JP3699513B2 - ストレッチフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレッチフィルムに関し、さらに詳しくは自己粘着性や耐引き裂き伝播性、突き刺し強度、破断強さ、破断伸び等の機械強度、透明性、延伸性、結束性等に優れたストレッチフィルムを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パレット上にユニット化された貨物の周囲をフィルムを引き延ばしながら巻き付けて包装するパレットストレッチ包装は省エネルギーな包装方法として産業界に普及している。これらに使用されるパレットストレッチ包装用フィルムは、自己粘着性を有し、ストレッチ包装時に延伸ムラ、延伸切れ等を起こすことなく、延伸倍率を大きく取れ、かつ突起物に対する強度が強いことが要求されている。従来これらのパレットストレッチ用フィルムとしてポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が一般的に使用されている。
【0003】
また、最近ではこのポリエチレン系樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂の他に、機械的強度、透明性、延伸性、粘着性等に優れるために、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の単独またはエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物、積層物(特公平2−18983号、実開昭56−74737号等)が急速に普及しつつある。
【0004】
さらに別用途として、ロール状に押し固められた牧草をストレッチフィルムで包装し、発酵させて飼料を調製することも行われている。牧草用ストレッチフィルムは屋外で長期にわたって高い気密性を保持する必要があり、従って押し固められた牧草表面の突起により破断されない強靭性、充分な延伸性、結束力、弾力性、自己粘着性等パレットストレッチフィルムと同様の特性を要求される。
昨今では、ストレッチフィルムの省力化、作業性の簡略化等の観点から、より高度のフィルムが要求され、特に前記LLDPEフィルムの性能、すなわち自己粘着性や耐引き裂き伝播性、突き刺し強度、破断強さ、破断伸び等の機械強度、透明性、延伸性、結束性等のより向上が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を鑑み、鋭意検討した結果なされたもので、特定の条件を満足する密度が0.86〜0.94g/cm、メルトフローレート(MFR)0.1〜10のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、自己粘着性や耐引き裂き伝播性、突き刺し強度、破断強さ、破断伸び等の機械強度、透明性、延伸性、結束性等に優れたストレッチフィルムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物を少なくとも1種含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる下記(イ)〜(オ)の性状を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)100〜50重量%と他のエチレン系重合体(B)0〜50重量%を含む樹脂の単層フィルムからなるストレッチフィルム。
<性状>
(イ)密度が0.86〜0.94g/cm
(ウ)メルトフローレート(MFR)0.1〜20g/10分
(エ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0
(オ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2
を提供するものである。
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とは、(ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物を少なくとも1種と必要により助触媒、有機アルミニウム化合物、担体とを含む触媒の存在下にエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる(イ)密度が0.86〜0.94g/cm、(ウ)メルトフローレート(MFR)0.1〜10g/10分、(エ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0、(オ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2を有するものである。
【0008】
上記α−オレフィンとしては、炭素数が3〜20、好ましくは3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
また、上記触媒にあらかじめエチレンおよび/前記α−オレフィンを予備重合させて得られるものを触媒に供してもよい。
【0009】
本発明の上記(A)エチレン・α−オレフィン共重合体を製造する触媒である(ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物のシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも1種の置換基を有する置換シクロペンタジエニル基等である。該置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【0010】
上記炭素数1〜10の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロアルキル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフイル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中でもアルキル基が好ましい。
【0011】
置換シクロペンタジエニル基の好適なものとしては、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−ヘキシルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル基、1,3−n−プロピルメチルエチルシクロペンタジエニル基などが具体的に挙げられる。本発明の置換シクロペンタジエニル基としては、これらの中でも炭素数3以上のアルキル基が置換したシクロペンタジエニル基が好ましく、特に1,3−置換シクロペンタジエニル基が好ましい。
【0012】
置換基同士すなわち炭化水素同士が互いに結合して1または2以上の環を形成する場合の置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換インデニル基、ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換フルオレニル基等が好適なものとして挙げられる。
【0013】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウムが好ましい。
該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常1〜3個を有し、また2個以上有する場合は架橋基により互いに結合していてもよい。なお、係る架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、アルキルシランジイル基、シランジイル基などが挙げられる。
【0014】
周期律表第IV族の遷移金属化合物においてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としは、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基などが挙げられる。
【0015】
これらの具体例としては以下のものがある。ジアルキルメタロセンとして、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジフェニルなどがある。モノアルキルメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェニルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェニルクロライドなどがある。
またモノシクロペンタジエニルチタノセンであるペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルなどが挙げられる。
【0016】
置換ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物としては、ビス(インデニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエニルチタニウム化合物としては、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(1,2−ジエチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライドまたは他のジハライド錯体、シリコン、アミンまたは炭素連結シクロペンタジエン錯体としてはジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、メチレンジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、他のジハライド錯体が挙げられる。
【0017】
ジルコノセン化合物としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、アルキル置換シクロペンタジエンとしては、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、それらのハロアルキルまたはジハライド錯体、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエンとしてはビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、およびそれらのジハライド錯体、シリコン、炭素連結シクロペンタジエン錯体としては、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライドなどが挙げられる。
【0018】
さらに他のメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0019】
本発明の他の周期律表第IV族の遷移金属化合物の例として、下記一般式で示されるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子とそれ以外の配位子および遷移金属原子が環を形成するものも挙げられる。
【0020】
【化1】
Figure 0003699513
【0021】
式中、Cpは前記シクロペンタジエニル骨格を有する配位子、Xは水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アリールシリル基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アミド基、シリルオキシ基等を表し、Zは−O−、−S−、−NR−、−PR−またはOR、SR、NR2 、PR2 からなる群から選ばれる2価中性リガンド、YはSiR2 、CR2 、SiR2 SiR2 、CR2 CR2 、CR=CR、SiR2 CR2 、BR2 、BRからなる群から選ばれる2価基を示す。ただし、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、またはY、ZまたはYとZの双方からの2個またはそれ以上のR基は縮合環系を形成するものである。Mは周期律表第IV族の遷移金属原子を表す。
【0022】
化1で表される化合物の例としては、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)メチレンタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(フェニルホスフイド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドなどが挙げられる。
【0023】
本発明でいう助触媒としては、前記周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。
本発明において用いられる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。これらの中でもアルミノキサンが最も好ましい。
【0024】
また、触媒は無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。
【0025】
有機アルミニウム化合物として、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0026】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cmG、好ましくは常圧〜20kg/cmGであり、高圧法の場合通常1500kg/cmG以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0027】
上記触媒で得られる本発明の特定の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体は分子量分布と組成分布が極めて狭いものであり、上記積層体として用いられると本共重合体の特性が発揮されるものである。これらの重合体は、従来のチーグラー型触媒やフイリップス型触媒(総称してチーグラー型触媒という)で得られるこれらのエチレン・α−オレフィン共重合体とは性状が異なるものである。すなわち、上記触媒で得られる本発明の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体は、触媒の活性点が均一であるため分子量分布が狭くなることと、組成分布が狭くなるものである。このため短鎖分岐が効率よく融点を低下させるため、密度の割には、融点が低くなる。また短鎖分岐量が極めて多い成分や低分子量成分が少ないため樹脂表面へのにじみ出しが少なく(低溶出性)、また抗ブロッキング性も良好であり、しかも強度も優れ、ストレッチフィルムとして用いられると本共重合体の特性が発揮されるものである。
【0028】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の(イ)密度が0.86〜0.94g/cm、好ましくは0.88〜0.93g/cm、より好ましくは0.89〜0.925g/cmの範囲である。密度が0.86g/cm未満では、延伸性や結束性に難点を生じる虞があり、0.94g/cmを超える場合には粘着性に難点を生じる。
【0029】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の(ウ)MFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.2〜10g/10分、より好ましくは0.5〜8g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、成形加工性に劣り、20g/10分を超える場合には、機械的強度や結束性に劣るものとなる。
【0030】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の(エ)Mw/Mnは1.5〜5.0であり、好ましくは1.5〜4.5、さらに好ましくは1.8〜3.5の範囲にあることが望ましい。Mw/Mnが1.5未満では成形加工性が劣り、5.0を超えるものは耐衝撃性が劣る。分子量分布(Mw/Mn)の算出方法は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、この比Mw/Mnを求めるものである。
【0031】
エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布パラメータCbの測定法は下記の通りである。
すなわち酸化防止剤を加えたオルソジクロロベンゼン(ODCB)に試料濃度が0.2重量%となるように135℃で加熱溶解する。この溶液を、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送し、0.1℃/minの速度で25℃まで冷却し、試料をセライト表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃きざみに120℃まで段階的に昇温し、試料を溶出させ分別する。溶出液にメタノールを混合し、試料を再沈後、ろ過、乾燥し、各溶出温度におけるフラクション試料を得る。各温度における溶出試料の重量分率およびその分岐度(炭素数1000個あたりの分岐数)を13C−NMRにより測定する。
【0032】
30℃から90℃のフラクションについては次のような、分岐度の補正を行う。すなわち、溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小自乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。なお、溶出温度95℃以上の成分については溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わず実測値を用いる。
【0033】
次にそれぞれのフラクションの重量分率wiを、溶出温度5℃当たりの分岐度bの変化量(b−bi−1)で割って相対濃度Cを求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーターCbを算出する。
【0034】
【数1】
Figure 0003699513
【0035】
ここで、Cとbはそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメータCbは試料の組成が均一である場合に1.0となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0036】
エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布を記述する方法は多くの提案がなされている。例えば特開昭60−88016号公報では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数Rはかなり低く、値の精度は充分でない。また、このCw/Cnの測定法および数値処理法は、本発明のCbのそれとは異なるが、あえて数値の比較を行えば、Cw/Cnの値は、Cbよりかなり大きな値となる。
【0037】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布パラメーターCbは1.01〜1.2であり、好ましくは1.02〜1.18、さらに好ましくは1.03〜1.17の範囲にあることが望ましい。
1.2より大きいとブロッキングししやすく、ヒートシール特性も不良となり、また低分子量あるいは高分岐度成分の樹脂表面へのにじみ出しが多く衛生上の問題が生じる。
【0038】
本発明の他の(B)エチレン系(共)重合体とは、チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、および高圧ラジカル重合法によるエチレン系(共)重合体が挙げられる。
【0039】
上記、チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体とは、密度が0.91〜0.94g/cmの線状低密度ポリエチレン(以下LLDPEと称す)、密度が0.86〜0.91g/cmの超低密度ポリエチレン(以下VLDPEと称す)、密度が0.86〜0.91g/cmのエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを包含する。
【0040】
上記チーグラー型触媒によるLLDPEとは、密度が0.91〜0.94g/cm、好ましくは0.91〜0.93g/cmの範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
【0041】
また上記チーグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.86〜0.91g/cm、好ましくは0.88〜0.905g/cmの範囲のエチレン−α−オレフィン共重合体であり、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。
【0042】
また上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとは、密度が0.86〜0.91g/cm未満のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、該エチレン・プロピレン系ゴムとしては、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0043】
前記高圧ラジカル重合法によるエチレン(共)重合体とは、高圧ラジカル重合法によるエチレン単独重合体(低密度ポリエチレン)、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体等が挙げられる。
【0044】
上記低密度ポリエチレンは公知の高圧ラジカル重合法により製造され、チューブラー法、オートクレーブ法のいずれでもよい。
【0045】
上記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造され、エチレンを主成分とし、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%からなる共重合体が好ましい。さらにビニルエステル含有量は好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
【0046】
さらに上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の範囲である。
【0047】
本発明において、前記特定の(A)エチレン−α−オレフィン共重合体を(B)エチレン(共)重合体との組成物とする場合、成形安定性、透明性、機械的強度、粘着性、延伸性、結束性等のバランスを考慮し、(A)98〜50重量%、(B)2〜50重量%、好ましくは(A)80〜50重量%、(B)20〜50重量%の範囲で選択される。
【0048】
本発明においては、前記樹脂またはその組成物に粘着付与剤を配合することが望ましい。該粘着付与剤としては、ポリブテン、ヒマシ油誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ロジンおよびロジン誘導体、石油樹脂およびそれらの水添物等のタッキファイヤー、ゴム等が挙げられる。これら粘着付与剤は樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0049】
本発明の特定のエステル・α−オレフィン共重合体またはその組成物に対して、本発明の特性を本質的に阻害しない範囲で、滑剤、有機あるいは無機フィラー、酸化防止剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、分散剤、核剤、発泡剤、難燃剤、架橋剤などの公知の添加剤を添加することができる。
これらの添加剤の中でも、滑剤、粘着付与剤、無機フィラーは作業性をより向上させるために好適に用いられる。また牧草用ストレッチフィルムは紫外線遮断性が要求されるため顔料が必要となる。
【0050】
滑剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、等の脂肪酸アミド;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド等の脂肪酸グリセリンエステル化合物およびそれらのポリエチレングリコール付加物等が挙げられる。
【0051】
また無機フィラーとしては、軽質および重質炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、長石等が挙げられる。
顔料としてはカーボンブラック、チタン白等の他、市販の各種着色剤マスターバッチが好適に用いられる。
【0052】
本発明のフィルムの製造方法は、インフレーション成形法、Tダイ成形法、水冷フィルム成形法等の公知の成形方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のフィルムは、パレット包装用ストレッチフィルム、牧草包装用ストレッチフィルム用途等に好適に用いられる。
【0053】
【発明の実施の形態】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例および比較例において使用した樹脂を以下に示す。
【0054】
【実施例】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体については次の方法で重合した。
攪拌機を付したステンレス製オートクレーブを窒素置換し精製トルエンを入れ、次いで1−ブテン、あるいは1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Zrとして0.02mモル)メチルアルモキサン[MAO](MAO/Zr=500[モル比]の混合溶液を加えた後、80℃に昇温した。次にエチレンを張り込み重合を開始した。エチレンを連続的に重合しつつ、全圧を維持し1時間重合を行った。なお、後述の実施例に必要な量は、これらの重合を繰り返しA1,A2を製造した。
【0055】
(A):エチレン・α−オレフィン共重合体
Figure 0003699513
【0056】
Figure 0003699513
【0057】
(B)その他の樹脂
Figure 0003699513
【0058】
物性の測定に用いた試験方法は以下の通りである。
(物性試験方法)
密度 :JIS K6760 準拠
MFR :JIS K6760 準拠
引張強度 :ASTM D882
引張伸び :ASTM D882
エルメンドルフ:ASTM D1922
引き裂き強度
ダート衝撃強さ:ASTM D1709
自己粘着性 :フィルムのMD方向に幅2.5cm、長さ12.5cmの試験片を切り取り、長さ方向に二等分し幅2.5cm、6.25cmにする。
この二枚組の試験片の端を長さ2.5cm分重ね合わせる。重ね合わせの部分に70g/cmの荷重をかけて5分間圧着する。その後、5分以内に引張試験機にかけ(チャック間隔6.35mm、引張速度125mm/min)、引き剥がしに要する力(kg)を測定する。
【0059】
結束性(保持応力):ASTM D822に従って、試料を500mm/minで初めの長さの20%伸長する。
そのまま16時間放置した後の応力(kg/cm)を保持力とする。
この保持力が大きいことは、商品等を包装した際ストレッチフィルムによる締め付け力が大であることを示す。
【0060】
結束性(ストレッチ回復率)(%):ASTM D882に従って試料を500mm/minで20%伸長する。このままの状態で16時間放置後、脱荷重し、さらに三日間放置し試料の残留伸長率(A%)を求め、次式によりストレッチ回復率(%)を求める。
【0061】
Figure 0003699513
【0062】
このストレッチ回復率が大きいことは、ストレッチフィルムで包装後、該ストレッチフィルムのたるみが少ないことを示し、結束性があることを示す。
【0063】
[実施例1〜4]
前記重合方法により得られた樹脂A1およびA2を空冷インフレーション成形装置を用いて、厚み30μmのフィルムを成形した。成形条件は次のとおりである。
押出機:内径50mm、スクリューL/D 26
ダイ :外口径100mm、ダイリップ間隙2.0mm
樹脂温:180℃
膨張比:2.0
いずれもストレッチフィルムに要求される各物性値を満足している。
【0064】
[比較例1]
エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用したが、引張破断強度、ダート衝撃強さで不充分な結果となった。
【0065】
[比較例2]
エチレン・α−オレフィン共重合体(直鎖状低密度ポリエチレン)を使用したが、本発明の特定の条件を満足していないため、ダート衝撃強さ、エルメンドルフ引き裂き強度、結束性(保持応力、ストレッチ回復率)の点で不充分な結果となった。
【0066】
[比較例3]
本発明の樹脂A2の含有量が20重量%以下であるため、引張破断強度、ダート衝撃強さ、エルメンドルフ引き裂き強度、結束性(保持応力)の点で不充分な結果となった。
【0067】
[比較例4]
本発明の樹脂A1の含有量が20重量%以下であるため、ダート衝撃強さ、エルメンドルフ引き裂き強度、結束性(保持応力、ストレッチ回復率)の点で不充分な結果となった。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、
【0069】
特定の条件を満足する密度が0.86〜0.94g/cm 3 のエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂組成物をストレッチフィルムに用いることにより、
【0070】
自己粘着性や耐引き裂き伝播性、突き刺し強度、破断強さ、破断伸び等の機械強度、透明性、延伸性、結束性等に優れたストレッチフィルムを、
【0071】
提供するものである。

Claims (5)

  1. (ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物を少なくとも1種含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる下記(イ)〜(オ)の性状を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)100〜50重量%と他のエチレン系重合体(B)0〜50重量%を含む樹脂の単層フィルムからなるストレッチフィルム。
    <性状>
    (イ)密度が0.86〜0.94g/cm
    (ウ)メルトフローレート(MFR)0.1〜20g/10分
    (エ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0
    (オ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2
  2. 前記(B)エチレン系重合体が、(B1)チーグラー型触媒をよるエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体または(B2)高圧ラジカル重合法によるエチレン系(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチフィルム。
  3. 前記(B1)チーグラー型触媒をよるエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が密度0.91〜0.94g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.86〜0.91g/cmの超低密度ポリエチレンまたは密度0.86〜0.91g/cm のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムであり、(B2)高圧ラジカル重合法によるエチレン系(共)重合体がエチレン単独重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体である群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のストレッチフィルム。
  4. 前記(A)エチレン・α−オレフィン共重合体98〜50重量%と他の(B)エチレン系重合体2〜50重量%の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のストレッチフィルム。
  5. 前記(A)エチレン・α−オレフィン共重合体80〜50重量%と他の(B)エチレン系重合体20〜50重量%の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のストレッチフィルム。
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