JP3803171B2 - 複合塗膜およびそれを有する物品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材、建築物、家具または置物など物品の素地表面に塗材を塗布、乾燥することにより形成され、大理石や御影石などのような透明感のある天然石模様あるいは多色模様を与える複合塗膜およびそれを表面に有する物品に関する。このような塗膜を与える塗材には、石材調仕上塗材、リンジング塗材、スキン系塗材および多彩模様塗材と呼ばれるものもある。
【0002】
具体的には、特定のアクリル系エマルジョンと骨材および/または顔料を含有する下塗り用組成物を用いた下塗り層と、特定の水性エマルジョンと紫外線吸収剤および/または光安定剤を有する上塗り用組成物を用いた透明上塗り層を有する複合塗膜およびそれを表面に有する物品に関する。
【0003】
【従来の技術】
水性仕上塗材用として、乳化重合より得られる合成樹脂エマルジョンは常温あるいは加熱乾燥下で成膜し、比較的耐久性の良好な塗膜を形成することから多く用いられている。
これらの合成樹脂エマルジョンと骨材とからなる石材仕上用塗材が、特公平2−40702号公報、特開昭57−27177号公報において開示されている。これらの下塗り層には骨材、顔料と、合成樹脂エマルジョンからなる水性塗材が多く使用され、一方、上塗り層には有機溶剤系アクリル−ウレタン樹脂、あるいは有機溶剤系アクリル樹脂などの有機溶剤系透明樹脂が使用されている。上塗り層だけを有機溶剤系透明塗膜とした場合は、その耐久性、耐候性は比較的良好である。これは上塗り層の塗装時にその有機溶剤が、下塗り層の表面の一部溶解し、上下層の良好な密着力を発現することにより水の浸入が防止できるためと考えられる。
【0004】
しかし有機溶剤の持つ臭気、火災の危険性から敬遠され、上塗り層、下塗り層とも水性化塗材を用いたものとすることが望まれていた。
特開平8−218028号公報では、上塗り用塗材として水性フッソの酸化チタン配合塗料、下塗り用塗材として1液常温架橋水性分散液に酸化チタン配合塗料を使用する上塗り下塗りとも水性塗料である発明が開示されている。また、特開平6−190332号公報でも、上塗り層、下塗り層とも合成樹脂エマルジョンからなる水性塗材とした場合が開示されている。しかし、両者とも、使用する塗材は、上塗り用塗材には酸化チタンを配合し、下塗り用塗材には顔料として微細な炭酸カルシウムを配合して、下塗り層への光の透過を防いでいる。従って、いずれの場合も上塗り層を不透明にすることにより下塗り層の耐候性を高めているものである。
【0005】
一方で、透明感、光沢感のある塗膜を得るために、上塗り層を透明にすることが要求されている。従ってこれらの先行文献または特開昭64−40574号公報に開示されたような上塗り用塗材を透明塗料へ変更した場合には、上塗り層を透過した光が下塗り層を劣化させることになる。また、下塗り層の耐水性が充分でなかったこともあり、塗膜の耐久性、耐候性は充分なものではなかった。
【0006】
このように上塗り層、下塗り層とも合成樹脂エマルジョンからなる水性塗材において上塗り層を透明塗膜とした場合は、従来、その耐久性、耐候性は充分なものではなかった。とくに屋外で暴露された場合、光、熱、雨等によって塗膜が白化あるいは脆弱となることによって、塗装直後の美観を維持できないという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上塗り用塗材および下塗り用塗材ともに合成樹脂エマルジョンからなる水性組成物を使用して、かつ上塗り層を透明塗膜とする場合に、上塗り層へ溶剤系樹脂を使用する場合と同等あるいはそれ以上の長期の耐久性、耐水性が発現可能な複合塗膜およびそれを表面に有する物品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために鋭意検討をかさねた結果、特定の上塗り用組成物より得られる透明塗膜を上塗り層とし、特定の下塗り用組成物より得られる塗膜を下塗り層とする複合塗膜が、優れた効果を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明の第1は、(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと(B)骨材および/または顔料を71.1〜80重量%含有する下塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる下塗り層と、(C)水性エマルジョンと(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有する上塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる透明上塗り層を有する複合塗膜であって、該アクリル系エマルジョン(A)が、(E)加水分解性シランの存在下、乳化剤として、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、および/またはスルホン酸基もしくはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、pH4.0以下で、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるものである複合塗膜である。
【0010】
発明の第2は、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンおよび(H)ヒドラジン誘導体組成物を含有する(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと(B)骨材および/または顔料を71.1〜80重量%含有する下塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる下塗り層と、(C)水性エマルジョンと(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有する上塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる透明上塗り層を有する複合塗膜であって、該エマルジョン(G)が、乳化剤として、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、および/またはスルホン酸基もしくはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるものである複合塗膜である。
【0011】
発明の第3は、(C)水性エマルジョンが、(E)加水分解性シランの存在下、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系エマルジョンである発明の第1に記載の複合塗膜である。
発明の第4は、表面の少なくとも一部に発明の第1〜3のいずれかに記載の複合塗膜を有する物品である。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合塗膜は、下塗り層と上塗り層を有する。下塗り層は天然石模様などの意匠性を与える機能を有する。この層は耐水性に優れているため、雨などによる白化に起因する劣化が生じにくい。上塗り層は透明であり、かつ下塗り層の光劣化を防止する機能を有する。また、いずれの層も水性エマルジョンを使用した水性塗材を用いて形成されるため、有機溶剤による上記の問題点が発生しない。
【0013】
本発明の複合塗膜のうち、下塗り層を形成するための下塗り用組成物においては、(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンを使用することが必要である。塗膜吸水率を20%以下とすることにより、複合塗膜の耐久性が著しく改善される。
このようなアクリル系エマルジョンを得る方法としては、例えば以下の二つの方法があるが、これらに限定されるわけではない。
【0014】
第1の方法としては、(E)加水分解性シランの存在下、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得る方法がある。
第2の方法は、(G)アルド基またはケト基を含有するアクリル系エマルジョンと(H)ヒドラジン誘導体組成物を用いる方法である。
また、第1の方法と第2の方法を併用することも可能である。これらの方法の詳細については後述する。
【0015】
本発明の下塗り層を形成するための下塗り用組成物には、(B)骨材および/または顔料を含むことを要する。
骨材としては、透明骨材、着色骨材のいずれであっても良い。
透明骨材としては、長石、硅砂、硅石、寒水石、ガラスビーズ、合成樹脂ビーズがあげられ、着色骨材としては大理石粉、御影石粉、蛇紋岩、蛍石、着色硅砂粉、有色陶磁器粉などがあげられ、また特開昭64−16879号公報または特開平8−151541号公報で開示されている液状着色粒子、さらに鱗片状顔料を含ませた着色分散粒子をあげることができる。
【0016】
骨材が透明骨材と着色骨材の混合物であることは好ましい。この場合、透明骨材と着色骨材の重量比率は、1/99〜99/1が好ましく、さらに好ましくは5/95〜95/5である。
骨材は、0.05〜8.0mmの粒径、好ましくは0.1〜5.0mmの粒径を有するものが5重量%以上、好ましくは20重量%以上含まれる骨材であることが望ましい。骨材の粒径が上記の下限以上である骨材が、上記の量の範囲内で含まれれば、下塗り用組成物から得られる下塗り層にも透明性が得られ、粒径が上記の上限以下の骨材が上記の量の範囲内で含まれれば、骨材が塗膜から脱落しにくく施工が容易である。
【0017】
本発明で使用できる(B)顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の無機系着色顔料、キナクリドン系、フタロシアニン系、β−ナフトール系、溶性アゾ,不溶性アゾ顔料等の有機系着色顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、クレー、ケイ藻土、パライト、水酸化アルミニウム等の体質顔料、ポルトランドセメント、酸化亜鉛等があげられる。
【0018】
顔料は、顔料のみで用いることもできるが、骨材と併用することがより好ましい。また、上記の液状着色粒子または着色分散粒子である骨材として用いることもできる。
下塗り用組成物中の(B)骨材および/または顔料の量は、5〜80重量%であることが好ましい。(B)骨材および/または顔料の量が5重量%以上でその塗膜において天然石模様が得られ、80重量%以下でその塗膜の耐久性が優れている。
【0019】
本発明では、まず何らかの物品表面に、上記の下塗り用組成物を塗布、乾燥して下塗り層を形成させる。次に上塗り用組成物を塗布、乾燥して上塗り層を形成させ、複合塗膜とする。ここで、上塗りを行う段階での下塗り層の乾燥は完全である必要はなく、下塗り層の表面だけがある程度乾けば十分で、内部まで乾燥している必要はない。
【0020】
下塗り用組成物は、コテ、リシンガン、万能ガン、三頭ガンなどの塗料吹付けガンなどの公知の塗装器具を用いて塗布することができる。
下塗り用組成物の塗布膜厚は、塗布量に基づいて0.1〜10.0Kg/m2 、好ましくは0.3〜5.0Kg/m2 程度が適当である。下塗り用組成物は、下塗り層表面の全面にわたって、平滑面もしくは滑らかな凹凸模様となるように行われるのが好ましく、必要により該組成物を乾燥後または、乾燥前にサンダー等を使用して平坦に仕上げることができる。
【0021】
また、上塗り用組成物の塗布量は、0.05〜0.5Kg/m2 であることが意匠性の点で好ましい。
本発明の下塗り用組成物、上塗り用組成物の各々の乾燥は、室温でもそれ以上の加温下でも所望により、設定することができる。
本発明において、上塗り用組成物に用いる(C)水性エマルジョンとしては、ウレタン系エマルジョン、フッソ系エマルジョン、アクリル系エマルジョン等があげられる。
【0022】
本発明において、上塗り用組成物には(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有することが必要である。これらを含ませることにより、下塗り層の光劣化を防止することができる。
紫外線吸収剤を例示すると、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることができる。
【0023】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。
【0024】
ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。
【0025】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN900)などがある。
【0026】
ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
【0027】
トリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
さらに、無機系の紫外線吸収剤として、酸化セリウム結晶微粒子または該酸化セリウム結晶微粒子を他無機粒子へコーティングした材料が挙げられる。具体的な商品名を例示すると、ニードラール W−15、U−15、W−100、U−100(多木化学(株)製)、セリガード S−3018−02、T−3018−02、M−3018−03(日本無機化学工業(株)製)等がある。
【0028】
また、(D)光安定剤としては、ヒンダードアミン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。
具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
【0029】
ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
【0030】
(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤は、(C)水性エマルジョンの固形分重量に対して0.1重量%〜5重量%用いることが好ましい。
(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を上塗り用組成物に含有させる方法としては、特開平3−37288号公報または特開平4−298573号公報に記載の水性エマルジョンに紫外線吸収剤および/または光安定剤を後添加する方法、特開昭64−20201号公報、特開平7−292009号公報に記載の紫外線吸収剤を乳化重合中に添加する方法、特開平3−128978号公報に記載のラジカル重合性の二重結合を有する光安定剤を乳化重合中に用いる方法、特開平5−39327号公報に記載のラジカル重合性の二重結合を有する紫外線吸収剤を乳化重合中に用いる方法、さらに特開平7−173404号公報に記載の、重合中のシリル基を安定化させるために重合を中性付近のpHで実施するシリコーン変性アクリル系エマルジョンに紫外線吸収剤および/または光安定剤を共重合もしくは後添加する方法等が例示され、いずれの方法でもよい。
【0031】
しかし、紫外線吸収剤や光安定剤は、成膜助剤などと混合して後添加した場合、水性媒体中での分散性が不充分になりやすく、得られた塗膜の粒子界面に集中して存在しやすいため、降雨などにより溶出しやすい場合がある。そこで長期の耐久性を向上させるためには、(C)水性エマルジョンと(D)紫外線吸収剤及び/または光安定剤とを複合化させることが好ましい。
【0032】
具体的には、水性エマルジョンの乳化重合時に(F)エチレン性不飽和単量体と(D)紫外線吸収剤及び/または光安定剤を共存させ、水性媒体中において乳化重合することが好ましい。
特にシリコーン変性されてなる(C)水性エマルジョンと、紫外線吸収能が高いベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤と組み合わせると、これらによる相乗効果で、複合塗膜は卓越した耐久性を示す。
【0033】
また本発明の下塗り用組成物においても、(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を上塗り用組成物におけるいずれかの方法で複合化することは望ましい。
本発明における上塗り層は、透明塗膜であることが必要である。これにより光沢感、高級感のある複合塗膜が得られる。
【0034】
本発明における透明の意味は次のように規定される。すなわち上塗り用組成物の塗膜膜厚が100μmであるとき、JIS−K7105に定める濁度計により測定した濁度が20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは3%以下であることである。この上限値より低い濁度で下塗り層の模様が表面から見えやすく、意匠性に優れる。
【0035】
なお、意匠性の観点から上塗り層の濁度を高めにする必要があるときは、シリカ粉、カーボンブラック、酸化チタン等を添加することは任意である。
次に、(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンを得るための、前述の第1の方法について詳述する。
この方法においては、(E)加水分解性シランの存在下、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して、目的の(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンを得る。(E)加水分解性シランを存在させることにより、塗膜の高耐久性化を可能としている。
【0036】
この方法で使用する(E)加水分解性シランとしては、下記式(a)で表される、シリコーン構造を有するシランから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(R1 n −Si−(R2 4-n (a)
(式中nは0〜3の整数であり、R1 は水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれる。n個のR1 は同一であっても、異なっても良い。R2 は炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基または水酸基から選ばれる。4−n個のR2 は同一であっても、異なっても良い。)
特に、(E)加水分解性シランには、式(a)においてn=1とおいたシラン(II)の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。シラン(II)のR1 としてはメチル基、フェニル基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基が好ましく、R2 はそれぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が好ましい。
【0037】
シラン(II)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
【0038】
また、(E)加水分解性シランが、シラン(II)に加え、環状シラン及び式(a)においてn=2とおいて得られるシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことは好ましい。
これは、シラン(II)と、環状シラン及びシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種の併用により、(E)加水分解性シランが形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になるのを防ぐことができ、これによって、水性エマルジョンまたはアクリル系エマルジョンから提供される塗膜に柔軟性を付与することができるためである。
【0039】
環状シランの具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが上げられる。
シラン(III)の具体例として、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0040】
(E)加水分解性シランに、シラン(II)と、環状シラン及びシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種の、両者を含む場合は、シラン(II)の、上記の環状シラン及びシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種に対するモル比が、少なくとも10/100、さらには35/100以上であることが好ましい。
【0041】
さらに、(E)加水分解性シランには、シラン(II)に加え、加水分解基を有する線状シロキサン、及び式(a)においてn=0または3とおいて得られるシラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでも良い。
シラン(IV)の具体例として、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
【0042】
加水分解基を有する線状シロキサンの例としては、下記の一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化1】
Figure 0003803171
【0044】
【化2】
Figure 0003803171
【0045】
【化3】
Figure 0003803171
【0046】
(式中、R1 は水素、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、各R2 はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基又はエチレンオキサイド基から選ばれ、mは1〜999の正の整数を表す。)
(E)加水分解性シランが、シラン(II)と、加水分解基を有する線状シロキサン及びシラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種の、両者を含む場合は、シラン(II)の、加水分解基を有する線状シロキサン及びシラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種に対するモル比が、少なくとも10/100、好ましくは35/100以上であることが好ましい。
【0047】
シラン(III)またはシラン(IV)において、R1 としてはメチル基、フェニル基が特に好ましく、R2 としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が特に好ましい。
(E)加水分解性シランは、シラン(II)および、環状シラン、シラン(III)、線状シロキサン、シラン(IV)からなる群から選ばれる少なくとも1種に加え、クロロシラン、例えばメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ビニルクロルシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジクロロメチルシランを含むことができる。
【0048】
上記したシラン縮合物の存在は、29SiNMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)または1HNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって知ることができる。例えば、シラン(II)の縮合物は、29SiNMRのケミカルシフトが−40〜−80PPMにピークを示すことで同定することができる。また、シラン(IV)あるいは環状シランの縮合物は29SiNMRのケミカルシフトが−16〜−26PPMにピークを示すことで同定することができる。
【0049】
(E)加水分解性シランは、(F)エチレン性不飽和単量体の重量に対して0.01重量%〜200重量%用いることができ、0.01〜67重量%用いることが好ましく、0.05〜67重量%用いることがさらに好ましい。
(E)加水分解性シランの存在下、乳化重合させる(F)エチレン性不飽和単量体を具体的に示せば、
カルボン酸基を持つ単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸の半エステル、クロトン酸などがあり、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド系単量体、メタクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられ、(メタ) アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ) アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ) アクリル酸メチル、(メタ) アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ) アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ) アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ) アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸エチレングリコール、(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ) アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸プロピレングリコール、(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ) アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系単量体類としては、例えば(メタ)アクリルアミド 、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ) アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0050】
(E)加水分解性シランの存在下、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合するには、乳化重合中の乳化重合系の水素イオン濃度(pH)は、pH4.0以下で実施することを要し、さらにpH1.5以上3.0以下が好ましい。上限以下で乳化重合を実施することにより、加水分解性シランの縮合反応が促進し、乳化重合後は縮合反応が進まないため、製品としての貯蔵安定性が良くなる。
【0051】
乳化重合においては、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせることができ、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを有利に使用することができる。
その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など挙げることができるが、加水分解性シランの加水分解反応および縮合反応を促進させるための触媒としても効果のある過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。ラジカル重合触媒の量としては、(F)エチレン性不飽和単量体の重量に対して通常0.05重量%〜1重量%を用いることができる。
【0052】
通常、重合反応は常圧下、65〜90℃の重合温度で行うことが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧などの特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。重合時間としては、導入時間と、導入後の熟成(cooking)時間がある。導入時間は、各種原料を反応系へ同時に導入する場合は通常数分であり、各種原料を反応系へ逐次導入する場合は重合による発熱が除熱可能な範囲で反応系へ逐次導入するため、最終的に得られるエマルジョン中の重合体濃度によっても異なるが、通常10分以上である。導入後の熟成(cooking)時間としては、少なくとも10分以上であることが好ましい。この重合時間以下では、各原料がそのまま残留したり、加水分解性シランが縮合せずに加水分解物のまま残留してしまう恐れがある。
【0053】
なお、重合速度の促進、および70℃以下での低温での重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。さらに、分子量を調整するために、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を任意に添加することも可能である。
【0054】
なお、加水分解性シランを用いた乳化重合において、乳化重合終了後、成膜時の硬化触媒として、例えばジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、オクチル酸すず、ラウリン酸すず、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネートなどの有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどのアミン化合物を、本発明の高耐久性エマルジョンへ添加することができる。なおこれらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが望ましい。
【0055】
次に、(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンを得るための、前述の第2の方法について詳述する。
第2の方法で使用する(G)アルド基またはケト基を含有するエマルジョンは、例えば、アルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和カルボニル基含有単量体と、前記の(F)エチレン性不飽和単量体を水性媒体中において乳化重合することによって得られる。
【0056】
アルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和カルボニル基含有単量体としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、ホルミルスチロール等や、その併用が挙げられる。
【0057】
アルド基またはケト基を有するエチレン性不飽和カルボニル基含有単量体と、(F)エチレン性不飽和単量体を水性媒体中において乳化重合する方法についても公知の方法が使用でき、特に制限されない。
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンとしてアルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンを使用する場合、硬化剤として(H)ヒドラジン誘導体組成物を含有していることが必要である。
【0058】
ここにいう(H)ヒドラジン誘導体組成物は、少なくともヒドラジン残基を1分子中に2個以上有するヒドラジン誘導体またはそれらの組成物である。
その具体例としては、例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類;1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリト酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類;ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類、下記一般式(4)で表される炭酸ポリヒドラジド類、または下記一般式(5)で表されるビスセミカルバジド類等、及び式(6)で表されるがごとき数平均分子量が500〜500000の酸ヒドラジド系ポリマー等やそれらの併用が挙げられる。
【0059】
【化4】
Figure 0003803171
【0060】
(式中xは0〜20の整数を意味する。)
【0061】
【化5】
Figure 0003803171
【0062】
(式中、R6'は直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20の2価の脂肪族残基、炭素数6〜25の2価の脂環族残基、置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香族残基、及び置換基を有しても有さなくても良い炭素数6〜25の2価の芳香脂環族残基を表す。R7'は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0063】
【化6】
Figure 0003803171
【0064】
(式中、Xは水素原子またはカルボキシル基であり、Yは水素原子またはメチル基であり、Aはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸から選ばれる単量体の重合した単位であり、Bはアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸と共重合可能な単量体の重合した単位である。また、l、m及びnは下記の各式を満足する数を示す。
【0065】
2モル%≦l≦100モル%
0モル%≦m+n≦98モル%
l+m+n=100モル%
また、上記ヒドラジド系ポリマーは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。)
本発明において、(H)ヒドラジン誘導体組成物が、(H’)平均セミカルバジド残基数が2.5個以上であるセミカルバジド組成物であることは好ましい。
【0066】
この場合、下塗り用組成物を塗布、乾燥すると、平均セミカルバジド残基数が2.5個以上であるセミカルバジド組成物が硬化剤として機能し、下塗り用組成物中の水性媒体が揮散して塗膜を形成する際に、(H’)成分中のセミカルバジド基が、(G)成分中のアルド基またはケト基とセミカルバゾン結合を行い、複雑に架橋したポリマーを形成すると考えられる。このことにより、下塗り用組成物から得られる塗膜の吸水率が20%以下となり、本願発明の優れた効果が発現するものと推測される。
【0067】
したがって、該セミカルバジド組成物の平均セミカルバジド残基数は2.5個以上であることが望ましい。好ましくは2.5以上20以下、より好ましくは3以上20以下である。
本発明において、1分子あたりのセミカルバジド基数とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるスチレン換算のセミカルバジド組成物数平均分子量をM、セミカルバジド組成物1グラム中に含まれるセミカルバジド基の当量数をSとしたとき、M×Sで表される数で定義される。
【0068】
このセミカルバジド組成物は、ポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させる事によって得られ、たとえば1分子中に−NCO基を平均2個以上、好ましくは平均3個以上有するポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させる事によって得ることができる。
下塗り用組成物より得られる塗膜の耐水性を改善する目的で、セミカルバジド組成物として、水に対し不溶または難溶性となるセミカルバジド組成物を用いることも可能である。
【0069】
さらに、(H’)セミカルバジド組成物が、下記式(7)で表されるセミカルバジド誘導体またはその組成物であることが好ましい。
【0070】
【化7】
Figure 0003803171
【0071】
(式中、R1 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR1 は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表し;R2 は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキルレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表し;
各R3 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し;
nは0又は1であり;
l及びmは各々0または正の整数であり、ただし2≦(l+m)≦20であり、好ましくは3≦(l+m)≦20である。)
上記式(7)で表されるセミカルバジド誘導体の製造方法の一例について説明する。
【0072】
式(7)中、l+m=2であるセミカルバジド誘導体は、1分子中に−NCO基を2個有するジイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させる事によって得られる。
また、より架橋効率が高く強靱でかつ耐水性に優れた皮膜を得るためには、前記式(7)で表されるセミカルバジド誘導体が、1分子中に−NCO基を3個以上持つポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させる事によって得られるものであることが望ましい。
【0073】
1分子中に−NCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物、およびそれから誘導されるセミカルバジド誘導体は、例えばWO96/01252号パンフレットに記載の方法で得ることができる。
ここで、ポリイソシアネート1分子中の−NCO基数が20を超えない範囲がセミカルバジド基の数が比較的適当で、(H)セミカルバジド組成物の粘度が高くなりすぎにくく、取り扱える範囲である。また、相溶性の観点からも好ましい。
【0074】
1分子中に−NCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物をオリゴマー化して得られる。例えば、ジイソシアネート類をビュレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合、アロファネート結合、ウレトジオン結合等によりオリゴマー化したポリイソシアネート化合物、更には1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン及びこれらの併用が挙げられる。
【0075】
具体的には、塗膜の硬度、耐薬品性、耐熱性等の点から、基本骨格としてイソシアヌレート構造またはビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンとの被覆組成物から得られる皮膜の柔軟性に優れるものとしては、基本骨格としてウレタン構造を有するものが例示できる。
【0076】
本発明においては、セミカルバジド誘導体又はその原料であるポリイソシアネート化合物が、ヒドラジン化合物の鎖延長により高分子化することを防ぐ目的から、ヒドラジン化合物を下式(8)で表されるモノアルデヒドまたはモノケトン等と反応させ、ヒドラゾン基として封鎖して用いることもできる。
4 5 C=O (8)
(式中、R4 、R5 は各々独立して水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシル基で置換されている炭素数6〜10のアリール基を表し、R4 、R5 は場合によっては共同して環状構造を形成してもよい。)
この場合、生成するセミカルバジド誘導体はセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された物となり、上記式(7)のセミカルバジド誘導体の末端封鎖体である。
【0077】
このようなセミカルバジド誘導体の末端封鎖体から封鎖剤として用いたモノアルデヒド又はモノケトンを脱離するには、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンと混合する前に加水分解して留去しても良いし、そのまま硬化剤として用いて水性塗料とし、基材表面に塗布した後、硬化過程において自然脱離させても良い。従って、上記封鎖剤としては30〜200℃の沸点を有するモノケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。
【0078】
また、式(7)で表されるセミカルバジド誘導体またはその末端封鎖体、もしくはそれらの組成物の水性媒体中への分散安定性や溶解性を補助する目的で、下記式(9)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体からなる群から選ばれる少なくとも1つとを混合して使用することができる。
【0079】
【化8】
Figure 0003803171
【0080】
(式中、R11は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR11は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有すさないトリイソシアネート残基を表し;R12は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキルレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表し;
各R13は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し;
nは0又は1であり;そして
p及びqは、各々0または正の整数であり、rは正の整数であり、
3≦(p+q+r)≦20である)
上記式(9)で表される親水性基含有化合物のセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物が、式(9)における末端基H2 NR13N−の少なくとも1つが式R5 4 C=NR13N−で表される封鎖末端基を有している(式中、R4、R5 は各々独立して水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリール基をあらわし、R4 とR5 は場合によっては共同して環状構造を形成していてもよい。)親水性基含有化合物の末端封鎖体として用いることもできる。
【0081】
即ち、上記式(7)で表されるセミカルバジド誘導体及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、上記式(9)で表される親水性基含有化合物及び末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する(H’)セミカルバジド組成物を、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンの硬化剤として有利に用いることができる。
【0082】
そして、式(7)で表されるセミカルバジド誘導体及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つと、式(9)で表される親水性基含有化合物及びその末端封鎖体から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物において、それらの重量比が99/1〜10/90の範囲内であることが望ましい。これにより塗膜が安定で硬化性能に優れる水性塗料が得られる。
【0083】
本発明の式(7)で表されるセミカルバジド誘導体から選ばれる少なくとも1つと、式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物は、例えば、前記のWO96/01252号パンフレットに記載の方法で得ることができる。
(H’)セミカルバジド組成物が難水溶性のセミカルバジド誘導体であれば、さらに好ましい。ここで難水溶性とは、25℃における水100gに対する溶解度が5g以下であることをいう。
【0084】
(H’)セミカルバジド組成物は、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンと混合しやすいように、水性媒体中への分散及び水性媒体中への溶解からなる群から選ばれる少なくとも一つの状態であることが好ましい。(H’)セミカルバジド組成物を水に分散あるいは溶解させる際には、場合によっては上記した式(19)で表される親水性基含有化合物以外の、他の界面活性剤を加えてもよい。このような界面活性剤の例としては、高級脂肪酸、酸性脂肪アルコール、アルキルスルホン酸塩、アルキルこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、スルホこはく酸アルキルエステルの塩、アルケニルこはく酸塩等のアニオン性界面活性剤や、エチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、エチレンオキサイドとリン酸類との公知の反応生成物等のノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤等やそれらの併用が挙げられる。
【0085】
特に、式(9)で表される親水性基含有化合物またはアルケニルこはく酸塩が、式(7)のセミカルバジド誘導体との親和性が高いので好ましい。
本発明において、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンの硬化剤として、(H)ヒドラジン誘導体組成物と、ケトン酸及び/またはその塩との混合物を使用することは好ましい。架橋効率が高く強靱でかつ耐水性に優れた皮膜を得ることができるからである。
【0086】
この場合、(H)ヒドラジン誘導体組成物が、(H’)セミカルバジド組成物であることは好ましく、さらには前記式(7)で表されるセミカルバジド誘導体であればより好ましい。
本発明に使用できるケトン酸及び/またはその塩としては、式(10)で表されるモノケトンモノカルボン酸類、式(12)で表されるモノケトンジカルボン酸類、またはそれらの併用等が挙げられる。
【0087】
【化9】
Figure 0003803171
【0088】
{R1'は、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。R2'は、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。pは、0又は1を表す。Xは、各々独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは式(11)で表される置換アンモニウムを表す。
【0089】
HNR3'4'5' (11)
(R3'、R4'、R5'は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R3'とR4'あるいは、R3'とR4'とR5'は、共同して環状構造を形成しても良い。)}
【0090】
【化10】
Figure 0003803171
【0091】
{R1'、R2'は、各々独立して、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。q、rは、各々0又は1を表す。Y、Zは、各々独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は式(11)で表される置換アンモニウムを表す。
【0092】
HNR3'4'5' (11)
(R3'、R4'、R5'は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基で置換されている直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、R3'とR4'あるいは、R3'とR4'とR5'は、共同して環状構造を形成しても良い。)}
モノケトンカルボン酸類の具体例としては、例えばピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、ケトカプリン酸、ケトウンデカン酸、ケトステアリン酸、ケトヘンエイコセン酸、ケトグリコン酸等が挙げられる。モノケトンジカルボン酸の具体例としては、例えばケトマロン酸、アセトンジカルボン酸、2−ケトグルタル酸、アセトンジ酢酸、アセトンジプロピオン酸等が挙げられる。
【0093】
ケトン酸の塩は、上記ケトン酸を塩基で中和することにより得ることができる。中和に用いる塩基としては、例えばKOH、NaOH、LiOH等のアルカリ金属の水酸化物、式(11)で表されるアミン類等や、これらの併用が挙げられる。
上記アミン類の具体例としては、例えばアンモニア、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0094】
一般に、(H)ヒドラジン誘導体とケトン酸を混合することにより、例えばケトン酸としてモノケトンモノカルボン酸類を用いた場合、下記の平衡反応が生じ、得られるヒドラジン誘導体の親水性がコントロールできるものと推定される。
【0095】
【化11】
Figure 0003803171
【0096】
上記平衡式から判るように、本発明のヒドラジン誘導体組成物の親水性のコントロールには、(H)ヒドラジン誘導体組成物とケトン酸を混合比と共に、H2 O濃度が大きく影響する。すなわち、H2 O濃度が小さいと上記平衡式は生成系にずれ、ヒドラジン誘導体組成物へのケトン酸あるいはその塩の導入量が増加し、結果としてヒドラジン誘導体の親水性は増大する。逆に、H2 O濃度が大きいと(H)ヒドラジン誘導体組成物の親水性は減少することになる。本発明において、H2 O濃度は、親水性のコントロールを目的に任意に設定することができる。
【0097】
本発明において、(H)ヒドラジン誘導体組成物とケトン酸及び/又はその塩との混合は任意の割合で行うことができるが、(H)ヒドラジン誘導体組成物中のヒドラジドン残基に対するケトン酸中のケト基の比が、(ケト基)/(ヒドラジド基)モル比で0.001〜10の範囲であることが好ましい。
また(H)ヒドラジン誘導体組成物とケトン酸との混合は、任意の温度範囲において、無溶媒または溶媒中で行うことができる。上記溶媒の具体例としては、水、t−ブタノール、イソプロパノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶媒、ジメチルスルホオキシド等のスルホオキシド系溶媒、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等やその併用が挙げられる。
【0098】
本発明においては、上塗り用組成物に使用する(C)水性エマルジョンが、下塗り用組成物に使用する(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと同様な、前記の(E)加水分解性シランの存在下、前記の(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系エマルジョンであることは望ましい。
【0099】
この場合、(C)水性エマルジョンと(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンとで、(E)加水分解性シランは同一でも異なっていてもよい。
(C)水性エマルジョンでは(E)加水分解性シランは、(F)エチレン性不飽和単量体の重量に対して0.1〜200重量%用いることができ、0.3〜200重量%用いることが好ましく、1〜67重量%用いることがさらに好しい。
【0100】
また、(C)水性エマルジョンが、下塗り用組成物に使用する(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと同様な、(G)アルド基またはケト基を含有するアクリル系エマルジョンおよび(H)ヒドラジン誘導体組成物を含有するアクリル系エマルジョンであることは望ましい。
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと(C)水性エマルジョンは、同じ物であっても良いし、異なる物であっても良い。
【0101】
本発明の複合塗膜を有する対象物品としては、例えばコンクリート板・柱、セメントモルタル板、スレート板、フレキシルボード、PC板、ALC板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、コンクリートブロックなどの無機基材、織布あるいは不織布を機材とした建材類、金属板、金属部品類、木材、プラスチック品、石材等が挙げられ、またさらにこれら物品がすでに塗装されて経年劣化した旧塗膜面等を有している場合が挙げられる。これらの物品表面へは、下塗り用組成物を塗装する前にプライマー、シーラー塗装、セメントフィラー、またはその他下塗りの塗装を行っておくことが好ましい。
【0102】
複合塗膜はこれらの物品の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。本発明における、三種類のエマルジョン、すなわち(E)加水分解性シランの存在下(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる(A)アクリル系エマルジョン、(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョン、(C)水性エマルジョンのうち、エマルジョン(A)、(G)の乳化重合においては、乳化重合時に使用する乳化剤は、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、およびそれらの混合物のいずれかから選ばれた乳化剤である。また、エマルジョン(C)の乳化重合においても、これら乳化剤の中から選ばれたものを使用するのが好ましい。
【0103】
なお、三種類のエマルジョンで乳化剤は同じであっても良いし、異なっていても良い。
このような乳化剤を使用することにより、複合塗膜の耐水性が優れたものとなる。
硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体とは、分子中にラジカル重合性の二重結合と硫酸エステル基とを持つ化合物を意味し、下記の一般式(13)、(14)、(15)、(22)で表されるものであり、二種以上の併用も可能である。具体的には一般式(13)で表されるものとして例えば旭電化工業(株)製アデカリアソープ(商標)SE1025N等があり、一般式(14)で表されるものとして例えば第一工業製薬(株)製アクアロン(商標)HS−10等があり、一般式(15)で表されるものとして例えば日本乳化剤(株)製Antox(商標)−MS−60等があり、一般式(22)で表されるものとして例えば三洋化成(株)製エレミノール(商標)RS−30等がある。
【0104】
スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体とは、分子中にラジカル重合性の二重結合とスルホン酸基またはスルホネート基とを持つ化合物を意味し、下記の一般式(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、(21)で表されるものであり、二種以上の併用も可能である。具体的には一般式(16)、(17)で表されるものとして例えば三洋化成(株)製エレミノール(商標)JS−2,JS−5があり、一般式(18)、(19)で表されるものとして例えば花王(株)製ラテムル(商標)S−120,S−180,S−180A等がある。一般式(20)で表されるものとして例えばp−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸カリウム等があり、一般式(21)で表されるものとして例えばアクリル酸−(2−スルホエチル)エステルナトリウム、アクリル酸−(2−スルホエチル)エステルカリウム、メタクリル酸−(2−スルホエチル)エステルナトリウム、アクリル酸−(3−スルホプロピル)エステルナトリウム、アクリル酸−(3−スルホプロピル)エステルカリウム、メタクリル酸−(3−スルホプロピル)エステルナトリウム等がある。
【0105】
【化12】
Figure 0003803171
【0106】
(式中、R1 は水素またはメチル基、R2 は炭素数8〜24のアルキル基またはアシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは0〜50の整数、mは0〜20の整数、Mはアルカリ金属、アンモニウムを示す。)
【0107】
【化13】
Figure 0003803171
【0108】
(式中、R1 は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、R2 は水素または炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、R3 は水素またはプロペニル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数、Mはアルカリ金属、アンモニウムを示す。)
【0109】
【化14】
Figure 0003803171
【0110】
(式中、R1 は水素またはメチル基、R2 は1〜25のアルキル基、R3 は1〜25のアルキル基、R4 は炭素数1〜25のアルキル基またはベンジル基、R5 は炭素数1〜25のアルキル基またはベンジル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、pは0〜2の整数、qは0〜2の整数、nは1以上の整数、mは1以上の整数、Mはアルカリ金属、アンモニウムを示す。)
【0111】
【化15】
Figure 0003803171
【0112】
【化16】
Figure 0003803171
【0113】
【化17】
Figure 0003803171
【0114】
【化18】
Figure 0003803171
【0115】
{式(16)、(17)、(18)、(19)のそれぞれにおいて、R1 は水素またはメチル基、R2 は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数6〜19アラルキル基等の炭化水素基、またはその一部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が2〜4、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド化合物を含む有機基であり、Aは炭素数2〜4個のアルキレン基または置換されたアルキレン基であり、nは0〜200の整数であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム、有機アミン塩基または有機第四級アンモニウム塩基を示す。}
【0116】
【化19】
Figure 0003803171
【0117】
(式中、Mはアルカリ金属、アンモニウム、有機アミン塩基または有機第四級アンモニウム塩基を示す。)
【0118】
【化20】
Figure 0003803171
【0119】
(式中、R1 は水素またはメチル基、nは1〜20の整数、Mはアルカリ金属、アンモニウム、有機アミン塩基または有機第四級アンモニウム塩基を示す。)
【0120】
【化21】
Figure 0003803171
【0121】
(式中、R1 は水素またはメチル基、nは2以上の整数、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、Mはアルカリ金属、アンモニウム、有機アミン塩基または有機第四級アンモニウム塩基を示す。)
これらの反応性界面活性剤は、エマルジョン中において、
▲1▼ エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在しているか、
▲2▼ 未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在しているか、又は
▲3▼ 水溶性単量体との共重合物あるいは単量体同士の共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在している。
【0122】
とくに▲1▼の状態の比率を高めることによって、得られる塗膜の耐水性を良好なものとすることができる。
また反応性界面活性剤は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)、又は熱分解質量分析(Py−MS)により同定することができる。他の方法として、エマルジョンの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
【0123】
本発明では、前記の三種類のエマルジョンの乳化剤として、通常の界面活性剤を併用することができる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤、さらにα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル 〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等の反応性ノニオン型界面活性剤といわれるエチレン性不飽和単量体と共重合なノニオン型界面活性剤等が用いられ、これらの使用を排除するものではないが、その使用量は全単量体100重量部当たり1重量部以下に留めるべきで、それ以上の量の使用は、塗膜の耐水性、密着性を損なうことになる。
【0124】
上記の要件がみたされる場合には、乳化重合中において凝集物の発生が少なく、また耐水性に優れる結果となる。
その他、本発明の上塗り用組成物、下塗り用組成物のそれぞれには、通常水系塗料に添加配合される成分、例えば、界面活性剤、増粘剤、成膜助剤、可塑剤、消泡剤、染料、防腐剤等を任意に配合することができる。具体的に使用できる界面活性剤としては、例えばヘキサメタリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩、トリポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を持つポリマーのナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩。その他、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、高級アルキルスルホン酸、スルホン酸アルキルアリル、スルホン化ひまし油、スルホこはく酸エステル、アルケニルコハク酸等の塩に代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、増粘剤として(部分鹸化)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の高分子分散安定剤等、その他ポリエーテル系増粘剤等、フタル酸ジブチル等の可塑剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1、3−ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル等の成膜助剤やそれらの併用が挙げられる。
【0125】
本発明に係わるエマルジョンは、分散質の平均粒子径として、10〜1000nmであることが好ましい。
本発明に係わるエマルジョンの各々の不揮発分としては、20〜70%であることが好ましく、30〜65%であることがさらに好ましい。
本発明の上塗り用組成物、または下塗り用組成物は、エマルジョンの長期の分散安定性を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0126】
【発明の実施の形態】
以下に、参考例、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。
なお例中の部および%は重量表示である。
実施例中、参考例中に用いられる各種測定の測定方法、配合は、下記の通りである。
▲1▼ 分子量分布の測定方法
ゲルパーミィテーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
【0127】
(使用機器)・装置:東ソー(株)HLC−8020
・カラム:東ソー(株)
TSKgel G−5000 HXL
TSKgel G−4000 HXL
TSKgel G−2000 HXL
・データ処理:東ソー SC8010
・キャリヤー:テトラヒドロフラン
▲2▼ セミカルバジド基含有量の測定方法
サンプル約0.2g(Wグラム)をジメチルアセトアミド10ccに溶解する。これに、シクロヘキシルイソシアネート2.5gを50ccのジメチルアセトアミドに溶解した液を5cc加え、室温で1時間放置する。その後、ジノルマルブチルアミン3.2gをトルエン100ccに溶解した液10cc加え、さらに30分放置する。その後、イソプロパノール70ccを加え、指示薬としてブロモクレゾールグリーンを少量加え、0.1規定の塩酸(ファクターをF)で滴定する(滴定量A)。同様の操作をサンプルを加えないで行う(滴定値B)。以下の式によりセミカルバジド基含有量(単位はmeq/g)が求められる。
【0128】
(B−A)×0.1×F/W
▲3▼ 耐候性試験
フレキシブル板上に、シーラー(商品名;VPシーラー、関西ペイント(株)製、)を50g/m2 となるようにハケを用いて塗布し、室温にて2時間乾燥させた後、各参考例のアクリル系エマルジョンについて、下記の下塗り用組成物配合に従い調整された石材調仕上水性塗料を2mmの厚みに塗布し、室温にて24時間乾燥させた。この塗膜の上へ、各参考例の上塗り用水性エマルジョンについて下記に示す透明な上塗り用組成物を200g/m2 となるようにハケで塗布し、室温にて4週間乾燥させて、試験体を得た。引き続きサンシャイン型ウエザオメーター(スガ試験機(株)製、WEL−SUN−DC)を使用して暴露試験(降雨サイクル;12分/時間、ブラックパネル温度60〜66℃)を行なった。暴露3000時間後の状態を下記の基準に従い目視にて判定した。また上塗り塗料を塗布しない以外は同様の試験体を作り、同様の試験を実施した。
【0129】
判定基準
◎:ふくれ、つやびけ、割れが全く見られない。
〇:ややつやびけが見られ、ふくれ、割れは見られない。
△:ふくれ、つやびけ、割れが見られる。
×:ふくれ、つやびけ、割れが著しく見られる。
(下塗り用組成物の調整)
各参考例の(A)アクリル系エマルジョン 100.0部
エマルゲン950(25%水溶液)注1 0.5部
CS−12 注2 7.5部
水 2.0部
ハイメトローズ90SH30000の3%水溶液 注3 20.0部
SN−デフォーマー113 注4 0.3部
硅砂4号 10.0部
大理石粉#100 100.0部
炭酸カルシウムSS−30注5 210.0部
(注) 注1 ノニオン型界面活性剤:花王(株)製
注2 成膜助剤:チッソ(株)製
注3 増粘剤:信越化学工業(株)製
注4 消泡剤:サンノプコ(株)製
注5 炭酸カルシウム:日東粉化工(株)製
(上塗り用組成物の調整)
各参考例の(C)水性エマルジョン 100.0部
エチレングリコールモノブチルエーテル 4.5部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 9.0部
水 3.0部
消泡剤:ノプコ1497D(製品名:サンノプコ(株)製) 0.1部
▲4▼ 透明塗膜の濁度測定法
清浄なガラス板へ上記の上塗り用組成物の塗膜膜厚が100μmとなるように塗膜を形成させ、濁度計(COH−300A:日本電色工業(株)製)により濁度を測定する。
【0130】
▲5▼ 塗膜吸水率の測定
アクリル系エマルジョンの最低成膜温度が0℃以上である場合には、成膜助剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルと2,2,4−トリメチル−1、3−ブタンジオールイソブチレート(チッソ(株)製CS−12)の1/1の比率からなる混合溶剤を該アクリル系エマルジョンと配合して最低成膜温度を0℃以下に調整し、およびアクリル系エマルジョンの最低成膜温度が0℃以下の場合には成膜助剤を添加せずに、乾燥後膜厚が70〜100μmとなるように、ガラス板上にアプリケーターで塗布し、20℃で3時間乾燥させ平滑な塗膜を形成させた後、該塗膜を5cm×5cmの四角形状にガラス板から剥がし、さらに20℃で21時間乾燥させた後、塗膜の重量Aを測定した。次に、20℃の水へ7日間浸漬し、取り出してすぐに表面の水を紙で拭き取り、重量Bを測定する。塗膜吸水率は以下の式で求める。
【0131】
塗膜吸水率(%)=(重量B−重量A)/重量A
【0132】
【参考例1】
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョン(1)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、メタクリル酸メチル52部、アクリル酸ブチル40部、水300部、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(商品名;ラテムルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、メタクリル酸3部、メタクリル酸メチル207部、アクリル酸ブチル190部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部の混合液と、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.02%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.0%、平均粒子径95nmであった。塗膜吸水率は15%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り用組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0133】
【参考例2】
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョン(2)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、メタクリル酸メチル42部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、アクリル酸ブチル40部、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、メタクリル酸3部、メタクリル酸メチル167部、メタクリル酸シクロヘキシル40部、アクリル酸ブチル190部、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の乳化混合液と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、ジメチルジメトキシシラン20部、メチルトリメトキシシラン20部からなる混合液とを別々の滴下槽より3時間かけて反応容器中へ流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.02%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.0%、平均粒子径95nmであった。塗膜吸水率は12%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り用組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0134】
【参考例3】
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョン(3)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、スチレン25部、メタクリル酸メチル24部、アクリル酸2−エチルヘキシル43部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2部、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、スチレン100部、メタクリル酸メチル100部、アクリル酸2−エチルヘキシル200部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.0部の混合液と、水300部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(商品名;スピノマーNaSS、東ソー(株)製)の20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.5であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.03%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.5%、平均粒子径110nm、塗膜吸水率は7%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り用組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0135】
【参考例4】
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョン(4)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸メチル49部、アクリル酸ブチル40部、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、メタクリル酸4部、ジアセトンアクリルアミド12部、メタクリル酸メチル169部、アクリル酸ブチル215部の混合液と、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.01%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.4%、平均粒子径110nmの(G)アルド基またはケト基を含有するエマルジョンを得た。
【0136】
次に、ヒドラジン誘導体として、ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(重量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネート、および溶媒を留去回収し、残留物を得た。得られた残留物は、99.9重量%のポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネート)および0.1重量%の残存ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいた。得られた残留物の粘度は1900(±200)mPa.s/25℃、数平均分子量は約600(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.3、−NCO基含有量は23.3重量%であった。引き続き、還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にイソプロピルアルコール1000部にヒドラジン1水和物80部を撹拌しながら約30分かけて室温で添加した後、ポリイソシアネート(NCO基含量23.3重量%)144部をテトラヒドロフラン576部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続け、1000部の水を添加した。続いて得られた反応液中のイソプロピルアルコール、ヒドラジン、テトラヒドロフラン、水等を加熱減圧下に留去することにより168部のビウレット構造を有するヒドラジン誘導体を得た。セミカルバジド基含有量を測定したところ、4.6meq/gであった。
【0137】
合成した上記(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョン100部と、上記のヒドラジン誘導体の固形分濃度30%の水溶液5.0部を添加し、室温で30分混合後し、アクリル系エマルジョン(4)を得た。塗膜吸水率は6%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0138】
【参考例5】
(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョン(5)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、ジアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸メチル49部、アクリル酸ブチル40部、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、メタクリル酸4部、ジアセトンアクリルアミド12部、メタクリル酸メチル169部、アクリル酸ブチル215部と、水300部、ラテムルS−180Aの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の乳化混合液と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、ジメチルジメトキシシラン20部、メチルトリメトキシシラン20部混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.01%と非常にわずかであった。固形分が44.2%、平均粒子径120nmの(G)アルド基またはケト基を含有するアクリル系エマルジョンを得た。この(G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョン100部と、参考例4のヒドラジン誘導体の固形分濃度30%の水溶液5.0部を添加し、室温で30分混合後し、アクリル系エマルジョン(5)を得た。塗膜吸水率は6%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0139】
【参考例6】
上塗用の(C)水性エマルジョン(1)の合成例を示す。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水290部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラテムルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した5分後に、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸シクロヘキシル50部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸10部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名:TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)1部の混合液とラテムルS−180Aの20%の水溶液5部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液15部、水48部からなる乳化混合液を滴下槽より40分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして30分保つ。
【0140】
次に、メタクリル酸メチル109部、メタクリル酸シクロヘキシル160部、アクリル酸ブチル123部、メタクリル酸8部、TINUVIN384を4部の混合液とラテムルS−180Aの20%の水溶液20部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液60部、水192部からなる乳化混合液、およびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1部、ジメチルジメトキシシラン20部、メチルトリメトキシシラン20部からなる混合液とを別々の滴下槽より160分かけて流入させる。反応中のpHは4以下に維持した。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして120分保つ。
【0141】
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH2.0であった。25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.06%とわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.7%、粒子径98nmで単一分布であった。この上塗り用水性エマルジョンについて前記した配合により、上塗り用組成物として調整し、耐候性試験に供した。
【0142】
【参考例7】
上塗用(C)水性エマルジョン(2)の合成例を示す。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水290部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラテムルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した5分後に、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸シクロヘキシル50部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸10部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名:TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)1部の混合液とラテムルS−180Aの20%の水溶液5部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液15部、水48部からなる乳化混合液を滴下槽より40分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして30分保つ。
【0143】
次に、メタクリル酸メチル109部、メタクリル酸シクロヘキシル160部、アクリル酸ブチル123部、メタクリル酸8部、TINUVIN384を4部の混合液とラテムルS−180Aの20%の水溶液20部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液60部、水192部からなる乳化混合液を滴下槽より160分かけて流入させる。反応中のpHは4以下に維持した。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして120分保つ。
【0144】
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH2.0であった。25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.06%とわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.7%、粒子径88nmで単一分布であった。この上塗り用水性エマルジョンについて前記した配合により、上塗り用組成物として調整し、耐候性試験に供した。
【0145】
【参考例8】
紫外線吸収剤及び光安定剤が複合化されていない上塗用(C)水性エマルジョン(3)の合成例を示す。
攪拌機、還流冷却器、滴下層および温度計を取り付けた反応容器に水290部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中にもつスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラテムルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した5分後に、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸シクロヘキシル50部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸10部をラテムルS−180Aの20%の水溶液5部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液15部、水48部からなる乳化混合液を滴下槽より40分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度得を80℃にして30分保つ。
【0146】
次に、メタクリル酸メチル109部、メタクリル酸シクロヘキシル160部、アクリル酸ブチル123部、メタクリル酸8部の混合液とラテムルS−180Aの20%の水溶液20部、過硫酸アンモニウムの2%の水溶液60部、水192部からなる乳化混合液を滴下槽より160分かけて流入させる。反応中のpHは4以下に維持した。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして120分保つ。
【0147】
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH2.0であった。25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.06%とわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.4%、粒子径88nmで単一分布であった。このエマルジョンについて前記した配合により、上塗り用組成物として調整し、耐候性試験に供した。
【0148】
【参考例9】
塗膜の吸水率が20%以上となるアクリル系エマルジョン(6)の合成例を示す。
かくはん機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、メタクリル酸8部、メタクリル酸メチル52部、アクリル酸ブチル40部、水300部、ペレックスOT−P(スルホコハク酸ジオクチルエステルナトリウム塩:花王(株)製)の20%水溶液20部を投入し、反応容器中の温度を78℃に上げてから、過硫酸アンモニウム0.5部を添加して1時間保つ。これによって第一段階のシードラテックスが調製され、水素イオン濃度を測定したところpH1.8であった。次に、メタクリル酸3部、メタクリル酸メチル207部、アクリル酸ブチル190部の混合液と、水300部、ペレックスOT−Pの20%水溶液20部、過硫酸アンモニウム1.0部の混合液とを反応容器中へ別々の滴下槽より3時間かけて流入させる。流入中は反応容器中の温度を80℃に保つ。流入が終了してから反応容器中の温度を85℃にして6時間保つ。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところ2.8であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥重量は全単量体に対して0.02%と非常にわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.1%、平均粒子径105nmであった。塗膜吸水率は25%であった。このアクリル系エマルジョンについて前記した配合により、下塗り用組成物を調整し、耐候性試験に供した。
【0149】
【実施例1】
参考例1のアクリル系エマルジョン(1)による下塗り用組成物と、参考例6の上塗り用水性エマルジョン(1)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行った。その結果を表1に示した。
【0150】
【実施例2】
参考例1のアクリル系エマルジョン(1)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0151】
【実施例3】
参考例2のアクリル系エマルジョン(2)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0152】
【実施例4】
参考例3のアクリル系エマルジョン(3)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0153】
【実施例5】
参考例4のアクリル系エマルジョン(4)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0154】
【実施例6】
参考例5のアクリル系エマルジョン(5)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0155】
【比較例1】
参考例1のアクリル系エマルジョン(1)による下塗り用組成物と、参考例8の上塗り用水性エマルジョン(3)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0156】
【比較例2】
参考例9のアクリル系エマルジョン(6)による下塗り用組成物と、参考例7の上塗り用水性エマルジョン(2)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0157】
【比較例3】
参考例4のアクリル系エマルジョン(4)による下塗り用組成物と、参考例8の上塗り用水性エマルジョン(3)による上塗り用組成物とを、前記の耐候性試験の方法に従って試験体を作製し、耐候性の測定を行い、その結果を表1に示した。
【0158】
【表1】
Figure 0003803171
【0159】
【発明の効果】
本発明の複合塗膜またはそれを表面に有する物品は、上塗り層、下塗り層ともに合成樹脂エマルジョンからなる水性組成物を使用して得られるものであり、かつ長期の耐久性、耐候性、耐水性が発現でき、塗装直後の光沢性、高級感のある塗膜外観を長期にわたり維持することができる。

Claims (4)

  1. (A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと(B)骨材および/または顔料を71.1〜80重量%含有する下塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる下塗り層と、(C)水性エマルジョンと(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有する上塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる透明上塗り層を有する複合塗膜であって、該アクリル系エマルジョン(A)が、(E)加水分解性シランの存在下、乳化剤として、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、および/またはスルホン酸基もしくはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、pH4.0以下で、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるものである複合塗膜。
  2. (G)アルド基またはケト基を有するアクリル系エマルジョンおよび(H)ヒドラジン誘導体組成物を含有する(A)塗膜吸水率が20%以下であるアクリル系エマルジョンと(B)骨材および/または顔料を71.1〜80重量%含有する下塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる下塗り層と、(C)水性エマルジョンと(D)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有する上塗り用組成物を塗布、乾燥して得られる透明上塗り層を有する複合塗膜であって、該エマルジョン(G)が、乳化剤として、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、および/またはスルホン酸基もしくはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるものである複合塗膜。
  3. (C)水性エマルジョンが、(E)加水分解性シランの存在下、(F)エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系エマルジョンである請求項1に記載の複合塗膜。
  4. 表面の少なくとも一部に請求項1〜3のいずれかに記載の複合塗膜を有する物品。
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