JP2004195924A - 積層体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、層間接着強度に優れ、引裂強度、耐衝撃性、成形加工性、ヒートシール強度、耐熱性等にも優れた積層体。
【解決手段】α−オレフィンの重合体を主成分とする樹脂層(I)と、密度、MFR、分子量分布等の特定の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)、他のポリオレフィン系樹脂(B)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)とをアンカーコート剤を使用せずに接着した積層体。
【選択図】 図1
【解決手段】α−オレフィンの重合体を主成分とする樹脂層(I)と、密度、MFR、分子量分布等の特定の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)、他のポリオレフィン系樹脂(B)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)とをアンカーコート剤を使用せずに接着した積層体。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(以下結晶性樹脂層(I)と称することもある)とポリエチレン系樹脂層を直接接着してなる積層体およびその製造方法であって、非極性で、結晶性の高い炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂にアンカーコート剤等の接着剤を用いずとも層間接着強度に優れ、引裂強度、成形加工性、ヒートシール強度、耐熱性等にも優れた積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物等の各種プラスチックフィルム、アルミニウム箔、セロファン、紙等の基材に、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系重合体を押出ラミネートしてヒートシール性、防湿性等を付与することが行われており、それらラミネート製品は主に包装資材として多量に使用されている。
押出ラミネート成形では当然のことながら、各種基材との高い接着性が要求される。しかし、ポリプロピレン系樹脂やポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂は非極性で結晶性の高い樹脂であることから接着性能は本質的に劣る。
例えば、紙製基材に耐熱性等を付与するためにポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の層を積層することが求められるが、紙とポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂との接着性は低い。そこで、紙と炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂との間に接着層として低密度ポリエチレンを介在することが考えられるが、低密度ポリエチレンとポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の接着強度は小さい。
したがって、基材に押出ラミネート成形する場合においては一般に樹脂温度を310℃以上の高温に設定し、押出機から押出された溶融樹脂薄膜の表面を酸化させることにより基材との接着性能を向上させている。しかしながら、上記樹脂温度を310℃以上の高温にすることはポリプロピレン等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の酸化劣化を生じさせ、多量の発煙による作業環境の汚染及び周辺環境の悪化等の影響がある。また、高温酸化によるラミネート製品の製品品質の低下、臭気等、ヒートシール層のコスト高等をもたらすという問題点を有している。
また、生産性を向上させるためにより高速成形を行うと接着強度が低下するという欠点をもっていた。
そこで、特許文献1には、ポリエチレン系樹脂を150〜290℃の低温で押出してオゾン処理し、被処理面をアンカーコート処理された基材に圧着ラミネートする方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−157724号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように成形温度を下げると、発煙や臭気は軽減され、発煙や臭気の問題は解消されるものの、成形温度が下がるため接着強度が低下し、概して成形速度を速くできず、また肉厚を薄くできないなど生産性及び経済性の面で大きな問題を残している。
上記の問題点を解消するために樹脂温度を高めると、やはり前述のような発煙の発生等による作業環境及び周辺環境への影響の増大、高温での酸化劣化による製品の臭気の悪化等の問題が発生する。
さらに、昨今では高速成形性が要望されていることから、高い接着性を確保しつつ成形速度を上げるために、樹脂温度をより高くしなければならず、上記問題が深刻となっている。また、高速成形のために、オゾン処理を併用しても充分な接着性を確保することは困難であった。
また、アンカーコート剤を使用すると、このアンカーコート剤には溶剤が含まれているため、揮発した溶剤によって作業環境が悪化するという問題があった。また、溶剤を取り扱うため、細心の注意を払う必要があった。また、換気設備を整える必要があり、このような設備に対する負担によって製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、層間接着強度に優れ、引裂強度、耐衝撃性、成形加工性、ヒートシール強度、耐熱性等にも優れた積層体であり、ポリプロピレン系樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂層との接着強度を充分満足できる水準に維持できること、押出ラミネート成形時の樹脂温度を低く抑えることができ、作業環境及び周辺環境への影響を極力抑制できること、樹脂温度を高くせずにより高速成形性を向上せしめることが可能な積層体及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層体は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、
下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)とをアンカーコート剤を使用せずに直接接着してなる積層構造を有することを特徴とするものである。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
ここで、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(e)の要件を満足することが望ましい。
(e):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足すること
(式2) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧0
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが望ましい。
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることが望ましい。
(g):25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレートMFRが下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(h):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
【0007】
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることが望ましい。
(i):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること
(j):融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−19
ここで、エチレン系(共)重合体(A2)が、さらに下記(k)の要件を満足することが望ましい。
(k):メルトテンションMTとメルトフローレートMFRが、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
【0008】
本発明の積層体の製造方法は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法または共押出ラミネート法で積層することを特徴とするものである。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
また、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法で積層するに際し、前記エチレン(共)重合体(A)を含む樹脂材料またはその樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料を成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムを作製し、少なくとも該溶融樹脂フィルムの炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを前記炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)上に積層することが望ましい。
さらに、成形温度200〜350℃で炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)を共押出しし、アンカーコート剤を使用せずに基材(III)に積層するに際し、前記樹脂材料層(II)の溶融樹脂フィルムの基材(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを基材(III)上に積層することが望ましい。
【0009】
また、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と基材(III)とを樹脂材料層(II)を介して、押出ラミネートまたは共押出ラミネートすることが望ましい。
酸化処理として、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度が200〜350℃の範囲でオゾン処理することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。この積層体10は、炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層11と、該炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層11が直接接着した樹脂層12と、該樹脂層12に接する基材13とを有して概略構成されるものである。
【0011】
[炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(I)]
本発明における樹脂層(I)には、用途に応じた種々の炭素数3以上のα−オレフィンの単独重合体、共重合体が適用できる。例えば、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等による低・中・高圧重合によって得られる、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂およびそれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもポリプロピレン系樹脂またはポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂およびそれらの混合物等が好ましい。
【0012】
[ポリプロピレン系樹脂]
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体またはプロピレンと他の炭素数2〜20の他のα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。ブロック共重合体またはランダム共重合体のコモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等のプロピレン以外のα−オレフィン類が用いられるが、なかでもエチレンが特に好ましい。これらの共重合体中のプロピレン含量は60〜100モル%が好ましく、80〜99モル%が特に好ましい。α−オレフィンとしてエチレンを用いたブロック共重合体にあっては、分子内のエチレン−プロピレンブロックがホモポリプロピレンブロックに分散してゴム弾性を示し、ゴム成分として機能する。このゴム成分の含量としては、ブロック共重合体の10〜25質量%が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の荷重2.16kg(230℃)でのメルトフローレートが0.001〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.01〜100 g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。該メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る虞が生じる。また、メルトフローレートが高すぎる場合には製品の強度低下の懸念が生じる。
【0013】
[ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂]
ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂としては、4−メチル−1−ペンテン単独重合体、または、これと1種または複数種の他の炭素数2〜16のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂の荷重5.0kgでのメルトフローレート(260℃)は20〜500g/10分であることが好ましく、より好ましくは50〜300g/10分である。該メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る。
また、4−メチル−1−ペンテン系樹脂またはその組成物を用いることもできる。その組成物とは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィンを配合したものである。中でも、特に耐熱性、剥離性、或いは接着層との接着強度などの点から、ポリプロピレン系樹脂を添加したものが好ましい。
【0014】
上記ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物は、上記のポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂が95〜50質量%及び他のポリオレフィン系樹脂が5〜50質量%の範囲で配合されることが望まれる。より好ましくは、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂成分が90〜60質量%、他のポリオレフィン系樹脂が10〜40質量%である。このような構成とすることにより剥離性または耐熱性が向上する。
また、本発明におけるポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物全体としては、その荷重2.16kgでのメルトフローレート(230℃)が0.001〜1000g/10分であることが望ましい。より好ましくは0.01〜100g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る虞が生じる。
また、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物は、その融点が220〜250℃のものが好ましく、230〜240℃であればより好ましい。
【0015】
[エチレン系(共)重合体(A)を含む樹脂材料層(II)]
本発明における樹脂材料層(II)は、エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなるものである。
【0016】
[エチレン系(共)重合体(A)]
エチレン系(共)重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0017】
エチレン系(共)重合体(A)の(a)密度は、0.86〜0.97g/cm3の範囲であり、好ましくは 0.89〜0.95g/cm3、より好ましくは0.90〜0.94g/cm3の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満では、剛性(腰の強さ)、耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.97g/cm3 を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
【0018】
エチレン系(共)重合体(A)の(b)メルトフローレート(JIS K 6760準拠 以下、MFRと記す)は、0.01〜100g/10分の範囲であり、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が劣るものとなる虞が生じる。また、MFRが100g/10分を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が劣るものとなる虞が生じる。
【0019】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、下記(c)および(d)の要件をさらに満足するものである。
(c)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5であること、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.5の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣るものとなる虞が生じる。Mw/Mnが4.5を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
ここで、エチレン系(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0020】
エチレン系(共)重合体(A)は、例えば、図2に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足する。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が劣るものとなる虞が生じる。
【0021】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン系(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0022】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、さらに、(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足することが好ましい。
T75−T25と密度dが上記(式2)の関係を満足する場合には、ヒートシール強度と耐熱性が向上するものとなる。
【0023】
本発明のエチレン系(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが望ましい。
本発明のエチレン(共)重合体(A)の(f)ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)は8000〜30000に範囲、好ましくは10000〜28000、更に好ましくは13000〜27000の範囲であることが望ましい。
該質量平均分子量が8000未満では、成形品のべたつきやブロッキングの原因となる。また、分子鎖の絡み合いが起き難く、凝集破壊が起こらず、接着強度の向上に寄与しないものとなる虞がある。また、質量平均分子量(Mw)が、30000を超える場合は、接着力が低下する懸念が生じる。
ここで、ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)の測定方法では、まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。次に試料とODCBが入った容器を室温(23℃)にて1晩静置し、ポリフッ化ビニリデンフィルターで濾過して、濾液を採取する。そして、その濾液をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)に供して質量平均分子量を測定する。
【0024】
エチレン系(共)重合体(A)は、さらに後述の(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)、または、さらに後述の(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)のいずれかであることが好ましい。
【0025】
エチレン共重合体(A1)は、(g)25℃におけるODCB可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRが、下記(式3)および(式4)の関係を満足する。
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。
【0026】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0027】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン系(共)重合体(A)に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0028】
また、エチレン系(共)重合体(A1)は、(h)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度の高温側のピーク温度が85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0029】
ここで、エチレン系(共)重合体(A1)は、図3に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレン系(共)重合体である。一方、図4のエチレン系(共)重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有するエチレン系(共)重合体であり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体がこれに該当する。
【0030】
本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、図5に示すように、(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つである。
【0031】
また、本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−19
融点Tm1と密度dが上記(式5)の関係を満足すると、より耐熱性が向上するものとなる。
【0032】
また、エチレン系(共)重合体(A2)の中でも、さらに下記(k)の要件を満足するエチレン(共)重合体が好適である。
(k)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足する。
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、押出成形等の成形加工性が良好なものとなる。
【0033】
ここで、エチレン共重合体(A2)は、図5に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体は上記(式2)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体とは区別されるものである。
【0034】
エチレン系(共)重合体(A)は、シングルサイト系触媒の存在下に、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンとの重合により容易に製造される。該エチレン系(共)重合体(A)は、従来のチーグラー系触媒から得られる重合体より分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性等に優れ、基材等に対する接着性にも優れるものである。
上記シングルサイト系触媒としては、典型的なメタロセン触媒、CGC型触媒の他に、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒等が挙げられる。
【0035】
本発明のエチレン系(共)重合体(A)は、特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で製造することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−r で表される化合物(式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0036】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−r で表される化合物の式中、Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。p、qおよびrはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0037】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0038】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0039】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0040】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0041】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0042】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0043】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0044】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0045】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0046】
ホウ素化合物としてはテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。中でも、N,N_−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボランが好適である。
【0047】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0049】
エチレン系(共)重合体(A)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2 G、好ましくは常圧〜20kg/cm2 Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2 G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0050】
エチレン系(共)重合体(A)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンのない触媒を使用することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない2ppm以下(ND:Non−Detect)のものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン系(共)重合体(A)を用いることにより、従来のような酸中和剤(ハロゲン吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性等が優れ、特に食品包装用に好適に活用される。
また、該エチレン(共)重合体においては実質的に添加剤がない状態で用いられることが望ましい。このような添加剤フリーの状態で使用することにより接着強度を向上させることができる。
【0051】
[他のポリオレフィン系樹脂(B)]
上記他のポリオレフィン系樹脂(B)としては、高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体などの高圧ラジカル法エチレン(共)重合体;チーグラー系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン系触媒等(チーグラー系触媒等と称する)による低・中・高圧重合によって得られる高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等のポリエチレン系重合体;ポリプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、ブロック共重合体等のポリプロピレン系重合体;炭素数C4〜C10のα-オレフィンの単独重合体又はその共重合体等が挙げられる。
【0052】
[低密度ポリエチレン]
上記低密度ポリエチレン(LDPE)は、MFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。また、LDPEの密度は、0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.91〜0.935g/cm3 の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。LDPEのメルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、LDPEの分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0の範囲のものが選択される。
特にLDPEを配合することにより押出ラミネートの成形加工性が向上し、ネックインの改良が著しい。配合量はエチレン(共)重合体に対して、5〜40質量%、好ましくは5〜30重量%の割合で添加される。
【0053】
[エチレン・ビニルエステル共重合体]
エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。
【0054】
[エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体]
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。
具体的にはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸;エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−無水マレイン酸ー酢酸ビニル、エチレン−無水マレイン酸ーアクリル酸エチル、等のエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体金属塩(アイオノマー)等が挙げられる。
【0055】
上記高圧ラジカル重合法とは、圧力500〜3500Kg/cm2Gの範囲、重合温度は100〜400℃の範囲、チューブ状リアクター、オートクレーブリアクターを使用して、有機または無機のパーオキサイド等の遊離基発生剤の存在下で重合される方法である。
【0056】
上記のチーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体としては、密度0.94〜0.97g/cm3 の高密度ポリエチレン、密度が0.91〜0.94g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 の超低密度ポリエチレン(VLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを挙げることができる。
【0057】
[高密度ポリエチレン]
高密度ポリエチレンは密度0.94〜0.97g/cm3 の範囲で、チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法でスラリー法、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で単段重合法、多段重合法で、エチレン単独もしくは少量のα−オレフィンとの共重合体により製造される。
MFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。
また、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0058】
[直鎖状低密度ポリエチレン]
チーグラー型触媒等によるLLDPEは、密度が0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.91〜0.93g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、MFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択されることが望ましい。
また、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0059】
[超低密度ポリエチレン]
チーグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.88〜0.91g/cm3未満 、好ましくは0.89〜0.905g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、LLDPEとエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。また、MFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択されることが望ましい。
【0060】
[エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム]
また、前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとしては、密度が0.86〜0.90g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、該エチレン・プロピレン系ゴムとしては、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0061】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンとの共重合体が挙げられ、具体的にはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体等が挙げられる。また、他の例としては炭素数C4〜C10のα-オレフィンの単独重合体又は該α−オレフィンと他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0062】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物(C)としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含む、分子量3000以下のエポキシ化合物が好適に用いられる。分子内のエポキシ基が1個のエポキシ化合物では、基材への接着性の改善効果があまり期待できない。また、このエポキシ化合物の分子量は、3000以下が好ましく、特に1500以下が好ましい。分子量が3000を超えると、組成物化した際に、十分な接着性の改善効果が得られない虞がある。
【0063】
このようなエポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油などが挙げられる。中でもエポキシ化植物油は、食品添加剤として認可されていることから、安全と作業性(扱い易さ)等から食品用、医療用等の包装材料等として好適であり、最も好ましい。
【0064】
ここで、エポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。これらのエポキシ化植物油は、例えば旭電化工業(株)製、O−130P(エポキシ化大豆油)、O−180A(エポキシ化亜麻仁油)等として市販されている。
なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていない、またはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明における作用効果を何ら妨げるものではない。
【0065】
エポキシ化合物(C)の添加量は、エチレン系(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜7質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。エポキシ化合物(C)の添加量が0.01質量部未満では、基材への接着性の改善効果が不十分であり、10質量部を超えるとベタツキによるブロッキングを起こしたり、臭いを発する等の問題が発生する虞がある。
【0066】
また、上記エポキシ化合物含有の樹脂材料に、さらに分子内にエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)を含有させてもよい。このオレフィン系樹脂(D)は必須ではないが、これを添加することによりさらに基材との接着性を向上させることができる。これは、エポキシ基と反応可能な官能基とエポキシ化合物との間で反応が起こり、樹脂成分にグラフトされるエポキシ化合物(C)が増加するためである。
【0067】
エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)の使用量は、エチレン系(共)重合体(A)と、他のポリオレフィン系樹脂(B)と、オレフィン系樹脂(D)との合計質量に対して、好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは2〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。官能基を有するオレフィン系樹脂(D)を30質量%以上添加すると、接着向上効果はあるものの、経済的ではない。
【0068】
エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基またはその誘導体、アミノ基、フェノール基、水酸基、チオール基などが挙げられる。中でも反応性と安定性のバランスから、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を分子内に有するオレフィン系樹脂(D)が好ましく用いられる。エポキシ基と反応する官能基の導入方法としては、主として共重合法と、グラフト法が挙げられる。
【0069】
例えば、共重合法によって製造される、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)としては、エチレンと反応可能な化合物とエチレンとの多元共重合体が挙げられる。
共重合に用いる化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。さらに、これらの不飽和化合物に加えて(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルアルコールエステル等を共重合させて用いることもできる。
これらの化合物は、エチレンとの共重合体において2種以上を混合して用いることができ、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種以上を併用することもできる。
【0070】
一方、グラフト変性によりエポキシ基と反応可能な官能基を導入したオレフィン系樹脂(D)は、ポリオレフィンと過酸化物等の遊離基発生剤と、変性用の化合物とを溶融もしくは溶液状態で作用させて製造するのが一般的である。
グラフト変性に用いられるポリオレフィンとしては、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のほかに、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(E(M)A)、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のように、酸あるいはその誘導体を既に含むような共重合体をさらにグラフト変性して用いても何ら差し支えない。
【0071】
グラフト変性時に用いる遊離基発生剤の種類については特に限定を受けないが、例えば、遊離基発生剤としては、一般的な有機過酸化物が用いられ、中でも反応性の良さと取り扱いの容易さからジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド等が好ましく用いられる。
【0072】
また、変性用の不飽和化合物としては、上記共重合法で用いられるエチレンと共重合可能な化合物と同様の不飽和化合物が用いられ、カルボン酸基あるいはカルボン酸無水物基とその金属塩、アミノ基、水酸基等、ラジカル反応可能な不飽和基を有していれば基本的には使用可能である。
このような変性用の不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸あるいは無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の不飽和水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。
【0073】
上記樹脂材料には、所望により慣用の添加剤、例えば酸化防止剤、可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、各種の無機・有機充填剤などを添加することは可能であるが、樹脂材料層(II)に用いられるエチレン系(共)重合体(A)に、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、有機系あるいは無機系顔料、造核剤、架橋剤などの公知の添加剤が配合されてないことが望ましい。このような添加剤フリーとすることにより従来ポリプロピレン等の結晶性樹脂に対して接着性が低いとされているポリエチレン系樹脂において、本願発明のエチレン(共)重合体は、特定範囲のODCB可溶分を有することによってアンカーコート剤を用いずに強固な接着強度を得ることができる。
【0074】
[樹脂材料]
樹脂材料層(II)を構成する樹脂材料は上記エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%である。
上記エチレン系(共)重合体(A)が10質量%未満、エチレン系重合体90質量%以上になると接着性等の前記諸物性が不十分となる虞が生じる。
上記の樹脂の配合量および樹脂の種類の選択は、目的、用途等に種々考慮される。
特に低温ヒートシール性を維持し、ラミネート成形における加工性、ネックイン等の改良のためにはエチレン(共)重合体(A)が95〜60重量%、低密度ポリエチレン(B)が5〜40重量%、好ましくはエチレン(共)重合体(A)が90〜70重量%、低密度ポリエチレン(B)が10〜30重量%の範囲で選択することが望ましい。
また、加工性を重視するならば低密度ポリエチレン(B)50〜80質量%、エチレン(共)重合体(A)20〜80質量%等の選択も好ましい態様である。また、耐熱性、ヒートシール性等を考慮する場合には高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が選択される。
【0075】
樹脂材料層(II)に用いられる他の樹脂材料は、上記エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%と他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%およびエポキシ化合物(C)0.01〜10質量部、所望によりオレフィン系樹脂(D)から構成される。
【0076】
上記樹脂材料は、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて混練する方法によって得ることができる。混練の温度は、通常、樹脂の融点以上〜350℃の範囲で行われる。場合によっては所望の配合割合でマスターバッチ化して用いることも可能である。
【0077】
[基材(III)]
本発明における基材(III)は、フイルムまたはシート(以下シートという)等が挙げられる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフイルム、シートを包含する)、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等を用いることができる。
【0078】
積層体の具体例としては、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/紙層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPP層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PA層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PA層/樹脂材料層(II)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/ONY層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/ONY層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PEs層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PEs層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPEs層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPEs層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/EVOH層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/EVOH層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/不織布層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/Al箔層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/HDPE等が挙げられる。
(ただし、結晶性樹脂:炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂、OPP:二軸延伸ポリプロピレン、PA:ポリアミド、ONY:二軸延伸ポリアミド、PEs:ポリエステル、OPEs:二軸延伸ポリエステル、EVOH:エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、Al箔:アルミニウム箔、HDPE:高密度ポリエチレンである。)
【0079】
[積層体の製造方法]
本発明においては積層体の製造方法はインフレーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法等が挙られるが、特に連続的に製造できる等の点から押出ラミネート法および共押出ラミネーション法が好ましい。
押出ラミネート法の場合には、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が200〜350℃の範囲、好ましくは240〜330℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲であることが好ましい。200℃未満であると、得られた積層体において、結晶性樹脂層(I)、樹脂材料層(II)、基材(III)との接着強度が低くなることがある。一方、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が350℃を超えると、樹脂が劣化するので、目的とする特性が得られなくなることがある。
【0080】
より具体的な積層体の製造方法としては、結晶性樹脂層(I)と、エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法または共押出ラミネート法で積層する方法が挙られる。
【0081】
例えば2層構造からなる積層体の製造方法の場合においては、前記エチレン(共)重合体またはその組成物をTダイなどにより、成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムとし、この溶融樹脂フィルムの少なくとも片面を、酸化処理してポリプロピレン樹脂層に押出ラミネートする方法、あるいはポリプロピレン系樹脂(I)とエチレン(共)重合体またはその組成物(II)を共押出しにより2層フィルムとする方法が挙られる。
【0082】
例えば、結晶性樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法で積層するにおいて、前記エチレン(共)重合体(A)または樹脂組成物を成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムを作製し、少なくとも該溶融樹脂フィルムの結晶性樹脂層(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを前記結晶性樹脂層(I)上に積層する方法が挙られる。
【0083】
また、他の積層体の製造方法は、成形温度200〜350℃で結晶性樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)を共押出しし、アンカーコート剤を使用せずに基材(III)に積層するに際し、前記樹脂材料層(II)の溶融樹脂フィルムの基材(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを基材(III)上に積層する方法が挙られる。
【0084】
さらに他の積層体の製造方法は、結晶性樹脂層(I)と基材(III)とを樹脂材料層(II)を介して、押出ラミネートまたは共押出ラミネートする方法などが挙られる。
【0085】
上記酸化処理においては、酸素またはオゾンを溶融樹脂フィルムに接触させることである。その際、酸素、空気で酸化処理してもよいし、酸化処理装置を用いて強制的に酸化処理してもよい。
具体的な酸化処理方法としては、オゾン処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙られるが、効率的であることから、特にオゾン処理が望ましい。
酸化処理の温度は特に制限ないが、好ましくは溶融状態の樹脂フィルムに施すことが、酸化が容易で効率的であることから、200〜320℃、好ましくは280〜310℃、より好ましくは290〜300℃の範囲であることが望ましい。
このような酸化処理をして結晶性樹脂層(I)、樹脂材料層(II)と所望により基材(III)とを積層すると、より低温で強固に積層させることができる。
【0086】
該オゾンによる酸化処理におけるオゾン処理量は、基材の種類、条件等により異なるものの、5g/Nm3×1Nm3/hr〜100g/Nm3×20Nm3/hr(すなわち、5〜2000g/hr)の範囲、好ましくは10g/Nm3×1.5Nm3/hr〜70g/Nm3×10Nm3/hr(すなわち、15〜700g/hr)、さらに好ましくは15g/Nm3×2Nm3/hr〜50g/Nm3×8Nm3/hr(すなわち、30〜400g/hr)の範囲である。オゾン処理量が5g/hr未満であると、酸化処理が不十分となり、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)との接着強度が向上しない虞が生じ、2000g/hrを超えると、樹脂組成物が劣化することがある。
【0087】
また、結晶性樹脂層および/または基材(III)にはコロナ放電処理等を施すことが望ましい。その際の、コロナ放電処理量は、1〜300w分/m2 、好ましくは5〜200w分/m2 、さらに好ましくは10〜100w分/m2 である。積層体はオゾンによる酸化処理とコロナ放電処理を併用することにより、接着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0088】
上記酸化処理においては、(イ)酸素原子濃度が1.8重量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、溶融樹脂フィルムの酸化された面が基材に接するように、基材上に溶融樹脂フィルムを積層して積層体を得ることが望ましい。
【0089】
本発明における樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)および基材(III)と接する面は、酸化されていることが望ましく、その酸化度は(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10〜2.0であり、好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.0〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.12〜1.8、さらに好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.2〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.15〜1.5、特に好ましくは(イ)酸素原子濃度が2.5〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.20〜1.2である。
このような範囲であると、接着に寄与するカルボニル基等の酸素含有官能基の生成量が多くなるので、接着強度が向上するものとなる。
【0090】
ここで、酸素原子濃度(Oc)とは、樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)と接している面において、ESCA法により測定された酸素O1s補正ピーク強度:Oと、炭素C1s補正ピーク強度:Cとを(式7)に代入して求めた値である。酸素原子濃度により接着表面の酸素原子導入量が定量化できる。
(式7) Oc=O/(C+O)×100(%)
また、表面酸化度(Or)とは、樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)と接している面において、酸化処理により、接着に寄与すると考えられるカルボニル基やアルデヒド基等の含酸素基を有する化合物が生成した程度を示す値である。表面酸化度(Or)は、表面FT−IR(ATR)法による吸光度のスペクトルにおいて、カルボニル基の吸収による1720cm-1付近のピークの高さをI(1720)、メチレン基の縦揺れ吸収による1370(1369)cm-1付近のピークの高さをI(1370)とした場合、(式8)で求めることができる。
(式8) Or=I(1720)/I(1370)
この数値は、メチレン基の縦揺れ吸収を元に算出している為、分子量の異なるポリマー間の比較が難しいが、上記(イ)を併せて測定することによって表面の酸化についてより詳細な情報が得られる。
【0091】
なお、酸素原子濃度(Oc)の測定および表面酸化度(Or)の測定は、ラミネート工程後に行われるが、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)とが接着してしまうと、樹脂材料層(II)の酸化処理面を測定するサンプルを得るのが困難になる。そのため、ラミネート工程の際に、ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプルが得られるようにしておく。
IR測定用サンプルは次のようにして得られる。まず、図6(b)に示すように、紙113の中央に四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が貼り合されたサンプル採取用紙115を用意する。そして、図6(a)に示すように、ベースフィルム112の一部に、用意したサンプル採取用紙115を、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が露出するように両面接着テープなどを用いて貼合しておく。次いで、ベースフィルム112上に溶融樹脂フィルム111をラミネートして積層体110を製造する。
そして、積層体110のサンプル採取用紙115の貼合部分を切り出す。サンプル採取用紙115の貼合部分の積層構造は、図7(a)のように、ベースフィルム112、紙113、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114、溶融樹脂フィルム111が固化して形成した樹脂材料層(II)の順に積層されている。四フッ化ビニリデン製粘着テープ114と樹脂材料層(II)とは接着していないので、図7(b)に示すように、樹脂材料層(II)を分離することにより酸化処理面118が完全に露出した樹脂材料層(II)単体が得られる。このようにして得られた樹脂材料層(II)単体をIR測定用サンプルとして用いて、酸化処理面118のIRを測定する。
【0092】
また、ESCA測定用サンプルは、上述したIR測定用サンプルを得る方法において、サンプル採取用紙115の代わりに、一方の面が未処理で他方の面がコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる。
このPETフィルムのコロナ面をフィルム112上に貼合し、PETフィルムの未処理面を樹脂材料層(II)側にし、上述したIR測定用サンプルと同様にしてESCA測定用サンプルを得る。そして、PETフィルム(未処理面)と接していた面のESCAを測定する。
【0093】
上述した積層体の製造にあっては、(a)〜(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)を含有する樹脂組成物からなる樹脂材料層(II)が、樹脂層(I)または基材(III)上に形成され、前記樹脂材料層(II)の、前記樹脂層(I)または基材(III)が接する面は、(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8重量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上である。(A)エチレン(共)重合体は、酸化され易く、かつ凝集破壊を引き起こすのに十分な高分子量成分を含む。そのため、樹脂材料層(II)の基材が接する面は、接着に寄与する酸素含有官能基の量が十分生成されており、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)または基材(III)とは高い接着強度で接着される。したがって、この積層体は、アンカーコート剤を使用する必要がなく、かつ溶剤などによる溶出分が少なく、クリーンである。さらに、アンカーコート剤を用いないことにより、コストが低下し、作業が簡略化する。また、溶剤を使用しなくなるので環境上の問題、臭気の問題がなくなる。
【0094】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
【0095】
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
[TREF]
まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、カラムを135℃に保った状態で、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃まで昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
[ODCB可溶分量]
試料0.5gを20mlのODCBに加え、135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却した。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取した。赤外分光器により、試料溶液であるろ液におけるメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により、ろ液中の試料濃度を算出した。この値より、25℃におけるODCB可溶分量を求めた。
【0096】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下については、実質的に含まないものとし、ND(non−detect)とした。
【0097】
エチレン共重合体(A)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(イ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン22gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(イ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(イ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A11)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0098】
エチレン共重合体(A12)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ロ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )31gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリイソブチルアルミニウム127gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424mlを添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ロ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ロ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給しての重合を行い、エチレン共重合体(A12)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0099】
エチレン共重合体(A2)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ハ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン74gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン78gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2133ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ハ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ハ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A2)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0100】
エチレン共重合体(A3)は次の方法で重合した。
[メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)の製造]
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=200)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。
ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を8kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)を製造した。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0101】
[チーグラー触媒によるLLDPE]
市販LLDPE:密度0.910g/cm3、MFR:10.0g/10分、コモノマー:4−メチルーペンテン−1
上記チーグラー触媒によるLLDPE樹脂を試料A4として表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
[使用材料]
ポリプロピレン系樹脂:
1)ホモポリプロピレン(PPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:42g/10分、商品名:PHA03A サンアロマー(株)製
2)ランダムポリプロピレン(RPPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:17g/10分、商品名:PM870A サンアロマー(株)製
3)スーパーランダムポリプロピレン(SRPPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:21g/10分、商品名:PH943 サンアロマー(株)製
4)ポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂 商品名:DX310M 三井化学(株)製
5)他のポリオレフィン系樹脂(B)として、市販の高圧ラジカル重合法による分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた。
密度:0.919g/cm3、MFR:8.1g/10分、商品名:JH607C、日本ポリオレフィン(株)製
6)上質紙;紀州製紙(株)製 はまゆう 50g/m2
7)ポリアミドフィルム(PA)
二軸延伸ナイロン(ONY)ユニチカ(株)製 15μm
8)ポリエステルフィルム(PET)
ユニチカ(株)製 12μm
9)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)フィルム
銘柄名:エバール EF-XL クラレ(株)製 20μm
10)アルミニウム箔(Al箔)
昭和アルミニウム製 30μm
11)シリカ蒸着PETフィルム
銘柄名:テックバリアU 三菱化学興人パックス(株)製12μm
12)アルミナ蒸着フィルム
銘柄名:VM1011HG−CR 東洋メタライジング(株)製12μm
13)不織布
銘柄名:ミライフTY1010E 新日石プラスト(株)製 20g/m2
【0104】
[実施例1〜3]
上記添加剤(酸化防止剤等)を一切配合していないエチレン共重合体(A11)(添加剤フリー品)を用いて、表面層として(I)各厚さ15μmのポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン樹脂:PP、ランダムポリプロピレン樹脂:RPP、ス−パーランダムポリプロピレン樹脂:SRPP)各厚さ15μmを共押出した溶融フィルムのエチレン共重合体(A)面をオゾン処理して、厚さ50g/m2の上質紙の上に、アンカーコート剤を使用せずに、押出ラミネートして、直接接着して積層体を製造した。
ラミネート後40℃、2時間エージング後、得られた各積層体について樹脂層(I)と樹脂材料層(II)の間、および、樹脂材料層(II)と基材(III)の間における各接着強度を測定した。結果を表2に示した。
尚、押出機:90mmφ(L/D=32)、成形温度300℃、成形速度200m/分のラミネート成形条件で積層体を製造した。
接着強度の測定は、15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、JIS K6854に準拠して、引張速度300mm/分の条件でT剥離により剥離強度を測定し、この剥離強度を接着強度とした。
【0105】
[実施例4〜6]
エチレン共重合体(A)として(A12)、(A2)、(A3)の添加剤フリー品に代えて実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例7〜9]
エチレン共重合体(A11)に表2に示される所定量のLDPEを配合して実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例10〜16]
基材(III)を表2に示すように代えた以外は実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例17]
ポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂層(I)を用いて表面層の厚さ50μm、エチレン共重合体(A11)厚さ15μmの共押出フィルムを実施例1と同様にして積層体を製造した。接着強度の測定結果を表2に示した。
【0106】
【表2】
【0107】
[比較例1〜3]
また、比較のため、表3に示すように、上記エチレン共重合体(A)を用いずに、同様にして積層体を製造し、ポリプロピレン系樹脂層(I)と基材(III)との間の接着強度を測定した。結果を表3に示した。
【0108】
【表3】
【0109】
[比較例4〜5]
樹脂材料層(II)としてチーグラー系触媒によるエチレン共重合体(A4)を用いて実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表4に示した。また、樹脂材料層(II)として高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いて、実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表4に示した。
【0110】
【表4】
【0111】
[比較例6〜9]
接着剤としてアンカーコート剤を用いて、プロピレン−エチレンランダム共重合体(I)と基材(III)との積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表5に示した。
アンカーコート剤(AC剤)には、大日精化工業(株)製、セイカダイン2710及びセイカダイン2710B、市販の酢酸エチルを用い、セイカダイン2710A:セイカダイン2710B:酢酸エチル1:2:15.5質量%の比率でブレンドして使用した。
【0112】
[比較例10〜11]
ドライラミネーションによりプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる樹脂層(I)と基材(III)との積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表5に示した。
なお、ドライラミネーションは、押出ラミネート機付属のACコーターにて、プレーンロールを使用して、東洋モートン(株)製、AD−308A:AD−308B:酢酸エチル1:1:3の比率でブレンド後、塗工量3g/m2、グラビアコート、ドライヤー80℃、圧着条件50℃−4kg/m2、30m/min.で行なった。ラミネート後40℃、2時間エージング後、接着強度を測定した。
【0113】
【表5】
【0114】
[実施例18]
エポキシ化大豆油(分子量:938、商品名;アデカサイザー、旭電化工業(株)製、以下、ESOと略す)を含浸(10000ppm)させた上記エチレン共重合体(A11)70質量部に、上記LDPE30質量部を配合し、酸化防止剤およびハロゲン吸収剤(ステアリン酸カルシウム)を添加せずにタンブラーミキサーでドライブレンドした後、170℃でペレタイズして樹脂材料層(II)用の樹脂材料を調製した。
そして、実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
実施例1〜3と実施例18、および比較例1〜3と比較例5についてネックインを測定した結果を表7に示した。
【0117】
【表7】
【0118】
[評価結果]
上記表2〜6から明らかなように、本実施例の積層体であれば、各種の結晶性樹脂層(I)及び各種の基材(III)に対して、きわめて高い接着強度を発揮している。
また表7から明らかなように、ポリプロピレン系樹脂(PP)は通常ネックインが悪いが、ネックインのよいエチレン(共)重合体(A)あるいはLDPEとともに共押出するとPP層がPE樹脂に引張られてPP単独ラミネートよりネックインは改善されている。
【0119】
【発明の効果】
本発明の積層体にあっては、アンカーコート剤を使用することなく、樹脂材料層(II)に用いられるエチレン系(共)重合体(A)が、ポリプロピレン系樹脂等の結晶性樹脂である炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(I)、所望により基材に直接接着しても実用的に十分な接着強度を発揮し、接着強度が高く、層間剥離によるトラブル発生が低減する。
また、ネックインが改善されるものとなる。さらに、アンカーコート剤を使用しないので、溶剤の使用による作業環境等の汚染がなく、積層体中の残留溶剤がなくなる。また、アンカーコート剤を使用することなく十分な接着強度が得られるので、高速成形が可能となり、コストが低減される。また、結晶性および融点の高いポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂などを用いることにより耐熱性等に優れた積層体を提供することができ、包装材料等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るエチレン系(共)重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】本発明に係るエチレン共重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図4】メタロセン系触媒によるエチレン共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図5】本発明におけるエチレン共重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図6】IR測定用サンプルを作製する方法を示す図であって、(a)は、ラミネート工程を示す斜視図であり、(b)はサンプル採取用紙を示す斜視図である。
【図7】IR測定用サンプルを示す断面図である。
【符号の説明】
10 積層体
I 結晶性樹脂層
II 樹脂材料層
III 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(以下結晶性樹脂層(I)と称することもある)とポリエチレン系樹脂層を直接接着してなる積層体およびその製造方法であって、非極性で、結晶性の高い炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂にアンカーコート剤等の接着剤を用いずとも層間接着強度に優れ、引裂強度、成形加工性、ヒートシール強度、耐熱性等にも優れた積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物等の各種プラスチックフィルム、アルミニウム箔、セロファン、紙等の基材に、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系重合体を押出ラミネートしてヒートシール性、防湿性等を付与することが行われており、それらラミネート製品は主に包装資材として多量に使用されている。
押出ラミネート成形では当然のことながら、各種基材との高い接着性が要求される。しかし、ポリプロピレン系樹脂やポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂は非極性で結晶性の高い樹脂であることから接着性能は本質的に劣る。
例えば、紙製基材に耐熱性等を付与するためにポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の層を積層することが求められるが、紙とポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂との接着性は低い。そこで、紙と炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂との間に接着層として低密度ポリエチレンを介在することが考えられるが、低密度ポリエチレンとポリプロピレン系樹脂等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の接着強度は小さい。
したがって、基材に押出ラミネート成形する場合においては一般に樹脂温度を310℃以上の高温に設定し、押出機から押出された溶融樹脂薄膜の表面を酸化させることにより基材との接着性能を向上させている。しかしながら、上記樹脂温度を310℃以上の高温にすることはポリプロピレン等の炭素数3〜10のα−オレフィン系樹脂の酸化劣化を生じさせ、多量の発煙による作業環境の汚染及び周辺環境の悪化等の影響がある。また、高温酸化によるラミネート製品の製品品質の低下、臭気等、ヒートシール層のコスト高等をもたらすという問題点を有している。
また、生産性を向上させるためにより高速成形を行うと接着強度が低下するという欠点をもっていた。
そこで、特許文献1には、ポリエチレン系樹脂を150〜290℃の低温で押出してオゾン処理し、被処理面をアンカーコート処理された基材に圧着ラミネートする方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−157724号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように成形温度を下げると、発煙や臭気は軽減され、発煙や臭気の問題は解消されるものの、成形温度が下がるため接着強度が低下し、概して成形速度を速くできず、また肉厚を薄くできないなど生産性及び経済性の面で大きな問題を残している。
上記の問題点を解消するために樹脂温度を高めると、やはり前述のような発煙の発生等による作業環境及び周辺環境への影響の増大、高温での酸化劣化による製品の臭気の悪化等の問題が発生する。
さらに、昨今では高速成形性が要望されていることから、高い接着性を確保しつつ成形速度を上げるために、樹脂温度をより高くしなければならず、上記問題が深刻となっている。また、高速成形のために、オゾン処理を併用しても充分な接着性を確保することは困難であった。
また、アンカーコート剤を使用すると、このアンカーコート剤には溶剤が含まれているため、揮発した溶剤によって作業環境が悪化するという問題があった。また、溶剤を取り扱うため、細心の注意を払う必要があった。また、換気設備を整える必要があり、このような設備に対する負担によって製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、層間接着強度に優れ、引裂強度、耐衝撃性、成形加工性、ヒートシール強度、耐熱性等にも優れた積層体であり、ポリプロピレン系樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂層との接着強度を充分満足できる水準に維持できること、押出ラミネート成形時の樹脂温度を低く抑えることができ、作業環境及び周辺環境への影響を極力抑制できること、樹脂温度を高くせずにより高速成形性を向上せしめることが可能な積層体及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層体は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、
下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)とをアンカーコート剤を使用せずに直接接着してなる積層構造を有することを特徴とするものである。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
ここで、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(e)の要件を満足することが望ましい。
(e):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足すること
(式2) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧0
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが望ましい。
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることが望ましい。
(g):25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレートMFRが下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(h):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
【0007】
また、エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることが望ましい。
(i):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること
(j):融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−19
ここで、エチレン系(共)重合体(A2)が、さらに下記(k)の要件を満足することが望ましい。
(k):メルトテンションMTとメルトフローレートMFRが、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
【0008】
本発明の積層体の製造方法は、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法または共押出ラミネート法で積層することを特徴とするものである。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
また、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法で積層するに際し、前記エチレン(共)重合体(A)を含む樹脂材料またはその樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料を成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムを作製し、少なくとも該溶融樹脂フィルムの炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを前記炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)上に積層することが望ましい。
さらに、成形温度200〜350℃で炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)を共押出しし、アンカーコート剤を使用せずに基材(III)に積層するに際し、前記樹脂材料層(II)の溶融樹脂フィルムの基材(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを基材(III)上に積層することが望ましい。
【0009】
また、炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と基材(III)とを樹脂材料層(II)を介して、押出ラミネートまたは共押出ラミネートすることが望ましい。
酸化処理として、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度が200〜350℃の範囲でオゾン処理することが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。この積層体10は、炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層11と、該炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層11が直接接着した樹脂層12と、該樹脂層12に接する基材13とを有して概略構成されるものである。
【0011】
[炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(I)]
本発明における樹脂層(I)には、用途に応じた種々の炭素数3以上のα−オレフィンの単独重合体、共重合体が適用できる。例えば、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等による低・中・高圧重合によって得られる、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂およびそれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもポリプロピレン系樹脂またはポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂およびそれらの混合物等が好ましい。
【0012】
[ポリプロピレン系樹脂]
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体またはプロピレンと他の炭素数2〜20の他のα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。ブロック共重合体またはランダム共重合体のコモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等のプロピレン以外のα−オレフィン類が用いられるが、なかでもエチレンが特に好ましい。これらの共重合体中のプロピレン含量は60〜100モル%が好ましく、80〜99モル%が特に好ましい。α−オレフィンとしてエチレンを用いたブロック共重合体にあっては、分子内のエチレン−プロピレンブロックがホモポリプロピレンブロックに分散してゴム弾性を示し、ゴム成分として機能する。このゴム成分の含量としては、ブロック共重合体の10〜25質量%が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の荷重2.16kg(230℃)でのメルトフローレートが0.001〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.01〜100 g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。該メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る虞が生じる。また、メルトフローレートが高すぎる場合には製品の強度低下の懸念が生じる。
【0013】
[ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂]
ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂としては、4−メチル−1−ペンテン単独重合体、または、これと1種または複数種の他の炭素数2〜16のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂の荷重5.0kgでのメルトフローレート(260℃)は20〜500g/10分であることが好ましく、より好ましくは50〜300g/10分である。該メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る。
また、4−メチル−1−ペンテン系樹脂またはその組成物を用いることもできる。その組成物とは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィンを配合したものである。中でも、特に耐熱性、剥離性、或いは接着層との接着強度などの点から、ポリプロピレン系樹脂を添加したものが好ましい。
【0014】
上記ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物は、上記のポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂が95〜50質量%及び他のポリオレフィン系樹脂が5〜50質量%の範囲で配合されることが望まれる。より好ましくは、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂成分が90〜60質量%、他のポリオレフィン系樹脂が10〜40質量%である。このような構成とすることにより剥離性または耐熱性が向上する。
また、本発明におけるポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物全体としては、その荷重2.16kgでのメルトフローレート(230℃)が0.001〜1000g/10分であることが望ましい。より好ましくは0.01〜100g/10分であり、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。メルトフローレートが低すぎても高すぎても成形性が劣る虞が生じる。
また、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂組成物は、その融点が220〜250℃のものが好ましく、230〜240℃であればより好ましい。
【0015】
[エチレン系(共)重合体(A)を含む樹脂材料層(II)]
本発明における樹脂材料層(II)は、エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなるものである。
【0016】
[エチレン系(共)重合体(A)]
エチレン系(共)重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0017】
エチレン系(共)重合体(A)の(a)密度は、0.86〜0.97g/cm3の範囲であり、好ましくは 0.89〜0.95g/cm3、より好ましくは0.90〜0.94g/cm3の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満では、剛性(腰の強さ)、耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.97g/cm3 を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
【0018】
エチレン系(共)重合体(A)の(b)メルトフローレート(JIS K 6760準拠 以下、MFRと記す)は、0.01〜100g/10分の範囲であり、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が劣るものとなる虞が生じる。また、MFRが100g/10分を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が劣るものとなる虞が生じる。
【0019】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、下記(c)および(d)の要件をさらに満足するものである。
(c)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5であること、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.5の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣るものとなる虞が生じる。Mw/Mnが4.5を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
ここで、エチレン系(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0020】
エチレン系(共)重合体(A)は、例えば、図2に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足する。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が劣るものとなる虞が生じる。
【0021】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン系(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0022】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、さらに、(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足することが好ましい。
T75−T25と密度dが上記(式2)の関係を満足する場合には、ヒートシール強度と耐熱性が向上するものとなる。
【0023】
本発明のエチレン系(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが望ましい。
本発明のエチレン(共)重合体(A)の(f)ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)は8000〜30000に範囲、好ましくは10000〜28000、更に好ましくは13000〜27000の範囲であることが望ましい。
該質量平均分子量が8000未満では、成形品のべたつきやブロッキングの原因となる。また、分子鎖の絡み合いが起き難く、凝集破壊が起こらず、接着強度の向上に寄与しないものとなる虞がある。また、質量平均分子量(Mw)が、30000を超える場合は、接着力が低下する懸念が生じる。
ここで、ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)の測定方法では、まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。次に試料とODCBが入った容器を室温(23℃)にて1晩静置し、ポリフッ化ビニリデンフィルターで濾過して、濾液を採取する。そして、その濾液をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)に供して質量平均分子量を測定する。
【0024】
エチレン系(共)重合体(A)は、さらに後述の(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)、または、さらに後述の(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)のいずれかであることが好ましい。
【0025】
エチレン共重合体(A1)は、(g)25℃におけるODCB可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRが、下記(式3)および(式4)の関係を満足する。
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。
【0026】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0027】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン系(共)重合体(A)に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0028】
また、エチレン系(共)重合体(A1)は、(h)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度の高温側のピーク温度が85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0029】
ここで、エチレン系(共)重合体(A1)は、図3に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレン系(共)重合体である。一方、図4のエチレン系(共)重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有するエチレン系(共)重合体であり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体がこれに該当する。
【0030】
本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、図5に示すように、(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つである。
【0031】
また、本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−19
融点Tm1と密度dが上記(式5)の関係を満足すると、より耐熱性が向上するものとなる。
【0032】
また、エチレン系(共)重合体(A2)の中でも、さらに下記(k)の要件を満足するエチレン(共)重合体が好適である。
(k)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足する。
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、押出成形等の成形加工性が良好なものとなる。
【0033】
ここで、エチレン共重合体(A2)は、図5に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体は上記(式2)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体とは区別されるものである。
【0034】
エチレン系(共)重合体(A)は、シングルサイト系触媒の存在下に、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンとの重合により容易に製造される。該エチレン系(共)重合体(A)は、従来のチーグラー系触媒から得られる重合体より分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性等に優れ、基材等に対する接着性にも優れるものである。
上記シングルサイト系触媒としては、典型的なメタロセン触媒、CGC型触媒の他に、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒等が挙げられる。
【0035】
本発明のエチレン系(共)重合体(A)は、特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で製造することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−r で表される化合物(式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0036】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−r で表される化合物の式中、Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。p、qおよびrはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0037】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4 化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0038】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 はそれぞれ炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0039】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0040】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0041】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0042】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0043】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0044】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0045】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0046】
ホウ素化合物としてはテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。中でも、N,N_−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボランが好適である。
【0047】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0049】
エチレン系(共)重合体(A)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2 G、好ましくは常圧〜20kg/cm2 Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2 G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0050】
エチレン系(共)重合体(A)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンのない触媒を使用することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない2ppm以下(ND:Non−Detect)のものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン系(共)重合体(A)を用いることにより、従来のような酸中和剤(ハロゲン吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性等が優れ、特に食品包装用に好適に活用される。
また、該エチレン(共)重合体においては実質的に添加剤がない状態で用いられることが望ましい。このような添加剤フリーの状態で使用することにより接着強度を向上させることができる。
【0051】
[他のポリオレフィン系樹脂(B)]
上記他のポリオレフィン系樹脂(B)としては、高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体などの高圧ラジカル法エチレン(共)重合体;チーグラー系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン系触媒等(チーグラー系触媒等と称する)による低・中・高圧重合によって得られる高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等のポリエチレン系重合体;ポリプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、ブロック共重合体等のポリプロピレン系重合体;炭素数C4〜C10のα-オレフィンの単独重合体又はその共重合体等が挙げられる。
【0052】
[低密度ポリエチレン]
上記低密度ポリエチレン(LDPE)は、MFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。また、LDPEの密度は、0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.91〜0.935g/cm3 の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。LDPEのメルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、LDPEの分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0の範囲のものが選択される。
特にLDPEを配合することにより押出ラミネートの成形加工性が向上し、ネックインの改良が著しい。配合量はエチレン(共)重合体に対して、5〜40質量%、好ましくは5〜30重量%の割合で添加される。
【0053】
[エチレン・ビニルエステル共重合体]
エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。
【0054】
[エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体]
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分である。
具体的にはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸;エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−無水マレイン酸ー酢酸ビニル、エチレン−無水マレイン酸ーアクリル酸エチル、等のエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体金属塩(アイオノマー)等が挙げられる。
【0055】
上記高圧ラジカル重合法とは、圧力500〜3500Kg/cm2Gの範囲、重合温度は100〜400℃の範囲、チューブ状リアクター、オートクレーブリアクターを使用して、有機または無機のパーオキサイド等の遊離基発生剤の存在下で重合される方法である。
【0056】
上記のチーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法およびその他の公知の方法によるエチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体としては、密度0.94〜0.97g/cm3 の高密度ポリエチレン、密度が0.91〜0.94g/cm3 の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 の超低密度ポリエチレン(VLDPE)、密度が0.86〜0.91g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムを挙げることができる。
【0057】
[高密度ポリエチレン]
高密度ポリエチレンは密度0.94〜0.97g/cm3 の範囲で、チーグラー型触媒等を用いる高・中・低圧法でスラリー法、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で単段重合法、多段重合法で、エチレン単独もしくは少量のα−オレフィンとの共重合体により製造される。
MFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択される。
また、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0058】
[直鎖状低密度ポリエチレン]
チーグラー型触媒等によるLLDPEは、密度が0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.91〜0.93g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、MFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分、より好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択されることが望ましい。
また、α−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12の範囲のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0059】
[超低密度ポリエチレン]
チーグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.88〜0.91g/cm3未満 、好ましくは0.89〜0.905g/cm3 の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、LLDPEとエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)の中間の性状を示すポリエチレンである。また、MFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲で選択されることが望ましい。
【0060】
[エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム]
また、前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとしては、密度が0.86〜0.90g/cm3 のエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、該エチレン・プロピレン系ゴムとしては、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。
【0061】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンとの共重合体が挙げられ、具体的にはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体等が挙げられる。また、他の例としては炭素数C4〜C10のα-オレフィンの単独重合体又は該α−オレフィンと他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0062】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物(C)としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含む、分子量3000以下のエポキシ化合物が好適に用いられる。分子内のエポキシ基が1個のエポキシ化合物では、基材への接着性の改善効果があまり期待できない。また、このエポキシ化合物の分子量は、3000以下が好ましく、特に1500以下が好ましい。分子量が3000を超えると、組成物化した際に、十分な接着性の改善効果が得られない虞がある。
【0063】
このようなエポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油などが挙げられる。中でもエポキシ化植物油は、食品添加剤として認可されていることから、安全と作業性(扱い易さ)等から食品用、医療用等の包装材料等として好適であり、最も好ましい。
【0064】
ここで、エポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。これらのエポキシ化植物油は、例えば旭電化工業(株)製、O−130P(エポキシ化大豆油)、O−180A(エポキシ化亜麻仁油)等として市販されている。
なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていない、またはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明における作用効果を何ら妨げるものではない。
【0065】
エポキシ化合物(C)の添加量は、エチレン系(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜7質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。エポキシ化合物(C)の添加量が0.01質量部未満では、基材への接着性の改善効果が不十分であり、10質量部を超えるとベタツキによるブロッキングを起こしたり、臭いを発する等の問題が発生する虞がある。
【0066】
また、上記エポキシ化合物含有の樹脂材料に、さらに分子内にエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)を含有させてもよい。このオレフィン系樹脂(D)は必須ではないが、これを添加することによりさらに基材との接着性を向上させることができる。これは、エポキシ基と反応可能な官能基とエポキシ化合物との間で反応が起こり、樹脂成分にグラフトされるエポキシ化合物(C)が増加するためである。
【0067】
エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)の使用量は、エチレン系(共)重合体(A)と、他のポリオレフィン系樹脂(B)と、オレフィン系樹脂(D)との合計質量に対して、好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは2〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。官能基を有するオレフィン系樹脂(D)を30質量%以上添加すると、接着向上効果はあるものの、経済的ではない。
【0068】
エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基またはその誘導体、アミノ基、フェノール基、水酸基、チオール基などが挙げられる。中でも反応性と安定性のバランスから、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を分子内に有するオレフィン系樹脂(D)が好ましく用いられる。エポキシ基と反応する官能基の導入方法としては、主として共重合法と、グラフト法が挙げられる。
【0069】
例えば、共重合法によって製造される、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)としては、エチレンと反応可能な化合物とエチレンとの多元共重合体が挙げられる。
共重合に用いる化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。さらに、これらの不飽和化合物に加えて(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルアルコールエステル等を共重合させて用いることもできる。
これらの化合物は、エチレンとの共重合体において2種以上を混合して用いることができ、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種以上を併用することもできる。
【0070】
一方、グラフト変性によりエポキシ基と反応可能な官能基を導入したオレフィン系樹脂(D)は、ポリオレフィンと過酸化物等の遊離基発生剤と、変性用の化合物とを溶融もしくは溶液状態で作用させて製造するのが一般的である。
グラフト変性に用いられるポリオレフィンとしては、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のほかに、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(E(M)A)、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のように、酸あるいはその誘導体を既に含むような共重合体をさらにグラフト変性して用いても何ら差し支えない。
【0071】
グラフト変性時に用いる遊離基発生剤の種類については特に限定を受けないが、例えば、遊離基発生剤としては、一般的な有機過酸化物が用いられ、中でも反応性の良さと取り扱いの容易さからジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド等が好ましく用いられる。
【0072】
また、変性用の不飽和化合物としては、上記共重合法で用いられるエチレンと共重合可能な化合物と同様の不飽和化合物が用いられ、カルボン酸基あるいはカルボン酸無水物基とその金属塩、アミノ基、水酸基等、ラジカル反応可能な不飽和基を有していれば基本的には使用可能である。
このような変性用の不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸あるいは無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の不飽和水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。
【0073】
上記樹脂材料には、所望により慣用の添加剤、例えば酸化防止剤、可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、各種の無機・有機充填剤などを添加することは可能であるが、樹脂材料層(II)に用いられるエチレン系(共)重合体(A)に、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、有機系あるいは無機系顔料、造核剤、架橋剤などの公知の添加剤が配合されてないことが望ましい。このような添加剤フリーとすることにより従来ポリプロピレン等の結晶性樹脂に対して接着性が低いとされているポリエチレン系樹脂において、本願発明のエチレン(共)重合体は、特定範囲のODCB可溶分を有することによってアンカーコート剤を用いずに強固な接着強度を得ることができる。
【0074】
[樹脂材料]
樹脂材料層(II)を構成する樹脂材料は上記エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%である。
上記エチレン系(共)重合体(A)が10質量%未満、エチレン系重合体90質量%以上になると接着性等の前記諸物性が不十分となる虞が生じる。
上記の樹脂の配合量および樹脂の種類の選択は、目的、用途等に種々考慮される。
特に低温ヒートシール性を維持し、ラミネート成形における加工性、ネックイン等の改良のためにはエチレン(共)重合体(A)が95〜60重量%、低密度ポリエチレン(B)が5〜40重量%、好ましくはエチレン(共)重合体(A)が90〜70重量%、低密度ポリエチレン(B)が10〜30重量%の範囲で選択することが望ましい。
また、加工性を重視するならば低密度ポリエチレン(B)50〜80質量%、エチレン(共)重合体(A)20〜80質量%等の選択も好ましい態様である。また、耐熱性、ヒートシール性等を考慮する場合には高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が選択される。
【0075】
樹脂材料層(II)に用いられる他の樹脂材料は、上記エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%と他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%およびエポキシ化合物(C)0.01〜10質量部、所望によりオレフィン系樹脂(D)から構成される。
【0076】
上記樹脂材料は、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて混練する方法によって得ることができる。混練の温度は、通常、樹脂の融点以上〜350℃の範囲で行われる。場合によっては所望の配合割合でマスターバッチ化して用いることも可能である。
【0077】
[基材(III)]
本発明における基材(III)は、フイルムまたはシート(以下シートという)等が挙げられる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフイルム、シートを包含する)、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等を用いることができる。
【0078】
積層体の具体例としては、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/紙層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPP層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PA層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PA層/樹脂材料層(II)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/ONY層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/ONY層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PEs層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/PEs層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPEs層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/OPEs層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/EVOH層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/EVOH層/樹脂材料層(II)/結晶性樹脂層(I)、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/不織布層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/Al箔層、結晶性樹脂層(I)/樹脂材料層(II)/HDPE等が挙げられる。
(ただし、結晶性樹脂:炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂、OPP:二軸延伸ポリプロピレン、PA:ポリアミド、ONY:二軸延伸ポリアミド、PEs:ポリエステル、OPEs:二軸延伸ポリエステル、EVOH:エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、Al箔:アルミニウム箔、HDPE:高密度ポリエチレンである。)
【0079】
[積層体の製造方法]
本発明においては積層体の製造方法はインフレーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法等が挙られるが、特に連続的に製造できる等の点から押出ラミネート法および共押出ラミネーション法が好ましい。
押出ラミネート法の場合には、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が200〜350℃の範囲、好ましくは240〜330℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲であることが好ましい。200℃未満であると、得られた積層体において、結晶性樹脂層(I)、樹脂材料層(II)、基材(III)との接着強度が低くなることがある。一方、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が350℃を超えると、樹脂が劣化するので、目的とする特性が得られなくなることがある。
【0080】
より具体的な積層体の製造方法としては、結晶性樹脂層(I)と、エチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法または共押出ラミネート法で積層する方法が挙られる。
【0081】
例えば2層構造からなる積層体の製造方法の場合においては、前記エチレン(共)重合体またはその組成物をTダイなどにより、成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムとし、この溶融樹脂フィルムの少なくとも片面を、酸化処理してポリプロピレン樹脂層に押出ラミネートする方法、あるいはポリプロピレン系樹脂(I)とエチレン(共)重合体またはその組成物(II)を共押出しにより2層フィルムとする方法が挙られる。
【0082】
例えば、結晶性樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法で積層するにおいて、前記エチレン(共)重合体(A)または樹脂組成物を成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムを作製し、少なくとも該溶融樹脂フィルムの結晶性樹脂層(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを前記結晶性樹脂層(I)上に積層する方法が挙られる。
【0083】
また、他の積層体の製造方法は、成形温度200〜350℃で結晶性樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)を共押出しし、アンカーコート剤を使用せずに基材(III)に積層するに際し、前記樹脂材料層(II)の溶融樹脂フィルムの基材(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを基材(III)上に積層する方法が挙られる。
【0084】
さらに他の積層体の製造方法は、結晶性樹脂層(I)と基材(III)とを樹脂材料層(II)を介して、押出ラミネートまたは共押出ラミネートする方法などが挙られる。
【0085】
上記酸化処理においては、酸素またはオゾンを溶融樹脂フィルムに接触させることである。その際、酸素、空気で酸化処理してもよいし、酸化処理装置を用いて強制的に酸化処理してもよい。
具体的な酸化処理方法としては、オゾン処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙られるが、効率的であることから、特にオゾン処理が望ましい。
酸化処理の温度は特に制限ないが、好ましくは溶融状態の樹脂フィルムに施すことが、酸化が容易で効率的であることから、200〜320℃、好ましくは280〜310℃、より好ましくは290〜300℃の範囲であることが望ましい。
このような酸化処理をして結晶性樹脂層(I)、樹脂材料層(II)と所望により基材(III)とを積層すると、より低温で強固に積層させることができる。
【0086】
該オゾンによる酸化処理におけるオゾン処理量は、基材の種類、条件等により異なるものの、5g/Nm3×1Nm3/hr〜100g/Nm3×20Nm3/hr(すなわち、5〜2000g/hr)の範囲、好ましくは10g/Nm3×1.5Nm3/hr〜70g/Nm3×10Nm3/hr(すなわち、15〜700g/hr)、さらに好ましくは15g/Nm3×2Nm3/hr〜50g/Nm3×8Nm3/hr(すなわち、30〜400g/hr)の範囲である。オゾン処理量が5g/hr未満であると、酸化処理が不十分となり、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)との接着強度が向上しない虞が生じ、2000g/hrを超えると、樹脂組成物が劣化することがある。
【0087】
また、結晶性樹脂層および/または基材(III)にはコロナ放電処理等を施すことが望ましい。その際の、コロナ放電処理量は、1〜300w分/m2 、好ましくは5〜200w分/m2 、さらに好ましくは10〜100w分/m2 である。積層体はオゾンによる酸化処理とコロナ放電処理を併用することにより、接着強度を飛躍的に向上させることができる。
【0088】
上記酸化処理においては、(イ)酸素原子濃度が1.8重量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、溶融樹脂フィルムの酸化された面が基材に接するように、基材上に溶融樹脂フィルムを積層して積層体を得ることが望ましい。
【0089】
本発明における樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)および基材(III)と接する面は、酸化されていることが望ましく、その酸化度は(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10〜2.0であり、好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.0〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.12〜1.8、さらに好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.2〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.15〜1.5、特に好ましくは(イ)酸素原子濃度が2.5〜40重量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.20〜1.2である。
このような範囲であると、接着に寄与するカルボニル基等の酸素含有官能基の生成量が多くなるので、接着強度が向上するものとなる。
【0090】
ここで、酸素原子濃度(Oc)とは、樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)と接している面において、ESCA法により測定された酸素O1s補正ピーク強度:Oと、炭素C1s補正ピーク強度:Cとを(式7)に代入して求めた値である。酸素原子濃度により接着表面の酸素原子導入量が定量化できる。
(式7) Oc=O/(C+O)×100(%)
また、表面酸化度(Or)とは、樹脂材料層(II)の、結晶性樹脂層(I)と接している面において、酸化処理により、接着に寄与すると考えられるカルボニル基やアルデヒド基等の含酸素基を有する化合物が生成した程度を示す値である。表面酸化度(Or)は、表面FT−IR(ATR)法による吸光度のスペクトルにおいて、カルボニル基の吸収による1720cm-1付近のピークの高さをI(1720)、メチレン基の縦揺れ吸収による1370(1369)cm-1付近のピークの高さをI(1370)とした場合、(式8)で求めることができる。
(式8) Or=I(1720)/I(1370)
この数値は、メチレン基の縦揺れ吸収を元に算出している為、分子量の異なるポリマー間の比較が難しいが、上記(イ)を併せて測定することによって表面の酸化についてより詳細な情報が得られる。
【0091】
なお、酸素原子濃度(Oc)の測定および表面酸化度(Or)の測定は、ラミネート工程後に行われるが、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)とが接着してしまうと、樹脂材料層(II)の酸化処理面を測定するサンプルを得るのが困難になる。そのため、ラミネート工程の際に、ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプルが得られるようにしておく。
IR測定用サンプルは次のようにして得られる。まず、図6(b)に示すように、紙113の中央に四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が貼り合されたサンプル採取用紙115を用意する。そして、図6(a)に示すように、ベースフィルム112の一部に、用意したサンプル採取用紙115を、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が露出するように両面接着テープなどを用いて貼合しておく。次いで、ベースフィルム112上に溶融樹脂フィルム111をラミネートして積層体110を製造する。
そして、積層体110のサンプル採取用紙115の貼合部分を切り出す。サンプル採取用紙115の貼合部分の積層構造は、図7(a)のように、ベースフィルム112、紙113、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114、溶融樹脂フィルム111が固化して形成した樹脂材料層(II)の順に積層されている。四フッ化ビニリデン製粘着テープ114と樹脂材料層(II)とは接着していないので、図7(b)に示すように、樹脂材料層(II)を分離することにより酸化処理面118が完全に露出した樹脂材料層(II)単体が得られる。このようにして得られた樹脂材料層(II)単体をIR測定用サンプルとして用いて、酸化処理面118のIRを測定する。
【0092】
また、ESCA測定用サンプルは、上述したIR測定用サンプルを得る方法において、サンプル採取用紙115の代わりに、一方の面が未処理で他方の面がコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる。
このPETフィルムのコロナ面をフィルム112上に貼合し、PETフィルムの未処理面を樹脂材料層(II)側にし、上述したIR測定用サンプルと同様にしてESCA測定用サンプルを得る。そして、PETフィルム(未処理面)と接していた面のESCAを測定する。
【0093】
上述した積層体の製造にあっては、(a)〜(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)を含有する樹脂組成物からなる樹脂材料層(II)が、樹脂層(I)または基材(III)上に形成され、前記樹脂材料層(II)の、前記樹脂層(I)または基材(III)が接する面は、(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8重量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上である。(A)エチレン(共)重合体は、酸化され易く、かつ凝集破壊を引き起こすのに十分な高分子量成分を含む。そのため、樹脂材料層(II)の基材が接する面は、接着に寄与する酸素含有官能基の量が十分生成されており、樹脂材料層(II)と結晶性樹脂層(I)または基材(III)とは高い接着強度で接着される。したがって、この積層体は、アンカーコート剤を使用する必要がなく、かつ溶剤などによる溶出分が少なく、クリーンである。さらに、アンカーコート剤を用いないことにより、コストが低下し、作業が簡略化する。また、溶剤を使用しなくなるので環境上の問題、臭気の問題がなくなる。
【0094】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
【0095】
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
[TREF]
まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、カラムを135℃に保った状態で、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃まで昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
[ODCB可溶分量]
試料0.5gを20mlのODCBに加え、135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却した。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取した。赤外分光器により、試料溶液であるろ液におけるメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により、ろ液中の試料濃度を算出した。この値より、25℃におけるODCB可溶分量を求めた。
【0096】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下については、実質的に含まないものとし、ND(non−detect)とした。
【0097】
エチレン共重合体(A)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(イ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン22gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(イ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(イ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A11)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0098】
エチレン共重合体(A12)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ロ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )31gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリイソブチルアルミニウム127gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424mlを添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ロ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ロ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給しての重合を行い、エチレン共重合体(A12)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0099】
エチレン共重合体(A2)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
〔固体触媒(ハ)〕
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン74gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン78gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2133ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ハ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ハ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A2)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0100】
エチレン共重合体(A3)は次の方法で重合した。
[メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)の製造]
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=200)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。
ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を8kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)を製造した。その共重合体の物性の測定結果を表1に示した。
【0101】
[チーグラー触媒によるLLDPE]
市販LLDPE:密度0.910g/cm3、MFR:10.0g/10分、コモノマー:4−メチルーペンテン−1
上記チーグラー触媒によるLLDPE樹脂を試料A4として表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
[使用材料]
ポリプロピレン系樹脂:
1)ホモポリプロピレン(PPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:42g/10分、商品名:PHA03A サンアロマー(株)製
2)ランダムポリプロピレン(RPPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:17g/10分、商品名:PM870A サンアロマー(株)製
3)スーパーランダムポリプロピレン(SRPPと称する)
密度:0.90g/cm3、MFR:21g/10分、商品名:PH943 サンアロマー(株)製
4)ポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂 商品名:DX310M 三井化学(株)製
5)他のポリオレフィン系樹脂(B)として、市販の高圧ラジカル重合法による分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた。
密度:0.919g/cm3、MFR:8.1g/10分、商品名:JH607C、日本ポリオレフィン(株)製
6)上質紙;紀州製紙(株)製 はまゆう 50g/m2
7)ポリアミドフィルム(PA)
二軸延伸ナイロン(ONY)ユニチカ(株)製 15μm
8)ポリエステルフィルム(PET)
ユニチカ(株)製 12μm
9)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)フィルム
銘柄名:エバール EF-XL クラレ(株)製 20μm
10)アルミニウム箔(Al箔)
昭和アルミニウム製 30μm
11)シリカ蒸着PETフィルム
銘柄名:テックバリアU 三菱化学興人パックス(株)製12μm
12)アルミナ蒸着フィルム
銘柄名:VM1011HG−CR 東洋メタライジング(株)製12μm
13)不織布
銘柄名:ミライフTY1010E 新日石プラスト(株)製 20g/m2
【0104】
[実施例1〜3]
上記添加剤(酸化防止剤等)を一切配合していないエチレン共重合体(A11)(添加剤フリー品)を用いて、表面層として(I)各厚さ15μmのポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン樹脂:PP、ランダムポリプロピレン樹脂:RPP、ス−パーランダムポリプロピレン樹脂:SRPP)各厚さ15μmを共押出した溶融フィルムのエチレン共重合体(A)面をオゾン処理して、厚さ50g/m2の上質紙の上に、アンカーコート剤を使用せずに、押出ラミネートして、直接接着して積層体を製造した。
ラミネート後40℃、2時間エージング後、得られた各積層体について樹脂層(I)と樹脂材料層(II)の間、および、樹脂材料層(II)と基材(III)の間における各接着強度を測定した。結果を表2に示した。
尚、押出機:90mmφ(L/D=32)、成形温度300℃、成形速度200m/分のラミネート成形条件で積層体を製造した。
接着強度の測定は、15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、JIS K6854に準拠して、引張速度300mm/分の条件でT剥離により剥離強度を測定し、この剥離強度を接着強度とした。
【0105】
[実施例4〜6]
エチレン共重合体(A)として(A12)、(A2)、(A3)の添加剤フリー品に代えて実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例7〜9]
エチレン共重合体(A11)に表2に示される所定量のLDPEを配合して実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例10〜16]
基材(III)を表2に示すように代えた以外は実施例1と同様に行なった。その結果を表2に示した。
[実施例17]
ポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂層(I)を用いて表面層の厚さ50μm、エチレン共重合体(A11)厚さ15μmの共押出フィルムを実施例1と同様にして積層体を製造した。接着強度の測定結果を表2に示した。
【0106】
【表2】
【0107】
[比較例1〜3]
また、比較のため、表3に示すように、上記エチレン共重合体(A)を用いずに、同様にして積層体を製造し、ポリプロピレン系樹脂層(I)と基材(III)との間の接着強度を測定した。結果を表3に示した。
【0108】
【表3】
【0109】
[比較例4〜5]
樹脂材料層(II)としてチーグラー系触媒によるエチレン共重合体(A4)を用いて実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表4に示した。また、樹脂材料層(II)として高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いて、実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表4に示した。
【0110】
【表4】
【0111】
[比較例6〜9]
接着剤としてアンカーコート剤を用いて、プロピレン−エチレンランダム共重合体(I)と基材(III)との積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表5に示した。
アンカーコート剤(AC剤)には、大日精化工業(株)製、セイカダイン2710及びセイカダイン2710B、市販の酢酸エチルを用い、セイカダイン2710A:セイカダイン2710B:酢酸エチル1:2:15.5質量%の比率でブレンドして使用した。
【0112】
[比較例10〜11]
ドライラミネーションによりプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる樹脂層(I)と基材(III)との積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表5に示した。
なお、ドライラミネーションは、押出ラミネート機付属のACコーターにて、プレーンロールを使用して、東洋モートン(株)製、AD−308A:AD−308B:酢酸エチル1:1:3の比率でブレンド後、塗工量3g/m2、グラビアコート、ドライヤー80℃、圧着条件50℃−4kg/m2、30m/min.で行なった。ラミネート後40℃、2時間エージング後、接着強度を測定した。
【0113】
【表5】
【0114】
[実施例18]
エポキシ化大豆油(分子量:938、商品名;アデカサイザー、旭電化工業(株)製、以下、ESOと略す)を含浸(10000ppm)させた上記エチレン共重合体(A11)70質量部に、上記LDPE30質量部を配合し、酸化防止剤およびハロゲン吸収剤(ステアリン酸カルシウム)を添加せずにタンブラーミキサーでドライブレンドした後、170℃でペレタイズして樹脂材料層(II)用の樹脂材料を調製した。
そして、実施例1と同様に積層体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
実施例1〜3と実施例18、および比較例1〜3と比較例5についてネックインを測定した結果を表7に示した。
【0117】
【表7】
【0118】
[評価結果]
上記表2〜6から明らかなように、本実施例の積層体であれば、各種の結晶性樹脂層(I)及び各種の基材(III)に対して、きわめて高い接着強度を発揮している。
また表7から明らかなように、ポリプロピレン系樹脂(PP)は通常ネックインが悪いが、ネックインのよいエチレン(共)重合体(A)あるいはLDPEとともに共押出するとPP層がPE樹脂に引張られてPP単独ラミネートよりネックインは改善されている。
【0119】
【発明の効果】
本発明の積層体にあっては、アンカーコート剤を使用することなく、樹脂材料層(II)に用いられるエチレン系(共)重合体(A)が、ポリプロピレン系樹脂等の結晶性樹脂である炭素数3以上のα−オレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(I)、所望により基材に直接接着しても実用的に十分な接着強度を発揮し、接着強度が高く、層間剥離によるトラブル発生が低減する。
また、ネックインが改善されるものとなる。さらに、アンカーコート剤を使用しないので、溶剤の使用による作業環境等の汚染がなく、積層体中の残留溶剤がなくなる。また、アンカーコート剤を使用することなく十分な接着強度が得られるので、高速成形が可能となり、コストが低減される。また、結晶性および融点の高いポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂などを用いることにより耐熱性等に優れた積層体を提供することができ、包装材料等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るエチレン系(共)重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】本発明に係るエチレン共重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図4】メタロセン系触媒によるエチレン共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図5】本発明におけるエチレン共重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図6】IR測定用サンプルを作製する方法を示す図であって、(a)は、ラミネート工程を示す斜視図であり、(b)はサンプル採取用紙を示す斜視図である。
【図7】IR測定用サンプルを示す断面図である。
【符号の説明】
10 積層体
I 結晶性樹脂層
II 樹脂材料層
III 基材
Claims (11)
- 炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、
下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)とをアンカーコート剤を使用せずに直接接着してなる積層構造を有することを特徴とする積層体。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 前記エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(e)の要件を満足することを特徴とする請求項1記載の積層体。
(e):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足すること
(式2) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧0 - 前記エチレン系(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
- 前記エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の積層体。
(g):25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレートMFRが下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(h):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること - 前記エチレン系(共)重合体(A)が、さらに下記(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
(i):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること
(j):融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−19 - 前記エチレン系(共)重合体(A2)が、さらに下記(k)の要件を満足することを特徴とする請求項5記載の積層体。
(k):メルトテンションMTとメルトフローレートMFRが、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3 - 炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料または該樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料からなる樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法または共押出ラミネート法で積層することを特徴とする積層体の製造方法。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)との少なくとも2層をアンカーコート剤を使用せずに直接押出ラミネート法で積層するに際し、前記エチレン(共)重合体(A)を含む樹脂材料またはその樹脂材料と分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有する樹脂材料を成形温度200〜350℃で溶融押出して溶融樹脂フィルムを作製し、少なくとも該溶融樹脂フィルムの炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを前記炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)上に積層することを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
- 成形温度200〜350℃で炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と、樹脂材料層(II)を共押出しし、アンカーコート剤を使用せずに基材(III)に積層するに際し、前記樹脂材料層(II)の溶融樹脂フィルムの基材(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度が0.10以上となるように酸化処理しながら、前記溶融樹脂フィルムを基材(III)上に積層することを特徴とする請求項7または8に記載の積層体の製造方法。
- 炭素数3〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を主成分とする樹脂層(I)と基材(III)とを樹脂材料層(II)を介して、押出ラミネートまたは共押出ラミネートすることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 前記酸化処理として、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度が200〜350℃の範囲でオゾン処理することを特徴とする請求項8または9に記載の積層体の製造方法。
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