JP4198264B2 - 化粧シート用フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家具類や建築物の内装材、建具の表面化粧、家電品向けのプラスチック化粧合板やプラスチック被覆鋼板等の化粧材用の樹脂製化粧シートに用いられるフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にプラスチック化粧合板のような化粧材は、下地材として合板等の木材や鋼板等を用いこれに、印刷・着色を施した単層または積層の樹脂シート(化粧シート)を貼り付けたものが多く用いられている。該積層樹脂シートは通常、透明な表面層、印刷及び/または着色を施した印刷層及び基材層を有しており、これらの各層は必要に応じて接着層を介して積層されている。
この化粧シートの素材としては、従来より意匠性や加工性に優れるという理由から塩化ビニル系樹脂が広く用いられていたが、近年になって、使用済み後の焼却廃棄処分の際に発生する塩化水素ガスの処理や用いる焼却炉の炉材の選択等の問題から、ポリオレフィン系樹脂からなる化粧シートが用いられるようになってきている。
しかし、ポリオレフィン系樹脂を使用した化粧シートは、折り曲げ時に白化する現象が大きく、例えばVカット、ラッピング等の加工において、折り曲げ白化による外観が低下し、商品価値を損なうという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
耐折り曲げ白化性、下地材等からの剥離性に優れる化粧シート用フィルムの提供。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、メタロセン系触媒を用いて重合して得られた(a)エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、(b)密度が0.87〜0.93g/cm 、(c)メルトフローレートが0.5〜50g/10分、かつ(d)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜5であるエチレン−α−オレフィン共重合体及び密度が0.94〜0.97g/cm である高密度ポリエチレンからなるフィルムであって、該エチレン−α−オレフィン共重合体と該高密度ポリエチレンの混合割合がエチレン−α−オレフィン共重合体/高密度ポリエチレン=5/95〜40/60(重量比)であり、該フィルムの引張弾性率が5000〜13000(kgf/cm)であり、引張降伏伸びが5〜15(%)であることを特徴とする化粧シート用フィルムに存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧シート用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂からなり、JISK 7127に従って測定した引張弾性率が、5000〜13000(kgf/cm2 )、好ましくは6500〜10000(kgf/cm2 )であり、JIS K 7127に従って測定した引張降伏伸びが5〜15(%)、好ましくは8〜13(%)のものである。引張弾性率が5000(kgf/cm2 )未満では下地材等からの剥離性に劣り、13000(kgf/cm2 )を超えると耐折り曲げ白化性に劣る。
また、引張降伏伸びが5(%)未満では耐折り曲げ白化性に劣り、15(%)を超えると下地材等からの剥離性に劣る。
【0006】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体や、エチレンを主成分とする、エチレンとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたポリエチレン等)、あるいは前記単独重合体及び/または共重合体と他の重合体との混合物(ポリマーブレンド)等が例示できる。この単独重合体及び/または共重合体と混合してポリマーブレンドを与えることのできる重合体としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴムや、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、及びスチレン−ブタジエン系やスチレン−イソプレン系等のスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。中でもスチレン−ブダジエン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは水素添加されたものが好ましい。混合する重合体の量は5〜80重量%が好ましい。
【0007】
本発明においては、ポリエチレン系樹脂の中でも特に、メタロセン系触媒を用いて重合して得られた(a)エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、(b)密度が0.87〜0.93g/cm3 、(c)メルトフローレートが0.5〜50g/10分、かつ(d)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められるMw/Mnが1.5〜5であるエチレン−α−オレフィン共重合体(以下「メタロセン系ポリエチレン」と記す)と、密度が0.94〜0.97g/cm3 である高密度ポリエチレンとの混合物、または、密度が0.94〜0.97g/cm3 である高密度ポリエチレンと熱可塑性エラストマー、特に水素添加されたスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーとの混合物を用いるのが下地材等からの剥離性が良いので特に好ましい。
【0008】
メタロセン系ポリエチレンの密度が0.87g/cm3 未満では、フィルムのブロッキングが発生し易く、0.93g/cm3 を超えるとフィルムの柔軟性が劣る。またメルトフローレートが0.5g/10分未満では高密度ポリエチレンへの分散性に劣り、50g/10分を超えるとフィルム表面へ吹き出し易い。
高密度ポリエチレンの密度が0.94g/cm3 未満では下地材等からの剥離性に劣る。密度が0.97g/cm3 を超えると耐折り曲げ白化性に劣る。
メタロセン系ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合割合は、メタロセン系ポリエチレン/高密度ポリエチレン=5/95〜40/60(重量比)の範囲で選ぶとよい。
【0009】
また、高密度ポリエチレンと熱可塑性エラストマーの混合割合は、高密度ポリエチレン/熱可塑性エラストマー=95/5〜60/40の範囲で選ぶと良い。
なお、メタロセン系触媒(シングルサイト触媒、カミンスキー触媒ともいう)とは、特開平3−163088号公報、特開平7−118431号公報、特開平7−148895号公報等に示されているような、メタロセン系遷移金属錯体と有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されて使用されることもある。
メタロセン系遷移金属錯体としては、例えばIVB族から選ばれる遷移金属(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)に、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、ジシクロペンタジエニル基、置換ジシクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、テトラヒドロインデニル基、置換テトラヒドロインデニル基、フルオニル基又は置換フルオニル基が配位子として1個または2個配位しているか、またはこれらのうちの2つの基が共有結合で架橋したものが配位しており、他に水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アセチルアセトナート基等の配位子を有するものが挙げられる。また、有機アルミニウム化合物としては、アルキルアルミニウムや鎖状もしくは環状のアルミノキサンが挙げられ、アルキルアルミニウムとしては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムフロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等が例示でき、また鎖状もしくは環状のアルミノキサンは上記のアルキルアルミニウムと水とを接触させて生成させることができ、例えば、重合持にアルキルアルミニウムを加えておき、後で水を添加するか、あるいは錯塩の結晶水または有機もしくは無機化合物の吸着水とアルキルアルミニウムとを反応させることによって得ることができる。
メタロセン触媒を担持させるための担体としては、シリカゲル、ゼオライト、或いは珪藻土等が例示できる。
【0010】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、共重合体、あるいは前記単独重合体及び/または共重合体と他の重合体との混合物(ポリマーブレンド)等が例示できる。該共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとの、ランダム共重合体またはブロック共重合体、あるいはポリオレフィン系の共重合体を幹ポリマーとしたプロピレンのグラフト共重合体等が例示できる。中でも、ランダム共重合体がフィルムの透明性及び柔軟性が良好となるので好ましい。このプロピレンと共重合可能なα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その一種または二種以上の混合物が用いられる。α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%、特に2〜6重量%とするのが好ましい。
【0011】
また、上記のプロピレンのグラフト共重合体の幹ポリマー用のポリオレフィン系共重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が例示できる。
プロピレンの単独重合体及び/または共重合体と混合してポリマーブレンドを与えることのできる重合体としては、上記したポリエチレン系樹脂に混合する重合体と同じものが挙げられるが、中でもスチレン−ブダジエン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは水素添加されたものが好ましい。混合する重合体の量は5〜80重量%が好ましく、特に20〜60重量%が好ましい。
【0012】
本発明の化粧シート用フィルムには、紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤を配合することが好ましい。
紫外線吸収剤の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部当たり、0.01〜10重量部が好ましく、特に0.05〜5重量が好ましい。配合量が0.01重量部未満では、褐色・劣化の防止効果が不十分となりやすく、10重量部を超えて使用しても、配合量に見合った効果が得られず、またブリードを起こす恐れがある。
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり0.01〜10重量部であるのが好ましい。配合量が0.01重量部未満では、安定化効果が不十分となる場合があり、10重量部を超えて使用しても、配合量に見合った効果が得られず、またブルームを起こす恐れがある。
【0013】
更に本発明の化粧シート用フィルムには、他の合成樹脂や必要に応じて酸化防止剤、スリップ剤、着色剤、充填剤、核剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲内で添加してもよい。また、これらの添加剤については、予め樹脂に高濃度で配合したもの(マスターバッチ)を用いるのが一般的である。
化粧シート用フィルムを製造するための方法としては、Tダイ押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法を用いればよく、特に限定されない。
化粧シート用フィルムの厚みは、その使用部位(単層で使用、または表面層用、印刷層用、基材層用等としての使用)や最終製品である化粧シートの層構成により異なるが、化粧シート全体の強度や後加工、あるいは取り扱い易さの点から0.05〜1mm、特に0.05〜0.50mmが好ましい。
このような化粧シートを合板や鋼板等の下地材に粘着剤、接着剤等を用いて積層することにより化粧材が得られる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例によって限定されるものではない。
<評価試験方法>
(1)メルトフローレート
JIS K 7210に従い、190℃、2.16kgf の条件で測定した。
(2)引張弾性率及び引張降伏伸び
あらかじめ110℃にて1時間加熱処理を施したフィルムを、JIS K 6732 図3に記載の形状・寸法の試験片として用い、JIS K 7127に従い50mm/分にて引張試験を行い引張弾性率及び引張降伏伸びを求めた。
(3)耐折り曲げ白化性:0℃の雰囲気中でフィルムを180度折り曲げたときの屈曲部分の白化の程度により、下記の基準で目視判定した。
○:白化なし
△:若干白化あり
×:白化著しい
(4)剥離性:実施例及び比較例の各フィルムの片面にエマルジョン系2液硬化型接着剤を塗工し、該片面に下地材として合板を貼着することによって化粧材を作成した。この化粧材を用いて、合板からフィルムを剥がし、その時の剥離の状態を、下記の基準で目視で判定した。
○:合板からきれいに剥がれる
△:若干フィルムが凝集破壊し合板上に残る
×:フィルムが凝集破壊し合板上に残る
【0015】
<実施例1〜、比較例1〜2>
下記に示した組成よりなる樹脂組成物を用いて、Tダイ押出し成形機(プラ技研(株)製 40mm径 コートハンガータイプ Tダイ:400mm巾)により、ダイス温度220℃の条件で、厚さ60μmのフィルムを作成した。得られたフィルムについて評価を行った。結果を表−1に記す。
樹脂組成物の組成
ポリオレフィン系樹脂 表−1参照
顔料(大日本インキ化学工業(株)製 酸化チタン系顔料) 10重量部
ヒンダードアミン系光安定剤(チバガイギー(株)製 チヌビン944)
0.1重量部
【0016】
【表1】
Figure 0004198264
【0017】
*高密度ポリエチレン:密度;0.96g/cm3、 MFR; 7g/10分
*メタロセン系ポリエチレン:密度;0.90g/cm3、 MFR; 4g/10分、
Mw/Mn;2.0
*水添SBR:スチレン比率10重量%
【0018】
【発明の効果】
本発明のフィルムは、耐折り曲げ白化性、下地材等からの剥離性に優れるため、化粧シート用フィルムとして好適に用いられる。

Claims (1)

  1. メタロセン系触媒を用いて重合して得られた(a)エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、(b)密度が0.87〜0.93g/cm 、(c)メルトフローレートが0.5〜50g/10分、かつ(d)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜5であるエチレン−α−オレフィン共重合体及び密度が0.94〜0.97g/cm である高密度ポリエチレンからなるフィルムであって、該エチレン−α−オレフィン共重合体と該高密度ポリエチレンの混合割合がエチレン−α−オレフィン共重合体/高密度ポリエチレン=5/95〜40/60(重量比)であり、該フィルムの引張弾性率が5000〜13000(kgf/cm)であり、引張降伏伸びが5〜15(%)であることを特徴とする化粧シート用フィルム。
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