JP3599862B2 - ポリエチレン系樹脂組成物およびそれを用いたフィルム - Google Patents

ポリエチレン系樹脂組成物およびそれを用いたフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料、化学薬品などの重包装袋や米袋、砂糖袋などに用いられるフィルム及びそのフィルムの原料となるポリエチレン系樹脂組成物に関するもので、特に、袋の開口性に優れつつ滑りにくく、しかも原料組成物の高分岐度あるいは低分子量成分の表面へのにじみ出しが少なく、さらに、フィルム強度、低温ヒートシール性に優れたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チーグラー型触媒で得られるエチレン・α−オレフィン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、重包装袋や米、砂糖袋などの分野で大量に使用されている。チーグラー型触媒で得られるLLDPEは、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)と比較し、強度およびじん性が大きく、フイルム、シート、中空成形体、射出成形体等さまざまな用途に用いられているが、成形品の薄肉化、軽量化の為さらなる高強度化が要求されている。
また、ポリエチレンフィルムからなる袋においては、そのフィルムどうしが密着(ブロック)してしまうことにより、袋の開口に煩わしさを伴うことがある。その為、開口性を改良するために、シリカ等の抗ブロッキング剤を大量に用いる手法がとられるが、それでも開口性が必ずしも十分になるとはいえず、さらに、フィルムの表面状態が肌荒れしたり印刷性や透明性が悪化等することがある。
また開口性を改良するもうひとつの方法として滑剤を使用することが考えられるが、脂肪酸アミド等の滑剤を大量に添加するとフィルムの表面が滑り過ぎて、自動充填装置へ袋を供給する際のつかみ不良や、内容物を充填した袋を輸送したり、段積み保管したりする際に荷崩れ等が起きるおそれがある。
【0003】
また、近年、これらの分野では自動充填装置による処理がより高速化しており、袋が高速で供給されることにより、その際の摩擦により静電気が発生し、粉体などの内容物の充填時に、内容物が開口部付近に付着し、袋を密封するためのヒートシールに支障が生ずることがある。そこで、静電気の帯電を防止するために、種々の帯電防止剤の添加が行われている。
しかし、帯電防止剤を一定量以上添加すると、帯電防止剤成分の表面ブリード現象により粘着性が発現し、フィルムの開口性が悪くなるという問題がある。
また一般の重包装用フィルムにオレイン酸アミド等の公知の滑剤を添加するとフィルム表面が滑り過ぎて、倉庫保管中に荷崩れ発生の重大な原因となることがあった。
また、ポリエチレンフィルムから袋を製造する上では、低温で且つ強固にヒートシールできることが重要である。
【0004】
このような状況下、特開昭61−218649号公報には、開口性を改善すべく、アルキレンビス高級脂肪酸アマイドを添加する技術が開示されており、その実施例においてはエチレン・酢酸ビニル共重合体にメチレンビスステアリン酸アミドを添加することが例示されている。
しかしながら、高強度を保ちつつ、低滑性、ブリード防止、低温ヒートシールを達成することはできない。また、任意成分としての帯電防止剤の配合を開示するものの、高速成形時の帯電防止剤を添加した場合の役割とフィルムのブロッキング防止(開口性)と滑性の制御等についての具体的な示唆開示はない。
また、特開昭62−25138号公報ではアンチブロック剤と脂肪酸ビスアミドを併用する技術が開示されている。しかしながら、この公報においても高速成形時における静電気防止のために配合される帯電防止剤に起因するブロッキングの防止およびフィルムの滑性の制御についての教示はない。
【0005】
さらに、特開平1−282232号公報では熱安定性ポリオレフィン樹脂組成物としてヒンダードフェノール系酸化防止剤に、
R−CO−NH−(CH−NH−CO−R
(Rは炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基)
の構造式からなるアルキレンビス脂肪酸アミド化合物を添加することが提案されている。しかしながら、この公報においては熱安定性を目的としているに過ぎず、帯電防止剤の記載はなく、かつフィルムの滑性に及ぼす効果については何も教示していない。
また特開平5−59224号公報においては粘着防止剤である無機充填剤を使用しなくても良好なスリップ性と粘着防止効果の得られる飽和アミドと不飽和アミドとの混合組成物の製造方法の記載はあるものの、この技術をポリエチレン系樹脂組成物に応用展開することは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、高いフィルム強度と適度な滑性を有し、低温ヒートシール性に優れ、袋とした場合に、その開口性に優れるフィルムとなるポリエチレン系樹脂組成物、さらにはこれらの諸性質を保持しつつ帯電防止剤がフィルムの表面にブリードした状態で良好な帯電防止性能を発揮させるポリエチレン系樹脂組成物は未だかってないものである。
したがって、本発明はこれらの諸特性を有するポリエチレン系樹脂組成物およびそれを用いたフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の触媒で重合された特定のパラメーターを有する密度が0.86〜0.96g/cmのエチレン・α−オレフィン(共)重合体を主成分とする樹脂成分に対し、アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドあるいはそれらに帯電防止剤を添加することにより上記問題点を解決したポリエチレン系樹脂組成物およびそれを用いたフィルムを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
請求項1記載のポリエチレン系樹脂組成物は、(A)下記(ア)〜(ウ)の要件を満足する密度が0.86〜0.96g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体に対し、
(ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物からなる単一の遷移金属成分を必須成分として含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
(イ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0。
(ウ)組成分布パラメーターが1.01〜1.2。
(B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを300〜1200ppmと、帯電防止剤を100〜2000ppm含有してなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項記載のポリエチレン系樹脂組成物は、(A)下記(ア)〜(ウ)の要件を満足する密度が0.86〜0.96g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体を50重量%以上と、
(ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物からなる単一の遷移金属成分を必須成分として含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
(イ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0。
(ウ)組成分布パラメーターが1.01〜1.2。
(A’)少なくとも1種の高圧ラジカル重合法によるエチレン系重合体を含んだエチレン系重合体を50重量%以下とからなる樹脂成分に対し、
(B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを300〜1200ppmと、帯電防止剤を100〜2000ppm含有してなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項記載の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とは異なるエチレン・α−オレフィン共重合体(A”)をさらに含有し、(A)成分と(A”)成分の合計量を100重量%とした場合に、(A)成分が20重量%以上で(A”)成分が80重量%以下とされていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物である。
前記アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミドが特に好ましい。
前記帯電防止剤としては、多価アルコール系帯電防止剤及び/又はアミン置換型帯電防止剤であることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、請求項1〜のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
この際、静摩擦係数tanθが0.4〜0.6であることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔(A)エチレン・α−オレフィン共重合体〕
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、必要により助触媒、有機アルミニウム化合物、担体とを含む触媒の存在下に、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
この場合、上記触媒にあらかじめエチレン及び/又はα−オレフィンを予備重合させて得られるものを触媒に供してもよい。
【0012】
上記α−オレフィンとしては、炭素数が3〜20、好ましくは3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0013】
本発明の上記エチレン・α−オレフィン共重合体を製造する触媒であるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物について、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも1種の置換基を有するもの等である。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【0014】
上記炭素数1〜10の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロアルキル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフイル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中でもアルキル基が好ましい。
置換シクロペンタジエニル基の好適なものとしては、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−ヘキシルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−n−ブチルメチルシクロペンタジエニル基、1,3−n−プロピルメチルエチルシクロペンタジエニル基などが具体的に挙げられる。本発明の置換シクロペンタジエニル基としては、これらの中でも炭素数3以上のアルキル基が置換したシクロペンタジエニル基が好ましく、特に1,3−置換シクロペンタジエニル基が好ましい。
置換基同士すなわち炭化水素同士が互いに結合して1または2以上の環を形成する場合の置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換インデニル基、ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換フルオレニル基等が好適なものとして挙げられる。
【0015】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物について、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウムが好ましい。
該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常1〜3個を有し、また2個以上有する場合は架橋基により互いに結合していてもよい。なお、係る架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、アルキルシランジイル基、シランジイル基などが挙げられる。
【0016】
周期律表第IV族の遷移金属化合物においてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基などが挙げられる。
【0017】
これらの具体例としては以下のものがある。ジアルキルメタロセンとして、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、 ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、 ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジフェニルなどがある。モノアルキルメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェニルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェニルクロライドなどがある。
またモノシクロペンタジエニルチタノセンであるペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルなどが挙げられる。
【0018】
置換ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物としては、ビス(インデニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエニルチタニウム化合物としては、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(1,2−ジエチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライドまたは他のジハライド錯体、シリコン、アミンまたは炭素連結シクロペンタジエン錯体としてはジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、メチレンジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、他のジハライド錯体が挙げられる。
【0019】
ジルコノセン化合物としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、アルキル置換シクロペンタジエンとしては、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、それらのハロアルキルまたはジハライド錯体、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエンとしてはビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、およびそれらのジハライド錯体、シリコン、炭素連結シクロペンタジエン錯体としては、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライドなどが挙げられる。
【0020】
さらに他のメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0021】
本発明の他の周期律表第IV族の遷移金属化合物の例として、下記一般式▲1▼で示されるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子とそれ以外の配位子および遷移金属原子が環を形成するものも挙げられる。
【化1】
Figure 0003599862
式中、Cpは前記シクロペンタジエニル骨格を有する配位子、Xは水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アリールシリル基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アミド基、シリルオキシ基等を示す。YはSiR、CR
SiRSiR、CRCR、CR=CR、SiRCR、BR、BRからなる群から選ばれる2価基を示す。Zは−O−、−S−、−NR−、−PR−またはOR、SR、NR、PRからなる群から選ばれる2価中性リガンドを示す。ただし、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、またはY、ZまたはYとZの双方からの2個またはそれ以上のR基は縮合環系を形成するものである。Mは周期律表第IV族の遷移金属原子を表す。
【0022】
式▲1▼で表される化合物の例としては、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)メチレンタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(フェニルホスフイド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドなどが挙げられる。
【0023】
本発明でいう助触媒としては、前記周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。
本発明において用いられる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。これらの中でもアルミノキサンが最も好ましい。
【0024】
また、触媒は無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、
SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、
BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al
SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。
【0025】
有機アルミニウム化合物として、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0026】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃である。また、重合圧力は低中圧法の場合、常圧〜70kg/cmG、好ましくは常圧〜20kg/cmGであり、高圧法の場合、1500kg/cmG以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合、通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0027】
上記触媒で得られる本発明の特定の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体は分子量分布と組成分布が極めて狭いものであり、機械的強度が強く、ヒートシール性、抗ブロッキング性に優れ、特にフイルム用途として用いられると本共重合体の特性が発揮される。
これらの重合体は、従来のチーグラー型触媒やフイリップス型触媒(総称してチーグラー型触媒という)で得られるこれらのエチレン・α−オレフィン共重合体とは性状が明白に異なるものである。すなわち、上記触媒で得られる本発明の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、触媒の活性点が均一である為、分子量分布と、組成分布が狭くなり、(イ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0となり、(ウ)組成分布パラメーター(Cb)が1.01〜1.2となる。このため短鎖分岐が効率よく融点を低下させるため、密度の割には、融点が低くなる。このためヒートシール時に樹脂が早く融解し、低温でのヒートシール強度が強く、高速でのヒートシールが可能となると考えられる。また短鎖分岐量が極めて多い成分や低分子量成分が少ないため樹脂表面へのにじみ出しが少なく(低溶出性)、また開口性も良好であり、しかも強度も優れ、フィルムとして用いられると特に本共重合体の特性が発揮される。
【0028】
〔組成分布パラメーターの測定法〕
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布パラメーター(Cb)の測定法は下記の通りである。
酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたオルソジクロルベンゼン(ODCB)に、試料を濃度が0.2重量%となるように135℃で加熱溶解した後、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送し、0.1℃/minの冷却速度で25℃まで冷却し、共重合体試料をセライト表面に沈着する。次に、この試料が沈着されているカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃刻みに120℃迄段階的に昇温して行く。すると各温度に対応した溶出成分を含んだ溶液が採取される。この溶液にメタノールを加え、試料を沈澱後、ろ過、乾燥し、各温度における溶出試料を得る。各試料の、重量分率および分岐度(炭素数1000個あたりの分岐数)を測定する。分岐度は13C−NMRで測定し求める。
【0029】
このような方法で30℃から90℃で採取した各フラクションについては、次のような分岐度の補正を行う。溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小二乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。なお、溶出温度95℃以上で採取したフラクションについては溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わない。
【0030】
次ぎに、それぞれのフラクションの重量分率wiを、溶出温度5℃当たりの分岐度bの変化量(b−bi−1)で割って相対濃度cを求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーター(Cb)を算出する。
【数1】
Figure 0003599862
ここで、cとbはそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメーター(Cb)は試料の組成が均一である場合に1.0となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0031】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布を表現する方法は他にも多くの提案がなされている。
例えば、特開昭60−88016号公報では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。しかしながら、この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数Rはかなり低く、値の精度は充分でない。尚、このCw/Cnの測定法および数値処理法は、本発明のCbのそれと異なるが、あえて数値の比較を行えば、Cw/Cnの値は、Cbよりかなり大きくなる。
【0032】
上記の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体は、密度0.86〜0.96g/cm、好ましくは0.89〜0.95g/cm、さらに好ましくは0.89〜0.94g/cmの範囲、MFRは0.01〜100g/10min、好ましくは0.1〜50g/10min、さらに好ましくは0.5〜40g/10minの範囲である。
また、分子量分布の広さMw/Mnは、1.5〜5.0、好ましくは1.8〜4.5である。Mw/Mnが5.0を超えると衝撃強度が低下したり、低分子量成分の表面へのにじみが多くなったりする。
尚、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)として求められる。
また、組成分布パラメーター(Cb)は1.01〜1.2である必要がある。Cbの値が1.2を超える場合は、低温ヒートシール特性不良、あるいは樹脂成分の表面へのにじみ出しを生じる等のおそれがある。
【0033】
〔(A’)高圧ラジカル重合法によるエチレン系重合体〕
本発明で用いられる高圧ラジカル重合法によるエチレン系重合体(A’)とは、エチレン単独重合体とエチレン系共重合体の両方を意味するもので、高圧ラジカル重合法による密度0.91〜0.94g/cmのエチレン単独重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体等が挙げられる。
【0034】
上記高圧ラジカル重合法による密度0.91〜0.94g/cmのエチレン単独重合体とは、公知の高圧ラジカル法による低密度ポリエチレンである。
【0035】
上記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体および他の不飽和単量体との共重合体である。これらの共重合体のうち好ましいものとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を挙げることができる。すなわち、エチレン65〜99.5重量%、酢酸ビニル0.5〜35重量%および他の不飽和単量体0〜25重量%からなる共重合体が好ましい。
【0036】
上記のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体とは、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体および他の不飽和単量体との共重合体、およびそれらの金属塩、アミド、イミド等が挙げられる。そのエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類を挙げることができる。またその誘導体の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル等を挙げることができる。これらの共重合体のうち、好ましくは高圧ラジカル重合法で製造されるエチレン・アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができる。すなわち、エチレン65〜99.5重量%、アクリル酸エチルエステル0.5〜35重量%および他の不飽和単量体0〜25重量%からなる共重合体が好ましい。
【0037】
上記他の不飽和単量体とは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のオレフィン類、C〜Cアルカンカルボン酸のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物類などの群から選ばれた少なくとも1種である。
【0038】
本発明における(A’)成分である高圧ラジカル重合法によるエチレン(共)重合体は、密度が0.91〜0.94g/cm、好ましくは 0.915〜0.935g/cm、より好ましくは0.92〜0.93g/cm、MFRが0.1〜20g/10min、好ましくは0.2〜10g/10min、より好ましくは0.3〜5g/10minである。
【0039】
前記高圧ラジカル重合法による(共)重合体(A’)は溶融張力が大きく、インフレーション成形あるいはTダイフィルム成形に好適で、高速成形性やフイルム成形時のバブル安定性を向上させる。
樹脂成分(A)+(A’)、あるいは後述する(A)+(A’)+(A”)の合計量に対し、(A’)成分が50重量%を超えると耐衝撃性、機械的強度が劣るので、(A’)成分量は50重量%以下とすることが好ましく、さらに、成形性とのバランスを考慮すると10〜30重量%の範囲とすることがより望ましい。
【0040】
〔(A”)エチレン・α−オレフィン共重合体〕
本発明において、(A)成分とは異なるエチレン・α−オレフィン共重合体(A”)とは、(A)成分を重合する触媒(ア)とは異なり、従来公知のチーグラー触媒あるいはフィリップス触媒において重合されるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
この(A”)成分は、(A)成分より一般的に分子量分布あるいは組成分布が広く、密度が0.86〜0.96g/cm、MFRが0.1〜20g/10minの範囲のものが好ましく、いわゆる超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)を包含するものである。
【0041】
本発明の必須成分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、加工性やコストの面では不利な場合があり、そのような観点から、加工性に優れ安価なエチレン・α−オレフィン共重合体(A”)が配合される。(A”)成分の配合量は(A)+(A”)の合計量に対して80重量%以下であるが、好ましい範囲は用途に応じ、強度を重視する場合には(A”)成分は(A)+(A”)の合計量に対して30重量%以下、経済性を重視する場合には(A”)成分は80〜30重量%、より好ましくは50〜30重量%である。
【0042】
従って、(A)成分、(A’)成分、(A”)成分の配合割合は、(A)+(A’)+(A”)全体を100重量%とした場合は、(A)成分が100〜10重量%、(A”)成分が0〜80重量%、(A’)成分が0〜50重量%以下の範囲となる。
【0043】
〔(B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミド〕
本発明で用いられる(B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドとは、下記一般式で示される化合物である。
【化2】
Figure 0003599862
(但し、Rは炭素原子1〜20のアルキレン基であり、R、Rは炭素原子5〜21のアルキル基である。)
かかる化合物の具体例としては例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等を挙げることができる。
これらのうちでは、エチレンビスステアリン酸アミドが最も好ましい。
【0044】
上記(B)成分のアルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドの配合割合は、(A)、(A’)、(A”)樹脂成分の合計に対して、100〜1500ppm、好ましくは300〜1200ppm、より好ましくは400〜1000ppmである。(B)成分の配合量が1500ppmを越えるとヒートシール性や印刷特性に支障が生じ、100ppm未満では開口性を改良する効果が発揮されない。
【0045】
上記一般式で示されるアルキレンビス高級脂肪酸アミドとしては、飽和高級脂肪酸を用いた化合物でなくてはならない。
帯電防止剤を添加した場合、その添加量が増加すると帯電防止効果が向上する反面、滑性およびブロッキングが増加し、開口性が悪化する。
しかし、帯電防止剤とアルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを併用すると、帯電防止剤の滑性を抑えて開口性を改善できるので、従来フィルムに多用されていた抗ブロッキング剤を大量に用いる必要がなくなる。したがって、抗ブロッキング剤を大量に用いた時に生じる透明性の悪化などの弊害を避けることができるので、米、砂糖袋用等のフィルム用途に対しては特に有効である。
尚、本願のアルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドではなく、アルキレンビス不飽和高級脂肪酸アミドを使用すると、開口性は改善されるけれども、同時に滑性をも付与し、高滑性となるので重包装袋用フィルムの場合は好ましくない。
【0046】
〔帯電防止剤〕
本発明で用いられる帯電防止剤とは、ポリオレフィン用として一般的に用いられている非イオン系界面活性剤、両性ベタイン型界面活性剤、アミン系帯電防止剤、多価アルコールの高級脂肪酸エステル系帯電防止剤等の内部練り込み型帯電防止剤が使用される。
上記非イオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)アミンの高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)アミド、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)アミドの高級脂肪酸エステル、高級アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
両性ベタイン型界面活性剤の具体例としては、アルキル(またはアルケニル)ジヒドロオキシエチルベタイン等の単独または併用混合物が挙げられる。
アミン系帯電防止剤の具体例としては、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等が挙げられる。
多価アルコールの高級脂肪酸エステル系帯電防止剤の具体例としては、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート等が挙げられる。
これらの帯電防止剤は単独または複数の混合物として用いられるが、複数の混合物として用いるのが好ましい。具体例としては、アミン系帯電防止剤と多価アルコールの高級脂肪酸エステル系帯電防止剤の混合物等が挙げられる。
【0047】
帯電防止剤を配合する場合、その割合は、(A)、(A’)、(A”)樹脂成分の合計量に対して、100〜2000ppm、好ましくは300〜1500ppm、より好ましくは400〜1300ppmである。帯電防止剤の配合量が2000ppmを越えるとブロッキング現象が生じて開口性が悪化し、100ppm未満では帯電防止効果が得られにくいからである。
【0048】
〔配合法〕
本発明の組成物の配合は従来の樹脂組成物配合法として一般に用いられる公知の方法により配合することができる。
その一例としては、上記(A)、(A’)、(A”)樹脂成分および所望により各種添加剤をタンブラー、リボンブレンダーまたはヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用してドライブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレットを調整することによって該樹脂組成物を得ることができる。
【0049】
また他の配合方法としては、(A)成分のエチレン・α−オレフィン共重合体及び/又は(A”)成分の高圧ラジカル重合法によるエチレン(共)重合体と(B)成分のアルキレンビス飽和高級脂肪酸アミド、さらに帯電防止剤とを混合、溶融混練し、アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドと帯電防止剤の両成分の高濃度の樹脂組成物を得て(以下マスターバッチと称す)、次いで該マスターバッチと(A)成分(又は(A)+(A’)、又は(A)+(A”)、又は(A)+(A’)+(A”))とを混合してなる、いわゆるマスターバッチ法により該樹脂組成物を得ることもできる。
【0050】
前記組成物には表面の肌荒れや印刷性、透明性を損なわない程度の範囲で抗ブロッキング剤を併用添加することにより、上記性能を活かすことが出来る。用いられる抗ブロッキング剤はシリカ、炭酸カルシウム、タルク、ゼオライト等が挙げられ樹脂成分に対して500〜5000ppm程度、好ましくは1000〜4000ppmである。
【0051】
本発明においては、該ポリエチレン系樹脂組成物に対し、防曇剤、有機あるいは無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、有機あるいは無機系顔料、紫外線防止剤、分散剤、核剤、発泡剤、難燃剤、架橋剤などの公知の添加剤を、本願発明の特性を本質的に阻害しない範囲で添加することができる。
【0052】
〔フィルム〕
本発明のフィルムとは、上記特定のポリエチレン系樹脂組成物から成形されたフィルムであり、適度の滑性を有し、かつ耐衝撃性等の機械的強度あるいはさらに帯電防止性能に優れ、また袋としたときに開口性に優れるものである。
近年の重包装フィルムへの要求としては、静摩擦係数tanθが大きすぎても(滑りにくい)または小さすぎても(滑りやすい)自動パレタイザーシステムに不向きの場合があり、開口性と同様に滑性のコントロールが非常に重大な問題となっている。特に重包装袋等においては前記従来技術で述べられたように静電気によるヒートシール面に内容物の粉体等の夾雑物が付着する等の問題を有している。
しかしながら、本発明のフィルムであれば高速成形性等が要求される自動充填用袋、重包装用袋等に好適である。
【0053】
本発明のフィルムに帯電防止性能をより効果的に発現させるためには、該フィルムにコロナ放電処理等の表面処理を施すことが好ましい。このような方法をとることによりフィルム表面にブリードアウトした帯電防止剤と表面処理効果により帯電防止性能は相乗的な効果を発揮する。
【0054】
本発明のフィルムの帯電防止性能としては、表面固有抵抗が1×1013Ω未満であることが好ましい。この範囲を満たしていないフィルムの場合には静電気によりヒートシール面に粉体等の夾雑物が付着し、十分なヒートシール強度が得られないおそれがある。
【0055】
本発明のフィルムの開口性とはブロッキング強度として判定される。該ブロッキング強度として2.0kgf/10cm未満であることが好ましく、ブロッキング伸びは10%未満が好ましい。この範囲を満たしていないフィルムは開口性が十分ではないおそれがある。
【0056】
本発明のフィルムの滑性は適度に制御されたものであり、具体的には静摩擦係数tanθが0.4〜0.6の範囲であることが好ましい。tanθが0.4未満ではフィルムが滑りすぎて高速自動充填包装機に不適となるおそれが生じ、倉庫内で段積された包装袋の荷崩れなどが発生するなどの不都合が生じるおそれがある。また、tanθが0.6を越えると滑性が不足し、フィルムへの充填作業などに支障をきたすので好ましくない。
【0057】
フィルムの厚みは用途に応じて適宜決定されると共に、アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミド、あるいは帯電防止剤の適性配合量は、そのフィルムの厚みによって決められる。この適正配合量はフィルムの帯電防止性能を保持しながら、開口性を改善すると共に、適度の滑性を保つことができるようにフィルム表面にブリードする量によるものである。
【0058】
フィルム厚みが100〜250μmの重包装袋用フィルムの場合は、アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドの添加量は100〜1000ppm、帯電防止剤の添加量は100〜1500ppmが好ましく、フィルム厚みが20〜100μmの一般包装袋用フィルムおよび米、砂糖袋用等フィルムの場合は、アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドの添加量は200〜1500ppm、帯電防止剤の添加量は300〜2000ppmであることが好ましい。
【0059】
本発明のフィルムの製造方法は、インフレーション成形法、Tダイ成形法、水冷フィルム成形法等の公知の成形方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を原料とし、インフレーション成形法でフィルムを成形する場合、押出機の形態としては一般的に用いられるフィルム成形機の押出機が使用可能であるが、特にスクリュー径が25〜200mmφ、スクリューL/Dが15〜35であることが好ましい。
上記インフレーション成形における押出条件としては、押出温度160〜250℃、好ましくは180〜220℃、ダイリップ間隔0.5〜5.0mm、好ましくは1.0〜3.5mm、ブローアップ比は1.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.0で、フィルム厚み20〜250μmのフィルムを成形することができる。
【0060】
本発明のフィルムは、生鮮食品、加工食品、日用品、雑貨等の一般包装用フィルム、文房具、テイッシュペーパー、生理用品等の軽包装用の高速自動充填包装用フィルム、米、砂糖袋、粉末製品等の帯電防止フィルム、肥料、樹脂ペレット、薬品等の重包装袋用等に好適に用いられる。
【0061】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
表1,2に示す組成からなる樹脂組成物にて本発明の実施例および比較例のフィルムを製造した。
即ち、各成分の所定量をタンブラーミキサーにて混合した後、50mmφ押出機を用いてペレット化した後、65mmφ押出機付きインフレーション成形装置(モダンマシナリー社製)を用いてブロー比2.55、フィルム厚み100μm、フィルム幅400mmで40kg/hの押出量で成形した。
またフィルム表面にはコロナ処理を施し、表面張力が42dyn/cmとなるようにした。
実施例および比較例において使用した樹脂成分を以下に示す。
Figure 0003599862
この共重合体の重合は以下のようにして行った。
攪拌機を付したステンレス製オートクレーブを窒素置換し精製トルエンを入れ、次いで1−ブテン、あるいは1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Zrとして0.02mmol)、メチルアルモキサン[MAO](MAO/Zr=500[モル比])の混合溶液を加えた後、80℃に昇温した。次ぎに、エチレンを張り込み重合を開始した。エチレンを連続的に重合しつつ、全圧を維持し1時間重合を行った。なお、各実施例に必要な量は、これらの重合を繰り返して製造した。
【0062】
Figure 0003599862
【0063】
Figure 0003599862
【0064】
得られた各フィルムについてブロッキング性(ブロッキング強度、ブロッキング伸び)、滑性(静摩擦係数)、表面固有抵抗、挟雑物シール性、開口性、ダート衝撃強さ、印刷適性を測定した。測定結果を表1,2に示す。
尚、物性の測定に用いた試験方法は以下の通りである。
[密度]JIS K6760に準拠した。
[MFR]JIS K6760に準拠した。
[ブロッキング性]フィルムサンプルを縦方向(インフレーション成形時の)に2cm幅で切り出し内面同士の末端部分をオーバーラップさせて相対し、0.5kg/cmの荷重下で60℃×5時間養生した後、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いてチャック間150mmとし、500mm/minで引っ張り、オーバーラップさせた部分が、剥がれるまでの距離を伸び率とし、最大荷重をブロッキング強度とした。
【0065】
[静摩擦係数]静摩擦係数測定機(新東科学(株)製)を用いて傾斜速さ2.7度/秒で滑走斜度を変化して行った時のフィルムの滑り出し角度(移動ブロック:200g)をtanθの値で表した。
[開口性]インフレーション成形で得られたフィルムを自動製袋機にて幅40cm×長さ60cm(内容物20kg)にて製袋し、ケイ酸カルシウムの粉末を充填機(ニューロング社製)及びトップシーラーでヒートシールテストを行い、その際、口開きの悪いものが自動的に充填機系外に吹き飛ばされるので、その数で評価した。(枚数/50枚)
0〜2枚:○
3〜5枚:△
6枚以上:×
【0066】
[表面固有抵抗(帯電防止性能)]JIS K6911に準拠した。表面固有抵抗測定装置(HEWLETT・PACKARD社製)を用いて測定した。
印加電圧 500V
印加時間 60秒
[夾雑物シール性]前記の開口性評価の際のトップシール部分を観察し以下の様に判定した。
容易に剥がれそうなもの:×
剥がれそうだが使用には差し支えないもの:△
良好にシールされているもの:○
[ダート強度]JIS Z1702に準拠した。
【0067】
[印刷適性]成形したフイルムを印刷工程にかけた後、印刷面にセロテープを密着させ一気に剥す。10枚の試験を行い、インクの剥がれた枚数を調べた。
0枚 :○
1〜3枚:△
4枚以上:×
【0068】
【表1】
Figure 0003599862
【0069】
【表2】
Figure 0003599862
【0070】
〔実施例1〜8〕
ブロッキング性、滑性、表面固有抵抗、挟雑物シール性、開口性、ダート強度、印刷適性のいずれも良好で重袋フィルムに要求されるすべての性能を満たしていた。
【0071】
参考例1〕帯電防止剤を添加していない為、表面固有抵抗、夾雑物シール性、開口性こそ劣るものであったが、滑り性、ブロッキング性、ダート強度、印刷適性はいずれも良好であった。
【0072】
〔比較例1〕
実施例1で使用したEBSAの代りにEBOAを400ppm添加した他は実施例1と同様に成形した。
その結果フィルムが滑りすぎ重袋フィルムとしては不適当であった。
〔比較例2〕
実施例2で使用したEBSAの代りにEAを800ppm添加した他は実施例1と同様に成形した。
その結果フィルムの表面固有抵抗値が高く、開口性がやや悪く、フィルムが滑りすぎ、またブロッキング特性も悪く重袋フィルムとしては不適当であった。
【0073】
〔比較例3〕
EBSAの代りにOAを600ppm添加したところ、開口性が悪く、フィルムが滑り過ぎ、またブロッキング特性が悪く、重袋フィルムとしては不適当であった。
〔比較例4〕
帯電防止剤を3000ppmと多量に配合したところ、抗ブロッキング性、滑り性が悪く、夾雑物シール性、開口性印刷適性が悪く、重袋フィルムとして不適当であった。
【0074】
〔比較例5〕
EBSAを2000ppmと多量に配合したところ、夾雑物シール性、印刷適性が悪く重袋フィルムとして不適当であった。
〔比較例6〕
樹脂成分として本発明の特徴である(A)成分を用いない為、夾雑物シール性が悪く、ダート強度が低く重袋フィルムとして不適当であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明は特定の触媒で重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体、若しくはさらにエチレン(共)重合体を主成分とする樹脂成分に対し、特定のアルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを添加したポリエチレン系樹脂組成物であり、該組成物を用いて製造されたフィルムは低滑性であり、フィルム強度、低温ヒートシール性に優れたものである。しかも原料組成物の高分岐度あるいは低分子量成分の製品袋表面へのにじみ出しが少ない。また、袋としたときに、開口性に優れている。
さらに、帯電防止剤を配合することにより上記特性に加え、帯電防止性、特に、高速成形時の静電気の帯電防止性能に優れ、肥料、化学薬品などの重包装袋や米、砂糖袋などに好適に用いられる。

Claims (7)

  1. (A)下記(ア)〜(ウ)の要件を満足する密度が0.86〜0.96g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体に対し、
    (ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物からなる単一の遷移金属成分を必須成分として含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
    (イ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0。
    (ウ)組成分布パラメーターが1.01〜1.2。
    (B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを300〜1200ppmと、帯電防止剤を100〜2000ppm含有してなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
  2. (A)下記(ア)〜(ウ)の要件を満足する密度が0.86〜0.96g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体を50重量%以上と、
    (ア)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物からなる単一の遷移金属成分を必須成分として含む触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
    (イ)分子量分布Mw/Mnが1.5〜5.0。
    (ウ)組成分布パラメーターが1.01〜1.2。
    (A’)少なくとも1種の高圧ラジカル重合法によるエチレン系重合体を含んだエチレン系重合体を50重量%以下とからなる樹脂成分に対し、
    (B)アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドを300〜1200ppmと、帯電防止剤を100〜2000ppm含有してなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
  3. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とは異なるエチレン・α−オレフィン共重合体(A”)をさらに含有し、(A)成分と(A”)成分の合計量を100重量%とした場合に、(A)成分が20重量%以上で(A”)成分が80重量%以下とされていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  4. 前記アルキレンビス飽和高級脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  5. 前記帯電防止剤が、多価アルコール系帯電防止剤及び/又はアミン置換型帯電防止剤であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエチレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。
  7. 静摩擦係数tanθが0.4〜0.6であることを特徴とする請求項記載のフィルム。
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