JP4210827B2 - 脂環式テトラカルボン酸二無水物、その製造法及びポリイミド - Google Patents
脂環式テトラカルボン酸二無水物、その製造法及びポリイミド Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、式[1]
【0002】
【化20】
【0003】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(以下、TCAAと略記する。)、又その製造中間体である式[2]
【0004】
【化21】
【0005】
(式中、破線部を含む炭素間結合は単結合又は二重結合を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸及びテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸並びに式[3]
【0006】
【化22】
【0007】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステル、更にそれらの製造法に関する。
【0008】
また、前記テトラカルボン酸無水物から誘導されるポリアミック酸及びポリイミドに関する。
【0009】
TCCAは、ポリイミドやエポキシ硬化剤等のモノマーとして溶媒に対する溶解性や光透過性等の点で新しい用途が期待される。
【0010】
【従来の技術】
TCCAは、従来合成されたことのない新規な化合物である。一般に、ポリイミド樹脂はその特徴である高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性のために、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料として広く用いられている。また、最近では光導波路用材料等の光通信用材料としての用途も期待されている。
【0011】
近年、この分野の発展は目覚ましく、それに対応して、用いられる材料に対しても益々高度な特性が要求される様になっている。即ち、単に耐熱性、耐溶剤性に優れるだけでなく、用途に応じた性能を多数合わせ持つことが期待されている。
【0012】
しかし、特に、全芳香族ポリイミド樹脂においては、濃い琥珀色を呈し着色するため、高い透明性を要求される用途においては問題が生じてくる。また、全芳香族ポリイミドは有機溶剤に不溶であるため、実際にはその前駆体であるポリアミック酸を熱による脱水閉環によって得る必要がある。
【0013】
透明性を実現する一つの方法として、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応によりポリイミド前駆体を得て、該当前駆体をイミド化しポリイミドを製造すれば、比較的着色が少なく、高透明性のポリイミドが得られることは知られている(特公平2−24294号公報、特開昭58−208322号公報)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光を用いた電子材料分野等にも耐熱性の高いポリイミドの使用が要望されてきた。本発明の目的は、紫外線領域に吸収がなく光透過性が高く、更に加工性が改善された溶媒に対する溶解性に優れたポリイミドの原料モノマーとなり得る脂環式テトラカルボン酸二無水物とそれを用いたポリイミドの提供にある。
【0015】
【発明が解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シクロジオレフィンとジアルキルアセチレンジカルボキシレートから一挙にシクロテトラカルボン酸テトラエステルを得、新規なテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(TCAA)を製造できる方法を見い出した。
【0016】
即ち,本発明は、式[1]
【0017】
【化23】
【0018】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(TCAA)、又その中間体である式[2]
【0019】
【化24】
【0020】
(式中、破線部を含む炭素間結合は単結合又は二重結合を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸及びテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸並びに式[3]
【0021】
【化25】
【0022】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルに関する。
【0023】
また、本発明は、式[5]
【0024】
【化26】
【0025】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルを還元して式[3]
【0026】
【化27】
【0027】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルを得、続いて、この化合物を加水分解して式[6]
【0028】
【化28】
【0029】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸を得、更に、この化合物を脱水して式[1]
【0030】
【化29】
【0031】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(TCAA)の製造法に関する。
【0032】
更に、式[5]
【0033】
【化30】
【0034】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルを加水分解して式[7]
【0035】
【化31】
【0036】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸を得、続いて、この化合物を還元して式[6]
【0037】
【化32】
【0038】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸得、更に、この化合物を脱水して式[1]
【0039】
【化33】
【0040】
で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(TCAA)の製造法に関する。更に本発明は、式[10]
【0041】
【化34】
【0042】
(式中、R1は2価の有機基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%含有し、数平均分子量が少なくとも5000であるポリアミック酸及び、前記のポリアミック酸を熱または化学的に脱水閉環することにより得られる式[11]
【0043】
【化35】
【0044】
(式中、R1は2価の有機基を表す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%含有するポリイミドに関する。以下本発明を詳細に説明する。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(以下TCAA)の製造法は、下記のルートで表される。
【0046】
【化36】
【0047】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
第1工程の付加反応から順に説明する。
【0048】
ノルボルネル誘導体とジメチルアセチレンジカルボキシレートからルテニウム触媒を用いてそれらの〔2+2〕クロス付加体を合成する方法は知られている(ジヤーナル オブ オーガニック ケミストリー 44巻 25号 4492〜4496頁(1979年)。しかし、ここに記載の方法では、式[5]で表されるテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステル(TUEM化合物)の収率は非常に低いものである。
【0049】
ノルボルナジエン(NNと略す)は、市販品をそのまま使用することができる。アセチレンジカルボン酸ジアルキル(DMA化合物と略す)としては、種々の化合物が使用できる。
【0050】
例えば、具体的には、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、ジエチルアセチレンジカルボキシレート、ジプロピルアセチレンジカルボキシレート、ジブチルアセチレンジカルボキシレート、ジペンチルアセチレンジカルボキシレート、ジヘキシルアセチレンジカルボキシレート、ジシクロペンチルアセチレンジカルボキシレート及びジシクロヘキシルアセチレンジカルボキシレート等が挙げられる。
【0051】
触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、鉄、ニッケル及びコバルト等の周期律表第8族金属が挙げられる。好ましいのはルテニウムである。触媒の形態としては、金属錯体、金属塩、金属単身、担持金属及び金属酸化物等が使用できる。
【0052】
金属錯体としては、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)金属、ジヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ハロゲノヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノテトラキス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノビスベンゾニトリル金属、トリス(アセチルアセトナト)金属、ジハロゲノシクロジエン金属、ホルマトジカルボニル金属、ドデカカルボニル三金属、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)金属及びテトラキストリフェニルホスフィン金属等が使用できる。
【0053】
金属塩としては、塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸等の鉱酸塩、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸塩が挙げられる。担持金属としては、炭素、アルミナ及び珪藻土等の担体に担持させた金属が使用できる。
【0054】
更に、具体的にはジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヨウドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ジクロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ホルマトジカルボニルルテニウム及びドデカカルボニル三ルテニウム、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三沃化ルテニウム、ルテニウム/活性炭、ルテニウム/アルミナ、パラジウム/活性炭、ルテニウム黒及び酸化ルテニウム等が挙げられる。
【0055】
これらの中で特に好ましいものは、空気中でも安定で経済的な触媒としては、式[8]
【0056】
【化37】
【0057】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは3又は4を表す。)
で表されるジハロゲノトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジハロゲノテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、式[9]
【0058】
【化38】
【0059】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表されるトリハロゲノルテニウム、トリハロゲノルテニウム、ルテニウム黒及びルテニウム/担体の中から選ばれる少なくとも1種の触媒が好ましい。
【0060】
ジハロゲノテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムとしては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヨウドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム及びジヨウドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
【0061】
トリハロゲノルテニウムとしては、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三沃化ルテニウムが挙げられ、実用的には安価な三塩化ルテニウム及び三臭化ルテニウムである。
【0062】
その使用量は、原料のノルボルナジエンに対し、0.1〜30モル%、特には、0.5〜20モル%が好ましい。三塩化ルテニウム及び三臭化ルテニウム等のトリハロゲノルテニウムは、トリフェニルホスフィン存在下で使用することもできる。その際のトリフェニルホスフィンの添加量は、トリハロゲノルテニウムに対して1〜10モル当量が好ましく、特には3〜6モル当量が好ましい。
【0063】
本反応では溶媒を使用しなくとも、反応は進行するが、使用する事もできる。溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びキュメン等の芳香族炭化水素化合物及びテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル及び1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類等が特に好ましいが、他の溶媒例えばヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素類でも進行する。更にこれらの溶媒を組み合わせて使用することもできる。
【0064】
その使用量は、溶媒量が多くなると反応進行が遅くなるが、無溶媒では、反応進行に伴い高粘稠になることから、ノルボルナジエンに対し1〜20質量倍、特には1〜10質量倍が経済的にも好ましい。また、本反応の原料であるノルボルナジエンやジアルキルアセチレンジカルボキシレートの反応中の重合を抑制するために重合禁止剤を添加することもできる。
【0065】
重合禁止剤としては例えば、ジフェニルピクリルヒドラジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0066】
重合禁止剤の添加量は、ノルボルナジエンやジアルキルアセチレンジカルボキシレートに対して0.01〜1モル%が好ましい。
【0067】
反応温度は、高温ほど反応が速いが重合等の副反応を伴うので、通常50〜180℃の範囲、好ましくは60〜160℃の範囲である。
【0068】
このノルボルナジエン1モルとジアルキルアセチレンジカルボキシレート2モルの付加反応で得られる目的のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステル(以下TUEM化合物と略す)とノルボルナジエン1モルとジアルキルアセチレンジカルボキシレート1モルから得られるTUEM化合物の中間体ジアルキルトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3,7−ジエン−3,4−ジカルボキシレート(NBDE化合物と略す)の分離は、再結晶やカラムクロマトグラフィーで精製した後、次の第2工程の還元反応に用いられる。尚、分離したNBDE化合物は、ジアルキルアセチレンジカルボキシレートと反応させてTUEM化合物を製造することもできる。
【0069】
第2工程のTUEM化合物のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステル(TUAM化合物と略す)への還元反応は、二重結合を単結合に変換する種々の一般的還元法が適用できる。
【0070】
例えば、(1)金属および金属塩による還元(2)金属水素化物による還元(3)金属水素錯化合物による還元(4)ジボランおよび置換ボランによる還元(5)ヒドラジンによる還元(6)ジイミド還元(7)リン化合物による還元(8)電解還元(9)接触還元等を挙げることができる。
【0071】
これらの中で、最も実用的方法は接触還元方法である。本発明で採用できる接触還元法は以下の通りである。触媒金属としては、周期律表第8族のパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、ニッケル、コバルト及び鉄、又は第1族の銅等が使用できる。これらの金属は単独で、又は、他の元素と複合させた多元系で使用される。それらの使用形態は、各金属単身、ラネー型触媒、ケイソウ土、アルミナ、ゼオライト、炭素及びその他の担体に担持させた触媒及び錯体触媒等が挙げられる。
【0072】
具体的には、パラジウム−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−炭素、白金−炭素、パラジウム−アルミナ、ルテニウム−アルミナ、ロジウム−アルミナ、白金−アルミナ、還元ニッケル、還元コバルト、ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅、酸化銅、銅クロマト、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム及びヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものはパラジウム−炭素及びルテニウム−炭素等である。
【0073】
触媒の使用量は、5%金属担持触媒として基質に対し0.1〜30質量%が、特には、0.5〜20質量%が好ましい。溶媒は、メタノール、エタノール及びプロパノール等に代表されるアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等に代表されるエーテル類及び酢酸エチル及び酢酸プロピル等に代表されるエステル類等が使用できる。
【0074】
その使用量は、原料に対し1〜50質量倍の範囲が、特には、3〜10質量倍の範囲が好ましい。水素圧は常圧から10MPa(100kg/cm2)の範囲が、特には、常圧から3MPa(30kg/cm2)の範囲が好ましい。反応温度は、0〜150℃の範囲が、特には、10〜100℃の範囲が好ましい。
【0075】
反応は、水素吸収量によって追跡することができ、理論水素量の吸収後サンプリングしガスクロマトグラフィーで分析し確認することができる。本反応は、回分式でも連続反応でも可能である。反応後は、濾過により触媒を除いた後、濃縮後、再結晶又は、カラムクロマトグラフィー法で精製することができる。
【0076】
又、第6工程のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸(TUECと略記)の還元反応も同様に行うことができTUACが高収率で得られる。
【0077】
次に第3工程のTUAM化合物よりTUACへの加水分解反応条件は、通常のアルキルエステルを加水分解してアルキルカルボン酸にする方法が適用できる。酸による方法も可能であるが、一般には、塩基による方法が高収率である。塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を用いるのが経済的に好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等であり、特には、水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0078】
その使用量は、基質に対し2〜3当量が、特には2〜2.4当量が好ましい。溶媒としては、アルコールと水の混合系が一般的である。アルコールの種類としては、メタノール、エタノール及びプロパノール等の低級アルコールが好ましい。その使用量は、基質に対し、1〜20質量倍が、特には、2〜10質量倍が好ましい。水の添加量は、基質に対し0.1〜20質量倍が特には、1〜10質量倍が好ましい。アルコールと水の混合比は、質量比で1対20から20対1の間で選択でき、特には1対5から5対1間で選択するのが好ましい。
【0079】
反応後は、アルコールを留去した後、水を加えてから酸沈させてTUACの粗結晶が得られる。これを再結晶法又は、カラムクロマトグラフィー法で精製することにより、TUACの純品が得られる。
【0080】
もう一法として、酸による方法も高収率でTUACを与える。酸の種類としては、塩酸、硫酸及び燐酸等の無機酸類、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸等の脂肪酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。これらの中で、蟻酸による方法が簡便である。その使用量は、TUAM化合物に対して4モル当量以上が好ましく、副生する蟻酸メチルを蟻酸の一部に同伴させて留出さることが反応促進させることから、蟻酸は10〜50モル当量の過剰量存在させることが好ましい。生成物のTUACは、結晶として析出するので、反応終了後ろ過により単離することができる。あるいは、反応終了後のTUAC・蟻酸スラリーをそのまま次の脱水工程にワンポットで供することができる。
【0081】
又、第5工程のTUEM化合物のTUECへの加水分解反応も同様にして行うことができ、TUECが高収率で得られる。
【0082】
次に、第4工程のTUACのTCAAへの脱水法について述べる。脱水剤としては、脂肪族カルボン酸無水物、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略記)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMCと略記)が用いられるが、好ましくは安価な脂肪族カルボン酸無水物、特に無水酢酸が用いられる。使用量は、TUACに対し1〜20当量、好ましくは1〜5当量である。
【0083】
溶媒は、脱水剤自身を過剰量加えて使用する場合もあるが、反応に直接関与しない有機溶媒を用いることもできる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類、更に1,4−ジオキサン等が挙げられる。使用量は、TUACに対し1〜20質量倍、好ましくは1〜10質量倍である。
【0084】
反応温度は、通常脱水剤又は溶媒の沸点付近で行うのが一般的であるが、50〜200℃間で行うことができる。より好ましくは、60〜150℃である。反応時間は、反応温度との相関になるが、実用的には、1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。本反応は、常圧又は加圧で行うこともでき、又回分式又は連続式でも可能である。
【0085】
反応後、脱水剤を場合により溶媒も一緒に留去すると高純度のTCAAが得られる。必要に応じ、再結晶法により精製することもできる。
【0086】
又、前述した様に前工程で蟻酸を用いる場合は、その反応混合物であるTUAC・蟻酸スラリーをそのまま次の脱水工程に供し、蟻酸や副生する酢酸を留去させながら転化率を上げて、目的のTCAAを得ることができる。
【0087】
次にTCAAの重合評価結果について述べる。本発明により得られるテトラカルボン酸二無水物は、ジアミンとの重縮合反応によりポリアミック酸とした後、熱もしくは触媒を用いた脱水閉環反応により対応するポリイミドとすることができる。
【0088】
式[1]のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3,4:8,9−二無水物(TCAA)を用いたポリアミック酸及びポリイミドについて以下に述べる。
【0089】
本発明のポリアミック酸において使用されるテトラカルボン酸二無水物の全モル数のうち、少なくとも10mol%は式[1]のTCAAでなければならない。更には、本発明の目的である高い透明性と低い複屈折を達成するためには、望ましくは、テトラカルボン酸二無水物のうち90mol%以上はTCAAでなければならない。
【0090】
本発明において用いられる式[1]のTCAA以外のテトラカルボン酸二無水物としては、通常のポリイミドの合成に使用されるテトラカルボン酸及びその誘導体を用いることは、何ら差し支えない。
【0091】
その具体例としては、1,2,3,4−テトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸などの脂環式テトラカルボン酸及びこれら二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0092】
更には、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物なども挙げられる。
【0093】
本発明において用いられるジアミン(2)は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されるものではない。その代表例を挙げれば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル −4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ −4,4’−ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチルー4,4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン及びテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。また、これらのジアミンの1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0094】
本発明の新規ポリイミドは、酸二無水物とジアミンを溶媒中で反応させたポリアミック酸を経由し、その熱イミド化により用いることができる。また、ポリアミック酸を溶媒中でイミドに転化させ、溶剤可溶性のポリイミドとして用いることも可能である。
【0095】
本発明のポリアミック酸をえる方法は、その製造法は特に限定されるものではないが、該テトラカルボン酸二無水物およびその誘導体と前記ジアミンを反応、重合させて得ることができる。この際のテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル数の比は0.8から1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様に、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。重合度が小さすぎるとポリイミド塗膜の強度が不十分であり、また重合度が大きすぎるとポリイミド塗膜形成時の作業性が悪くなる場合がある。従って、本反応における生成物の重合度は、数平均分子量で、少なくとも5000で、好ましくは7000〜100000である。
【0096】
溶液重合に使われる溶剤の具体例としては、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプトラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、およびブチルラクトンなどを挙げることができる。これらは、単独でも、また混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解しない溶剤であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。溶液重合の反応温度は、−20℃から150℃、好ましくは−5℃から100℃の任意の温度を選択することができる。
【0097】
本発明の有機溶媒可溶性ポリイミドを得る方法は、その製造方法は特に限定されるものではないが、該テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体とジアミンを反応、重合させて得られたポリアミック酸を通常は加熱により脱水閉環させる方法が採用される。また、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法も採用することができる。加熱による方法では、100℃から300℃、好ましくは120℃から250℃の任意の温度を選択できる。化学的に閉環する方法では、たとえばピリジン、トリエチルアミンなどを無水酢酸など存在下で使用することができ、このときの温度は、−20℃から200℃の任意の温度を選択することができる。
【0098】
このようにして得られたポリイミド溶液はそのまま使用することも出来、また、メタノール、エタノールなどの貧溶媒に沈殿単離させポリイミドを粉末として、あるいはそのポリイミド粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。再溶解させる溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されないが、その具体例を挙げるならば、m−クレゾール、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0099】
また、単独ではポリマーを溶解させない溶液であっても、溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えて使用することができる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどが挙げられる。
また、ポリイミド膜と基板の密着性を更に向上させる目的で、得られたポリイミド溶液にカップリング剤等の添加剤を加えることはもちろん好ましい。
【0100】
この溶液を基板に塗布し、溶媒を蒸発させることにより基板上にポリイミド被膜を形成させることができる。この際の温度は通常100℃から300℃で十分である。
【0101】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【実施例】
実施例1
【0103】
【化39】
【0104】
200mlガラス製四つ口反応器に、ノルボルナジエン(NN)9.24g(100mmol)、ジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMA)28.4g(200mmol)、RuCl2(PPh3)32.1g(2.2mol%)、及び1,4−ジオキサン40gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し、100℃(浴温120℃)で24時間反応させた。終了後室温まで冷却してから反応液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1〜1/1)で精製すると、淡黄色透明な油状物質13.8gが得られた。この油状物質を酢酸エチル/ヘプタンから再結晶することにより白色結晶10.0g(26.7mmol)(収率26.6%)が得られた。構造は、下記の分析結果からテトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボキシレート(TUEM)であることを確認した。
【0105】
MASS(FAB+,m/z):377([M+H]+,100),345(100),86(60).
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.38(s,2H),2.43(s,2H),2.76(s,4H),3.79(s,12H).13C-NMR(125MHz,CDCl3,δppm):23.59,31.70(2本分),46.06(4本分),51.95(4本分),142.40(4本分),161.21(4本分).
mp.(℃):142〜143.
【0106】
実施例2
200mlガラス製四つ口反応器に、ジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMA)3.08g(21.7mmol)、RuCl30.90g(4.34mmol)、トリフェニルホスフィン3.42g(13.0mmol)、4−tert−ブチルカテコール(TBC)0.10g、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)28.00gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら70℃まで昇温した。70℃で1時間撹拌した後、ノルボルナジエン(NN)10.00g(109mmol)とジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMA)16.97g(119mmol)の混合溶液をゆっくり滴下し、3時間撹拌した。さらにこの溶液にジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMA)18.51g(130mmol)を滴下した後、溶液を120℃に加熱し3時間反応させた。終了後、減圧下で反応液を濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えることにより結晶を析出させた。得られた結晶を濾別後乾燥させることにより、TUEMの淡黄色結晶18.03g(47.9mmol)(収率44.1%)が得られた。
【0107】
1H-NMR(300MHz,CDCl3,δppm) : 1.31(s,2H), 2.34(s,2H), 2.69(s,4H), 3.72(s,12H).
13C-NMR(75MHz,CDCl3,δppm) : 23.53, 31.65, 46.00, 51.91, 142.35, 161.16.
実施例3
【0108】
【化40】
【0109】
50mlガラス製四つ口反応器に、テトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレート(TUEM)3.00g(8.0mmol)、5%Pd/C(56%含水品)0.34g(5質量%)、及び1,4−ジオキサン20gを仕込んだ後、常圧水素雰囲気下で撹拌を開始しながら昇温し、45℃浴で10時間反応させた。室温まで冷却すると結晶が出始めたので、アセトニトリルを加えて溶解してから、濾過により触媒を除去してから濃縮した。その残査に酢酸エチル40mlを加え60℃に加熱した後、溶媒を少し濃縮してから氷冷した。晶析させた結晶を濾過・酢酸エチル洗浄・乾燥させると、ガスクロマトグラフィーで単一ピークの白色結晶2.40g(6.32mmol)(収率79.2%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレート(TUAM)であることを確認した。
【0110】
MASS(FAB+,m/z):381([M+H]+,48),349(100),113(39).
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δppm):2.14(s,2H),2.33(dd,J1=3.06Hz,J2=6.72Hz,4H),2.91(s,2H),3.60-3.62(m,4H),3.68(s,12H).
13C-NMR(125MHz,CDCl3,δppm):29.48,37.93(2本分),40.11(4本分),41.73(4本分)51.38(4本分),171.29(4本分).
mp.(℃):164〜165.
【0111】
実施例4
200mlガラス製四つ口反応器に、テトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレート(TUEM)11.82g(31.4mmol)、5%Pd/C(58.97%含水品)1.44g(5質量%)、及び1,4−ジオキサン59.1gを仕込んだ後、常圧水素雰囲気下で撹拌を開始しながら昇温し、70℃浴で16時間反応させた。室温まで冷却すると結晶が出始めたので、アセトニトリルを加えて溶解させてから、濾過により触媒を除去してから濃縮した。その残査にメタノール40mlを加え68℃に加熱した後、氷冷した。晶析させた結晶を濾過・メタノール洗浄・乾燥させると、淡黄色結晶10.21g(26.8mmol)(収率85.5%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレート(TUAM)であることを確認した。
【0112】
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm) : 1.94(s,2H), 2.24(dd,J1=2.4Hz,J2=7.2Hz,4H), 2.66(s,2H), 3.55(s,12H), 3.67(dd,J1=2.4Hz,J2=7.2Hz,4H).
13C-NMR(75MHz, d6-DMSO,δppm) : 29.33, 37.36, 39.33, 41.02, 51.04, 171.17.
実施例5
【0113】
【化41】
【0114】
50mlガラス製四つ口反応器に、テトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレ−ト(TUAM)2.09g(5.5mmol)、水酸化ナトリウム1.06g(26.4mmol)、水10g及びメタノール10gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し、80℃浴で16時間還流させた。終了後反応液を濃縮し、メタノールを除いた残渣に、水2.64gを加えてから、冷却下で濃塩酸2.64gを加え晶析させた。濾過後、少量の水で洗浄し(目的物は水溶性のため)、更に乾燥させると、白色結晶0.70g(2.16mmol)(収率39.3%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボン酸(TUAC)であることを確認した。尚、1H-NMR及び13C−NMRから本化合物は立体異性体の混合物と考えられる。
【0115】
MASS(FAB-,m/z):323([M-H]+,100),247(13),183(36),171(16),155(27),74(94).
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.66(s,2H),2.13(dd,J1=6.42Hz,J2=11.92Hz,2H),2.23(dd,J1=7.32Hz,J2=10.38Hz,2H),2.32(s,1H),2.54(d,J=1.83Hz,1H),2.81(dd,J1=4.89Hz,J2=7.33Hz,2H),3.43(dd,J1=7.95Hz,J2=10.39Hz,2H),4.10(brs,4H).13C-NMR(125MHz,CDCl3,δppm):27.74,36.84,40.07(2本分),40.42(2本分)40.99(2本分),42.25,42.38(2本分),174.03(2本分),175.83(2本分).
mp.(℃):275〜276.
実施例6
【0116】
【化42】
【0117】
50mlガラス製四つ口反応器に、実施例5の方法で得られたテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボン酸(TUAC)2.00g(6.2mmol)、無水酢酸12.7g(124mmol)、及び1,4−ジオキサン20gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し、100℃(浴温140℃)で2時間反応させた。終了後反応液を濃縮し、得られたガム状残渣にトルエンを加え50℃に加温溶解させると、一部不溶物が残った。濾過により残差を除去した後、トルエン溶液を濃縮した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ室温静置しすると結晶が析出した。この結晶を濾取・乾燥することにより白色結晶0.829g(2.98mmol)(収率48.0%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3:4,8:9−二無水物(TCAA)であることを確認した。
【0118】
MASS(FAB-,m/z):287([M-H]+,100),259(50),233(17),215(39).
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.88(s,2H),2.33(d,J=1.22Hz,4H),2.45(s,2H),3.14(d,J=1.83Hz,4H).
13C-NMR(125MHz,CDCl3,δppm):26.24,40.62(2本分),41.16(4本分),42.09(4本分),173.71(4本分).
mp.(℃):210〜211.
実施例7
【0119】
【化43】
【0120】
50mlガラス製四つ口反応器に、テトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボキシレ−ト(TUEM)2.00g(5.3mmol)、水酸化ナトリウム0.954g(23.9mmol)、水10g及びメタノール10gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し、80℃浴で6時間還流させた。終了後反応液を濃縮し、得られた残渣に水/1,2−ジクロロエタンを加えてから、冷却下で濃塩酸2.4gを加え晶析させた。濾過・水洗・乾燥させると、液体クロマトグラフィーで単一ピークの白色結晶1.37g(4.28mmol)(収率80.8%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸(TUEC)であることを確認した。
【0121】
MASS(FAB-,m/z):319([M-H]+,100),63(33).
1H-NMR(500MHz, CDCl3,δppm):1.32(s,2H),2.32(s,2H),2.78(s,4H),8.16(brs,4H).
13C-NMR(125MHz, CDCl3,δppm) :23.47,30.76(2本分),45.28(4本分),144.78(4本分),162.93(4本分).
mp.(℃):150〜151.
実施例8
【0122】
【化44】
【0123】
200mlガラス製四つ口反応器に、テトラメチルテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボキシレ−ト(TUAM)18.14g(47.7mmol)、p−トルエンスルホン酸0.73g(4質量%)、及びギ酸90.7gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら90℃に昇温した。撹拌を続けているうちに白色の結晶が生成してくるが、同時にギ酸メチルが生成するので冷却器を通してトラップした。3時間撹拌した後、このスラリー溶液に無水酢酸90.7gをゆっくり滴下すると還流が激しくなり、低沸点物質を冷却器を通してトラップし、そのまま撹拌を続けながら120℃に昇温した。低沸点物質とギ酸の混合物を留去させながら3時間撹拌した後、得られたスラリー溶液を濾過した。これを少量のアセトニトリルで洗浄し、更に乾燥させると、白色結晶11.4g(39.5mmol)(収率83.2%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,4,8,9−テトラカルボン酸−3−エキソ,4−エキソ,8−エキソ,9−エキソ−3:4,8:9−二無水物(TCAA)であることを確認した。
【0124】
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm) : 1.60(s,2H), 2.26(s, 2H), 2.61(dd,J1=4.1Hz,J2=6.5Hz,4H), 3.71(dd,J1=4.1Hz,J2=6.5Hz,4H).
13C-NMR(75MHz, d6-DMSO,δppm) : 27.91, 36.30, 40.78, 41.08, 173.01.
10%質量減少温度379℃.
分解温度431℃.
【0125】
また上記の反応で、無水酢酸を滴下する前の白色結晶を濾取・乾燥することにより白色結晶が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3−エキソ,4−エキソ,8−エキソ,9−エキソ−テトラカルボン酸(TUAC)であることを確認した。
【0126】
1H-NMR(300MHz, d6-DMSO,δppm):2.07(s,2H), 2.20(dd,J1=2.4Hz,J2=7.2Hz,4H), 2.71(s,2H), 3.52(dd,J1=2.4Hz,J2=7.2Hz,4H).
13C-NMR(75MHz, d6-DMSO,δppm) :29.23, 37.56, 41.07, 50.80, 172.70.
10%質量減少温度269℃.
分解温度429℃.
実施例9
【0127】
【化45】
【0128】
50mlガラス製四つ口反応器に、テトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸(TUEC)2.20g(6.87mmol)、5%Pd/C(56%含水品)0.50g(10質量%)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)20gを仕込み、常圧水素雰囲気下、25℃で40時間撹拌した。濾過により触媒を除去してから濃縮した。その残査にトルエンを加えて濃縮する操作を2回行った後、乾燥させると、TUACの白色結晶0.90g(2.78mmol)(収率40.4%)が得られた。
実施例10
【0129】
【化46】
【0130】
50ml四つ口ガラス反応器にノルボルナジエン(NN)0.92g(10mmol)、アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMA)4.26g(30mmol)及びトリストリフェニルホスフィンルテニウムジクロライド(RuCl2(PPh3)3)0.384g(4mmol%)を仕込み、100℃(油浴110℃)で3時間撹拌した。得られた反応液をガスクロマトグラフィー分析した結果、TUEMとNBDEの面積%の和を100%とした時、TUEM74.4面積%及びNBDE(ジメチルトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3,7−ジエン−3,4−ジカルボキシレート)25.6面積%であった。
【0131】
実施例11〜19
実施例10に於て、ノルボルナジエン(NN)0.92g(10mmol)を用い、アセチレンジカルボン酸ジメチル、トリストリフェニルホスフィンルテニウムジクロライド(RuCl2(PPh3)3)、溶媒、温度及び時間を変えて反応させた反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例20〜27
実施例10に於て、ノルボルナジエン(NN)0.92g(10mmol)を用い、アセチレンジカルボン酸ジメチル、三塩化ルテニウム・三水塩(RuCl3・3H2O)、溶媒、温度及び時間を変えて反応させた反応液をガスクロマトグラフィー分析した結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
〔ポリアミック酸及びポリイミドの合成〕
尚、得られたポリアミック酸及びポリイミドの物性評価は次の装置および方法を用いて行った。
1)赤外線吸収スペクトルニコレットインストルメント製NEXUS 670FT−IRを用い、ポリイミド膜を用いてKBrペレットを作成し測定を行った。
2)分子量測定センシュー科学常温GPC測定装置SSC−7200を用い、DMFを溶離液として用い分子量の測定を行った。
3)5%質量減少温度マックサイエンス社製熱重量分析装置TG−DTA2000SRを用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件にて測定を行った。
参考例1
【0136】
【化47】
【0137】
攪拌機、および窒素導入管を設けたフラスコに、実施例8で得られたTCAA576mg(2.00mmol)、4−ビス(アミノフェノキシ)エーテル400mg(DDE:2.00mmol)、N−メチルピロリドン(以下NMPと省略する)2.28gを用い、室温で24時間攪拌し重縮合反応を行なうことにより、固形分30wt%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液を用い、GPC(Gel Permeration Chromatography)法により分子量を測定した結果、数平均分子量は65500であった。
【0138】
上記の溶液をガラス基板上に塗布し、300℃で熱処理することによりポリイミド膜を形成した。
測定したデータ
1)IR:KBrにて赤外線吸収スペクトルを測定:図1参照
1701.43, 1780.40 cm-1(5員環イミド)
2)熱分解温度:質量減少温度にて算出。
条件:10℃/min、窒素気流下、5%の質量減少温度を測定結果:TCAA/DDE:403℃.
以上の結果からTCAAと4−ビス(アミノフェノキシ)エーテルからなるポリイミドを確認した。
参考例2
【0139】
【化48】
【0140】
攪拌機、および窒素導入管を設けたフラスコに、実施例8で得られたTCAA576mg(2.00mmol)、 2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン821mg(BAPP:2.00mmol)、NMP7.92gを用い、室温で24時間攪拌し重縮合反応を行なうことにより、固形分15wt%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液を用いて、GPC(GelPermeration Chromatography)法により分子量を測定した結果、数平均分子量は31000であった。
【0141】
上記の溶液をガラス基板上に塗布し、300℃で熱処理することによりポリイミド膜を得た。
測定したデータ
1)IR:KBrにて赤外線吸収スペクトルを測定:図2参照
1701.36, 1781.88 cm-1 (5員環イミド)
2)熱分解温度:質量減少温度にて算出。
条件:10℃/min、窒素気流下、5%の質量減少温度を測定結果:TCAA/BAPP :444℃.
以上の結果からTCAAと2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンからなるポリイミドを確認した。
【0142】
【効果】
紫外線領域に吸収がなく光透過性が高く、溶媒に対する溶解性に優れ加工性が改善された液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、更に光導波路等の光通信用材料としての用途が期待される光学材料用ポリイミドの原料モノマーとなり得る新規脂環式テトラカルボン酸二無水物及びそのポリイミドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1で得られたポリイミドの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】参考例2で得られたポリイミドの赤外線吸収スペクトルである。
Claims (12)
- 式[5]
- 式[5]
- ノルボルナジエンと式[4]
- 触媒としてトリハロゲノルテニウムをトリフェニルホスフィン存在下で用いることを特徴とする、請求項8記載のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルの製造法。
- 反応溶媒が、なし又はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル及び1,2−ジメトキシエタンの中から選ばれる少なくとも1種のエーテルである請求項8または請求項9に記載のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルの製造法。
- 反応温度が、50〜180℃である請求項8乃至請求項10の何れかの請求項に記載のテトラシクロ[4.4.1.02,5.07,10]ウンデカ−3,8−ジエン−3,4,8,9−テトラカルボン酸テトラアルキルエステルの製造法。
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