JP4200050B2 - 射出プレス成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば燃料タンクなどの製造に用いられる射出プレス成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば燃料タンクなどの樹脂成形品は、射出プレス成形方法により製造される。射出プレス成形方法は、型配置工程と樹脂注入工程とプレス工程とを有する。図7に、燃料タンク製造時における型配置工程および樹脂注入工程の概要図を示す。図に示すように、型配置工程においては、可動上型100と固定下型101とを上下に対向するように配置する。このとき、分割面PLを少し開いておく。そして、両型の型面間にキャビティ102を形成する。キャビティ102は、燃料タンクの下分割体と同じ形状を呈している。
【0003】
樹脂注入工程においては、キャビティ102内に溶融状態の樹脂104を注入する。樹脂104は、固定下型101ほぼ中央に開設されたゲート103から、キャビティ102内に注入される。樹脂104は、ゲート103を中心とするほぼ同心円状に、キャビティ102内に広がる。
【0004】
図8に、燃料タンク製造時におけるプレス工程の概要図を示す。図に示すように、プレス工程においては、可動上型100を下降させ型締めを行う。型締めにより、キャビティ102は圧縮される。この圧縮圧力により、前工程においてほぼ同心円状に広がった樹脂104は、キャビティ102全体に行き渡る。
【0005】
その後、型冷却、脱型を経て燃料タンク下分割体が製造される。燃料タンク下分割体は、同様の方法で製造された燃料タンク上分割体と、熱溶着される。このようにして、燃料タンクが完成する。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−258100号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記製造方法によると、樹脂注入工程において、樹脂がゲートを中心とするほぼ同心円状に広がってしまう。図9に、樹脂注入工程に用いる下型の斜視図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、樹脂注入工程において、樹脂104はゲート103を中心とするほぼ同心円状に広がっている。樹脂104は、後工程であるプレス工程において、キャビティ102全体に行き渡る。
【0008】
ところが、樹脂成形品である燃料タンク下分割体すなわちキャビティ102は、上面が開口する直方体箱状を呈している。すなわち、同心円状の樹脂104とキャビティ全体形状とは、相似ではない。したがって、樹脂104端部からキャビティ102端部までの距離(以下、「到達距離」と称す。)が短い部分L1と、到達距離が長い部分L2と、が混在することになる。
【0009】
到達距離が短い部分L1のキャビティ102端部においては、プレス工程において、樹脂104が過剰に供給される。一方、到達距離が長い部分L2のキャビティ102端部においては、プレス工程において、樹脂104が充分に行き渡らないおそれがある。このため、成形後の樹脂成形品に成形不良が発生するおそれがある。また、成形精度が悪いため、形状が複雑な樹脂成形品の製造に不利である。
【0010】
この問題を回避するため、特許文献1には、型面からキャビティ内にピンを出し入れすることにより、樹脂の流動を制御する射出成形方法が紹介されている。しかしながら、同文献記載の射出成形方法によると、型面に出し入れ可能にピンを配置する必要がある。このため、型の構造が複雑化する。また、キャビティ内が高圧になるプレス工程において、ピンとピン孔との隙間を介して、キャビティから樹脂が漏出するおそれがある。また、同文献記載の射出成形方法によると、ピンの出し入れを制御する制御装置が別途必要になる。このため、型費ひいては樹脂成形品の製造コストが高騰化するおそれがある。
【0011】
本発明の射出プレス成形方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、比較的簡単にキャビティ全体に過不足なく樹脂を行き渡らせることができる射出プレス成形方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するため、本発明の射出プレス成形方法は、複数の型の型面によりキャビティを区画し、該キャビティ内に型面間距離の短い狭部と、該狭部よりも型面間距離の長い広部と、を配置する型配置工程と、該キャビティ内に樹脂を注入し、該狭部および該広部における該樹脂の流動速度がそれぞれ異なることにより、該樹脂を該キャビティ全体形状の略相似形状に流動させる樹脂注入工程と、該キャビティを圧縮し、略相似形状に流動させた該樹脂を圧縮圧力により該キャビティ全体に行き渡らせるプレス工程と、を有し、該狭部は、一方の型に設けられた突条部と、もう一方の型に該突条部に対向して配置され該突条部に型対称な溝部と、の間に形成されており、該プレス工程において、該キャビティを圧縮することにより、該狭部の型面間距離と該広部の型面間距離との較差は、該樹脂注入工程における較差よりも小さくなることを特徴とする。
【0013】
本発明の射出プレス成形方法は、型配置工程と樹脂注入工程とプレス工程とを有する。型配置工程においては、複数の型を仮型締めすることにより、型面間にキャビティを区画する。キャビティには、狭部と広部とが配置されている。広部の型面間距離は、狭部の型面間距離よりも、長く設定されている。
【0014】
樹脂注入工程においては、キャビティ内に溶融状態の樹脂が注入される。狭部における樹脂の流動抵抗は大きい。また、狭部においては、樹脂の容積に対する型面の表面積が比較的広い。したがって、樹脂が型面に熱を奪われやすい。すなわち、樹脂が固化しやすい。これらの理由から、狭部における樹脂の流動速度は遅い。
【0015】
これに対し、広部における樹脂の流動抵抗は小さい。また、広部においては、樹脂の容積に対する型面の面積が比較的狭い。したがって、樹脂が型面に熱を奪われにくい。すなわち、樹脂が固化しにくい。これらの理由から、広部における樹脂の流動速度は速い。本工程においては、この狭部と広部とにおける樹脂の流動速度の較差を利用して、樹脂をキャビティ全体形状の略相似形状となるようにキャビティ内に流動させる。
【0016】
プレス工程においては、キャビティを圧縮する。そして、前工程において略相似形状に流動させた該樹脂を、キャビティ圧縮圧力によりキャビティ全体に行き渡らせる。
【0017】
本発明の射出プレス成形方法によると、樹脂注入工程終了後における樹脂の形状が、キャビティ全体形状すなわち樹脂成形品形状の略相似形状となっている。このため、プレス工程において、樹脂を過不足なくキャビティ全体に行き渡らせることができる。したがって、成形不良が発生しにくい。また、成形精度が良好であるため、形状が複雑な樹脂成形品であっても簡単に製造することができる。また、樹脂注入工程において発生しがちなウェルドを、プレス工程における樹脂再流動により除去することができる。この点においても成形不良が発生しにくい。
【0018】
また、本発明の射出プレス成形方法によると、キャビティ内にピンなどを出し入れすることなく、比較的簡単に、樹脂を過不足なくキャビティ全体に行き渡らせることができる。
【0019】
本発明の射出プレス成形方法において、前記狭部は、一方の型に設けられた突条部と、もう一方の型に該突条部に対向して配置され該突条部に型対称な溝部と、の間に形成されており、前記プレス工程において、前記キャビティを圧縮することにより、該狭部の型面間距離と前記広部の型面間距離との較差は、前記樹脂注入工程における較差よりも小さくなる
【0020】
狭部の型面間距離と広部の型面間距離との較差は、そのまま肉厚の不均一さとなって樹脂成形品に発現する。この点、本構成によると、プレス工程において、狭部の型面間距離と広部の型面間距離との較差は、樹脂注入工程における較差よりも小さい。したがって、樹脂成形品における肉厚の不均一さを抑制することができる。
【0021】
以下、その作用について具体的に例を挙げて説明する。図10に、突条部と溝部との配置状態の一例を拡大して示す。図中実線で示すのは、樹脂注入工程における突条部と溝部との配置状態である。一方、図中一点鎖線で示すのは、プレス工程における突条部と溝部との配置状態である。
【0022】
突条部205は、固定下型201の型面から、キャビティ202内に向かって突設されている。一方、溝部206は、可動上型200の型面から陥没して形成されている。突条部205と溝部206との間には、狭部203が形成されている。また、固定下型201型面と可動上型200型面との間には、広部204が形成されている。
【0023】
プレス工程において、プレス幅Dだけ可動上型200が下降すると、広部204の型面間距離D2は、プレス幅Dだけ狭くなる。これに対し、狭部203の型面間距離D1は、圧縮方向と、狭部203の延在方向と、の交角をαとすると、Dsinαだけ狭くなる。
【0024】
すなわち、プレス工程においてキャビティ202が圧縮された場合、広部204の型面間距離D2の短縮幅よりも、狭部203の型面間距離D1の短縮幅の方が小さくなる。このため、プレス工程における型面間距離D2と型面間距離D1との較差は、樹脂注入工程における型面間距離D2と型面間距離D1との較差よりも、小さくなる。したがって、本構成によると、樹脂成形品の肉厚が不均一になるのを抑制することができる。
【0025】
(2)好ましくは、前記狭部の延在方向と、前記プレス工程における圧縮方向と、の交角は、5°以上55°以下に設定されている構成とする方がよい。
【0026】
つまり、本構成は、前出図10において、交角αを30°±25°以内に設定するものである。ここで、交角αを5°以上としたのは、交角αが5°未満の場合、圧縮方向と狭部203延在方向とがほぼ平行になってしまうからである。言い換えると、狭部203と広部204とがほぼ直角をなすように配置されてしまうからである。このため、プレス工程における樹脂の流動抵抗が大きくなるからである。そして、樹脂がキャビティ全体に行き渡らなくなるおそれがあるからである。
【0027】
一方、交角αを55°以下としたのは、交角αが55°を超える場合、狭部203の型面間距離D1の短縮幅Dsinαと、広部204の型面間距離D2の短縮幅Dと、が近接するからである。
【0028】
すなわち、樹脂注入工程においては、樹脂をキャビティ全体形状の略相似形状に流動させる必要がある。このため、樹脂の流動制御が容易である方が好ましい。したがって、狭部203の型面間距離D1と広部204の型面間距離D2との較差は大きい方が好ましい。これに対し、プレス工程においては、樹脂成形品の肉厚が不均一になるのを抑制する必要がある。このため、狭部203の型面間距離D1と広部204の型面間距離D2との較差は小さい方が好ましい。つまり、樹脂注入工程においては型面間距離D1と型面間距離D2との較差が大きく、かつプレス工程においては型面間距離D1と型面間距離D2との較差が小さく、というように型面間距離を設定したい。
【0029】
ところが、交角αを55°を超え、型面間距離D1の短縮幅Dsinαと、型面間距離D2の短縮幅Dと、が近接する場合、プレス工程における型面間距離D1と型面間距離D2とが同様に短縮されてしまう。このため、上記設定を行うのが困難になる。このような理由から、交角αを55°以下とした。
【0030】
(3)好ましくは、前記狭部の型面間距離は、前記樹脂注入工程において前記樹脂を堰き止められるように設定されている構成とする方がよい。つまり、本構成は、樹脂注入工程において、狭部により樹脂を完全に堰き止められるように、狭部の型面間距離を設定するものである。本構成によると、樹脂注入工程において、狭部を超えて樹脂が流動するおそれがない。したがって、樹脂をキャビティ全体形状の略相似形状に流動させやすくなる。すなわち、樹脂の流動を、より制御しやすくなる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の射出プレス成形方法の実施の形態について説明する。本実施形態は、本発明の射出プレス成形方法を燃料タンクの製造方法として具現化したものである。
【0032】
まず、本実施形態の製造方法により作製された燃料タンクの構成について説明する。図1に、燃料タンクの部分透過図を示す。図に示すように、燃料タンク1は、上分割体2と下分割体3とからなる。上分割体2は、樹脂製であって下方に開口する直方体箱状を呈している。一方、下分割体3は、樹脂製であって上方に開口する直方体箱状を呈している。下分割体3と上分割体2とは、互いの開口縁同士が熱溶着されることにより一体化されている。下分割体3の底壁内面からは、断面三角形状のリブ30が突設されている。リブ30は、合計二列配置されている。二列のリブ30は、急斜面300同士が向かい合うように、ほぼ平行に配置されている。
【0033】
次に、本実施形態の製造方法を工程ごとに説明する。本実施形態の製造方法は、型配置工程と樹脂注入工程とプレス工程とを有する。まず、型配置工程について説明する。図2に、型配置工程および樹脂注入工程の概要図を示す。図に示すように、型配置工程においては、可動上型4と固定下型5とを上下に対向するように配置し、仮型締めを行う。可動上型4は、金属製であって直方体凸状を呈している。可動上型4の型面40には、断面三角形状の溝部41が凹設されている。溝部41は、後述するキャビティ6の長手方向とほぼ平行に、合計二列配置されている。固定下型5は、金属製であって直方体凹状を呈している。固定下型5内には、所定の間隔をおいて可動上型4が挿入されている。このとき、分割面PLは少し開かれている。固定下型5の型面50からは、断面三角形状の突条部51が突設されている。突条部51は、ほぼ平行に合計二列配置されている。二列の突条部51の中央には、ゲート60が開設されている。ゲート60は、射出成形機(図略)と連通している。図3に、図2中の円A内の拡大図を示す。図に示すように、突条部51と溝部41とは、上下方向に対向している。突条部51と溝部41とにより、前出図1の下分割体3のリブ30が形成される。これら突条部51の急斜面510と溝部41の急斜面410との間には、狭部61が区画されている。また、突条部51が突設されている型面50と、溝部41が凹設されている型面40と、の間には、広部62が区画されている。狭部61の型面間距離(急斜面410と急斜面510との間の距離)D3は、広部62の型面間距離(型面40と型面50との間の距離)D4よりも、短く設定されている。具体的には、型面間距離D3は、後工程である樹脂注入工程において、樹脂を堰き止められる上限の距離(以下、「限界距離」と称す。)以下に設定されている。図2に戻って、可動上型4の型面40と固定下型5の型面50との間には、キャビティ6が区画されている。キャビティ6は、前出図1の下分割体3と同じ形状を呈している。
【0034】
次に、樹脂注入工程について説明する。本工程においては、射出成形機から、ゲート60を介して、キャビティ6内に溶融状態の樹脂7を注入する。注入された樹脂7は、初めゲート60を中心にほぼ同心円状に拡散していく。すなわち、広部62を同心円状に拡散していく。しかしながら、広部62の両端には、二列の狭部61が配置されている。そして、これらの狭部61の型面間距離D3は、限界距離以下に設定されている。このため、狭部61における樹脂7の流動抵抗は大きい。また、狭部61における樹脂7の容積に対して、急斜面410および急斜面510の表面積は比較的広い。したがって、樹脂7が急斜面410および急斜面510に熱を奪われやすい。すなわち、樹脂7が固化しやすい。これらの理由から、狭部61における樹脂7の流動速度は遅い。このため、図3に示すように、樹脂7は狭部61において完全に堰き止められてしまう。図4に、樹脂注入工程に用いる下型の斜視図を示す。図に示すように、突条部51(すなわち狭部)が配置されている方向に流動する樹脂7は、狭部61により堰き止められる。これに対し、狭部61が配置されていない方向に流動する樹脂7は、堰き止められない。したがって、本工程終了後において、樹脂7は、キャビティ6全体形状と略相似形状になる。
【0035】
次に、プレス工程について説明する。図5に、プレス工程の概要図を示す。また、図6に、図5中の円B内の拡大図を示す。図に示すように、プレス工程においては、可動上型4を下降させ完全型締めを行う。型締めにより、キャビティ6は圧縮される。この圧縮圧力により、狭部61の型面間距離D3と、広部62の型面間距離D4とは、ほぼ同距離となる。そして、前工程において狭部61で堰き止められていた樹脂7は、図6中白抜き矢印で示すように流動し、キャビティ6全体に行き渡る。
【0036】
その後、型冷却、脱型を経て前出図1の下分割体3が製造される。下分割体3は、同じく射出プレス成形で製造された上分割体2と、熱溶着される。このようにして、燃料タンク1が完成する。
【0037】
次に、本実施形態の製造方法の効果について説明する。本実施形態の製造方法によると、キャビティ6に、狭部61と広部62とが配置されている。そして、樹脂注入工程において、広部62の型面間距離D4は、狭部61の型面間距離D3よりも、長く設定されている。このため、樹脂注入工程において、樹脂7をキャビティ6全体形状の略相似形状となるように流動させることができる。したがって、前出図4におけるL3到達距離とL4到達距離とは、ほぼ一致する。このため、後工程であるプレス工程において、樹脂7を過不足なくキャビティ6全体に行き渡らせることができる。
【0038】
また、本実施形態の製造方法によると、キャビティ6内にピンなどを出し入れすることなく、比較的簡単に、樹脂7を過不足なくキャビティ6全体に行き渡らせることができる。
【0039】
また、本実施形態の製造方法によると、樹脂注入工程における狭部61の型面間距離D3は、限界距離以下に設定されている。このため、樹脂注入工程において、狭部61で樹脂7を完全に堰き止めることができる。したがって、樹脂7をキャビティ6全体形状の略相似形状に流動させやすくなる。
【0040】
また、本実施形態の製造方法によると、狭部61は、突条部51と溝部41との間に形成されている。このため、狭部61を比較的簡単に配置することができる。
【0041】
また、本実施形態の製造方法によると、プレス工程において、狭部61の型面間距離D3と広部62の型面間距離D4との較差が、ほぼゼロになるように設定されている(前出図3、図6参照)。このため、燃料タンク1の下分割体3の肉厚が、ほぼ均一となる。すなわち、狭部61を満たす樹脂7が、下分割体3において、薄肉部として固化するおそれがない。したがって、燃料タンク1に要求される機械的強度、耐燃料透過性などの特性を、充分に確保することができる。
【0042】
また、本実施形態の製造方法によると、狭部61の延在方向と、プレス工程における圧縮方向と、の交角β(前出図3、図6参照)が、30°に設定されている。このため、プレス工程における樹脂7の流動性は良好である。また、樹脂注入工程においては型面間距離D3と型面間距離D4との較差を大きく設定することができる。並びに、プレス工程においては型面間距離D3と型面間距離D4との較差をほぼゼロにすることができる。
【0043】
以上、本発明の射出プレス成形方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、可動上型4に溝部41を配置した。また、固定下型5に突条部51を配置した。しかしながら、この配置は逆であってもよい。また、可動上型4に溝部と突条部とを配置し、固定下型5にも突条部と溝部とを配置してもよい。そして、可動上型4の溝部と固定下型5の突条部とを対向させてもよい。並びに、可動上型4の突条部と固定下型5の溝部とを対向させてもよい。また、上記実施形態においては、可動上型4と固定下型5という二つの型を配置したが、型数は特に限定しない。
【0045】
また、上記実施形態においては、溝部41と突条部51とを、ともに断面三角形としたが、断面形状は、三角形でなくてもよい。例えば、四角形、五角形などの多角形、あるいは円形、楕円形などであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態の樹脂注入工程においては、狭部61で樹脂7を完全に堰き止めたが、同工程で樹脂7を完全に堰き止めなくてもよい。樹脂7の流動を狭部61で抑制できればよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、下分割体3を本発明の射出プレス成形方法により製造したが、上分割体2を本発明の射出プレス成形方法で製造してもよい。また、本発明の射出プレス成形方法は、例示した燃料タンクの製造方法に限らず、例えば、ドアトリム、ダッシュボード、メータパネル、カーエアコン用ダンパ、エアダクトなどの自動車関連部材、パソコン用筐体、パソコン用ディスクトレーなどの製造方法として具現化することもできる。特に、高い成形精度が要求され、かつ肉厚の均一性が要求されるような樹脂成形品に有利である。
【0048】
また、上記実施形態においては、型面間距離D3を限界距離以下に設定した。しかしながら、限界距離を超えるように型面間距離D3を設定してもよい。なお、限界距離は、使用する樹脂の種類、樹脂温度、樹脂注入工程における注入圧力、注入時間、型の熱伝達係数、狭部の樹脂流動方向全長などから決定される。
【0049】
【発明の効果】
本発明の射出プレス成形方法によると、比較的簡単にキャビティ全体に過不足なく樹脂を行き渡らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の製造方法により製造された燃料タンクの部分透過図である。
【図2】 本発明の一実施形態の製造方法における型配置工程および樹脂注入工程の概要図である。
【図3】 図2中の円A内の拡大図である。
【図4】 本発明の一実施形態の製造方法の樹脂注入工程に用いる下型の斜視図である。
【図5】 本発明の一実施形態の製造方法におけるプレス工程の概要図である。
【図6】 図5中の円B内の拡大図である。
【図7】 従来の燃料タンク製造時における型配置工程および樹脂注入工程の概要図である。
【図8】 従来の燃料タンク製造時におけるプレス工程の概要図である。
【図9】 従来の燃料タンク製造方法の樹脂注入工程に用いる下型の斜視図である。
【図10】 本発明の射出プレス成形方法における突条部と溝部との配置状態の一例を示す拡大図である。
【符号の説明】
1:燃料タンク、2:上分割体、3:下分割体、30:リブ、300:急斜面、4:可動上型、40:型面、41:溝部、410:急斜面、5:固定下型、50:型面、51:突条部、510:急斜面、6:キャビティ、60:ゲート、61:狭部、62:広部、7:樹脂。

Claims (3)

  1. 複数の型の型面によりキャビティを区画し、該キャビティ内に型面間距離の短い狭部と、該狭部よりも型面間距離の長い広部と、を配置する型配置工程と、
    該キャビティ内に樹脂を注入し、該狭部および該広部における該樹脂の流動速度がそれぞれ異なることにより、該樹脂を該キャビティ全体形状の略相似形状に流動させる樹脂注入工程と、
    該キャビティを圧縮し、略相似形状に流動させた該樹脂を圧縮圧力により該キャビティ全体に行き渡らせるプレス工程と、を有し、
    該狭部は、一方の型に設けられた突条部と、もう一方の型に該突条部に対向して配置され該突条部に型対称な溝部と、の間に形成されており、
    該プレス工程において、該キャビティを圧縮することにより、該狭部の型面間距離と該広部の型面間距離との較差は、該樹脂注入工程における較差よりも小さくなる射出プレス成形方法。
  2. 前記狭部の延在方向と、前記プレス工程における圧縮方向と、の交角は、5°以上55°以下に設定されている請求項1に記載の射出プレス成形方法。
  3. 前記狭部の型面間距離は、前記樹脂注入工程において前記樹脂を堰き止められるように設定されている請求項1又は2に記載の射出プレス成形方法。
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