JP2004202979A - 剥離基体ならびにその製造方法および剥離性積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、各層間の接着性を充分満足できる水準に維持しつつ、低温でのラミネート成形であっても短時間(高速成形)で製造することのできる剥離基体ないしその剥離性積層体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アンカーコート剤を用いずに基材12上に樹脂層14を介して剥離材層16が形成された剥離基体10であって、樹脂層14が、特定の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料からなる。
【選択図】 図1
【解決手段】アンカーコート剤を用いずに基材12上に樹脂層14を介して剥離材層16が形成された剥離基体10であって、樹脂層14が、特定の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料からなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はラベル等に用いられる剥離基体ならびにその製造方法および剥離性積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
種々のラベル、粘着シート、接着シート、合成樹脂フィルム・キャスティング成膜等においては、例えば図1に示すような剥離基体10が利用される。図示例の剥離基体10は、基材12と剥離材層16を有している。そして、その剥離材層16上に、被剥離体20がその接着剤層18により接着することにより、剥離性積層体24が概略構成されている。
この剥離性積層体24においては、接着剤層18と剥離材層16の間の接着強度が低くされていることから、被剥離体20を剥離基体10から剥がして使用に供することができる。
【0003】
剥離基体10においては、その剥離材層16の塗工性、剥離性能の向上を図るため、基材12と剥離材層16の間に所謂、目止め層(樹脂層)14を介在させることが行われる。
そのような目止め層には、通常、安価な、高圧法低密度ポリエチレンを単独で、または、チーグラー系触媒を用いて得られるエチレンの単独重合体である高密度ポリエチレン及びエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンとを高圧法ポリエチレンに混合したものが使用されている。
【0004】
一般に、目止め層14は、基材12上に押出ラミネート成形により成膜される。
このような剥離基体においては、近年特に、剥離基体10における各層間の接着強度をより高めることと、より短時間で製造することが望まれている。
通常、押出ラミネート成形においては、各層間の接着強度を向上するには、ラミネート時の樹脂の温度を高めればよいことは知られており、上記要求に対しては主としてラミネート温度を高める(通常、約310℃以上)ことで対処していた(特許文献1)。
また、基材との接着性を改良するものとして、本出願人らは、特許文献2において特定のエチレン共重合体を用いた剥離体を提案している。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−117603号公報
【特許文献2】
特開平10−80972号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂の温度を高めることにより、▲1▼発煙の発生等による作業環境及び周辺環境への影響の増大、▲2▼高温での酸化劣化による製品の臭気の悪化等の問題がある。
しかも、高い接着性を確保しつつ成形速度を上げる為に、樹脂温度をより高くしなければならず、上記問題が深刻となっている。
また、高速成形の為に、オゾン処理を併用しても十分な接着性を確保することは困難であった。
また、特に耐熱性が要求される用途用においては、目止め層として耐熱性がより高いポリプロピレン系樹脂を用いることが考えられるが、ポリプロピレン系樹脂は接着性がさらに低いことから、ラミネート温度をより高くしてかつ低速で成形しなければならない。
また、アンカーコート剤を使用すると、このアンカーコート剤には溶剤が含まれているため、揮発した溶剤によって作業環境が悪化するという問題があった。また、溶剤を取り扱うため、細心の注意を払う必要があった。また、換気設備を整える必要があり、このような設備に対する負担によって製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、各層間の接着性を充分満足できる水準に維持しつつ、低温でのラミネート成形であっても短時間(高速成形)で製造することのできる剥離基体ないしその剥離性積層体およびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の剥離基体は、アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材層(III)が形成された剥離基体であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0009】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、
(式2) d<0.950g/cm3 のとき、
T75−T25≧−300×d+285、
d≧0.950g/cm3のとき、
T75−T25≧0
の関係を満足することの要件を満足することが好ましい。
【0010】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが好ましい。
【0011】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(g)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレートMFRが
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0、
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0の関係を満足すること、
および(h)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在することの要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることが好ましい。
【0012】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること、および(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、
(式5) Tml≧150×d−19
の関係を満足することの要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることが好ましい。
【0013】
また、前記エチレン系(共)重合体(A2)は、さらに(k)メルトテンションMTとメルトフローレートMFRが、
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
を満足することの要件を満足することが好ましい。
【0014】
また、樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
また、前記剥離材層(III)がシリコーン樹脂または該シリコーン樹脂を含む組成物からなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の剥離性積層体は、前記の剥離基体の剥離材層(III)上に被剥離体が接着されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の剥離基体の製造方法は、アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材層(III)を形成する剥離基体の製造方法であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする剥離基体の製造方法である。(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0017】
本発明の剥離基体の製造方法においては、樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
また、樹脂層(II)をなす樹脂材料と剥離材層(III)をなす剥離材とを、成形温度200〜350℃で共押出して溶融樹脂フィルムを形成しながら、該溶融樹脂フィルムの基材(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することができる。
その場合、酸化処理では、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度200〜350℃の範囲でオゾン処理することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における剥離基体は、少なくとも、基材(I)と樹脂層(II)と剥離材層(III)とを有するものであって、例えば図1に示す剥離基体10のように、基材(I)12上に樹脂層(II)14を介して剥離材層(III)16が積層された構成を採る。
【0019】
[基材(I)]
基材(I)は、用途に応じて適宜選択されるが、一般に、合成樹脂、紙、織布、不織布等が適用される。紙としては、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、無機繊維混抄紙、合成樹脂混抄紙等が挙げられる。本発明では、その接着性を高めるのが困難なポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3以上のα-オレフィン単独重合体または共重合体、それらの混合物からなる基材のときに、その効果が特に顕著になる。
【0020】
[剥離材層(III)]
剥離材層(III)を構成する剥離材としては公知の種々のものが使用され、例えば、シリコーン樹脂(付加反応型、縮合反応型)、シリコーン・アルキド共重合体、或いはそれらとポリオレフィン系樹脂との混合物等からなるものが挙げられる。また、熱硬化型の他、放射線硬化型の剥離性材料が好適で、例えば、特開平3−79685号公報に記載のものが適用できる。
【0021】
[樹脂層(II)]
本発明における樹脂層は、エチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%とを含有する樹脂材料からなるものである。なお、他のポリオレフィン系樹脂(B)は任意成分であり、必要に応じて含有されるものである。
【0022】
[エチレン系(共)重合体(A)]
エチレン系(共)重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0023】
エチレン系(共)重合体(A)の(a)密度は、0.86〜0.97g/cm3の範囲であり、好ましくは0.90〜0.95g/cm3、より好ましくは0.91〜0.94g/cm3範囲である。密度が0.86g/cm3未満では、剛性(腰の強さ)、耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.97g/cm3を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる。
【0024】
エチレン系(共)重合体(A)の(b)メルトフローレート(以下、MFRと記す)は、0.01〜100g/10分の範囲であり、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が劣るものとなる。また、MFRが100g/10分を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が劣るものとなる。
【0025】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、下記(c)および(d)の要件をさらに満足するものである。
(c)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5であること。より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣るものとなるおそれがある。Mw/Mnが4.5を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
【0026】
ここで、エチレン系(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0027】
エチレン系(共)重合体(A)は、例えば、図2に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足する。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が劣るものとなる虞がある。
【0028】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05重量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン系(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0029】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、さらに、(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足することが好ましい。
(式2) d<0.950g/cm3のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3のとき
T75−T25≧0
T75−T25と密度dが上記(式2)の関係を満足する場合には、ヒートシール強度と耐熱性が優れるものとなる。
【0030】
エチレン(共)重合体(A)は、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量(Mw)が8000〜30000であることが好ましく、10000〜28000であることが更に好ましく、13000〜27000であることが特に好ましい。
質量平均分子量が8000未満では、成形品のべたつきやブロッキングの原因となることがある。また、分子鎖の絡み合いが起き難く、凝集破壊が起こらず、接着強度の向上に寄与しないものとなる虞がある。また、質量平均分子量(Mw)が、30000を超える場合は、接着力が低下する懸念が生じる。
ここで、ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)の測定方法では、まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。次に試料とODCBが入った容器を室温(23℃)にて1晩静置し、ポリフッ化ビニリデンフィルターで濾過して、濾液を採取する。そして、その濾液をGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)に供して質量平均分子量を測定する。
【0031】
エチレン(共)重合体(A)は、さらに後述の(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)、または、さらに後述の(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)のいずれかであることが好ましい。
【0032】
エチレン系(共)重合体(A1)は、(g)25℃におけるODCB可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRが、下記(式3)および(式4)の関係を満足する。
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。
【0033】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0034】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン系(共)重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0035】
また、エチレン系(共)重合体(A1)は、(h)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度の高温側のピークが85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0036】
ここで、エチレン系(共)重合体(A1)は、図3に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレン系(共)重合体である。一方、図4のエチレン系(共)重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有するエチレン系(共)重合体であり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体がこれに該当する。
【0037】
エチレン系(共)重合体(A2)は、図5に示すように、(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つである。
TREFによる溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであるエチレン(共)重合体(A2)は、耐熱性に優れるものとなる。
【0038】
また、本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−19
融点Tmlと密度dが上記(式5)の関係を満足すると、耐熱性の優れるものとなる。
【0039】
また、エチレン系(共)重合体(A2)の中でも、さらに下記(k)の要件を満足するエチレン(共)重合体が好適である。
(k)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足する。
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、フィルム成形等の成形加工性が良好なものとなる。
【0040】
ここで、エチレン系共重合体(A2)は、図5に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体は上記(式2)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体とは区別されるものである。
【0041】
このようなエチレン(共)重合体(A)は、シングルサイト系触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを共重合させて得られる直鎖状のエチレン系(共)重合体である。このような直鎖状のエチレン系(共)重合体は、基材等に対する接着性に優れている。また、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
【0042】
エチレン系(共)重合体(A)を製造する触媒としては、従来の典型的なメタロセン触媒が挙げられるが、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含むシングルサイト系触媒が好ましい。該シングルサイト系触媒としては特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で製造することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−rで表される化合物(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−nで表される化合物(式中Me2は周期律表第I〜III族元素、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0043】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q− rで表される化合物の式中、Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。p、qおよびrはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0044】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフィルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0045】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−nで表される化合物の式中Me2は周期律表第I〜III族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2が水素原子の場合はMe2はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III族元素の場合に限るものである。また、zはMe2の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0046】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0047】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0048】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0049】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0050】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0051】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0052】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0053】
ホウ素化合物としてはテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。中でも、N,N_−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボランが好適である。
【0054】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0056】
エチレン系(共)重合体(A)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2G、好ましくは常圧〜20kg/cm2Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0057】
エチレン(共)重合体(A)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンのない触媒を使用することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない2ppm以下(ND:Non−Detect)のものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン系(共)重合体を用いることにより、従来のような酸中和剤(ハロゲン吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性等に優れたものとなる。またこのようなハロゲンフリーの状態で使用することにより酸中和剤の悪影響がなく、接着強度も向上させることができる。
【0058】
[他のポリオレフィン系樹脂(B)]
樹脂層(II)を構成する樹脂材料は上記エチレン(共)重合体(A)のみでなく、他のポリオレフィン系樹脂(B)を90質量%まで混合したものでも良い。
このような他のポリオレフィン系樹脂(B)としてはエチレン(共)重合体(A)以外の他のポリオレフィン系樹脂(B)であり、高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体;チーグラー系触媒、フィリップス系触媒等から得られる密度が0.86〜0.97g/cm3の他のエチレン系(共)重合体;ポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂およびこれらの混合物などが挙げられる。このような他のポリオレフィン系樹脂(B)を配合することで成形性や耐熱性等の向上を図ることができる。
【0059】
前記LDPEのMFRとしては、MFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分の範囲である。また、LDPEの密度は、0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.91〜0.935g/cm3 の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。LDPEのメルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、LDPEの分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。
【0060】
前記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5質量%、ビニルエステル0.5〜50質量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5質量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分の範囲である。
【0061】
前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ましくは0.1〜30g/10分である。
【0062】
[樹脂材料の配合比]
樹脂層(II)をなす樹脂材料は、エチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%とを含有するものであり、上記エチレン(共)重合体(A)のみで構成しても良い。好ましくはエチレン(共)重合体(A)が50質量%以上、他のポリオレフィン系樹脂(B)を50質量%未満であり、より好ましくはエチレン(共)重合体(A)が65質量%以上、他のポリオレフィン系樹脂(B)を35質量%未満である。
エチレン(共)重合体(A)が10質量%未満、ポリオレフィン系樹脂(B)を90質量%以上になると接着性等が不十分となる。
【0063】
[エポキシ化合物(C)]
樹脂層(II)をなす樹脂材料には、さらにエポキシ化合物(C)を含有させることができる。エポキシ化合物(C)を含有させれば、さらに接着性を向上させることができる。エポキシ化合物(C)としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含む、分子量3000以下の多価エポキシ化合物が好適に用いられる。分子内のエポキシ基が1個のエポキシ化合物では、基材への接着性の改善効果があまり期待できない。また、このエポキシ化合物の分子量は、3000以下が好ましく、特に1500以下が好ましい。分子量が3000を超えると、組成物化した際に、十分な接着性の改善効果が得られない虞がある。
【0064】
このようなエポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油などが挙げられる。中でも扱い易さの観点からエポキシ化植物油が好適である。
【0065】
ここで、エポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。これらのエポキシ化植物油は、例えば旭電化工業(株)製、O−130P(エポキシ化大豆油)、O−180A(エポキシ化亜麻仁油)等として市販されている。
なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていない、またはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明における作用効果を何ら妨げるものではない。
【0066】
エポキシ化合物(C)の添加量は、エチレン(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.2〜5質量部である。エポキシ化合物(C)の添加量が0.05質量部未満では、基材への接着強度の改善効果が不十分になることがあり、10質量部を超えると接着性は向上するものの、ベタツキによるブロッキングを起こしたり、臭いを発する等の弊害が発生する虞がある。
【0067】
[官能基を有するオレフィン系樹脂]
また、樹脂層に用いられる樹脂材料に、分子内にエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)をさらに含有させてもよい。このエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)は必須ではないが、これを添加することによりさらに基材との接着性を向上させることができる。これは、エポキシ基と反応可能な官能基とエポキシ化合物との間で反応が起こり、樹脂成分にグラフトされるエポキシ化合物(C)が増加するためである。
【0068】
エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)の使用量は、エチレン(共)重合体(A)と、他のポリオレフィン系樹脂(B)と、オレフィン系樹脂(D)との合計質量に対して、好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは2〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。オレフィン系樹脂(D)を30質量%以上添加すると、接着向上効果はあるものの、経済的ではない。
【0069】
エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基またはその誘導体、アミノ基、フェノール基、水酸基、チオール基などが挙げられる。中でも反応性と安定性のバランスから、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を分子内に有するオレフィン系樹脂(D)が好ましく用いられる。
エポキシ基と反応する官能基の導入方法としては、主として共重合法と、グラフト法が挙げられる。
【0070】
例えば、共重合法によって製造される、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)としては、エチレンと反応可能な化合物とエチレンとの二元または多元共重合体が挙げられる。 共重合に用いる化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。さらに、これらの不飽和化合物に加えて(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルアルコールエステル等を共重合させて用いることもできる。
これらの化合物は、エチレンとの共重合体において2種以上を混合して用いることができ、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種以上を併用することもできる。例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸ー酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸ーアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0071】
一方、グラフト変性によりエポキシ基と反応可能な官能基を導入したオレフィン系樹脂(D)は、ポリオレフィンと過酸化物等の遊離基発生剤と、変性用の化合物とを溶融もしくは溶液状態で作用させて製造するのが一般的である。
グラフト変性に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のほかに、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(E(M)A)、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、例えば、エチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のように、酸あるいはその誘導体を既に含むような共重合体をさらにグラフト変性して用いても何ら差し支えない。
【0072】
[遊離基発生剤]
グラフト変性時に用いる遊離基発生剤の種類については特に限定を受けないが、例えば、遊離基発生剤としては、一般的な有機過酸化物が用いられ、中でも反応性の良さと取り扱いの容易さからジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド等が好ましく用いられる。
【0073】
また、変性用の不飽和化合物としては、上記共重合法で用いられるエチレンと共重合可能な化合物と同様の不飽和化合物が用いられ、カルボン酸基あるいはカルボン酸無水物基とその金属塩、アミノ基、水酸基等、ラジカル反応可能な不飽和基を有していれば基本的には使用可能である。
このような変性用の不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸あるいは無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の不飽和水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。
【0074】
樹脂層(II)をなす樹脂材料には、所望により慣用の添加剤、例えば酸化防止剤、可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、各種の無機・有機充填剤などを添加することも可能であるがこれら公知の添加剤が配合されていないことが望ましい。このような添加剤フリーとすることにより、アンカーコート剤を用いずにさらに強固な接着強度を得ることができる。
【0075】
樹脂層(II)をなす樹脂材料は、上記エチレン(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂材料および/またはその樹脂材料にエポキシ化合物(C)、所望により官能基を含有するオレフィン系樹脂(D)を、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて混練する方法によって得ることができる。混練の温度は、通常、樹脂の融点以上〜350℃である。
【0076】
上述した剥離基体は、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)の3層構成からなる積層体について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、本発明の作用効果を損なうことのない範囲内で、他の層を設けてよい。例えば、基材(I)の樹脂層(II)の形成されていない側の面に他の任意の層を設けたり、また、基材(I)の両面に、それぞれ樹脂層(II)および剥離材層(III)を設けて5層構成として両表面が剥離材層(III)となる剥離基体等としたり、樹脂層(II)を複数の層で構成してもよい。
尚、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)等の各層の層厚は、限定されるものではなく、各層の機能を果たす範囲内で適宜設定される。
【0077】
[剥離基体の製造方法]
本発明の剥離基体は、各層間の接着強度が高くなるように積層する方法であれば特にその製造方法は限定されるものではないが、特に押出ラミネート成形、共押出ラミネート法、サンドラミネート法により積層して製造する方法が好適である。
本発明によれば、高い層間強度をもつ剥離基体を低温ラミネートにより、また、200〜400m/分の高速成形で製造することができる。
【0078】
以下に本発明の剥離基体の製造方法の一例を示す。
この製造方法では、基材(I)と樹脂層(II)とを押出ラミネート法により積層した後、樹脂層(II)上に剥離材層(III)を形成する方法である。
図6は、押出ラミネート法による製造装置を示す模式図である。この製造装置は、基材12を繰り出す繰出機30と、樹脂層(II)となる樹脂aを押し出す押出機31と、回転しながら基材12と樹脂aとを挟んで加圧する冷却ロール32とニップロール33と、得られた積層体を巻き取る巻取機34とを有して概略構成される。そして、この製造装置を用いた製造方法では、紙等からなる基材(I)12を繰出機40から所定速度で繰り出し、ニップロール34と冷却ロール32の間に送給すると共に、樹脂層(II)となる溶融樹脂膜状態の樹脂を押出機30からニップロール34と冷却ロール32との間の冷却ロール32側に押出しし、樹脂層(II)14が基材(I)12と接するように供給することで、基材(I)12上に樹脂層(II)14がラミネートされた積層体が製造される。その後、得られた基材(I)12と樹脂層(II)14とからなる積層体15は、巻取機42に巻き取られる。次いで、積層体15の樹脂層(II)14上に、例えばシリコーン樹脂等を塗工し、加熱して硬化させて剥離材層(III)16を形成する。
【0079】
上記押出ラミネート法等における溶融樹脂フィルムの樹脂温度は200〜350℃の範囲、好ましくは240〜330℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲であることが好ましい。特に本発明においては300℃未満で成形することができる。200℃未満であると、得られた積層体において、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)との接着強度が低くなることがある。一方、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が350℃を超えると、樹脂が劣化するので、目的とする特性が得られなくなることがある。
【0080】
また、上述した製造方法においては、樹脂層(II)をなす樹脂材料と、剥離材層(III)をなす剥離材とを成形温度200〜350℃で共押出して溶融樹脂フィルムを形成しながら、該溶融樹脂フィルムの基材(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、この溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することができる。
その際、該溶融樹脂フィルムの剥離材層(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することもできる。
ここで、樹脂層(II)および/または剥離材層(III)の酸素原子濃度、表面参加度は、好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.0〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.12〜1.8、さらに好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.2〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.15〜1.5、特に好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.5〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.20〜1.2である。
このような範囲であると、接着に寄与するカルボニル基等の酸素含有官能基の生成量が多くなるので、接着強度が向上するものとなる。したがって、この工程シートでは、アンカーコート剤を使用する必要がなく、かつ溶剤などによる溶出分が少なく、クリーンである。さらに、アンカーコート剤を用いないことにより、コストが低下し、作業が簡略化する。また、溶剤を使用しなくなるので環境上の問題、臭気の問題がなくなる。なお、エチレン(共)重合体(A)は、酸化され易く、かつ凝集破壊を引き起こすのに十分な高分子量成分を含んでいる。
【0081】
ここで、酸素原子濃度(Oc)とは、樹脂層(II)の、基材(I)あるいは剥離材層(III)と接している面において、ESCA法により測定された酸素O1s補正ピーク強度:Oと、炭素C1s補正ピーク強度:Cとを(式7)に代入して求めた値である。酸素原子濃度により接着表面の酸素原子導入量が定量化できる。
(式7) Oc=O/(C+O)×100(%)
【0082】
また、表面酸化度(Or)とは、樹脂層(II)の、基材(I)あるいは剥離材層(III)と接している面において、酸化処理により、接着に寄与すると考えられるカルボニル基やアルデヒド基等の含酸素基を有する化合物が生成した程度を示す値である。表面酸化度(Or)は、表面FT−IR(ATR)法による吸光度のスペクトルにおいて、カルボニル基の吸収による1720cm−1付近のピークの高さをI(1720)、メチレン基の縦揺れ吸収による1370(1369)cm−1付近のピークの高さをI(1370)とした場合、(式8)で求めることができる。
(式8) Or=I(1720)/I(1370)
この数値は、メチレン基の縦揺れ吸収を元に算出している為、分子量の異なるポリマー間の比較が難しいが、上記(イ)を併せて測定することによって表面の酸化についてより詳細な情報が得られる。
【0083】
なお、酸素原子濃度(Oc)の測定および表面酸化度(Or)の測定は、ラミネート工程後に行われるが、樹脂層(II)と基材(I)および剥離材層(III)とが接着してしまうと、樹脂層(II)の酸化処理面を測定するサンプルを得るのが困難になる。そのため、ラミネート工程の際に、ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプルが得られるようにしておく。IR測定用サンプルを得るには、まず、ラミネートする前に、図7(a)に示すように、溶融樹脂フィルム111がラミネートされる基材112の面の一部に、図7(b)に示すような、紙113上に四フッ化ビニリデン製粘着テープ114(非粘着面)が貼合されたサンプル採取用紙115を、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が溶融樹脂フィルム111に接するように両面接着テープなどを用いて貼合する。次いで、基材112上に溶融樹脂フィルム111をラミネートして工程シート110を得た後、工程シート110の上記サンプル採取用紙115の貼合部分を切り出す。サンプル採取用紙115の貼合部分の積層体は、紙112からなる基材(I)、紙113、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114、溶融樹脂フィルム111が固化して形成した樹脂層(II)の順に積層されている。ここで、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114と樹脂層(II)とは接着していないので、樹脂層(II)を分離することにより酸化処理面が完全に露出した樹脂層(II)が得られる。このようにして得られた樹脂層(II)をIR測定用サンプルとして用いて、酸化処理面のIRを測定する。
【0084】
また、ESCA測定用サンプルは、上述したIR測定用サンプルを得る方法において、サンプル採取用紙115の代わりに、一方の面が未処理で他方の面がコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる。このPETフィルムのコロナ面を基材112上に貼合し、PETフィルムの未処理面を基材(I)側にし、上述したIR測定用サンプルと同様にしてESCA測定用サンプルを得る。そして、PETフィルム(未処理面)と接していた面のESCAを測定する。
【0085】
酸化処理とは、酸素またはオゾンを溶融樹脂フィルムに接触させることである。その際、酸素、空気で酸化処理してもよいし、酸化処理装置を用いて強制的に酸化処理してもよい。
具体的な酸化処理方法としては、オゾン処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙られるが、効率的であることから、特にオゾン処理が望ましい。例えば、図6においては、オゾン発生器35によってオゾンを樹脂aの表面に吹き付けて酸化させている。
酸化処理の温度は特に制限ないが、好ましくは溶融状態の樹脂フィルムに施すことが、酸化が容易で効率的であることから、200〜350℃、好ましくは260〜310℃、より好ましくは290〜300℃の範囲であることが望ましい。
このような酸化処理をして樹脂層(II)を介して基材(I)と剥離材層(III)とを積層すると、より低温で強固に積層させることができるが、より効率的でかつより強固に積層できることから、溶融樹脂フィルムの温度を200〜350℃の範囲でオゾン処理することが特に好ましい。
【0086】
該オゾンによる酸化処理におけるオゾン処理量は、基材(I)または剥離材(III)の種類、条件等により異なるものの、5g/Nm3×1Nm3/hr〜100g/Nm3×20Nm3/hr(すなわち、5〜2000g/hr)の範囲、好ましくは10g/Nm3×1.5Nm3/hr〜70g/Nm3×10Nm3/hr(すなわち、15〜700g/hr)、さらに好ましくは15g/Nm3×2Nm3/hr〜50g/Nm3×8Nm3/hr(すなわち、30〜400g/hr)の範囲である。オゾン処理量が5g/hr未満であると、酸化処理が不十分となり、基材(I)と樹脂層(II)との接着強度が向上しない虞が生じ、2000g/hrを超えると、樹脂組成物が劣化することがある。
【0087】
また、基材(I)および/または剥離材層(III)に対しても、プレヒート処理、コロナ処理、火炎処理、UV処理等の表面処理を行うことができるが、中でもコロナ処理を施しておくことが望ましく、コロナ処理を施した基材(I)とオゾン処理を施した樹脂層(II)との層間接着強度はきわめて高くなる。コロナ処理としては、図6に示されるコロナ放電器36を用いて、1〜300W分/m2の範囲で処理することが好ましく、10〜100W分/m2の範囲で処理することがより好適である。
【0088】
また、押出ラミネート法では、剥離材層の押出ラミネーション工程時のラミネート温度を調整することにより、転写面の濡れ性を制御することができ、表面の剥離性を調整できる。
【0089】
上述した押出ラミネート法以外の方法で、剥離基体を製造することもできる。例えば、剥離材層16となる樹脂からなるフィルムを樹脂層(II)と冷却ロール32の間に供給して、圧接、積層する、いわゆるサンドラミネーションによっても剥離材層(III)を同時に形成することができる。
【0090】
本発明の剥離基体は、例えば図1に示すように、その剥離材層16上に被剥離体20を形成することにより、剥離性積層体24となる。被剥離体20は、紙やPETフィルムなどからなる被剥離基材22とこの被剥離基材22を剥離材層16上に、剥離可能に接着材層18とからなる被剥離基材22には目的に応じて印刷等が施されて使用に供される。接着剤層18には、被剥離基材22とは高い接着強度を発揮し、かつ剥離材層16とは低い接着強度を発揮するものが適宜選択されて用いられる。このような剥離性積層体は各種ラベル、粘着シート等に用いられる。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
【0092】
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
【0093】
[TREF]
カラムを135℃に保った状態で、カラムに試料を注入して0.1℃/分で25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。(溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:50℃/hr、検出器:赤外分光器(波長2925cm−1)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:0.05重量%)
【0094】
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃まで昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
【0095】
[ODCB可溶分量]
試料0.5gを20mlのODCBに加え、135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却した。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取した。赤外分光器により、試料溶液であるろ液におけるメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により、ろ液中の試料濃度を算出した。この値より、25℃におけるODCB可溶分量を求めた。
【0096】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
【0097】
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下については、実質的に含まないものとし、ND(non−detect)とした。
【0098】
エチレン系共重合体(A11)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン22gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(イ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(イ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A11)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0099】
エチレン共重合体(A12)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )31gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリイソブチルアルミニウム127gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424mlを添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ロ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ロ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給しての重合を行い、エチレン共重合体(A12)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0100】
エチレン共重合体(A2)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン74gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン78gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2133ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ハ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ハ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A2)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0101】
エチレン共重合体(A3)を次の方法で重合した。
[メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)の製造]
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=200)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を8kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)を製造した。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0102】
[チーグラー触媒によるLLDPE]
下記チーグラー触媒によるLLDPE樹脂を試料(A4)として表1に示した。市販LLDPE:密度0.910g/cm3、MFR:10.0g/10分、コモノマー:4−メチル−ペンテン−1。
【0103】
【表1】
【0104】
上述したエチレン(共)重合体(A)を用いて工程シートを作製した。
[使用材料]
(1)基材:上質紙;紀州製紙(株)製 はまゆう 50g/m2
(2)ポリプロピレン系樹脂:
ホモポリプロピレン(PP)
密度=0.90g/cm3、MFR=42g/10分
商品名=PHA03A サンアロマー(株)製
(3)ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂(P4MeP)
メルトフローレート(260℃)=100g/10分
(4)高圧ラジカル重合法分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.919g/cm3、MFR:8.1g/10分、
商品名:JH607D、日本ポリオレフィン(株)製
【0105】
[実施例1]
[実施例1〜4]
90mm押出機を備えた幅1100mmのラミネート成形機を使用し、下記条件で、図6に示すように、エチレン(共)重合体(A11)、(A12)、(A2)、(A3)を厚さ15μmで押出した溶融樹脂フィルムの樹脂層(II)表面、すなわち、基材との接合面をオゾン処理して、厚さ50g/m2の上質紙の上に、アンカーコート剤を使用せずに、押出ラミネートして積層体を製造した。ラミネート後40℃で2時間エージング後、得られた各積層体上にシリコーン樹脂を塗工し、硬化させて剥離材層(III)とし、剥離基体を製造した。そして、樹脂層(II)と基材(I)の間における各接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
(ラミネート条件)
押出機:90mmφ(L/D=32)、成形温度320℃、成形速度150m/分
(接着強度)
接着強度の測定は、15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、JIS K6854に準拠して、引張速度300mm/分の条件でT剥離により剥離強度を測定し、この剥離強度を接着強度とした。
【0106】
[実施例5〜7]
表2に示すように、エチレン共重合体(A11)にLDPEを配合したこと以外は実施例1と同様に行って剥離基体を製造した。その評価結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
[実施例8〜9]
剥離材層(III)をポリプロピレン樹脂またはポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂(4PMeP)で構成し、樹脂層(II)をエチレン(共)重合体(A11)で構成するとともに、剥離材層(III)の厚さが50μm、樹脂層(II)の厚さが15μmとなるように共押出し、樹脂層(II)表面をオゾン酸化処理しながら、その酸化処理面を基材(I)に貼り合わせて積層して、剥離基体を製造した。樹脂層(II)と基材(I)および剥離材層(III)の間における各接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
[実施例10]
エポキシ化大豆油(分子量:938、商品名;アデカサイザー、旭電化工業(株)製、以下、ESOと略す)を含浸(10000ppm)させた上記エチレン共重合体(A11)70質量部に、上記LDPE30質量部を配合し、酸化防止剤およびハロゲン吸収剤(ステアリン酸カルシウム)を添加せずにタンブラーミキサーでドライブレンドした後、170℃でペレタイズして樹脂層(II)用の樹脂ペレットを調製した。
上記樹脂ペレットを用いて実施例8と同様にして剥離基体を作製し、その接着強度を測定した。その結果を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
[比較例1、2]
比較例1では、樹脂層(II)の構成成分としてチーグラー系触媒によるエチレン(共)重合体(A4)を用いたこと以外は実施例8と同様にして剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。また、比較例2では、樹脂層(II)の構成成分として高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いたこと以外は実施例8と同様にして剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。これらの結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
[比較例3]
接着剤としてアンカーコート剤を用いて、基材(I)である上質紙と、剥離材層(III)であるポリプロピレン樹脂とを積層して剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示す。
この際、アンカーコート剤(AC剤)としては、大日精化工業(株)製セイカダイン2710、セイカダイン2710B、市販の酢酸エチルの混合物(セイカダイン2710A:セイカダイン2710B:酢酸エチル1:2:15の質量比率)を使用した。
【0115】
[比較例4]
ドライラミネーションにより、基材(I)である上質紙と剥離材層(III)であるPPとを積層して剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示す。
なお、上記ドライラミネーションでは、押出ラミネート機付属のACコーターにて、プレーンロールを使用して、アンダーコート剤(東洋モートン(株)製AD−308A:AD−308B:酢酸エチル1:1:3の比率でブレンド)を塗工量3g/m2でグラビアコートし、次いで、ドライヤー温度80℃で乾燥し、圧着条件50℃−4kg/m2、30m/分でラミネートした。ラミネートした後、40℃で2時間エージングしてから、接着強度を測定した。
【0116】
【表6】
【0117】
上記表2〜6から明らかなように、本実施例の樹脂層(II)を用いることにより、基材(I)及び剥離材層(III)に対して、接着強度が極めて高かった。一方、チーグラー系触媒による直鎖状低密度ポリエチレン、LDPE、AC剤およびドライラミネート法においては剥離材層としてPP等を用いた場合において、接着強度が充分でなかった。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特定のエチレン(共)重合体を用い、かつ望ましくは酸化処理をすることにより、アンカーコート剤を使用しなくても、基材(I)と剥離材層(III)との接着強度が高くできる上に、低温でのラミネート成形であっても短時間(高速成形)で製造することができる。しかも、剥離材として種々の材料が適用可能となり応用範囲が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】剥離性積層体の層構成の一例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係るエチレン系(共)重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】本発明に係るエチレン系共重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図4】メタロセン系触媒によるエチレン系共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図5】本発明に係るエチレン系共重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図6】剥離基体の製造工程の一例を示す概略構成図である。
【図7】(a)ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプル作製方法の模式図、(b)サンプル採取用紙を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 剥離基体
12 基材
14 樹脂層(目止め層)
16 剥離材層
20 被剥離体
24 剥離性積層体
【発明の属する技術分野】
本発明はラベル等に用いられる剥離基体ならびにその製造方法および剥離性積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
種々のラベル、粘着シート、接着シート、合成樹脂フィルム・キャスティング成膜等においては、例えば図1に示すような剥離基体10が利用される。図示例の剥離基体10は、基材12と剥離材層16を有している。そして、その剥離材層16上に、被剥離体20がその接着剤層18により接着することにより、剥離性積層体24が概略構成されている。
この剥離性積層体24においては、接着剤層18と剥離材層16の間の接着強度が低くされていることから、被剥離体20を剥離基体10から剥がして使用に供することができる。
【0003】
剥離基体10においては、その剥離材層16の塗工性、剥離性能の向上を図るため、基材12と剥離材層16の間に所謂、目止め層(樹脂層)14を介在させることが行われる。
そのような目止め層には、通常、安価な、高圧法低密度ポリエチレンを単独で、または、チーグラー系触媒を用いて得られるエチレンの単独重合体である高密度ポリエチレン及びエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンとを高圧法ポリエチレンに混合したものが使用されている。
【0004】
一般に、目止め層14は、基材12上に押出ラミネート成形により成膜される。
このような剥離基体においては、近年特に、剥離基体10における各層間の接着強度をより高めることと、より短時間で製造することが望まれている。
通常、押出ラミネート成形においては、各層間の接着強度を向上するには、ラミネート時の樹脂の温度を高めればよいことは知られており、上記要求に対しては主としてラミネート温度を高める(通常、約310℃以上)ことで対処していた(特許文献1)。
また、基材との接着性を改良するものとして、本出願人らは、特許文献2において特定のエチレン共重合体を用いた剥離体を提案している。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−117603号公報
【特許文献2】
特開平10−80972号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂の温度を高めることにより、▲1▼発煙の発生等による作業環境及び周辺環境への影響の増大、▲2▼高温での酸化劣化による製品の臭気の悪化等の問題がある。
しかも、高い接着性を確保しつつ成形速度を上げる為に、樹脂温度をより高くしなければならず、上記問題が深刻となっている。
また、高速成形の為に、オゾン処理を併用しても十分な接着性を確保することは困難であった。
また、特に耐熱性が要求される用途用においては、目止め層として耐熱性がより高いポリプロピレン系樹脂を用いることが考えられるが、ポリプロピレン系樹脂は接着性がさらに低いことから、ラミネート温度をより高くしてかつ低速で成形しなければならない。
また、アンカーコート剤を使用すると、このアンカーコート剤には溶剤が含まれているため、揮発した溶剤によって作業環境が悪化するという問題があった。また、溶剤を取り扱うため、細心の注意を払う必要があった。また、換気設備を整える必要があり、このような設備に対する負担によって製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、アンカーコート剤等の接着剤を用いることなく、各層間の接着性を充分満足できる水準に維持しつつ、低温でのラミネート成形であっても短時間(高速成形)で製造することのできる剥離基体ないしその剥離性積層体およびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の剥離基体は、アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材層(III)が形成された剥離基体であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0009】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、
(式2) d<0.950g/cm3 のとき、
T75−T25≧−300×d+285、
d≧0.950g/cm3のとき、
T75−T25≧0
の関係を満足することの要件を満足することが好ましい。
【0010】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することが好ましい。
【0011】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(g)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレートMFRが
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0、
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0の関係を満足すること、
および(h)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在することの要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることが好ましい。
【0012】
また、前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること、および(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、
(式5) Tml≧150×d−19
の関係を満足することの要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることが好ましい。
【0013】
また、前記エチレン系(共)重合体(A2)は、さらに(k)メルトテンションMTとメルトフローレートMFRが、
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
を満足することの要件を満足することが好ましい。
【0014】
また、樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
また、前記剥離材層(III)がシリコーン樹脂または該シリコーン樹脂を含む組成物からなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の剥離性積層体は、前記の剥離基体の剥離材層(III)上に被剥離体が接着されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の剥離基体の製造方法は、アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材層(III)を形成する剥離基体の製造方法であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする剥離基体の製造方法である。(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644
【0017】
本発明の剥離基体の製造方法においては、樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
また、樹脂層(II)をなす樹脂材料と剥離材層(III)をなす剥離材とを、成形温度200〜350℃で共押出して溶融樹脂フィルムを形成しながら、該溶融樹脂フィルムの基材(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することができる。
その場合、酸化処理では、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度200〜350℃の範囲でオゾン処理することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における剥離基体は、少なくとも、基材(I)と樹脂層(II)と剥離材層(III)とを有するものであって、例えば図1に示す剥離基体10のように、基材(I)12上に樹脂層(II)14を介して剥離材層(III)16が積層された構成を採る。
【0019】
[基材(I)]
基材(I)は、用途に応じて適宜選択されるが、一般に、合成樹脂、紙、織布、不織布等が適用される。紙としては、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、無機繊維混抄紙、合成樹脂混抄紙等が挙げられる。本発明では、その接着性を高めるのが困難なポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の炭素数3以上のα-オレフィン単独重合体または共重合体、それらの混合物からなる基材のときに、その効果が特に顕著になる。
【0020】
[剥離材層(III)]
剥離材層(III)を構成する剥離材としては公知の種々のものが使用され、例えば、シリコーン樹脂(付加反応型、縮合反応型)、シリコーン・アルキド共重合体、或いはそれらとポリオレフィン系樹脂との混合物等からなるものが挙げられる。また、熱硬化型の他、放射線硬化型の剥離性材料が好適で、例えば、特開平3−79685号公報に記載のものが適用できる。
【0021】
[樹脂層(II)]
本発明における樹脂層は、エチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%とを含有する樹脂材料からなるものである。なお、他のポリオレフィン系樹脂(B)は任意成分であり、必要に応じて含有されるものである。
【0022】
[エチレン系(共)重合体(A)]
エチレン系(共)重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0023】
エチレン系(共)重合体(A)の(a)密度は、0.86〜0.97g/cm3の範囲であり、好ましくは0.90〜0.95g/cm3、より好ましくは0.91〜0.94g/cm3範囲である。密度が0.86g/cm3未満では、剛性(腰の強さ)、耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.97g/cm3を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる。
【0024】
エチレン系(共)重合体(A)の(b)メルトフローレート(以下、MFRと記す)は、0.01〜100g/10分の範囲であり、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が劣るものとなる。また、MFRが100g/10分を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が劣るものとなる。
【0025】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、下記(c)および(d)の要件をさらに満足するものである。
(c)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5であること。より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.0の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では、成形加工性が劣るものとなるおそれがある。Mw/Mnが4.5を超えると、引裂強度、耐衝撃性等が不十分となる虞が生じる。
【0026】
ここで、エチレン系(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求めることができる。
【0027】
エチレン系(共)重合体(A)は、例えば、図2に示すように、(d)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足する。
(式1) T75−T25≦−670×d+644
T75−T25と密度dが上記(式1)の関係を満足しない場合には、低温ヒートシール性が劣るものとなる虞がある。
【0028】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05重量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン系(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0029】
また、エチレン系(共)重合体(A)は、さらに、(e)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足することが好ましい。
(式2) d<0.950g/cm3のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3のとき
T75−T25≧0
T75−T25と密度dが上記(式2)の関係を満足する場合には、ヒートシール強度と耐熱性が優れるものとなる。
【0030】
エチレン(共)重合体(A)は、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量(Mw)が8000〜30000であることが好ましく、10000〜28000であることが更に好ましく、13000〜27000であることが特に好ましい。
質量平均分子量が8000未満では、成形品のべたつきやブロッキングの原因となることがある。また、分子鎖の絡み合いが起き難く、凝集破壊が起こらず、接着強度の向上に寄与しないものとなる虞がある。また、質量平均分子量(Mw)が、30000を超える場合は、接着力が低下する懸念が生じる。
ここで、ODCB可溶成分の質量平均分子量(Mw)の測定方法では、まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05質量%となるように加え、140℃で加熱溶解する。次に試料とODCBが入った容器を室温(23℃)にて1晩静置し、ポリフッ化ビニリデンフィルターで濾過して、濾液を採取する。そして、その濾液をGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)に供して質量平均分子量を測定する。
【0031】
エチレン(共)重合体(A)は、さらに後述の(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)、または、さらに後述の(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)のいずれかであることが好ましい。
【0032】
エチレン系(共)重合体(A1)は、(g)25℃におけるODCB可溶分の量X(質量%)と密度dおよびMFRが、下記(式3)および(式4)の関係を満足する。
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<1.0
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。さらに好ましくは、
d−0.008logMFR≧0.93の場合、
X<0.5
d−0.008logMFR<0.93の場合、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
の関係を満足する。
【0033】
ここで、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0034】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン系(共)重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形体表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形体内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0035】
また、エチレン系(共)重合体(A1)は、(h)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在するものである。この複数のピーク温度の高温側のピークが85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0036】
ここで、エチレン系(共)重合体(A1)は、図3に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレン系(共)重合体である。一方、図4のエチレン系(共)重合体は、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークを1個有するエチレン系(共)重合体であり、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体がこれに該当する。
【0037】
エチレン系(共)重合体(A2)は、図5に示すように、(i)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つである。
TREFによる溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであるエチレン(共)重合体(A2)は、耐熱性に優れるものとなる。
【0038】
また、本発明におけるエチレン系(共)重合体(A2)は、(j)融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足するものである。
(式5) Tml≧150×d−19
融点Tmlと密度dが上記(式5)の関係を満足すると、耐熱性の優れるものとなる。
【0039】
また、エチレン系(共)重合体(A2)の中でも、さらに下記(k)の要件を満足するエチレン(共)重合体が好適である。
(k)メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)の関係を満足する。
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3
MTとMFRが上記(式6)の関係を満足することにより、フィルム成形等の成形加工性が良好なものとなる。
【0040】
ここで、エチレン系共重合体(A2)は、図5に示されるように、TREFピークが1つであるものの、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体は上記(式2)を満足せず、従来の典型的なメタロセン系触媒によるエチレン系(共)重合体とは区別されるものである。
【0041】
このようなエチレン(共)重合体(A)は、シングルサイト系触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを共重合させて得られる直鎖状のエチレン系(共)重合体である。このような直鎖状のエチレン系(共)重合体は、基材等に対する接着性に優れている。また、分子量分布および組成分布が狭いため、機械的特性に優れ、ヒートシール性、耐熱ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
【0042】
エチレン系(共)重合体(A)を製造する触媒としては、従来の典型的なメタロセン触媒が挙げられるが、少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含むシングルサイト系触媒が好ましい。該シングルサイト系触媒としては特に以下のa1〜a4の化合物を混合して得られる触媒で製造することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q−rで表される化合物(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、R2は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1はハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−nで表される化合物(式中Me2は周期律表第I〜III族元素、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および/またはホウ素化合物
【0043】
以下、さらに詳説する。
上記触媒成分a1の一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4−p−q− rで表される化合物の式中、Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2は、2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体を示す。X1はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示す。p、qおよびrはそれぞれ、0≦p≦4、0≦q≦4、0≦r≦4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たすを整数である。
【0044】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4−ペンタンジオナト)トリクロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフィルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0045】
上記触媒成分a2の一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z−m−nで表される化合物の式中Me2は周期律表第I〜III族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2が水素原子の場合はMe2はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III族元素の場合に限るものである。また、zはMe2の価数を示し、mおよびnはそれぞれ、0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0046】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0047】
上記触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物は、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0048】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0049】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0050】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−エチルシクロペンタジエン、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン、1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエン、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0051】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0052】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0053】
ホウ素化合物としてはテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5ージフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。中でも、N,N_−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロボレート、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロボレート、トリスペンタフルオロボランが好適である。
【0054】
上記触媒はa1〜a4を混合接触させて使用しても良いが、好ましくは無機担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用することが望ましい。
該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0056】
エチレン系(共)重合体(A)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合通常常圧〜70kg/cm2G、好ましくは常圧〜20kg/cm2Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。特に好ましい製造方法としては、特開平5−132518号公報に記載の方法が挙げられる。
【0057】
エチレン(共)重合体(A)は、上述の触媒成分の中に塩素等のハロゲンのない触媒を使用することにより、ハロゲン濃度としては多くとも10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは実質的に含まない2ppm以下(ND:Non−Detect)のものとすることが可能である。
このような塩素等のハロゲンフリーのエチレン系(共)重合体を用いることにより、従来のような酸中和剤(ハロゲン吸収剤)を使用する必要がなくなり、化学的安定性等に優れたものとなる。またこのようなハロゲンフリーの状態で使用することにより酸中和剤の悪影響がなく、接着強度も向上させることができる。
【0058】
[他のポリオレフィン系樹脂(B)]
樹脂層(II)を構成する樹脂材料は上記エチレン(共)重合体(A)のみでなく、他のポリオレフィン系樹脂(B)を90質量%まで混合したものでも良い。
このような他のポリオレフィン系樹脂(B)としてはエチレン(共)重合体(A)以外の他のポリオレフィン系樹脂(B)であり、高圧ラジカル重合法によって得られた低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体;チーグラー系触媒、フィリップス系触媒等から得られる密度が0.86〜0.97g/cm3の他のエチレン系(共)重合体;ポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂およびこれらの混合物などが挙げられる。このような他のポリオレフィン系樹脂(B)を配合することで成形性や耐熱性等の向上を図ることができる。
【0059】
前記LDPEのMFRとしては、MFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分の範囲である。また、LDPEの密度は、0.91〜0.94g/cm3 、さらに好ましくは0.91〜0.935g/cm3 の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、成形加工性が向上する。LDPEのメルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、LDPEの分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。
【0060】
前記エチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5質量%、ビニルエステル0.5〜50質量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5質量%からなる共重合体が好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分の範囲である。
【0061】
前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ましくは0.1〜30g/10分である。
【0062】
[樹脂材料の配合比]
樹脂層(II)をなす樹脂材料は、エチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%とを含有するものであり、上記エチレン(共)重合体(A)のみで構成しても良い。好ましくはエチレン(共)重合体(A)が50質量%以上、他のポリオレフィン系樹脂(B)を50質量%未満であり、より好ましくはエチレン(共)重合体(A)が65質量%以上、他のポリオレフィン系樹脂(B)を35質量%未満である。
エチレン(共)重合体(A)が10質量%未満、ポリオレフィン系樹脂(B)を90質量%以上になると接着性等が不十分となる。
【0063】
[エポキシ化合物(C)]
樹脂層(II)をなす樹脂材料には、さらにエポキシ化合物(C)を含有させることができる。エポキシ化合物(C)を含有させれば、さらに接着性を向上させることができる。エポキシ化合物(C)としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基(オキシラン基)を含む、分子量3000以下の多価エポキシ化合物が好適に用いられる。分子内のエポキシ基が1個のエポキシ化合物では、基材への接着性の改善効果があまり期待できない。また、このエポキシ化合物の分子量は、3000以下が好ましく、特に1500以下が好ましい。分子量が3000を超えると、組成物化した際に、十分な接着性の改善効果が得られない虞がある。
【0064】
このようなエポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油などが挙げられる。中でも扱い易さの観点からエポキシ化植物油が好適である。
【0065】
ここで、エポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。これらのエポキシ化植物油は、例えば旭電化工業(株)製、O−130P(エポキシ化大豆油)、O−180A(エポキシ化亜麻仁油)等として市販されている。
なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていない、またはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明における作用効果を何ら妨げるものではない。
【0066】
エポキシ化合物(C)の添加量は、エチレン(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.2〜5質量部である。エポキシ化合物(C)の添加量が0.05質量部未満では、基材への接着強度の改善効果が不十分になることがあり、10質量部を超えると接着性は向上するものの、ベタツキによるブロッキングを起こしたり、臭いを発する等の弊害が発生する虞がある。
【0067】
[官能基を有するオレフィン系樹脂]
また、樹脂層に用いられる樹脂材料に、分子内にエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)をさらに含有させてもよい。このエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)は必須ではないが、これを添加することによりさらに基材との接着性を向上させることができる。これは、エポキシ基と反応可能な官能基とエポキシ化合物との間で反応が起こり、樹脂成分にグラフトされるエポキシ化合物(C)が増加するためである。
【0068】
エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)の使用量は、エチレン(共)重合体(A)と、他のポリオレフィン系樹脂(B)と、オレフィン系樹脂(D)との合計質量に対して、好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは2〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。オレフィン系樹脂(D)を30質量%以上添加すると、接着向上効果はあるものの、経済的ではない。
【0069】
エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基またはその誘導体、アミノ基、フェノール基、水酸基、チオール基などが挙げられる。中でも反応性と安定性のバランスから、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を分子内に有するオレフィン系樹脂(D)が好ましく用いられる。
エポキシ基と反応する官能基の導入方法としては、主として共重合法と、グラフト法が挙げられる。
【0070】
例えば、共重合法によって製造される、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系樹脂(D)としては、エチレンと反応可能な化合物とエチレンとの二元または多元共重合体が挙げられる。 共重合に用いる化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。さらに、これらの不飽和化合物に加えて(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルアルコールエステル等を共重合させて用いることもできる。
これらの化合物は、エチレンとの共重合体において2種以上を混合して用いることができ、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種以上を併用することもできる。例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸ー酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸ーアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0071】
一方、グラフト変性によりエポキシ基と反応可能な官能基を導入したオレフィン系樹脂(D)は、ポリオレフィンと過酸化物等の遊離基発生剤と、変性用の化合物とを溶融もしくは溶液状態で作用させて製造するのが一般的である。
グラフト変性に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のほかに、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(E(M)A)、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、例えば、エチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のように、酸あるいはその誘導体を既に含むような共重合体をさらにグラフト変性して用いても何ら差し支えない。
【0072】
[遊離基発生剤]
グラフト変性時に用いる遊離基発生剤の種類については特に限定を受けないが、例えば、遊離基発生剤としては、一般的な有機過酸化物が用いられ、中でも反応性の良さと取り扱いの容易さからジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド等が好ましく用いられる。
【0073】
また、変性用の不飽和化合物としては、上記共重合法で用いられるエチレンと共重合可能な化合物と同様の不飽和化合物が用いられ、カルボン酸基あるいはカルボン酸無水物基とその金属塩、アミノ基、水酸基等、ラジカル反応可能な不飽和基を有していれば基本的には使用可能である。
このような変性用の不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸あるいは無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の不飽和水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。
【0074】
樹脂層(II)をなす樹脂材料には、所望により慣用の添加剤、例えば酸化防止剤、可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、各種の無機・有機充填剤などを添加することも可能であるがこれら公知の添加剤が配合されていないことが望ましい。このような添加剤フリーとすることにより、アンカーコート剤を用いずにさらに強固な接着強度を得ることができる。
【0075】
樹脂層(II)をなす樹脂材料は、上記エチレン(共)重合体(A)および他のポリオレフィン系樹脂(B)からなる樹脂材料および/またはその樹脂材料にエポキシ化合物(C)、所望により官能基を含有するオレフィン系樹脂(D)を、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて混練する方法によって得ることができる。混練の温度は、通常、樹脂の融点以上〜350℃である。
【0076】
上述した剥離基体は、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)の3層構成からなる積層体について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、本発明の作用効果を損なうことのない範囲内で、他の層を設けてよい。例えば、基材(I)の樹脂層(II)の形成されていない側の面に他の任意の層を設けたり、また、基材(I)の両面に、それぞれ樹脂層(II)および剥離材層(III)を設けて5層構成として両表面が剥離材層(III)となる剥離基体等としたり、樹脂層(II)を複数の層で構成してもよい。
尚、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)等の各層の層厚は、限定されるものではなく、各層の機能を果たす範囲内で適宜設定される。
【0077】
[剥離基体の製造方法]
本発明の剥離基体は、各層間の接着強度が高くなるように積層する方法であれば特にその製造方法は限定されるものではないが、特に押出ラミネート成形、共押出ラミネート法、サンドラミネート法により積層して製造する方法が好適である。
本発明によれば、高い層間強度をもつ剥離基体を低温ラミネートにより、また、200〜400m/分の高速成形で製造することができる。
【0078】
以下に本発明の剥離基体の製造方法の一例を示す。
この製造方法では、基材(I)と樹脂層(II)とを押出ラミネート法により積層した後、樹脂層(II)上に剥離材層(III)を形成する方法である。
図6は、押出ラミネート法による製造装置を示す模式図である。この製造装置は、基材12を繰り出す繰出機30と、樹脂層(II)となる樹脂aを押し出す押出機31と、回転しながら基材12と樹脂aとを挟んで加圧する冷却ロール32とニップロール33と、得られた積層体を巻き取る巻取機34とを有して概略構成される。そして、この製造装置を用いた製造方法では、紙等からなる基材(I)12を繰出機40から所定速度で繰り出し、ニップロール34と冷却ロール32の間に送給すると共に、樹脂層(II)となる溶融樹脂膜状態の樹脂を押出機30からニップロール34と冷却ロール32との間の冷却ロール32側に押出しし、樹脂層(II)14が基材(I)12と接するように供給することで、基材(I)12上に樹脂層(II)14がラミネートされた積層体が製造される。その後、得られた基材(I)12と樹脂層(II)14とからなる積層体15は、巻取機42に巻き取られる。次いで、積層体15の樹脂層(II)14上に、例えばシリコーン樹脂等を塗工し、加熱して硬化させて剥離材層(III)16を形成する。
【0079】
上記押出ラミネート法等における溶融樹脂フィルムの樹脂温度は200〜350℃の範囲、好ましくは240〜330℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲であることが好ましい。特に本発明においては300℃未満で成形することができる。200℃未満であると、得られた積層体において、基材(I)、樹脂層(II)、剥離材層(III)との接着強度が低くなることがある。一方、溶融樹脂フィルムの樹脂温度が350℃を超えると、樹脂が劣化するので、目的とする特性が得られなくなることがある。
【0080】
また、上述した製造方法においては、樹脂層(II)をなす樹脂材料と、剥離材層(III)をなす剥離材とを成形温度200〜350℃で共押出して溶融樹脂フィルムを形成しながら、該溶融樹脂フィルムの基材(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、この溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することができる。
その際、該溶融樹脂フィルムの剥離材層(III)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することもできる。
ここで、樹脂層(II)および/または剥離材層(III)の酸素原子濃度、表面参加度は、好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.0〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.12〜1.8、さらに好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.2〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.15〜1.5、特に好ましくは(イ)酸素原子濃度(Oc)が2.5〜40質量%かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.20〜1.2である。
このような範囲であると、接着に寄与するカルボニル基等の酸素含有官能基の生成量が多くなるので、接着強度が向上するものとなる。したがって、この工程シートでは、アンカーコート剤を使用する必要がなく、かつ溶剤などによる溶出分が少なく、クリーンである。さらに、アンカーコート剤を用いないことにより、コストが低下し、作業が簡略化する。また、溶剤を使用しなくなるので環境上の問題、臭気の問題がなくなる。なお、エチレン(共)重合体(A)は、酸化され易く、かつ凝集破壊を引き起こすのに十分な高分子量成分を含んでいる。
【0081】
ここで、酸素原子濃度(Oc)とは、樹脂層(II)の、基材(I)あるいは剥離材層(III)と接している面において、ESCA法により測定された酸素O1s補正ピーク強度:Oと、炭素C1s補正ピーク強度:Cとを(式7)に代入して求めた値である。酸素原子濃度により接着表面の酸素原子導入量が定量化できる。
(式7) Oc=O/(C+O)×100(%)
【0082】
また、表面酸化度(Or)とは、樹脂層(II)の、基材(I)あるいは剥離材層(III)と接している面において、酸化処理により、接着に寄与すると考えられるカルボニル基やアルデヒド基等の含酸素基を有する化合物が生成した程度を示す値である。表面酸化度(Or)は、表面FT−IR(ATR)法による吸光度のスペクトルにおいて、カルボニル基の吸収による1720cm−1付近のピークの高さをI(1720)、メチレン基の縦揺れ吸収による1370(1369)cm−1付近のピークの高さをI(1370)とした場合、(式8)で求めることができる。
(式8) Or=I(1720)/I(1370)
この数値は、メチレン基の縦揺れ吸収を元に算出している為、分子量の異なるポリマー間の比較が難しいが、上記(イ)を併せて測定することによって表面の酸化についてより詳細な情報が得られる。
【0083】
なお、酸素原子濃度(Oc)の測定および表面酸化度(Or)の測定は、ラミネート工程後に行われるが、樹脂層(II)と基材(I)および剥離材層(III)とが接着してしまうと、樹脂層(II)の酸化処理面を測定するサンプルを得るのが困難になる。そのため、ラミネート工程の際に、ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプルが得られるようにしておく。IR測定用サンプルを得るには、まず、ラミネートする前に、図7(a)に示すように、溶融樹脂フィルム111がラミネートされる基材112の面の一部に、図7(b)に示すような、紙113上に四フッ化ビニリデン製粘着テープ114(非粘着面)が貼合されたサンプル採取用紙115を、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114が溶融樹脂フィルム111に接するように両面接着テープなどを用いて貼合する。次いで、基材112上に溶融樹脂フィルム111をラミネートして工程シート110を得た後、工程シート110の上記サンプル採取用紙115の貼合部分を切り出す。サンプル採取用紙115の貼合部分の積層体は、紙112からなる基材(I)、紙113、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114、溶融樹脂フィルム111が固化して形成した樹脂層(II)の順に積層されている。ここで、四フッ化ビニリデン製粘着テープ114と樹脂層(II)とは接着していないので、樹脂層(II)を分離することにより酸化処理面が完全に露出した樹脂層(II)が得られる。このようにして得られた樹脂層(II)をIR測定用サンプルとして用いて、酸化処理面のIRを測定する。
【0084】
また、ESCA測定用サンプルは、上述したIR測定用サンプルを得る方法において、サンプル採取用紙115の代わりに、一方の面が未処理で他方の面がコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる。このPETフィルムのコロナ面を基材112上に貼合し、PETフィルムの未処理面を基材(I)側にし、上述したIR測定用サンプルと同様にしてESCA測定用サンプルを得る。そして、PETフィルム(未処理面)と接していた面のESCAを測定する。
【0085】
酸化処理とは、酸素またはオゾンを溶融樹脂フィルムに接触させることである。その際、酸素、空気で酸化処理してもよいし、酸化処理装置を用いて強制的に酸化処理してもよい。
具体的な酸化処理方法としては、オゾン処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙られるが、効率的であることから、特にオゾン処理が望ましい。例えば、図6においては、オゾン発生器35によってオゾンを樹脂aの表面に吹き付けて酸化させている。
酸化処理の温度は特に制限ないが、好ましくは溶融状態の樹脂フィルムに施すことが、酸化が容易で効率的であることから、200〜350℃、好ましくは260〜310℃、より好ましくは290〜300℃の範囲であることが望ましい。
このような酸化処理をして樹脂層(II)を介して基材(I)と剥離材層(III)とを積層すると、より低温で強固に積層させることができるが、より効率的でかつより強固に積層できることから、溶融樹脂フィルムの温度を200〜350℃の範囲でオゾン処理することが特に好ましい。
【0086】
該オゾンによる酸化処理におけるオゾン処理量は、基材(I)または剥離材(III)の種類、条件等により異なるものの、5g/Nm3×1Nm3/hr〜100g/Nm3×20Nm3/hr(すなわち、5〜2000g/hr)の範囲、好ましくは10g/Nm3×1.5Nm3/hr〜70g/Nm3×10Nm3/hr(すなわち、15〜700g/hr)、さらに好ましくは15g/Nm3×2Nm3/hr〜50g/Nm3×8Nm3/hr(すなわち、30〜400g/hr)の範囲である。オゾン処理量が5g/hr未満であると、酸化処理が不十分となり、基材(I)と樹脂層(II)との接着強度が向上しない虞が生じ、2000g/hrを超えると、樹脂組成物が劣化することがある。
【0087】
また、基材(I)および/または剥離材層(III)に対しても、プレヒート処理、コロナ処理、火炎処理、UV処理等の表面処理を行うことができるが、中でもコロナ処理を施しておくことが望ましく、コロナ処理を施した基材(I)とオゾン処理を施した樹脂層(II)との層間接着強度はきわめて高くなる。コロナ処理としては、図6に示されるコロナ放電器36を用いて、1〜300W分/m2の範囲で処理することが好ましく、10〜100W分/m2の範囲で処理することがより好適である。
【0088】
また、押出ラミネート法では、剥離材層の押出ラミネーション工程時のラミネート温度を調整することにより、転写面の濡れ性を制御することができ、表面の剥離性を調整できる。
【0089】
上述した押出ラミネート法以外の方法で、剥離基体を製造することもできる。例えば、剥離材層16となる樹脂からなるフィルムを樹脂層(II)と冷却ロール32の間に供給して、圧接、積層する、いわゆるサンドラミネーションによっても剥離材層(III)を同時に形成することができる。
【0090】
本発明の剥離基体は、例えば図1に示すように、その剥離材層16上に被剥離体20を形成することにより、剥離性積層体24となる。被剥離体20は、紙やPETフィルムなどからなる被剥離基材22とこの被剥離基材22を剥離材層16上に、剥離可能に接着材層18とからなる被剥離基材22には目的に応じて印刷等が施されて使用に供される。接着剤層18には、被剥離基材22とは高い接着強度を発揮し、かつ剥離材層16とは低い接着強度を発揮するものが適宜選択されて用いられる。このような剥離性積層体は各種ラベル、粘着シート等に用いられる。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
本実施例における試験方法は以下の通りである。
[密度]
JIS K6760に準拠した。
[MFR]
JIS K6760に準拠した。
【0092】
[Mw/Mn]
GPC(ウォータース社製150C型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムはショウデックス HT806Mを使用した。
【0093】
[TREF]
カラムを135℃に保った状態で、カラムに試料を注入して0.1℃/分で25℃まで降温し、ポリマーをガラスビーズ上に沈着させた後、カラムを下記条件にて昇温して各温度で溶出したポリマー濃度を赤外検出器で検出した。(溶媒:ODCB、流速:1ml/分、昇温速度:50℃/hr、検出器:赤外分光器(波長2925cm−1)、カラム:0.8cmφ×12cmL(ガラスビーズを充填)、試料濃度:0.05重量%)
【0094】
[DSCによるTmlの測定]
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、シートから約5mgの試料を打ち抜いた。この試料を230℃で10分保持後、2℃/分にて0℃まで冷却した。その後、再び10℃/分で170℃まで昇温し、現れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmlとした。
【0095】
[ODCB可溶分量]
試料0.5gを20mlのODCBに加え、135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却した。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン(登録商標)製フィルターでろ過してろ液を採取した。赤外分光器により、試料溶液であるろ液におけるメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により、ろ液中の試料濃度を算出した。この値より、25℃におけるODCB可溶分量を求めた。
【0096】
[メルトテンション(MT)]
溶融させたポリマーを一定速度で延伸したときの応力をストレインゲージにて測定することにより決定した。測定試料は造粒してペレットにしたものを用い、東洋精機製作所製MT測定装置を使用して測定した。使用するオリフィスは穴径2.09mmφ、長さ8mmであり、測定条件は樹脂温度190℃、シリンダー下降速度20mm/分、巻取り速度15m/分である。
【0097】
[ハロゲン濃度]
蛍光X線法により測定し、10ppm以上の塩素が検出された場合はこれをもって分析値とした。10ppmを下回った場合は、ダイアインスツルメンツ(株)製TOX−100型塩素・硫黄分析装置にて測定し、2ppm以下については、実質的に含まないものとし、ND(non−detect)とした。
【0098】
エチレン系共重合体(A11)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン22gおよびメチルブチルシクロペンタジエン88gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(イ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度65℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(イ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素等を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A11)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0099】
エチレン共重合体(A12)を次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラブトキシジルコニウム(Zr(OBu)4 )31gおよびインデン74gを加え、90℃に保持しながらトリイソブチルアルミニウム127gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2424mlを添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ロ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ロ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給しての重合を行い、エチレン共重合体(A12)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0100】
エチレン共重合体(A2)は次の方法で重合した。
[固体触媒の調製]
電磁誘導攪拌機を備えた触媒調製装置に、窒素下で精製したトルエン1000ml、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OPr)4 )26gおよびインデン74gおよびメチルプロピルシクロペンタジエン78gを加え、90℃に保持しながらトリプロピルアルミニウム100gを100分かけて滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。40℃に冷却した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度3.3mmol/ml)を2133ml添加し2時間撹拌した。次にあらかじめ450℃で5時間焼成処理したシリカ(表面積300m2 /g)2000gを加え、室温で1時間攪拌の後、40℃で窒素ブローおよび減圧乾燥を行い、流動性のよい固体触媒(ハ)を得た。
[気相重合]
連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒(ハ)を連続的に供給し、エチレン、1−ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(A2)を得た。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0101】
エチレン共重合体(A3)を次の方法で重合した。
[メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)の製造]
窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1−ヘキセンを添加し、更にビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=200)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を8kg/cm3 に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン−1共重合体(A3)を製造した。その共重合体の物性の測定結果を表1に示す。
【0102】
[チーグラー触媒によるLLDPE]
下記チーグラー触媒によるLLDPE樹脂を試料(A4)として表1に示した。市販LLDPE:密度0.910g/cm3、MFR:10.0g/10分、コモノマー:4−メチル−ペンテン−1。
【0103】
【表1】
【0104】
上述したエチレン(共)重合体(A)を用いて工程シートを作製した。
[使用材料]
(1)基材:上質紙;紀州製紙(株)製 はまゆう 50g/m2
(2)ポリプロピレン系樹脂:
ホモポリプロピレン(PP)
密度=0.90g/cm3、MFR=42g/10分
商品名=PHA03A サンアロマー(株)製
(3)ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂(P4MeP)
メルトフローレート(260℃)=100g/10分
(4)高圧ラジカル重合法分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.919g/cm3、MFR:8.1g/10分、
商品名:JH607D、日本ポリオレフィン(株)製
【0105】
[実施例1]
[実施例1〜4]
90mm押出機を備えた幅1100mmのラミネート成形機を使用し、下記条件で、図6に示すように、エチレン(共)重合体(A11)、(A12)、(A2)、(A3)を厚さ15μmで押出した溶融樹脂フィルムの樹脂層(II)表面、すなわち、基材との接合面をオゾン処理して、厚さ50g/m2の上質紙の上に、アンカーコート剤を使用せずに、押出ラミネートして積層体を製造した。ラミネート後40℃で2時間エージング後、得られた各積層体上にシリコーン樹脂を塗工し、硬化させて剥離材層(III)とし、剥離基体を製造した。そして、樹脂層(II)と基材(I)の間における各接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
(ラミネート条件)
押出機:90mmφ(L/D=32)、成形温度320℃、成形速度150m/分
(接着強度)
接着強度の測定は、15mm幅の短冊状のサンプルを切り出し、JIS K6854に準拠して、引張速度300mm/分の条件でT剥離により剥離強度を測定し、この剥離強度を接着強度とした。
【0106】
[実施例5〜7]
表2に示すように、エチレン共重合体(A11)にLDPEを配合したこと以外は実施例1と同様に行って剥離基体を製造した。その評価結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
[実施例8〜9]
剥離材層(III)をポリプロピレン樹脂またはポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂(4PMeP)で構成し、樹脂層(II)をエチレン(共)重合体(A11)で構成するとともに、剥離材層(III)の厚さが50μm、樹脂層(II)の厚さが15μmとなるように共押出し、樹脂層(II)表面をオゾン酸化処理しながら、その酸化処理面を基材(I)に貼り合わせて積層して、剥離基体を製造した。樹脂層(II)と基材(I)および剥離材層(III)の間における各接着強度を測定した。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
[実施例10]
エポキシ化大豆油(分子量:938、商品名;アデカサイザー、旭電化工業(株)製、以下、ESOと略す)を含浸(10000ppm)させた上記エチレン共重合体(A11)70質量部に、上記LDPE30質量部を配合し、酸化防止剤およびハロゲン吸収剤(ステアリン酸カルシウム)を添加せずにタンブラーミキサーでドライブレンドした後、170℃でペレタイズして樹脂層(II)用の樹脂ペレットを調製した。
上記樹脂ペレットを用いて実施例8と同様にして剥離基体を作製し、その接着強度を測定した。その結果を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
[比較例1、2]
比較例1では、樹脂層(II)の構成成分としてチーグラー系触媒によるエチレン(共)重合体(A4)を用いたこと以外は実施例8と同様にして剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。また、比較例2では、樹脂層(II)の構成成分として高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いたこと以外は実施例8と同様にして剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。これらの結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
[比較例3]
接着剤としてアンカーコート剤を用いて、基材(I)である上質紙と、剥離材層(III)であるポリプロピレン樹脂とを積層して剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示す。
この際、アンカーコート剤(AC剤)としては、大日精化工業(株)製セイカダイン2710、セイカダイン2710B、市販の酢酸エチルの混合物(セイカダイン2710A:セイカダイン2710B:酢酸エチル1:2:15の質量比率)を使用した。
【0115】
[比較例4]
ドライラミネーションにより、基材(I)である上質紙と剥離材層(III)であるPPとを積層して剥離基体を製造し、その層間接着強度を測定した。結果を表6に示す。
なお、上記ドライラミネーションでは、押出ラミネート機付属のACコーターにて、プレーンロールを使用して、アンダーコート剤(東洋モートン(株)製AD−308A:AD−308B:酢酸エチル1:1:3の比率でブレンド)を塗工量3g/m2でグラビアコートし、次いで、ドライヤー温度80℃で乾燥し、圧着条件50℃−4kg/m2、30m/分でラミネートした。ラミネートした後、40℃で2時間エージングしてから、接着強度を測定した。
【0116】
【表6】
【0117】
上記表2〜6から明らかなように、本実施例の樹脂層(II)を用いることにより、基材(I)及び剥離材層(III)に対して、接着強度が極めて高かった。一方、チーグラー系触媒による直鎖状低密度ポリエチレン、LDPE、AC剤およびドライラミネート法においては剥離材層としてPP等を用いた場合において、接着強度が充分でなかった。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特定のエチレン(共)重合体を用い、かつ望ましくは酸化処理をすることにより、アンカーコート剤を使用しなくても、基材(I)と剥離材層(III)との接着強度が高くできる上に、低温でのラミネート成形であっても短時間(高速成形)で製造することができる。しかも、剥離材として種々の材料が適用可能となり応用範囲が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】剥離性積層体の層構成の一例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係るエチレン系(共)重合体(A)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図3】本発明に係るエチレン系共重合体(A1)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図4】メタロセン系触媒によるエチレン系共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図5】本発明に係るエチレン系共重合体(A2)の溶出温度−溶出量曲線を示すグラフである。
【図6】剥離基体の製造工程の一例を示す概略構成図である。
【図7】(a)ESCA測定用サンプルおよびIR測定用サンプル作製方法の模式図、(b)サンプル採取用紙を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 剥離基体
12 基材
14 樹脂層(目止め層)
16 剥離材層
20 被剥離体
24 剥離性積層体
Claims (14)
- アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材層(III)が形成された剥離基体であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%、他のポリオレフィン系樹脂(B)0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする剥離基体。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに下記(e)の要件を満足することを特徴とする請求項1記載の剥離基体。
(e):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式2)の関係を満足すること
(式2) d<0.950g/cm3 のとき
T75−T25≧−300×d+285
d≧0.950g/cm3のとき
T75−T25≧0 - 前記エチレン(共)重合体(A)は、さらに(f)23℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の質量平均分子量が8000〜30000の範囲を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の剥離基体。
- 前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに下記(g)および(h)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の剥離基体。
(g):25℃におけるo−ジクロロベンゼン(ODCB)可溶分量X(質量%)、密度dおよびメルトフローレート(MFR)が下記(式3)および(式4)の関係を満足すること
(式3)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(式4)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
(h):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること - 前記エチレン(共)重合体(A)が、さらに下記(i)および(j)の要件を満足するエチレン系(共)重合体(A2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の剥離基体。
(i):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが一つであること
(j):融点ピークを1ないし複数個有し、かつそのうち最も高い融点Tmlと密度dが、下記(式5)の関係を満足すること
(式5) Tml≧150×d−19 - 前記エチレン系(共)重合体(A2)が、さらに下記(k)の要件を満足することを特徴とする請求項5記載の剥離基体。
(k):メルトテンション(MT)とメルトフローレート(MFR)が、下記(式6)を満足すること
(式6) logMT≦−0.572×logMFR+0.3 - 樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の剥離基体。
- 前記剥離材層(III)がシリコーン樹脂または該シリコーン樹脂を含む組成物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の剥離基体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の剥離基体の剥離材層(III)上に被剥離体が接着されていることを特徴とする剥離性積層体。
- アンカーコート剤を用いずに基材(I)上に樹脂層(II)を介して剥離材からなる剥離材層(III)を形成する剥離基体の製造方法であって、
樹脂層(II)が、下記(a)から(d)の要件を満足するエチレン(共)重合体(A)100〜10質量%と、他のポリオレフィン系樹脂(B)が0〜90質量%を含有する樹脂材料からなることを特徴とする剥離基体の製造方法。
(a):密度が0.86〜0.97g/cm3
(b):メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(c):分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.5
(d):連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の積分溶出曲線から求めた全体の25%が溶出する温度T25と全体の75%が溶出する温度T75との差T75−T25および密度dが、下記(式1)の関係を満足すること
(式1) T75−T25≦−670×d+644 - 樹脂層(II)をなす樹脂材料が、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含み、かつ分子量3000以下のエポキシ化合物(C)を含有することを特徴とする請求項10に記載の剥離基体の製造方法。
- 樹脂層(II)をなす樹脂材料と剥離材層(III)をなす剥離材とを、成形温度200〜350℃で共押出して溶融樹脂フィルムを形成しながら、該溶融樹脂フィルムの基材(I)と接する面を(イ)酸素原子濃度(Oc)が1.8質量%以上かつ(ロ)表面酸化度(Or)が0.10以上となるように酸化処理し、この溶融樹脂フィルムと基材(I)とを積層することを特徴とする請求項10または11に記載の剥離基体の製造方法。
- 前記酸化処理では、前記溶融樹脂フィルムを樹脂温度200〜350℃の範囲でオゾン処理することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の剥離基体の製造方法。
- 基材(I)および剥離材層(III)に、アンカーコート剤を用いずに樹脂層(II)を接着することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の剥離基体の製造方法。
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