酸基の含有量は水酸基価で1〜300KOHmg/g、好ましくは15〜250KOHmg/gであり、1KOHmg/g未満では硬化性、耐候性、下塗りとの層間付着性、耐水性、耐汚染性等が劣り、一方300KOHmg/gを超えると耐水性、耐候性等が劣る。
【0054】
上記したエマルション(B)において、エマルションを構成するモノマー成分として必要に応じてカルボニル基含有不飽和モノマーを使用することができる。該モノマーを含有するエマルションはポリヒドラジド化合物(架橋剤)と組み合わせることにより架橋塗膜を形成することができる。該モノマーは、1分子中に少なくとも1個のケト基又はアルデヒド基と1個のラジカル重合し可能な二重結合を有するモノマー、即ち重合可能なモノオレフィン性不飽和のアルデヒド化合物及びケト化合物である。代表的な具体例としては、例えばダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ダイアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ビニルアルキルケトンなどが挙げられる。これらの中でもダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0055】
上記したポリヒドラジド化合物は、1分子中にヒドラジド基(−CO−NH−NH2 )を2個以上含有する上記カルボニル基と反応して架橋構造を作る化合物である。該ポリヒドラジド化合物の代表的な具体例としては、例えば、カルボジヒドラジドなどのジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコ酸二酸ジヒドラジドなどのC2〜40個の脂肪族カルボン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、ピロメリト酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジドなどの芳香族ポリヒドラジド、及びマレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジヒドラジド、ビスセミカルバジド、ポリアクリル酸ポリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジ/カルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのその他のポリヒドラジドなどが挙げられる。ポリヒドラジド化合物の配合割合は、カルボニル基に対して0.05〜2当量、好ましくは0.1〜1当量の範囲である。
【0056】
エマルション(B)において、シリコン成分の含有量はビニルシリコン系樹脂(B)を基準として20重量%以上で80重量%以下の範囲、特に25〜70重量%の範囲が好ましい。シリコン成分が、20重量%未満になると上塗り塗膜との層間密着性、耐候性、耐ブロッキング性、耐汚染性等が低下し、80重量%を超えると、貯蔵安定性等が悪くなるので好ましくない。
【0057】
上記したシリコン系樹脂(B1)のエマルションに配合するイソシアネート基含有化合物(B2)は上記エマルション(A)に記載したイソシアネート基含有化合物と同様のものを使用することができる。樹脂(B1)と水中分散性ポリイソシアネート(B2)との混合割合は、OH/NCOの当量比で約10/1〜0.1/1、好ましくは約5/1〜0.8/1であり、約10/1をはずれると未反応の水酸基が過剰に残り塗膜の耐水性、耐候性等が低下し、一方約0.1/1をはずれるとエマルションに結合しないポリイソシアネート同士の副反応が起こり易くなるため塗膜性能、塗膜外観(変色など)が低下する。
【0058】
また、エマルション(B−1)において、水酸基を含有しないシリコン系樹脂エマルションとしては、例えば上記した水酸基含有ビニルモノマーを用いないことで製造することができる。
【0059】
本発明で使用するエマルション塗料(B)には、上記以外に必要に応じて着色剤、充填剤、反応性界面活性剤、コロイダルシリカ、加水分解性シラン基及び/又はヒドロキシシラン基含有化合物、上記以外の樹脂やエマルション、有機溶剤、硬化触媒、艶消し剤、顔料分散剤、防腐剤、流動性調整剤、消泡剤等を配合することができる。
【0060】
本発明方法は、上記した無機基材表面に上記した下塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(A)を塗装し、常温又は加熱により乾燥をおこなったのち、上記した上塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(B)を塗装したのち、常温又は加熱により塗膜が形成される。また、該下塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(A)を塗装する前に必要に応じて該無機基材表面に下地調整用エポキシエマルション塗料や着色用塗料を塗装することができる。
【0061】
エマルション塗料(A)の塗装時における固形分は約1〜60重量%、好ましくは約5〜50重量%の濃度で使用され、1重量%未満になると塗装膜厚を確保するために塗装回数が多くなって塗装作業性が悪くなり、一方60重量%を越えると基材に対する浸透性が劣るため耐エフロレッセンス性、耐ブロッキング性等が悪くなるので好ましくない。
【0062】
エマルション塗料(A)の塗布量(固形分換算)は、約0.1〜150g/m2、好ましくは約0.5〜100g/m2の範囲である。塗布量が約0.1g/m2未満になると耐エフロレッセンス性が低下し、一方約150g/m2を越えると上塗り塗膜の仕上がり外観等が低下するので好ましくない。
【0063】
エマルション塗料(A)の塗装方法は、特に制限なしに従来から公知の塗装方法、例えば、刷毛、浸漬、フローコーター(カーテンフローコーターなど)、エアースプレー、エアレススプレー、シャワーコート、フローコート、ロールコート等等の方法で行うことができる。
【0064】
次いで、エマルション塗料(A)の塗装基材にエマルション塗料(B)が塗装される。
【0065】
エマルション塗料(B)の塗装時における固形分は約10〜80重量%、好ましくは約15〜65重量%の濃度で使用され、10重量%未満になると塗装膜厚を確保するために塗装回数が多くなって塗装作業性が悪くなり、一方80重量%を越えると塗装粘度が高くなり塗膜平滑性等が悪くなるので好ましくない。
【0066】
エマルション塗料(B)の塗布量(固形分換算)は、約5〜80μm、好ましくは約10〜70μmの範囲であり、約5μm未満になると塗膜の耐久性が悪くなり、一方約80μmを越えると塗膜内部の硬化が遅くなり乾燥時間が長くなるので好ましくない。
【0067】
エマルション塗料(B)の塗装方法は、上記エマルション(A)の塗装と同様の手段で実施できる。
【0068】
エマルション塗料(B)の乾燥は、例えば、室温では、例えば、乾燥時間は約24時間〜7日間、加熱を施す場合には、例えば、約70〜150℃の加熱温度では約5分間〜30分間で充分と考える。また、乾燥後塗装基材は積み重ねられる場合があるので耐ブロッキング性が必要である。
【0069】
【実施例】
次に、実施例を掲げて本発明を詳細に説明する。部及び%は重量基準である。
【0070】
下塗り塗料用エマルション(I)の製造例
攪拌機、温度計および単量体添加ポンプを備えたステンレス製オートクレーブに、加熱器およびチッ素ガス導入装置を取付け、このオートクレーブに水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、気相部を15分間、チッ素ガスで置換し、75℃に昇温した。その後、別容器からメタクリル酸n−ブチル10部、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル15部、スチレン18部、アクリル酸2およびアクリル酸エチル10部を混合したものを、所要時間3時間かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに85〜95℃で2時間熟成したのち、25℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpH8に調整した。
【0071】
次に、メチルトリエトキシシラン4.2部を入れ、約1時間にわたり強く攪拌してシードとなる共重合体に吸収させ、さらに70℃に昇温し、3時間縮合反応させた。その後冷却し、固形分濃度を水で45%に調整し、次いで200メッシュ金網でろ過した。得られた水性共重合組成物全体の平均粒径は、0.10μmであった。なお、平均粒径は、コールター社製、ナノサイザーを用いて測定した。また、得られた共重合組成物全体の酸価は19KOHmg/gであり、水酸基価は77KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は5%であった。
【0072】
下塗り塗料用エマルション(II)の製造例
上記したエマルション(I)において、メチルトリメトキシシラン4.2部を8.8部に置き換えた以外はエマルション(I)の製造例と同様にしてエマルションを製造した。固形分45%、樹脂酸価18KOHmg/g、
樹脂水酸基価73KOHmg/g、平均粒径は、0.10μmであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は10%であった。
【0073】
下塗り塗料用エマルション(III)の製造例
攪拌機、温度計および単量体添加ポンプを備えたステンレス製オートクレーブに、加熱器およびチッ素ガス導入装置を取付け、このオートクレーブに水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、気相部を15分間、チッ素ガスで置換し、75℃に昇温した。その後、別容器からメタクリル酸n−ブチル10部、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル15部、スチレン20部、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2部、アクリル酸2およびアクリル酸エチル10部を混合したものを、所要時間3時間かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに85〜95℃で2時間熟成したのち、25℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpH8に調整した。その後冷却し、固形分濃度を水で45%に調整し、次いで200メッシュ金網でろ過した。得られた水性共重合組成物全体の平均粒径は、0.10μmであった。なお、平均粒径は、コールター社製、ナノサイザーを用いて測定した。また、得られた共重合組成物全体の酸価は19KOHmg/gであり、水酸基価は77KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は2%であった。
【0074】
下塗り塗料用エマルション(IV)の製造例
上記したエマルション(I)において、メチルトリメトキシシラン4.2部を0部に置き換えた以外はエマルション(I)の製造例と同様にしてエマルションを製造した。固形分45%、樹脂酸価19KOHmg/g、樹脂水酸基価80KOHmg/g、平均粒径は、0.09μmであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は0%であった。
【0075】
上塗り塗料用エマルション(I)の製造例
攪拌機、温度計および単量体添加ポンプを備えたステンレス製オートクレーブに、加熱器およびチッ素ガス導入装置を取付け、このオートクレーブに水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、気相部を15分間、チッ素ガスで置換し、75℃に昇温した。その後、別容器からメタクリル酸n−ブチル10部、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル15部、スチレン18部、アクリル酸2およびアクリル酸エチル10部を混合したものを、所要時間3時間かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに85〜95℃で2時間熟成したのち、25℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpH8に調整した。
【0076】
次に、メチルトリエトキシシラン30部を入れ、約1時間にわたり強く攪拌してシードとなる共重合体に吸収させ、さらに70℃に昇温し、3時間縮合反応させた。その後冷却し、固形分濃度を水で45%に調整し、次いで200メッシュ金網でろ過した。得られた水性共重合組成物全体の平均粒径は、0.14μmであった。なお、平均粒径は、コールター社製、ナノサイザーを用いて測定した。また、得られた共重合組成物全体の酸価は14KOHmg/gであり、水酸基価は58KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は27%であった。
【0077】
上塗り塗料用エマルション(II)の製造例
反応容器にアクリル酸14部、メタクリル酸メチル94部、アクリル酸ブチル73部、水540部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの40%水溶液3.6部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの25%水溶液1.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸1.8部を仕込み78℃に上げてから過硫酸アンモニウム0.16部、を添加して第1段シードラテクスを製造した。
【0078】
次にアクリル酸5部、メタクリル酸メチル220部、アクリル酸ブチル244部、2−ヒドロキシエチルアクリレート100部、水1080部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの25%水溶液9部、過硫酸アンモニウム1.8部、の混合液とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン50部、ジメチルジメトキシシラン100部、メチルトリメトキシシラン100部からなる混合液とを別々の滴下槽より3時間かけて滴下し85℃で6時間保持させた。また、得られた共重合組成物全体の酸価は14KOHmg/gであり、水酸基価は43KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は25%であった。
【0079】
上塗り塗料用エマルション(III)の製造例
上記した上塗り塗料用エマルション(I)において、メタクリル酸メチル25部に代えてメタクリル酸メチル20部及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部を使用した以外は上塗り塗料用エマルション(I)と同様にして製造した。得られた水性共重合組成物全体の平均粒径は、0.25μmであった。なお、平均粒径は、コールター社製、ナノサイザーを用いて測定した。また、得られた共重合組成物全体の酸価は14KOHmg/gであり、水酸基価は58KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は32%であった。
【0080】
上塗り塗料用エマルション(IV)の製造例
ジメチルサイクリックス(環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物)90部、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン10部、水 300部、およびオクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加物硫酸エステルナトリウム塩 0.5部を、ホモミキサーで予備混合した後に、ホモジナイザーにより 200Kg/cm2の圧力で剪断し、強制乳化してシリコーン原料エマルジョンを得た。次いで、水 100部、およびオクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加物硫酸エステル10部を、攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケットおよび滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、フラスコ内の温度を80〜88℃に保ちながら3時間かけて上記のシリコーン原料エマルジョンを滴下した。滴下終了後、さらに1時間加熱、攪拌を続けた後、得られたエマルジョンを室温まで冷却し、水酸化ナトリウムにより中和してシリコーン重合体エマルジョンを得た。
【0081】
得られたシリコーン重合体エマルジョンを攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケットおよび不活性ガス導入孔を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下でビニル重合性単量体成分として、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸n-ブチル90部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、アクリル酸10部、N-ブトキシメチルアクリルアミド10部、および開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド1部を加えて10分攪拌した。次いで温度を65℃まで上げ、EDTA、ロンガリット、酸化第一鉄の水溶液を添加してラジカル重合を開始した。重合は3時間で完結し、反応液を室温まで冷却してエマルジョンを得た。また、得られた共重合組成物全体の酸価は26KOHmg/gであり、水酸基価は14KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は33%であった。
【0082】
上塗り塗料用エマルション(V)の製造例
攪拌機、温度計および単量体添加ポンプを備えたステンレス製オートクレーブに、加熱器およびチッ素ガス導入装置を取付け、このオートクレーブに水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、過硫酸ナトリウム0.2部を仕込み、気相部を15分間、チッ素ガスで置換し、75℃に昇温した。その後、別容器からメタクリル酸n−ブチル10部、メタクリル酸メチル10部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル15部、スチレン7部及びアクリル酸2部を混合したものを、所要時間3時間かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに85〜95℃で2時間熟成したのち、25℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpH8に調整した。
【0083】
次に、メチルトリエトキシシラン66部を入れ、約1時間にわたり強く攪拌してシードとなる共重合体に吸収させ、さらに70℃に昇温し、3時間縮合反応させた。その後冷却し、固形分濃度を水で45%に調整し、次いで200メッシュ金網でろ過した。得られた水性共重合組成物全体の平均粒径は、0.2μmであった。なお、平均粒径は、コールター社製、ナノサイザーを用いて測定した。また、得られた共重合組成物全体の酸価は14KOHmg/gであり、水酸基価は58KOHmg/gであった。該樹脂中のシリコン成分含有量は60%であった。
【0084】
上塗り塗料用エマルション(VI)の製造例
温度計、攪拌機、冷却器及び滴下ロートを備えた300ccの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル100g入れ、80〜90℃に昇温させ、このものにメチルメタクリレート30g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、Nーブチルアクリレート35g、スチレン10g、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン5g、アクリル酸10g及びアゾビスイソブチロニトリル1gの混合物を3時間にわたり滴下した、その後同温度で1時間熟成した後、アゾビスブチロニトリル1gを追加触媒として配合し、更に2時間熟成をへて、樹脂固形分50重量%、樹脂酸価78KOHmg/g、水酸基価は43KOHmg/gで、樹脂の数平均分子量約30000のアクリル系水性共重合体有機溶剤溶液を得た。該樹脂中のシリコン成分含有量は5%であった。
【0085】
次いで、該溶液にトリエチルアミンの中和剤0.9当量を配合し攪拌混合した後、固形分が約10重量%になるまで脱イオン水を徐々に滴下混合攪拌して上塗り塗料用エマルション(VI)を製造した。
【0086】
上塗り塗料用エマルション(VII)の製造例
上記したエマルション(VI)において、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン5gを0gに、そしてスチレン10gを15gに置き換えた以外はエマルション(VI)の製造例と同様にしてエマルションを製造した。樹脂は、固形分50重量%、酸価80KOHmg/g、数平均分子量約30000であった。該樹脂中のシリコン成分含有量は0%であった。
【0087】
水中分散性ポリイソシアネート(I)の製造例
撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管をそなえた4つ口フラスコに、平均分子量550のメトキシポリエチレンエーテルグリコール225gと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート871gを入れ、窒素雰囲気下70℃で6時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留装置にかけ、未反応の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、平均分子量550のメトキシポリエチレンエーテルグリコールを有するモノイソシアネート化合物を得た。次に、撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにジエタノールアミン37部を入れ、窒素雰囲気下、空冷しながら上記モノイソシアネート化合物250部を反応温度が70℃を越えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間窒素雰囲気下において70℃で撹拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、乳化剤(a)を得た。更に、撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに乳化剤42gとタケネートD−170HN(武田薬品工業(株)製:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)358gを入れ、窒素雰囲気下70℃にて6時間撹拌することにより、水中分散性ポリイソシアネートを得た。この水中分散性ポリイソシアネート(I)はイソシアネート基含量19.3重量%、粘度2000cpsであった。
【0088】
水中分散性ポリイソシアネート(II)
撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに平均分子量1000のメトキシポリエチレンエーテルグリコール100gと、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート168gを入れ、窒素雰囲気下70℃でイソシアネート基含量が29.8重量%に達するまで反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留装置にかけ、未反応の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、平均分子量1000のメトキシポリエチレンエーテルグリコールを有するモノイソシアネート化合物を得た。次に、撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにジエタノールアミン178.8gを入れ、窒素雰囲気下で空冷しながら上記モノイソシアネート化合物950gを、反応温度が70℃を越えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間窒素雰囲気下において70℃で撹拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、乳化剤を得た。更に、撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに乳化剤63.7g、タケネートD−170HN(武田薬品工業(株)製:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)270.0gを入れ、窒素雰囲気下70℃にて撹拌し、イソシアネート基含量が17.1重量%に達したことを確認して、水中分散性ポリイソシアネート(II)を得た。この水中分散性ポリイソシアネート(II)は、25℃において高粘調の白色液体であり、粘度は3000cpsであった。
【0089】
下塗り用エマルション塗料1〜5の製造例
表1に記載の配合で下塗り用エマルション塗料を製造した。
【0090】
上塗り用エマルション塗料1〜11の製造例
上記上塗り用エマルションを攪拌しながら上記イソシアネートを徐々に添加して上塗りエマルション塗料を製造した。配合は表1に記載の種類、割合でおこなった。
【0091】
基材A
ポルトランドセメント:60部、珪砂:50部、パルプ繊維:5部、セピオライト:3部、カーボンブラック:1部、水:120部からなる組成物を抄造法で板状にし、次いでプレス成形して基材Aを得た。
【0092】
基材B
ポルトランドセメント:36部、珪砂:58部、フラッイアッシュ:4部、ポリプロピレン繊維:1部、メチルセルロース:1部、水:67部からなる組成物を押し出し法で成形し基材Bを得た。
【0093】
〈一次養生条件〉
条件(イ)40℃ 8時間
実施例1
基材Aに、適宜アルミ板を挿入しながら積み重ね、一次養生する。此の板材を1枚ずつ、コンベア上に搬送し、下塗り塗料1をロールコーターで塗布量70g/m2(wet)になるように塗布した。次いで120℃×5分間乾燥させた。次いで上塗塗料1を、エアレススプレーにて塗布量50μm(乾燥膜厚)になるよう塗布し120℃×20分間乾燥させ、上塗塗膜を硬化させた。上塗り塗装後の塗膜外観、付着性、凍結融解性、耐水性につき試験をし、その結果を表1に示す。
【0094】
実施例2〜11
表1に記載の条件で、その他は実施例1と同様にして実施例2〜11の塗膜を形成した。その結果を表1に示す。
【0095】
比較例1〜5
表1の塗料を使用して下記の試験を行った結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1において試験方法は次の様にして行った。
【0098】
塗膜外観:塗面の平滑性、ワレ、ピンホール等の仕上り性を目視で評価する。◎良好、○若干劣るが実用上問題ないしで良好、△劣る、×著しく劣る。
【0099】
塗膜光沢:塗膜の光沢を目視で評価する。◎良好、○若干劣るが実用上問題なく良好、△劣る、×著しく劣る。
【0100】
耐ブロッキング性:上塗り塗装板を塗装面同士を荷重が400g/cm2になるように加圧を行い2枚の塗装板間の剥がれ易さを調べた。評価は次の基準で行った。◎は全く付着せずに良好なもの、○は若干付着はしているが軽い力で剥離が可能で実用上問題がないもの、△は強い力をかけないと剥離できないもの、×は剥離が困難なものである。
【0101】
耐水性:塗装板を上水に20℃で30日間浸漬した後、上塗り塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。
【0102】
耐アルカリ性:塗装板を水酸化カルシウムの飽和水溶液に20℃で30日間浸漬した後、上塗り塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。
【0103】
凍結融解性:塗装板を−20℃×18時間凍結と20℃×8時間融解とを1サイクルとしこのものを20サイクル試験を行った後の塗膜状態を評価した。◎異常なし、○極わずか異常が認められるが良好、△異常あり、×著しく異常が認められるもの。
【0104】
付着性(下塗り塗膜と上塗り塗膜との層間付着性):塗装膜の上からカッターナイフで4mmゴバン目25個を作りその上からセロファンテープを強く貼付後、素早く引き離したあとの塗膜の付着状況を評価した。◎異常なし、○極わずか異常が認められるが良好、△異常あり、×著しく異常が認められるもの。
【0105】
【発明の効果】
本発明方法は、特に下塗り塗料としてとしてシリコン成分を含有しているので無機質基材に対して濡れ、浸透性等が良く、また、耐加水分解性に優れたポリシロキサン結合を有するので、耐水性、耐アルカリ性、耐エフロレッセンス性、耐ブロッキング性等に優れた塗膜が形成される。また、上塗り塗料として下塗り塗料よりもシリコン成分が多いので下塗りに対する濡れが良くり仕上がり外観、層間密着性、耐候性等が優れる。更に、上塗り塗料は水酸基とイソシアネート基によりウレタン結合で架橋された塗膜が形成されるので耐アルカリ性、耐水性等の性能が優れ、またこの架橋は常温で行われるので実用的である。
Claims (4)
- 無機質基材表面に下塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(A)を塗装し、次いで上塗り用ビニルシリコン系エマルション塗料(B)を塗装して複合塗膜を形成する方法であって、該エマルション塗料(B)が水酸基含有ビニルシリコン系樹脂成分(B1)及びポリイソシアネートにアルコキシポリアルキレンエーテルグリコールとジアルカノールアミンとを反応させることにより得られる乳化剤とポリイソシアネートとを含有してなる水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を硬化性樹脂成分として含有し、かつ該樹脂成分(B1)に含まれるシリコン成分の含有量がエマルション塗料(A)を構成するビニルシリコン系樹脂(A1)に含まれるシリコン成分の含有量よりも多いことを特徴とする無機質基材用複合塗膜形成方法。
- 上記樹脂成分(B1)に含まれるシリコン成分の含有量が、20重量%以上で80重量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の無機質基材用複合塗膜形成方法。
- 上記樹脂成分(A1)に含まれるシリコン成分の含有量が、1重量%以上で20重量%未満の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の無機質基材用複合塗膜形成方法。
- 上記エマルション塗料(A)が、必要に応じて水中分散性ポリイソシアネート成分(B2)を含有することを特徴とする請求項1に記載の無機質基材用複合塗膜形成方法。
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