JP4199476B2 - 半導体装置の保護回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体装置(CMOS集積回路)を構成するMOSトランジスタの静電破壊を防止する半導体装置の保護回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体集積回路は、MOSトランジスタ技術を中心に展開され、微細加工技術の進展によって大規模化・高速化が進められている。現在のMOS集積回路では、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタのゲート電極をつないで入力端子とし、両ドレイン電極をつないで出力端子とした相補形MOS回路(CMOS回路)を構成する技術が中心になっている。
【0003】
ところで、CMOS回路を構成するMOSトランジスタのゲート電極は、高絶縁された電極とこの絶縁された電極に薄い高絶縁の膜を介した別の電極とから構成され、これら電極間にコンデンサが形成される。よって、このコンデンサ部分が帯電すると、そのトランジスタに接続された電極パッドを介して外部に瞬間的に高電圧を与えてしまうおそれがある。その結果、他のトランジスタ等がサージ破壊されたり、寿命が短くなったりする。
【0004】
また、逆に、外部の機械的スイッチや半導体スイッチのスイッチング動作によって、トランジスタに接続された電極パッドに瞬間的に高電圧が印加されると、そのトランジスタのコンデンサ部分が充電され、高電圧が発生し、静電破壊されたり、寿命が短くなったりする。
【0005】
したがって、このようなサージ破壊や静電破壊に対する対策は、半導体集積回路では、製品の高信頼性を保つために重要な要素である。その一方で、近年の半導体集積回路の縮小化および微細化によって、静電破壊対策の実効を図ることが困難になってきている。
【0006】
以下に、図10と図11を参照して、従来の半導体集積回路(半導体装置)で採用されている静電破壊対策について説明する。図10は、従来の静電破壊対策を施した半導体装置の一例を示す回路図である。図11は、図10に示す半導体装置の動作を説明するための断面構造図である。
【0007】
図10では、NMOSトランジスタ回路に対する静電破壊対策方法が示されている。図10において、NMOSトランジスタ101は、ドレイン電極Dが電極パッド102に接続され、ソース電極SとバックゲートBが接地(GND)に接続されている。
【0008】
このNMOSトランジスタ101のドレイン電極Dと電極パッド102との接続ラインにサージ保護回路103が設けられている。サージ保護回路103は、2つのダイオードD11,D12の直列回路で構成されている。ダイオードD11は、カソードが電源104に接続され、アノードが接続ラインに接続されている。ダイオードD12は、カソードが接続ラインに接続され、アノードが接地(GND)に接続されている。
【0009】
この構成によれば、電極パッド102に正方向のサージ電圧が印加されると、ダイオードD11が導通し、サージ電流が電源104側に向けて流れるので、NMOSトランジスタ101のドレイン電極Dに流れ込む電流が少なくなる。また、電極パッド102に負方向のサージ電圧が印加されると、ダイオードD12が導通し、サージ電流が接地(GND)側から電極パッド102側に向けて流れるので、MOSトランジスタ101のドレイン電極Dから流れ出す電流が少なくなる。したがって、NMOSトランジスタ101が破壊されることはなく、サージ破壊が防止される。
【0010】
ところが、図11に示すように、NMOSトランジスタ101のバックゲートBが形成されるP+拡散層111が接地(GND)に接続されているので、電極パッド102から見たNMOSトランジスタ101の入力インピーダンスがサージ保護回路103よりも低くなると、サージ電流はドレイン電極Dが形成されるN拡散層112とP−ウエル113との接合面を貫通し、P+拡散層111やP−基板114を通り接地(GND)に抜けてしまい、これらの接合面の静電破壊を引き起こす。
【0011】
このため、従来では、トランジスタサイズを大きくすることにより、ドレイン電極Dが形成されるN拡散層112とP−ウエル113との間での逆耐圧が大きくなるようにし、上記静電破壊を防止していた。しかしながら、チップサイズの縮小化によるトランジスタサイズの縮小と、それに伴うプロセスの微細化により、ドレイン電極Dが形成されるN拡散層112が一層薄膜化されるので、サージ耐圧を充分に得ることが困難になってきている。
【0012】
そこで、本出願人は、充分に微細化されたMOSトランジスタにて構成されても静電破壊を防止することができる半導体装置を開発し、先に出願した(未公開:特願2001−3501号)。以下、図7を参照して、概要を説明する。なお、図7は、本出願人が先に出願した静電破壊対策を施した半導体装置の構成を示す回路図である。
【0013】
図7では、CMOS集積回路を構成するMOSトランジスタが抜き出して示されている。すなわち、図7(a)は、PMOSトランジスタに静電破壊対策を施した場合の構成例である。図7(b)は、NMOSトランジスタに静電破壊対策を施した場合の構成例である。
【0014】
図7(a)において、PMOSトランジスタ21は、ソース電極Sが電源24に接続され、ドレイン電極Dが電極パッド22に接続されている。このPMOSトランジスタ21に対し、サージ保護回路23が設けられている。
【0015】
サージ保護回路23は、2つのダイオードD1,D2の直列回路で構成されている。ダイオードD1は、カソードが電源24に接続されている。ダイオードD2は、アノードが接地(GND)に接続されている。そして、ダイオードD1のアノードとダイオードD2のカソードが共通にPMOSトランジスタ21のドレイン電極Dと電極パッド22との接続ラインに接続されている。
【0016】
この構成において、電極パッド22から見たPMOSトランジスタ21の入力インピーダンスをサージ保護回路23のそれよりも高くする目的で、PMOSトランジスタ21のバックゲートBと電源24との間に、抵抗素子25が設けられている。
【0017】
したがって、電極パッド22にサージ電圧が印加された場合に、抵抗素子25の存在によってPMOSトランジスタ21のバックゲートBを介してサージ電流が流れてしまうのを防ぐことができ、PMOSトランジスタ21の静電破壊や短命化を防ぐことが可能となる。
【0018】
また、図7(b)において、NMOSトランジスタ31は、ドレイン電極Dが電極パッド32に接続され、ソース電極Sと接地(GND)に接続されている。このNMOSトランジスタ31に対し、サージ保護回路33が設けられている。
【0019】
サージ保護回路33は、2つのダイオードD3,D4の直列回路で構成されている。ダイオードD3は、カソードが電源24に接続されている。ダイオードD4は、アノードが接地(GND)に接続されている。そして、ダイオードD3のアノードとダイオードD2のカソードが共通にNMOSトランジスタ31のドレイン電極Dと電極パッド32との接続ラインに接続されている。
【0020】
この構成において、電極パッド32から見たNMOSトランジスタ31の入力インピーダンスをサージ保護回路33のそれよりも高くする目的で、NMOSトランジスタ31のバックゲートBと接地(GND)との間に、抵抗素子35が設けられている。
【0021】
したがって、電極パッド32にサージ電圧が印加された場合に、抵抗素子35の存在によってNMOSトランジスタ31のバックゲートBを介してサージ電流が流れてしまうのを防ぐことができ、NMOSトランジスタ31の静電破壊や短命化を防ぐことが可能となる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにMOSトランジスタのバックゲートを高インピーダンスに設計すると、当該半導体装置に電源を印加して動作させた実使用時においては、外乱によって電位が容易に変化し、寄生素子の発生し易い状態ができてしまうという問題がある。以下、図8と図9を参照して、具体的に説明する。なお、図8は、図7に示す半導体装置であるCMOS集積回路の内部構成と動作を説明するための断面構造図である。図9は、ラッチアップ現象を説明する回路図である。
【0023】
図8に示すように、CMOS回路40は、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ31とが相補接続された構造になっている。図8において、P−基板41の表面両端側には、P+拡散層42,43がそれぞれ形成されている。P+拡散層42,43の間には、N+フローティング層45を介してN−ウェル46とP−ウェル47とが形成されている。
【0024】
N−ウェル46には、バックゲートBのN+拡散層48と、ソース電極Sが形成されるP拡散層49と、ドレイン電極Dが形成されるP拡散層50とがそれぞれ形成され、P拡散層49とP拡散層50との間には、ゲート電極Gが設けられている。これらによってPMOSトランジスタ21が構成される。
【0025】
P−ウェル47には、ドレイン電極Dが形成されるN拡散層51と、ソース電極が形成されるN拡散層52と、バックゲートBのP+拡散層53とがそれぞれ形成され、N拡散層51とP拡散層52との間には、ゲート電極Gが設けられている。これらによってNMOSトランジスタ31が構成される。
【0026】
このようなCMOS回路40において、電極パッド22にサージ電圧が加わった場合、PMOSトランジスタ21のP拡散層50とN−ウエル46との接合面にサージ電流が流れようとするが、抵抗素子25の存在によって、PMOSトランジスタ21のバックゲートBのインピーダンスがサージ保護回路23のそれよりも高くなっているので、サージ保護回路23に流れていく。これにより、上記接合面の静電破壊を防止することができる。
【0027】
また、電極パッド32にサージ電圧が加わった場合、NMOSトランジスタ31のN拡散層51とP−ウエル47との接合面にサージ電流が流れようとするが、抵抗素子35の存在によって、NMOSトランジスタ31のバックゲートのインピーダンスがサージ保護回路33のそれよりも高くなっているので、サージ電流はサージ保護回路33に流れていく。これにより、上記接合面の静電破壊を防止することができる。
【0028】
ところが、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ31のバックゲートBが高インピーダンスであると、寄生素子としてPNPトランジスタ61とNPNトランジスタ62が発生し易くなる。PNPトランジスタ61は、N−ウエル層46をベースとし、N−ウエル層46のP拡散層49をエミッタとし、P−ウエル47をコレクタとしている。NPNトランジスタ62は、P−ウエル47をベースとし、P−ウエル47のN拡散層52をエミッタとし、N−ウエル層46をコレクタとしている。これらは、図9に示す接続関係をもって発生する。
【0029】
図9に示すように、PNPトランジスタ61のベース電極はNPNトランジスタ62のコレクタ電極と共に抵抗素子25を介して電源24に接続され、PNPトランジスタ61のエミッタ電極は直接電源24に接続されている。また、NPNトランジスタ62のベース電極はPNPトランジスタ61のコレクタ電極と共に抵抗素子35を介して接地(GND)に接続され、NPNトランジスタ62のエミッタ電極は直接接地(GND)に接続されている。
【0030】
つまり、PNPトランジスタ61とNPNトランジスタ62は、正帰還を持つサイリスタを構成している。これらのトランジスタの電流増幅率がある条件を満たし、いずれかが導通すると、接合面を経由して電源24と接地(GND)との間に多大な電流が流れ、素子が破壊するラッチアップ現象が生ずる。したがって、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ31のバックゲートBが高インピーダンスであるということは、ラッチアップの耐量を下げる要因となる。
【0031】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、微細化される半導体集積回路である半導体装置のラッチアップの発生と静電破壊とを防止することができる半導体装置の保護回路を得ることを目的とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の保護回路は、電極パッドと、該電極パッドと電源端子との間に接続されるMOSトランジスタと、該MOSトランジスタのバックゲートに対し第1のインピーダンスを付与するインピーダンス付与手段と、前記電源端子に電圧が印加された後、前記インピーダンス付与手段が付与する第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスにするように切換動作を行うスイッチとを備えたことを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、CMOS集積回路を構成するMOSトランジスタは、インピーダンス付与手段によってバックゲートに高インピーダンスが付与される。電源が投入されてない状態では、バックゲートは高インピーダンス状態を維持する。電源投入後においては、前記CMOS集積回路の電源で駆動されるスイッチによって、各MOSトランジスタに前記インピーダンス付与手段が付与する高インピーダンスが低インピーダンス化される。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の保護回路の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す各実施の形態では、保護回路を静電破壊防止回路と称している。
【0039】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。図1(a)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのPMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。図1(b)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのNMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。図1(c)は、出力回路に用いられるCMOSインバータに対する静電破壊防止回路の構成例である。
【0040】
図1(a)において、PMOSトランジスタ1は、ソース電極Sが電源(Vdd1)2に接続され、ドレイン電極Dが電極パッド3に接続されている。このPMOSトランジスタ1に対して、抵抗素子4とPMOSトランジスタ5とインバータ6とが設けられている。
【0041】
PMOSトランジスタ1のバックゲートBには、抵抗素子4の一端とPMOSトランジスタ5のドレイン電極Dとが接続され、電源(Vdd1)2に接続されるPMOSトランジスタ1のソース電極Sには、抵抗素子4の他端とPMOSトランジスタ5のソース電極Sとが接続されている。そして、PMOSトランジスタ5のゲート電極Gは、インバータ6を介して電源(Vdd2)7に接続されている。
【0042】
抵抗素子4は、PMOSトランジスタ1のバックゲートBを高インピーダンスに設定するために設けられている。また、PMOSトランジスタ5は、PMOSトランジスタ1のバックゲートBのインピーダンスを低インピーダンス状態と高インピーダンス状態とに切り換えて設定するスイッチとして機能するようになっている。
【0043】
また、図1(b)において、NMOSトランジスタ11は、ソース電極Sが接地(GND)に接続され、ドレイン電極Dが電極パッド12に接続されている。このNMOSトランジスタ11に対して、抵抗素子13とNMOSトランジスタ14とが設けられている。
【0044】
NMOSトランジスタ11のバックゲートBには、抵抗素子13の一端とNMOSトランジスタ14のドレイン電極Dとが接続されている。抵抗素子13の他端とNMOSトランジスタ14のソース電極Sは、NMOSトランジスタ11のソース電極Sと同様に接地(GND)に接続されている。そして、NMOSトランジスタ14のゲート電極Gは、直接電源(Vdd2)7に接続されている。
【0045】
抵抗素子13は、NMOSトランジスタ11のバックゲートBを高インピーダンスに設定するために設けられている。また、NMOSトランジスタ14は、NMOSトランジスタ11のバックゲートBのインピーダンスを低インピーダンス状態と高インピーダンス状態とに切り換えて設定するスイッチとして機能するようになっている。
【0046】
また、図1(c)において、出力回路に用いられるCMOSインバータは、図1(a)に示すPMOSトランジスタ1のゲート電極Gと図1(b)に示すNMOSトランジスタ11のゲート電極Gとを接続して入力端子とし、PMOSトランジスタ1のドレイン電極DとNMOSトランジスタ11のドレイン電極Dとを接続して出力端子としたもので、その出力端子は共通の電極パッド15に接続されている。
【0047】
ここで、電源(Vdd1)2と電源(Vdd2)7は、別個独立の電源である。具体的には、例えば、当該半導体装置であるCMOS集積回路には、電源入力端子として、電源(Vdd1)2用の端子と電源(Vdd2)7用の端子とが設けられるとしている。また、図1(a)に示すインバータ6の電源には、電源(Vdd1)2ではなく、例えば電源(Vdd2)7が用いられる。
【0048】
次に、図1〜図3を参照して、実施の形態1による半導体装置の静電破壊防止回路の動作について説明する。なお、図2は、図1(c)に示すCMOSインバータの内部構成と静電破壊防止回路の動作とを説明するための断面構造図である。図3は、図1に示す半導体装置の静電破壊防止回路によるサイリスタ動作抑圧を説明する図である。
【0049】
まず、CMOSインバータの内部構成を説明する。図2に示すように、CMOSインバータ150は、PMOSトランジスタ1とNMOSトランジスタ11とが相補接続された構造になっている。図2において、P−基板151の表面両端側には、P+拡散層152,153がそれぞれ形成されている。P+拡散層152,153の間には、N+フローティング層155を介してN−ウェル156とP−ウェル157とが形成されている。
【0050】
N−ウェル156には、バックゲートBのN+拡散層158と、ソース電極Sが形成されるP拡散層159と、ドレイン電極Dが形成されるP拡散層160とがそれぞれ形成され、P拡散層159とP拡散層160との間には、ゲート電極Gが設けられている。これらによってPMOSトランジスタ1が構成される。
【0051】
P−ウェル157には、ドレイン電極Dが形成されるN拡散層161と、ソース電極が形成されるN拡散層162と、バックゲートBのP+拡散層163とがそれぞれ形成され、N拡散層161とN拡散層162との間には、ゲート電極Gが設けられている。これらによってNMOSトランジスタ11が構成される。電極パッド15には、PMOSトランジスタ1のN拡散層160とNMOSトランジスタ11のN拡散層161とが接続されている。
【0052】
また、PMOSトランジスタ1のゲート電極GとNMOSトランジスタ11のゲート電極Gとは、共通に接続されている。そして、PMOSトランジスタ1では、バックゲートBのN+拡散層158には、PMOSトランジスタ5のドレイン電極Dが接続され、また抵抗素子4を介して電源(Vdd1)2とソース電極SのP拡散層160とに接続されている。
【0053】
また、NMOSトランジスタ11では、バックゲートBのP+拡散層163には、NMOSトランジスタ14のドレイン電極Dが接続され、また抵抗素子13を介して接地(GND)とソース電極SのN拡散層162とに接続されている。
【0054】
ここで、図2では、寄生素子としてPNPトランジスタ61とNPNトランジスタ62が発生することが示されている。PNPトランジスタ171は、N−ウエル層156をベースとし、N−ウエル層156のP拡散層159をエミッタとし、P−ウエル157をコレクタとしている。NPNトランジスタ172は、P−ウエル157をベースとし、P−ウエル157のN拡散層162をエミッタとし、N−ウエル層156をコレクタとしている。これらの寄生トランジスタとPMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14との関係は図3に示すようになっている。
【0055】
図3において、PNPトランジスタ171のベース電極はNPNトランジスタ172のコレクタ電極と共に抵抗素子4を介して電源2に接続されるとともに、PMOSトランジスタ5のドレイン電極Dに接続されている。PNPトランジスタ171のエミッタ電極は直接電源2に接続されている。また、NPNトランジスタ172のベース電極はPNPトランジスタ171のコレクタ電極と共に抵抗素子13を介して接地(GND)に接続されとともに、NMOSトランジスタ14のドレイン電極Dに接続されている。NPNトランジスタ172のエミッタ電極は直接接地(GND)に接続されている。
【0056】
つまり、PNPトランジスタ171とNPNトランジスタ172は、正帰還を持つサイリスタを構成しているが、これらのベース電位がPMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14によって制御可能になっている。
【0057】
さて、図1〜図3において、半導体装置であるCMOS集積回路に電源が入っていない状態において電極パッド3にサージ電圧などの外乱が印加されると、ドレイン電極DとバックゲートBとの間に形成されるダイオードによって電源(Vdd1)2の電圧が一時的に高電位になる場合がある。
【0058】
このような場合には、PMOSトランジスタ5の駆動電源である電源(Vdd2)7は、電源(Vdd1)2とは別電源であるので、PMOSトランジスタ5は、導通状態になることなく、電源(Vdd1)2の電圧が一時的に高電位になっている期間でも確実に非導通状態となる。図1(a)に示すインバータ6が電源(Vdd1)2を使用しないとした理由もこの動作を確実にするためである。
【0059】
したがって、電源(Vdd1)2の電圧が一時的に高電位になる場合には、PMOSトランジスタ1は、バックゲートBが抵抗素子4によって高インピーダンス状態になるので、当該半導体装置の輸送時や実装作業時にサージ電圧が印加される等の外乱があっても、PMOSトランジスタ1は、静電破壊から有効に保護される。
【0060】
また、半導体装置であるCMOS集積回路に電源が投入されると、PMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14は、それぞれ導通状態となり、PMOSトランジスタ1およびNMOSトランジスタ11は、それぞれバックゲートBが低インピーダンス状態になる。したがって、図3に示すように、寄生素子としてのPNPトランジスタ171とNPNトランジスタ172のベース・エミッタ間電圧の上昇が抑制されるので、それらがサイリスタとして動作することが抑圧され、ラッチアップ現象の発生が防止される。
【0061】
このように、実施の形態1によれば、電源が入っていない状態では、バックゲートを高インピーダンス状態に維持し、電源が投入されるとバックゲートを低インピーダンス状態に切り換えるようにしたので、サージ破壊や静電破壊を防止することができ、またラッチアップ破壊を防止することができる。
【0062】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。図4(a)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのPMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。図4(b)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのNMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。なお、図1(c)に対応するCMOSインバータは、図示省略した。
【0063】
なお、図4では、実施の形態1(図1)で示した構成と同一ないしは同等である構成部分には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0064】
図4に示すように、実施の形態2では、実施の形態1(図1)で示した構成において、遅延回路(DL)9,16が設けられている。それに伴い、電源は、単一の電源(Vdd1)2になっている。
【0065】
図4(a)において、遅延回路(DL)9は、インバータ6の出力端とPMOSトランジスタ5のゲート電極Gとの間に設けられている。また、遅延回路(DL)16は、電源(Vdd1)2とNMOSトランジスタ14のゲート電極Gとの間に設けられている。
【0066】
これらの遅延回路(DL)9,16は、例えば、抵抗素子とキャパシタ素子とで構成され、電源(Vdd1)2が一時的に高電位側に変化するときに、PMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14が、所定期間内確実に非導通状態を維持できるようにするために設けられている。
【0067】
この実施の形態2では、電源が入った状態では、実施の形態1と同様の動作が行われるので、説明を省略する。ここでは、電源が入っていない状態において電源(Vdd1)2が一時的に高電位側に変化するときの動作について説明する。
【0068】
半導体装置であるCMOS集積回路に電源が入っていない状態において電極パッド3にサージ電圧などの外乱が印加され、電源(Vdd1)2の電圧が一時的に高電位になる場合には、遅延回路(DL)9は、PMOSトランジスタ5のゲート電位が徐々に低レベルに到達するように、また遅延回路(DL)16は、NMOSトランジスタ14のゲート電位が徐々に高レベルに到達するように、電源(Vdd1)2の電位を遅延させてPMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14のゲート電極Gに伝達する。
【0069】
遅延回路(DL)9,16の遅延時間が、外乱印加時間よりも十分に長ければ、PMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14のゲート電極Gには、ON動作させる電圧は印加されないことになる。したがって、PMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14の駆動電源を保護対象であるPMOSトランジスタ1の電源と同じ電源(Vdd1)2を使用しても、PMOSトランジスタ5およびNMOSトランジスタ14は、電源電圧が一時的に高電位となる期間では、確実に非導通状態を維持することができる。つまり、半導体装置であるCMOS集積回路に電源が入っていない状態では、PMOSトランジスタ1およびNMOSトランジスタ11のバックゲートBを高インピーダンス状態に確実に設定することができる。
【0070】
このように、実施の形態2によれば、遅延回路を設けたので、単一の電源であっても、実施の形態1と同様に、電源が入っていない状態ではサージ破壊や静電破壊を防止することができ、また電源が入った状態ではラッチアップ破壊を防止することができる。
【0071】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。図5(a)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのPMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。図5(b)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成するMOSトランジスタのうちのNMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。なお、図1(c)に対応するCMOSインバータは、図示省略した。
【0072】
なお、図5では、実施の形態1(図1)で示した構成と同一ないしは同等である構成部分には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0073】
図5に示すように、実施の形態3では、実施の形態1(図1)で示した構成において、従来例(図10)で示したダイオード構成のサージ保護回路23,33が設けられている。この実施の形態3は、図7に示した本出願人の先の出願である半導体装置への適用例(その1)であるということができる。
【0074】
図5(a)において、サージ保護回路23は、2つのダイオードD1,D2の直列回路からなり、その順方向側端が電源(Vdd1)に接続され、逆方向側端が接地(GND)に接続され、2つのダイオードD1,D2の接続端がPMOSトランジスタ1のドレイン電極Dと電極パッド3との接続線に接続されている。
【0075】
また、図5(b)において、サージ保護回路33は、2つのダイオードD3,D4の直列回路からなり、その順方向側端が電源(Vdd1)に接続され、逆方向側端が接地(GND)に接続され、2つのダイオードD3,D4の接続端がNMOSトランジスタ11のドレイン電極Dと電極パッド12との接続線に接続されている。
【0076】
この構成によれば、電極パッド3,12にサージ電圧などの外乱が印加されると、ダイオードD1,D3がオン動作を行い、サージ電流がダイオードD1,D3を介して電源(Vdd1)2側に流れるので、PMOSトランジスタ1およびNMOSトランジスタ11の負担が軽減され、耐量を高めることができる。
【0077】
したがって、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、電源が入っていない状態ではサージ破壊や静電破壊を防止することができ、また電源が入った状態ではラッチアップ破壊を防止することができる。加えて、サージ保護回路を設けたので、電源が入っていない状態において保護対象であるMOSトランジスタの耐量を高めることができる。
【0078】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。図6(a)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成する2つのMOSトランジスタのうちのPMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。図6(b)は、半導体装置であるCMOS集積回路を構成する2つのMOSトランジスタのうちのNMOSトランジスタに対する静電破壊防止回路の構成例である。なお、図1(c)に対応するCMOSインバータは、図示省略した。
【0079】
なお、図6では、実施の形態2(図4)で示した構成と同一ないしは同等である構成部分には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0080】
図6に示すように、実施の形態4では、実施の形態2(図4)で示した構成において、従来例(図10)で示したダイオード構成のサージ保護回路23,33が設けられている。この実施の形態4は、図7に示した本出願人の先の出願である半導体装置への適用例(その2)であるということができる。
【0081】
サージ保護回路23,33の接続関係は、実施の形態3(図5)に示したのと同様である。また動作も、実施の形態3(図5)で説明したので、再述は省略する。
【0082】
したがって、実施の形態4によれば、実施の形態2と同様に、電源が入っていない状態ではサージ破壊や静電破壊を防止することができ、また電源が入った状態ではラッチアップ破壊を防止することができる。加えて、サージ保護回路を設けたので、電源が入っていない状態において保護対象であるMOSトランジスタの耐量を高めることができる。
【0083】
なお、各実施の形態で示したインピーダンス付与手段である抵抗素子としては、例えば、半導体層にて形成される抵抗体や、バックゲートを接地または電源に導く配線の抵抗成分などを用いることができる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、CMOS集積回路を構成するMOSトランジスタは、インピーダンス付与手段によってバックゲートに高インピーダンスが付与される。電源が投入されてない状態では、バックゲートは高インピーダンス状態を維持する。電源投入後においては、前記CMOS集積回路の電源で駆動されるスイッチによって、各MOSトランジスタに前記インピーダンス付与手段が付与する高インピーダンスが低インピーダンス化される。したがって、電源が投入されてない状態では、サージ破壊や静電破壊を防止することができ、また電源が投入されている状態では、ラッチアップ破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。
【図2】 図1(c)に示すCMOSインバータの内部構成と静電破壊防止回路の動作とを説明するための断面構造図である。
【図3】 図1に示す半導体装置の静電破壊防止回路によるサイリスタ動作抑圧を説明する図である。
【図4】 この発明の実施の形態2である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態3である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態4である半導体装置の静電破壊防止回路の構成を示す図である。
【図7】 本出願人が先に出願した静電破壊対策を施した半導体装置の構成を示す回路図である。
【図8】 図7に示す半導体装置の動作を説明するための断面構造図である。
【図9】 ラッチアップ現象を説明する回路図である。
【図10】 従来の静電破壊対策を施した半導体装置の一例を示す回路図である。
【図11】 図10に示す半導体装置の動作を説明するための断面構造図である。
【符号の説明】
1 PMOSトランジスタ、2 電源(Vdd1)、3,12,15 電極パッド、4,13 抵抗素子(インピーダンス付与手段)、5 PMOSトランジスタ(スイッチ)、6 インバータ、7 電源(Vdd2)、9,16 遅延回路(DL)、11 NMOSトランジスタ、14 NMOSトランジスタ(スイッチ)、23,33 サージ保護回路、150 CMOSインバータ、151 P−基板、152,153 P+拡散層、155 N+フローティング層、156 N−ウェル、157 P−ウェル、158 N+拡散層、159,160 P拡散層、161,162 N拡散層、171 寄生PNPトランジスタ、172 寄生NPNトランジスタ。

Claims (7)

  1. 電極パッドと、
    該電極パッドと電源端子との間に接続されるMOSトランジスタと、
    MOSトランジスタのバックゲートに対し第1のインピーダンスを付与するインピーダンス付与手段と、
    前記電源端子に電圧が印加された後、前記インピーダンス付与手段が付与する第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスにするように切換動作を行うスイッチと、
    を備えたことを特徴とする半導体装置の保護回路。
  2. 電極パッドと、
    該電極パッドと接地との間に接続されるMOSトランジスタと、
    該MOSトランジスタのバックゲートに対し第1のインピーダンスを付与するインピーダンス付与手段と、
    電源端子に電圧が印加された後、前記インピーダンス付与手段が付与する第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスにするように切換動作を行うスイッチと、
    を備えたことを特徴とする半導体装置の保護回路。
  3. 前記MOSトランジスタの信号電極と電極パッドとを接続する配線に接続されるサージ保護回路、を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の保護回路。
  4. 電極パッドと、
    該電極パッドと電源端子との間に接続される第1のMOSトランジスタと、
    該電極パッドと接地との間に接続される第2のMOSトランジスタと、
    該第2のMOSトランジスタのバックゲートに対し第1のインピーダンスを付与するインピーダンス付与手段と、
    前記電源端子に電圧が印加された後、前記インピーダンス付与手段が付与する第1のインピーダンスよりも低い第2のインピーダンスにするように切換動作を行うスイッチと、
    を備えたことを特徴とする半導体装置の保護回路。
  5. 前記第1のMOSトランジスタはPMOSトランジスタであり、前記第2のMOSトランジスタはNMOSトランジスタであることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の保護回路。
  6. 前記スイッチは、前記第2のMOSトランジスタと、前記接地との間に接続されるMOSトランジスタとからなり、前記電源端子に電圧が印加された後、該MOSトランジスタが導通状態になることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の保護回路。
  7. 前記電極パッドは出力電極パッドであり、前記第1のMOSトランジスタと前記第2のMOSトランジスタは、それぞれ出力MOSトランジスタであることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の保護回路。
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