JP3989749B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物、マスターバッチ、積層体及びそれらの製造方法 - Google Patents
ポリオレフィン系樹脂組成物、マスターバッチ、積層体及びそれらの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シーラント特性に優れ、かつアンチブロッキング性、滑性、臭いに優れるポリオレフィン系樹脂組成物、マスターバッチ組成物、そのシーラント及び基材層と該ポリオレフィン系樹脂組成物からなるヒートシール性に優れた積層体、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂は機械的特性、熱的特性、化学的特性、電気的特性などに優れ、かつ加工し易く、安価な樹脂であることから多方面にわたって広く用いられている。また、ポリオレフィン系樹脂は比較的低い温度でのヒートシールが可能であり、その主要用途の1つとして包装用フィルム、シーラントフィルムがあり、包装用フィルムなどはヒートシールできることが重要な条件の1つになっている。
また、積層フィルムのシーラントとして押出コーティングして使用されている。
【0003】
上記包装フィルムやシーラントフィルムには、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、線状低密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレンなどのポリオレフィン等が用いられ、一般的には紙、プラスチックなどの基材に、ドライラミネート法、ウエットラミネート法、サンドラミネート法などのラミネート法により積層されて用いられ、比較的低い温度でヒートシールが可能で、かつシール強度も高いので食品包装等の包装材料等に多用されている。これらフィルムは一般的に製袋され、製品として保管時等に積み重ねられた際に、フィルム同士がブロッキングを起こさないように、あるいはフィルム間の滑りが悪くなることの防止(作業性の向上)、袋の開口性をよくするためなどのために、これらポリオレフィンフィルムのシーラント層に抗ブロッキング剤(アンチブロッキング剤)を添加することが行われることがあり、アンチブロッキング剤としては、例えば架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、架橋ポリメタクリル酸メチル−スチレン共重合体、架橋シリコーン、架橋スチレン等の高分子ビーズ状粒子等の有機系アンチブロッキング剤、シリカ、タルク、合成アルミノシリケート、けい藻土等の無機系アンチブロッキング剤が用いられている。さらに一般的には、基材層にシーラント層をラミネートした後に、このシーラント層に例えばニッカリ粉等の澱粉を散布してシーラント層に滑性と袋の開口性を与えることが一般的に行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記、アンチブロッキング剤として、無機系のアンチブロッキング剤を用いた場合は、ラミネート加工時にアンチブロッキング剤がフィルム中に埋没して、充分なアンチブロッキング性が発揮されず、かつ透明性が低下するという問題を有している。また、特開平8−92428号公報、特開平8−92428号公報、特開平8−276551号公報、特開平8−277335号公報、特開平10−45959号公報においては、有機系のアンチブロッキング剤を用いた樹脂組成物やフィルムが示されている。また、特開平9−136390号公報には架橋PMMA樹脂等の有機系のアンチブロッキング剤と滑剤を併用したもの、あるいは特開2001−114904号公報には、特定の揮発成分を含む高分子微粒子のアンチブロッキング剤を含有してなるマスターバッチ、および特開2001−114952号公報にはその組成物等が開示されている。
【0005】
該特開2001−114904号公報では揮発成分が0.1〜20重量%、かつ粒径が15μm以下の細かい高分子微粒子のアンチブロッキング剤が用いられ、実施例ではポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂が用いたインフレーションフィルムが示されている。この際に用いられる架橋PMMAは揮発成分の調整のために熱処理温度が120℃前後と低いものである。このような低い温度で熱処理された架橋PMMAには揮発成分が存在し、320℃前後の高温で成形されるラミネート成形では、その揮発成分や架橋PMMAの熱分解物等が揮散して、低分子量成分の発生によるべとつき等が発生し、滑性や臭いの悪化、あるいはヒートシール強度の低下が避けられないという問題点を残している。
【0006】
また、本発明者らが市販の架橋PMMA樹脂を検討した結果、このような架橋PMMA樹脂をシーラント層に添加したラミネートフィルムは、フィルム間の滑りが悪く、滑剤を併用しても充分な滑性は得られないという問題を生じた。また、このラミネートフィルムは加工条件によって滑性が大きく変動して、取り扱いが困難となるという問題もあった。さらに、加工時にはフィルム温度が高くなると臭気を発生し、作業環境を悪化させるという問題もあった。
なお、上記のフィルム間の滑り(滑性)が悪くなるという現象は、他の有機系、無機系のアンチブロッキング剤を用いた場合も同様であった。
また、現状一般的に行なわれている、シーラント層にトウモロコシを主原料とする澱粉などの粉末をラミネートフィルムのシーラント層に散布する方法は加工工程において粉塵が発生し、作業環境を悪化させるという問題、あるいはカビや異物になり、製品の外観上にも悪影響を与えるという問題があった。本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、粉ふり作業を必要とせず、安定した滑りと、アンチブロッキング性、接着強度を発現できるシーラントに適したポリオレフィン系樹脂組成物、その組成物の製造方法、その組成物を用いた積層体、その積層体の製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物は、高圧ラジカル法エチレン(共)重合体または密度0.86〜0 . 97g/cm 3 の線状エチレン(共)重合体の群から選択される少なくとも1種のエチレン重合体100質量部と揮発分0.1質量%未満の架橋ポリメチルメタクリレート粒子0.05〜5質量部とを含むことを特徴とする。
また、前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子が280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理されてなることを特徴とする。
また、前記架橋ポリチルメタクリレート粒子が280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理後、50〜95℃の範囲で、かつ2〜72時間エージングされてなるものであることを特徴とする。
また、さらにポリオレフィン樹脂組成物に対して滑剤0.01〜5質量%を配合してなることを特徴とする。
また、前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子の粒径が、10〜60μmの範囲であるポリオレフィン系樹脂組成物であることを特徴とする。
【0008】
また、前記線状エチレン(共)重合体が、シングルサイト系触媒で得られたものであることを特徴とする。
また、前記線状エチレン(共)重合体が、下記(a)〜(d)の性状を有することを特徴とする。
(a)密度0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート0.01〜200g/10分
(c)分子量分布が1.5〜4.5
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足するものである
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0009】
また、前記ポリオレフィン系樹脂組成物がラミネート成形用であることを特徴とする。
また、密度0.91〜0.94g/cm3の高圧ラジカル法エチレン(共)重合体および/または密度0.86〜0.97g/cm3線状エチレン(共)重合体99〜60質量%と280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理してなる架橋ポリメチルメタクリレート粒子1.0〜40質量%とからなるマスターバッチであることを特徴とする。
また、製造方法が、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法であって、(1)ポリオレフィン系樹脂に少なくとも架橋ポリメチルメタクリレート粒子をブレンドした後、該架橋ポリメチルメタクリレート粒子を280℃以上、分解温度未満で熱処理すること、あるいは(2)あらかじめ架橋ポリメチルメタクリレート粒子を280℃以上、分解温度未満で熱処理した後に、ポリオレフィン系樹脂にブレンドすることを特徴とする。
また、シーラントフィルムが前記のポリオレフィン系樹脂組成物からなる、または前記のマスターバッチを用いてなることを特徴とする。
また、積層体が少なくとも基材層と、上記シーラントフィルムからなるシーラント層とを有することを特徴とする。
また、積層体の製造方法が前記積層体のシーラント層を、押出ラミネート法で形成することを特徴とする。
また、前記積層体を製造する際に、予め280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理後、50〜95℃で2時間以上エージングした架橋ポリメチルメタクリレート粒子を含有するシーラント層を使用することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂とは、高圧ラジカル法エチレン(共)重合体、イオン重合による密度0.86〜0.97g/cm3の線状エチレン(共)重合体、ポリプロピレン系樹脂の群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
上記高圧ラジカル重合法によるエチレン(共)重合体としては、高圧ラジカル重合法によるエチレン単独重合体(低密度ポリエチレン)、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体等が挙げられる。
【0012】
上記低密度ポリエチレンは公知の高圧ラジカル重合法により製造される。高圧ラジカル重合法は、チューブラー法、オートクレーブ法のいずれでもよい。
高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレン(LDPE)は、メルトフローレート(以下、MFRと記す)が0.01〜200g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。また、密度は0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.91〜0.935g/cm3 の範囲である。メルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、分子量分布(Mw/Mn)は、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。
【0013】
また、上記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造され、エチレンと、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらのビニルエステル単量体中で特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。前記エチレン・ビニルエステル共重合体としては、エチレン50〜99.5質量%、ビニルエステル0.5〜50質量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5質量%からなる共重合体が好ましい。さらにビニルエステル含有量は3〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の範囲で選択される。
また、MFRは、0.01〜200g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。
【0014】
さらに、上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられる。これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲である。具体的には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−無水マレイン−酸(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体金属塩(アイオノマー)等が挙げられる。これらのMFRは、0.01〜200g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。
また、これらエチレン(共)重合体の中でも高圧ラジカル法低密度ポリエチレンが、成形加工性、経済性等に優れることから最も好適に用いられる。
【0015】
また、線状エチレン(共)重合体とは、例えばチーグラー系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン系触媒等を用いたイオン重合により得られるもので、本発明で用いられる密度0.86〜0.97g/cm3の線状エチレン(共)重合体としては、高・中・低圧法およびその他の公知の方法によって得られる密度0.86〜0.91g/cm3未満の超低密度ポリエチレン、密度0.91〜0.94g/cm3未満の線状低密度ポリエチレン、密度0.94〜0.97g/cm3の高密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0016】
上記チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体は、密度0.94〜0.97g/cm3 の高密度ポリエチレン、密度が0.91〜0.94g/cm3 の線状低密度ポリエチレン(以下LLDPEと称す)、密度が0.86〜0.91g/cm3 の超低密度ポリエチレン(以下VLDPEと称す)、密度が0.86〜0.91g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを包含する。
【0017】
上記チーグラー型触媒によるLLDPEとは、密度が0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.91〜0.93g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、MFRは0.01〜200g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
【0018】
また、上記チーグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.86〜0.91g/cm3 、好ましくは0.88〜0.905g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。また、MFRは0.01〜200g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。
【0019】
また、上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとは、密度が0.86〜0.91g/cm3 未満のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、該エチレン・プロピレン系ゴムとしては、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0020】
本発明のポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体等が挙られる。
【0021】
これらの中でも、特に下記(a)〜(d)の性状を有する線状エチレン(共)重合体(A)が高速成形性、低温ヒートシール性、衝撃強度、耐熱性等に優れることから好ましい。
(a)密度0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート0.01〜200g/10分
(c)分子量分布が1.5〜4.5
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足するものである。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0022】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)とは、エチレンの単独重合体またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。ここで、α−オレフィンとは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜12のものであり、具体的には、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0023】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)の(a)密度は、0.86〜0.97g/cm3 、好ましくは、0.89〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.90〜0.93g/cm3 の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満のものは、剛性(腰の強さ)、耐熱性が劣るものとなる。また、0.97g/cm3 を超えるものは機械的強度に懸念が生じ、かつ工業的に効率よく生産することに難点を生じる懸念がある。
【0024】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)の(b)MFRは、0.01〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜80g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では成形加工性が劣り、200g/10分を超えると引裂強度、耐衝撃性等が劣る虞が生じる。
【0025】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)の(c)分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4.5の範囲、好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では成形加工性が劣り、4.5を超えるものは引裂強度、耐衝撃性等が劣る虞が生じる。
【0026】
ここで、線状エチレン(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0027】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)は、例えば図1に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足するものである。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足する場合には、低温ヒートシール性、接着強度が良好となる。
【0028】
また、本発明における線状エチレン(共)重合体(A)は、さらに下記(e)の要件を満足することが好ましい。
(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足すること
(式2) d<0.950g/cm3のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3のとき
T75−T25≧0
上記(式2)の関係を満足する場合には、低温ヒートシール性、ホットタック性等が向上するものとなる。
【0029】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)は、図2に示される一般のメタロセン触媒によって得られる従来の線状エチレン(共)重合体とは、(式2)の関係式によって明確に区別される。
【0030】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)は、さらに後述の(f)および(g)の要件を満足する線状エチレン(共)重合体(A1)、または、さらに後述の(h)および(i)の要件を満足する線状エチレン(共)重合体(A2)のいずれかであることが好ましい。
【0031】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A1)の(f)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRは、下記(式3)および(式4)の関係を満足しており、
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+1.0
の関係を満足しており、さらに好ましくは、d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+0.5
の関係を満足している。
【0032】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、ポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、ろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0033】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン(共)重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。また、低分子量成分は成形時の発煙の原因ともなる。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0034】
また、本発明における線状エチレン(共)重合体(A1)は、図2に示すように、(g)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピークのうち高温側の温度は85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、フィルムの耐熱性および剛性が向上する。
【0035】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料を試料濃度が0.05質量%となるように加え、135℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着させる。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析できるため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0036】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A2)は、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの具体例としては1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げら、炭素数が4〜10のものが好ましい。また、これらのα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0037】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A2)は、図4に示すように、(h)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであり、かつ(i)融点ピークを1ないし2個以上有し、かつそのうち最も高い融点Tm1と密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tm1≧150×d−19
融点Tm1と密度dが上記(式5)の関係を満足すると、耐熱性、ヒートシール性等のバランスのよいものとなる。
【0038】
また、線状エチレン(共)重合体(A2)の中でも、さらに下記(j)の要件を満足する線状エチレン(共)重合体が好適である。
(j)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、フィルム成形等の成形加工性が良好なものとなる。
【0039】
ここで、線状エチレン(共)重合体(A1)は、図2に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊な線状エチレン(共)重合体である。一方、図3は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、実質的にピークを1個有する線状エチレン(共)重合体を示したものであり、従来の典型的なメタロセン系触媒による共重合体がこれに該当する。また、図4の本発明の線状エチレン(共)重合体(A2)はTREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒による共重合体は上述のように(式2)を満足していないことから明確に区別されるものである。
【0040】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)は、前記のパラメーターを満足すれば触媒、製造方法等に特に限定されるものではないが、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に、エチレンを単独重合、またはエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られる線状のエチレン(共)重合体であることが望ましい。このような線状のエチレン(共)重合体は、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
【0041】
本発明においては線状のエチレン(共)重合体がシングルサイト系触媒で得られたものであることが好ましく、このシングルサイト系触媒としては、従来の典型的なメタロセン触媒の他に、CGC触媒等が挙げられ、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒が挙げられるが、特に本発明の線状エチレン(共)重合体(A)の製造は、以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で重合することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物(式中Me1 ジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0042】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-r で表される化合物の式中、Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示す。これらの遷移金属の種類は1種類に限定されるものではなく、複数種を用いることもできる。中でも、耐候性に優れる共重合体が得られるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。pおよびqはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0043】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0044】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-n で表される化合物の式中、Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0045】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0046】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上持ち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0047】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0048】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4-L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0049】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、ブチルシクロヘプタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエンとインデン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエンとインデン、プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエンシクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン、メチルシクロペンタジエントリメチルシランなどが挙げられる。
【0050】
本発明においては、a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物および/またはホウ素化合物が使用される。
Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物の具体例としては、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより得られる、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。この変性有機アルミニウムオキシ化合物としては、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有するものが挙げられる。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0051】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0052】
ホウ素化合物としては、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。中でも、N,N_−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボランが好適である。
【0053】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2 −MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0054】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0055】
本発明におけるエチレン(共)重合体(A)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2 G、好ましくは常圧〜20kg/cm2 Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2 G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0056】
本発明における線状エチレン(共)重合体(A)の製造は、特に、上述の触媒成分の中に(k)塩素等のハロゲンを含まない触媒を使用して製造することにより、ハロゲン濃度としては10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(ND:2ppm以下)ものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーの線状エチレン(共)重合体を用いることにより、従来のような酸中和剤(酸吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性、衛生性が優れ、特に食品用包装材料等の分野において好適に活用される積層体および容器を提供することができる。また、ハロゲンフリーの線状エチレン(共)重合体を用いることにより、ステアリン酸カルシウムを添加する必要もなくなる。そのため、ステアリン酸カルシウムによる接着阻害がなく、層間の接着強度の良好な積層体を提供することができる。
【0057】
本発明における好ましい態様としては、線状エチレン(共)重合体(A)100〜10質量%および他のポリオレフィン(B)0〜90質量%を含有する樹脂組成物であり、好ましくは、線状エチレン(共)重合体(A)95〜50質量%および他のポリオレフィン(B)5〜50質量%、より好ましくは線状エチレン(共)重合体(A)90〜60質量%、他のポリオレフィン(B)10〜40質量%を含有する樹脂組成物である。このような構成とすることにより、シーラントフィルムの接着強度、低温ヒートシール性、ホットタック性等の性能を向上させることが可能となる。また、これら他のポリオレフィン(B)の中で、高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレンが最も好ましい。
【0058】
本発明において用いられる架橋ポリメチルメタクリレート(以下PMMAと称す)粒子は、好ましくは280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理してなる架橋PMMAを選択することにより、上記本発明の目的を解決することが可能である。市販の架橋PMMAは一般的に重合により生じる低分子量成分等の揮発分を包含し、かつラミネート成形時の高温(300〜320℃)にさらされるため架橋PMMAの熱分解物が発生し、滑性の低下、臭いの発生、ヒートシール強度の低下等が生じる。そこで、架橋PMMA粒子を加熱処理温度280℃以上、好ましくは300℃以上、分解温度未満で加熱処理や、真空下での加熱処理、あるいは架橋PMMAと組成物を混合後/組成物化後に加熱処理等を行い、揮発分、熱分解物の除去を行い、揮発分が架橋PMMAに対して0.1質量%未満、好ましくは分析によって検知できない状態とすることが望ましい。本発明では加熱処理温度280℃以上、好ましくは300℃以上の高温処理して上記低分子量成分や熱分解物等の揮発分を排除することが可能となり、320℃前後のラミネート成形においても、架橋PMMAの熱分解物が発生せず、アンチブロッキング性、滑性、臭い、ヒートシール強度を大幅に向上させることが可能となったものである。
【0059】
また、本発明のポリオレフィン樹脂組成物もしくは、架橋PMMAは、上記加熱処理した後に、50〜95℃、好ましくは70〜90℃、さらに好ましくは75〜85℃の範囲で、2時間以上、好ましくは2〜120時間、より好ましくは12時間〜114時間、さらに好ましくは24〜72時間くらいの範囲で、エージング(乾燥状態)することが望ましい。このようなエージングを行うことにより、熱分解物等が完全に分離脱着され、滑性が良好で、安定的な運転が可能となるばかりでなく、ヒートシール強度が向上し、かつ臭気のない製品ができる。
上記揮発分、熱分解物等の滑性や臭気を悪化させる要因を除去する方法としては、市販架橋PMMAを熱処理する方法、または溶媒によって抽出除去する方法、真空処理法、架橋PMMAの製造時に精製して低分子量成分等を排除する方法等がある。この中でも、安価で効率的な点で熱処理方法が好ましい。
すなわち、架橋PMMA粒子を280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理した後に低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂に添加する方法、あるいは架橋PMMA粒子をポリオレフィン系樹脂などに添加した後に同様の条件で熱処理する方法を採用することができ、これにより、実質的に揮発分がない状態としたものである。このポリオレフィン系樹脂組成物に含まれるアンチブロッキング剤濃度は、ポリオレフィン系樹脂100質量部あたり0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜2質量部の範囲であることが好ましい。
【0060】
このアンチブロッキング剤は、予め高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などに高濃度に添加したマスターバッチを調製し、このマスターバッチと前記ポリオレフィン系樹脂をブレンドして所定のアンチブロッキング剤濃度としてもよい。マスターバッチ用のベースレジンとしては、密度0.91〜0.94g/cm3の高圧ラジカル法低密度ポリエチレンおよび/または密度0.86〜0.97g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体(EPR、VLDPE、LLDPE、HDPEを包含する)などを用いることができるが、好ましくは、シングルサイト触媒による線状エチレン(共)重合体をベースレジンとして用いることが好ましい。配合比は、ベースレジン99.5〜60質量%と架橋ポリメチルメタクリレート粒子1.0〜40質量%とからなる実質的に揮発分のないポリオレフィン系樹脂組成物で構成することが望ましい。さらに、好ましくは、前記ベースレジン98〜70質量%、架橋ポリメチルメタクリレート粒子2〜30質量%、さらに好ましくはベースレジン97〜80質量%、架橋ポリメチルメタクリレート粒子3〜20質量%の範囲で選択されることが望ましい。
【0061】
本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子は、ポリメチルメタクリレート、多官能性のモノマー成分、或いはさらにエチルアクリレートなどのアクリレート成分を含む共重合体粒子を架橋させたものであり、このような粒子は、上記の組成になるように構成したモノマー混合物を懸濁重合し、架橋処理することにより得ることができ、粒径は、分散剤の種類、量、攪拌速度を適宜選択することにより所望の粒径のものにすることができる。本発明のラミネート法においては、粒径が1μm〜100μmのビーズ状のものが使用可能である。特に低密度ポリエチレンに対しては、アンチブロッキング性、滑性などが著しい効果がある点で10〜60μmの範囲が好ましく、また、LLDPEに対しては10μm前後が好ましい。また、上記粒径が1μm未満では、アンチブロッキング性の効果が上がらず、100μmを超えるものは接着強度が低下する虞が生じる。
【0062】
本発明のポリオレフィン系組成物には、さらにスリップ性を改良するために滑剤を併用することが望ましい。このような滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤が好ましく用いられる。滑剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂組成物あたり、0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。該使用量が0.01質量%未満では配合効果が発揮できず、5質量%を超える場合はシーラントフィルムの接着強度、透明性等を損なう虞が生じる。
【0063】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は線状エチレン(共)重合体(A)を含むことが好ましく、以下、線状エチレン(共)重合体(A)を含むオレフィン系樹脂組成物について説明する。
線状エチレン(共)重合体(A)を含むオレフィン系樹脂組成物は、理由は明確でないが、低温成形が可能であり、オゾン処理などの表面処理が効きやすい。上記低温成形を行えば、熱による樹脂の劣化が起きにくく、酸化防止剤を添加する必要がなくなる利点を有し、クリーンな製品を提供することができる。また、低温で成形されることにより、樹脂のブロッキング性能も低下するので、アンチブロッキング剤などが極少量の添加でよいという利点も有する。
【0064】
また、本発明の線状エチレン(共)重合体(A)は、上述の触媒成分の中に(k)塩素等のハロゲンのない触媒を使用することにより、ハロゲン濃度としては10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない(2ppm以下、ND:Non−Detect)のものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーの線状エチレン(共)重合体を用いることにより、従来のような酸中和剤(ハロゲン吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性に優れるクリーンなポリオレフィン系樹脂組成物、成形品を提供することができる。
【0065】
また、ハロゲンを含まない触媒を用いて製造された線状エチレン(共)重合体(A)は、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト等の酸吸収剤を添加する必要がない。これらの添加剤の配合は接着強度を阻害する場合があるが、本発明ではこのような弊害も排除することが可能である。さらに、従来の成形温度もしくはそれより高温で成形した場合においても、本質的に低分子量が少ないことから、発煙や臭気の発生を抑えることができる。
【0066】
線状エチレン(共)重合体(A)を含むポリオレフィン系樹脂組成物は、280℃以上、分解温度未満で熱処理した架橋PMMAをアンチブロッキング剤として使用し、場合により、50〜95℃で2〜120時間(5日間)エージングし、組成物中の揮発分が実質的になく、本質的に内容物に対して悪影響を与えることがない。したがって、食品分野、医療分野、電子分野等の用途によっては(l)公知の添加剤、例えば酸吸収剤、酸化防止剤および滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、有機系あるいは無機系顔料、造核剤、架橋剤などの添加剤がなんら含まないことが望ましい。他の添加剤を使用する場合においても、その添加剤が実質的に外部に溶出しない添加剤もしくは内容物に影響を与えない添加剤を使用することが好ましい。ここで、内容物に影響を与えない添加剤とは、線状エチレン(共)重合体(A)を含むオレフィン系樹脂組成物からなる積層体を容器とした際に、容器の内容物に、臭気、溶出成分(オフフレーバー)が移行することがない添加剤のことである。
本発明においては、外部に溶出してしまうような添加剤、例えば、内容物が液体の場合は、該液体に溶出されてしまうような添加剤、臭気が移行してしまう添加剤、あるいは時間とともにフィルム表面に偏在するような添加剤が線状エチレン(共)重合体(A)を含む樹脂材料に含まれていないことにより、クリーンな積層体、容器を提供することが可能となる。特に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、シーラントフィルムとして好適に用いることができる。
【0067】
次に、本発明の積層体について説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。この積層体10は、基材からなる基材層11と、該基材層11に接し、前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラント層12とを有して概略構成されるものである。
【0068】
本発明における基材層に用いられる基材とは、フィルムまたはシート、板状体等を包含するものである。このような基材としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフィルム、シートを包含する)、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等が用いられる。
【0069】
なお、本発明においては、シーラント層は、ヒートシール性能、滑性、アンチブロッキング性等に悪影響を与えない範囲で、帯電防止性能を有していてもよい。該シーラント層に帯電防止性能を付与する方法としては、シーラント層に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物に帯電防止剤を練り込むか、または、シーラント層表面に帯電防止剤を塗工する方法が挙げられる。
練り込む場合の帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、燐酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;アミドカチオン等のカチオン系帯電防止剤;アルキベタイン等の両性系帯電防止剤;脂肪酸モノグリセリド、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン等の非イオン系帯電防止剤;導電性微粉末等が挙げられる。
【0070】
また、塗工する場合の帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;アシル塩化コリン、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系帯電防止剤;イミダゾリン型、アラニン型等の両性系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン系帯電防止剤;導電性微粉末分散溶液等が挙げられる。
表面に塗工する方法としては、帯電防止剤を含む塗布液あるいは懸濁液に必要に応じて水または有機溶剤等を加えてフィルム上に塗布、加熱乾燥する方法が挙げられる。塗布は、例えば、エアーナイフコート法、カーテンコート法、グラビアコート法またはスプレーコート法等公知の塗布方法で行うことができる。
【0071】
このようにして得られた帯電防止性処理済みのシーラント層の表面抵抗率は、101〜1012Ω/□の範囲が一般的であり、106〜1012Ω/□の範囲が好ましく、さらに108〜1012Ω/□が好ましい。帯電防止剤としては、フィルムの透明性を著しく損なわないことからアニオン系、カチオン系、両性系、非イオン系等の帯電防止剤が好ましく、また、帯電防止処理方法としては、使用量が比較的少量で済むことから、表面に塗工する方法が好ましい。
【0072】
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明においては、前記基材層の上に、好ましくは前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラント層を押出ラミネートにより形成する。
基材上へポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラント層を押出ラミネートする際の成形温度は、250〜330℃の範囲、好ましくは280〜320℃、さらに好ましくは300〜330℃の範囲である。また、特に300℃程度以下の比較的低温でのラミネート時には、基材との貼り合せ面の溶融樹脂を空気、オゾン等で酸化させておくことが望ましい。また、基材においても貼り合せ面をコロナ放電処理等の表面処理することが望ましい。
上記成形温度が250℃未満では接着強度が充分でない場合が生じ、330℃を超える場合には、樹脂の劣化等が生じ好ましくない。
【0073】
上記オゾン処理量は、基材の種類、条件等により、異なるものの、5g/Nm3×1Nm3/hr〜100g/Nm3×20Nm3/hrの範囲、好ましくは10g/Nm3×1.5Nm3/hr〜70g/Nm3×10Nm3/hr、さらに好ましくは15g/Nm3×2Nm3/hr〜50g/Nm3×8Nm3/hrの範囲で選択される。また、コロナ放電処理量は、1〜300w分/m2 の範囲、好ましくは5〜200w分/m2 、さらに好ましくは10〜100w分/m2 の範囲で選択されることが望ましい。特に、オゾン処理とコロナ放電処理を併用することにより、接着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0074】
ポリオレフィン系樹脂組成物が280℃以上、分解温度未満、好ましくは300〜325℃の範囲で熱処理された適度の粒径(20〜60μm)を有する架橋ポリメチルメタクリレート粒子からなるアンチブロッキング剤を含有している場合は、これを用いて得られる積層体においては、無機系アンチブロッキング剤を用いたときのような、ラミネート時のアンチブロッキング剤の埋没が少ない。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は280℃以上で熱処理をした架橋PMMAは、ラミネート成形温度300〜320℃で成形した際に架橋PMMAの熱分解物等により滑性、臭い、ヒートシール強度等の低下がない。
したがって、熱処理をしない有機系アンチブロッキング剤を用いたときに見られるラミネート加工時における臭気の発生が少なく、ラミネートフィルムの滑性が改善される。しかも従来よく見られた加工条件による滑性の変動が大幅に低減する。特に加熱処理後にエージングを行うことによりその効果が著しいものである。
【0075】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物として上述のようなアンチブロッキング剤と滑剤を含有するものは、これを用いて得られるラミネートフィルムは充分な滑性を有し、その積層体の製造工程において、従来のようにラミネート加工後、ニッカリ粉を散布する必要がなく、加工工程における粉塵問題を解消でき、工場内の環境を改善できる。
【0076】
また、シーラント層を構成するベースレジンにアンチブロッキング剤や滑剤を添加すると、シーラント層の基材層への接着強度が低下するが、ポリオレフィン系樹脂組成物を構成するベースレジンのその一部に、シングルサイト系触媒で得られる線状エチレン(共)重合体(A)を含むものにすると、これを用いて得られる積層体のシーラント層と基材層との接着強度が向上する。
【0077】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法によれば、アンチブロッキング剤のマスターバッチを作るという工程で、架橋ポリメチルメタクリレートの熱処理を行うことができ、アンチブロッキング剤を均一にポリオレフィン系樹脂組成物中に混合でき、アンチブロッキング剤の濃度調節も容易となる。
【0078】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
【0079】
[TREF]
カラムを135℃に保った状態で、カラムに試料を注入して0.1℃/分で25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。(溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:50℃/hr、検出器:赤外分光器(波長2925cm-1)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:0.05質量%)
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃まで昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
【0080】
[ODCB可溶分量]
試料0.5gを20mlのODCBに加え、135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却した。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターで濾過して濾液を採取した。赤外分光器により、試料溶液である濾液におけるメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により、濾液中の試料濃度を算出した。この値より、25℃におけるODCB可溶分量を求めた。
【0081】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
【0082】
[滑性=tanθ]
JIS−P8147およびASTM−D4521に準拠
傾斜板に載せた、サンプルのシール面を外向きに巻き付けたブロックが、傾斜角の増加によって、サンプルのシール面を上向きに貼り付けた斜面を滑り始める角度のtanθを求め、摩擦係数とした。この数値が小さいほど滑性が良好である。
【0083】
[接着強度]
基材層とシーラント層からなる積層体を40℃で48時間エージングした後に、積層体から15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、JIS K6854に準拠して、引張速度300mm/分の条件でT剥離を行い、基材層とシーラント層の間の剥離強度を測定し、この剥離強度を接着強度とした。
[ヒートシール強度=ヒートシール性(HS性)]
5mm幅×30cm長さのシールバー(上側)とシリコンゴム(下側)を有するヒートシーらーを用いて、上面シールバーのみを所定の温度にて加熱し、シール時間1秒、シール圧力0.2MPa(ゲージ読み)にてシール層同士をヒートシールした。上記シールの長手方向に直角に15mm幅の短冊状にサンプルを切り出し、引張速度300mm/minの条件で剥離し、ヒートシール強度を測定した。
【0084】
[官能臭気]
20cm×20cmの袋をヒートシールにて作成し、70℃のオーブン中で3時間加熱し、24時間室温にて養生した後に袋の角の一端を鋏でカットし、臭いを嗅いだ。
○―――添加剤臭がなく良好。
△―――若干添加剤臭あるが不快臭なし。
×―――添加剤臭があり不快。
【0085】
実施例に用いた各種成分は以下の通りである。
線状エチレン(共)重合体(A11)は次の方法で重合したものを用いた。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(イ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン22gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(イ)を得た。
【0086】
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(イ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、線状エチレン(共)重合体(A11)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0087】
線状エチレン(共)重合体A(12)は次の方法で重合したものを用いた。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ロ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )31gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリイソブチルアルミニウム127gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424mlを添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ロ)を得た。
【0088】
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ロ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給しての重合を行い、線状エチレン共重合体(A12)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0089】
線状エチレン(共)重合体(A2)は次の方法で重合したものを用いた。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ハ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン74gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン78gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2133ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ハ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ハ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、線状エチレン共重合体(A2)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0090】
[メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)の製造]
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=200)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を8kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)を製造した。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0091】
市販のチーグラー系触媒による線状低密度ポリエチレン(A4)
(LLDPE)密度:0.910g/cm3、MFR:10g/10分、
コモノマー:4−メチル−ペンテン−1
上記線状エチレン(共)重合体の物性を表1に示した。
[市販の高圧ラジカル重合法による分岐状低密度ポリエチレン(LDPE1)]
密度:0.918g/cm3、MFR:20g/10分、
商品名:ジェイレックスJH807A、日本ポリオレフィン(株)製[市販の高圧ラジカル重合法による分岐状低密度ポリエチレン(LDPE2)]
密度:0.918g/cm3、MFR:12g/10分、粉砕パウダー
商品名:ジェイレックスL211、日本ポリオレフィン(株)製
[市販の高圧ラジカル重合法による分岐状低密度ポリエチレン(LDPE3)]
密度:0.919g/cm3、MFR:8.0g/10分、
商品名:ジェイレックスJH607C、日本ポリオレフィン(株)製
【0092】
添加剤は、以下のものを用いた。
[アンチブロッキング剤]
架橋ポリメチルメタクリレート粒子:ガンツ化成(株)製
[滑剤]
エルカ酸アミド:日本油脂(株)製
【0093】
【表1】
【0094】
〔マスターバッチの作成〕
(1)LDPE1のペレット88質量%、LDPE2のパウダー10質量%および予め市販の粒径が40μmの架橋PMMAを加熱処理(300℃)して揮発分0.1質量%未満の架橋PMMA粒子2質量%をタンブラーミキサーにて混合し、田辺工業製50mmφ押出機を使用してペレタイズを行い、架橋PMMAのマスターバッチ(MB1)を作成し、表2に示した。
(2)LDPE1のペレット80質量%、LDPE2のパウダー10質量%および上記の架橋PMMAの濃度を10質量%として加熱処理(310℃)して揮発分0.1質量%未満の同様にしてPMMAのマスターバッチ(MB2)を作成し、表2に示した。
(3)LDPE1のペレット88質量%、LDPE2のパウダー10質量%および予め市販の粒径が20μmの架橋PMMAを加熱処理(310℃)して揮発分0.1質量%未満の架橋PMMA粒子2質量%をタンブラーミキサーにて混合し、田辺工業製50mmφ押出機を使用してペレタイズを行い、PMMAのマスターバッチ(MB3)を作成し、表2に示した。
【0095】
(4)LDPE1のペレット88質量%、LDPE2のパウダー10質量%および予め市販の粒径が60μmの架橋PMMAを加熱処理(310℃)して揮発分0.1質量%未満の架橋PMMA粒子2質量%をタンブラーミキサーにて混合し、田辺工業製50mmφ押出機を使用してペレタイズを行い、PMMAのマスターバッチ(MB4)を作成し、表2に示した。
(5)LDPE1のペレット88質量%、LDPE2のパウダー10質量%および予め市販の粒径が7μmの架橋PMMAを加熱処理(310℃)して揮発分0.1質量%未満の架橋PMMA粒子2質量%をタンブラーミキサーにて混合し、田辺工業製50mmφ押出機を使用してペレタイズを行い、PMMAのマスターバッチ(MB5)を作成し、表2に示した。
(6)LDPE1のペレット88質量%、LDPE2のパウダー10質量%および予め市販の粒径が40μmの架橋PMMAを加熱処理(270℃)した2質量%をタンブラーミキサーにて混合し、田辺工業製50mmφ押出機を使用してペレタイズを行い、架橋PMMAのマスターバッチ(MB6)を作成し、表2に示した。
【0096】
[実施例1]
ベースレジン(LDPE3)95質量%と架橋PMMAマスターバッチ(MB1)5質量%とを合わせたものに対して、スリップ剤(エルカ酸アミド)が0.055質量%になるようにスリップ剤マスターバッチを添加し、タンブラーミキサーで混合したものを田辺工業製50mmφ押出機を用いてペレタイズを行ない、組成物1を得、このときの揮発成分量を測定した。
この組成物1を用いて、90mmφ押出ラミネーター(SHIモダンマシナリー:L/D=32)にて、PET#12/LDPE(15μ)/AL#7貼り合せ基材上に、樹脂温度Tダイ直下317℃でブタジエン系アンカーコート剤を使用してライン速度150m/min、コーティング厚さ25μmで押出コーティングした。
得られた積層サンプルを、AL面とシーラント層の接着強度、シーラント面の滑性、ヒートシール強度(HS性)について評価した。結果を表3に示すが、充分な接着強度が得られており、良好な滑性とヒートシール性を兼ね備えるものであった。さらに臭気についても良好であった。
【0097】
[実施例2]
架橋PMMAのマスターバッチ(MB2)を用いて、組成物製造時のマスターバッチ添加量を1質量%とし、組成物2とした他、コーティング厚みを15μmとした以外は実施例1と同じ操作を行なった。結果を表3に示す。充分な接着強度と共に、良好な滑り性とヒートシール性を兼ね備え、臭気についても良好であった。
【0098】
[実施例3]
コーティング厚みを30μmとした以外は、実施例2と全く同じ操作を行なった。結果を表3に示す。接着強度、ヒートシール性、スリップ性、臭気何れも問題なかった。
【0099】
[実施例4]
コーティング厚みを40μmとした以外は、実施例2と全く同じ操作を行なった。結果を表3に示す。接着強度、ヒートシール性、スリップ性、臭気何れも問題なかった。
【0100】
[実施例5〜9]
線状エチレン(共)重合体(A11)、(A12)、(A2)、(A3)、(A4)の各75質量%、低密度ポリエチレン(LDPE3)20質量%と架橋PMMAマスターバッチ(MB2)5質量%とを合わせたものに対して、スリップ剤(エルカ酸アミド)が0.055質量%になるようにスリップ剤マスターバッチを添加し、タンブラーミキサーで混合したものを田辺工業製50mmφ押出機を用いてペレタイズを行ない、各々組成物(3〜7)を得た。
この組成物を用いて、90mmφ押出ラミネーター(SHIモダンマシナリー:L/D=32)にて、PET#12/LDPE(15μ)/AL#7貼り合せ基材上に、樹脂温度Tダイ直下297℃でオゾン処理(30g/Nm3,3Nm3/hr)を併用しつつ、ブタジエン系アンカーコート剤を使用してライン速度150m/min、コーティング厚さ15μmで押出コーティングした。
得られた積層サンプルを、AL面とシーラント層の接着強度、シーラント面の滑り性、ヒートシール強度について評価した。結果を表2に示すが、充分な接着強度が得られており、良好な滑り性とヒートシール性を兼ね備えるものであった。さらに臭気についても良好であった。
【0101】
[実施例10、11]
ベースレジン(LDPE3)95質量%と各架橋PMMAマスターバッチ(MB3、4)5質量%とを合わせたものに対して、スリップ剤(エルカ酸アミド)が0.055質量%になるようにスリップ剤マスターバッチを添加し、タンブラーミキサーで混合したものを田辺工業製50mmφ押出機を用いてペレタイズを行ない、各々組成物(8、9)を得た。
これらの組成物を用いて、90mmφ押出ラミネーター(SHIモダンマシナリー:L/D=32)にて、PET#12/LDPE(15μ)/AL#7貼り合せ基材上に、樹脂温度Tダイ直下317℃でブタジエン系アンカーコート剤を使用してライン速度150m/min、コーティング厚さ25μmで押出コーティングした。
得られた積層サンプルを、AL面とシーラント層の接着強度、シーラント面の滑性、ヒートシール強度について評価した。充分な接着強度が得られており、良好な滑り性とヒートシール性を兼ね備えるものであった。さらに臭気についても良好であった。
【0102】
[実施例12〜13]
マスターバッチ(MB5)を使用し、エチレン共重合体(A11)およびLDPE3を用い組成物10および組成物11とし、基材として、ONY/LDPE(15μ)およびPET#12/LDPE(15μ)/AL#7とした以外は、実施例1と全く同じ操作を行なった。評価結果を表4に示した。基材に対する接着強度及びヒートシール強度は遜色がないが、滑り性が若干劣っていた。
【0103】
[実施例14〜18]
マスターバッチ(MB1)を使用し、エージング時間を変えた組成物1を作成し、実施例1と全く同じ操作を行ない、その評価結果を表5に示した。エージング2日前後のものは基材に対する滑性、ラミネート強度を維持し、かつヒートシール強度が向上していることが判る。
【0104】
[比較例1]
架橋PMMAのマスターバッチの代わりにスリップ剤(エルカ酸アミド)を用い、含有量を0.11wt%とし、組成物12とした以外は、実施例1と全く同じ操作を行なった。評価結果を表5に示した。スリップ剤過多のため、基材に対する充分な接着強度が得られず、ヒートシール強度も低かった。また独特のアミド臭が強く、臭気に関しても良好とはいえなかった。
【0105】
[比較例2]
スリップ剤添加量を0.025wt%とし、組成物13とした以外は、実施例1と全く同じ操作を行なった。結果を表5に示した。接着強度、ヒートシール性、臭気においては問題なかったが、スリップ性において劣っていた。
【0106】
[比較例3]
組成物作成時のマスターバッチ(MB1)添加量を30wt%(LDPE3:70wt%)とし、組成物14とした以外は、実施例1と全く同じ操作を行なった。結果を表5に示した。スリップ性、接着強度、ヒートシール性においては実施例1と遜色ないものであったが、臭気において劣っていた。
【0107】
[比較例4]
マスターバッチ(MB1)の代わりにマスターバッチ(MB6)を使用し、組成物15とした以外は、実施例1と全く同じ操作を行なった。評価結果を表5に示した。基材に対する接着強度及びヒートシール強度がやや悪かった。また揮発性分量が多く、臭気が劣っていた。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、実質的に揮発分がなく、特に280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理してなる架橋ポリメチルメタクリレートからなるアンチブロッキング剤を含有する組成物は、これを用いて得られるラミネートフィルムは充分な滑性を有し、これを用いて得られる積層体の製造工程において、従来のようにラミネート加工後、ニッカリ粉を散布する必要がなく、加工工程における粉塵問題を解消でき、工場内の環境を改善できる。
また、シーラント層を構成するポリオレフィン系樹脂にアンチブロッキング剤や滑剤を添加すると、シーラント層の基材層への接着強度が低下するが、ポリオレフィン組成物を構成するポリエチレンをシングルサイト系触媒で得られるエチレン(共)重合体(A)を含むものである場合は、積層体のシーラント層と基材層との接着強度が向上する。
【0114】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法によれば、アンチブロッキング剤のマスターバッチを作るという工程で、架橋ポリメチルメタクリレートの熱処理等で、揮発分を実質的にない状態、望ましくは0.1質量%未満とする組成物とすることによりアンチブロッキング剤を均一にポリオレフィン系樹脂組成物中に混合でき、アンチブロッキング剤の濃度調節も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】 エチレン(共)重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】 エチレン(共)重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図4】 メタロセン系触媒によるエチレン(共)重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図5】 エチレン(共)重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
10 積層体
11 基材層
12 シーラント層
Claims (14)
- 高圧ラジカル法エチレン(共)重合体または密度0.86〜0.97g/cm3の線状エチレン(共)重合体の群から選択される少なくとも1種のエチレン重合体100質量部と揮発分0.1質量%未満の架橋ポリメチルメタクリレート粒子0.05〜5質量部とを含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子が280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子が280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理後、50〜95℃の範囲で、かつ2時間以上エージングされてなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- さらにポリオレフィン樹脂組成物に対して滑剤0.01〜5質量%を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子の粒径が、10〜60μmの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記線状エチレン(共)重合体が、シングルサイト系触媒で得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記線状エチレン(共)重合体が、下記(a)〜(d)の性状を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(a)密度0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート0.01〜200g/10分
(c)分子量分布が1.5〜4.5
(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足するものである
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 前記ポリオレフィン系樹脂組成物がラミネート成形用である請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 密度0.91〜0.94g/cm3の高圧ラジカル法エチレン(共)重合体および/または密度0.86〜0.97g/cm3の線状エチレン(共)重合体99〜60質量%と280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理してなる架橋ポリメチルメタクリレート粒子1.0〜40質量%とからなるマスターバッチ。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法であって(1)ポリオレフィン系樹脂に少なくとも架橋ポリメチルメタクリレート粒子をブレンドした後、280℃以上、架橋ポリメチルメタクリレート粒子の分解温度未満で熱処理すること、あるいは(2)あらかじめ架橋ポリメチルメタクリレート粒子を280℃以上、分解温度未満で熱処理した後に、ポリオレフィン系樹脂にブレンドすることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなる、または請求項9のマスターバッチを用いてなることを特徴とするシーラントフィルム。
- 少なくとも基材層と、請求項11に記載のシーラントフィルムからなるシーラント層とを有することを特徴とする積層体。
- 請求項12の積層体のシーラント層を、押出ラミネート法で形成することを特徴とする積層体の製造方法。
- 前記積層体を製造する際に、予め280℃以上、分解温度未満の温度で熱処理後、50〜95℃で、かつ2時間以上エージングした架橋ポリメチルメタクリレート粒子を含有するシーラント層を使用することを特徴とする請求項13に記載の積層体の製造方法。
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